説明

エレクトロクロミック化合物、電極、表示素子

【課題】メモリー性、経時発色安定性に優れるエレクトロクロミック化合物、および表示素子を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されることを特徴とするエレクトロクロミック化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なエレクトロクロミック化合物、電極及び表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報をより簡便な電子情報として入手し閲覧する機会が増大している。
【0003】
このような電子情報を表示する媒体として、従来のディスプレイであるCRTや液晶ディスプレイに替わって、近年より紙に近い電子媒体として電子ペーパーの開発が盛んに行われている。例えば、エレクトロクロミック化合物の発色/消色を利用したエレクトロクロミック表示素子は、反射型の表示素子であること、メモリー性があること、低電圧で駆動できることから、電子ペーパーの候補として材料開発からデバイス設計まで広く研究開発されている。また、材料構造によって様々な色を発色できるため、多色表示素子としても期待されている。
【0004】
近年、これら電子ペーパーに代表される電子デバイスを実現させるための材料として有機−無機複合材料の研究が盛んに行われている。例えば、電極上に配置されたナノ結晶質層にエレクトロクロミック化合物を吸着させて用いた例が示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
しかし、これまでは、この例のように有機機能性材料のリン酸、カルボン酸、サリチル酸等の酸性基末端を無機微粒子の水酸基に吸着させているものがほとんどであった。これらのような酸性基を用いても、無機微粒子上に有機化合物を吸着させることは可能であるが、その結合力はそれほど強固でないため、素子作製時や繰り返し使用後、もしくはアルカリ性条件では、更に容易に有機化合物と無機微粒子との結合が切れてしまうというような問題があった。
【0006】
一方、無機微粒子の有機化合物による表面処理は以前から広く行われており、電子デバイスに用いられた例として、シランカップリング剤で金属酸化物を処理してその表面特性を改良した例が示されている(例えば、特許文献3参照)が、これは単に無機微粒子の表面特性の改質をめざしたものであり、またシランカップリング剤で金属酸化物を処理した後に更に機能性有機材料を反応させ、金属酸化物にシラノール結合を介して機能性有機材料を結合させた有機無機複合材料が示されている(例えば、特許文献4参照)が、メモリー性がない、機能性有機材料を反応させる際の効率が悪く反応量制御が容易ではない、電極の作製工程が複雑になり製造適性が低いなどの問題を有していた。
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するエレクトロクロミック化合物に置換基として機能性シラン(アルコキシシランまたはハロシランなどの加水分解性基)を置換させることにより、上記課題が解決できることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2000−506629号公報
【特許文献2】特開2007−304164号公報
【特許文献3】特開2004−191418号公報
【特許文献4】特開2007−31708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的はメモリー性、経時発色安定性に優れるエレクトロクロミック化合物、それを用いた製造適性に優れた電極及び表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.下記一般式(1)で表されることを特徴とするエレクトロクロミック化合物。
【0012】
【化1】

【0013】
(一般式(1)中、Rはアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表し、R、Rは各々水素原子または置換基を表す。XはN−R、酸素原子または硫黄原子を表し、Rは水素原子または置換基を表す。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは下記一般式(2)を部分構造として有する。)
【0014】
【化2】

【0015】
(一般式(2)中、Yはハロゲン原子またはORを表し、Rはアルキル基またはアリール基を表す。R′はアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表し、nは1〜3の整数を表す。)
2.前記一般式(2)において、YがORであることを特徴とする前記1に記載のエレクトロクロミック化合物。
【0016】
3.前記一般式(2)において、R′がアルキル基であることを特徴とする前記1または2に記載のエレクトロクロミック化合物。
【0017】
4.前記一般式(1)において、XがN−Rであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック化合物。
【0018】
5.前記1〜4のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック化合物が電極上に化学結合していることを特徴とする電極。
【0019】
6.前記電極が透明電極であることを特徴とする前記5に記載の電極。
【0020】
7.前記5または6に記載の電極を用いることを特徴とする表示素子。
【0021】
8.更に白色散乱物と電解質とを用いることを特徴とする前記7に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、メモリー性、経時発色安定性に優れるエレクトロクロミック化合物、それを用いた電極、及び該電極を用いた表示素子を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】化合物例1−1の酸化状態の分光吸収スペクトルを示す図である。
【図2】化合物例1−6の酸化状態の分光吸収スペクトルを示す図である。
【図3】化合物例1−24の酸化状態の分光吸収スペクトルを示す図である。
【図4】化合物例1−27の酸化状態の分光吸収スペクトルを示す図である。
【図5】化合物例1−46の酸化状態の分光吸収スペクトルを示す図である。
【図6】本発明の表示素子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するエレクトロクロミック化合物に置換基として機能性シラン(アルコキシシランまたはハロシランなどの加水分解性基)を置換させることで、メモリー性、経時発色安定性に優れるエレクトロクロミック化合物を提供可能であることを見出し、本発明に至った次第である。
【0025】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0026】
本発明の前記一般式(1)で表されるエレクトロクロミック化合物について説明する。本発明に用いるエレクトロクロミック化合物とは、エレクトロクロミック現象を有する化合物のことであり、エレクトロクロミック現象とは物質の酸化還元反応を電気的、あるいは電気化学的にコントロールすることにより、可視領域での電子遷移エネルギーを変化させ、物質の色を変える現象である。
【0027】
一般式(1)中、Rはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、メトキシエチル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、モルフォリノ基等)を表し、好ましくはアリール基であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0028】
一般式(1)中、Rで表される、アルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基は更に置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、メトキシエチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基等)、複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、イソプロピオキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、sec−ブトキシ基等)アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、シアノ基、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド基、プロピオアミド基、イソプロピオアミド基、ブタンアミド基、ピバロイルアミド基等)などが挙げられる。好ましくはヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基であり、更に好ましくはヒドロキシル基、アルキル基である。アルキル基として好ましくは、メチル基、t−ブチル基、t−オクチル基である。
【0029】
一般式(1)において、R、Rは各々水素原子または置換基を表し、置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、メトキシエチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基等)、複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、イソプロピオキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、sec−ブトキシ基等)アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、シアノ基、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド基、プロピオアミド基、イソプロピオアミド基、ブタンアミド基、ピバロイルアミド基等)などが挙げられるが、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、アミノ基であり、より好ましくはアリール基、複素環基である。アリール基として好ましくはフェニル基であり、複素環基として好ましくはフリル基、チエニル基、ピリジル基であり、更に好ましくは、チエニル基である。また、RとRが互いに結合し環を形成していてもよい。
【0030】
一般式(1)において、XはN−R、酸素原子または硫黄原子を表すが、好ましくはN−R、酸素原子であり、更に好ましくはN−Rである。
【0031】
は水素原子または置換基を表し、好ましくは水素原子である。置換基として好ましくは、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、メトキシエチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基等)、複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)であり、より好ましくはアルキル基、アリール基である。アルキル基として好ましくはブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基である、アリール基として好ましくはフェニル基である。
【0032】
本発明の一般式(1)で表されるエレクトロクロミック化合物は、電気的に酸化還元反応を行うことが可能であるが、酸化体もしくは還元体のどちらか一方が一般式(1)で表される構造を有していればよく、好ましくは還元体の構造が一般式(1)で表される場合である。
【0033】
本発明の一般式(1)で表されるエレクトロクロミック化合物は、R〜Rのうち少なくとも1つは前記一般式(2)を部分構造として有する。
【0034】
一般式(2)中、Yはハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、ORを表し、好ましくはORである。ハロゲン原子として、好ましくは塩素である。
【0035】
Rはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、メトキシエチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等)を表し、好ましくはアルキル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基である。
【0036】
一般式(2)中、R′はアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、メトキシエチル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基等)、複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)を表し、好ましくはアルキル基、アリール基であり、更に好ましくはアルキル基である。アルキル基としては好ましくはメチル基、エチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
【0037】
nは1〜3の整数を表し、Yがハロゲン原子の場合は、好ましくはnは1または2であり、更に好ましくは1である。YがORの場合は、好ましくはnは2または3であり、更に好ましくは3である。
【0038】
本発明中の一般式(2)で表される機能性シラン(アルコキシシランまたはハロシランなどの加水分解性基)は、シラノール結合を形成可能なものであればよいが、トリアルコキシシラン化合物、もしくはトリクロロシラン化合物が合成が容易であり、好ましい。トリクロロシランは反応性が高く、様々な金属酸化物に短時間で吸着可能であり、トリアルコキシシランは比較的反応性が穏やかなため反応の進行制御が容易となる。また、モノクロロシラン化合物やモノアルコキシシラン化合物を用いれば、オリゴマー化を防止できるため金属酸化物への吸着量制御が容易となる。
【0039】
以下に、一般式(1)で表されるエレクトロクロミック化合物の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
【化9】

【0047】
【化10】

【0048】
【化11】

【0049】
【化12】

【0050】
【化13】

【0051】
【化14】

【0052】
【化15】

【0053】
【化16】

【0054】
【化17】

【0055】
《電極》
本発明においては、一般式(1)で表されるエレクトロクロミック化合物が電極上に化学結合した電極であることを特徴とし、更に該電極が透明電極であることが好ましい。
【0056】
透明電極とは透明で電気を通じるものであれば特に制限はなく、例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等の層を透明基板上に形成したものが挙げられる。
【0057】
透明電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0058】
本発明の一般式(1)で表されるエレクトロクロミック化合物を電極上に化学結合させる方法としては、例えば、電極上に直接シラノール結合を介して一般式(1)で表されるエレクトロクロミック化合物を結合させる方法や、電極上に金属酸化物からなる多孔質層を形成し、金属酸化物とのシラノール結合を介して一般式(1)で表されるエレクトロクロミック化合物を結合させる方法などが挙げられるが、好ましくは金属酸化物からなる多孔質を介して一般式(1)で表されるエレクトロクロミック化合物を結合させる方法である。
【0059】
これまでのリン酸やカルボン酸等の酸性基末端を利用した吸着が経時で特性が劣化する理由としては、吸着力がそれほど強くなくエレクトロクロミック材料の無機微粒子からの脱離が起こるためと考えられる。それに対して本発明のエレクトロクロミック化合物と金属酸化物とをシラノール結合を介して結合させることにより、シラノール結合は結合が強固であるため、経時でもエレクトロクロミック材料の脱離がほとんど起こらず、経時発色安定性に優れるものになると考えられる。また、本発明のエレクトロクロミック化合物は、これまでのリン酸やカルボン酸等の酸性基末端を利用した吸着と吸着状態が異なるため、電子状態が変化することによってメモリー性が向上すると考えられる。
【0060】
本発明中の電極で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。
【0061】
これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912号、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。更にステンレス等の金属製基板やバライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号公報(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。
【0062】
これらの支持体には、米国特許第4,141,735号明細書のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行ってもよい。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0063】
《表示素子》
また、本発明の一般式(1)で表されるエレクトロクロミック化合物は、発消色を電気化学的に行わせることができるため、本発明の一般式(1)で表されるエレクトロクロミック化合物が電極上に化学結合した電極は表示材料として利用することができ、発消色を電気化学的に繰り返すことにより、可逆的、且つメモリー性を有するフルカラー表示材料として利用することができる。
【0064】
使用例として、例えば、図6で表されるように、表示電極、表示層、電解質、白色散乱層、対向電極が設けられた表示素子において、表示層として、本発明のエレクトロクロミック化合物を酸化チタンなどの金属酸化物からなる多孔質と反応させた層を用い、対向電極間に正負両極性の電圧を印加することにより、エレクトロクロミック化合物の酸化還元が行われ、酸化還元各状態の着色状態の相違と電極間に配置した白色散乱層とを利用して、着色表示と白表示を行うことができる。
【0065】
(電解質)
一般に「電解質」とは、水などの溶媒に溶けて溶液がイオン伝導性を示す物質(以下、「狭義の電解質」と言う。)を言うが、本発明で言う「電解質」とは、狭義の電解質に電解質、非電解質を問わず他の金属、化合物等を含有させた混合物を電解質(「広義の電解質」)と言う。
【0066】
本発明の表示素子において、電解質が液体である場合には、電解質溶媒を用いることができ、具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、スルホラン、水等が挙げられる。これらの溶媒のうち、凝固点が−20℃以下、且つ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0067】
更に本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electrolytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
【0068】
本発明において、電解質溶媒は単一種であっても、溶媒の混合物であってもよいが、エチレンカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。エチレンカーボネートの添加量は、全電解質溶媒質量の10質量%以上、90質量%以下が好ましい。特に好ましい電解質溶媒は、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネートの質量比が7/3〜3/7の混合溶媒である。プロピレンカーボネート比が7/3より大きいとイオン伝導性が劣り応答速度が低下し、3/7より小さいと低温時に電解質が析出しやすくなる。
【0069】
また、本発明では電解質として固体電解質を用いてもよい。これら固体電解質に用いられる高分子としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体や、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリルニトリル系重合体、更にポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、これらのアクリレート体やメタクリレート体の重合体などが挙げられる。これらの高分子に電解質液を含ませてゲル状にしたものを用いても、高分子のみでそのまま用いてもよい。
【0070】
(白色散乱層)
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、白色散乱物を含有することが好ましく、多孔質白色散乱層を形成させて存在させてもよい。
【0071】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0072】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0073】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、無機酸化物(Al、AlO(OH)、SiO等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えて、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンを用いることができる。
【0074】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0075】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0076】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。
【0077】
ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0078】
更に、リサーチ・ディスクロージャー(RD)及び特開昭64−13546号公報の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号明細書、特開昭62−245260号公報等に記載の高吸水性ポリマー、即ち−COOMまたは−SOM(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0079】
本発明においては、ゼラチン及びゼラチン誘導体、またはポリビニルアルコールもしくはその誘導体を好ましく用いることができる。
【0080】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号公報に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0081】
本発明で言う電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kg当たりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、質量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0082】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは0.3〜0.05の範囲である。
【0083】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物を塗布する媒体は、表示素子の対向電極間の構成要素上であればいずれの位置でもよいが、対向電極の少なくとも1方の電極面上に付与することが好ましい。媒体への付与の方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0084】
塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができ、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0085】
媒体上に付与した水系化合物と白色顔料との水混和物の乾燥は、水を蒸発できる方法であればいかなる方法であってもよい。例えば、熱源からの加熱、赤外光を用いた加熱法、電磁誘導による加熱法等が挙げられる。また、水蒸発は減圧下で行ってもよい。
【0086】
本発明で言う多孔質とは、前記水系化合物と白色顔料との水混和物を電極上に塗布乾燥して多孔質の白色散乱物を形成した後、該散乱物上に銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質液を与えた後に対向電極で挟み込み、対向電極間に電位差を与え、銀の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が電極間で移動可能な貫通状態のことを言う。
【0087】
本発明の表示素子では、上記説明した水混和物を塗布乾燥中または乾燥後に、硬化剤により水系化合物の硬化反応を行うことが望ましい。
【0088】
本発明で用いられる硬膜剤の例としては、例えば、米国特許第4,678,739号明細書の第41欄、同4,791,042号明細書、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、同61−249054号、同61−245153号、特開平4−218044号の各公報等に記載の硬膜剤が挙げられる。
【0089】
より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素等)、ホウ酸、メタホウ酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号公報等に記載の化合物)が挙げられる。水系化合物としてゼラチンを用いる場合は、硬膜剤の中で、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、ポリビニルアルコールを用いる場合はホウ酸やメタホウ酸等の含ホウ素化合物の使用が好ましい。
【0090】
これらの硬膜剤は、水系化合物1g当たり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。また、膜強度を上げるため熱処理や、硬化反応時の湿度調整を行うことも可能である。
【0091】
(対向電極)
本発明において対向電極としては、例えば、カーボン電極、金属電極などが挙げられ、金属電極であることが好ましい。金属電極としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等の公知の金属種を用いることができる。金属電極は、電解質中の銀の酸化還元電位に近い仕事関数を有する金属が好ましく、中でも銀または銀含有率80%以上の銀電極が、銀の還元状態維持のために有利であり、また電極汚れ防止にも優れる。電極の作製方法は、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、CVD法等の既存の方法を用いることができる。
【0092】
(その他の添加剤)
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0093】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0094】
(表示素子のその他の構成要素)
本発明の表示素子には、必要に応じてシール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0095】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0096】
柱状構造物は基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0097】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために、柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合は、その高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合は、スペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0098】
(表示素子駆動方法)
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明で言う単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号公報の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0099】
以下、本発明のエレクトロクロミック化合物の合成例を示すが、他の化合物例もこれらに準じて合成することができる。
【0100】
化合物例1−1の合成
酢酸20ml中に、4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンズアルデヒド2.34g、4,4′−ビス(エチルアミノ)ベンジル2.96g、酢酸アンモニウム9.25gを加え、約5時間加熱還流を行った後、反応溶液をアンモニア水10mlと水200mlを混合した水溶液中へ滴下した。析出した結晶をろ過し、酢酸エチルから再結晶を行い、4−(4,5−ビス(4−エチルアミノ)フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)−2,6−ジ−t−ブチルフェノールを3.74g(73.2%)得た。
【0101】
得られた4−(4,5−ビス(4−エチルアミノ)フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)−2,6−ジ−t−ブチルフェノール3.06gをジクロロメタン30ml中に加えた後、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル2.94gを滴下し、室温にて約4時間攪拌した。反応溶液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーを行い、化合物例1−1を3.48g(57.7%)得た。なお、構造の同定はH−NMRとマススペクトルを用いて行った。化合物例1−1の酸化状態の分光吸収スペクトルを図1以下に示す。
【0102】
H−NMR(600MHz、CDCl):δ0.55(t,4H)、1.11(t,6H)、1.19(t,18H)、1.40−1.41(m,4H)、1.49(s,18H)、3.17(t,4H)、3.72(q,4H)、3.78(q,12H)、7.14−7.21(m,4H)、7.37−7.64(m,6H)。
【0103】
化合物例1−6の合成
酢酸20ml中に、4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンズアルデヒド2.34g、4,4′−ジニトロベンジル3.00g、アニリン0.93g、酢酸アンモニウム4.68gを加え、約5時間加熱還流を行った後、反応溶液をアンモニア水10mlと水200mlを混合した水溶液中へ滴下した。析出した結晶をろ過し、酢酸エチルから再結晶を行い4−(4,5−ビス(4−ニトロフェニル)−1−フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)−2,6−ジ−t−ブチルフェノールを2.40g(40.6%)得た。
【0104】
得られた4−(4,5−ビス(4−ニトロフェニル)−1−フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)−2,6−ジ−t−ブチルフェノール2.40g、5%パラジウム/炭素触媒0.12gを酢酸エチル240ml中に加えた後、反応容器内の空気を水素ガスで置換し、室温で約4時間反応を行った。反応終了後、触媒をろ別し、ろ液を濃縮することで、4−(4,5−ビス(4−アミノフェニル)−1−フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)−2,6−ジ−t−ブチルフェノールを2.15g(100.0%)得た。
【0105】
得られた4−(4,5−ビス(4−アミノフェニル)−1−フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)−2,6−ジ−t−ブチルフェノール2.15gをジクロロメタン20ml中に加えた後、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル2.01gを滴下し、室温にて約4時間攪拌した。反応溶液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーを行い、化合物例1−6を2.86g(68.6%)得た。なお、構造の同定はH−NMRとマススペクトルを用いて行った。化合物例1−6の酸化状態の分光吸収スペクトルを図2に示す。
【0106】
H−NMR(600MHz、CDCl):δ0.55(t,4H)、1.40−1.41(m,4H)、1.49(s,18H)、3.17(t,4H)、3.55(s,18H)、7.14−7.21(m,4H)、7.37−7.64(m,11H)。
【0107】
化合物例1−24の合成
酢酸30ml中に、2,5−ジヒドロキシテレフタルアルデヒド0.83g、ベンジル2.10g、酢酸アンモニウム9.25gを加え、約5時間加熱還流を行った後、反応溶液をアンモニア水10mlと水200mlを混合した水溶液中へ滴下した。析出した結晶をろ過し、酢酸エチルで懸濁洗浄を行い、2,5−ビス(4,5−ジフェニル−1H−イミダゾール−2−イル)ベンゼン−1,4−ジオールを1.63g(59.6%)得た。
【0108】
得られた2,5−ビス(4,5−ジフェニル−1H−イミダゾール−2−イル)ベンゼン−1,4−ジオール1.63gをジクロロメタン30ml中に加えた後、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル1.48gを滴下し、室温にて約4時間攪拌した。反応溶液を濃縮し、酢酸エチルから再結晶を行い、化合物例1−24を1.65g(53.1%)得た。なお、構造の同定はH−NMRとマススペクトルを用いて行った。化合物例1−24の酸化状態の分光吸収スペクトルを図3に示す。
【0109】
H−NMR(600MHz、CDCl):δ0.55(t,4H)、1.19(t,18H)、1.40−1.41(m,4H)、3.17(t,4H)、3.78(q,12H)、7.14−7.21(m,4H)、7.37−7.64(m,6H)、7.69(s,2H)。
【0110】
化合物例1−27の合成
テトラヒドロフラン20ml中に、4−t−ブチルアニリン3.13g、トリエチルアミン2.42gを加え氷冷したところへ、クロログリオキシル酸エチル2.73gを約10分かけて滴下した後、室温まで昇温させ約1時間攪拌した。反応終了後、反応液に水50mlを加え酢酸エチルにて3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、エチル−2−(4−t−ブチルフェニルアミノ)−2−オキソアセテートを4.97g(99.7%)得た。
【0111】
トルエン100ml中に4−ビニルアニリン2.38gと28%ナトリウムメトキシド(メタノール溶液)3.82gを室温にて混合したところへ、得られたエチル−2−(4−t−ブチルフェニルアミノ)−2−オキソアセテート4.97gを加え、約8時間加熱還流を行った。反応液に水100mlを加え酢酸エチルにて3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、トルエンから再結晶を行い、N−(4−t−ブチルフェニル)−N−(4−ビニルフェニル)オキサルアミンを3.86g(60.0%)得た。
【0112】
トルエン60ml中に、得られたN−(4−t−ブチルフェニル)−N−(4−ビニルフェニル)オキサルアミンを3.86gと五塩化リン4.98gを加え、約1時間加熱還流を行った。反応液を約30mlまで減圧濃縮した後−20℃に冷却し、析出した結晶をろ過、n−ヘプタンより再結晶を行い、N−(4−t−ブチルフェニル)−N−(4−ビニルフェニル)オキサルイミドイルジクロリドを2.79g(65.0%)得た。
【0113】
アセトニトリル20ml中に、得られたN−(4−t−ブチルフェニル)−N−(4−ビニルフェニル)オキサルイミドイルジクロリド1.80g、ホルムアミジン酢酸塩0.52g、トリエチルアミン1.77gを加え、約4時間加熱還流を行った。反応液を室温まで冷却後、生成したトリエチルアミン塩酸塩をろ過で除去し、ろ液を濃縮後、N,N−ジメチルホルムアミドから再結晶を行い、2,6−ビス(4−t−ブチルアニリノ)−3,7−ビス(4−ビニルアニリノ)−1,4,5,8−テトラアザフルバレン0.85g(25.7%)を得た。
【0114】
ジクロロエタン10ml中に、得られた2,6−ビス(4−t−ブチルアニリノ)−3,7−ビス(4−ビニルアニリノ)−1,4,5,8−テトラアザフルバレン0.85g、HPtCl・6HOを0.1mg加え、約80℃まで昇温したところへ、トリエトキシシラン0.46gを滴下した。滴下終了後、約4日間約80℃で反応を行った後、反応液に水50mlを加え酢酸エチルにて3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、トルエンから再結晶を行い、化合物例1−27を0.64g(50.3%)得た。
【0115】
なお、構造の同定はH−NMRとマススペクトルを用いて行った。化合物例1−27の酸化状態の分光吸収スペクトルを図4に示す。
【0116】
H−NMR(600MHz、CDCl):δ0.91(t,4H)、1.19(t,18H)、1.35(s,18H)、3.78(q,12H)、3.83(t,4H)、7.01−7.40(m,16H)。
【0117】
化合物例1−46の合成
N,N−ジメチルスルホキシド50ml中に、4,4′−ビスフルオロベンジル6.15g、1−アリルピペラジン9.47g、炭酸カリウム10.35gを加え、約2時間加熱還流を行った後、反応液に水100mlを加え酢酸エチルにて3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、トルエンから再結晶を行い、4,4′−ビス(4−アリルピペラジン)ベンジルを10.32g(90.4%)得た。
【0118】
酢酸20ml中に、4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒド1.82g、4,4′−ビス(4−アリルピペラジン)ベンジル3.78g、酢酸アンモニウム9.25gを加え、約5時間加熱還流を行った後、反応溶液をアンモニア水10mlと水200mlを混合した水溶液中へ滴下した。析出した結晶をろ過し、酢酸エチルから再結晶を行い4−(4,5−ビス(4−(4−アリルピペラジン−1−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−2−イル)−2,6−ジメトキシフェノールを4.23g(68.2%)得た。
【0119】
ジクロロエタン50ml中に、4−(4,5−ビス(4−(4−アリルピペラジン−1−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−2−イル)−2,6−ジメトキシフェノール4.23g、HPtCl・6HOを15mg加え、約80℃まで昇温したところへ、ジメチルクロロシラン1.42gを滴下した。滴下終了後、約4日間約80℃で反応を行った後、反応液に水200mlを加え酢酸エチルにて3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、トルエンから再結晶を行い、化合物例1−46を2.63g(47.7%)得た。
【0120】
なお、構造の同定はH−NMRとマススペクトルを用いて行った。化合物例1−46の酸化状態の分光吸収スペクトルを図5に示す。
【0121】
H−NMR(600MHz、CDCl):δ0.42(s,12H)、1.02(t,4H)、1.4(m,4H)、2.46(t,4H)、3.44(s,16H)、3.83(s,6H)、6.75−7.61(m,10H)。
【実施例】
【0122】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0123】
《電極の作製》
(電極1の作製)表示電極+表示層
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、ピッチ145μm、電極幅130μmのITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)膜を公知の方法に従って形成し、透明電極を得た。透明電極の上に厚み5μmの二酸化チタン(平均粒子径17nmの粒子が4〜10個程度ネッキング済み)膜を形成し、電極1を作製した。
【0124】
(電極2の作製)
電極1に下記吸着液1を二酸化チタン上に約100mg/cm乗せ、室温で約1時間放置した後、エタノール及び水で洗浄し、続いて100℃で約1時間加熱し、電極2を作製した。
【0125】
(電極3〜6の作製)
吸着液1を吸着液2〜5にそれぞれ変更した以外は同様にして、電極3〜6を作製した。
【0126】
《吸着液の調製》
(吸着液1の調製)
酢酸0.02g、純水1g、メタノール1gを攪拌しているところへ、化合物例1−1、0.005gをメタノール0.15gに溶解させた溶液を滴下し、室温で約1時間攪拌し、吸着液1を調製した。
【0127】
(吸着液2〜5の調製)
化合物例1−1を化合物例1−6、1−24、1−27、1−46にそれぞれ変更した以外は同様にして、吸着液2〜5を調製した。
【0128】
(吸着液6の調製)比較例
トルエン2g中に、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン0.1g、トリエチルアミン0.1gを室温にて加え、吸着液6を調製した。
【0129】
(吸着液7の調製)比較例
トルエン2g中に、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.1g、トリエチルアミン0.1gを室温にて加え、吸着液7を調製した。
【0130】
(電極7の作製)
比較例化合物Aを3mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解させた液を、ピエゾ方式のヘッドを有するインクジェット装置にて、120dpiで電極1上に付与し、電極7を作製した。なお、dpiとは2.54cm当たりのドット数を表す。
【0131】
【化18】

【0132】
(電極8の作製)
電極2の上に、比較例化合物Aを3mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解させた液を、ピエゾ方式のヘッドを有するインクジェット装置にて120dpiで電極1上に付与し、電極8を作製した。
【0133】
(電極9の作製)
電極1を吸着液6に浸漬させ24時間置いた後、トルエンで洗浄した。更にこの電極を、比較例化合物Bの5質量%水溶液に80℃で100時間浸漬させ、エタノール及び水で洗浄し、電極9を作製した。
【0134】
【化19】

【0135】
(電極10の作製)
電極1を吸着液7に浸漬させ24時間置いた後、トルエンで洗浄した。更にこの電極を、比較例化合物Aを5質量%、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を3質量%含有するN,N−ジメチルホルムアミド溶液に、室温で100時間浸漬させ、エタノール、及び、水で洗浄し、電極10を作製した。
【0136】
(電極11の作製)対向電極
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知の方法を用いて、電極厚み0.1μm、ピッチ145μm、電極間隔130μmのニッケル電極を形成し、得られた電極を更に置換金メッキ浴に浸漬し、電極表面から深さ0.05μmが金で置換された金−ニッケル電極(電極11)を得た。
【0137】
《電解質液の調製》
(電解質液1の調製)
γ−ブチロラクトン2.5g中に、テトラフルオロホウ酸スピロ−(1,1′)−ビピロリジニウム0.025gとカルボキシTEMPO(4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルフリーラジカル)0.05gを溶解させて、電解質液1を得た。
【0138】
《表示素子の作製》
(表示素子1の作製)電極2+電極11+電解質液1
周辺部を、平均粒径が40μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした電極11の上に、ポリビニルアルコール(平均重合度3500、けん化度87%)2質量%を含むイソプロパノール溶液中に、石原産業製二酸化チタンCR−90を20質量%添加し、超音波分散機で分散させた混和液を乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布し、その後15℃で30分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、45℃の雰囲気中で1時間乾燥させた。
【0139】
得られた二酸化チタン層上に平均粒径が20μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを散布した後に、電極11と電極2を貼り合わせ、加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解質液1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子1を作製した。
【0140】
(表示素子2〜9の作製)
上記表示素子1の作製において、電極2を電極3〜10にそれぞれ変更した以外は同様にして、表示素子2〜9を得た。
【0141】
《表示素子の評価》
〔繰り返し駆動させたときの反射率の安定性、及びメモリー性の評価〕
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、表示素子1〜6、8については、−1.5Vの電圧を1.5秒間印加した後に、+1.5Vの電圧を1秒間印加して着色表示させ、一方、表示素子7については、+1.5Vの電圧を1.5秒間印加した後に、−1.5Vの電圧を1秒間印加して着色表示させたときの可視光領域の極大吸収波長での反射率をコニカミノルタセンシング製の分光測色計CM−3700dで測定した。
【0142】
同様な駆動条件で合計10回駆動させ、得られた反射率の平均値をRave3とした。更に1万回繰り返し駆動させた後に同様な方法でRave4を求めた。Rcolor2=|Rave3−Rave4|とし、Rcolor2を繰り返し駆動させたときの反射率の安定性の指標とした。
【0143】
ここでは、Rcolor2の値が小さいほど、繰り返し駆動させたときの反射率の安定性に優れることになる。また、着色表示後に電圧を遮断し、10分後も着色状態を保っているか目視評価した。
【0144】
○:着色状態を保っている
△:着色しているが濃度の低下が観察される
×:着色状態を保っていない。
【0145】
【表1】

【0146】
表1の結果より明らかなように、本発明のエレクトロクロミック化合物は、比較例に対し、メモリー性の向上、及びエレクトロクロミック化合物の固定化状態が良好なため、繰り返し駆動させたときの反射率の安定性が改善されているのが分かる。また、非常に簡便に表示素子を作製することが可能である。
【符号の説明】
【0147】
1 表示電極
2 表示層
3 電解質
4 白色散乱層
5 対向電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とするエレクトロクロミック化合物。
【化1】

(一般式(1)中、Rはアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表し、R、Rは各々水素原子または置換基を表す。XはN−R、酸素原子または硫黄原子を表し、Rは水素原子または置換基を表す。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは下記一般式(2)を部分構造として有する。)
【化2】

(一般式(2)中、Yはハロゲン原子またはORを表し、Rはアルキル基またはアリール基を表す。R′はアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表し、nは1〜3の整数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(2)において、YがORであることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック化合物。
【請求項3】
前記一般式(2)において、R′がアルキル基であることを特徴とする請求項1または2に記載のエレクトロクロミック化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)において、XがN−Rであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック化合物が電極上に化学結合していることを特徴とする電極。
【請求項6】
前記電極が透明電極であることを特徴とする請求項5に記載の電極。
【請求項7】
請求項5または6に記載の電極を用いることを特徴とする表示素子。
【請求項8】
更に白色散乱物と電解質とを用いることを特徴とする請求項7に記載の表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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