エレクトロブロッティング装置、システム及びキット、並びにそれらの使用方法
本発明はドライ式ブロッティングゲル用のドライ式エレクトロブロッティングシステムを提供する。該システムは分析ゲルとブロッティング膜を含むエレクトロブロッティング転写スタック、陽極、陽極と転写スタックとの間で陽極と並設される陽極ゲルマトリックス基材、陰極、及び陰極と転写スタックとの間で陰極と並設される陰極ゲルマトリックス基材を含んでなり、前記陽極ゲルマトリックスと前記陰極ゲルマトリックスは各々電気泳動的転写用のイオン供給源を含む。前記ドライ式エレクトロブロッティングシステムは、エレクトロブロッティングの直前(例えば転写スタックを設置するとき)に、システムにいかなる緩衝液も添加して使用しない。陽極、陰極又はその双方は電源と分離でき、使い捨て可能な電極回路の部品として設置でき、それはまた電気泳動的転写用のイオンを含むゲルマトリックス基材を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は広義にはゲルのブロッティングに関するものであり、具体的にはドライ式エレクトロブロッティング組成物及び方法に関する。
【0002】
関連出願
この特許出願は、米国仮特許出願第60/655,420号(2005年2月24日出願)の「Disposable Dry Electro−blotting Electrodes,Methods for their Use and Dry Blotting」、及び米国仮特許出願第(未通知)(2006年2月17日出願)の「Dry Electro−blotting Devices, Systems,and Kits,and Methods for their Use」(発明者:Ilana Margalit、Uri Yogev、SeIa Itay、Yuri Katz、Adam Sartiel及びTim Updyke)の優先権を主張する。これらの特許出願の全ての記載及び図面を含む全開示内容は、本願明細書に参照により援用される。
【背景技術】
【0003】
背景
ゲル電気泳動を用いた分子の分離は公知技術である。多様な分子、特に蛋白質(ペプチド)、オリゴヌクレオチド、DNA及びリボゾームリボ核酸などを、分離ゲルの基材中で、特にそれらの電荷/質量比、サイズ特性及びその他の性能に基づいて電気泳動的に分離することができる。周知のように、等電点電気泳動の手法を分子の分離にも使用できる。
【0004】
電気泳動的に分離された分子又は分解した構成要素を、分離ゲルから他のマトリクス又は支持体の上に転写し、追加的な任意の処理、又は化学的反応、又は免疫学的同定、又は他の操作をその分離された分子に対して行うことがしばしば必要とされ、又は望まれる。ゲルから他のマトリクス又は支持体上に、かかる分離又は隔離された分子種を転写するための公知技術の方法として、エレクトロブロッティングが挙げられる。
【0005】
”Protein Blotting:A review”(B.T.Kurien and R.H.Scofield published in J.Immunological methods,Vol.274,pp.1−15(2003))(非特許文献1)という題目の総説(全開示内容が本明細書に援用される)において、特に湿式及びセミドライ式のエレクトロブロッティング法が記載されている。
【0006】
特に米国特許第5,482,613号(特許文献1)、5,445,723号(特許文献2)、5,356,772号(特許文献3)、4,889,606号(特許文献4)、4,840,714号(特許文献5)、5,013,420号(特許文献6)及び米国特許出願公開第2002/157953号(特許文献7)では、湿式及びセミドライ式電気泳動による転写に用いる様々なタイプの装置及び方法を開示しており、上記全ての米国特許及び特許出願公開はその全開示内容が本明細書に参照により援用される。
【0007】
エレクトロブロッティングにおいて、分子の電気泳動分離の後、分離された分子を含む電気泳動ゲルは多孔質材料(例えばニトロセルロース系のブロッティング膜、PVDF系のブロッティング膜、活性化紙膜、活性化ナイロン製ブロッティング膜等)の比較的微細なマトリクスと接触した状態で設置され、挟まれたゲル及びブロッティング膜に、通常ブロッティング膜の表面と直角の方向に電流を印加する。幾つか又は大部分の荷電分子がそれによりゲルからブロッティング膜へ電気泳動的に転写できる。
【0008】
2つの適切な電極の間にゲル及びブロッティング膜を置き、両電極間に適切な電圧差を生じさせることにより、ゲルとブロッティング膜の組み合わせに対して電流を印加することができる。かかる電極の1つは陰極として機能し、逆に他の電極は陽極として機能する。
【0009】
典型的には、電極とゲルとブロッティング膜との電気的接続は、導電性緩衝溶液を電極とゲルとの間、及び/又は電極とブロッティング膜との間に存在させることによって形成される。これらの緩衝溶液は、エレクトロブロッティング用のイオン供給源として機能する。この方法は湿式のブロッティングとして公知である。湿式のブロッティング法の不利な点は、比較的扱いにくい装置や緩衝液の調製取り扱いが必要となるため、時間がかかることである。
【0010】
あるいは、乾燥した濾紙又は他の適切なタイプの乾燥した多孔質材料を1つ以上ブロッティング膜及びゲルと接触させ、その濾紙又は他の乾燥した多孔質材料に緩衝溶液を含ませ、転写に必要なイオン貯蔵部として機能させる。電極(陰極及び陽極)は緩衝液を含ませた1つ以上の濾紙又は他の多孔質材料と接触させ、エレクトロブロッティングを実施する。
【0011】
公知技術のセミドライ式エレクトロブロッティング法が湿式のエレクトロブロッティング方法の課題の幾つかを解決するものの、それらにはまだ、濾紙を濡らすための緩衝溶液の調製や取扱いが必要となることや、ゲル及びブロッティング膜と共に濾紙を取り扱い、配置する必要があるなどの不利な点が存在する。したがってこれらの方法は未だに不便であり、時間がかかるものである。更に、セミドライ式エレクトロブロッティング法では、緩衝溶液を含ませた濾紙中の限られたイオン量により、使用できる電流量が制限され、その結果比較的長いエレクトロブロッティング時間を要する。市販の典型的なセミドライ式ブロッティング装置では、1cm2当たり2〜6mA(2〜6mA/cm2)の範囲の電流密度に限定される。
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,482,613号
【特許文献2】米国特許第5,445,723号
【特許文献3】米国特許第5,356,772号
【特許文献4】米国特許第4,889,606号
【特許文献5】米国特許第4,840,714号
【特許文献6】米国特許第5,013,420号
【特許文献7】米国特許出願公開第2002/157953
【非特許文献1】”Protein Blotting:A review”(B.T.Kurien and R.H.Scofield published in J.Immunological methods,Vol.274,pp.1−15(2003))
【発明の開示】
【0013】
発明の概要
本発明は一つの側面において、電気泳動的転写に用いるイオンの貯蔵部を、エレクトロブロッティングシステムの陽極と分離ゲル/ブロッティング膜の転写スタックの一面との間に、並びに、エレクトロブロッティングシステムの陰極と転写スタックの他の面との間に位置するゲルマトリックスに存在させることにより、システム中の電極に隣接し、接触して配置されるゲルマトリックス基材中に存在する緩衝液以外の緩衝液なしで、エレクトロブロッティングを実施できるという発見に基づく。このドライ式ブロッティングシステムを用いることで、従来のエレクトロブロッティングよりも蛋白質、核酸及び他の生体分子を非常に能率的かつ急速に、分離ゲルからブロッティング膜へ転写し、また該エレクトロブロッティング法を実施するユーザーによる緩衝液の取り扱いの必要がない。例えば、本明細書に係るエレクトロブロッティングシステムを用いれば、エレクトロブロッティング転写をわずか5又は10分で実施できる。更に、本発明の具体的な態様における、エレクトロブロッティングシステムに設置される電極では、エレクトロブロッティングの際、気泡の生成が少ない。
【0014】
陽極及び/又は陰極ゲルマトリックスのイオン貯蔵部は、ドライ式ブロッティングシステム用に予め調製された、使い捨て可能な形態でユーザーに提供できる。予め調製された、使い捨て可能な陽極及び/又は陰極ゲルマトリックスのイオン貯蔵部を、封入パッケージ中に封入してもよい。更に、複数の陽極及び/又は陰極ゲルマトリックスのイオン貯蔵部を一緒に包装に入れることができる。
【0015】
本発明の他の態様は、ドライ式エレクトロブロッティングを実施するための電極回路に関するものであって、該電極回路はイオン供給源を含むゲルマトリックス基材、及びゲルマトリックス基材と連結した導電性電極を含む。具体的な実施態様では、該電極はゲルマトリックス基材と連結される。具体的な実施態様では、該導電性電極はゲルマトリックス基材に少なくとも部分的に埋め込まれる。具体的な実施態様では、該ゲルマトリックス基材は電気泳動的転写の前と間にプラスチックトレイ中で導電性電極に並設される。該電極回路を密封包装中に封入してもよい。
【0016】
本明細書に係るドライ式エレクトロブロッティングシステムで用いる電極及び電極回路は、例えば、非金属導電性材料、非金属導電性材料を含んでなるメッシュ、金属箔、金属メッシュ、導電性金属又は非金属を被覆した非導電性ポリマー、及び/又はそれらの組み合わせを含む層であってよい。導電性材料を塗布した非導電性材料の電極をシート、メッシュ又はその他の形状に加工してもよい。具体的な実施態様では、電極回路の電極は電気化学的にイオン化可能な金属(例えば鉛、銅、銀又はそれらの組み合わせ)を含有する。具体的な実施態様では、電極回路の電極はアルミニウム又はパラジウムを含有する。ドライ式エレクトロブロッティングに用いるゲルマトリックスイオン貯蔵部に連結する電極を含む電極回路は、予め調製された、使い捨て可能な形でユーザーに提供でき、それによりユーザーによる電極回路の使用が簡便になり、また有効なビジネスモデルともなりうる。電極はゲルマトリックス基材に並設され、トレイ又はホルダー中に設けてもよい。電極回路を封入パッケージに封入してもよい。本発明はまた、電極回路に付加的な機能を付与した実施態様に関する。例えば、色素化合物、非特異的結合をブロッキングする分子、還元剤又はプロテアーゼを電極回路に含めてもよく、それにより分離ゲル中で分離した分子の解析が容易になる。
【0017】
更なる態様では、本発明はドライ式エレクトロブロッティングシステムを提供し、該システムは分析ゲルとブロッティング膜を含むエレクトロブロッティング転写スタック、陽極、陽極と接触して陽極と転写スタックの間に位置する陽極ゲル基材、陰極、及び陰極と接触し陰極と転写スタックの間に位置する陰極ゲルマトリックス基材を含んでなり、陽極ゲルマトリックス及び陰極ゲルマトリックスは各々電気泳動的転写に用いるイオン源を含む。ドライ式エレクトロブロッティングシステムは、いかなる緩衝液をエレクトロブロッティングの直前(転写スタックの設置の際)にシステムに添加する必要もない。幾つかの好ましい実施態様では、陽極ゲルマトリックスと陽極が転写スタックの膜側に存在し、一方陰極ゲルマトリックスと陰極が転写スタックの分析ゲル側に存在する態様で、システムが構築される。幾つかの実施態様では、陽極、陰極又はその両方とも電源と一体化されて連結してもよい。幾つかの実施態様では、陽極、陰極又はその両方とも電源と別であってよい。
【0018】
本発明はまた、乾燥ブロッティングゲルに用いる装置に関するものであって、該装置は、電気泳動的転写の際に、転写スタックを保持できる電源、陽極、陽極と転写スタックとの間で陽極に並設される陽極ゲルマトリックス基材、陰極、及び陰極と転写スタックとの間で陰極に並設される陰極ゲルマトリックス基材を含む。エレクトロブロッティングの間、ドライ式エレクトロブロッティング装置は、電気泳動的転写に用いる緩衝液を保持する貯蔵部を含まず、保持せず、又は結合しない。幾つかの実施態様では、装置に用いる陽極及び陽極ゲルマトリックスは、装置の電気接点上に、又はそれと反対側に、又はそれと連結して配置できる陽極電極回路として可逆的に設置できる。幾つかの実施態様では、電極の一方又は両方が装置と一体化されて連結している。
【0019】
装置の電源には、ON/OFFスイッチ、電源との接続に用いるコード、及び好ましくはAC/DCアダプタが含まれる。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティング装置の電源には、電気泳動的転写における電圧、電流、経過時間又は残り時間のうちの1つ以上を示す表示パネルが含まれる。電源には任意にエレクトロブロッティング条件のメニューなどを含むソフトウェアを含めてもよい。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティング装置には1つ以上の汎用シリアルバス(USB)ポートが含まれる。
【0020】
別の態様においては、本発明はドライ式エレクトロブロッティング法に関するものであって、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの陽極及び陰極間で以下の順序で電流を印加することを含む。すなわち陽極、陽極ゲルマトリックス基材、ブロッティング膜、1つ以上の生体分子を含む分析ゲル、陰極ゲルマトリックス基材、及び陰極の順であり、1つ以上の生体分子が分析ゲルからブロッティング膜に転写される。
【0021】
該方法の具体的な例示的態様では、陽極電極は銅製である。具体的な例示的態様では、陽極と陰極の電極は銅製である。幾つかの態様では、電流の印加に用いる電流密度は、前記分離ゲルの第1面の1cm2当たり15mA以上であってよい。
【0022】
該方法は更に、陽極と陰極電極の間で電流を印加する前に、分離ゲル、ブロッティング膜及び陰極ゲルマトリックス基材との間に生じる気泡のトラッピングの減少又は回避のために、ゲルセパレータ部材を有する気泡除去装置を、分析ゲル、陽極、陽極ゲルマトリックス基材を含む陽極電極回路、ブロッティング膜、並びに陰極と陰極ゲルマトリックス基材を含む陰極電極回路の間に通す態様で設置することを含めてもよい。
【0023】
更に他の態様は、本明細書に係るドライ式エレクトロブロッティング用のキットである。一実施態様では、キットには電気泳動に用いるイオン源を含む1つ以上のゲルマトリックス基材及び1つ以上のブロッティング膜が含まれる。他の実施態様では、キットには1つ以上の陽極ゲルマトリックス基材及び1つ以上の陰極ゲルマトリックス基材が含まれる。他の実施態様では、キットには1つ以上の色素、界面活性剤、修飾酵素若しくは試薬、又は還元化合物を含む1つ以上のゲルマトリックス基材が含まれる。陽極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材をキット中の封入パッケージ内に梱包してもよい。エレクトロブロッティングゲルマトリックスキットには更に、1つ以上のブロッティング膜、1つ以上濾紙、1つ以上のスポンジ及び/又は1つ以上の電極を適宜含めてもよい。
【0024】
別の態様では、該キットには1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路及び/又は1つ以上の使い捨て可能な陰極電極回路が含まれる。幾つかの実施態様では、1つ以上の陽極電極回路にはイオン供給源を含むゲル基材及びゲルマトリックス基材に並設される電極を含めてもよい。幾つかの実施態様では、1つ以上の陰極電極回路にはイオン供給源を含むゲル基材及びゲルマトリックスに並設される電極を含めてもよい。陽極電極回路、陰極電極回路又はその両方をプラスチックトレイなどのトレイに設置してもよい。陰極電極回路をプラスチックトレイなどのトレイに設置してもよい。キットに設置される陽極電極回路には、ゲルマトリックス基材の第2面に並設される1つ以上のブロッティング膜を含めてもよい。
【0025】
陽極及び/又は陰極電極回路は、一緒に又は別個に封入パッケージ中に梱包してもよい。更に、複数の陽極及び/又は陰極電極回路を一緒に梱包してもよい。
【0026】
幾つかの態様では、エレクトロブロッティングキットには1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路及び1つ以上の使い捨て可能な陰極電極回路が含まれる。幾つかの態様では、エレクトロブロッティングキットには1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路及び1つ以上の陰極ゲルマトリックス基材が含まれる。該キットには1つ以上のブロッティング膜、濾紙又はスポンジを適宜含めてもよい。
【0027】
発明の詳細な説明
特に記載のない限り、本明細書で用いる全ての専門用語及び科学用語は、通常本発明の技術分野に属する当業者に理解されるものと同じ語義を有する。通常、本明細書において以下用いる命名法及び製造若しくは実験手順は公知であり、従来技術において共通に使用される。これらの手順では、当該技術で一般の、及び様々な公知文献に記載されている従来法を用いる。例えば「上」や「下」、「上部」や「底部」又は「上部の」や「底部の」などの方向に関する用語は、装置の使用の際の部品の方向を指す。用語の単数形を用いる場合、本発明者はその用語の複数形を意図する。参照により援用する引用文献との間で、用語及び定義に関する不一致が生じた場合は、本明細書で用いる用語を本明細書における定義とする。本明細書全体にわたって、以下の用語は、特に明記しない限り以下の意味を有するものと理解される。
【0028】
本明細書全体において、以下のとおり用語を用いる。「ドライ式エレクトロブロッティング電極回路」とは、電極及び電極と接触する非液体イオン源を含む電極回路である。該ドライ式エレクトロブロッティング電極回路によって、使用前に緩衝液をエレクトロブロッティングシステムに添加する必要なく、エレクトロブロッティングを実施できる。むしろ、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの電極回路ではイオン源を電気泳動的転写に用いる。「非液体」のイオン源は固体又はゲルであってよい。ドライ式エレクトロブロッティング電極回路のイオン源は、好ましくはゲルマトリックス基材に添加する。ドライ式エレクトロブロッティング電極回路には、ブロッティング膜など、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの他の構成要素を適宜含めてもよい。
【0029】
「ドライ式エレクトロブロッティング」は、電気泳動に用いる固体状又は半固体状のイオン源を使用して実行されるエレクトロブロッティングである。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティングは、エレクトロブロッティングの前に転写スタック(電気泳動ゲルの反対に配置した膜、並びに並設されたゲル及び膜を囲むいかなる濾紙、スポンジ、メッシュなど)を組み合わせるときに、イオン源をエレクトロブロッティングシステムに提供する緩衝液又は溶液を添加せずに実行される。幾つかの実施態様では、1つ以上のエレクトロブロッティングシステムの構成要素(例えば濾紙又はブロッティング膜)をエレクトロブロッティングの前に浸漬させてもよいが、該浸漬は電気泳動的転写を可能にするイオンの提供には必要でない。
【0030】
「使い捨て可能な」電極とは、10回未満での使用を意図する電極である。「使い捨て可能な」電極回路とは、10回未満での使用を意図する電極回路である。電極回路がブロッティング膜を含む実施態様では、典型的には電極回路のブロッティング膜は一度だけ用いる。具体的な例示的態様では、全ての使い捨て可能な電極回路は一度だけ用いることを意図するものである。
【0031】
本明細書の「電気化学的にイオン化可能な金属」という用語は、標準的な電気泳動条件における電極として用いるときに、印加電流に応答して電離する金属を指す。「標準的な電気泳動条件」とは約0℃〜約100℃の条件、好ましくは約0℃〜約80℃、より好ましくは約2℃〜約50℃を指し、そのとき電極は導電性媒体(例えば溶液又はゲル)と接触している。電気泳動(又は電気泳動的転写)の間、電気化学的にイオン化可能な金属電極のイオン化が、電極での水電解の代替として生じる。電気化学的にイオン化可能な金属の非限定的な例としては、銅、銀及び鉛が挙げられる。
【0032】
「分析ゲル」とは、検出対象である1つ以上の生体分子を含むゲルを指す。該生体分子の非限定的な実施例として、多糖類、核酸又は蛋白質が挙げられ、それらは精製品でも、部分精製品でも、又は混合物又はサンプルの一部であってもよい。分析ゲルは、生体分子又は生体分子を含むサンプル若しくは混合物を更なる分離なしでアプライ、電気泳動又は吸収させたゲルであってもよく、又は、生体分子をサイズ、電荷又は他の性質に基づいて分離した電気泳動ゲルなどの分離ゲルであってもよい。
【0033】
「エレクトロブロッティング転写スタック」又は単に「転写スタック」とは、分析ゲル及びブロッティング膜を含む構造であって、該ブロッティング膜が、ブロッティング膜の2面のうちの1面がゲルの2面のうちの1面と接触する態様でゲルに並設されるものを指す。例示的実施態様では、転写スタックの分析ゲルは電気泳動ゲルの一種であり、すなわち1以上の生体分子が電気泳動にかけられるゲルを指す。ブロッティング膜は典型的には、ニトロセルロース若しくは他のセルロース誘導体、ナイロン若しくはポリフッ化ビニリデン(PDVF)、又はこれらのいずれかの誘導体であって、生体分子を可逆的、又は好ましくは不可逆的に膜と結合する態様で転写できるものを指す。転写スタックには、他の構成要素(例えば膜のゲルと反対の表面又はゲルの膜と反対の表面に配置する濾紙)を適宜含めてもよい。
【0034】
本発明において、「並設された」という用語は、言及された2つの構造が互いに並んで接触する態様で配置されていることを指す。本発明の文脈において、並設された構造とは好ましくは接触して、一つの構造の主要な側面又は表面が、他の構造の主要な側面又は表面と隣接し、連続的に接触する態様で配置されている態様を指す。並設された構造においては、互いに可逆的又は不可逆的に、接着剤、化学結合又は機械的なファスナーによって付着させてもよい。幾つかの態様では、1つの並設された構造を、他の構造に少なくとも部分的に埋め込まれる態様で該他方と結合させてもよい。幾つかの態様では、並設された構造は、重力、ホルダーの壁又はファスナーによって保持される同じホルダーに設置することによって可逆的に並設させることができる。幾つかの態様では、並設された構造は静電気力により共に保持することで可逆的に並設でき、それにより膜やゲル基材などの構造体を技術者が容易に分解できる。
【0035】
本発明において「陽極室」とは、エレクトロブロッティング用のイオン供給源を含んでいて、システム、機器又は装置の陽極と接触する、エレクトロブロッティング装置、機器又はシステム内の領域を指す。例えば陽極室は、陽極を含むか又はそれと接触し、イオンを含む溶液を保持する緩衝液タンク、転写緩衝液を浸漬させた濾紙又は陽極ゲルマトリックスであってもよい。
【0036】
本発明において「陰極室」とは、エレクトロブロッティング用のイオン供給源を含んでいて、システム、機器又は装置の陰極と接触する、エレクトロブロッティング装置、機器又はシステム内の領域を指す。例えば陰極室は、陰極を含むか又はそれと接触し、イオンを含む溶液を保持する緩衝液タンク、転写緩衝液を浸漬させた濾紙又は陽極ゲルマトリックスであってもよい。
【0037】
エレクトロブロッティングシステムの一つの区画又は構成要素において「選択的に供給される」、「選択的に存在する」又は「選択的に使用される」化合物とは、その区画において供給され、存在し若しくは使用される一方で、システム中の他の区画又は構成要素には供給されず、存在せず若しくは使用されない化合物のことを指すか、又は、該化合物が選択的に供給される、存在する若しくは使用される区画若しくは構成要素中の該化合物量と比較して、システム中の他の区画又は構成要素に存在する量が顕著に少ない化合物のことを指す。幾つかの例示的実施形態において、エレクトロブロッティングシステムの陽極室に選択的に供給されている化合物は、システムの陰極室には存在しないか又は顕著に少ない量で存在する。幾つかの例示的実施態様では、エレクトロブロッティングシステムの陰極室に選択的に供給される化合物は、システムの陽極室に存在しないか又は顕著に少ない量で存在する。
【0038】
本発明において、「顕著に少ない濃度」又は「顕著に少ない量」で存在、使用又は供給される化合物とは、エレクトロブロッティングシステム又は装置の陽極室におけるアニオン性化合物の濃度と比較し、陰極室におけるアニオン性化合物の濃度が×0.5(50%)以下、好ましくは×0.2(20%)以下、より好ましくは×0.1(10%)以下であることを指す。
【0039】
ドライ式エレクトロブロッティングシステム
本発明はエレクトロブロッティング転写スタック、陽極、陽極とエレクトロブロッティング転写スタックの間に位置する陽極ゲルマトリックス基材、陰極、及び陰極の間に位置する陰極ゲルマトリックス基材を含んでなるドライ式エレクトロブロッティングシステムであって、陽極ゲルマトリックス及び陰極ゲルマトリックスは各々電気泳動的転写に用いるイオン源を含む。転写スタックには1つ以上の生体分子(例えば多糖類、蛋白質、ペプチド又は核酸)を含む1つ以上の分析ゲルと、分析ゲルに並設される1つ以上のブロッティング膜とが含まれる。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティングシステムは、エレクトロブロッティングの前(転写スタックが設置される際)にシステムへのいかなる緩衝液の添加も行われない。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの1つ以上の構成要素(例えばブロッティング膜、又は分析ゲルとゲルマトリックス基材の間に配置されるか、又はブロッティング膜とゲルマトリックス基材の間に配置される1枚の濾紙)を、エレクトロブロッティングの前に浸漬させてもよい。しかしながら、本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムでは、ブロッティング膜又は濾紙などのシステム構成要素を水、界面活性剤、緩衝液又は溶液に浸漬することは、電気泳動的転写の実施に必要となるイオンの供給には必須ではない。幾つかの実施態様では、ゲルをエレクトロブロッティング前に緩衝液又は溶液で平衡化させてもよい。溶液又は緩衝液中でゲルを平衡させることは、ドライ式エレクトロブロッティングシステムにおける電気泳動的転写の実施に必要となるイオンの供給には必須ではない。
【0040】
該システムは、電流が陰極と陽極の間で印加されるとき、生体分子が分析ゲルからブロッティング膜へ転写される態様で設置される。すなわち組み合わされたシステムでは陰極から陽極までの電気的導通が提供され、そこでは電流が陽極から陰極ゲルマトリックス基材、1つ以上の分析ゲル、1つ以上のブロッティング膜及び陽極ゲルマトリックス基材を通って陰極に達する。すなわち、好ましい実施態様では、陰極ゲルマトリックス基材の一面が陰極と接触し、陰極ゲルマトリックス基材の他の面が転写スタックの分析ゲルと直接的又は間接的に電気的接触を形成する。陽極ゲルマトリックス基材の一面が陽極と接触し、陽極ゲルマトリックス基材の他の面が転写スタックのブロッティング膜と直接的又は間接的に電気的接触を形成する。
【0041】
この構成のバリエーションにおいて、本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムには分析ゲルの陰極表面に並設する態様でブロッティング膜を設置してもよい。かかる構成においては、適宜付加的なブロッティング膜を分析ゲルの陽極表面に並設させてもよい。例えば、分析ゲル中の1つ以上の目的の生体分子が電気泳動的転写の条件下で正電荷を有すると考えられるときに、この構成を使用できる。一実施態様では、該分析ゲルは、界面活性剤又は陰電荷を与える試薬がない条件で蛋白質が電気泳動に供するための未変性ゲルであってよく、その場合には、分析ゲル上の蛋白質の1以上が全体として陽電荷を有し、また転写の間に陰極の方向へ移動させることができる。同時に同じ分析ゲル上の負電荷の生体分子を、分析ゲルの陽極側に設けられた膜に適宜ブロッティングすることができる。
【0042】
分析ゲルは、いかなる不定形又は定形の形状(例えば長円形又は円形)であってもよいが、典型的には矩形である。分析ゲルは、適用可能ないかなる長さ及び幅であってもよく、分析ゲルの長さ又は幅の寸法より顕著に小さい厚みを有する。例えば、分析ゲルの厚みは、分析ゲルの長さ又は幅の20%以下であってよく、好ましくは該長さ又は幅の10%以下、又はより好ましくは該長さ又は幅の5%以下、又はより好ましくは該長さ又は幅の2%以下である。ドライ式エレクトロブロッティングシステムで用いる分析ゲルはすなわち、ゲルの長さ及び幅の寸法によって定義される、互いに反対側に位置する2つの面を有する。分析ゲルはいかなる組成であってもよく、非限定的な例としては寒天ゲル、澱粉ゲル、アガロースゲル、アクリルアミドゲル、1つ以上の異なるポリマーを含んでなる複合ゲルなどが挙げられる。ドライ式エレクトロブロッティングシステムで使用できる分析ゲルの例示的な非限定的な例としては、ユーザーによって調製したゲルや、又は限定されないがトリス−グリシンゲル、NuPAGE(登録商標)ビストリスゲル(Invitrogen社、カールズバッド、CA)、NuPAGE(登録商標)トリス酢酸ゲル(Invitrogen社、カールズバッド、CA)、E−PAGE(商標)ゲル(Invitrogen社、カールズバッド、CA)、E−ゲル(登録商標)(Invitrogen社、カールズバッド、CA)などの調製済のゲルが挙げられる。
【0043】
ドライ式エレクトロブロッティングシステムの分析ゲルの第1面はブロッティング膜の第1面に並設され、分析ゲルの第2の表面は電極回路と直接的又は間接的に接触する。幾つかの実施態様では、分析ゲルの第2表面は陰極電極回路と接触する。ゲルと陰極電極回路との接触が間接的である(例えば浸漬された濾紙が陰極ゲルマトリックスと分析ゲルの間に存在しうる)場合、該間接的な接触により分析ゲルと陰極ゲルマトリックスとの間の電気的導通が提供される。分析ゲルの第1面に対して配置されるブロッティング膜の第2面が陽極ゲルマトリックスと直接的又は間接的に接触する態様で、スタックが配置される。ブロッティング膜と陽極電極回路との接触が間接的である(例えば浸漬された濾紙が陽極ゲルマトリックスとブロッティング膜の間に存在しうる)場合、該間接的な接触によりブロッティング膜と陽極ゲルマトリックスとの間の電気的導通が提供される。
【0044】
ゲルスタックとゲルマトリックス基材の間に位置する浸漬された濾紙は、例えば水、緩衝液又は色素若しくは界面活性剤を含む溶液に浸漬したものであってよい。
【0045】
ドライ式エレクトロブロッティングシステムの転写スタックには、1つ以上の分析ゲルを含めてもよい。例えば、2以上の分析ゲルを転写スタック内で並べて配置してもよい。1つ以上の分析ゲルがドライ式エレクトロブロッティングシステムの転写スタックに設置されるケースにおいて、1つ以上のブロッティング膜を適宜使用できる。例えば、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの各分析ゲルに個々のブロッティング膜を並設できる。変法として、単一のブロッティング膜を1つ以上の分析ゲルに並設させてもよく、それにより2以上の分析ゲル中の生体分子が同じブロッティング膜へ転写される。
【0046】
他の好ましい実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの分析ゲル及びブロッティング膜は、同じ又はほとんど同じ長さ及び幅の寸法(例えば各々10%、5%又は2%の範囲内の寸法)を有する。ブロッティング膜は、例えば紙、セルロース系ブロッティング膜(例えばニトロセルロース又はセルロースアセテート)、ニトロセルロース系膜、ナイロン系膜又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)系膜、又はこれらの活性化又は誘導体化したもの(例えば表面を荷電させた誘導体)であってもよい。ドライ式エレクトロブロッティングシステムのブロッティング膜は、ブロッティング膜の第1面が分析ゲルの第1面と連続的に面同士が接触する態様で、分析ゲルに並設される。
【0047】
幾つかの実施態様では、システムには更に、分析ゲルと陰極ゲルマトリックス基材の間に位置する1つ以上の濾紙が含まれる。
【0048】
ドライ式エレクトロブロッティングシステムの陽極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材は、同じ又は異なる組成であってもよい。例えば、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの陽極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材は、同じ若しくは異なるゲル形成ポリマーを含んでもよく、又は異なる濃度の1つ以上の共通のゲル形成ポリマーを含んでもよい。ドライ式エレクトロブロッティングシステムの陽極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材は、同じ若しくは異なる緩衝液を含んでもよく、又は異なる濃度で共通の緩衝液を含んでもよい。陽極ゲルマトリクスには、陰極ゲルマトリックスに存在しない1つ以上の付加的な化合物を含めてもよい。陰極ゲルマトリクスには、陽極ゲルマトリックスに存在しない1つ以上の付加的な化合物を含めてもよい。
【0049】
ゲルマトリックス基材(陽極ゲルマトリックス基材又は陰極ゲルマトリックス基材)には、アガロース、アクリルアミド、アルミナ、シリカ、澱粉、又はキトサン、ガム(例えばキサンタンガム、ジェランガム)、カラギーナン、ペクチンなどの他の多糖類、又はゲルを形成する他のポリマー、又はこれらのいかなる組み合わせを含有させてもよい。幾つかの好ましい実施態様では、陰極ゲルマトリックス基材は、例えば約2.5%〜約30%、又は約5%〜約20%の濃度でアクリルアミドを含有する。幾つかの実施態様では、陰極ゲルマトリックス基材は、例えば約0.1%〜約5%、又は約0.5%〜約4%、又は約1%〜約3%の濃度でアガロースを含有する。幾つかの好ましい実施態様では、陰極ゲルマトリックス基材はアクリルアミドとアガロースを含有し、例えば該陰極ゲルマトリクスは約2.5%〜約30%のアクリルアミド、約0.1%〜約5%のアガロースを含有してもよく、好ましくは約5%〜約20%のアクリルアミド、約0.2%〜約2.5%のアガロースを含有する。
【0050】
陰極ゲルマトリックス又は陽極ゲルマトリックス中に供給する、電気泳動的転写用のイオン供給源としては、例えば塩、酸、塩基若しくは緩衝液、又はそれらの組み合わせが使用できる。好ましくは、陰極ゲルマトリックス基材は1つ以上の緩衝液(好ましくは有機緩衝液)を含有する。陰極ゲルマトリックスに供給する緩衝液は、両性イオン緩衝液であってもよい。分析ゲルがエレクトロブロッティングされる蛋白質又はペプチドを含む好ましい実施態様では、陰極ゲルマトリックス基材は約6.5〜約8.5、より好ましくは約7〜約8のpKaを有する緩衝液を含有する。陰極ゲルマトリックス中に緩衝液を約10mM〜約1M、例えば約20mM〜約500mMの濃度、幾つかの実施態様では約50mM〜約300mMの濃度で含有させてもよい。
【0051】
例えば、陰極ゲルマトリックス基材には、非限定的な例として2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシ−プロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)−メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−l−プロパンスルホン酸(TAPS)、N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン(トリス)、又はビス[2−ヒドロキシエチル]イミノトリス−[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)を含有させてもよい。
【0052】
陰極ゲルマトリックス、陽極ゲルマトリックス又はその両方とも、イオン交換マトリクスを適宜含んでなってもよい。例えば、陽極ゲルマトリックスは、陽イオン交換マトリックスを適宜含んでなってもよい。陰極ゲルマトリックスは陰イオン交換マトリクス(例えば限定されないがDEAEセルロース)を適宜含んでなってもよい。イオン交換マトリクスにはイオン(例えば緩衝イオン)をロードしてもよく、例えばDEAEイオン交換マトリクスをトリシンアニオンとロードしてもよい。
【0053】
陰極ゲルマトリックス基材にはエチレングリコール、アルコール、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の抗黴剤、1つ以上のブロッキング剤、1つ以上の抗腐食剤、1つ以上の修飾試薬若しくは酵素、プロテアーゼ、還元剤などを更に含めてもよい。陰極ゲルマトリックス基材には核酸又は蛋白質染色用の色素などを含めてもよい。例えば、陰極ゲルマトリックス基材には、SYPRO色素、クーマシー色素、Direct Blue色素又は銅系の色素などを含めてもよい。
【0054】
多様なタイプの蛋白質及び/若しくはDNA染色剤、又は他のタイプの分離された分子に用いる他の染色剤を、本明細書において開示する電極回路のゲル基材に含めてもよい。好ましくは、かかる染色剤は、アニオン性又はカチオン性の染色剤でもよく、それぞれ、陽極電極回路又は陰極電極回路に適宜ロードしてもよい。本発明の更なる実施形態では、同様のブロッティング電極回路の使用において、アニオン性染色剤を陽極電極回路に含め、カチオン性染色剤を陰極電極回路に含めてもよい。かかるブロッティング電極回路の電極に電流を印加するとき、アニオン性染色分子が陰極から離れ、ブロッティング膜の方へ移動し、同時にカチオン性染色分子も陽極から離れ、ブロッティング膜の方へ移動する。このようにして、ブロッティング膜にブロットされた分子を両方の染色剤によって染色できる。
【0055】
陽極ゲルマトリックスに設置される電気泳動的転写に用いるイオン供給源は、塩、酸、塩基又は緩衝液由来であってもよい。好ましくは、陽極ゲルマトリックス基材は1つ以上の緩衝液(好ましくは有機緩衝液)を含有する。陽極ゲルマトリックスに供給される緩衝液は両性イオン性緩衝液であってよい。分析ゲルがエレクトロブロッティングされる蛋白質又はペプチドを含む好ましい実施態様では、陽極ゲルマトリックス基材は約6〜約8、より好ましくは約6.2〜約7.2のpKaを有する緩衝液を含有する。緩衝液は約10mM〜約1Mの濃度でよく、例えば約20mM〜約500mM、幾つかの実施態様では約50mM〜300mMの濃度であってもよい。
【0056】
例えば、陽極ゲルマトリックス基材には、非限定的な例として2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシ−プロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)−メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−l−プロパンスルホン酸(TAPS)、N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン(トリス)、又はビス[2−ヒドロキシエチル]イミノトリス−[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)を含有させてもよい。
【0057】
本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムの幾つかの好ましい実施態様では、エレクトロブロッティングシステムの陰極ゲルマトリックスに供給されない1つ以上の緩衝液を、陽極ゲルマトリックスに供給してもよい。これらの実施態様では、ブロッティング膜は分析ゲルの陽極側に配置される。
【0058】
本発明をいかなる特定の機構に限定するものではないが、電界が電気泳動的転写の間に形成されるときに比較的急速に移動する、エレクトロブロッティングシステムの陽極ゲルマトリックスに存在する1つ以上のアニオン種は、その陽極への移動が急速であるため、同様に陽極に向かって移動するが、動きの速いアニオンを欠く一部の電界内で移動する生体分子の電気泳動的濃度を左右しうると考えられる。電気泳動的転写の文脈において、動きの速い(すなわち陽極から遠い側の)アニオンの後に移動する生体分子は、動きの速いアニオンが急速に陽極へ移動するため、陽極ゲルマトリックスから動きの速いイオンが減少し、それにより電気泳動的濃度が増幅される。濃縮された転写中の生体分子がブロッティング膜と接触すると、それらは、この作用の結果として、ゲル側の膜表面において少なくとも一部が不溶性となり、凝集物が生成しうる程度に濃縮されると考えられる。ゲルの変性において、蛋白質の可溶化に用いるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)もまた、蛋白質より速く移動するため、蛋白質がブロッティング膜と接触するときにはほとんどが蛋白質から脱離していると考えられる。ブロッティング膜の表面に転写された生体分子の不溶性化により、それらの更なる移動が阻害され、その効果として膜の表面に生体分子を「スタック」する。このスタッキング効果により、ブロッティング膜上での生体分子の検出が改善されうる。
【0059】
陽極ゲルマトリックスにおいて排他的に提供されるアニオン性化合物の効果は、陽極ゲルマトリックスと比較して陰極ゲルマトリックスで顕著に少ない濃度で存在するアニオン性化合物にもあてはまる。本発明において「顕著に少ない濃度」とは、エレクトロブロッティングシステム又は装置の陰極マトリクスのアニオン性緩衝化合物の濃度が、陽極ゲルマトリクスのアニオン性化合物の濃度と比較して0.5×以下、好ましくは0.2×以下、より好ましくは0.1×以下であることを意味する。すなわち、一実施態様では、エレクトロブロッティングシステムの陰極室及び陽極室は同じアニオン性化合物を含有し、該化合物が陰極室と陽極室で異なる濃度で存在する。
【0060】
エレクトロブロッティング装置、機器又はシステムの陰極ゲルマトリックスにおいて存在しないか、又は顕著に少ない量で存在する、陽極ゲルマトリックスに供給される化合物は、電気泳動的転写の間のアニオンの形でエレクトロブロッティングシステムに存在する緩衝化合物であって、本明細書において「アニオン性緩衝化合物」と称される。例えば、陽極ゲルマトリックスに供給されて、陰極ゲルマトリックスに供給されない(又は陰極ゲルマトリックスに顕著に少ない量で供給される)アニオン性緩衝化合物は、陰極ゲルマトリックスに供給できる他のアニオン性緩衝化合物などの他の幾つかの緩衝化合物よりも「動きが速い」。従って、陽極ゲルマトリックスの優先使用に用いるアニオン性緩衝化合物の選択は、陰極ゲルマトリックスに供給されるアニオン性化合物(例えば緩衝液)、陽極ゲルマトリックス及び陰極ゲルマトリックスの緩衝液のpH、並びにアニオン性緩衝化合物のpKaに部分的に依存する。例えば、エレクトロブロッティングが中性pH付近で行われる電気泳動的転写システムの陽極ゲルマトリックスに選択的に供給できるアニオン性緩衝化合物としては、中性(pH約6〜pH約8)においてpKaを有する化合物が挙げられ、幾つかの例ではpH6.0〜pH8.0で陰極ゲルマトリックスに供給される1つ以上の緩衝化合物のpKaよりも少なくとも0.5対数単位低い、例えば1対数単位低い。
【0061】
幾つかの実施態様では、エレクトロブロッティングシステムの陽極ゲルマトリックスは陰極ゲルマトリックスに存在しないアニオン性緩衝化合物を含有し、アニオン性化合物は中性付近又はそれ以下においてpKaを有し、中性pH又はその付近でアニオンとして存在する。幾つかの実施態様では、化合物はpKa約7.5以下、好ましくは約7.2以下、幾つかの実施態様では約7.0以下を有する生物学的緩衝液であってよく、該生物学的緩衝化合物は電気泳動の間、溶液中でアニオンを形成する。具体的な例示的態様では、アニオン性緩衝液は7.5、7.4、7.3、7.2、7.1、7.0、6.9、6.8、6.7、6.6又は6.5未満のpKaを有する。
【0062】
陽極ゲルマトリックスに存在してよく、陰極ゲルマトリックスに存在しないアニオン性化合物の非限定的な例として、EDTA、コハク酸、クエン酸塩、アスパラギン酸、グルタミン酸、マレイン酸、カコジラート、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセタミド)イミノ二酢酸(ADA)、N−(2−アセトアミド)−2‐アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2‐アミノエタンスルホン酸(BES)、又は3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)が挙げられる。かかるアニオン性緩衝化合物は、陰極室のアニオン性化合物のpKaが陽極室のアニオン性化合物のそれより大きいエレクトロブロッティングシステムで使用できる。これらの実施態様では、グリシン、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、[(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、及びN−(1、1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)のうちの1つ以上をシステムの陰極室に含有させてもよい。
【0063】
幾つかの実施態様では、陰極ゲルマトリックスに存在せず(又は顕著に少ない濃度で存在する)、陽極ゲルマトリックスに存在するアニオン性化合物は、中性付近又はそれ以下でpKaを有する両性イオン緩衝液(例えばMES、MOPSO、BES、MOPS又はACES)である。これらの緩衝液の1つ以上を陽極ゲルマトリックスに含むエレクトロブロッティングシステムでは、陰極室中に中性付近又はそれ以上でpKaを有する両性イオン緩衝液(例えばトリシン、ビシン、TAPS、TAPSO又はAMPSO)を適宜含有させてもよい。
【0064】
エレクトロブロッターの陽極ゲルマトリックスに存在し、エレクトロブロッターの陰極ゲルマトリックスに存在しない(又は顕著に少ない量で存在する)アニオン形成緩衝化合物は、いかなる濃度で存在してもよいが、好ましくは少なくとも10mMの濃度、好ましくは、約10mM〜約1Mの濃度、より好ましくは約20mM〜約500mM、幾つかの実施態様では約50mM〜約300mMで陽極ゲルマトリックスに存在する。
【0065】
本発明にはまた、陰極室に存在しない(又は顕著に少ない量で存在する)アニオン性緩衝化合物が陽極室に含有される湿式及びセミドライ式エレクトロブロッティングシステムも含まれる。一実施態様では、陽極室は陰極室に存在しないアニオン性緩衝化合物を含有し、該化合物は中性付近又はそれ以下でpKaを有し、中性のpH又はその付近でアニオンを形成する。例えば化合物はpKa7.5以下、好ましくは約7.2以下を有する生物学的緩衝液であってよく、該生物学的緩衝化合物は電気泳動の間、溶液中でアニオンを形成する。
【0066】
陽極ゲルマトリックス基材はエチレングリコール、アルコール、1つ以上の界面活性剤(例えばSDS)、抗黴剤、ブロッキング剤、抗腐食剤、修飾試薬若しくは酵素、プロテアーゼ、還元剤などを更に含有してもよい。陽極ゲルマトリックス基材は、例えば銅や銀を含有する色素(例えば正に荷電した核酸又は蛋白質の染色剤)を含有してもよい。
【0067】
本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムにおいて、陽極ゲルマトリックス基材は転写スタックの1面と接触する第1面を有し、また陰極ゲルマトリクス基材は転写スタックの反対側と接触する第1面を有する。好ましい実施態様では、転写スタックの一面と接触する陽極ゲルマトリックス基材の第1面、及び転写スタックの他の面と接触する陰極ゲルマトリックス基材の第1は、転写スタックのブロッティング膜と分析ゲルとの長さ及び幅の寸法とほとんど同じ長さ及び幅の寸法を有する。好ましくは、ゲルからブロッティング膜への生体分子の均一な転写を促進するため、陽極ゲルマトリックス基材の第1面及び陰極ゲルマトリックス基材の第1面の長さ及び幅の寸法は、転写スタックの長さ及び幅の寸法の20%以内、より好ましくは転写スタックの長さ及び幅の寸法の10%以内、例えば転写スタックの長さ及び幅の寸法の5%以内、あるいは転写スタックの長さ及び幅の寸法の2%以内である。
【0068】
他の好ましい実施態様では、ゲルスタックと接触する陽極ゲルマトリックスの面の面積は陽極ゲルマトリックスと接触するゲルスタックの表面の面積と同じである。他の好ましい実施態様では、ゲルスタックと接触する陰極ゲルマトリックスの面の面積は陰極ゲルマトリックスと接触するゲルスタックの表面の面積と同じである。
【0069】
本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムでは、陽極ゲルマトリックス基材は陽極と接触する。幾つかの好ましい一実施態様では、陽極は陽極ゲルマトリックス基材の第2面に連結するか又は並設され、該陽極ゲルマトリックス基材の第2面は転写スタックと接触する陽極ゲルマトリックス基材の第1面の反対側に存在する。陽極はいかなる適当な導体を含有してもよく、またいかなる形状でもあってよく、例えば陽極は非金属導電性材料を含む層、コイル構造、非金属導電性材料を含んでなるメッシュ、金属箔、金属メッシュ及び/又はそれらの組み合わせであってよい。具体的な実施態様では、導電性電極は導電性の金属又は非金属を塗布した非導電性ポリマーを含有してもよい。導電性材料を塗布した非導電性材料の電極はシート、メッシュの形態、又は他の構造であってもよい。電極は1つ以上の導電性非金属素材(例えば黒鉛、炭素、導電性ポリマー)又はそれらのいかなる組み合わせを含有してもよい。陽極は例えば、導電性ポリマー、白金、ステンレス鋼、炭素、黒鉛、アルミニウム、銅、銀又は鉛を含有してもよい。幾つかの実施態様では、陽極は電気化学的にイオン化可能な金属(例えば銅、銀又は鉛)を含有する。電気化学的にイオン化可能な金属陽極の使用により、金属銅が選択的に水の代わりに電離し、それにより陽極において酸素が発生することなく電気泳動的転写を行える。これにより電気泳動的転写を妨げうる気泡の形成が回避される。幾つかの好ましい実施態様では、陽極は使い捨て可能な銅電極である。他の実施態様では、陽極は酸素ガスを吸収するアルミニウムを含有してもよい。幾つかの好ましい実施態様では、陽極は使い捨て可能なアルミニウム電極である。
【0070】
電極は銀を塗布した銅、又は銀を塗布した他の金属若しくは材料を含有してもよい。例えば、炭素又はグラファイト系導電性電極を使用して、それに適切な金属銀のペースト若しくはエマルジョンを塗布するか、又は公知技術の他のいかなる適切な方法を用いて銀を電極材料に適用してもよい。例えば銀コートの陽極は銀イオンを遊離させ、実施例4に記載するように、ブロッティング膜の方へ移動し、核酸又は蛋白質などの生体分子を着色できる。
【0071】
本発明の他の実施態様では、導電性基質(例えば限定されないが、銅のメッシュ若しくは格子、又は炭素若しくは黒鉛系のファブリック、又は導電性ポリマーの薄層でもよい)上に金属銀を(様々な金属付着方法を用いて)沈積又は被覆することも可能である。銀金属被覆をかかる導電性電極に適用するのに使用できる方法としては、特に化学気相成長(CVD)方法、融解した銀に電極を浸漬することによる銀めっき法、電気めっき法、適切な接着を強化しる組成物又は製剤に分散させた銀微粒子を使用しるスプレー塗布方法、水性又は非水性溶液で実施する化学沈積法(例えば、銀被覆鏡の形成に係る周知技術の、伝導性電極をグルコースを含むアンモニア性硝酸銀溶液に浸漬する方法)、加熱した銀金属フィラメントから標的電極上への直接的な銀の真空蒸着などが挙げられる。すなわち、従来技術において公知のいかなる適切な銀めっき、沈積又は塗布方法も、本発明の銀金属コーティング電極の作製の際に使用できる。
【0072】
本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムでは、陰極ゲルマトリックス基材は陰極と接触する。幾つかの好ましい一実施態様では、陰極は陰極ゲルマトリックス基材の第2面に連結するか又は並設され、該陰極ゲルマトリックス基材の第2面は転写スタックと接触する陰極ゲルマトリックス基材の第1面の反対側に存在する。陰極はいかなる適当な導体を含有してもよく、またいかなる形状でもあってよく、例えば陰極は非金属導電性材料を含む層、非金属導電性材料を含んでなるメッシュ、金属箔、金属メッシュ及び/又はそれらの組み合わせであってよい。具体的な実施態様では、導電性電極は導電性金属又は非金属を塗布した非導電性ポリマーを含有してもよい。導電性材料を塗布した非導電性材料の電極はシート、メッシュの形態、又は他の構造であってもよい。電極は1つ以上の導電性非金属素材(例えば黒鉛、炭素、導電性ポリマー)又はそれらのいかなる組み合わせを含有してもよい。陰極は例えば、導電性ポリマー、白金、ステンレス鋼、炭素、黒鉛、アルミニウム、銅、銀又は鉛を含有してもよい。幾つかの好ましい実施態様では、陰極は使い捨て可能な銅電極である。他の実施態様では、陰極はパラジウムを含有してもよく、それにより、電気泳動的転写の間、陰極で生じる水素ガスを吸収させることができる。幾つかの好ましい一実施態様では、陰極は使い捨て可能なアルミニウム電極である。
【0073】
他の好ましい実施態様では、陽極及び陰極は、陽極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材それぞれと同じ又は同程度の長さ及び幅の寸法を有する。ゲルマトリックス基材に並設される陽極又は陰極の表面は連続的である必要はなく、例えば電極はワイヤラス又はコイル構造であってよい。かかる実施態様では、ゲルマトリックスと接触する電極の表面は、ゲルマトリックスに並設される電極構造体の表面の外側の寸法によって定義されると考えられる。好ましくは、陽極ゲルマトリックス基材に並設される陽極面は、それが並設される陽極ゲルマトリックスの面の少なくとも50%、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%と接触する。陽極ゲルマトリックス基材に並設される陽極面は、それが並設される陽極ゲルマトリックスの面の表面積と実質的に同じ領域であってもよい。例えば、一般に矩形、楕円形若しくは円形の電極及びゲルマトリックス基材の場合、陽極の長さ及び幅の寸法は、好ましくは陽極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の20%以内、より好ましくは陽極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の10%以内、例えば陽極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の5%以内、陽極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の2%以内である。これらの好ましい実施態様では、陽極ゲルマトリックス基材は好ましくは転写スタックのブロッティング膜及び分析ゲルの長さ及び幅の寸法とほぼ一致する。
【0074】
好ましくは、陰極ゲルマトリックス基材に並設される陰極面は、それが並設される陰極ゲルマトリックスの面の少なくとも50%、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%と接触する。陰極ゲルマトリックス基材に並設される陰極面は、それが並設される陰極ゲルマトリックスの面の表面積と実質的に同じ領域であってもよい。例えば、一般に矩形、楕円形若しくは円形の電極及びゲルマトリックス基材の場合、陰極の長さ及び幅の寸法は、好ましくは陰極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の20%以内、より好ましくは陰極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の10%以内、例えば陰極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の5%以内、陽極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の2%以内である。
【0075】
これらの好ましい実施態様では、陰極ゲルマトリックス基材は好ましくは転写スタックのブロッティング膜及び分析ゲルの長さ及び幅の寸法とほぼ一致する。
【0076】
すなわち、本発明の好ましい実施態様では、転写スタックの1面と接触する陽極ゲルマトリックス基材と接触する陽極、及び転写スタックの反対側と接触する陰極ゲルマトリックス基材と接触する陰極を有し、陽極、陽極ゲルマトリックス基材、陰極、陰極ゲルマトリックス基材及び転写スタックが同じ又はほとんど同じ長さ及び幅の寸法を有するシステムを提供する。
【0077】
幾つかの実施態様では、陽極、陰極又はその両方が電源又はエレクトロブロッティング転写スタックを保持する装置と一体化されて(各転写の後、ユーザーによって分解されないことを意味する)設置されている。他の実施態様では、陽極と陰極を電源又は装置と分離できる。例えば、電極は電極回路の一部として設置される使い捨て可能な電極であってもよく、又はゲルマトリックス基材と分離できてもよい。ゲルマトリックスとは別に設置される電極は、ドライ式エレクトロブロッティング装置と連結でき、その後、ゲルマトリックス基材を電極と接触するように装置に装着してもよく、あるいは、電極及びゲルマトリックス基材は、エレクトロブロッティング装置と接続又は装着することができるトレイやケージなどのホルダーに配置してもよい。
【0078】
幾つかの実施態様では、陽極、陰極又はその両方はゲルマトリックス基材と接続する電極回路の一部として設置され、例えばゲルマトリックス基材に対する形で電極を配置するファスナー又はホルダーを使用して陽極又は陰極を設置することができる。具体的な実施態様では、陽極及び陰極は陽極ゲルマトリックス基材に少なくとも部分的に埋め込まれる。例えば、ゲルマトリックス基材は電極上に流動ゲル成分を流し込むことによって、又は、ゲル押し出し技術を用いて作製でき、それにより電極はゲルマトリックスによって1つ以上の面において部分的に被覆され又は埋め込まれる。具体的な実施態様では、ゲルマトリックス基材は電気泳動的転写の前と間、プラスチックトレイの導電性電極に対して配置される。プラスチックトレイは、電極間の電気的接続を提供するための導体を含有する1つ以上の領域、及び電源との電気接点を有するのが好ましい。
【0079】
ドライ式エレクトロブロッティングシステムには陽極及び陰極と接触するための電気接点を有する電源を更に有してもよい。電源は、電気泳動的転写の間に転写スタックを配置するための基部を有してもよい。幾つかの実施態様では、陽極、陰極又はその両方とも、システムの電源から一体化されてもよい。一実施態様では、陰極はエレクトロブロッティングシステムの電源と一体化されて連結し、一方陽極は着脱可能で、使い捨て可能である。
【0080】
ドライ式エレクトロブロッティングに用いる電極回路
本発明は、ドライ式エレクトロブロッティングを実施するための電極回路(該電極回路は本明細書において記載されるようなイオン供給源を含有するゲルマトリックス基材を含む)、並びにゲルマトリックス基材に並設される導電性電極を提供する。
【0081】
電極に並設されるゲルマトリックス基材は本明細書において上記した組成を有してもよく、例えばアガロース、アクリルアミド、アルミナ、シリカ、澱粉、又はキトサン、ガム(例えばキサンタンガム、ジェランガム)、カラギーナン、ペクチンなどの他の多糖類、又はゲルを形成する他のポリマー、又はこれらのいかなる組み合わせなどの適切なポリマーを含有させてもよい。
【0082】
ドライ式エレクトロブロッティングシステムのゲルマトリックス基材に本明細書において記載するように、電極回路のゲルマトリックス基材はイオンの1つ以上の供給源を含む。電極回路のゲル基材中のイオン源は、例えば、本明細書において上記で開示される緩衝液、又はブロッティングに使われる公知の任意の緩衝液など、ゲル基材に添加できるいかなる適切な緩衝溶液でもよく、限定的ではないが例えばトリスグリシン(トリス20〜500mM[より典型的には25mM〜200mM]、グリシン20〜500mM[より典型的には25mM〜200mM])、0.2×〜5×トリス酢酸EDTA(典型的には0.5×〜2×)、0.2×〜5×トリスホウ酸EDTA(典型的には0.5×〜2×)、CAPS緩衝液(5〜200mM又は10mM〜100mM)、ビストリスビシン(ビストリス5mM〜500mM又は20〜100mM、ビシン5mM〜500mM又は20〜100mM)、又はビストリストリシン(ビストリス5mM〜500mM又は20〜250mM、トリシン5mM〜500mM、又は20〜250mM)、又はMES、MOPSなどの緩衝液が挙げられる。上記した緩衝液は全て、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、並びにビストリス、トリシン、BES及びSDS若しくは他の界面活性剤との組み合わせ、並びにその他のものを含有してもよく、しなくてもよい。ゲルマトリックス基材はエチレングリコール、アルコール、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の抗黴剤、1つ以上の抗腐食剤、1つ以上の還元剤などを更に含有してもよい。
【0083】
他のイオン供給源として、イオン交換マトリクスを存在させてもよい。該イオン交換マトリクスには、ゲル基材の調製用のゲル溶液に添加する前にイオンを「ロード」してもよい。イオン交換マトリクスは、陽極電極回路又は陰極電極回路としての用途を目的とする電極回路ゲルマトリックス基材に存在させてもよい。例えば幾つかの実施態様では、陽極のゲル基材はアニオン(例えばトリシン)をロードされたDE−52(DEAE)セルロースの形態のイオン交換マトリクスを含有する。
【0084】
陰極電極回路のゲルマトリックスは、陽極電極回路ゲルマトリックスに存在しない1つ以上の塩、酸、塩基、緩衝液、色素、還元剤、ブロッキング剤、キレート剤、阻害剤、開裂試薬、修飾酵素若しくは試薬、又は可溶化剤を更に含有してもよい。陽極ゲルマトリックスは、陰極ゲルマトリックスに存在しない1つ以上の塩、緩衝液、色素、還元剤、キレート剤、阻害剤、開裂試薬、修飾酵素若しくは試薬、又は可溶化剤を更に含有してもよい。
【0085】
ドライ式エレクトロブロッティングシステムに関する前の節にて説明したように、陽極電極回路としての用途に用いる電極回路のゲルマトリックスは陰極ゲルマトリックスに存在しないか又は顕著に少ない量で存在する1つ以上の緩衝化合物を含有してもよい。かかる緩衝化合物は好ましくはアニオン性緩衝化合物であり、本明細書において上記したように、限定されないがEDTA、コハク酸、クエン酸塩、アスパラギン酸、グルタミン酸、マレイン酸、カコジラート、TES、MES、ADA、ACES、PIPES、MOPSO、BES又はMOPSなどが挙げられる。
【0086】
電極回路のゲルマトリックス基材は典型的には2つの対向面を有し、その1つの面は電極と接触し、他方の面は直接又は間接的に転写スタックと接触する。ゲルマトリックス基材と「並設する」電極はゲル基材と接触し、好ましくはゲルマトリックス基材の面に沿って配置し、連続的な接触を形成する。具体的な実施態様では、並設された導電性電極はゲルマトリックス基材と接触する。該接触は例えば重力又はホルダーによって電極及びゲルマトリックス基材との密着を維持する物理的方法であってもよく、又は化学的方法であってもよい。化学的接着は共有結合でも非共有結合でもよい。例えば、電極が静電的相互作用によってゲル基材に接着してもよい。具体的な実施態様では、ゲル基材に並設される導電性電極はゲル基材に少なくとも部分的に埋め込まれる。
【0087】
本明細書に係る電極回路に用いる導電性電極は、例えば非金属導電性材料を含む層、並びに非金属導電性材料、金属箔、金属メッシュ及び/又はそれらの組み合わせを含んでなるメッシュであってよい。具体的な実施態様では、導電性電極は導電性の金属又は非金属を塗布した非導電性ポリマーを含有してもよい。導電性材料を塗布した非導電性材料の電極はシート、メッシュの形態、又は他の構造であってもよい。電極は1つ以上の導電性非金属素材(例えば黒鉛、炭素、導電性ポリマー)又はそれらのいかなる組み合わせを含有してもよい。
【0088】
具体的な実施態様では、電極回路の導電性電極は電気化学的にイオン化可能な金属(例えば鉛、銅、銀又はそれらの組み合わせ)を含有する。非電気化学的にイオン化可能な金属を電極として用いるとき、水電解により電気泳動の間、陽極で陽子、陰極で水酸イオンを生じる。電気泳動の間、電離する電気化学的にイオン化可能な金属は、例えば陽極での陽子の代わりに電位差が陽極及び陰極を通じて印加されるとき、金属イオンを生じうる。電極での水電解を回避するために電気化学的にイオン化可能な金属を電極へ使用することにより、陽極での酸素の遊離が回避でき、それにより電気泳動的転写を妨げるおそれのある気泡の遊離が回避される。
【0089】
本発明の幾つかの実施態様では、陽極は鉛、銅又は銀を含有する。本発明の幾つかの実施態様では、陰極は銅又は銀を含有する。本発明の幾つかの実施態様では、陽極は銅を含有する。幾つかの実施態様では、陽極は銅板を含んでなる。幾つかの実施態様では、陽極は銅メッシュ又は銅を塗布したポリマー性のメッシュを含んでなる。
【0090】
他の電極材料としては、限定されないがステンレス鋼又はプラチナ又はアルミニウム又はパラジウムが挙げられる。アルミニウムは酸素ガス(例えば電気泳動的転写の間に陽極で発生する酸素ガス)を吸収できる。パラジウムは水素ガス(例えば電気泳動的転写の間に陰極で発生する水素ガス)を吸収できる。
【0091】
また、1つ以上のブロッティング膜は電極回路の一部であってよい。幾つかの実施態様では、1つの膜が陽極電極回路に含まれ、電極に並設される面と反対側のゲルマトリックス基材の面に膜は並設され、それによりブロッティング膜はエレクトロブロッティングの間、分離ゲルに対して配置される。しかしながら、陰極電極回路、又は陽極及び陰極電極回路の両方にブロッティング膜を存在させてもよい。ブロッティング膜は、例えば紙、セルロース系ブロッティング膜(例えばニトロセルロース又はセルロースアセテート)、ニトロセルロース系膜、ナイロン系膜又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)系膜、又はこれらの活性化又は誘導体化したもの(例えば表面を荷電させた誘導体)であってもよい。
【0092】
幾つかの実施態様では、陽極電極回路はトレイを含んでなる。該トレイは導電性電極、電極がゲルマトリックス基材の第1面と接触させるように並設させたゲルマトリックス基材、並びに適宜、ブロッティング膜がゲルマトリックス基材の第1面の反対側のゲルマトリックス基材の第2面と接触させるように電極ゲルマトリックス基材に並設させたブロッティング膜を保持する。トレイは乾燥ブロッティング装置に適合する構造をとり、それにより電極、ゲルマトリックス基材及びブロッティング膜は電気泳動的転写の間、トレイ中に収められたままの状態にある。これらの実施態様では、陽極電極回路のトレイはトレイの電極からエレクトロブロッティング装置の電気接点へ電流を送る金属接触部又は領域を含んでなる。
【0093】
エレクトロブロッティング用キット
更に他の態様では、本明細書はドライ式エレクトロブロッティング用のキットを提供する。一実施態様では、キットは電気泳動に用いるイオン源を含む1つ以上のゲルマトリックス基材、及び1つ以上のブロッティング膜を含んでなる。ゲルマトリックス基材は本明細書に記載のような組成を有してもよく、好ましくは緩衝イオン源を含有する。キットにおいて一緒に提供されるゲルマトリックス基材及びブロッティング膜は、同じ又はほとんど同じ長さ及び幅の寸法を有してもよく、長さ及び幅に関して互いに例えば10%以内、5%以内、又は2%以内の範囲にある。
【0094】
他の実施態様では、キットには1つ以上の陽極ゲルマトリックス基材及び1つ以上の陰極ゲルマトリックス基材が含まれ、該陽極ゲルマトリックスには、陰極ゲルマトリックスに存在しない、又は顕著に少ない量で存在する1つ以上のアニオン性緩衝化合物が含まれる。前節にて説明したように、アニオン性緩衝化合物は好ましくは中性又はその付近のpKaを有する緩衝化合物である。好ましくは、陽極ゲルマトリックス及び陰極ゲルマトリックスは緩衝イオン源を含有し、陰極室は陽極室に存在しない(又は顕著に少ない量に存在する)緩衝化合物を含有し、陰極の緩衝化合物は陽極室の緩衝液より少なくとも0.5対数単位高い、例えば1対数単位高いpKaを有し、そこにおいて緩衝液は中性以上のpHでアニオンを形成する。
【0095】
他の実施態様では、キットには1つ以上の陽極ゲルマトリックス基材及び1つ以上の陰極ゲルマトリックス基材が含まれ、該陽極ゲルマトリックスは陰極ゲルマトリックスに存在しない色素、界面活性剤、修飾酵素若しくは試薬又は還元化合物の1つ以上を含有する。他の実施態様では、キットには1つ以上の陽極ゲルマトリックス基材及び1つ以上の陰極ゲルマトリックス基材が含まれ、該陰極ゲルマトリックスは陽極ゲルマトリックスに存在しない色素、界面活性剤、修飾酵素若しくは試薬又は還元化合物の1つ以上を含有する。例えば、陰極ゲルマトリックス基材は銅系の色素、Direct Blue色素(Sigma Aldrich社)、クーマシー色素又はSYPRO色素などを含有してもよい。陰極ゲルマトリックス、陽極ゲルマトリックス又はその両方とも、イオン交換マトリクスを適宜含んでなってもよい。
【0096】
陽極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材は、キットにおいて封入パッケージに封入してもよい。エレクトロブロッティングゲルマトリックスキットには、更に1つ以上のブロッティング膜、1つ以上の濾紙、1つ以上のスポンジ及び/又は1つ以上の電極を適宜含めてもよい。ブロッティング膜をゲルマトリックス基材に並設させてもよく、または別個に提供してもよい。
【0097】
別の態様では、本発明のキットには1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路及び/又は1つ以上の使い捨て可能な陰極電極回路が含まれる。幾つかの実施態様では、1つ以上の陽極電極回路にはイオン供給源を含むゲル基材及びゲルマトリックスに並設される電極を含めてもよい。幾つかの実施態様では、1つ以上の陰極電極回路にはイオン供給源を含むゲル基材及びゲルマトリックスに並設される電極を含めてもよい。
【0098】
他の好ましい実施態様では、キットに含まれる電極回路の陽極は、それに並設される陽極ゲルマトリックスの面の少なくとも50%、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%と接触する、陽極ゲルマトリックス基材に並設される表面を有する。他の好ましい実施態様では、キットに含まれる電極回路の陽極は、それに並設される陽極ゲルマトリックス基材の面の長さ及び幅の寸法の20%以内、10%以内、5%以内又は2%以内の長さ及び幅の寸法を有する、陽極ゲルマトリックス基材に並設される表面を有する。例示的実施態様では、陽極及び陽極ゲルマトリックス基材は通常矩形である。
【0099】
他の好ましい実施態様では、キットに含まれる電極回路の陰極は、それに並設される陰極ゲルマトリックスの面の少なくとも50%、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%と接触する、陰極ゲルマトリックス基材に並設される表面を有する。他の好ましい実施態様では、キットに含まれる電極回路の陰極は、それに並設される陰極ゲルマトリックス基材の面の長さ及び幅の寸法の20%以内、10%以内、5%以内又は2%以内の長さ及び幅の寸法を有する、陰極ゲルマトリックス基材に並設される表面を有する。例示的実施態様では、陰極及び陰極ゲルマトリックス基材は通常矩形である。
【0100】
陽極電極回路及び/又は陰極電極回路はプラスチックトレイなどに設置してもよい。キットに含まれる陽極電極回路にはゲルマトリックス基材の第2面に並設される1つ以上のブロッティング膜を適宜含めてもよい。
【0101】
陽極及び/又は陰極電極回路は一緒に、又は別個に封入パッケージ中に梱包してもよい。更に、複数の陽極及び/又は陰極電極回路を一緒に包装中に梱包してもよい。
【0102】
幾つかの態様では、エレクトロブロッティングキットには1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路及び1つ以上の使い捨て可能な陰極電極回路が含まれる。幾つかの態様では、エレクトロブロッティングキットには1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路、及び1つ以上の陰極ゲルマトリックス基材が含まれる。キットには1つ以上のブロッティング膜、濾紙又はスポンジを適宜含めてもよい。
【0103】
キットにおいて電極を別個に含めてもよい。また、1つ以上の電極を例えば乾燥剤又は抗腐食剤を含有する密封容器中に含めてもよい。電極を液体又はゲル(例えばアルコール又は1つ以上の保存剤、還元剤又は抗腐食剤を含有する溶液又はゲル)中にパッケージングしてもよい。電極(例えば使い捨て可能な電極)を含むキットには、1つ以上のゲルマトリックス、1つ以上のブロッティング膜又は1つ以上の濾紙を含めてもよい。
【0104】
キット中の陽極及び/又は陰極電極回路は、当該技術で周知の適切なガス及び水不透性包装紙(又は他のいかなるタイプの適切な容器)で個々に包装してもよく、それにより電極回路の乾燥を防ぎつつ長期間の保存が可能となる。例えば、包装紙又は容器は適切な薄い、水及びガス不透性プラスチック又はポリマーベースのシート又は箔から製造でき、更に電極の包装後、いかなる適切な公知の包装紙のシール方法(例えば限定されないが接着又は接触ヒートシールなど)を使用してそこに封入できる。ブロッティング膜をキットに含めるときは、別々の包装としてもよく、又は電極回路を含むパッケージ中に一緒に含めてもよい。
【0105】
以上より、当業者であれば上記で開示した様々な電極回路の様々な異なる組み合わせ及び下位概念での組み合わせにより、多くの異なるタイプのキットを構成できると認識するであろう。かかるキットは周知の様々な染色剤及び/又は染色剤放出金属(用途に応じ、例えば上記で開示した金属銀を含む陽極電極回路)を含んでもよく、また含まなくてもよい。同様に、ゲル濃度、組成物及び架橋度をブロッティングされる分子種に応じて変化させてもよい。
【0106】
更に、異なるタイプの電極回路及び/又はブロッティング膜など、様々に異なりうるキット部品の寸法は、ブロッティングされるゲルの特定の寸法に適するように修正又は調節できる。
【0107】
プラスチック又は他の適切な材料で作製した適切な浅いオープン型トレイ(図示せず)を、かかる包材に含めてもよい。トレイはその中に電極回路を保持するのに適する寸法を有し、それにより、取り扱いの間機械的損傷から電極回路を保護し、使用の前に包装を開封した後の電極回路の取り扱い及び操作を容易となりうる。また電極回路を保持するトレイを流体不透性プラスチック又は箔(又はホイルバックのプラスチック)で上部封止してもよく、またプラスチック又は箔の上部シートを、電極回路を使用する際に除去してもよい。電極回路(例えば陰極電極回路)は使用に際してトレイから取り外してもよく、又は電極回路はエレクトロブロッティングの間トレイ内に設置されたままでもよい。保持トレイは矩形の電極回路の形状に適応させるために矩形のトレイであってもよい。しかしながら、特に電極回路の形状(すなわち特に用途に応じて形状が異なりうる)によっては、他の適切な形状の保持トレイを製造してもよい。
【0108】
保持トレイは、限定的ではないが好ましくはポリ塩化ビニル(PVC)などの安価な硬質又は半硬質のプラスチック又はポリマー材料から製造できる。しかしながら、他の1つ以上のいかなる適切な材料を用いて保持トレイを作製できる点にも留意すべきである。
【0109】
幾つかの実施態様では、保持トレイは1つの面上にプリングタブを有する。プリングタブは保持トレイの着脱不可能部分として形成できるが、着脱可能部分(図示せず)として形成することもでき、接着又は貼り着け、はんだ付け又は他の公知の適切な結合方法によって保持トレイに付着させることができる。保持トレイは、エレクトロブロッティング転写を実施する前に、ブロッティング電極回路を形成する際のスタビライザとしても機能しうる。
【0110】
例えば、図7の気泡除去装置60を用いるとき、包装紙を開封し、保持トレイを取り出してもよく、又は、トレイ(電極回路に用いる容器としても機能する)を封止するプラスチック又は箔の表面シートを剥がしてもよい。トレイを(その中に含まれる陽極電極回路と共に)気泡除去装置60の表面62Aに配置してもよい。次いでゲル(図示せず)及び陰極電極回路(図示せず)を、分離部材75及び77、並びにローラー64を用いて、上記で詳述したように陽極電極回路130に並設してもよい。更にプリングタブ123を用いて、形成されたブロッティング電極回路を図7の矢印85で示す方向に引くこともできる。
【0111】
気泡除去装置60を使用してブロッティング電極回路(図示せず)を構成した後に、更に保持トレイ122に含まれるブロッティング電極回路を取り外すことができることに留意すべきであり、ブロッティング電極回路を保持トレイから取り外し、装置100のエレクトロブロッティング装置80に配置できる(上記の図6のブロッティング電極回路50で詳細に記載した通り)。
【0112】
あるいは、本発明の他の実施態様では、内部導電ストリップ又は部材を組み込んで保持トレイを構成し、保持トレイからブロッティング電極回路を取り外さずにエレクトロブロッティング操作を可能にしてもよい。
【0113】
他の実施態様では、本発明は収入の創出方法であって、エレクトロブロッティング用の使い捨て可能なイオン貯蔵部又は使い捨て可能な電極回路を販売することを含む方法を提供する。使い捨て可能なイオン貯蔵部とは、イオン供給源を含むゲルマトリックス基材の形態である。電極回路は、イオン供給源を含むゲルマトリックス基材及び前記ゲルマトリックス基材に並設される導電性電極を含む。ゲルの基材には更に、色素化合物を埋め込む形で含めてもよい。使い捨て可能な電極回路は、例えば、電話発注システム又はオンラインインターネット発注システムにより、供給業者からユーザーに販売される。
【0114】
ドライ式ブロッティング装置
幾つかの態様では、本発明はドライ式ブロッティングゲル用の装置を提供し、該装置は電源、陽極電極回路を配置するための表面(該表面は陽極電極回路の陽極との接続用の電気接点を有する)、及び陰極電極回路の陰極との接続用の電気接点を有する裏面を含んでなり、装置の第1及び第2の表面を配置して陽極電極回路、陰極電極回路、並びに陽極及び陰極電極回路の間のゲルを保持し、装置には電気泳動的転写に用いる緩衝液を保持する貯蔵部が含まれず、保持されず又は連結されない。幾つかの態様では、本発明はエレクトロブロッティングシステムを提供し、該システムは既に挙げたようなドライ式エレクトロブロッティングに用いる装置を含んでなり、更に陽極電極回路及び陰極電極回路を含んでなる。陽極電極回路には陽極、1つ以上のイオン源を含む陽極ゲルマトリックス基材及び膜が含まれる。陰極電極回路は陰極及び1つ以上のイオン源を含む陰極ゲルマトリックス基材を含んでなる。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティング装置はエレクトロブロッティング条件のメニューを含むソフトウェアを含んでなる。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティング装置はAC/DCアダプタを含んでなる。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティング装置は1つ以上の汎用シリアルバス(USB)ポートを含んでなる。
【0115】
ドライ式エレクトロブロッティングの実施方法
別の態様では、本発明はドライ式エレクトロブロッティングの実施方法を提供し、該方法には、1つ以上の生体分子を含有する分析ゲル、及び1つ以上のブロッティング膜を陽極電極回路と陰極電極回路との間に含む転写スタックを配置すること、並びに、陽極電極回路の陽極と陰極電極回路の陰極との間に電流を印加して、分析ゲルからブロッティング膜へ1つ以上の生体分子を転写することが含まれる。
【0116】
本発明の方法で用いる分析ゲルは第1面及び第2面を有し、該分析ゲルの第1面がブロッティング膜に並設され、該分析ゲルの第2面が電極回路と直接的又は間接的に接触する位置に存在する。幾つかの実施態様では、分析ゲルの第2面は陰極電極回路と接触する。ゲルと陰極電極回路との接触が間接的である(例えば浸漬された濾紙が陰極ゲルマトリックスと分析ゲルとの間に存在するような)場合でも、分析ゲルと陰極ゲルマトリックスとの間に電気的導通による間接的な接触が形成される。スタックはブロッティング膜が陽極ゲルマトリックスと直接的又は間接的に接触する態様で配置される。ブロッティング膜と陽極電極回路との接触が間接的である(例えば浸漬された濾紙が陽極ゲルマトリックスと分析ゲルの間に存在するような)場合でも、分析ゲル及び陽極ゲルマトリックスとの間に電気的導通による間接的な接触が形成される。
【0117】
本発明の方法の具体的な例示的態様では、陽極電極は銅製である。具体的な例示的態様では、陽極と陰極の電極は銅製である。幾つかの態様では、電流を印加する際の電流密度は前記分離ゲルの第1面1cm2当たり15mA以上である。本発明には、銅電極の使用によりブロッティング膜に生体分子(例えば分離ゲルから蛋白質)を転写することを含む方法が含まれる。本発明で、陽極電極回路への銅金属の使用により、導電性銅電極と付属のゲル基材との間におけるガスの放出及び気泡の形成が実質的に減少又は回避され、それにより大きい電流の使用が可能となり、好ましいことにブロッティング時間の短縮につながる。
【0118】
例えば、例示的な本発明のエレクトロブロッティング方法では、エレクトロブロッティングに用いる電流密度は1cm2当たり約10〜50mA(10〜50mA/cm2)である。本発明には、例えば10〜50mA/cm2の電流を印加して分離ゲルから蛋白質などの生体分子をブロッティング膜へ転写することを含むエレクトロブロッティング方法が含まれる。特定の態様では、エレクトロブロッティングは20〜40mA/cm2で実施され、例示的な実施態様では、エレクトロブロッティングは25〜35mA/cm2で実施される。他の実施態様では、該方法は10、15、20、25又は30mA/cm2超の電流で実施される。
【0119】
より高い電流密度の使用により、好ましいことにブロッティングに必要となる時間の短縮を可能とし、その結果時間が節約され、一定の時間内での各ブロッティング装置当たりのブロッティング操作能力を向上させる。したがって、本発明では、1つ以上の蛋白質の集団のような、構造的に同一の1以上の生体分子の集団を、分離ゲルからブロッティング膜に転写することを含むエレクトロブロッティング方法を提供し、該方法では構造的に同一の生体分子の集団の少なくとも50%が分離ゲルから15、10、9、8、7、6又は5分未満でブロッティング膜に転写される。生体分子は例えば、少なくとも10、15、20、30、40、50、60、70、75、90又は100kDaの蛋白質であってもよい。特定の実施態様では、50kDaの蛋白質の集団の少なくとも50%は、15、10、8、7又は6分以内に分離ゲルからブロッティング膜に転写される。
【0120】
幾つかの好ましい実施態様では、ゲルはエレクトロブロッティングの前に緩衝液又は溶液において平衡化される。例えばゲルは10分〜1時間、例えば20分間、20%のエチレングリコール/1×NuPAGE転写緩衝液(Invitrogen社)、100mMのビストリス、75mMのトリシン、100mMのビストリス、75mMのトリシン+20%のエチレングリコール、又は1:1000希釈したAnti−oxidant(Invitrogen社)を含有する2×NuPAGE Transfer Buffer(Invitrogen社)中の10%メタノール液でインキュベートしてもよい。
【0121】
幾つかの実施態様では、転写スタックは、陽極ゲルマトリックス基材及び陽極ゲル基材の第1面に並設される陽極電極を含む陽極電極回路と、陰極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲル基材の第1面に並設される陰極電極を含む陰極電極回路のとの間に位置する。幾つかの態様では、ブロッティング膜に陽極電極回路が付与される。
【0122】
本発明にはまた、1つ以上の生体分子を膜へ転写する方法が含まれ、該方法では1以上の生体分子が、電源、陽極、電気泳動的転写に用いるイオン供給源を含む陽極室、陰極、電気泳動的転写に用いるイオン供給源を含む陰極室、電気泳動ゲル及びブロッティング膜を含むエレクトロブロッティングシステムの使用により膜へ転写され、該陽極室は電気泳動的条件下でアニオンとして存在する1つ以上の化合物を含有し、該化合物は陰極室に存在しないか又は陰極室に顕著に少ない濃度で存在する。陽極室に存在し、陰極室に存在しない化合物は、好ましくは中性付近又はそれ以下のpKa(例えば約7.5以下のpKa)、好ましくは約7.2以下、より好ましくは約7以下のpKaを有する緩衝化合物である。幾つかの実施態様では、中性付近又はそれ以下のpKaを有する緩衝化合物は両性イオン緩衝液である。
【0123】
すなわち本発明には1つ以上の生体分子を検出する方法が含まれ、該方法では、1以上の生体分子が電源、陽極、電気泳動的転写に用いるイオン供給源を含む陽極室、陰極、電気泳動的転写に用いるイオン供給源を含む陰極室、電気泳動ゲル及びブロッティング膜を含むエレクトロブロッティングシステムの使用により膜へ転写され、該陽極室には電気泳動的条件下でアニオンとして存在する1つ以上の化合物が含まれ、該化合物は陰極室に存在しないか又は顕著に少ない濃度で陰極室に存在する。該方法には、膜へ転写された1つ以上の生体分子の、1つ以上の蛋白質染色法又は免疫検出法の使用による検出が更に含まれる。従来技術において公知で、本明細書でも記載するように、免疫検出には1つ以上の化学発光の検出、色素の基質の検出、放射性同位元素の検出又は蛍光検出を含めてもよい。
【0124】
実施例13及び14に示すように、従来の湿式又はセミドライ式エレクトロブロッティングによりエレクトロブロッティングされた蛋白質の検出と比較し、本発明の装置及びシステムを使用して蛋白質を膜にエレクトロブロッティングした場合は、蛋白質などの生体分子の膜上での検出が改善されうる。例えば、本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムを用いて約2倍、約4倍又はそれ以上で検出を改善できる。
【0125】
幾つかの態様では、エレクトロブロッティングシステムの陰極室は陽極室に存在しない1つ以上の化合物を含有してもよい。例えば、陰極室は陽極室に存在しないか又は顕著に少ない量で存在する1つ以上の緩衝化合物を含有してもよい。一実施態様では、陰極室は陽極室に存在しないか又は顕著に少ない量に存在する緩衝化合物を含含有し、該化合物は陽極室の緩衝液より少なくとも約0.5対数単位高い、例えば約1対数単位高いpKaを有し、緩衝液は中性のpH以上でアニオンを形成する。例えば、該化合物は約7.5のpKa、好ましくは約7.5超(例えば8以上)の生物学的緩衝液であってもよい。
【0126】
陽極ゲルマトリックスに存在し、陰極ゲルマトリックスに存在しない緩衝化合物の非限定的な例としてはグリシン、ホウ酸塩、TES、HEPES、TAPSO、DIPSO、HEPPSO、EPPS、トリシン、ビシン、TAPS、AMPSOなどが挙げられる。幾つかの実施態様では、陽極室に存在せず、陰極室に存在する緩衝化合物としては、例えばグリシン、HEPES、DIPSO、HEPPSO、EPPSトリシン、ビシン、TAPS、TAPSO又はAMPSOなど、中性付近又はそれ以上のpKaを有する両性イオン緩衝液が挙げられる。
【0127】
陰極室に存在するアニオン形成緩衝化合物はいかなる濃度で存在してもよいが、好ましくは少なくとも10mMの濃度、より好ましくは約10mM〜約1M、更に好ましくは約20mM〜約500mMの濃度で存在する。
【0128】
これらの本発明の態様では、陰極室における特定の緩衝液(例えばアニオン性緩衝液)の選択的な使用は、陽極室に供給されるアニオン性化合物に依存する。幾つかの実施形態では、陽極−陰極室緩衝液の組み合わせは、陰極室に存在しないか又は顕著に少ない濃度で存在する1つ以上のアニオン性緩衝液を陽極室に供給し、陽極室に選択的に供給されたアニオン性緩衝液より少なくとも約0.5対数単位高い、例えば約1対数単位高いpKaを有するアニオン性緩衝液を陰極室に添加する態様で選択される。陰極室のアニオン性緩衝液は、陽極室に同じ又は異なる濃度で存在してもよい。幾つかの実施態様では、陽極室に供給される、陰極室に存在しないか又は顕著に少ない濃度で存在する1つ以上の緩衝液は、両性イオン緩衝液である。幾つかの実施態様では、陰極室に供給される1つ以上の緩衝液は、選択的に陽極室に設置されるアニオン性緩衝液より高いpKaを有する両性イオン緩衝液である。
【0129】
当業者は、陽極及び陰極にそれぞれ供給される成分の選択が電気的転写の行われるpHに部分的に依存し、またそれが化合物のイオン化状態を規定することを認識するであろう。本発明の化合物は約6〜約8のpKaを有するものの、この範囲内又はその範囲外の化合物を、転写の条件に応じて、転写効果及び特に転写が行われるpH範囲を最適化する目的で選択することも当然可能である。
【0130】
本発明における、電気泳動的に転写された生体分子を検出の感受性を増加させる方法及び組成物を含むこれらの態様は、ドライ式エレクトロブロッティング方法及び組成物に限定されない。例えば、電子転写システム又は装置の陽極側への、動きの速いアニオン(例えば本明細書において開示するもの)を生じさせる化合物の供給は、ドライ式エレクトロブロッティング以外にも、湿式及びセミドライ式エレクトロブロッティングにおいても適用できる。例えば、湿式エレクトロブロッティングの場合、陽極側の緩衝液貯蔵部に本明細書で開示した化合物を含有してもよく、それを湿式エレクトロブロッティングゲルの陽極側に存在させた場合には転写された生体分子の検出が改善され、あるいは、セミドライ式エレクトロブロッティングの場合、ブロッティングサンドイッチの陽極側に位置するフィルターを本明細書において開示した化合物を含む緩衝液に浸漬してもよい。いずれの場合においても、陽極の緩衝液に用いる化合物は陰極の緩衝液に存在しないか又は顕著に少ない量で陰極の緩衝液に存在する。
【0131】
上記方法及び組成物は、電気泳動ゲル上での生体分子の分離を使用しないエレクトロブロッティングシステムに適用できる。例えば、生体試料、細胞又は溶菌液を未分離の液状又は懸濁状のサンプルとして膜にアプライし、本明細書に記載のシステムを使用して未分離の液状又は懸濁状のサンプルからエレクトロブロッティングにより結合させてもよく、陽極チャンバには陰極チャンバには存在しないか又は少ない量で存在するアニオン性化合物が含まれる。
【0132】
本発明は生体分子のエレクトロブロッティング及び検出方法を提供し、その検出感度は陰極室に存在しないか又は顕著に少ない量で存在する特定の化合物を、陽極室に用いることにより改善される。例えば、該方法は、陽極ゲルマトリックスが陰極ゲルマトリックスに存在しないか又は顕著に少ない量で存在するアニオン性緩衝化合物を含有する条件下で、本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムを使用して蛋白質を含む分離ゲルをブロッティングすることと、免疫検出、色素の検出又は化学発光検出の1つ以上を使用してブロッティング膜上での1つ以上の蛋白質を検出することとを含んでなる。該方法は従来のブロッティング法よりも結果として蛋白質の検出が改善される。
【0133】
本発明の更なる実施態様では、分子の染色は、エレクトロブロッティング操作の間、本発明の電極回路に含まれるゲル内に適切な染色物質又は基質を含有させることにより可能となり、それはブロッティング電流の印加に用いる導電性電極に染色物質若しくはその給源を含めることや、又は電極回路の準備に用いるゲル基材内で適切な染色物質を含めることにより行われる。ブロッティング操作の間、かかる染色物質又はかかるin situで形成された分子種は、それらが有する電荷に従い電気泳動的にブロッティング膜の方へ移動でき、ブロッティング膜上のブロッティングされた分子を着色できる。染色は、ブロッティング膜上にブロッティングされる分子種の蓄積前(まだ分離ゲルに存在する間)に行ってもよく、又はブロッティング膜上で行ってもよい。かかるin situ染色方法を用いる効果としては、ブロッティング染色後の工程の省略によって相当な時間及び労力が節約できるということである。
【0134】
以下の記載は例示であり、それらに限定されるものではない。記載される実施態様における要素及び機能を本発明の他の実施態様と組み合わせて新規な実施形態を創作することもでき、またそれらも本発明に包含される。
【0135】
図1及び2を参照する。図1は、本発明の実施態様に係る、使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング電極回路の模式的な等角図であり、図2は図1で図示する電極回路における線II〜IIに沿った横断面図である。電極回路10は導電性電極4を含み、ゲル基材2は電極4に接触する。
【0136】
ゲル基材2はいかなる適切なゲルでもあってもよく、例えば架橋ポリアクリルアミド系ゲル、アガロース系ゲル、架橋ポリアクリルアミド系ゲル及びアガロースを含むゲル、又は従来技術において他のいかなるタイプの公知の適切なゲル、又はゲル混合物であってよい。ゲル基材2はイオン供給源を含有する。イオン供給源はゲル基材2調製中にゲル基材2に添加するいかなる適切な緩衝溶液でもあってもよく、例えばブロッティング用の公知のいかなる緩衝液でもよく、特に限定されない。
【0137】
導電性電極4はいかなる適切な導電性電極でもあってもよい。好ましくは、必須ではないが電極4は薄い金属の箔又はワイヤラス(例えば薄い銅アルミニウムの箔又はメッシュ等)である。本発明の電極回路の銅電極を用いることの1つの効果としては、金属銅が本発明の陽極電極回路の陽極として含まれるとき、銅陽極から銅イオンがゲル基材に遊離し、水分子の電気分解が陽極でほとんど発生しないため、気泡が陽極でほとんど発生しないということである。したがって、例示的な態様では電極は金属(例えば銅)製である。しかしながら、限定的ではないが銀、鉛(Pb)等の他の金属を含む電極を使用して他の実施とすることもでき、それらも陽極付近での気泡の形成を減少させる。
【0138】
ゲル基材4は最適に電極4に液状化ゲル(例えば限定されないが、適切な緩衝溶液中に調製した、加熱により液状化させたアガロースゲル)を適切な鋳造チャンバ(図示せず)に注入し、ゲルを凝固させることによって、電極4において鋳型成型できる。あるいは、ゲル前駆体混合溶液(限定的ではないが、周知の適切なビスアクリルアミド架橋剤と、適切なアクリルアミドモノマーを含む適切な重合開始剤とを有する適切な緩衝溶液)を適切な鋳造チャンバに設置した電極4の表面上へ注入し、重合させゲル基材2を形成してもよい。
【0139】
あるいは、他の方法を使用してゲル基材2を予め形成された電極4に接着させること、又は適切な連続ゲル押出法を用いて電極4にゲルを接着させて形成することも可能である。
【0140】
電極4を金属から作製する必要がなく、他の適切な導電性材料で作製しても、又はそれを含有してもよいことに留意すべきである。例えば、電極4は1枚の柔軟なグラファイト紙から作製でき、又は1枚の他の適切な柔軟な材料(例えば有機ポリマー製シートのような可塑性物質)に導電性材料(例えば黒鉛粉末又はカーボン粒子等)を塗布してもよい。電極4は、例えばポリアニリン系導電性ポリマー、ポリピロール系導電性ポリマー又は従来技術において公知の他のいかなる適切な導電性ポリマーなどの導電性ポリマーから作製してもよく、又は該導電性ポリマーを塗布した1枚の適切な柔軟な材料から作製してもよい。
【0141】
次に図3を参照する。メッシュタイプ又は織物タイプの電極を有する使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング電極回路を例示する図式的横断面図である。電極回路20には上記のゲル基材2、及びメッシュタイプ又は織物タイプの導電性電極4Bを含めてもよい。電極4Bは好ましくは、限定的ではないが銅線又はアルミ線又は他のタイプの金属ワイヤなどの、極細い導電性金属線からなるメッシュ又はグリッドとして形成できる。かかる金属製の細い導線は織物タイプの、導電性のファブリック様の電極を形成するのに使用でき、それにより同じ金属から作製される箔より好適な可撓性及び柔軟性が得られる。電極4Bの細い金属性ワイヤは、ファブリック様の柔軟な導電性電極を織ることができるような、適切な編組(編組は図3に詳細に示さない)としても形成できる。
【0142】
しかしながら、電極4Bは、他のタイプの細い導電性非金属導線(限定されないが、炭素繊維又は非導電性材料から作製される柔軟なファブリックから作製され、例えばカーボン粒子若しくは黒鉛粒子、又は適切な金属粒子などの適切な導電性材料でコーティング、塗布又は覆った適切なポリマー繊維又はプラスチック繊維などの繊維)からも形成できることに留意すべきである。あるいは、例えば導電性有機ポリマー製繊維などの他のタイプの導電性繊維を使用してもよい。すなわち電極4Bは適切な非導電性材料、及びその上に積層若しくはコーティングした、又はそこに付着させた適切な導電性材料を含む複合的な細い繊維で作製してもよい。
【0143】
典型的にはゲル基材2のイオン供給源はゲル基材2に添加したいかなる適切な緩衝溶液でもあってもよいが、あるいは、又はそれに加え、本発明の更なる実施態様では、ゲル基材2がエレクトロブロッティングを実施するためのイオンを供給できるイオン交換マトリクスを含有してもよい点に留意すべきである。
【0144】
次に図4を参照する。メッシュタイプ電極及びイオン交換マトリクスを含むゲル基材を有する、使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング電極回路を例示する図式的横断面図である。
【0145】
上で詳述し、図3に示したようにエレクトロブロッティング電極回路30は電極4Bを含む。ゲル基材2Bは、上記の電極回路10(図1)の詳細にて説明したような鋳型成型や重合、又は他のいかなる適切な方法によっても電極4Bに並設される。ゲル基材2Bには適切なイオン交換マトリクス16の粒子が散布された状態で含まれる。
【0146】
イオン交換マトリクス16はゲルの重合及び/又は架橋前に、ゲル基材2Bの調製に用いる1つ以上のゲル材料中に最適に散布してもよい。アガロース系ゲルを用いる場合、ゲルがまだ液体の状態にあるときにイオン交換マトリクスをゲルに添加又は散布してもよい。ポリアクリルアミド系ゲルをゲル基材2Bの調製に用いる場合、イオン交換マトリクス16の粒子はゲル基材2Bの調製に用いるゲル前駆体を含む溶液中に散布してもよい。
【0147】
電極回路において使用できるイオン交換マトリックス形式は、特にエレクトロブロッティングに用いる成分に依存し、アニオン交換マトリックス及びカチオン交換マトリックスを含有してもよい。例えば、電極回路30を陰極電極回路として用いる場合、ゲル基材2Bはアニオン交換マトリクスを含有してもよい。電極回路30を陽極電極回路として用いる場合、ゲル基材2Bはカチオン交換マトリクスを含有してもよい。上記の開示されたドライ式エレクトロブロッティング電極回路10、20及び30(それぞれ図1、3及び4中)のいずれも、以下に詳細に記載するようにドライ式エレクトロブロッティングを実施するための陰極電極回路として使用できることに留意すべきである。更に、上記で開示したドライ式エレクトロブロッティング電極回路10、20及び30のいずれかを使用して、その上に適切なブロッティング膜を配置又は接触させることにより、陽極ドライ式エレクトロブロッティング電極回路を形成できる。
【0148】
図5を参照する。本発明の実施態様に係る、ブロッティング膜を含む使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング電極回路を例示する図式的断面図である。
【0149】
上記で詳細に開示するように、電極回路40には電極4及びゲル2基材が含まれる。電極回路40にはまた、ゲル基材2に並設される、又は配置されるブロッティング膜6が含まれる。ブロッティング膜6はいかなる適切なブロッティング膜でもあってもよく、例えばニトロセルロース製ブロッティング膜、PVDF系ブロッティング膜、活性紙製ブロッティング膜、活性ナイロン製ブロッティング膜又は他のいかなる公知技術の適切なタイプのブロッティング膜であってよい。
【0150】
電極回路40はブロッティング膜6を一枚含んでなるが、本発明の他の実施態様では、単にブロッティング膜(図5に示されない)を複数枚重ねて電極回路のゲル基材2に付着させることによって多重のブロッティング膜を含む電極回路を形成できる点にも留意すべきである。以下に開示するようにドライ式エレクトロブロッティング操作を実行した後、周知のように、かかる多重膜タイプの電極回路の多重ブロッティング膜を分離し、異なる様々な用途(例えば染色、免疫検出、蛍光可視化など)に使用できる。
【0151】
次に図6を参照する。ドライ式エレクトロブロッティングの陽極電極回路とドライ式エレクトロブロッティングの陰極電極回路との間に配置される分離ゲルを含んでなる、本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムを例示する図式的横断面図である。
【0152】
ブロッティング回路50をブロッティング装置(説明の簡略化のため、ブロッティング装置自体を図6に示さない)の2つの電気接点12と14との間に配置した状態を示す。ブロッティング回路50では、陽極のドライ式エレクトロブロッティング電極回路40A及び陰極のドライ式エレクトロブロッティング電極回路10(図2を参照)との間にゲル8を配置させてもよい。
【0153】
陽極電極回路40Aに電極4A及びゲル基材2Aを含めてもよい。電極4Aは上記の電極4(図1、2及び5)と類似してもよく、ゲル基材2Aは上記のゲル基材2(図1,2及び5)と類似してもよい。しかしながら、電極4Aが図1、2及び5の電極4の形状又は組成と必ずしも同一である必要があるわけではない。同様に、ゲル2A基材が図5のゲル基材2と類似してもよいが、これは本発明の実施に必須ではない。ゲル2A基材がゲル基材2と類似又は異なる組成を有してもよい点に留意すべきである。電極回路40Aにはまた、ゲル基材2Aに並設される又は、配置するブロッティング膜6が含まれる。ブロッティング膜6はいかなる適切なブロッティング膜であってもよく、例えばニトロセルロース系ブロッティング膜、PVDF系ブロッティング膜、活性紙のブロッティング膜、活性ナイロン系ブロッティング膜、又は他のいかなる公知技術の適切なタイプのブロッティング膜であってもよい。
【0154】
ブロッティング電極回路50の陰極側ドライ式エレクトロブロッティング電極回路10には、上記で詳述し、図1、2及び5に例示したような電極4及びゲル基材2を含めてもよい。ゲル8は典型的には、電気泳動度が異なる分子の分画又は分離するために用いられ、したがってその内部に分離された分子を含む分離ゲルである。ゲル8は生体分子の電気泳動による分離に使用できる任意のタイプのゲルであってよく、いかなる分離された公知の分子を含有してもよい。
【0155】
例えば、本発明の一実施態様では、ゲル8は標準的なポリアクリルアミド系ゲルであってもよく、公知の電気泳動による蛋白質分離を実行した後にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び様々な分離された蛋白質を適宜含有してもよい。本発明の他の実施態様では、ゲル8は分離された核酸(例えばDNA又はリボゾームRNA又は他のタイプのポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド)を含有するアガロース系ゲルでもよい。本発明の他の実施態様では、ゲル8は分離の対象となる分子が各々に直交する方向において順次分離される公知の二次元(2D)分離ゲルであってもよく、又は公知の等電点電気泳動ゲルであってもよい。
【0156】
ブロッティング電極回路50は、図6に示すようにドライ式エレクトロブロッティングの陽極電極回路40Aとドライ式エレクトロブロッティングの陰極電極回路10との間にゲル8を配置して形成してもよい。例えば、陽極電極回路40Aを適切な平面に配置し、ゲル8をブロッティング膜6の表面に慎重に敷設してもよい。ブロッティング膜6上へのゲル8の設置の間、ゲル8とブロッティング膜6との間に気泡のトラッピングが生じないよう注意する必要がある。次いで陰極電極回路10を、ゲル8の上部表面と電極回路10のゲル基材2との間に気泡のトラッピングが生じないように慎重にゲル8の上面に慎重に設置してもよい。
【0157】
図6に詳細に示すように、完成したブロッティング電極回路50を次いで電気接触部12及び14と接触する形で配置してもよく、その場合接触部12は陰極電極回路10の電極4と接触し、接触部14は陽極電極回路40Aの電極4Aと接触する。適当な極性を有する適切な電圧を接触部12及び14に印加し、エレクトロブロッティングを実施する。生体分子は次いでブロッティング膜6上へエレクトロブロッティングされる。
【0158】
ドライ式ブロッティング操作の完了後、ブロッティング電極回路50を分解し、ブロッティング膜6を取り出し、周知の更なる試験、染色(必要に応じて)、可視化及び/又は更なる使用に供してもよい。
【0159】
なお、本発明の更なる実施態様では、図6のブロッティング電極回路に付加的なブロッティング膜(図6に示されない)を含めてもよく、かかる付加的なブロッティング膜(図示せず)をゲル2とゲル基材8との間に配置してもよい。かかる二重膜ブロッティング電極回路は、ゲル基材8中の条件下で、ブロッティングの対象となる分子に正電荷のものと負電荷のものとが含まれる場合に有用でありうる。例えば、蛋白質分離で公知のように、特定のpH条件下で大部分の蛋白質分子が負電荷であっても、幾つかの蛋白質分子が正味の陽電荷を有する場合もある。かかる正に荷電した蛋白質分子(又は他の正に荷電した非蛋白質分子)は陰極の方向へ電気泳動的に移動するため、図6で図示する位置のブロッティング膜6上へブロッティングされない。本発明の更なる実施態様では、付加的なブロッティング膜(図示せず)が陰極電極回路10のゲル基材2とゲル基材8との間に配置されるとき、いかなる種類の正に荷電する種を付加的な膜上へブロッティングでき、それを検出及び/又は回収及び/又は使用できる。
【0160】
かかる二重膜を含むエレクトロブロッティング電極回路によるエレクトロブロッティングの完了後、電極回路を分解し、両方のブロッティング膜を取り出し、分離された分子種の更なる染色及び/又は検出及び/又は同定及び/又は可視化、及び/又はかかる分子種を単離して更なる使用に供してもよい。またかかるブロッティングされた分子種を、二重膜ブロッティング電極回路に含まれるかかる2枚のブロッティング膜の1枚又は両方の上で、本明細書において開示したいずれかのin situでの染色方法を用いて染色することができ、それは本明細書において詳細にて開示したようにエレクトロブロッティング電極回路のゲル基材2及び/若しくはゲル基材2A中に適切な染色物質又は基質を含有させることにより、又は陽極電極回路の電極に含めた銀金属を用いることにより行われる。
【0161】
上記で開示したように第2のブロッティング膜をエレクトロブロッティング電極回路に含める場合、付加的なブロッティング膜を陰極電極回路の一部として適宜含めてもよい。例えば、ブロッティング膜6と類似又は異なるブロッティング膜を、図2の電極回路10のゲル基材2の表面であってゲル基材2の電極4が取り付けられる側の反対側に並設し、ブロッティング膜を含む陰極電極回路(図示せず)を形成するのが好ましい。ブロッティング膜を含むかかる陰極電極回路をゲル8及び陽極電極回路40(図5)と共に使用し、上記の二重膜エレクトロブロッティング電極回路を形成してもよい。
【0162】
あるいは、本発明の他の実施態様では、電極回路10(図2)及び電極回路40(図5)及びゲル8と共に、分離して設置されるブロッティング膜(図示せず)を用い、上記の二重膜エレクトロブロッティング電極回路を(手作業、又は以下に詳細に開示する適切な気泡除去装置を用いて)形成することも可能である。
【0163】
ゲル8、陰極電極回路10及び陽極電極回路40Aからブロッティング電極回路50を構成する際、ゲル8と電極回路10と40Aとの間に空気がトラップされる傾向があることに留意すべきである。かかる閉じ込められた気泡はブロッティング電極回路50を流れる電流の均一な流れを妨げるおそれがあるため、望ましくない。本発明の本発明者はまた、本発明の装置を構成する間のブロッティング電極回路への気泡のトラッピングを減少又は除去する新規な装置を提供する。
【0164】
図7、8、9及び10を参照する。図7は本発明の実施態様に係る、本発明のドライ式エレクトロブロッティング電極回路をエレクトロブロッティングされるゲルに接触させつつ気泡のラッピングを減少させることが使用可能な気泡除去装置の一部の模式的な断面図である。図8では、ドライ式エレクトロブロッティング装置と気泡除去装置を連結した、本発明の更に別の実施態様に係るエレクトロブロッティング装置の幾つかの図を示す。また図9では図8のエレクトロブロッティング装置の図を示す。ここでは気泡除去装置の2つの分離した構成要素が開いた状態にある。また図10では、図8及び図9のエレクトロブロッティング装置の幾つかの図を示す。ここでは図9の気泡除去装置の蓋が閉じられ、2つの分離した構成要素が閉じた状態にある。
【0165】
図8及び9において、エレクトロブロッティング装置100には気泡除去装置60が含まれ、エレクトロブロッター装置80は同一のハウジング内で組み合わされている。エレクトロブロッター装置80には平面86Aが含まれてもよく、ブロッティング電極回路50又は他のいかなる適切なブロッティング電極回路を構成した後にその上に設置し、エレクトロブロッティングを実施できる。エレクトロブロッター装置80にはカバー82が含まれてもよい。表面には86A電気接点(図示せず)が含まれる。電気接点はスプリング入りでもよく、又はスプリングがなくともよく、それを使用して表面86Aと接触して設置したブロッティング電極回路(図示せず)に電圧を印加してもよい。同様に、表面86Cには電気接点(図示せず)が含まれる。電気接点はスプリング入りでも、又はスプリングがなくともよいが、それらが陽極と陰極の電極回路の電極に押しつけられ、それらの間で良好な電気的接触が得られる必要がある。またそれを使用して表面86Cと接触して設置されたブロッティング電極回路に電圧を印加してもよい。
【0166】
装置100には電源(詳細に示さない)を含めてもよく、装置100のハウジング84中に配置してもよい。あるいは、装置100は分離した適切な電源(図示せず)から外部の電力を受け取る適切なソケット又は接触部(説明の簡略化のため示さず)を有してもよい。
【0167】
エレクトロブロッティングの実施の際、図6のブロッティング電極回路50(又は本明細書において記載される他のいかなるブロッティング電極回路)を表面86Aに設置し、ブロッティング電極回路50の陰極電極回路10の電極4の上面と接触するまでカバー82を降ろし、カバーの電気接点を電極4と電気的に接触させ、表面86Aの電気接点を陽極電極回路40Aの電極4Aと電気的に接触させることができる。カバー82は適切な掛け金89又は他のいかなる適切な型締機構によって閉じて保持し、電圧差を電気接点間に印加してエレクトロブロッティングを開始することができる。エレクトロブロッティングの間の電流印加の詳細、及びエレクトロブロッティング操作における他の詳細及び異なるパラメータを実施例1から14に示す。
【0168】
本明細書に開示、例示する装置100には気泡除去装置60及びエレクトロブロッター80の組み合わせが含まれるが、これが必須ではない点に留意すべきである。本発明の他の実施態様では、気泡除去装置はブロッティング電極回路の設置の際に別々の装置として設置してもよく、またエレクトロブロッティングを周知のいかなる別々のエレクトロブロッター装置を使用して実施してもよい。
【0169】
図7に戻ると、気泡除去装置60には好ましくは平坦な表層62Aを有するベース62が含まれる。ローラー64は可動支持機構70に連結する。可動支持機構70は2つの挟持腕61Aと61Bによりベース62と連結し(図9に最良の態様を示す)、ローラー64がベース62の表面62A上に保持される。可動支持機構70はハンドル74を有し、それを握って76A及び76B(図7)として示す方向に可動支持機構70を移動させるのに使用する。ローラー64は軸65と連結され、支持機構70に回転可能に可動的に連結される。支持機構70とローラー64の軸65は2つのスロット付き支持部材72(支持部材72のうちの1つのみを図7の横断面図に示す)によって支持され、各々が垂直スロット72Aを(最良の態様を図10に示す)を有する。以下に詳細に開示するように、可動支持機構70はローラー64とベース62の表面62Aとの間の隙間を調整する目的で構成される。
【0170】
支持機構70は通常矢印76A及び76Bで示される方向に屈曲できるように構成される。矢印76Bの方向に支持機構70を倒すことでローラー要素64が持ち上がり、軸65がスロット付き支持部材72の垂直スロット72Aの範囲内で上方にシフトし、それによりローラー64とベース62の表面62Aとの間の隙間が拡大する。矢印76Aの方向に支持機構70を倒すことでローラー要素64が下降し、軸65が垂直スロット72Aの範囲内で下方にシフトし、それによりローラー要素64とベース62の表面62Aとの間の隙間が縮小する。
【0171】
気泡除去装置60にはまたベース62に可動的に連結される2つの可動な分離部材75及び77が含まれる。分離部材75及び77は、図9に示すように、円形断面を有するロッド状の長形部材であってもよいが、楕円横断切片又は他のいかなる適切な断面を有する長形部材であってもよい。分離部材75及び77を移動させ、ベース62の表面62A上にゲル及び/又はドライ式ブロッティングの1つ以上の電極回路を配置させてもよい。例えば、図9では分離部材75及び77は開かれた状態で示され、支持機構70はローラー65と表面62Aとの間の距離が最大となる態様で開いた状態で示される。
【0172】
図9では気泡除去装置の分離部材75及び77が開いた状態で示される。図10では分離部材75及び77が閉じた状態で示される。
【0173】
図7に戻り、本発明の方法に従ってブロッティング電極回路を構成したときの気泡除去装置60を示す。本発明の1つの適用可能な方法に係るブロッティング電極回路(例えば図6のブロッティング電極回路50)の構成によれば、移動支点機構70を開いてローラー65と表面62A(図9に示す)との間の隙間を最大にでき、また、分離部材75及び77を上方へ移動させて側部に向かって開いた状態にし(図9に示す)、表面62Aへの比較的自由なアクセスが可能となる。次いで、陽極のドライ式ブロッティング電極回路40A(図6を参照)又は本明細書において記載した他のいかなるタイプの適切な陽極電極回路とも、図7に示す位置で表面62Aと接触し、そこで導電性電極4Aが表面62A及び上方に対向して位置するブロッティング膜6と接触する。次いで分離部材75を陽極電極回路40Aのブロッティング膜6の表面と接触するまで下ろす。次いでゲル8(図6に関して上記で開示したように、分離された分子を含有する)を陽極電極回路40Aのブロッティング膜6の表面上、及び図7で詳細を示す分離部材75を覆う形で設置し、それによりゲル8の一部が分離部材75によってブロッティング膜6から隔離され、ゲル8の他の一部がブロッティング膜6の一部と接触する。
【0174】
次いで分離部材77を下ろし、ゲル8の状面と接触させるように配置する。次いで陰極電極回路10(図2に詳細を示す)をゲル8の上に、分離部材77(図7に示す)を覆う形で配置し、それによりゲル基材2の一部が分離部材77によってゲル8から隔離され、一方ゲル基材2の他の一部がゲル8の一部と接触する。陰極電極回路10(図6で詳細を示す)の導電性電極4は上方を向いて存在する(図6で詳細を示す)。
【0175】
次いで支持機構70を(図7の矢印76Aで示す方向へハンドル74を動かして)下向きに下げ、ローラー64の下部が陰極電極回路10の導電性電極4の上面と接触させ、その上にわずかな圧力を及ぼさせる。次いで、陰極電極回路10及び陽極電極回路40Aと共にゲル8を含む全ての組み合わせの端部を図7の矢印85で示す方向に引き、ブロッティング電極回路50(図6に示す)を形成させる。ゲル8、陰極電極回路10及び陽極電極回路40Aを含む組み合わせを矢印85で示す方向に引くと、分離部材75及び77はそれぞれゲル8と電極回路40Aと電極回路10との間にスペース91及び92を維持し、それによりゲル8と電極回路40Aと電極回路10との間における気泡のトラッピングの除去又は少なくとも顕著な減少が促進される。
【0176】
更に、ローラー64によって印加される圧力により好ましくはブロッティング膜6とゲル8間、及びゲル8と陰極電極回路10のゲル基材2との間の密着が確保され、それによりエレクトロブロッティングの効率化及び均一性の改善が得られる。次に図17を参照する。保持トレイに組み込んだ適切な電極を含むブロッティング電極回路の横断面図であり、それによりブロッティング電極回路を保持トレイ中に配置しながらのドライ式エレクトロブロッティングの実施が可能となる。
【0177】
ブロッティング電極回路150には保持トレイ222が含まれる。保持トレイ222には使用の際に図17のプリングタブ223と類似のプリングタブ223を含めてもよい。保持トレイ222には電極回路140が含まれる。電極回路140には2つの細い銅箔片140A及び140Bを含めてもよい。銅箔片140Aは保持トレイ222の底部の外面222Aと接触する。銅箔片140Bは保持トレイ222の底部の内表面222Bと接触する。銅箔片140A及び140Bは保持トレイ222の開口部を通じて導電性コネクタ140C(限定されないが例えば短い銅ストリップ)によって各々電気的に連結される。
【0178】
銅箔片140A及び140Bを、銅メッシュ又は銅ファブリックの編み物で作製された適切な部材で、又は限定されないが本明細書で開示する全てのタイプの導電性材料などの他のいかなる適切な導電性金属若しくは素材、又はいかなる材料の組み合わせによる、適切な形状及び/若しくは構成を有するもので置換できることに注意されたい。
【0179】
本明細書で詳細に開示したように、ブロッティング電極回路150にはまた陽極電極回路130が含まれる。陽極電極回路130の電極134が銅箔片140Bと電気的に接触することにより、電流が電極140を通じて電極134に流れる。
【0180】
ブロッティング電極回路150にはまた、図6のゲル8に関して記載したように分離された分子(例えば蛋白質、DNA、リボゾームリボ核酸等)を含有するゲル148が含まれる。ゲル148は陽極電極回路130のブロッティング膜136と接触する。ブロッティング電極回路150にはまたゲル基材142と電極144を有する陰極電極回路145が含まれる。上記で詳細に開示するように、ゲル基材142と陽極電極回路145の電極144はゲル基材2と陽極電極回路10の電極4と類似していてもよい。ゲル基材142はゲル148の上面で接触する。
【0181】
図17の完全なブロッティング電極回路150では、表面86Aと表面86Bとの間にエレクトロブロッター装置80(図8を参照)を配置してもよい。表面86B上の電気接点は、装置を操作する間、陰極電極回路145の電極144と電気的に接触する。銅箔片140Aはハウジング84(図8を参照)の電気接点と電気的に接触する。電極14はハウジング84中に形成される凹部(説明の簡便化のため詳細に示さない)に配置され、ハウジング84の表面86Aに曝露される。ブロッティング電極回路150が図17に例示する位置に配置されるとき、装置の電気接点を通してブロッティング電極回路150に電流を印加し、本明細書で詳述したようにエレクトロブロッティングを実施できる。
【0182】
当業者であれば、保持トレイ222中の電極140の構成は必須ではなく、特に装置100の形状及び電気接点の位置、用いる電流の強さ及び他の設計上の考慮に依存して様々な態様で変化できると認識するであろう。すなわち、装置の電気接点の位置及び構成は保持トレイ222と電極140の様々な構成に応じて変形できる。
【0183】
例えば、保持トレイ222の底の開口部を省略してもよく、細長い銅箔ストリップ(図示せず)を保持トレイ222の内表面222Bに取り付けてもよい。銅スリップの一端が電極134との電気接点を構成し、一方で銅スリップ(図示せず)の他端がプリングタブ223の上面で留まってもよい。この構成では、電極14(又は他の異なる適切な電極)をプリングタブ223に配置される銅箔ストリップの端部と電気的に接続させ、電流を電極134に印加してもよい。かかる構成により、図17で示す電極140を有する構成と比較し簡易なものとなり、かつ製造コストも安価になる。
【0184】
図面に示し本明細書で開示した様々なタイプの電極に関する配置、形状、サイズ及び材料組成物の組み合わせについての多数のかかる配列及び組み合わせの変更は当業者にとり容易である。本明細書で開示し、図面において例示する構成は、例示のみを目的として提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0185】
下記の実施例1から14において、本発明の方法及び電極回路の詳細な非限定的な実際上のアプリケーションを列挙する。
【0186】
実施例1
E−PAGE 6% 96ゲル(Invitrogen社、カールズバッド、カナダ、カタログ番号EP096−06として市販)、及びEBase電気泳動装置(Invitrogen社、カタログ番号EBM−03として市販)を用い、14分間(プログラムEPによる)電気泳動した。5μLのE−PAGE See Bluepre−stained protein standard(Invitrogen社(USA)、カタログ番号LC5700)をEPAGEゲルカセットの各々のウェルにロードした。泳動終了後、カセットを開放しゲルを取り出した。
【0187】
分離された蛋白質スタンダードを内部に含有するゲルを、上記図6で詳細に開示したように陽極電極回路と陰極電極回路の間に挟む形で設置した。陽極電極回路には、Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ)を裁断して12cmの長さ、8cmの幅に作製した銅メッシュの編み物による銅メッシュ電極を使用した。上記編み物状の銅メッシュ電極を、3mmの厚を有する同じ表面積(8×12cm)のゲルスラブの1つの面に接触させた。上記ゲルスラブは、120mMのビストリス、95mMのトリシン、95mMのBES、0.3%のSDS及び20%のエチレングリコールを含むポリアクリルアミド/アガロース複合体(5%の架橋剤及び0.5%のアガロースを有する10%のポリアクリルアミド)で調製した。8×12cmの寸法の0.2μの細孔径を有するニトロセルロース膜(カタログ番号BA83としてSchleicher&Schuell Bioscience社から市販)を、ゲルスラブの銅メッシュ電極が取り付けられた面の反対側のゲルスラブの面に接触させた。
【0188】
陰極側のドライ式ブロッティング電極回路は、上記で詳述した陽極電極回路のゲルスラブの作製と同様に、8×12cmの寸法及び1.5mmの厚を有し、同じ組成を有する第2のゲルスラブとして作製した。
【0189】
図7から10で示し、上記した気泡除去装置60の表面62A上に陽極電極回路を設置してブロッティング電極回路を形成し、次いで分離後の蛋白質スタンダードを含有するE−PAGE 96ゲルを、陽極側のドライ式ブロッティング電極回路のブロッティング膜の表面に設置し、次いでE−PAGE 96ゲル上に陰極側ブロッティング電極回路を設置した。ブロッティング電極回路の形成の詳細は、上記図6から10に関して詳述したとおりである。
【0190】
EPAGE 96ゲル、陰極電極回路及び陽極電極回路から作製したブロッティング電極回路サンドイッチを、気泡除去装置60のローラー64に通し、層間の気泡を除去した。次いでブロッティング電極回路サンドイッチに圧力を与え、電極に35Vの電圧を7分間印加した。このドライ式エレクトロブロッティング工程終了後、ブロッティング膜とEPAGE 96ゲルをサンドイッチから分解したところ、着色マーカーがブロッティング膜上に視覚的に観察され、EPAGE 96ゲルには着色マーカーが全く観察されず、ゲルからブロッティング膜への蛋白質スタンダードの効率的な転写を示すものであった。本発明のドライ式エレクトロブロッティング電極回路を用いた蛋白質ドライ式エレクトロブロッティングの完了後、ニトロセルロースブロッティング膜における着色蛋白質の効果的な転写がなされていることを示すものであった。
【0191】
本発明の陽極電極回路への銅金属の使用により、導電性銅電極とそれに接触するゲル基材との間において実質的にガスの放出及び気泡の形成が減少又は排除され、それにより大きい電流の使用が可能となり、好ましいことにブロッティング時間の短縮につながる。エレクトロブロッティングの際の典型的な(最初の)電流密度は1cm2当たり約30mA(30mA/cm2)とした。対照的に、大部分の市販のセミドライ式ブロッティング装置では典型的には1cm2当たり2〜6mA(2〜6mA/cm2)の範囲の電流密度に制限される。これにより、好ましいことにブロッティングに必要な時間の短縮が可能となり、ゆえに時間が節約され、更に一定時間内に各ブロッティング装置においてより多くのブロッティング操作を実施することが可能となる。
【0192】
実施例2
実施例1の陽極電極回路で用いた銅メッシュの編み物の代わりに、アルミニウム箔(3M社、カタログ番号1170、USA)から陽極電極回路の導電性電極を作製したことを除いて、上記の実施例1と同様にエレクトロブロッティングを実施した。かかるアルミニウム電極を使用するエレクトロブロッティングの結果、実施例1の結果よりブロッティングの効率が若干低下した。
【0193】
実施例3
陽極電極回路に用いるゲル基材の組成を以下の通りとしたことを除き、上記の実施例1と同様にエレクトロブロッティングを実施した。4%のアガロース、120mMのビストリス、95mMのトリシン、95mMのBES、0.3%のSDS及び20%のエチレングリコールを含んでなるゲルを、同体積の、ビストリスイオンをロードした湿式の繊維状セルロースリン酸系の陽イオン交換マトリクス(カタログ番号p11、Whatman International社製)と混合した。また、陰極電極回路の調製に用いたゲルの組成を以下の通りとした。4%のアガロース、120mMのビストリス、95mMのトリシン、95mMのBES、0.3%のSDS及び20%のエチレングリコールを含んでなるゲルを、同体積の、トリシンイオンをロードした、予め膨張させた微粒子状のジエチルアミノエチル(DEAE)セルロース系アニオン交換マトリクス(カタログ番号DE52、Whatman International社製)と混合した。実施例1で詳述したようにブロッティングを実施した。良好なブロッティング結果が得られた。
【0194】
陰極電極回路のゲルマトリックス基材のみにイオン交換マトリクスを含有させて更なる実験を実施した。陽極電極回路及びE−PAGE 96ゲルを上記実施例1に詳述したとおり作製した。陰極電極回路の調製に用いるゲルの組成を以下の通りとした。4%のアガロース、120mMのビストリス、95mMのトリシン、95mMBES、0.3%のSDS及び20%のエチレングリコールを含んでなるゲルを、同体積の、トリシンイオンをロードした、予め膨張させた微粒子状のジエチルアミノエチル(DEAE)セルロース系アニオン交換マトリクス(カタログ番号DE52、Whatman International社製)と混合した。実施例1の記載と同様にブロッティングを実施した。良好なブロッティング結果が得られた。
【0195】
実施例4
EPAGE(商標)48 8%ゲル(Invitrogen社、カタログ番号EP048−08)、プログラムEPをEBase電気泳動装置(Invitrogen社(USA)、カタログ番号EB−M03)を使用し、23分間電気泳動を行った。Benchmark protein ladder solution(Invitrogen社(USA)、カタログ番号10747−012)の5μLのサンプルを、E−PAGE(商標)48ゲルの幾つかのウェルにロードした。電気泳動完了後、ゲルをカセットから取り出し、実施例1で詳細に説明したように、5分間エレクトロブロッティングした。ブロッティングに用いる陽極電極回路は、上記の実施例1で用いた陽極電極回路と類似していた。但し、実施例4で用いる陽極電極回路の導電性電極は実施例1で用いた導電性電極と異なる点を除く。実施例4で用いる陽極電極回路の導電性電極を以下の通りに作製した。銅メッシュ電極はKiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ)を裁断して12cmの長さ、8cmの幅に作製した銅メッシュの編み物を用いて作製した。銅メッシュの編み物の電極に銀エマルジョン(elcolit 370(Elosol社製、チューリッヒ、スイス))を塗布した。この電極と接触するゲルの基材は実施例1の陰極電極回路において用いるゲルの基材と同じ寸法及び同じ組成であった。実施例4で用いるブロッティング膜及び陰極電極回路には実施例1にて詳述したのと同様のものを使用した。
【0196】
ブロッティング工程の間、銅メッシュに塗布した銀金属原子に由来し、陽極で形成される銀イオンはブロッティング膜の方へ移動し、同時にE−PAGE48ゲルからブロッティング膜に転写された蛋白質と相互作用した。ブロッティングの完了後、ブロッティング膜をブロッティング電極回路から取り出し、2分間紫外線に曝露し、次いで10分間周辺光(室内光)に曝露した。銀染色による蛋白質のバンドはブロッティング膜上で観察できた。
【0197】
すなわち、銀含有電極を用いることにより、分離された分子(例えば蛋白質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド(DNA、リボゾームRNAなどを含むがこれに限定されない)、並びに公知の銀染色可能な他のいかなるタイプの分子)のブロッティング及び染色を同時に行うことができる。
【0198】
実施例5
E−PAGE(商標)48 8%ゲル(Invitrogen社、カタログ番号EP048−08)、プログラムEPをEBase電気泳動装置(Invitrogen社(USA)、カタログ番号EB−M03)を使用し、23分間電気泳動を行った。Benchmark protein ladder solution(Invitrogen社(USA)、カタログ番号10747−012)の5μLのサンプルを、E−PAGE(商標)48ゲルの幾つかのウェルにロードした。電気泳動的完了後、ゲルをカセットから取り出し、実施例1で詳細に説明したように、5分間エレクトロブロッティングした。陽極電極回路を実施例1で詳細に説明したように作製した。陰極電極回路を以下の通りに調製した。陰極電極回路に用いるゲルマトリックス基材を、長さ12cm×8cmの幅×1.5mmの厚のゲルスラブとして、別に(銅メッシュ電極なし)作製した。このゲルスラブの組成を、上記実施例1の陰極電極回路に用いる陰極ゲルマトリックスと同様にした。
【0199】
次いで陰極ゲルマトリックスのスラブをクマシーブルー R−250溶液(10%の酢酸及び30%のメタノール水溶液中、0.03%のクマシーブルー R−250)50mLにおいて一晩浸漬させた。次いで陰極ゲルマトリックススラブを慎重に拭いて水分を除去し、Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ)を裁断して12cmの長さ、8cmの幅に作製した銅メッシュの編み物を用いて作製した銅メッシュ電極に接触させた。実施例1で詳細に説明したように、気泡除去装置60を用いて、E−PAGE48ゲル、陽極電極回路及び陰極電極回路からブロッティング電極回路を作製した。次いでブロッティング電極回路に25Vの電圧差を印加して5分間エレクトロブロッティングを実施した。エレクトロブロッティング操作の間、負電荷のクーマシーイオンは蛋白質の直後にブロッティング膜の方向へ電気泳動的に移動し、ブロッティング膜上の蛋白質バンドを染色した。5分間のエレクトロブロッティングの終了後、ブロッティング電極回路を分解し、ブロッティング膜を取り外し、観察に供した。ブロッティング膜上に染色された蛋白質バンドが肉眼で観察された。
【0200】
実施例6
E−PAGE(商標)48 8%ゲル(Invitrogen社、カタログ番号EP048−08)、プログラムEPをEBase電気泳動装置(Invitrogen社(USA)、カタログ番号EB−M03)を使用し、23分間電気泳動を行った。Benchmark protein ladder solution(Invitrogen社(USA)、カタログ番号10747−012)の5μLのサンプルを、E−PAGE(商標)48ゲルの幾つかのウェルにロードした。電気泳動的完了後、ゲルをカセットから取り出し、実施例1で詳細に説明したように、5分間エレクトロブロッティングした。エレクトロブロッティングを25Vで5分間実施した。陽極電極回路を実施例1で詳細に説明したように作製した。陰極電極回路を以下の通りに調製した。陰極電極回路に用いるゲルマトリックス基材を、長さ12cm×8cmの幅×1.5mmの厚のゲルスラブとして、別に(銅メッシュ電極なし)作製した。このゲルスラブの組成を、上記実施例1の陰極電極回路に用いる陰極ゲルマトリックスと同様にした。
【0201】
次いでゲルマトリックスのスラブをSypro Ruby blot stain(Molecular Probes社製、OR、USA、カタログ番号S11791)の調製済溶液50mLに一晩浸漬した。次いで陰極ゲルマトリックススラブを慎重に拭いて水分を除去し、Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ)を裁断して12cmの長さ、8cmの幅に作製した銅メッシュの編み物を用いて作製した銅メッシュ電極に接触させた。実施例1で詳細に説明したように、気泡除去装置60を用いて、E−PAGE48ゲル、陽極電極回路及び陰極電極回路からブロッティング電極回路を作製した。次いでブロッティング電極回路に25Vの電圧差を印加して5分間エレクトロブロッティングを実施した。エレクトロブロッティング操作の間、負電荷のSypro Rubyイオンは蛋白質の直後にブロッティング膜の方向へ電気泳動的に移動し、ブロッティング膜上の蛋白質バンドを染色した。5分間のエレクトロブロッティングの終了後、ブロッティング電極回路を分解し、ブロッティング膜を取り外した。ブロッティング膜を紫外線源(Alfaimager、アルファイノテック社製、CA(USA))を使用して視覚化し、蛍光染色蛋白質バンドをブロッティング膜で観察した。
【0202】
実施例7
エチジウムブロミドを含有するEゲル48 2%ゲル(Invitrogen社(USA)、カタログ番号G8008−02)を、E−Base電気泳動装置(Invitrogen社(USA)、カタログ番号EB−M03)上のプログラムEGを使用して20分間電気泳動した。low mass ladder(Invitrogen社(USA)社製、カタログ番号10068−013)1μLのサンプル(15μlの総量でアプライ)をE−ゲルの幾つかのウェルそれぞれにロードした。電気泳動による分離完了後、ゲルをUVライトボックスを使用して視覚化し、エチジウムで染色したバンドが観察された。次いで、E−ゲルをE−ゲルカセットから取り出し、実施例1で詳細に説明したようにエレクトロブロッティングした。陰極電極回路及び陽極電極回路を実施例1にて説明したように作製した。実施例1で詳細に説明したように、気泡除去装置60を用いて、Eゲル48 2%ゲル、陽極電極回路及び陰極電極回路からブロッティング電極回路を作製した。エレクトロブロッティングを25Vで5分実施した。
【0203】
エレクトロブロッティング完了後、E−ゲル48(2%)ゲルをUVライトボックス TFX−20M(Vilber Lourmat社製(フランス))を使用して視覚化したが、蛍光バンドが観察されず、ブロッティング膜へのDNAバンドの効率的な転写が示された。次いでブロッティング膜をモデルDR−45M dark reader(Clare Chemical Research社、CO、USA)を通じて視覚化し、撮影した。ブロッティングされた全てのバンドが直ちに視覚化された。
【0204】
実施例8
iBlot(商標)エレクトロブロッティング装置は電子回路部品によって制御される電源ユニットであり、指定されたプログラム通りの電界を発生させることができる。ドライ式エレクトロブロッティング装置をイオン貯蔵部として働くドライ式エレクトロブロッティング電極回路用に設計した。このシステムでは、分離ゲルからサンプルを駆動させるのに必要なイオンは、緩衝液又は浸漬した濾紙の代わりにゲルマトリックス(陽極電極回路の場合イオン交換マトリクスを含む)に含まれており、そのため操作がクリーンで簡便なものとなり、必要となる手作業も最小限となる。転送速度は電極と内蔵電源との間の距離を短くし、フィールド強度及び高電流を創出することにより増加する。
【0205】
装置はステンレス鋼、並びに転写膜、分離ゲル及び電極回路(電極+並設されたゲルマトリックス)との間の気泡の機械的除去に用いる「気泡除去装置」のアルミニウム製部品を有するCycoloyプラスチックシェル中に取り付けられる。装置には、イオン及びサンプルの駆動力を生じさせる、25Vで〜6Aの電流で225Wを生じさせることができる補助電源機構(100〜240V、AC:50〜60Hz)が含まれる。電源は3つの電子回路によって制御される。ソフトウェアにより制御されるコントロールパネルにより、ユーザーがそれらの分離システムから最良の転写結果を得るためのプログラムを選択できる。3つの実行プログラムが開発され、最適な転写のためにiBlot(商標)中にプログラミングされている。第1のプログラム(25Vで実行)では、サンプルを1つのミディ又は2つのミニサイズの1mm厚NuPAGEゲル及びEPAGEゲルから、それぞれ7及び8分で転写でき、23Vのプログラムでは1つのミニサイズのNuPAGEゲルを7分で転写する用途に使用できる。20Vで実行する第3のプログラムは、より長い転写が必要とされる用途に使用する。4つのプリント基板(PCB)上には、システム論理演算装置の実行、表示及び論理演算のための電圧及び電流の調整、及びエレクトロブロッティングプロセスへの給電に必要となる電子部品を担持される。更に装置はUSBポート(新規なプログラムのアップロード及び転写データのダウンロードに用いる)を有する。
【0206】
装置は、装置の背面の電源差込口及びUSBポート付近に位置する電源スイッチによってオンにされる。6桁の液晶ディスプレイ(LCD)は、プログラム番号及びブロッティング時間を示す。LCD付近に位置する3つのボタンでプログラム又は時間選択を制御する。赤いスタート/ストップボタンにより実行、停止がなされ、更に次の押圧でプログラムがリセットされる。赤と緑のLEDは実行状態又はエラー状態を示す。アラート音を、実行スタート、実行終了及び誤差動を通知するために利用してもよい。
【0207】
転写面にはスタック(陽極電極回路、分離ゲル、陰極電極回路)が転写の際に配置され電気接点を提供する陽極設置領域、並びに転写の間スタックを覆う形で配置される蓋が含まれる。蓋にはスポンジを固定する領域があり、更に電気接点が含まれる。陽極設置領域と蓋の電気接点は金めっきされた銅−ベリリウムである。
【0208】
使い捨て可能な電極回路はプラスチックトレイに設置され、ラミネートシールが施され、乾燥、光及びガスから電極回路を保護している。電極回路には、1つのミニゲル用のミニサイズ、及び2つのミニゲル又は1つのミディゲル又はEPAGEゲルを転写するためのレギュラーサイズの2つのサイズが存在する。
【0209】
陽極電極回路のゲルマトリックスの組成を表1に示す。
【0210】
(表1)陽極ゲルマトリックスの組成
【0211】
DEAEセルロース/トリシンとの混合前の陰極ゲルマトリックスのゲルマトリックス組成を表2に示す。DEAE−セルロース/トリシンを下記組成物と1:1で混合し、陰極ゲルマトリックス基材を調製した。
【0212】
(表2)陰極ゲルマトリックスの組成(イオン交換マトリクスとの混合前)
材料:
iBlot(商標)ユニット
陽極電極回路(底部スタック)
陰極電極回路(上部スタック)
使い捨て可能なスポンジ
分離されたサンプルを有するユーザーの分離ゲル
iBlot(商標)のセットアップ
【0213】
キットの備品のケーブルを使用してiBlot(商標)をAC出力に接続した。分離ゲルの泳動がほぼ完了したとき、iBlot(商標)の装置の裏の電源スイッチを押してオンにした。装置内の送風機が動作を開始し、デジタル表示が起動した。文字がディスプレイに表示され、2、3秒の安定化の後、操作のデフォルトパラメータ(プログラム、時間)が表示された。デフォルトパラメータは円形の選択ボタンを押圧することで変化させることができ、プログラム選択、動作時間(分及び秒)で変えることができる。現在選択された項目が点滅する。UP/DOWNボタン(+/−)を用いて所望のパラメータ値(秒を10秒単位で増加又は減少できる)に調節できる。
【0214】
iBlot(商標)がオンにされる毎に、予め設定されたデフォルトパラメータが表示される:以前の実行時のソフトウェアのバージョン、プログラム及び実行時間。表3は異なる分離ゲル毎に推奨されるプログラム及びそれらの実行パラメータの具体例を示す。
【0215】
(表3)推奨される実行パラメータ
最初の結果に基づいて、最適な結果を得るためにブロッティング条件(時間又はプログラム)を変更できる。
【0216】
ブロッティングの実施前に、気泡除去装置を使用したiBlot(商標)(例えばE−PAGE)を設置するため、蓋を開け、気泡除去装置の金属スペーサを引き上げ、気泡除去用のローラーを取り外した。スペーサ(棒)、気泡除去ローラー及びブロッティング面は清掃され、平滑である必要がある。そうでない場合には部品を湿った布で拭く。ブロッティング膜を有し、プラスチックトレイに設置されている陽極電極回路が梱包されている「転写スタック(底部)」とラベルされた包装を開封した。気泡除去ローラーの左側に置き、トレイのプルタブを気泡除去装置の右に位置させた。表面の左側に存在するストッパーで止まるまで、それを左に移動させた。次に、スペーサ#1(白いスリーブ付き)を濡らし、膜上に置いた。次に、分離ゲルをスペーサ#1の上に置き、底部スタック又は陽極電極回路(ゲルのウェルは上向きが望ましい)の右隅に配置した。気泡除去装置上に分離ゲルを配置する前の特殊な処理は必要でない。スペーサー#2を濡らし、ゲル上に置いた。
【0217】
上部スタック(陰極電極回路)を開き、赤いプラスチックトレイを廃棄し、上方を向く銅電極側と共にスペーサ#2上に配置した。効率的な気泡除去を実施するために全ての層を右に配置する必要がある。気泡除去ローラーを2本の斧溝に挿入し、右向きに、へこみの下にそれを押圧する。ローラーがその最も低い位置まで降ろされる一方、プルタブは保持される。
【0218】
両方のプルタブを使用して、気泡除去装置を通ってブロッティング領域の方へ、1つの滑らかな動作において、それがブロッティング面上の障壁に達するまでスタック及び分離ゲルを共に引いた。層は右に整列配置するのが望ましい。
【0219】
白い側がユーザーに面し、金属接触部が右上に位置するように、使い捨て可能なスポンジを蓋の内面上に設置した。スポンジをその位置に保持する小さい突起が蓋上に存在する。スポンジはブロッティングの間に発生しうる過剰な液体、及びスタック表面への圧力を吸収する機能を有する。蓋を閉じ、掛け金を固定した。回路が閉じられたことを示す赤ランプが点灯した。スタート/ストップボタンを押し、転写を開始させた。次いで制御ランプが赤から緑に変化した。ブロッティング操作終了後、デジタル表示が点滅し、「ビープ音」が繰り返し鳴った。次いでiBlot(商標)の蓋を開け、スポンジと上部スタック(陰極電極回路)を廃棄した。
【0220】
膜をゲルから慎重に剥がし、検出のための通常の操作を行った。膜の乾燥は厳禁である。
【0221】
使用した底部スタック(陽極電極回路)をそのプラスチックトレイと共に廃棄した。スポンジ、濾紙、上部及び底部スタック(電極回路)は再利用しなかった。必要に応じて、ブロッティング面を湿った布で清掃してもよい。この時点で、iBlot(商標)は他の実行の準備ができる(冷却時間は必要ない)。あるいは、iBlot(商標)の電源をオフにする。
【0222】
厚さ1.5mm以下のブロッティング分離ゲル用の、iBlot(商標)の設置:
蓋を開き、両方の金属スペーサを上げた。ブロッティング面は清潔である必要がある。汚れている場合には部品を湿った布で拭く。直接底部スタックをブロッティング面(丸い蓋の下)に配置し、右側のストッパーに整列させた。膜と底部(陽極)ゲルとの間の気泡を注意深く除去する必要がある。底部(陽極)スタックの膜上に分離ゲルを置いた。その上に水で湿潤させた濾紙(濾紙はキットに含まれる)を置いた。キットに含まれる手のひらサイズローラーを用いて膜と分離ゲルとの間にトラップされた気泡を除去した。
【0223】
上部スタック(陰極電極回路)を開き、プラスチックトレイを廃棄し、濾紙の上にスタックを置いた。白い側がユーザーに面し、金属接触部が右上に位置するように、使い捨て可能なスポンジを蓋の内面上に設置した。スポンジをその位置に保持する小さい突起が存在する。スポンジはブロッティングの間に発生しうる過剰な液体、及びスタック表面への圧力を吸収する機能を有する。蓋を閉じ、掛け金を固定した。回路が閉じられたことを示す赤ランプが点灯した。スタート/ストップボタンを押し、転写を開始させた。次いで制御ランプが赤から緑に変化した。ブロッティング操作終了後、デジタル表示が点滅し、「ビープ音」が繰り返し鳴った。次いでiBlot(商標)の蓋を開け、スポンジと上部スタック(陰極電極回路)を廃棄した。膜をゲルから慎重に剥がし、検出のための通常の操作を行った。
【0224】
使用した底部スタック(陽極電極回路)をそのプラスチックトレイと共に廃棄した。スポンジ、濾紙、上部及び底部スタック(電極回路)は再利用しなかった。必要に応じて、ブロッティング面を湿った布で清掃してもよい。この時点で、iBlot(商標)は他の実行(冷却時間は必要ない)の準備ができる。あるいは、iBlot(商標)の電源をオフにする。
【0225】
(表4)iBlot(商標)の基本的な操作条件
【0226】
実施例9
E−PAGE(商標)8% 48ゲル(EP048−08、Invitrogen社、カールズバッド、CA)において、25分間(プログラムEP)、E−Base(商標)(Invitrogen社EBM−03)電源を使用して泳動を行った。5μLのSeeBlue(登録商標)Plus2で前染色した蛋白質スタンダード(LC5700、Invitrogen社、カールズバッド、CA)を全てのウェルにロードした。
【0227】
実施後、カセットを開き、ゲルを取り出した。
【0228】
陽極電極回路は240mMのビストリス、190mMのトリシン、95mMのBES、及び20%のエチレングリコールを含んでなるポリアクリルアミド/アガロース複合材(5%の架橋剤及び0.5%のアガロースを有する10%アクリルアミド)により作製した厚さ3mmのゲルを用い、85×140mmの銅電極(Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ))上に設置して構築した。陽極電極回路(ゲルマトリックス+電極)をプラスチックトレイ上に置き、それをiBlot(商標)ドライ式エレクトロブロッティング装置の基部に設置した。電極及びゲルマトリックスと同じ寸法を有するニトロセルロース膜0.2μ(BA83、S&S社製、ドイツ)を陽極ゲルマトリックス上に置いた。電気泳動に供されたゲルを膜の上に置いた。
【0229】
19mmのゲル厚を有する陰極ゲルマトリックス(組成:トリシンイオンをロードしたDE−52イオン交換マトリクス50%に対し、3%のアガロース、120mMのビストリス及び95mMのトリシンからなるゲル溶液を1:1で混合)に、陽極と同一タイプの電極をその最上部に設置した。陰極電極回路(ゲルマトリックス+電極)を露出した上向きの電極と共に分離ゲルの上に置いた。
【0230】
ドライ式エレクトロブロッター装置の蓋を閉じ、スタックに圧力をかけ、25Vの電圧を8分間印加した。このプロセス終了後、スタックを分解し、膜を取り出した。着色マーカーが膜上で明瞭に観察できた(図11)。
【0231】
実施例10
Nu PAGE(登録商標)4−12%ゲル(Invitrogen社)を用い、製造業者の取扱説明書に従ってMES緩衝液を使用して電気泳動を行った。SeeBlue(登録商標)Plus2着色マーカーを5μLずつ、レーン1、2、3、11及び12において電気泳動させた。Magic Mark(商標)XPウェスタンブロットマーカーを1μLずつ、レーン4、5及び8にロードした。Magic Mark(商標)XPウェスタンブロットマーカーを1μLずつ、レーン6、7、9及び10にロードした。
【0232】
泳動後、カセットを開き、ゲルを取り出した。
【0233】
陽極電極回路をiBlot(商標)エレクトロブロッターの基部に配置した。陽極電極回路には、2%のアガロース、240mMのビストリス、190mMのトリシン、95mMのBES、20%のアルミナ、0.5%のキトサン及び10%のエチレングリコールから調製した厚さ3mmのゲルに接触する85×140mmの銅電極(Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ))を含めた。陽極電極回路をプラスチックトレイに置いた。陽極ゲルマトリックス及び電極と同じ寸法を有するニトロセルロース膜0.2μ(BA83、S&S社、ドイツ)を陽極ゲルマトリックスの上に置いた。電気泳動にかけられたゲルを膜の上に置いた。同じタイプの電極(ブロッティング膜なし)に並設される19mmのゲル厚を有する陰極ゲルマトリックス(組成:トリシンイオンをロードしたDE−52イオン交換マトリクス50%に対し、3%のアガロース、120mMのビストリス及び95mMのトリシンからなるゲル溶液を1:1で混合)を有する陰極電極回路を、露出した上向きの電極と共に分離ゲルの上に置いた。ドライ式エレクトロブロッティング装置の蓋を閉じ、次いでスタックに圧力をかけ、20Vの電圧を6.5分間印加した。このプロセス終了後、Westernbreeze(登録商標)Chromogenic検出キット(Invitrogen社、カールズバッド、CA)を用い、MagicMark(商標)蛋白質スタンダード(レーン4〜10)を検出した。このキットを使用すれば抗体とのインキュベートなしで検出できる。結果を図12に示す。
【0234】
実施例11
E−PAGE(商標)8% 48ゲル(EP048−08、Invitrogen社、カールズバッド、CA)において、25分間(プログラムEP)、E−Base(商標)(Invitrogen社EBM−03)電源を使用して泳動を行った。サンプルを表5に従ってロードした。BSAはウシ血清アルブミンを指し、SB+2はプレステイン蛋白質スタンダードのSeeBlue(登録商標)Plus2を指し、MMXPはMagic Mark(商標)XPウェスタンブロットマーカーを指し、BMはBenchMark(商標)蛋白質ラダー(以上、全てInvitrogen社製、カールズバッド、CA)を指す。
【0235】
(表5)
【0236】
泳動後、カセットを開きゲルを取り出した。
【0237】
陽極電極回路は60mMのビストリス、95mMのトリシン、95mMのBES、20%のエチレングリコール、及び6%酢酸を含んでなるポリアクリルアミド/アガロース複合材(5%の架橋剤及び0.5%のアガロースを有する10%アクリルアミド)により作製した厚さ3mmのゲルを用い、85×140mmの銅電極(Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ))上に設置して構築した。電極回路をプラスチックトレイ上に置き、それをiBlot(商標)ドライ式エレクトロブロッティング装置の基部に設置した。同じ寸法を有するニトロセルロース膜0.2μ(BA83、S&S社製、ドイツ)を陽極ゲルマトリックス上に置いた。電気泳動にかけられたゲルを膜の上に置いた。陰極ゲルは、トリシンイオンをロードしたDE−52イオン交換マトリクス50%に対し、3%のアガロース、120mMのビストリス及び95mMのトリシン及び0.5%のDirect blue 71 stain(Sigma社製)からなるゲル溶液50%から調製し、19mmの厚を有した。陽極と同じタイプの電極を陰極ゲルの上部に設置した。陰極電極回路(ゲルマトリックス+電極)を露出した上向きの電極と共に分離ゲル上に置いた。
【0238】
ドライ式エレクトロブロッター装置の蓋を閉じ、スタックに圧力をかけ、25Vの電圧を8分間印加した。このプロセスの間、BSAバンド及びマーカーが染色された。転写終了後、スタックを分解し、膜を取り出した。染色されたバンドが、10ng(図13)の強度で膜上に明瞭に観察された。
【0239】
実施例12
E−PAGE(商標)8% 48ゲル(EP048−08、Invitrogen社、カールズバッド、CA)において、25分間(プログラムEP)、E−Base(商標)(Invitrogen社EBM−03)電源を使用して泳動を行った。サンプルを実施例11(表5)に従ってロードした。BSAはウシ血清アルブミンを指し、SB+2はプレステイン蛋白質スタンダードのSeeBlue(登録商標)Plus2を指し、MMXPはMagic Mark(商標)XPウェスタンブロットマーカーを指し、BMはBenchMark(商標)蛋白質ラダー(以上、全てInvitrogen社製、カールズバッド、CA)を指す。
【0240】
泳動後、カセットを開きゲルを取り出した。
【0241】
陽極電極回路は60mMのビストリス、95mMのトリシン、95mMのBES、20%のエチレングリコール、及び6%酢酸を含んでなるポリアクリルアミド/アガロース複合材(5%の架橋剤及び0.5%のアガロースを有する10%アクリルアミド)により作製した厚さ3mmのゲルを用い、85×140mmの銅電極(Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ))上に設置して構築した。電極回路をプラスチックトレイ上に置き、それをiBlot(商標)ドライ式エレクトロブロッティング装置の基部に設置した。同じ寸法を有するニトロセルロース膜0.2μ(BA83、S&S社製、ドイツ)を陽極ゲルマトリックス上に置いた。電気泳動にかけられたゲルを膜の上に置いた。厚さ19mmの陰極ゲル(組成:DE−52イオン交換マトリクス50%に対し、3%のアガロース、120mMのビストリス及び95mMのトリシン及び1%の銅フタロシアンインテトラスルホン酸塩染色(Sigma社製)からなるゲル50%)には、陽極と同一のタイプの電極が、その上部に含まれていた。陰極電極回路(ゲルマトリックス+電極)を露出した上向きの電極と共に分離ゲル上に置いた。
【0242】
ドライ式エレクトロブロッター装置の蓋を閉じ、スタックに圧力をかけ、25Vの電圧を8分間印加した。このプロセスの間、BSAバンド及びマーカーが染色された。転写終了後、スタックを分解し、膜を取り出した。染色されたバンドが、25ng(図14)の強度で膜上に明瞭に観察された。
【0243】
実施例13
2つの同一のNovex(登録商標)MIDIゲル(Invitrogen社)を用い、SeeBlue蛋白質スタンダード、M及びヒト結腸直腸癌細胞の溶菌液(SW480)を、製造の取り扱い説明書に従って電気泳動した。表6に従ってサンプルをロードした。
【0244】
(表6)
【0245】
1枚のゲルを実施例8のプロトコルに従いiBlotを使用して転写し、他のゲルをセミドライ式エレクトロブロッティングで転写した。抗チューブリン(1:10,000)及び抗アクチン(1:5000)抗体を膜上の蛋白質の検出に用い、WesternBreeze化学発光検出キット(Invitrogen社)を使用して化学発光検出を行った。図15Aでは、iBlotエレクトロブロッティングが従来のセミドライ式ブロッティング(図15B)よりも強力なシグナルを与えることを示す。iBlotでエレクトロブロッティングした膜では、従来のセミドライ式転写より4分の1未満の蛋白質を検出できる。(チューブリン及びアクチン蛋白質の検出において、従来の検出限界の溶菌液1.0μL(図15Bのレーン3)に対して、0.25μLの溶菌液(図15Aのレーン5)で検出できる。
【0246】
実施例14
2つの同一のTris−酢酸3〜8%ゲル(Invitrogen社)を用い、表7に記載のサンプルを、製造の取扱説明書に従って電気泳動した。
【0247】
(表7)
【0248】
1枚のゲルを実施例8のプロトコルに従いiBlotを使用して転写し、他のゲルをセミドライ式エレクトロブロッティングで転写した。抗チューブリン(1:10,000)及び抗アクチン(1:5000)抗体を膜上の蛋白質の検出に用い、WesternBreeze化学染色検出キット(Invitrogen社)を使用して化学染色検出を行った。図16Aでは、iBlotが従来のセミドライ式ブロッティング(図16B)よりも強力なシグナルを与えることを示す。チューブリン及びアクチン蛋白質はiBlot(図16A、レーン3)を使用したエレクトロブロッティングで0.5μLの溶菌液で検出できるが、湿式のブロッティング膜(図16B、レーン6)では、同程度のレベルの検出結果を得るには同じ溶菌液が4μL必要であった。
【0249】
本明細書において開示される、電極回路を構築する際に用いる材質及び各種装置を適宜変更させることも可能で、過度の試験を要せずに当業者によって容易に実施できる。本明細書において最適に例示された本発明は、本明細書において特に開示されない1つ以上のいかなる部品が存在しない場合でも、実施可能である。すなわち、使用される用語及び表現は説明のための用語であり限定的なものではなく、開示され記載された特徴と均等な事項、又はその一部は排他的なものではなく、更に様々な変更が本発明の技術的範囲内で可能であることが理解される。
【0250】
本発明を特定の実施態様を参照しながら実質的に詳細に記載したが、当業者であれば本明細書で特に開示した実施態様を適宜変化させ、またこれらの変形及び改良も本発明の技術的範囲及び技術的思想の範疇に含まれることを認識するであろう。本明細書に係る実施例は、特定の実施態様を代表し、典型的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の実施態様は以下の請求項に記載される。
【0251】
見出しは読者の便宜のためのものであり、いかなる形であれ本発明を限定することを意図するものではない。
【0252】
本明細書に援用される各特許、特許出願、刊行物及び文書の全内容は、全ての表、図面及び図を含め、参照により本明細書に援用される。全ての刊行物及び特許は、本明細書において各刊行物又は特許を具体的かつ個別に援用する場合と同程度に、本明細書に参照により援用される。上記の特許、特許出願、刊行物及び文書の引用は、前述のいずれも関連する先行技術であることを承認するものでもなく、またその内容又はこれらの刊行物又は書類の日付に関するいかなる承認を行うものでもない。
【0253】
本発明は本明細書において、例示のみを目的として添付の図面を参照しながら記載する。なお、同様の構成要素は同様の符号により示される。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】本発明の実施態様に係る、使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング装置の電極回路の模式的等角図。
【図2】図1で例示する電極回路の線II−IIに沿った横断面図。
【図3】メッシュタイプ又は織物タイプの電極を有する、使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング装置の電極回路を例示する図式的横断面図。
【図4】メッシュタイプの電極を有する使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング電極回路及びイオン交換マトリクスを含むゲル基材を例示する図式的横断面図。
【図5】本発明の実施態様に係る、ブロッティング膜を含む使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング装置の電極回路を例示する図式的横断面図。
【図6】本発明のドライ式エレクトロブロッティング法の実施態様に係る、陽極側のドライ式エレクトロブロッティング電極回路と、陰極側の乾燥したエレクトロブロッティング装置電極回路との間に配置される分離ゲルを例示する図式的横断面図。
【図7】本発明の実施態様に係る、気泡除去装置の一部の図式的横断面図。気泡のトラッピングを減少させることができる一方、本発明のドライ式エレクトロブロッティング装置の電極回路をエレクトロブロットされるゲルに付着させる機能を有する。
【図8】本発明の装置を示す図。
【図9】本発明の装置を示す図。
【図10】本発明の装置を示す図。
【図11】本発明の実施態様に従い、本発明のドライ式エレクトロブロッティング装置の電極回路を使用して実施した蛋白質分離ゲルからのドライ式エレクトロブロッティング転写の完了後の、ブロッティング膜の写真。
【図12】本発明のドライ式エレクトロブロッティング装置の電極回路を使用して実施した分離ゲルからの蛋白質のドライ式エレクトロブロッティング転写の完了後の、ブロッティング膜の写真。
【図13】本発明のドライ式エレクトロブロッティング方法の実施による、分離ゲルからの蛋白質のドライ式エレクトロブロッティング転写の完了後の、ブロッティング膜の写真。
【図14】本発明のドライ式エレクトロブロッティング方法の実施による、分離ゲルからの蛋白質のドライ式エレクトロブロッティング転写の完了後の、ブロッティング膜の写真。
【図15】本発明の方法及び化学発光試薬を使用する免疫検出を用いるドライ式エレクトロブロッティングの実施による、分離ゲルからの蛋白質のドライ式エレクトロブロッティング転写の完了後のブロッティング膜の写真。
【図16】本発明の方法及び色素試薬を使用する免疫検出を用いるドライ式エレクトロブロッティングの実施による、分離ゲルからの蛋白質のドライ式エレクトロブロッティング転写の完了後のブロッティング膜の写真。
【図17】ドライ式エレクトロブロッティング用の保持トレイ内に設置された適切な電極を有し、ブロッティング電極回路が保持トレイ内に配置される、ブロッティング電極回路を例示する横断面図。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は広義にはゲルのブロッティングに関するものであり、具体的にはドライ式エレクトロブロッティング組成物及び方法に関する。
【0002】
関連出願
この特許出願は、米国仮特許出願第60/655,420号(2005年2月24日出願)の「Disposable Dry Electro−blotting Electrodes,Methods for their Use and Dry Blotting」、及び米国仮特許出願第(未通知)(2006年2月17日出願)の「Dry Electro−blotting Devices, Systems,and Kits,and Methods for their Use」(発明者:Ilana Margalit、Uri Yogev、SeIa Itay、Yuri Katz、Adam Sartiel及びTim Updyke)の優先権を主張する。これらの特許出願の全ての記載及び図面を含む全開示内容は、本願明細書に参照により援用される。
【背景技術】
【0003】
背景
ゲル電気泳動を用いた分子の分離は公知技術である。多様な分子、特に蛋白質(ペプチド)、オリゴヌクレオチド、DNA及びリボゾームリボ核酸などを、分離ゲルの基材中で、特にそれらの電荷/質量比、サイズ特性及びその他の性能に基づいて電気泳動的に分離することができる。周知のように、等電点電気泳動の手法を分子の分離にも使用できる。
【0004】
電気泳動的に分離された分子又は分解した構成要素を、分離ゲルから他のマトリクス又は支持体の上に転写し、追加的な任意の処理、又は化学的反応、又は免疫学的同定、又は他の操作をその分離された分子に対して行うことがしばしば必要とされ、又は望まれる。ゲルから他のマトリクス又は支持体上に、かかる分離又は隔離された分子種を転写するための公知技術の方法として、エレクトロブロッティングが挙げられる。
【0005】
”Protein Blotting:A review”(B.T.Kurien and R.H.Scofield published in J.Immunological methods,Vol.274,pp.1−15(2003))(非特許文献1)という題目の総説(全開示内容が本明細書に援用される)において、特に湿式及びセミドライ式のエレクトロブロッティング法が記載されている。
【0006】
特に米国特許第5,482,613号(特許文献1)、5,445,723号(特許文献2)、5,356,772号(特許文献3)、4,889,606号(特許文献4)、4,840,714号(特許文献5)、5,013,420号(特許文献6)及び米国特許出願公開第2002/157953号(特許文献7)では、湿式及びセミドライ式電気泳動による転写に用いる様々なタイプの装置及び方法を開示しており、上記全ての米国特許及び特許出願公開はその全開示内容が本明細書に参照により援用される。
【0007】
エレクトロブロッティングにおいて、分子の電気泳動分離の後、分離された分子を含む電気泳動ゲルは多孔質材料(例えばニトロセルロース系のブロッティング膜、PVDF系のブロッティング膜、活性化紙膜、活性化ナイロン製ブロッティング膜等)の比較的微細なマトリクスと接触した状態で設置され、挟まれたゲル及びブロッティング膜に、通常ブロッティング膜の表面と直角の方向に電流を印加する。幾つか又は大部分の荷電分子がそれによりゲルからブロッティング膜へ電気泳動的に転写できる。
【0008】
2つの適切な電極の間にゲル及びブロッティング膜を置き、両電極間に適切な電圧差を生じさせることにより、ゲルとブロッティング膜の組み合わせに対して電流を印加することができる。かかる電極の1つは陰極として機能し、逆に他の電極は陽極として機能する。
【0009】
典型的には、電極とゲルとブロッティング膜との電気的接続は、導電性緩衝溶液を電極とゲルとの間、及び/又は電極とブロッティング膜との間に存在させることによって形成される。これらの緩衝溶液は、エレクトロブロッティング用のイオン供給源として機能する。この方法は湿式のブロッティングとして公知である。湿式のブロッティング法の不利な点は、比較的扱いにくい装置や緩衝液の調製取り扱いが必要となるため、時間がかかることである。
【0010】
あるいは、乾燥した濾紙又は他の適切なタイプの乾燥した多孔質材料を1つ以上ブロッティング膜及びゲルと接触させ、その濾紙又は他の乾燥した多孔質材料に緩衝溶液を含ませ、転写に必要なイオン貯蔵部として機能させる。電極(陰極及び陽極)は緩衝液を含ませた1つ以上の濾紙又は他の多孔質材料と接触させ、エレクトロブロッティングを実施する。
【0011】
公知技術のセミドライ式エレクトロブロッティング法が湿式のエレクトロブロッティング方法の課題の幾つかを解決するものの、それらにはまだ、濾紙を濡らすための緩衝溶液の調製や取扱いが必要となることや、ゲル及びブロッティング膜と共に濾紙を取り扱い、配置する必要があるなどの不利な点が存在する。したがってこれらの方法は未だに不便であり、時間がかかるものである。更に、セミドライ式エレクトロブロッティング法では、緩衝溶液を含ませた濾紙中の限られたイオン量により、使用できる電流量が制限され、その結果比較的長いエレクトロブロッティング時間を要する。市販の典型的なセミドライ式ブロッティング装置では、1cm2当たり2〜6mA(2〜6mA/cm2)の範囲の電流密度に限定される。
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,482,613号
【特許文献2】米国特許第5,445,723号
【特許文献3】米国特許第5,356,772号
【特許文献4】米国特許第4,889,606号
【特許文献5】米国特許第4,840,714号
【特許文献6】米国特許第5,013,420号
【特許文献7】米国特許出願公開第2002/157953
【非特許文献1】”Protein Blotting:A review”(B.T.Kurien and R.H.Scofield published in J.Immunological methods,Vol.274,pp.1−15(2003))
【発明の開示】
【0013】
発明の概要
本発明は一つの側面において、電気泳動的転写に用いるイオンの貯蔵部を、エレクトロブロッティングシステムの陽極と分離ゲル/ブロッティング膜の転写スタックの一面との間に、並びに、エレクトロブロッティングシステムの陰極と転写スタックの他の面との間に位置するゲルマトリックスに存在させることにより、システム中の電極に隣接し、接触して配置されるゲルマトリックス基材中に存在する緩衝液以外の緩衝液なしで、エレクトロブロッティングを実施できるという発見に基づく。このドライ式ブロッティングシステムを用いることで、従来のエレクトロブロッティングよりも蛋白質、核酸及び他の生体分子を非常に能率的かつ急速に、分離ゲルからブロッティング膜へ転写し、また該エレクトロブロッティング法を実施するユーザーによる緩衝液の取り扱いの必要がない。例えば、本明細書に係るエレクトロブロッティングシステムを用いれば、エレクトロブロッティング転写をわずか5又は10分で実施できる。更に、本発明の具体的な態様における、エレクトロブロッティングシステムに設置される電極では、エレクトロブロッティングの際、気泡の生成が少ない。
【0014】
陽極及び/又は陰極ゲルマトリックスのイオン貯蔵部は、ドライ式ブロッティングシステム用に予め調製された、使い捨て可能な形態でユーザーに提供できる。予め調製された、使い捨て可能な陽極及び/又は陰極ゲルマトリックスのイオン貯蔵部を、封入パッケージ中に封入してもよい。更に、複数の陽極及び/又は陰極ゲルマトリックスのイオン貯蔵部を一緒に包装に入れることができる。
【0015】
本発明の他の態様は、ドライ式エレクトロブロッティングを実施するための電極回路に関するものであって、該電極回路はイオン供給源を含むゲルマトリックス基材、及びゲルマトリックス基材と連結した導電性電極を含む。具体的な実施態様では、該電極はゲルマトリックス基材と連結される。具体的な実施態様では、該導電性電極はゲルマトリックス基材に少なくとも部分的に埋め込まれる。具体的な実施態様では、該ゲルマトリックス基材は電気泳動的転写の前と間にプラスチックトレイ中で導電性電極に並設される。該電極回路を密封包装中に封入してもよい。
【0016】
本明細書に係るドライ式エレクトロブロッティングシステムで用いる電極及び電極回路は、例えば、非金属導電性材料、非金属導電性材料を含んでなるメッシュ、金属箔、金属メッシュ、導電性金属又は非金属を被覆した非導電性ポリマー、及び/又はそれらの組み合わせを含む層であってよい。導電性材料を塗布した非導電性材料の電極をシート、メッシュ又はその他の形状に加工してもよい。具体的な実施態様では、電極回路の電極は電気化学的にイオン化可能な金属(例えば鉛、銅、銀又はそれらの組み合わせ)を含有する。具体的な実施態様では、電極回路の電極はアルミニウム又はパラジウムを含有する。ドライ式エレクトロブロッティングに用いるゲルマトリックスイオン貯蔵部に連結する電極を含む電極回路は、予め調製された、使い捨て可能な形でユーザーに提供でき、それによりユーザーによる電極回路の使用が簡便になり、また有効なビジネスモデルともなりうる。電極はゲルマトリックス基材に並設され、トレイ又はホルダー中に設けてもよい。電極回路を封入パッケージに封入してもよい。本発明はまた、電極回路に付加的な機能を付与した実施態様に関する。例えば、色素化合物、非特異的結合をブロッキングする分子、還元剤又はプロテアーゼを電極回路に含めてもよく、それにより分離ゲル中で分離した分子の解析が容易になる。
【0017】
更なる態様では、本発明はドライ式エレクトロブロッティングシステムを提供し、該システムは分析ゲルとブロッティング膜を含むエレクトロブロッティング転写スタック、陽極、陽極と接触して陽極と転写スタックの間に位置する陽極ゲル基材、陰極、及び陰極と接触し陰極と転写スタックの間に位置する陰極ゲルマトリックス基材を含んでなり、陽極ゲルマトリックス及び陰極ゲルマトリックスは各々電気泳動的転写に用いるイオン源を含む。ドライ式エレクトロブロッティングシステムは、いかなる緩衝液をエレクトロブロッティングの直前(転写スタックの設置の際)にシステムに添加する必要もない。幾つかの好ましい実施態様では、陽極ゲルマトリックスと陽極が転写スタックの膜側に存在し、一方陰極ゲルマトリックスと陰極が転写スタックの分析ゲル側に存在する態様で、システムが構築される。幾つかの実施態様では、陽極、陰極又はその両方とも電源と一体化されて連結してもよい。幾つかの実施態様では、陽極、陰極又はその両方とも電源と別であってよい。
【0018】
本発明はまた、乾燥ブロッティングゲルに用いる装置に関するものであって、該装置は、電気泳動的転写の際に、転写スタックを保持できる電源、陽極、陽極と転写スタックとの間で陽極に並設される陽極ゲルマトリックス基材、陰極、及び陰極と転写スタックとの間で陰極に並設される陰極ゲルマトリックス基材を含む。エレクトロブロッティングの間、ドライ式エレクトロブロッティング装置は、電気泳動的転写に用いる緩衝液を保持する貯蔵部を含まず、保持せず、又は結合しない。幾つかの実施態様では、装置に用いる陽極及び陽極ゲルマトリックスは、装置の電気接点上に、又はそれと反対側に、又はそれと連結して配置できる陽極電極回路として可逆的に設置できる。幾つかの実施態様では、電極の一方又は両方が装置と一体化されて連結している。
【0019】
装置の電源には、ON/OFFスイッチ、電源との接続に用いるコード、及び好ましくはAC/DCアダプタが含まれる。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティング装置の電源には、電気泳動的転写における電圧、電流、経過時間又は残り時間のうちの1つ以上を示す表示パネルが含まれる。電源には任意にエレクトロブロッティング条件のメニューなどを含むソフトウェアを含めてもよい。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティング装置には1つ以上の汎用シリアルバス(USB)ポートが含まれる。
【0020】
別の態様においては、本発明はドライ式エレクトロブロッティング法に関するものであって、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの陽極及び陰極間で以下の順序で電流を印加することを含む。すなわち陽極、陽極ゲルマトリックス基材、ブロッティング膜、1つ以上の生体分子を含む分析ゲル、陰極ゲルマトリックス基材、及び陰極の順であり、1つ以上の生体分子が分析ゲルからブロッティング膜に転写される。
【0021】
該方法の具体的な例示的態様では、陽極電極は銅製である。具体的な例示的態様では、陽極と陰極の電極は銅製である。幾つかの態様では、電流の印加に用いる電流密度は、前記分離ゲルの第1面の1cm2当たり15mA以上であってよい。
【0022】
該方法は更に、陽極と陰極電極の間で電流を印加する前に、分離ゲル、ブロッティング膜及び陰極ゲルマトリックス基材との間に生じる気泡のトラッピングの減少又は回避のために、ゲルセパレータ部材を有する気泡除去装置を、分析ゲル、陽極、陽極ゲルマトリックス基材を含む陽極電極回路、ブロッティング膜、並びに陰極と陰極ゲルマトリックス基材を含む陰極電極回路の間に通す態様で設置することを含めてもよい。
【0023】
更に他の態様は、本明細書に係るドライ式エレクトロブロッティング用のキットである。一実施態様では、キットには電気泳動に用いるイオン源を含む1つ以上のゲルマトリックス基材及び1つ以上のブロッティング膜が含まれる。他の実施態様では、キットには1つ以上の陽極ゲルマトリックス基材及び1つ以上の陰極ゲルマトリックス基材が含まれる。他の実施態様では、キットには1つ以上の色素、界面活性剤、修飾酵素若しくは試薬、又は還元化合物を含む1つ以上のゲルマトリックス基材が含まれる。陽極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材をキット中の封入パッケージ内に梱包してもよい。エレクトロブロッティングゲルマトリックスキットには更に、1つ以上のブロッティング膜、1つ以上濾紙、1つ以上のスポンジ及び/又は1つ以上の電極を適宜含めてもよい。
【0024】
別の態様では、該キットには1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路及び/又は1つ以上の使い捨て可能な陰極電極回路が含まれる。幾つかの実施態様では、1つ以上の陽極電極回路にはイオン供給源を含むゲル基材及びゲルマトリックス基材に並設される電極を含めてもよい。幾つかの実施態様では、1つ以上の陰極電極回路にはイオン供給源を含むゲル基材及びゲルマトリックスに並設される電極を含めてもよい。陽極電極回路、陰極電極回路又はその両方をプラスチックトレイなどのトレイに設置してもよい。陰極電極回路をプラスチックトレイなどのトレイに設置してもよい。キットに設置される陽極電極回路には、ゲルマトリックス基材の第2面に並設される1つ以上のブロッティング膜を含めてもよい。
【0025】
陽極及び/又は陰極電極回路は、一緒に又は別個に封入パッケージ中に梱包してもよい。更に、複数の陽極及び/又は陰極電極回路を一緒に梱包してもよい。
【0026】
幾つかの態様では、エレクトロブロッティングキットには1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路及び1つ以上の使い捨て可能な陰極電極回路が含まれる。幾つかの態様では、エレクトロブロッティングキットには1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路及び1つ以上の陰極ゲルマトリックス基材が含まれる。該キットには1つ以上のブロッティング膜、濾紙又はスポンジを適宜含めてもよい。
【0027】
発明の詳細な説明
特に記載のない限り、本明細書で用いる全ての専門用語及び科学用語は、通常本発明の技術分野に属する当業者に理解されるものと同じ語義を有する。通常、本明細書において以下用いる命名法及び製造若しくは実験手順は公知であり、従来技術において共通に使用される。これらの手順では、当該技術で一般の、及び様々な公知文献に記載されている従来法を用いる。例えば「上」や「下」、「上部」や「底部」又は「上部の」や「底部の」などの方向に関する用語は、装置の使用の際の部品の方向を指す。用語の単数形を用いる場合、本発明者はその用語の複数形を意図する。参照により援用する引用文献との間で、用語及び定義に関する不一致が生じた場合は、本明細書で用いる用語を本明細書における定義とする。本明細書全体にわたって、以下の用語は、特に明記しない限り以下の意味を有するものと理解される。
【0028】
本明細書全体において、以下のとおり用語を用いる。「ドライ式エレクトロブロッティング電極回路」とは、電極及び電極と接触する非液体イオン源を含む電極回路である。該ドライ式エレクトロブロッティング電極回路によって、使用前に緩衝液をエレクトロブロッティングシステムに添加する必要なく、エレクトロブロッティングを実施できる。むしろ、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの電極回路ではイオン源を電気泳動的転写に用いる。「非液体」のイオン源は固体又はゲルであってよい。ドライ式エレクトロブロッティング電極回路のイオン源は、好ましくはゲルマトリックス基材に添加する。ドライ式エレクトロブロッティング電極回路には、ブロッティング膜など、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの他の構成要素を適宜含めてもよい。
【0029】
「ドライ式エレクトロブロッティング」は、電気泳動に用いる固体状又は半固体状のイオン源を使用して実行されるエレクトロブロッティングである。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティングは、エレクトロブロッティングの前に転写スタック(電気泳動ゲルの反対に配置した膜、並びに並設されたゲル及び膜を囲むいかなる濾紙、スポンジ、メッシュなど)を組み合わせるときに、イオン源をエレクトロブロッティングシステムに提供する緩衝液又は溶液を添加せずに実行される。幾つかの実施態様では、1つ以上のエレクトロブロッティングシステムの構成要素(例えば濾紙又はブロッティング膜)をエレクトロブロッティングの前に浸漬させてもよいが、該浸漬は電気泳動的転写を可能にするイオンの提供には必要でない。
【0030】
「使い捨て可能な」電極とは、10回未満での使用を意図する電極である。「使い捨て可能な」電極回路とは、10回未満での使用を意図する電極回路である。電極回路がブロッティング膜を含む実施態様では、典型的には電極回路のブロッティング膜は一度だけ用いる。具体的な例示的態様では、全ての使い捨て可能な電極回路は一度だけ用いることを意図するものである。
【0031】
本明細書の「電気化学的にイオン化可能な金属」という用語は、標準的な電気泳動条件における電極として用いるときに、印加電流に応答して電離する金属を指す。「標準的な電気泳動条件」とは約0℃〜約100℃の条件、好ましくは約0℃〜約80℃、より好ましくは約2℃〜約50℃を指し、そのとき電極は導電性媒体(例えば溶液又はゲル)と接触している。電気泳動(又は電気泳動的転写)の間、電気化学的にイオン化可能な金属電極のイオン化が、電極での水電解の代替として生じる。電気化学的にイオン化可能な金属の非限定的な例としては、銅、銀及び鉛が挙げられる。
【0032】
「分析ゲル」とは、検出対象である1つ以上の生体分子を含むゲルを指す。該生体分子の非限定的な実施例として、多糖類、核酸又は蛋白質が挙げられ、それらは精製品でも、部分精製品でも、又は混合物又はサンプルの一部であってもよい。分析ゲルは、生体分子又は生体分子を含むサンプル若しくは混合物を更なる分離なしでアプライ、電気泳動又は吸収させたゲルであってもよく、又は、生体分子をサイズ、電荷又は他の性質に基づいて分離した電気泳動ゲルなどの分離ゲルであってもよい。
【0033】
「エレクトロブロッティング転写スタック」又は単に「転写スタック」とは、分析ゲル及びブロッティング膜を含む構造であって、該ブロッティング膜が、ブロッティング膜の2面のうちの1面がゲルの2面のうちの1面と接触する態様でゲルに並設されるものを指す。例示的実施態様では、転写スタックの分析ゲルは電気泳動ゲルの一種であり、すなわち1以上の生体分子が電気泳動にかけられるゲルを指す。ブロッティング膜は典型的には、ニトロセルロース若しくは他のセルロース誘導体、ナイロン若しくはポリフッ化ビニリデン(PDVF)、又はこれらのいずれかの誘導体であって、生体分子を可逆的、又は好ましくは不可逆的に膜と結合する態様で転写できるものを指す。転写スタックには、他の構成要素(例えば膜のゲルと反対の表面又はゲルの膜と反対の表面に配置する濾紙)を適宜含めてもよい。
【0034】
本発明において、「並設された」という用語は、言及された2つの構造が互いに並んで接触する態様で配置されていることを指す。本発明の文脈において、並設された構造とは好ましくは接触して、一つの構造の主要な側面又は表面が、他の構造の主要な側面又は表面と隣接し、連続的に接触する態様で配置されている態様を指す。並設された構造においては、互いに可逆的又は不可逆的に、接着剤、化学結合又は機械的なファスナーによって付着させてもよい。幾つかの態様では、1つの並設された構造を、他の構造に少なくとも部分的に埋め込まれる態様で該他方と結合させてもよい。幾つかの態様では、並設された構造は、重力、ホルダーの壁又はファスナーによって保持される同じホルダーに設置することによって可逆的に並設させることができる。幾つかの態様では、並設された構造は静電気力により共に保持することで可逆的に並設でき、それにより膜やゲル基材などの構造体を技術者が容易に分解できる。
【0035】
本発明において「陽極室」とは、エレクトロブロッティング用のイオン供給源を含んでいて、システム、機器又は装置の陽極と接触する、エレクトロブロッティング装置、機器又はシステム内の領域を指す。例えば陽極室は、陽極を含むか又はそれと接触し、イオンを含む溶液を保持する緩衝液タンク、転写緩衝液を浸漬させた濾紙又は陽極ゲルマトリックスであってもよい。
【0036】
本発明において「陰極室」とは、エレクトロブロッティング用のイオン供給源を含んでいて、システム、機器又は装置の陰極と接触する、エレクトロブロッティング装置、機器又はシステム内の領域を指す。例えば陰極室は、陰極を含むか又はそれと接触し、イオンを含む溶液を保持する緩衝液タンク、転写緩衝液を浸漬させた濾紙又は陽極ゲルマトリックスであってもよい。
【0037】
エレクトロブロッティングシステムの一つの区画又は構成要素において「選択的に供給される」、「選択的に存在する」又は「選択的に使用される」化合物とは、その区画において供給され、存在し若しくは使用される一方で、システム中の他の区画又は構成要素には供給されず、存在せず若しくは使用されない化合物のことを指すか、又は、該化合物が選択的に供給される、存在する若しくは使用される区画若しくは構成要素中の該化合物量と比較して、システム中の他の区画又は構成要素に存在する量が顕著に少ない化合物のことを指す。幾つかの例示的実施形態において、エレクトロブロッティングシステムの陽極室に選択的に供給されている化合物は、システムの陰極室には存在しないか又は顕著に少ない量で存在する。幾つかの例示的実施態様では、エレクトロブロッティングシステムの陰極室に選択的に供給される化合物は、システムの陽極室に存在しないか又は顕著に少ない量で存在する。
【0038】
本発明において、「顕著に少ない濃度」又は「顕著に少ない量」で存在、使用又は供給される化合物とは、エレクトロブロッティングシステム又は装置の陽極室におけるアニオン性化合物の濃度と比較し、陰極室におけるアニオン性化合物の濃度が×0.5(50%)以下、好ましくは×0.2(20%)以下、より好ましくは×0.1(10%)以下であることを指す。
【0039】
ドライ式エレクトロブロッティングシステム
本発明はエレクトロブロッティング転写スタック、陽極、陽極とエレクトロブロッティング転写スタックの間に位置する陽極ゲルマトリックス基材、陰極、及び陰極の間に位置する陰極ゲルマトリックス基材を含んでなるドライ式エレクトロブロッティングシステムであって、陽極ゲルマトリックス及び陰極ゲルマトリックスは各々電気泳動的転写に用いるイオン源を含む。転写スタックには1つ以上の生体分子(例えば多糖類、蛋白質、ペプチド又は核酸)を含む1つ以上の分析ゲルと、分析ゲルに並設される1つ以上のブロッティング膜とが含まれる。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティングシステムは、エレクトロブロッティングの前(転写スタックが設置される際)にシステムへのいかなる緩衝液の添加も行われない。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの1つ以上の構成要素(例えばブロッティング膜、又は分析ゲルとゲルマトリックス基材の間に配置されるか、又はブロッティング膜とゲルマトリックス基材の間に配置される1枚の濾紙)を、エレクトロブロッティングの前に浸漬させてもよい。しかしながら、本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムでは、ブロッティング膜又は濾紙などのシステム構成要素を水、界面活性剤、緩衝液又は溶液に浸漬することは、電気泳動的転写の実施に必要となるイオンの供給には必須ではない。幾つかの実施態様では、ゲルをエレクトロブロッティング前に緩衝液又は溶液で平衡化させてもよい。溶液又は緩衝液中でゲルを平衡させることは、ドライ式エレクトロブロッティングシステムにおける電気泳動的転写の実施に必要となるイオンの供給には必須ではない。
【0040】
該システムは、電流が陰極と陽極の間で印加されるとき、生体分子が分析ゲルからブロッティング膜へ転写される態様で設置される。すなわち組み合わされたシステムでは陰極から陽極までの電気的導通が提供され、そこでは電流が陽極から陰極ゲルマトリックス基材、1つ以上の分析ゲル、1つ以上のブロッティング膜及び陽極ゲルマトリックス基材を通って陰極に達する。すなわち、好ましい実施態様では、陰極ゲルマトリックス基材の一面が陰極と接触し、陰極ゲルマトリックス基材の他の面が転写スタックの分析ゲルと直接的又は間接的に電気的接触を形成する。陽極ゲルマトリックス基材の一面が陽極と接触し、陽極ゲルマトリックス基材の他の面が転写スタックのブロッティング膜と直接的又は間接的に電気的接触を形成する。
【0041】
この構成のバリエーションにおいて、本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムには分析ゲルの陰極表面に並設する態様でブロッティング膜を設置してもよい。かかる構成においては、適宜付加的なブロッティング膜を分析ゲルの陽極表面に並設させてもよい。例えば、分析ゲル中の1つ以上の目的の生体分子が電気泳動的転写の条件下で正電荷を有すると考えられるときに、この構成を使用できる。一実施態様では、該分析ゲルは、界面活性剤又は陰電荷を与える試薬がない条件で蛋白質が電気泳動に供するための未変性ゲルであってよく、その場合には、分析ゲル上の蛋白質の1以上が全体として陽電荷を有し、また転写の間に陰極の方向へ移動させることができる。同時に同じ分析ゲル上の負電荷の生体分子を、分析ゲルの陽極側に設けられた膜に適宜ブロッティングすることができる。
【0042】
分析ゲルは、いかなる不定形又は定形の形状(例えば長円形又は円形)であってもよいが、典型的には矩形である。分析ゲルは、適用可能ないかなる長さ及び幅であってもよく、分析ゲルの長さ又は幅の寸法より顕著に小さい厚みを有する。例えば、分析ゲルの厚みは、分析ゲルの長さ又は幅の20%以下であってよく、好ましくは該長さ又は幅の10%以下、又はより好ましくは該長さ又は幅の5%以下、又はより好ましくは該長さ又は幅の2%以下である。ドライ式エレクトロブロッティングシステムで用いる分析ゲルはすなわち、ゲルの長さ及び幅の寸法によって定義される、互いに反対側に位置する2つの面を有する。分析ゲルはいかなる組成であってもよく、非限定的な例としては寒天ゲル、澱粉ゲル、アガロースゲル、アクリルアミドゲル、1つ以上の異なるポリマーを含んでなる複合ゲルなどが挙げられる。ドライ式エレクトロブロッティングシステムで使用できる分析ゲルの例示的な非限定的な例としては、ユーザーによって調製したゲルや、又は限定されないがトリス−グリシンゲル、NuPAGE(登録商標)ビストリスゲル(Invitrogen社、カールズバッド、CA)、NuPAGE(登録商標)トリス酢酸ゲル(Invitrogen社、カールズバッド、CA)、E−PAGE(商標)ゲル(Invitrogen社、カールズバッド、CA)、E−ゲル(登録商標)(Invitrogen社、カールズバッド、CA)などの調製済のゲルが挙げられる。
【0043】
ドライ式エレクトロブロッティングシステムの分析ゲルの第1面はブロッティング膜の第1面に並設され、分析ゲルの第2の表面は電極回路と直接的又は間接的に接触する。幾つかの実施態様では、分析ゲルの第2表面は陰極電極回路と接触する。ゲルと陰極電極回路との接触が間接的である(例えば浸漬された濾紙が陰極ゲルマトリックスと分析ゲルの間に存在しうる)場合、該間接的な接触により分析ゲルと陰極ゲルマトリックスとの間の電気的導通が提供される。分析ゲルの第1面に対して配置されるブロッティング膜の第2面が陽極ゲルマトリックスと直接的又は間接的に接触する態様で、スタックが配置される。ブロッティング膜と陽極電極回路との接触が間接的である(例えば浸漬された濾紙が陽極ゲルマトリックスとブロッティング膜の間に存在しうる)場合、該間接的な接触によりブロッティング膜と陽極ゲルマトリックスとの間の電気的導通が提供される。
【0044】
ゲルスタックとゲルマトリックス基材の間に位置する浸漬された濾紙は、例えば水、緩衝液又は色素若しくは界面活性剤を含む溶液に浸漬したものであってよい。
【0045】
ドライ式エレクトロブロッティングシステムの転写スタックには、1つ以上の分析ゲルを含めてもよい。例えば、2以上の分析ゲルを転写スタック内で並べて配置してもよい。1つ以上の分析ゲルがドライ式エレクトロブロッティングシステムの転写スタックに設置されるケースにおいて、1つ以上のブロッティング膜を適宜使用できる。例えば、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの各分析ゲルに個々のブロッティング膜を並設できる。変法として、単一のブロッティング膜を1つ以上の分析ゲルに並設させてもよく、それにより2以上の分析ゲル中の生体分子が同じブロッティング膜へ転写される。
【0046】
他の好ましい実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの分析ゲル及びブロッティング膜は、同じ又はほとんど同じ長さ及び幅の寸法(例えば各々10%、5%又は2%の範囲内の寸法)を有する。ブロッティング膜は、例えば紙、セルロース系ブロッティング膜(例えばニトロセルロース又はセルロースアセテート)、ニトロセルロース系膜、ナイロン系膜又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)系膜、又はこれらの活性化又は誘導体化したもの(例えば表面を荷電させた誘導体)であってもよい。ドライ式エレクトロブロッティングシステムのブロッティング膜は、ブロッティング膜の第1面が分析ゲルの第1面と連続的に面同士が接触する態様で、分析ゲルに並設される。
【0047】
幾つかの実施態様では、システムには更に、分析ゲルと陰極ゲルマトリックス基材の間に位置する1つ以上の濾紙が含まれる。
【0048】
ドライ式エレクトロブロッティングシステムの陽極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材は、同じ又は異なる組成であってもよい。例えば、ドライ式エレクトロブロッティングシステムの陽極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材は、同じ若しくは異なるゲル形成ポリマーを含んでもよく、又は異なる濃度の1つ以上の共通のゲル形成ポリマーを含んでもよい。ドライ式エレクトロブロッティングシステムの陽極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材は、同じ若しくは異なる緩衝液を含んでもよく、又は異なる濃度で共通の緩衝液を含んでもよい。陽極ゲルマトリクスには、陰極ゲルマトリックスに存在しない1つ以上の付加的な化合物を含めてもよい。陰極ゲルマトリクスには、陽極ゲルマトリックスに存在しない1つ以上の付加的な化合物を含めてもよい。
【0049】
ゲルマトリックス基材(陽極ゲルマトリックス基材又は陰極ゲルマトリックス基材)には、アガロース、アクリルアミド、アルミナ、シリカ、澱粉、又はキトサン、ガム(例えばキサンタンガム、ジェランガム)、カラギーナン、ペクチンなどの他の多糖類、又はゲルを形成する他のポリマー、又はこれらのいかなる組み合わせを含有させてもよい。幾つかの好ましい実施態様では、陰極ゲルマトリックス基材は、例えば約2.5%〜約30%、又は約5%〜約20%の濃度でアクリルアミドを含有する。幾つかの実施態様では、陰極ゲルマトリックス基材は、例えば約0.1%〜約5%、又は約0.5%〜約4%、又は約1%〜約3%の濃度でアガロースを含有する。幾つかの好ましい実施態様では、陰極ゲルマトリックス基材はアクリルアミドとアガロースを含有し、例えば該陰極ゲルマトリクスは約2.5%〜約30%のアクリルアミド、約0.1%〜約5%のアガロースを含有してもよく、好ましくは約5%〜約20%のアクリルアミド、約0.2%〜約2.5%のアガロースを含有する。
【0050】
陰極ゲルマトリックス又は陽極ゲルマトリックス中に供給する、電気泳動的転写用のイオン供給源としては、例えば塩、酸、塩基若しくは緩衝液、又はそれらの組み合わせが使用できる。好ましくは、陰極ゲルマトリックス基材は1つ以上の緩衝液(好ましくは有機緩衝液)を含有する。陰極ゲルマトリックスに供給する緩衝液は、両性イオン緩衝液であってもよい。分析ゲルがエレクトロブロッティングされる蛋白質又はペプチドを含む好ましい実施態様では、陰極ゲルマトリックス基材は約6.5〜約8.5、より好ましくは約7〜約8のpKaを有する緩衝液を含有する。陰極ゲルマトリックス中に緩衝液を約10mM〜約1M、例えば約20mM〜約500mMの濃度、幾つかの実施態様では約50mM〜約300mMの濃度で含有させてもよい。
【0051】
例えば、陰極ゲルマトリックス基材には、非限定的な例として2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシ−プロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)−メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−l−プロパンスルホン酸(TAPS)、N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン(トリス)、又はビス[2−ヒドロキシエチル]イミノトリス−[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)を含有させてもよい。
【0052】
陰極ゲルマトリックス、陽極ゲルマトリックス又はその両方とも、イオン交換マトリクスを適宜含んでなってもよい。例えば、陽極ゲルマトリックスは、陽イオン交換マトリックスを適宜含んでなってもよい。陰極ゲルマトリックスは陰イオン交換マトリクス(例えば限定されないがDEAEセルロース)を適宜含んでなってもよい。イオン交換マトリクスにはイオン(例えば緩衝イオン)をロードしてもよく、例えばDEAEイオン交換マトリクスをトリシンアニオンとロードしてもよい。
【0053】
陰極ゲルマトリックス基材にはエチレングリコール、アルコール、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の抗黴剤、1つ以上のブロッキング剤、1つ以上の抗腐食剤、1つ以上の修飾試薬若しくは酵素、プロテアーゼ、還元剤などを更に含めてもよい。陰極ゲルマトリックス基材には核酸又は蛋白質染色用の色素などを含めてもよい。例えば、陰極ゲルマトリックス基材には、SYPRO色素、クーマシー色素、Direct Blue色素又は銅系の色素などを含めてもよい。
【0054】
多様なタイプの蛋白質及び/若しくはDNA染色剤、又は他のタイプの分離された分子に用いる他の染色剤を、本明細書において開示する電極回路のゲル基材に含めてもよい。好ましくは、かかる染色剤は、アニオン性又はカチオン性の染色剤でもよく、それぞれ、陽極電極回路又は陰極電極回路に適宜ロードしてもよい。本発明の更なる実施形態では、同様のブロッティング電極回路の使用において、アニオン性染色剤を陽極電極回路に含め、カチオン性染色剤を陰極電極回路に含めてもよい。かかるブロッティング電極回路の電極に電流を印加するとき、アニオン性染色分子が陰極から離れ、ブロッティング膜の方へ移動し、同時にカチオン性染色分子も陽極から離れ、ブロッティング膜の方へ移動する。このようにして、ブロッティング膜にブロットされた分子を両方の染色剤によって染色できる。
【0055】
陽極ゲルマトリックスに設置される電気泳動的転写に用いるイオン供給源は、塩、酸、塩基又は緩衝液由来であってもよい。好ましくは、陽極ゲルマトリックス基材は1つ以上の緩衝液(好ましくは有機緩衝液)を含有する。陽極ゲルマトリックスに供給される緩衝液は両性イオン性緩衝液であってよい。分析ゲルがエレクトロブロッティングされる蛋白質又はペプチドを含む好ましい実施態様では、陽極ゲルマトリックス基材は約6〜約8、より好ましくは約6.2〜約7.2のpKaを有する緩衝液を含有する。緩衝液は約10mM〜約1Mの濃度でよく、例えば約20mM〜約500mM、幾つかの実施態様では約50mM〜300mMの濃度であってもよい。
【0056】
例えば、陽極ゲルマトリックス基材には、非限定的な例として2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシ−プロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)−メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−l−プロパンスルホン酸(TAPS)、N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン(トリス)、又はビス[2−ヒドロキシエチル]イミノトリス−[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)を含有させてもよい。
【0057】
本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムの幾つかの好ましい実施態様では、エレクトロブロッティングシステムの陰極ゲルマトリックスに供給されない1つ以上の緩衝液を、陽極ゲルマトリックスに供給してもよい。これらの実施態様では、ブロッティング膜は分析ゲルの陽極側に配置される。
【0058】
本発明をいかなる特定の機構に限定するものではないが、電界が電気泳動的転写の間に形成されるときに比較的急速に移動する、エレクトロブロッティングシステムの陽極ゲルマトリックスに存在する1つ以上のアニオン種は、その陽極への移動が急速であるため、同様に陽極に向かって移動するが、動きの速いアニオンを欠く一部の電界内で移動する生体分子の電気泳動的濃度を左右しうると考えられる。電気泳動的転写の文脈において、動きの速い(すなわち陽極から遠い側の)アニオンの後に移動する生体分子は、動きの速いアニオンが急速に陽極へ移動するため、陽極ゲルマトリックスから動きの速いイオンが減少し、それにより電気泳動的濃度が増幅される。濃縮された転写中の生体分子がブロッティング膜と接触すると、それらは、この作用の結果として、ゲル側の膜表面において少なくとも一部が不溶性となり、凝集物が生成しうる程度に濃縮されると考えられる。ゲルの変性において、蛋白質の可溶化に用いるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)もまた、蛋白質より速く移動するため、蛋白質がブロッティング膜と接触するときにはほとんどが蛋白質から脱離していると考えられる。ブロッティング膜の表面に転写された生体分子の不溶性化により、それらの更なる移動が阻害され、その効果として膜の表面に生体分子を「スタック」する。このスタッキング効果により、ブロッティング膜上での生体分子の検出が改善されうる。
【0059】
陽極ゲルマトリックスにおいて排他的に提供されるアニオン性化合物の効果は、陽極ゲルマトリックスと比較して陰極ゲルマトリックスで顕著に少ない濃度で存在するアニオン性化合物にもあてはまる。本発明において「顕著に少ない濃度」とは、エレクトロブロッティングシステム又は装置の陰極マトリクスのアニオン性緩衝化合物の濃度が、陽極ゲルマトリクスのアニオン性化合物の濃度と比較して0.5×以下、好ましくは0.2×以下、より好ましくは0.1×以下であることを意味する。すなわち、一実施態様では、エレクトロブロッティングシステムの陰極室及び陽極室は同じアニオン性化合物を含有し、該化合物が陰極室と陽極室で異なる濃度で存在する。
【0060】
エレクトロブロッティング装置、機器又はシステムの陰極ゲルマトリックスにおいて存在しないか、又は顕著に少ない量で存在する、陽極ゲルマトリックスに供給される化合物は、電気泳動的転写の間のアニオンの形でエレクトロブロッティングシステムに存在する緩衝化合物であって、本明細書において「アニオン性緩衝化合物」と称される。例えば、陽極ゲルマトリックスに供給されて、陰極ゲルマトリックスに供給されない(又は陰極ゲルマトリックスに顕著に少ない量で供給される)アニオン性緩衝化合物は、陰極ゲルマトリックスに供給できる他のアニオン性緩衝化合物などの他の幾つかの緩衝化合物よりも「動きが速い」。従って、陽極ゲルマトリックスの優先使用に用いるアニオン性緩衝化合物の選択は、陰極ゲルマトリックスに供給されるアニオン性化合物(例えば緩衝液)、陽極ゲルマトリックス及び陰極ゲルマトリックスの緩衝液のpH、並びにアニオン性緩衝化合物のpKaに部分的に依存する。例えば、エレクトロブロッティングが中性pH付近で行われる電気泳動的転写システムの陽極ゲルマトリックスに選択的に供給できるアニオン性緩衝化合物としては、中性(pH約6〜pH約8)においてpKaを有する化合物が挙げられ、幾つかの例ではpH6.0〜pH8.0で陰極ゲルマトリックスに供給される1つ以上の緩衝化合物のpKaよりも少なくとも0.5対数単位低い、例えば1対数単位低い。
【0061】
幾つかの実施態様では、エレクトロブロッティングシステムの陽極ゲルマトリックスは陰極ゲルマトリックスに存在しないアニオン性緩衝化合物を含有し、アニオン性化合物は中性付近又はそれ以下においてpKaを有し、中性pH又はその付近でアニオンとして存在する。幾つかの実施態様では、化合物はpKa約7.5以下、好ましくは約7.2以下、幾つかの実施態様では約7.0以下を有する生物学的緩衝液であってよく、該生物学的緩衝化合物は電気泳動の間、溶液中でアニオンを形成する。具体的な例示的態様では、アニオン性緩衝液は7.5、7.4、7.3、7.2、7.1、7.0、6.9、6.8、6.7、6.6又は6.5未満のpKaを有する。
【0062】
陽極ゲルマトリックスに存在してよく、陰極ゲルマトリックスに存在しないアニオン性化合物の非限定的な例として、EDTA、コハク酸、クエン酸塩、アスパラギン酸、グルタミン酸、マレイン酸、カコジラート、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセタミド)イミノ二酢酸(ADA)、N−(2−アセトアミド)−2‐アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2‐アミノエタンスルホン酸(BES)、又は3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)が挙げられる。かかるアニオン性緩衝化合物は、陰極室のアニオン性化合物のpKaが陽極室のアニオン性化合物のそれより大きいエレクトロブロッティングシステムで使用できる。これらの実施態様では、グリシン、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、[(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、及びN−(1、1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)のうちの1つ以上をシステムの陰極室に含有させてもよい。
【0063】
幾つかの実施態様では、陰極ゲルマトリックスに存在せず(又は顕著に少ない濃度で存在する)、陽極ゲルマトリックスに存在するアニオン性化合物は、中性付近又はそれ以下でpKaを有する両性イオン緩衝液(例えばMES、MOPSO、BES、MOPS又はACES)である。これらの緩衝液の1つ以上を陽極ゲルマトリックスに含むエレクトロブロッティングシステムでは、陰極室中に中性付近又はそれ以上でpKaを有する両性イオン緩衝液(例えばトリシン、ビシン、TAPS、TAPSO又はAMPSO)を適宜含有させてもよい。
【0064】
エレクトロブロッターの陽極ゲルマトリックスに存在し、エレクトロブロッターの陰極ゲルマトリックスに存在しない(又は顕著に少ない量で存在する)アニオン形成緩衝化合物は、いかなる濃度で存在してもよいが、好ましくは少なくとも10mMの濃度、好ましくは、約10mM〜約1Mの濃度、より好ましくは約20mM〜約500mM、幾つかの実施態様では約50mM〜約300mMで陽極ゲルマトリックスに存在する。
【0065】
本発明にはまた、陰極室に存在しない(又は顕著に少ない量で存在する)アニオン性緩衝化合物が陽極室に含有される湿式及びセミドライ式エレクトロブロッティングシステムも含まれる。一実施態様では、陽極室は陰極室に存在しないアニオン性緩衝化合物を含有し、該化合物は中性付近又はそれ以下でpKaを有し、中性のpH又はその付近でアニオンを形成する。例えば化合物はpKa7.5以下、好ましくは約7.2以下を有する生物学的緩衝液であってよく、該生物学的緩衝化合物は電気泳動の間、溶液中でアニオンを形成する。
【0066】
陽極ゲルマトリックス基材はエチレングリコール、アルコール、1つ以上の界面活性剤(例えばSDS)、抗黴剤、ブロッキング剤、抗腐食剤、修飾試薬若しくは酵素、プロテアーゼ、還元剤などを更に含有してもよい。陽極ゲルマトリックス基材は、例えば銅や銀を含有する色素(例えば正に荷電した核酸又は蛋白質の染色剤)を含有してもよい。
【0067】
本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムにおいて、陽極ゲルマトリックス基材は転写スタックの1面と接触する第1面を有し、また陰極ゲルマトリクス基材は転写スタックの反対側と接触する第1面を有する。好ましい実施態様では、転写スタックの一面と接触する陽極ゲルマトリックス基材の第1面、及び転写スタックの他の面と接触する陰極ゲルマトリックス基材の第1は、転写スタックのブロッティング膜と分析ゲルとの長さ及び幅の寸法とほとんど同じ長さ及び幅の寸法を有する。好ましくは、ゲルからブロッティング膜への生体分子の均一な転写を促進するため、陽極ゲルマトリックス基材の第1面及び陰極ゲルマトリックス基材の第1面の長さ及び幅の寸法は、転写スタックの長さ及び幅の寸法の20%以内、より好ましくは転写スタックの長さ及び幅の寸法の10%以内、例えば転写スタックの長さ及び幅の寸法の5%以内、あるいは転写スタックの長さ及び幅の寸法の2%以内である。
【0068】
他の好ましい実施態様では、ゲルスタックと接触する陽極ゲルマトリックスの面の面積は陽極ゲルマトリックスと接触するゲルスタックの表面の面積と同じである。他の好ましい実施態様では、ゲルスタックと接触する陰極ゲルマトリックスの面の面積は陰極ゲルマトリックスと接触するゲルスタックの表面の面積と同じである。
【0069】
本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムでは、陽極ゲルマトリックス基材は陽極と接触する。幾つかの好ましい一実施態様では、陽極は陽極ゲルマトリックス基材の第2面に連結するか又は並設され、該陽極ゲルマトリックス基材の第2面は転写スタックと接触する陽極ゲルマトリックス基材の第1面の反対側に存在する。陽極はいかなる適当な導体を含有してもよく、またいかなる形状でもあってよく、例えば陽極は非金属導電性材料を含む層、コイル構造、非金属導電性材料を含んでなるメッシュ、金属箔、金属メッシュ及び/又はそれらの組み合わせであってよい。具体的な実施態様では、導電性電極は導電性の金属又は非金属を塗布した非導電性ポリマーを含有してもよい。導電性材料を塗布した非導電性材料の電極はシート、メッシュの形態、又は他の構造であってもよい。電極は1つ以上の導電性非金属素材(例えば黒鉛、炭素、導電性ポリマー)又はそれらのいかなる組み合わせを含有してもよい。陽極は例えば、導電性ポリマー、白金、ステンレス鋼、炭素、黒鉛、アルミニウム、銅、銀又は鉛を含有してもよい。幾つかの実施態様では、陽極は電気化学的にイオン化可能な金属(例えば銅、銀又は鉛)を含有する。電気化学的にイオン化可能な金属陽極の使用により、金属銅が選択的に水の代わりに電離し、それにより陽極において酸素が発生することなく電気泳動的転写を行える。これにより電気泳動的転写を妨げうる気泡の形成が回避される。幾つかの好ましい実施態様では、陽極は使い捨て可能な銅電極である。他の実施態様では、陽極は酸素ガスを吸収するアルミニウムを含有してもよい。幾つかの好ましい実施態様では、陽極は使い捨て可能なアルミニウム電極である。
【0070】
電極は銀を塗布した銅、又は銀を塗布した他の金属若しくは材料を含有してもよい。例えば、炭素又はグラファイト系導電性電極を使用して、それに適切な金属銀のペースト若しくはエマルジョンを塗布するか、又は公知技術の他のいかなる適切な方法を用いて銀を電極材料に適用してもよい。例えば銀コートの陽極は銀イオンを遊離させ、実施例4に記載するように、ブロッティング膜の方へ移動し、核酸又は蛋白質などの生体分子を着色できる。
【0071】
本発明の他の実施態様では、導電性基質(例えば限定されないが、銅のメッシュ若しくは格子、又は炭素若しくは黒鉛系のファブリック、又は導電性ポリマーの薄層でもよい)上に金属銀を(様々な金属付着方法を用いて)沈積又は被覆することも可能である。銀金属被覆をかかる導電性電極に適用するのに使用できる方法としては、特に化学気相成長(CVD)方法、融解した銀に電極を浸漬することによる銀めっき法、電気めっき法、適切な接着を強化しる組成物又は製剤に分散させた銀微粒子を使用しるスプレー塗布方法、水性又は非水性溶液で実施する化学沈積法(例えば、銀被覆鏡の形成に係る周知技術の、伝導性電極をグルコースを含むアンモニア性硝酸銀溶液に浸漬する方法)、加熱した銀金属フィラメントから標的電極上への直接的な銀の真空蒸着などが挙げられる。すなわち、従来技術において公知のいかなる適切な銀めっき、沈積又は塗布方法も、本発明の銀金属コーティング電極の作製の際に使用できる。
【0072】
本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムでは、陰極ゲルマトリックス基材は陰極と接触する。幾つかの好ましい一実施態様では、陰極は陰極ゲルマトリックス基材の第2面に連結するか又は並設され、該陰極ゲルマトリックス基材の第2面は転写スタックと接触する陰極ゲルマトリックス基材の第1面の反対側に存在する。陰極はいかなる適当な導体を含有してもよく、またいかなる形状でもあってよく、例えば陰極は非金属導電性材料を含む層、非金属導電性材料を含んでなるメッシュ、金属箔、金属メッシュ及び/又はそれらの組み合わせであってよい。具体的な実施態様では、導電性電極は導電性金属又は非金属を塗布した非導電性ポリマーを含有してもよい。導電性材料を塗布した非導電性材料の電極はシート、メッシュの形態、又は他の構造であってもよい。電極は1つ以上の導電性非金属素材(例えば黒鉛、炭素、導電性ポリマー)又はそれらのいかなる組み合わせを含有してもよい。陰極は例えば、導電性ポリマー、白金、ステンレス鋼、炭素、黒鉛、アルミニウム、銅、銀又は鉛を含有してもよい。幾つかの好ましい実施態様では、陰極は使い捨て可能な銅電極である。他の実施態様では、陰極はパラジウムを含有してもよく、それにより、電気泳動的転写の間、陰極で生じる水素ガスを吸収させることができる。幾つかの好ましい一実施態様では、陰極は使い捨て可能なアルミニウム電極である。
【0073】
他の好ましい実施態様では、陽極及び陰極は、陽極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材それぞれと同じ又は同程度の長さ及び幅の寸法を有する。ゲルマトリックス基材に並設される陽極又は陰極の表面は連続的である必要はなく、例えば電極はワイヤラス又はコイル構造であってよい。かかる実施態様では、ゲルマトリックスと接触する電極の表面は、ゲルマトリックスに並設される電極構造体の表面の外側の寸法によって定義されると考えられる。好ましくは、陽極ゲルマトリックス基材に並設される陽極面は、それが並設される陽極ゲルマトリックスの面の少なくとも50%、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%と接触する。陽極ゲルマトリックス基材に並設される陽極面は、それが並設される陽極ゲルマトリックスの面の表面積と実質的に同じ領域であってもよい。例えば、一般に矩形、楕円形若しくは円形の電極及びゲルマトリックス基材の場合、陽極の長さ及び幅の寸法は、好ましくは陽極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の20%以内、より好ましくは陽極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の10%以内、例えば陽極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の5%以内、陽極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の2%以内である。これらの好ましい実施態様では、陽極ゲルマトリックス基材は好ましくは転写スタックのブロッティング膜及び分析ゲルの長さ及び幅の寸法とほぼ一致する。
【0074】
好ましくは、陰極ゲルマトリックス基材に並設される陰極面は、それが並設される陰極ゲルマトリックスの面の少なくとも50%、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%と接触する。陰極ゲルマトリックス基材に並設される陰極面は、それが並設される陰極ゲルマトリックスの面の表面積と実質的に同じ領域であってもよい。例えば、一般に矩形、楕円形若しくは円形の電極及びゲルマトリックス基材の場合、陰極の長さ及び幅の寸法は、好ましくは陰極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の20%以内、より好ましくは陰極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の10%以内、例えば陰極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の5%以内、陽極ゲルマトリックス基材の長さ及び幅の寸法の2%以内である。
【0075】
これらの好ましい実施態様では、陰極ゲルマトリックス基材は好ましくは転写スタックのブロッティング膜及び分析ゲルの長さ及び幅の寸法とほぼ一致する。
【0076】
すなわち、本発明の好ましい実施態様では、転写スタックの1面と接触する陽極ゲルマトリックス基材と接触する陽極、及び転写スタックの反対側と接触する陰極ゲルマトリックス基材と接触する陰極を有し、陽極、陽極ゲルマトリックス基材、陰極、陰極ゲルマトリックス基材及び転写スタックが同じ又はほとんど同じ長さ及び幅の寸法を有するシステムを提供する。
【0077】
幾つかの実施態様では、陽極、陰極又はその両方が電源又はエレクトロブロッティング転写スタックを保持する装置と一体化されて(各転写の後、ユーザーによって分解されないことを意味する)設置されている。他の実施態様では、陽極と陰極を電源又は装置と分離できる。例えば、電極は電極回路の一部として設置される使い捨て可能な電極であってもよく、又はゲルマトリックス基材と分離できてもよい。ゲルマトリックスとは別に設置される電極は、ドライ式エレクトロブロッティング装置と連結でき、その後、ゲルマトリックス基材を電極と接触するように装置に装着してもよく、あるいは、電極及びゲルマトリックス基材は、エレクトロブロッティング装置と接続又は装着することができるトレイやケージなどのホルダーに配置してもよい。
【0078】
幾つかの実施態様では、陽極、陰極又はその両方はゲルマトリックス基材と接続する電極回路の一部として設置され、例えばゲルマトリックス基材に対する形で電極を配置するファスナー又はホルダーを使用して陽極又は陰極を設置することができる。具体的な実施態様では、陽極及び陰極は陽極ゲルマトリックス基材に少なくとも部分的に埋め込まれる。例えば、ゲルマトリックス基材は電極上に流動ゲル成分を流し込むことによって、又は、ゲル押し出し技術を用いて作製でき、それにより電極はゲルマトリックスによって1つ以上の面において部分的に被覆され又は埋め込まれる。具体的な実施態様では、ゲルマトリックス基材は電気泳動的転写の前と間、プラスチックトレイの導電性電極に対して配置される。プラスチックトレイは、電極間の電気的接続を提供するための導体を含有する1つ以上の領域、及び電源との電気接点を有するのが好ましい。
【0079】
ドライ式エレクトロブロッティングシステムには陽極及び陰極と接触するための電気接点を有する電源を更に有してもよい。電源は、電気泳動的転写の間に転写スタックを配置するための基部を有してもよい。幾つかの実施態様では、陽極、陰極又はその両方とも、システムの電源から一体化されてもよい。一実施態様では、陰極はエレクトロブロッティングシステムの電源と一体化されて連結し、一方陽極は着脱可能で、使い捨て可能である。
【0080】
ドライ式エレクトロブロッティングに用いる電極回路
本発明は、ドライ式エレクトロブロッティングを実施するための電極回路(該電極回路は本明細書において記載されるようなイオン供給源を含有するゲルマトリックス基材を含む)、並びにゲルマトリックス基材に並設される導電性電極を提供する。
【0081】
電極に並設されるゲルマトリックス基材は本明細書において上記した組成を有してもよく、例えばアガロース、アクリルアミド、アルミナ、シリカ、澱粉、又はキトサン、ガム(例えばキサンタンガム、ジェランガム)、カラギーナン、ペクチンなどの他の多糖類、又はゲルを形成する他のポリマー、又はこれらのいかなる組み合わせなどの適切なポリマーを含有させてもよい。
【0082】
ドライ式エレクトロブロッティングシステムのゲルマトリックス基材に本明細書において記載するように、電極回路のゲルマトリックス基材はイオンの1つ以上の供給源を含む。電極回路のゲル基材中のイオン源は、例えば、本明細書において上記で開示される緩衝液、又はブロッティングに使われる公知の任意の緩衝液など、ゲル基材に添加できるいかなる適切な緩衝溶液でもよく、限定的ではないが例えばトリスグリシン(トリス20〜500mM[より典型的には25mM〜200mM]、グリシン20〜500mM[より典型的には25mM〜200mM])、0.2×〜5×トリス酢酸EDTA(典型的には0.5×〜2×)、0.2×〜5×トリスホウ酸EDTA(典型的には0.5×〜2×)、CAPS緩衝液(5〜200mM又は10mM〜100mM)、ビストリスビシン(ビストリス5mM〜500mM又は20〜100mM、ビシン5mM〜500mM又は20〜100mM)、又はビストリストリシン(ビストリス5mM〜500mM又は20〜250mM、トリシン5mM〜500mM、又は20〜250mM)、又はMES、MOPSなどの緩衝液が挙げられる。上記した緩衝液は全て、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、並びにビストリス、トリシン、BES及びSDS若しくは他の界面活性剤との組み合わせ、並びにその他のものを含有してもよく、しなくてもよい。ゲルマトリックス基材はエチレングリコール、アルコール、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の抗黴剤、1つ以上の抗腐食剤、1つ以上の還元剤などを更に含有してもよい。
【0083】
他のイオン供給源として、イオン交換マトリクスを存在させてもよい。該イオン交換マトリクスには、ゲル基材の調製用のゲル溶液に添加する前にイオンを「ロード」してもよい。イオン交換マトリクスは、陽極電極回路又は陰極電極回路としての用途を目的とする電極回路ゲルマトリックス基材に存在させてもよい。例えば幾つかの実施態様では、陽極のゲル基材はアニオン(例えばトリシン)をロードされたDE−52(DEAE)セルロースの形態のイオン交換マトリクスを含有する。
【0084】
陰極電極回路のゲルマトリックスは、陽極電極回路ゲルマトリックスに存在しない1つ以上の塩、酸、塩基、緩衝液、色素、還元剤、ブロッキング剤、キレート剤、阻害剤、開裂試薬、修飾酵素若しくは試薬、又は可溶化剤を更に含有してもよい。陽極ゲルマトリックスは、陰極ゲルマトリックスに存在しない1つ以上の塩、緩衝液、色素、還元剤、キレート剤、阻害剤、開裂試薬、修飾酵素若しくは試薬、又は可溶化剤を更に含有してもよい。
【0085】
ドライ式エレクトロブロッティングシステムに関する前の節にて説明したように、陽極電極回路としての用途に用いる電極回路のゲルマトリックスは陰極ゲルマトリックスに存在しないか又は顕著に少ない量で存在する1つ以上の緩衝化合物を含有してもよい。かかる緩衝化合物は好ましくはアニオン性緩衝化合物であり、本明細書において上記したように、限定されないがEDTA、コハク酸、クエン酸塩、アスパラギン酸、グルタミン酸、マレイン酸、カコジラート、TES、MES、ADA、ACES、PIPES、MOPSO、BES又はMOPSなどが挙げられる。
【0086】
電極回路のゲルマトリックス基材は典型的には2つの対向面を有し、その1つの面は電極と接触し、他方の面は直接又は間接的に転写スタックと接触する。ゲルマトリックス基材と「並設する」電極はゲル基材と接触し、好ましくはゲルマトリックス基材の面に沿って配置し、連続的な接触を形成する。具体的な実施態様では、並設された導電性電極はゲルマトリックス基材と接触する。該接触は例えば重力又はホルダーによって電極及びゲルマトリックス基材との密着を維持する物理的方法であってもよく、又は化学的方法であってもよい。化学的接着は共有結合でも非共有結合でもよい。例えば、電極が静電的相互作用によってゲル基材に接着してもよい。具体的な実施態様では、ゲル基材に並設される導電性電極はゲル基材に少なくとも部分的に埋め込まれる。
【0087】
本明細書に係る電極回路に用いる導電性電極は、例えば非金属導電性材料を含む層、並びに非金属導電性材料、金属箔、金属メッシュ及び/又はそれらの組み合わせを含んでなるメッシュであってよい。具体的な実施態様では、導電性電極は導電性の金属又は非金属を塗布した非導電性ポリマーを含有してもよい。導電性材料を塗布した非導電性材料の電極はシート、メッシュの形態、又は他の構造であってもよい。電極は1つ以上の導電性非金属素材(例えば黒鉛、炭素、導電性ポリマー)又はそれらのいかなる組み合わせを含有してもよい。
【0088】
具体的な実施態様では、電極回路の導電性電極は電気化学的にイオン化可能な金属(例えば鉛、銅、銀又はそれらの組み合わせ)を含有する。非電気化学的にイオン化可能な金属を電極として用いるとき、水電解により電気泳動の間、陽極で陽子、陰極で水酸イオンを生じる。電気泳動の間、電離する電気化学的にイオン化可能な金属は、例えば陽極での陽子の代わりに電位差が陽極及び陰極を通じて印加されるとき、金属イオンを生じうる。電極での水電解を回避するために電気化学的にイオン化可能な金属を電極へ使用することにより、陽極での酸素の遊離が回避でき、それにより電気泳動的転写を妨げるおそれのある気泡の遊離が回避される。
【0089】
本発明の幾つかの実施態様では、陽極は鉛、銅又は銀を含有する。本発明の幾つかの実施態様では、陰極は銅又は銀を含有する。本発明の幾つかの実施態様では、陽極は銅を含有する。幾つかの実施態様では、陽極は銅板を含んでなる。幾つかの実施態様では、陽極は銅メッシュ又は銅を塗布したポリマー性のメッシュを含んでなる。
【0090】
他の電極材料としては、限定されないがステンレス鋼又はプラチナ又はアルミニウム又はパラジウムが挙げられる。アルミニウムは酸素ガス(例えば電気泳動的転写の間に陽極で発生する酸素ガス)を吸収できる。パラジウムは水素ガス(例えば電気泳動的転写の間に陰極で発生する水素ガス)を吸収できる。
【0091】
また、1つ以上のブロッティング膜は電極回路の一部であってよい。幾つかの実施態様では、1つの膜が陽極電極回路に含まれ、電極に並設される面と反対側のゲルマトリックス基材の面に膜は並設され、それによりブロッティング膜はエレクトロブロッティングの間、分離ゲルに対して配置される。しかしながら、陰極電極回路、又は陽極及び陰極電極回路の両方にブロッティング膜を存在させてもよい。ブロッティング膜は、例えば紙、セルロース系ブロッティング膜(例えばニトロセルロース又はセルロースアセテート)、ニトロセルロース系膜、ナイロン系膜又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)系膜、又はこれらの活性化又は誘導体化したもの(例えば表面を荷電させた誘導体)であってもよい。
【0092】
幾つかの実施態様では、陽極電極回路はトレイを含んでなる。該トレイは導電性電極、電極がゲルマトリックス基材の第1面と接触させるように並設させたゲルマトリックス基材、並びに適宜、ブロッティング膜がゲルマトリックス基材の第1面の反対側のゲルマトリックス基材の第2面と接触させるように電極ゲルマトリックス基材に並設させたブロッティング膜を保持する。トレイは乾燥ブロッティング装置に適合する構造をとり、それにより電極、ゲルマトリックス基材及びブロッティング膜は電気泳動的転写の間、トレイ中に収められたままの状態にある。これらの実施態様では、陽極電極回路のトレイはトレイの電極からエレクトロブロッティング装置の電気接点へ電流を送る金属接触部又は領域を含んでなる。
【0093】
エレクトロブロッティング用キット
更に他の態様では、本明細書はドライ式エレクトロブロッティング用のキットを提供する。一実施態様では、キットは電気泳動に用いるイオン源を含む1つ以上のゲルマトリックス基材、及び1つ以上のブロッティング膜を含んでなる。ゲルマトリックス基材は本明細書に記載のような組成を有してもよく、好ましくは緩衝イオン源を含有する。キットにおいて一緒に提供されるゲルマトリックス基材及びブロッティング膜は、同じ又はほとんど同じ長さ及び幅の寸法を有してもよく、長さ及び幅に関して互いに例えば10%以内、5%以内、又は2%以内の範囲にある。
【0094】
他の実施態様では、キットには1つ以上の陽極ゲルマトリックス基材及び1つ以上の陰極ゲルマトリックス基材が含まれ、該陽極ゲルマトリックスには、陰極ゲルマトリックスに存在しない、又は顕著に少ない量で存在する1つ以上のアニオン性緩衝化合物が含まれる。前節にて説明したように、アニオン性緩衝化合物は好ましくは中性又はその付近のpKaを有する緩衝化合物である。好ましくは、陽極ゲルマトリックス及び陰極ゲルマトリックスは緩衝イオン源を含有し、陰極室は陽極室に存在しない(又は顕著に少ない量に存在する)緩衝化合物を含有し、陰極の緩衝化合物は陽極室の緩衝液より少なくとも0.5対数単位高い、例えば1対数単位高いpKaを有し、そこにおいて緩衝液は中性以上のpHでアニオンを形成する。
【0095】
他の実施態様では、キットには1つ以上の陽極ゲルマトリックス基材及び1つ以上の陰極ゲルマトリックス基材が含まれ、該陽極ゲルマトリックスは陰極ゲルマトリックスに存在しない色素、界面活性剤、修飾酵素若しくは試薬又は還元化合物の1つ以上を含有する。他の実施態様では、キットには1つ以上の陽極ゲルマトリックス基材及び1つ以上の陰極ゲルマトリックス基材が含まれ、該陰極ゲルマトリックスは陽極ゲルマトリックスに存在しない色素、界面活性剤、修飾酵素若しくは試薬又は還元化合物の1つ以上を含有する。例えば、陰極ゲルマトリックス基材は銅系の色素、Direct Blue色素(Sigma Aldrich社)、クーマシー色素又はSYPRO色素などを含有してもよい。陰極ゲルマトリックス、陽極ゲルマトリックス又はその両方とも、イオン交換マトリクスを適宜含んでなってもよい。
【0096】
陽極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材は、キットにおいて封入パッケージに封入してもよい。エレクトロブロッティングゲルマトリックスキットには、更に1つ以上のブロッティング膜、1つ以上の濾紙、1つ以上のスポンジ及び/又は1つ以上の電極を適宜含めてもよい。ブロッティング膜をゲルマトリックス基材に並設させてもよく、または別個に提供してもよい。
【0097】
別の態様では、本発明のキットには1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路及び/又は1つ以上の使い捨て可能な陰極電極回路が含まれる。幾つかの実施態様では、1つ以上の陽極電極回路にはイオン供給源を含むゲル基材及びゲルマトリックスに並設される電極を含めてもよい。幾つかの実施態様では、1つ以上の陰極電極回路にはイオン供給源を含むゲル基材及びゲルマトリックスに並設される電極を含めてもよい。
【0098】
他の好ましい実施態様では、キットに含まれる電極回路の陽極は、それに並設される陽極ゲルマトリックスの面の少なくとも50%、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%と接触する、陽極ゲルマトリックス基材に並設される表面を有する。他の好ましい実施態様では、キットに含まれる電極回路の陽極は、それに並設される陽極ゲルマトリックス基材の面の長さ及び幅の寸法の20%以内、10%以内、5%以内又は2%以内の長さ及び幅の寸法を有する、陽極ゲルマトリックス基材に並設される表面を有する。例示的実施態様では、陽極及び陽極ゲルマトリックス基材は通常矩形である。
【0099】
他の好ましい実施態様では、キットに含まれる電極回路の陰極は、それに並設される陰極ゲルマトリックスの面の少なくとも50%、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%と接触する、陰極ゲルマトリックス基材に並設される表面を有する。他の好ましい実施態様では、キットに含まれる電極回路の陰極は、それに並設される陰極ゲルマトリックス基材の面の長さ及び幅の寸法の20%以内、10%以内、5%以内又は2%以内の長さ及び幅の寸法を有する、陰極ゲルマトリックス基材に並設される表面を有する。例示的実施態様では、陰極及び陰極ゲルマトリックス基材は通常矩形である。
【0100】
陽極電極回路及び/又は陰極電極回路はプラスチックトレイなどに設置してもよい。キットに含まれる陽極電極回路にはゲルマトリックス基材の第2面に並設される1つ以上のブロッティング膜を適宜含めてもよい。
【0101】
陽極及び/又は陰極電極回路は一緒に、又は別個に封入パッケージ中に梱包してもよい。更に、複数の陽極及び/又は陰極電極回路を一緒に包装中に梱包してもよい。
【0102】
幾つかの態様では、エレクトロブロッティングキットには1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路及び1つ以上の使い捨て可能な陰極電極回路が含まれる。幾つかの態様では、エレクトロブロッティングキットには1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路、及び1つ以上の陰極ゲルマトリックス基材が含まれる。キットには1つ以上のブロッティング膜、濾紙又はスポンジを適宜含めてもよい。
【0103】
キットにおいて電極を別個に含めてもよい。また、1つ以上の電極を例えば乾燥剤又は抗腐食剤を含有する密封容器中に含めてもよい。電極を液体又はゲル(例えばアルコール又は1つ以上の保存剤、還元剤又は抗腐食剤を含有する溶液又はゲル)中にパッケージングしてもよい。電極(例えば使い捨て可能な電極)を含むキットには、1つ以上のゲルマトリックス、1つ以上のブロッティング膜又は1つ以上の濾紙を含めてもよい。
【0104】
キット中の陽極及び/又は陰極電極回路は、当該技術で周知の適切なガス及び水不透性包装紙(又は他のいかなるタイプの適切な容器)で個々に包装してもよく、それにより電極回路の乾燥を防ぎつつ長期間の保存が可能となる。例えば、包装紙又は容器は適切な薄い、水及びガス不透性プラスチック又はポリマーベースのシート又は箔から製造でき、更に電極の包装後、いかなる適切な公知の包装紙のシール方法(例えば限定されないが接着又は接触ヒートシールなど)を使用してそこに封入できる。ブロッティング膜をキットに含めるときは、別々の包装としてもよく、又は電極回路を含むパッケージ中に一緒に含めてもよい。
【0105】
以上より、当業者であれば上記で開示した様々な電極回路の様々な異なる組み合わせ及び下位概念での組み合わせにより、多くの異なるタイプのキットを構成できると認識するであろう。かかるキットは周知の様々な染色剤及び/又は染色剤放出金属(用途に応じ、例えば上記で開示した金属銀を含む陽極電極回路)を含んでもよく、また含まなくてもよい。同様に、ゲル濃度、組成物及び架橋度をブロッティングされる分子種に応じて変化させてもよい。
【0106】
更に、異なるタイプの電極回路及び/又はブロッティング膜など、様々に異なりうるキット部品の寸法は、ブロッティングされるゲルの特定の寸法に適するように修正又は調節できる。
【0107】
プラスチック又は他の適切な材料で作製した適切な浅いオープン型トレイ(図示せず)を、かかる包材に含めてもよい。トレイはその中に電極回路を保持するのに適する寸法を有し、それにより、取り扱いの間機械的損傷から電極回路を保護し、使用の前に包装を開封した後の電極回路の取り扱い及び操作を容易となりうる。また電極回路を保持するトレイを流体不透性プラスチック又は箔(又はホイルバックのプラスチック)で上部封止してもよく、またプラスチック又は箔の上部シートを、電極回路を使用する際に除去してもよい。電極回路(例えば陰極電極回路)は使用に際してトレイから取り外してもよく、又は電極回路はエレクトロブロッティングの間トレイ内に設置されたままでもよい。保持トレイは矩形の電極回路の形状に適応させるために矩形のトレイであってもよい。しかしながら、特に電極回路の形状(すなわち特に用途に応じて形状が異なりうる)によっては、他の適切な形状の保持トレイを製造してもよい。
【0108】
保持トレイは、限定的ではないが好ましくはポリ塩化ビニル(PVC)などの安価な硬質又は半硬質のプラスチック又はポリマー材料から製造できる。しかしながら、他の1つ以上のいかなる適切な材料を用いて保持トレイを作製できる点にも留意すべきである。
【0109】
幾つかの実施態様では、保持トレイは1つの面上にプリングタブを有する。プリングタブは保持トレイの着脱不可能部分として形成できるが、着脱可能部分(図示せず)として形成することもでき、接着又は貼り着け、はんだ付け又は他の公知の適切な結合方法によって保持トレイに付着させることができる。保持トレイは、エレクトロブロッティング転写を実施する前に、ブロッティング電極回路を形成する際のスタビライザとしても機能しうる。
【0110】
例えば、図7の気泡除去装置60を用いるとき、包装紙を開封し、保持トレイを取り出してもよく、又は、トレイ(電極回路に用いる容器としても機能する)を封止するプラスチック又は箔の表面シートを剥がしてもよい。トレイを(その中に含まれる陽極電極回路と共に)気泡除去装置60の表面62Aに配置してもよい。次いでゲル(図示せず)及び陰極電極回路(図示せず)を、分離部材75及び77、並びにローラー64を用いて、上記で詳述したように陽極電極回路130に並設してもよい。更にプリングタブ123を用いて、形成されたブロッティング電極回路を図7の矢印85で示す方向に引くこともできる。
【0111】
気泡除去装置60を使用してブロッティング電極回路(図示せず)を構成した後に、更に保持トレイ122に含まれるブロッティング電極回路を取り外すことができることに留意すべきであり、ブロッティング電極回路を保持トレイから取り外し、装置100のエレクトロブロッティング装置80に配置できる(上記の図6のブロッティング電極回路50で詳細に記載した通り)。
【0112】
あるいは、本発明の他の実施態様では、内部導電ストリップ又は部材を組み込んで保持トレイを構成し、保持トレイからブロッティング電極回路を取り外さずにエレクトロブロッティング操作を可能にしてもよい。
【0113】
他の実施態様では、本発明は収入の創出方法であって、エレクトロブロッティング用の使い捨て可能なイオン貯蔵部又は使い捨て可能な電極回路を販売することを含む方法を提供する。使い捨て可能なイオン貯蔵部とは、イオン供給源を含むゲルマトリックス基材の形態である。電極回路は、イオン供給源を含むゲルマトリックス基材及び前記ゲルマトリックス基材に並設される導電性電極を含む。ゲルの基材には更に、色素化合物を埋め込む形で含めてもよい。使い捨て可能な電極回路は、例えば、電話発注システム又はオンラインインターネット発注システムにより、供給業者からユーザーに販売される。
【0114】
ドライ式ブロッティング装置
幾つかの態様では、本発明はドライ式ブロッティングゲル用の装置を提供し、該装置は電源、陽極電極回路を配置するための表面(該表面は陽極電極回路の陽極との接続用の電気接点を有する)、及び陰極電極回路の陰極との接続用の電気接点を有する裏面を含んでなり、装置の第1及び第2の表面を配置して陽極電極回路、陰極電極回路、並びに陽極及び陰極電極回路の間のゲルを保持し、装置には電気泳動的転写に用いる緩衝液を保持する貯蔵部が含まれず、保持されず又は連結されない。幾つかの態様では、本発明はエレクトロブロッティングシステムを提供し、該システムは既に挙げたようなドライ式エレクトロブロッティングに用いる装置を含んでなり、更に陽極電極回路及び陰極電極回路を含んでなる。陽極電極回路には陽極、1つ以上のイオン源を含む陽極ゲルマトリックス基材及び膜が含まれる。陰極電極回路は陰極及び1つ以上のイオン源を含む陰極ゲルマトリックス基材を含んでなる。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティング装置はエレクトロブロッティング条件のメニューを含むソフトウェアを含んでなる。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティング装置はAC/DCアダプタを含んでなる。幾つかの実施態様では、ドライ式エレクトロブロッティング装置は1つ以上の汎用シリアルバス(USB)ポートを含んでなる。
【0115】
ドライ式エレクトロブロッティングの実施方法
別の態様では、本発明はドライ式エレクトロブロッティングの実施方法を提供し、該方法には、1つ以上の生体分子を含有する分析ゲル、及び1つ以上のブロッティング膜を陽極電極回路と陰極電極回路との間に含む転写スタックを配置すること、並びに、陽極電極回路の陽極と陰極電極回路の陰極との間に電流を印加して、分析ゲルからブロッティング膜へ1つ以上の生体分子を転写することが含まれる。
【0116】
本発明の方法で用いる分析ゲルは第1面及び第2面を有し、該分析ゲルの第1面がブロッティング膜に並設され、該分析ゲルの第2面が電極回路と直接的又は間接的に接触する位置に存在する。幾つかの実施態様では、分析ゲルの第2面は陰極電極回路と接触する。ゲルと陰極電極回路との接触が間接的である(例えば浸漬された濾紙が陰極ゲルマトリックスと分析ゲルとの間に存在するような)場合でも、分析ゲルと陰極ゲルマトリックスとの間に電気的導通による間接的な接触が形成される。スタックはブロッティング膜が陽極ゲルマトリックスと直接的又は間接的に接触する態様で配置される。ブロッティング膜と陽極電極回路との接触が間接的である(例えば浸漬された濾紙が陽極ゲルマトリックスと分析ゲルの間に存在するような)場合でも、分析ゲル及び陽極ゲルマトリックスとの間に電気的導通による間接的な接触が形成される。
【0117】
本発明の方法の具体的な例示的態様では、陽極電極は銅製である。具体的な例示的態様では、陽極と陰極の電極は銅製である。幾つかの態様では、電流を印加する際の電流密度は前記分離ゲルの第1面1cm2当たり15mA以上である。本発明には、銅電極の使用によりブロッティング膜に生体分子(例えば分離ゲルから蛋白質)を転写することを含む方法が含まれる。本発明で、陽極電極回路への銅金属の使用により、導電性銅電極と付属のゲル基材との間におけるガスの放出及び気泡の形成が実質的に減少又は回避され、それにより大きい電流の使用が可能となり、好ましいことにブロッティング時間の短縮につながる。
【0118】
例えば、例示的な本発明のエレクトロブロッティング方法では、エレクトロブロッティングに用いる電流密度は1cm2当たり約10〜50mA(10〜50mA/cm2)である。本発明には、例えば10〜50mA/cm2の電流を印加して分離ゲルから蛋白質などの生体分子をブロッティング膜へ転写することを含むエレクトロブロッティング方法が含まれる。特定の態様では、エレクトロブロッティングは20〜40mA/cm2で実施され、例示的な実施態様では、エレクトロブロッティングは25〜35mA/cm2で実施される。他の実施態様では、該方法は10、15、20、25又は30mA/cm2超の電流で実施される。
【0119】
より高い電流密度の使用により、好ましいことにブロッティングに必要となる時間の短縮を可能とし、その結果時間が節約され、一定の時間内での各ブロッティング装置当たりのブロッティング操作能力を向上させる。したがって、本発明では、1つ以上の蛋白質の集団のような、構造的に同一の1以上の生体分子の集団を、分離ゲルからブロッティング膜に転写することを含むエレクトロブロッティング方法を提供し、該方法では構造的に同一の生体分子の集団の少なくとも50%が分離ゲルから15、10、9、8、7、6又は5分未満でブロッティング膜に転写される。生体分子は例えば、少なくとも10、15、20、30、40、50、60、70、75、90又は100kDaの蛋白質であってもよい。特定の実施態様では、50kDaの蛋白質の集団の少なくとも50%は、15、10、8、7又は6分以内に分離ゲルからブロッティング膜に転写される。
【0120】
幾つかの好ましい実施態様では、ゲルはエレクトロブロッティングの前に緩衝液又は溶液において平衡化される。例えばゲルは10分〜1時間、例えば20分間、20%のエチレングリコール/1×NuPAGE転写緩衝液(Invitrogen社)、100mMのビストリス、75mMのトリシン、100mMのビストリス、75mMのトリシン+20%のエチレングリコール、又は1:1000希釈したAnti−oxidant(Invitrogen社)を含有する2×NuPAGE Transfer Buffer(Invitrogen社)中の10%メタノール液でインキュベートしてもよい。
【0121】
幾つかの実施態様では、転写スタックは、陽極ゲルマトリックス基材及び陽極ゲル基材の第1面に並設される陽極電極を含む陽極電極回路と、陰極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲル基材の第1面に並設される陰極電極を含む陰極電極回路のとの間に位置する。幾つかの態様では、ブロッティング膜に陽極電極回路が付与される。
【0122】
本発明にはまた、1つ以上の生体分子を膜へ転写する方法が含まれ、該方法では1以上の生体分子が、電源、陽極、電気泳動的転写に用いるイオン供給源を含む陽極室、陰極、電気泳動的転写に用いるイオン供給源を含む陰極室、電気泳動ゲル及びブロッティング膜を含むエレクトロブロッティングシステムの使用により膜へ転写され、該陽極室は電気泳動的条件下でアニオンとして存在する1つ以上の化合物を含有し、該化合物は陰極室に存在しないか又は陰極室に顕著に少ない濃度で存在する。陽極室に存在し、陰極室に存在しない化合物は、好ましくは中性付近又はそれ以下のpKa(例えば約7.5以下のpKa)、好ましくは約7.2以下、より好ましくは約7以下のpKaを有する緩衝化合物である。幾つかの実施態様では、中性付近又はそれ以下のpKaを有する緩衝化合物は両性イオン緩衝液である。
【0123】
すなわち本発明には1つ以上の生体分子を検出する方法が含まれ、該方法では、1以上の生体分子が電源、陽極、電気泳動的転写に用いるイオン供給源を含む陽極室、陰極、電気泳動的転写に用いるイオン供給源を含む陰極室、電気泳動ゲル及びブロッティング膜を含むエレクトロブロッティングシステムの使用により膜へ転写され、該陽極室には電気泳動的条件下でアニオンとして存在する1つ以上の化合物が含まれ、該化合物は陰極室に存在しないか又は顕著に少ない濃度で陰極室に存在する。該方法には、膜へ転写された1つ以上の生体分子の、1つ以上の蛋白質染色法又は免疫検出法の使用による検出が更に含まれる。従来技術において公知で、本明細書でも記載するように、免疫検出には1つ以上の化学発光の検出、色素の基質の検出、放射性同位元素の検出又は蛍光検出を含めてもよい。
【0124】
実施例13及び14に示すように、従来の湿式又はセミドライ式エレクトロブロッティングによりエレクトロブロッティングされた蛋白質の検出と比較し、本発明の装置及びシステムを使用して蛋白質を膜にエレクトロブロッティングした場合は、蛋白質などの生体分子の膜上での検出が改善されうる。例えば、本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムを用いて約2倍、約4倍又はそれ以上で検出を改善できる。
【0125】
幾つかの態様では、エレクトロブロッティングシステムの陰極室は陽極室に存在しない1つ以上の化合物を含有してもよい。例えば、陰極室は陽極室に存在しないか又は顕著に少ない量で存在する1つ以上の緩衝化合物を含有してもよい。一実施態様では、陰極室は陽極室に存在しないか又は顕著に少ない量に存在する緩衝化合物を含含有し、該化合物は陽極室の緩衝液より少なくとも約0.5対数単位高い、例えば約1対数単位高いpKaを有し、緩衝液は中性のpH以上でアニオンを形成する。例えば、該化合物は約7.5のpKa、好ましくは約7.5超(例えば8以上)の生物学的緩衝液であってもよい。
【0126】
陽極ゲルマトリックスに存在し、陰極ゲルマトリックスに存在しない緩衝化合物の非限定的な例としてはグリシン、ホウ酸塩、TES、HEPES、TAPSO、DIPSO、HEPPSO、EPPS、トリシン、ビシン、TAPS、AMPSOなどが挙げられる。幾つかの実施態様では、陽極室に存在せず、陰極室に存在する緩衝化合物としては、例えばグリシン、HEPES、DIPSO、HEPPSO、EPPSトリシン、ビシン、TAPS、TAPSO又はAMPSOなど、中性付近又はそれ以上のpKaを有する両性イオン緩衝液が挙げられる。
【0127】
陰極室に存在するアニオン形成緩衝化合物はいかなる濃度で存在してもよいが、好ましくは少なくとも10mMの濃度、より好ましくは約10mM〜約1M、更に好ましくは約20mM〜約500mMの濃度で存在する。
【0128】
これらの本発明の態様では、陰極室における特定の緩衝液(例えばアニオン性緩衝液)の選択的な使用は、陽極室に供給されるアニオン性化合物に依存する。幾つかの実施形態では、陽極−陰極室緩衝液の組み合わせは、陰極室に存在しないか又は顕著に少ない濃度で存在する1つ以上のアニオン性緩衝液を陽極室に供給し、陽極室に選択的に供給されたアニオン性緩衝液より少なくとも約0.5対数単位高い、例えば約1対数単位高いpKaを有するアニオン性緩衝液を陰極室に添加する態様で選択される。陰極室のアニオン性緩衝液は、陽極室に同じ又は異なる濃度で存在してもよい。幾つかの実施態様では、陽極室に供給される、陰極室に存在しないか又は顕著に少ない濃度で存在する1つ以上の緩衝液は、両性イオン緩衝液である。幾つかの実施態様では、陰極室に供給される1つ以上の緩衝液は、選択的に陽極室に設置されるアニオン性緩衝液より高いpKaを有する両性イオン緩衝液である。
【0129】
当業者は、陽極及び陰極にそれぞれ供給される成分の選択が電気的転写の行われるpHに部分的に依存し、またそれが化合物のイオン化状態を規定することを認識するであろう。本発明の化合物は約6〜約8のpKaを有するものの、この範囲内又はその範囲外の化合物を、転写の条件に応じて、転写効果及び特に転写が行われるpH範囲を最適化する目的で選択することも当然可能である。
【0130】
本発明における、電気泳動的に転写された生体分子を検出の感受性を増加させる方法及び組成物を含むこれらの態様は、ドライ式エレクトロブロッティング方法及び組成物に限定されない。例えば、電子転写システム又は装置の陽極側への、動きの速いアニオン(例えば本明細書において開示するもの)を生じさせる化合物の供給は、ドライ式エレクトロブロッティング以外にも、湿式及びセミドライ式エレクトロブロッティングにおいても適用できる。例えば、湿式エレクトロブロッティングの場合、陽極側の緩衝液貯蔵部に本明細書で開示した化合物を含有してもよく、それを湿式エレクトロブロッティングゲルの陽極側に存在させた場合には転写された生体分子の検出が改善され、あるいは、セミドライ式エレクトロブロッティングの場合、ブロッティングサンドイッチの陽極側に位置するフィルターを本明細書において開示した化合物を含む緩衝液に浸漬してもよい。いずれの場合においても、陽極の緩衝液に用いる化合物は陰極の緩衝液に存在しないか又は顕著に少ない量で陰極の緩衝液に存在する。
【0131】
上記方法及び組成物は、電気泳動ゲル上での生体分子の分離を使用しないエレクトロブロッティングシステムに適用できる。例えば、生体試料、細胞又は溶菌液を未分離の液状又は懸濁状のサンプルとして膜にアプライし、本明細書に記載のシステムを使用して未分離の液状又は懸濁状のサンプルからエレクトロブロッティングにより結合させてもよく、陽極チャンバには陰極チャンバには存在しないか又は少ない量で存在するアニオン性化合物が含まれる。
【0132】
本発明は生体分子のエレクトロブロッティング及び検出方法を提供し、その検出感度は陰極室に存在しないか又は顕著に少ない量で存在する特定の化合物を、陽極室に用いることにより改善される。例えば、該方法は、陽極ゲルマトリックスが陰極ゲルマトリックスに存在しないか又は顕著に少ない量で存在するアニオン性緩衝化合物を含有する条件下で、本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムを使用して蛋白質を含む分離ゲルをブロッティングすることと、免疫検出、色素の検出又は化学発光検出の1つ以上を使用してブロッティング膜上での1つ以上の蛋白質を検出することとを含んでなる。該方法は従来のブロッティング法よりも結果として蛋白質の検出が改善される。
【0133】
本発明の更なる実施態様では、分子の染色は、エレクトロブロッティング操作の間、本発明の電極回路に含まれるゲル内に適切な染色物質又は基質を含有させることにより可能となり、それはブロッティング電流の印加に用いる導電性電極に染色物質若しくはその給源を含めることや、又は電極回路の準備に用いるゲル基材内で適切な染色物質を含めることにより行われる。ブロッティング操作の間、かかる染色物質又はかかるin situで形成された分子種は、それらが有する電荷に従い電気泳動的にブロッティング膜の方へ移動でき、ブロッティング膜上のブロッティングされた分子を着色できる。染色は、ブロッティング膜上にブロッティングされる分子種の蓄積前(まだ分離ゲルに存在する間)に行ってもよく、又はブロッティング膜上で行ってもよい。かかるin situ染色方法を用いる効果としては、ブロッティング染色後の工程の省略によって相当な時間及び労力が節約できるということである。
【0134】
以下の記載は例示であり、それらに限定されるものではない。記載される実施態様における要素及び機能を本発明の他の実施態様と組み合わせて新規な実施形態を創作することもでき、またそれらも本発明に包含される。
【0135】
図1及び2を参照する。図1は、本発明の実施態様に係る、使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング電極回路の模式的な等角図であり、図2は図1で図示する電極回路における線II〜IIに沿った横断面図である。電極回路10は導電性電極4を含み、ゲル基材2は電極4に接触する。
【0136】
ゲル基材2はいかなる適切なゲルでもあってもよく、例えば架橋ポリアクリルアミド系ゲル、アガロース系ゲル、架橋ポリアクリルアミド系ゲル及びアガロースを含むゲル、又は従来技術において他のいかなるタイプの公知の適切なゲル、又はゲル混合物であってよい。ゲル基材2はイオン供給源を含有する。イオン供給源はゲル基材2調製中にゲル基材2に添加するいかなる適切な緩衝溶液でもあってもよく、例えばブロッティング用の公知のいかなる緩衝液でもよく、特に限定されない。
【0137】
導電性電極4はいかなる適切な導電性電極でもあってもよい。好ましくは、必須ではないが電極4は薄い金属の箔又はワイヤラス(例えば薄い銅アルミニウムの箔又はメッシュ等)である。本発明の電極回路の銅電極を用いることの1つの効果としては、金属銅が本発明の陽極電極回路の陽極として含まれるとき、銅陽極から銅イオンがゲル基材に遊離し、水分子の電気分解が陽極でほとんど発生しないため、気泡が陽極でほとんど発生しないということである。したがって、例示的な態様では電極は金属(例えば銅)製である。しかしながら、限定的ではないが銀、鉛(Pb)等の他の金属を含む電極を使用して他の実施とすることもでき、それらも陽極付近での気泡の形成を減少させる。
【0138】
ゲル基材4は最適に電極4に液状化ゲル(例えば限定されないが、適切な緩衝溶液中に調製した、加熱により液状化させたアガロースゲル)を適切な鋳造チャンバ(図示せず)に注入し、ゲルを凝固させることによって、電極4において鋳型成型できる。あるいは、ゲル前駆体混合溶液(限定的ではないが、周知の適切なビスアクリルアミド架橋剤と、適切なアクリルアミドモノマーを含む適切な重合開始剤とを有する適切な緩衝溶液)を適切な鋳造チャンバに設置した電極4の表面上へ注入し、重合させゲル基材2を形成してもよい。
【0139】
あるいは、他の方法を使用してゲル基材2を予め形成された電極4に接着させること、又は適切な連続ゲル押出法を用いて電極4にゲルを接着させて形成することも可能である。
【0140】
電極4を金属から作製する必要がなく、他の適切な導電性材料で作製しても、又はそれを含有してもよいことに留意すべきである。例えば、電極4は1枚の柔軟なグラファイト紙から作製でき、又は1枚の他の適切な柔軟な材料(例えば有機ポリマー製シートのような可塑性物質)に導電性材料(例えば黒鉛粉末又はカーボン粒子等)を塗布してもよい。電極4は、例えばポリアニリン系導電性ポリマー、ポリピロール系導電性ポリマー又は従来技術において公知の他のいかなる適切な導電性ポリマーなどの導電性ポリマーから作製してもよく、又は該導電性ポリマーを塗布した1枚の適切な柔軟な材料から作製してもよい。
【0141】
次に図3を参照する。メッシュタイプ又は織物タイプの電極を有する使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング電極回路を例示する図式的横断面図である。電極回路20には上記のゲル基材2、及びメッシュタイプ又は織物タイプの導電性電極4Bを含めてもよい。電極4Bは好ましくは、限定的ではないが銅線又はアルミ線又は他のタイプの金属ワイヤなどの、極細い導電性金属線からなるメッシュ又はグリッドとして形成できる。かかる金属製の細い導線は織物タイプの、導電性のファブリック様の電極を形成するのに使用でき、それにより同じ金属から作製される箔より好適な可撓性及び柔軟性が得られる。電極4Bの細い金属性ワイヤは、ファブリック様の柔軟な導電性電極を織ることができるような、適切な編組(編組は図3に詳細に示さない)としても形成できる。
【0142】
しかしながら、電極4Bは、他のタイプの細い導電性非金属導線(限定されないが、炭素繊維又は非導電性材料から作製される柔軟なファブリックから作製され、例えばカーボン粒子若しくは黒鉛粒子、又は適切な金属粒子などの適切な導電性材料でコーティング、塗布又は覆った適切なポリマー繊維又はプラスチック繊維などの繊維)からも形成できることに留意すべきである。あるいは、例えば導電性有機ポリマー製繊維などの他のタイプの導電性繊維を使用してもよい。すなわち電極4Bは適切な非導電性材料、及びその上に積層若しくはコーティングした、又はそこに付着させた適切な導電性材料を含む複合的な細い繊維で作製してもよい。
【0143】
典型的にはゲル基材2のイオン供給源はゲル基材2に添加したいかなる適切な緩衝溶液でもあってもよいが、あるいは、又はそれに加え、本発明の更なる実施態様では、ゲル基材2がエレクトロブロッティングを実施するためのイオンを供給できるイオン交換マトリクスを含有してもよい点に留意すべきである。
【0144】
次に図4を参照する。メッシュタイプ電極及びイオン交換マトリクスを含むゲル基材を有する、使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング電極回路を例示する図式的横断面図である。
【0145】
上で詳述し、図3に示したようにエレクトロブロッティング電極回路30は電極4Bを含む。ゲル基材2Bは、上記の電極回路10(図1)の詳細にて説明したような鋳型成型や重合、又は他のいかなる適切な方法によっても電極4Bに並設される。ゲル基材2Bには適切なイオン交換マトリクス16の粒子が散布された状態で含まれる。
【0146】
イオン交換マトリクス16はゲルの重合及び/又は架橋前に、ゲル基材2Bの調製に用いる1つ以上のゲル材料中に最適に散布してもよい。アガロース系ゲルを用いる場合、ゲルがまだ液体の状態にあるときにイオン交換マトリクスをゲルに添加又は散布してもよい。ポリアクリルアミド系ゲルをゲル基材2Bの調製に用いる場合、イオン交換マトリクス16の粒子はゲル基材2Bの調製に用いるゲル前駆体を含む溶液中に散布してもよい。
【0147】
電極回路において使用できるイオン交換マトリックス形式は、特にエレクトロブロッティングに用いる成分に依存し、アニオン交換マトリックス及びカチオン交換マトリックスを含有してもよい。例えば、電極回路30を陰極電極回路として用いる場合、ゲル基材2Bはアニオン交換マトリクスを含有してもよい。電極回路30を陽極電極回路として用いる場合、ゲル基材2Bはカチオン交換マトリクスを含有してもよい。上記の開示されたドライ式エレクトロブロッティング電極回路10、20及び30(それぞれ図1、3及び4中)のいずれも、以下に詳細に記載するようにドライ式エレクトロブロッティングを実施するための陰極電極回路として使用できることに留意すべきである。更に、上記で開示したドライ式エレクトロブロッティング電極回路10、20及び30のいずれかを使用して、その上に適切なブロッティング膜を配置又は接触させることにより、陽極ドライ式エレクトロブロッティング電極回路を形成できる。
【0148】
図5を参照する。本発明の実施態様に係る、ブロッティング膜を含む使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング電極回路を例示する図式的断面図である。
【0149】
上記で詳細に開示するように、電極回路40には電極4及びゲル2基材が含まれる。電極回路40にはまた、ゲル基材2に並設される、又は配置されるブロッティング膜6が含まれる。ブロッティング膜6はいかなる適切なブロッティング膜でもあってもよく、例えばニトロセルロース製ブロッティング膜、PVDF系ブロッティング膜、活性紙製ブロッティング膜、活性ナイロン製ブロッティング膜又は他のいかなる公知技術の適切なタイプのブロッティング膜であってよい。
【0150】
電極回路40はブロッティング膜6を一枚含んでなるが、本発明の他の実施態様では、単にブロッティング膜(図5に示されない)を複数枚重ねて電極回路のゲル基材2に付着させることによって多重のブロッティング膜を含む電極回路を形成できる点にも留意すべきである。以下に開示するようにドライ式エレクトロブロッティング操作を実行した後、周知のように、かかる多重膜タイプの電極回路の多重ブロッティング膜を分離し、異なる様々な用途(例えば染色、免疫検出、蛍光可視化など)に使用できる。
【0151】
次に図6を参照する。ドライ式エレクトロブロッティングの陽極電極回路とドライ式エレクトロブロッティングの陰極電極回路との間に配置される分離ゲルを含んでなる、本発明のドライ式エレクトロブロッティングシステムを例示する図式的横断面図である。
【0152】
ブロッティング回路50をブロッティング装置(説明の簡略化のため、ブロッティング装置自体を図6に示さない)の2つの電気接点12と14との間に配置した状態を示す。ブロッティング回路50では、陽極のドライ式エレクトロブロッティング電極回路40A及び陰極のドライ式エレクトロブロッティング電極回路10(図2を参照)との間にゲル8を配置させてもよい。
【0153】
陽極電極回路40Aに電極4A及びゲル基材2Aを含めてもよい。電極4Aは上記の電極4(図1、2及び5)と類似してもよく、ゲル基材2Aは上記のゲル基材2(図1,2及び5)と類似してもよい。しかしながら、電極4Aが図1、2及び5の電極4の形状又は組成と必ずしも同一である必要があるわけではない。同様に、ゲル2A基材が図5のゲル基材2と類似してもよいが、これは本発明の実施に必須ではない。ゲル2A基材がゲル基材2と類似又は異なる組成を有してもよい点に留意すべきである。電極回路40Aにはまた、ゲル基材2Aに並設される又は、配置するブロッティング膜6が含まれる。ブロッティング膜6はいかなる適切なブロッティング膜であってもよく、例えばニトロセルロース系ブロッティング膜、PVDF系ブロッティング膜、活性紙のブロッティング膜、活性ナイロン系ブロッティング膜、又は他のいかなる公知技術の適切なタイプのブロッティング膜であってもよい。
【0154】
ブロッティング電極回路50の陰極側ドライ式エレクトロブロッティング電極回路10には、上記で詳述し、図1、2及び5に例示したような電極4及びゲル基材2を含めてもよい。ゲル8は典型的には、電気泳動度が異なる分子の分画又は分離するために用いられ、したがってその内部に分離された分子を含む分離ゲルである。ゲル8は生体分子の電気泳動による分離に使用できる任意のタイプのゲルであってよく、いかなる分離された公知の分子を含有してもよい。
【0155】
例えば、本発明の一実施態様では、ゲル8は標準的なポリアクリルアミド系ゲルであってもよく、公知の電気泳動による蛋白質分離を実行した後にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び様々な分離された蛋白質を適宜含有してもよい。本発明の他の実施態様では、ゲル8は分離された核酸(例えばDNA又はリボゾームRNA又は他のタイプのポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド)を含有するアガロース系ゲルでもよい。本発明の他の実施態様では、ゲル8は分離の対象となる分子が各々に直交する方向において順次分離される公知の二次元(2D)分離ゲルであってもよく、又は公知の等電点電気泳動ゲルであってもよい。
【0156】
ブロッティング電極回路50は、図6に示すようにドライ式エレクトロブロッティングの陽極電極回路40Aとドライ式エレクトロブロッティングの陰極電極回路10との間にゲル8を配置して形成してもよい。例えば、陽極電極回路40Aを適切な平面に配置し、ゲル8をブロッティング膜6の表面に慎重に敷設してもよい。ブロッティング膜6上へのゲル8の設置の間、ゲル8とブロッティング膜6との間に気泡のトラッピングが生じないよう注意する必要がある。次いで陰極電極回路10を、ゲル8の上部表面と電極回路10のゲル基材2との間に気泡のトラッピングが生じないように慎重にゲル8の上面に慎重に設置してもよい。
【0157】
図6に詳細に示すように、完成したブロッティング電極回路50を次いで電気接触部12及び14と接触する形で配置してもよく、その場合接触部12は陰極電極回路10の電極4と接触し、接触部14は陽極電極回路40Aの電極4Aと接触する。適当な極性を有する適切な電圧を接触部12及び14に印加し、エレクトロブロッティングを実施する。生体分子は次いでブロッティング膜6上へエレクトロブロッティングされる。
【0158】
ドライ式ブロッティング操作の完了後、ブロッティング電極回路50を分解し、ブロッティング膜6を取り出し、周知の更なる試験、染色(必要に応じて)、可視化及び/又は更なる使用に供してもよい。
【0159】
なお、本発明の更なる実施態様では、図6のブロッティング電極回路に付加的なブロッティング膜(図6に示されない)を含めてもよく、かかる付加的なブロッティング膜(図示せず)をゲル2とゲル基材8との間に配置してもよい。かかる二重膜ブロッティング電極回路は、ゲル基材8中の条件下で、ブロッティングの対象となる分子に正電荷のものと負電荷のものとが含まれる場合に有用でありうる。例えば、蛋白質分離で公知のように、特定のpH条件下で大部分の蛋白質分子が負電荷であっても、幾つかの蛋白質分子が正味の陽電荷を有する場合もある。かかる正に荷電した蛋白質分子(又は他の正に荷電した非蛋白質分子)は陰極の方向へ電気泳動的に移動するため、図6で図示する位置のブロッティング膜6上へブロッティングされない。本発明の更なる実施態様では、付加的なブロッティング膜(図示せず)が陰極電極回路10のゲル基材2とゲル基材8との間に配置されるとき、いかなる種類の正に荷電する種を付加的な膜上へブロッティングでき、それを検出及び/又は回収及び/又は使用できる。
【0160】
かかる二重膜を含むエレクトロブロッティング電極回路によるエレクトロブロッティングの完了後、電極回路を分解し、両方のブロッティング膜を取り出し、分離された分子種の更なる染色及び/又は検出及び/又は同定及び/又は可視化、及び/又はかかる分子種を単離して更なる使用に供してもよい。またかかるブロッティングされた分子種を、二重膜ブロッティング電極回路に含まれるかかる2枚のブロッティング膜の1枚又は両方の上で、本明細書において開示したいずれかのin situでの染色方法を用いて染色することができ、それは本明細書において詳細にて開示したようにエレクトロブロッティング電極回路のゲル基材2及び/若しくはゲル基材2A中に適切な染色物質又は基質を含有させることにより、又は陽極電極回路の電極に含めた銀金属を用いることにより行われる。
【0161】
上記で開示したように第2のブロッティング膜をエレクトロブロッティング電極回路に含める場合、付加的なブロッティング膜を陰極電極回路の一部として適宜含めてもよい。例えば、ブロッティング膜6と類似又は異なるブロッティング膜を、図2の電極回路10のゲル基材2の表面であってゲル基材2の電極4が取り付けられる側の反対側に並設し、ブロッティング膜を含む陰極電極回路(図示せず)を形成するのが好ましい。ブロッティング膜を含むかかる陰極電極回路をゲル8及び陽極電極回路40(図5)と共に使用し、上記の二重膜エレクトロブロッティング電極回路を形成してもよい。
【0162】
あるいは、本発明の他の実施態様では、電極回路10(図2)及び電極回路40(図5)及びゲル8と共に、分離して設置されるブロッティング膜(図示せず)を用い、上記の二重膜エレクトロブロッティング電極回路を(手作業、又は以下に詳細に開示する適切な気泡除去装置を用いて)形成することも可能である。
【0163】
ゲル8、陰極電極回路10及び陽極電極回路40Aからブロッティング電極回路50を構成する際、ゲル8と電極回路10と40Aとの間に空気がトラップされる傾向があることに留意すべきである。かかる閉じ込められた気泡はブロッティング電極回路50を流れる電流の均一な流れを妨げるおそれがあるため、望ましくない。本発明の本発明者はまた、本発明の装置を構成する間のブロッティング電極回路への気泡のトラッピングを減少又は除去する新規な装置を提供する。
【0164】
図7、8、9及び10を参照する。図7は本発明の実施態様に係る、本発明のドライ式エレクトロブロッティング電極回路をエレクトロブロッティングされるゲルに接触させつつ気泡のラッピングを減少させることが使用可能な気泡除去装置の一部の模式的な断面図である。図8では、ドライ式エレクトロブロッティング装置と気泡除去装置を連結した、本発明の更に別の実施態様に係るエレクトロブロッティング装置の幾つかの図を示す。また図9では図8のエレクトロブロッティング装置の図を示す。ここでは気泡除去装置の2つの分離した構成要素が開いた状態にある。また図10では、図8及び図9のエレクトロブロッティング装置の幾つかの図を示す。ここでは図9の気泡除去装置の蓋が閉じられ、2つの分離した構成要素が閉じた状態にある。
【0165】
図8及び9において、エレクトロブロッティング装置100には気泡除去装置60が含まれ、エレクトロブロッター装置80は同一のハウジング内で組み合わされている。エレクトロブロッター装置80には平面86Aが含まれてもよく、ブロッティング電極回路50又は他のいかなる適切なブロッティング電極回路を構成した後にその上に設置し、エレクトロブロッティングを実施できる。エレクトロブロッター装置80にはカバー82が含まれてもよい。表面には86A電気接点(図示せず)が含まれる。電気接点はスプリング入りでもよく、又はスプリングがなくともよく、それを使用して表面86Aと接触して設置したブロッティング電極回路(図示せず)に電圧を印加してもよい。同様に、表面86Cには電気接点(図示せず)が含まれる。電気接点はスプリング入りでも、又はスプリングがなくともよいが、それらが陽極と陰極の電極回路の電極に押しつけられ、それらの間で良好な電気的接触が得られる必要がある。またそれを使用して表面86Cと接触して設置されたブロッティング電極回路に電圧を印加してもよい。
【0166】
装置100には電源(詳細に示さない)を含めてもよく、装置100のハウジング84中に配置してもよい。あるいは、装置100は分離した適切な電源(図示せず)から外部の電力を受け取る適切なソケット又は接触部(説明の簡略化のため示さず)を有してもよい。
【0167】
エレクトロブロッティングの実施の際、図6のブロッティング電極回路50(又は本明細書において記載される他のいかなるブロッティング電極回路)を表面86Aに設置し、ブロッティング電極回路50の陰極電極回路10の電極4の上面と接触するまでカバー82を降ろし、カバーの電気接点を電極4と電気的に接触させ、表面86Aの電気接点を陽極電極回路40Aの電極4Aと電気的に接触させることができる。カバー82は適切な掛け金89又は他のいかなる適切な型締機構によって閉じて保持し、電圧差を電気接点間に印加してエレクトロブロッティングを開始することができる。エレクトロブロッティングの間の電流印加の詳細、及びエレクトロブロッティング操作における他の詳細及び異なるパラメータを実施例1から14に示す。
【0168】
本明細書に開示、例示する装置100には気泡除去装置60及びエレクトロブロッター80の組み合わせが含まれるが、これが必須ではない点に留意すべきである。本発明の他の実施態様では、気泡除去装置はブロッティング電極回路の設置の際に別々の装置として設置してもよく、またエレクトロブロッティングを周知のいかなる別々のエレクトロブロッター装置を使用して実施してもよい。
【0169】
図7に戻ると、気泡除去装置60には好ましくは平坦な表層62Aを有するベース62が含まれる。ローラー64は可動支持機構70に連結する。可動支持機構70は2つの挟持腕61Aと61Bによりベース62と連結し(図9に最良の態様を示す)、ローラー64がベース62の表面62A上に保持される。可動支持機構70はハンドル74を有し、それを握って76A及び76B(図7)として示す方向に可動支持機構70を移動させるのに使用する。ローラー64は軸65と連結され、支持機構70に回転可能に可動的に連結される。支持機構70とローラー64の軸65は2つのスロット付き支持部材72(支持部材72のうちの1つのみを図7の横断面図に示す)によって支持され、各々が垂直スロット72Aを(最良の態様を図10に示す)を有する。以下に詳細に開示するように、可動支持機構70はローラー64とベース62の表面62Aとの間の隙間を調整する目的で構成される。
【0170】
支持機構70は通常矢印76A及び76Bで示される方向に屈曲できるように構成される。矢印76Bの方向に支持機構70を倒すことでローラー要素64が持ち上がり、軸65がスロット付き支持部材72の垂直スロット72Aの範囲内で上方にシフトし、それによりローラー64とベース62の表面62Aとの間の隙間が拡大する。矢印76Aの方向に支持機構70を倒すことでローラー要素64が下降し、軸65が垂直スロット72Aの範囲内で下方にシフトし、それによりローラー要素64とベース62の表面62Aとの間の隙間が縮小する。
【0171】
気泡除去装置60にはまたベース62に可動的に連結される2つの可動な分離部材75及び77が含まれる。分離部材75及び77は、図9に示すように、円形断面を有するロッド状の長形部材であってもよいが、楕円横断切片又は他のいかなる適切な断面を有する長形部材であってもよい。分離部材75及び77を移動させ、ベース62の表面62A上にゲル及び/又はドライ式ブロッティングの1つ以上の電極回路を配置させてもよい。例えば、図9では分離部材75及び77は開かれた状態で示され、支持機構70はローラー65と表面62Aとの間の距離が最大となる態様で開いた状態で示される。
【0172】
図9では気泡除去装置の分離部材75及び77が開いた状態で示される。図10では分離部材75及び77が閉じた状態で示される。
【0173】
図7に戻り、本発明の方法に従ってブロッティング電極回路を構成したときの気泡除去装置60を示す。本発明の1つの適用可能な方法に係るブロッティング電極回路(例えば図6のブロッティング電極回路50)の構成によれば、移動支点機構70を開いてローラー65と表面62A(図9に示す)との間の隙間を最大にでき、また、分離部材75及び77を上方へ移動させて側部に向かって開いた状態にし(図9に示す)、表面62Aへの比較的自由なアクセスが可能となる。次いで、陽極のドライ式ブロッティング電極回路40A(図6を参照)又は本明細書において記載した他のいかなるタイプの適切な陽極電極回路とも、図7に示す位置で表面62Aと接触し、そこで導電性電極4Aが表面62A及び上方に対向して位置するブロッティング膜6と接触する。次いで分離部材75を陽極電極回路40Aのブロッティング膜6の表面と接触するまで下ろす。次いでゲル8(図6に関して上記で開示したように、分離された分子を含有する)を陽極電極回路40Aのブロッティング膜6の表面上、及び図7で詳細を示す分離部材75を覆う形で設置し、それによりゲル8の一部が分離部材75によってブロッティング膜6から隔離され、ゲル8の他の一部がブロッティング膜6の一部と接触する。
【0174】
次いで分離部材77を下ろし、ゲル8の状面と接触させるように配置する。次いで陰極電極回路10(図2に詳細を示す)をゲル8の上に、分離部材77(図7に示す)を覆う形で配置し、それによりゲル基材2の一部が分離部材77によってゲル8から隔離され、一方ゲル基材2の他の一部がゲル8の一部と接触する。陰極電極回路10(図6で詳細を示す)の導電性電極4は上方を向いて存在する(図6で詳細を示す)。
【0175】
次いで支持機構70を(図7の矢印76Aで示す方向へハンドル74を動かして)下向きに下げ、ローラー64の下部が陰極電極回路10の導電性電極4の上面と接触させ、その上にわずかな圧力を及ぼさせる。次いで、陰極電極回路10及び陽極電極回路40Aと共にゲル8を含む全ての組み合わせの端部を図7の矢印85で示す方向に引き、ブロッティング電極回路50(図6に示す)を形成させる。ゲル8、陰極電極回路10及び陽極電極回路40Aを含む組み合わせを矢印85で示す方向に引くと、分離部材75及び77はそれぞれゲル8と電極回路40Aと電極回路10との間にスペース91及び92を維持し、それによりゲル8と電極回路40Aと電極回路10との間における気泡のトラッピングの除去又は少なくとも顕著な減少が促進される。
【0176】
更に、ローラー64によって印加される圧力により好ましくはブロッティング膜6とゲル8間、及びゲル8と陰極電極回路10のゲル基材2との間の密着が確保され、それによりエレクトロブロッティングの効率化及び均一性の改善が得られる。次に図17を参照する。保持トレイに組み込んだ適切な電極を含むブロッティング電極回路の横断面図であり、それによりブロッティング電極回路を保持トレイ中に配置しながらのドライ式エレクトロブロッティングの実施が可能となる。
【0177】
ブロッティング電極回路150には保持トレイ222が含まれる。保持トレイ222には使用の際に図17のプリングタブ223と類似のプリングタブ223を含めてもよい。保持トレイ222には電極回路140が含まれる。電極回路140には2つの細い銅箔片140A及び140Bを含めてもよい。銅箔片140Aは保持トレイ222の底部の外面222Aと接触する。銅箔片140Bは保持トレイ222の底部の内表面222Bと接触する。銅箔片140A及び140Bは保持トレイ222の開口部を通じて導電性コネクタ140C(限定されないが例えば短い銅ストリップ)によって各々電気的に連結される。
【0178】
銅箔片140A及び140Bを、銅メッシュ又は銅ファブリックの編み物で作製された適切な部材で、又は限定されないが本明細書で開示する全てのタイプの導電性材料などの他のいかなる適切な導電性金属若しくは素材、又はいかなる材料の組み合わせによる、適切な形状及び/若しくは構成を有するもので置換できることに注意されたい。
【0179】
本明細書で詳細に開示したように、ブロッティング電極回路150にはまた陽極電極回路130が含まれる。陽極電極回路130の電極134が銅箔片140Bと電気的に接触することにより、電流が電極140を通じて電極134に流れる。
【0180】
ブロッティング電極回路150にはまた、図6のゲル8に関して記載したように分離された分子(例えば蛋白質、DNA、リボゾームリボ核酸等)を含有するゲル148が含まれる。ゲル148は陽極電極回路130のブロッティング膜136と接触する。ブロッティング電極回路150にはまたゲル基材142と電極144を有する陰極電極回路145が含まれる。上記で詳細に開示するように、ゲル基材142と陽極電極回路145の電極144はゲル基材2と陽極電極回路10の電極4と類似していてもよい。ゲル基材142はゲル148の上面で接触する。
【0181】
図17の完全なブロッティング電極回路150では、表面86Aと表面86Bとの間にエレクトロブロッター装置80(図8を参照)を配置してもよい。表面86B上の電気接点は、装置を操作する間、陰極電極回路145の電極144と電気的に接触する。銅箔片140Aはハウジング84(図8を参照)の電気接点と電気的に接触する。電極14はハウジング84中に形成される凹部(説明の簡便化のため詳細に示さない)に配置され、ハウジング84の表面86Aに曝露される。ブロッティング電極回路150が図17に例示する位置に配置されるとき、装置の電気接点を通してブロッティング電極回路150に電流を印加し、本明細書で詳述したようにエレクトロブロッティングを実施できる。
【0182】
当業者であれば、保持トレイ222中の電極140の構成は必須ではなく、特に装置100の形状及び電気接点の位置、用いる電流の強さ及び他の設計上の考慮に依存して様々な態様で変化できると認識するであろう。すなわち、装置の電気接点の位置及び構成は保持トレイ222と電極140の様々な構成に応じて変形できる。
【0183】
例えば、保持トレイ222の底の開口部を省略してもよく、細長い銅箔ストリップ(図示せず)を保持トレイ222の内表面222Bに取り付けてもよい。銅スリップの一端が電極134との電気接点を構成し、一方で銅スリップ(図示せず)の他端がプリングタブ223の上面で留まってもよい。この構成では、電極14(又は他の異なる適切な電極)をプリングタブ223に配置される銅箔ストリップの端部と電気的に接続させ、電流を電極134に印加してもよい。かかる構成により、図17で示す電極140を有する構成と比較し簡易なものとなり、かつ製造コストも安価になる。
【0184】
図面に示し本明細書で開示した様々なタイプの電極に関する配置、形状、サイズ及び材料組成物の組み合わせについての多数のかかる配列及び組み合わせの変更は当業者にとり容易である。本明細書で開示し、図面において例示する構成は、例示のみを目的として提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0185】
下記の実施例1から14において、本発明の方法及び電極回路の詳細な非限定的な実際上のアプリケーションを列挙する。
【0186】
実施例1
E−PAGE 6% 96ゲル(Invitrogen社、カールズバッド、カナダ、カタログ番号EP096−06として市販)、及びEBase電気泳動装置(Invitrogen社、カタログ番号EBM−03として市販)を用い、14分間(プログラムEPによる)電気泳動した。5μLのE−PAGE See Bluepre−stained protein standard(Invitrogen社(USA)、カタログ番号LC5700)をEPAGEゲルカセットの各々のウェルにロードした。泳動終了後、カセットを開放しゲルを取り出した。
【0187】
分離された蛋白質スタンダードを内部に含有するゲルを、上記図6で詳細に開示したように陽極電極回路と陰極電極回路の間に挟む形で設置した。陽極電極回路には、Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ)を裁断して12cmの長さ、8cmの幅に作製した銅メッシュの編み物による銅メッシュ電極を使用した。上記編み物状の銅メッシュ電極を、3mmの厚を有する同じ表面積(8×12cm)のゲルスラブの1つの面に接触させた。上記ゲルスラブは、120mMのビストリス、95mMのトリシン、95mMのBES、0.3%のSDS及び20%のエチレングリコールを含むポリアクリルアミド/アガロース複合体(5%の架橋剤及び0.5%のアガロースを有する10%のポリアクリルアミド)で調製した。8×12cmの寸法の0.2μの細孔径を有するニトロセルロース膜(カタログ番号BA83としてSchleicher&Schuell Bioscience社から市販)を、ゲルスラブの銅メッシュ電極が取り付けられた面の反対側のゲルスラブの面に接触させた。
【0188】
陰極側のドライ式ブロッティング電極回路は、上記で詳述した陽極電極回路のゲルスラブの作製と同様に、8×12cmの寸法及び1.5mmの厚を有し、同じ組成を有する第2のゲルスラブとして作製した。
【0189】
図7から10で示し、上記した気泡除去装置60の表面62A上に陽極電極回路を設置してブロッティング電極回路を形成し、次いで分離後の蛋白質スタンダードを含有するE−PAGE 96ゲルを、陽極側のドライ式ブロッティング電極回路のブロッティング膜の表面に設置し、次いでE−PAGE 96ゲル上に陰極側ブロッティング電極回路を設置した。ブロッティング電極回路の形成の詳細は、上記図6から10に関して詳述したとおりである。
【0190】
EPAGE 96ゲル、陰極電極回路及び陽極電極回路から作製したブロッティング電極回路サンドイッチを、気泡除去装置60のローラー64に通し、層間の気泡を除去した。次いでブロッティング電極回路サンドイッチに圧力を与え、電極に35Vの電圧を7分間印加した。このドライ式エレクトロブロッティング工程終了後、ブロッティング膜とEPAGE 96ゲルをサンドイッチから分解したところ、着色マーカーがブロッティング膜上に視覚的に観察され、EPAGE 96ゲルには着色マーカーが全く観察されず、ゲルからブロッティング膜への蛋白質スタンダードの効率的な転写を示すものであった。本発明のドライ式エレクトロブロッティング電極回路を用いた蛋白質ドライ式エレクトロブロッティングの完了後、ニトロセルロースブロッティング膜における着色蛋白質の効果的な転写がなされていることを示すものであった。
【0191】
本発明の陽極電極回路への銅金属の使用により、導電性銅電極とそれに接触するゲル基材との間において実質的にガスの放出及び気泡の形成が減少又は排除され、それにより大きい電流の使用が可能となり、好ましいことにブロッティング時間の短縮につながる。エレクトロブロッティングの際の典型的な(最初の)電流密度は1cm2当たり約30mA(30mA/cm2)とした。対照的に、大部分の市販のセミドライ式ブロッティング装置では典型的には1cm2当たり2〜6mA(2〜6mA/cm2)の範囲の電流密度に制限される。これにより、好ましいことにブロッティングに必要な時間の短縮が可能となり、ゆえに時間が節約され、更に一定時間内に各ブロッティング装置においてより多くのブロッティング操作を実施することが可能となる。
【0192】
実施例2
実施例1の陽極電極回路で用いた銅メッシュの編み物の代わりに、アルミニウム箔(3M社、カタログ番号1170、USA)から陽極電極回路の導電性電極を作製したことを除いて、上記の実施例1と同様にエレクトロブロッティングを実施した。かかるアルミニウム電極を使用するエレクトロブロッティングの結果、実施例1の結果よりブロッティングの効率が若干低下した。
【0193】
実施例3
陽極電極回路に用いるゲル基材の組成を以下の通りとしたことを除き、上記の実施例1と同様にエレクトロブロッティングを実施した。4%のアガロース、120mMのビストリス、95mMのトリシン、95mMのBES、0.3%のSDS及び20%のエチレングリコールを含んでなるゲルを、同体積の、ビストリスイオンをロードした湿式の繊維状セルロースリン酸系の陽イオン交換マトリクス(カタログ番号p11、Whatman International社製)と混合した。また、陰極電極回路の調製に用いたゲルの組成を以下の通りとした。4%のアガロース、120mMのビストリス、95mMのトリシン、95mMのBES、0.3%のSDS及び20%のエチレングリコールを含んでなるゲルを、同体積の、トリシンイオンをロードした、予め膨張させた微粒子状のジエチルアミノエチル(DEAE)セルロース系アニオン交換マトリクス(カタログ番号DE52、Whatman International社製)と混合した。実施例1で詳述したようにブロッティングを実施した。良好なブロッティング結果が得られた。
【0194】
陰極電極回路のゲルマトリックス基材のみにイオン交換マトリクスを含有させて更なる実験を実施した。陽極電極回路及びE−PAGE 96ゲルを上記実施例1に詳述したとおり作製した。陰極電極回路の調製に用いるゲルの組成を以下の通りとした。4%のアガロース、120mMのビストリス、95mMのトリシン、95mMBES、0.3%のSDS及び20%のエチレングリコールを含んでなるゲルを、同体積の、トリシンイオンをロードした、予め膨張させた微粒子状のジエチルアミノエチル(DEAE)セルロース系アニオン交換マトリクス(カタログ番号DE52、Whatman International社製)と混合した。実施例1の記載と同様にブロッティングを実施した。良好なブロッティング結果が得られた。
【0195】
実施例4
EPAGE(商標)48 8%ゲル(Invitrogen社、カタログ番号EP048−08)、プログラムEPをEBase電気泳動装置(Invitrogen社(USA)、カタログ番号EB−M03)を使用し、23分間電気泳動を行った。Benchmark protein ladder solution(Invitrogen社(USA)、カタログ番号10747−012)の5μLのサンプルを、E−PAGE(商標)48ゲルの幾つかのウェルにロードした。電気泳動完了後、ゲルをカセットから取り出し、実施例1で詳細に説明したように、5分間エレクトロブロッティングした。ブロッティングに用いる陽極電極回路は、上記の実施例1で用いた陽極電極回路と類似していた。但し、実施例4で用いる陽極電極回路の導電性電極は実施例1で用いた導電性電極と異なる点を除く。実施例4で用いる陽極電極回路の導電性電極を以下の通りに作製した。銅メッシュ電極はKiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ)を裁断して12cmの長さ、8cmの幅に作製した銅メッシュの編み物を用いて作製した。銅メッシュの編み物の電極に銀エマルジョン(elcolit 370(Elosol社製、チューリッヒ、スイス))を塗布した。この電極と接触するゲルの基材は実施例1の陰極電極回路において用いるゲルの基材と同じ寸法及び同じ組成であった。実施例4で用いるブロッティング膜及び陰極電極回路には実施例1にて詳述したのと同様のものを使用した。
【0196】
ブロッティング工程の間、銅メッシュに塗布した銀金属原子に由来し、陽極で形成される銀イオンはブロッティング膜の方へ移動し、同時にE−PAGE48ゲルからブロッティング膜に転写された蛋白質と相互作用した。ブロッティングの完了後、ブロッティング膜をブロッティング電極回路から取り出し、2分間紫外線に曝露し、次いで10分間周辺光(室内光)に曝露した。銀染色による蛋白質のバンドはブロッティング膜上で観察できた。
【0197】
すなわち、銀含有電極を用いることにより、分離された分子(例えば蛋白質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド(DNA、リボゾームRNAなどを含むがこれに限定されない)、並びに公知の銀染色可能な他のいかなるタイプの分子)のブロッティング及び染色を同時に行うことができる。
【0198】
実施例5
E−PAGE(商標)48 8%ゲル(Invitrogen社、カタログ番号EP048−08)、プログラムEPをEBase電気泳動装置(Invitrogen社(USA)、カタログ番号EB−M03)を使用し、23分間電気泳動を行った。Benchmark protein ladder solution(Invitrogen社(USA)、カタログ番号10747−012)の5μLのサンプルを、E−PAGE(商標)48ゲルの幾つかのウェルにロードした。電気泳動的完了後、ゲルをカセットから取り出し、実施例1で詳細に説明したように、5分間エレクトロブロッティングした。陽極電極回路を実施例1で詳細に説明したように作製した。陰極電極回路を以下の通りに調製した。陰極電極回路に用いるゲルマトリックス基材を、長さ12cm×8cmの幅×1.5mmの厚のゲルスラブとして、別に(銅メッシュ電極なし)作製した。このゲルスラブの組成を、上記実施例1の陰極電極回路に用いる陰極ゲルマトリックスと同様にした。
【0199】
次いで陰極ゲルマトリックスのスラブをクマシーブルー R−250溶液(10%の酢酸及び30%のメタノール水溶液中、0.03%のクマシーブルー R−250)50mLにおいて一晩浸漬させた。次いで陰極ゲルマトリックススラブを慎重に拭いて水分を除去し、Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ)を裁断して12cmの長さ、8cmの幅に作製した銅メッシュの編み物を用いて作製した銅メッシュ電極に接触させた。実施例1で詳細に説明したように、気泡除去装置60を用いて、E−PAGE48ゲル、陽極電極回路及び陰極電極回路からブロッティング電極回路を作製した。次いでブロッティング電極回路に25Vの電圧差を印加して5分間エレクトロブロッティングを実施した。エレクトロブロッティング操作の間、負電荷のクーマシーイオンは蛋白質の直後にブロッティング膜の方向へ電気泳動的に移動し、ブロッティング膜上の蛋白質バンドを染色した。5分間のエレクトロブロッティングの終了後、ブロッティング電極回路を分解し、ブロッティング膜を取り外し、観察に供した。ブロッティング膜上に染色された蛋白質バンドが肉眼で観察された。
【0200】
実施例6
E−PAGE(商標)48 8%ゲル(Invitrogen社、カタログ番号EP048−08)、プログラムEPをEBase電気泳動装置(Invitrogen社(USA)、カタログ番号EB−M03)を使用し、23分間電気泳動を行った。Benchmark protein ladder solution(Invitrogen社(USA)、カタログ番号10747−012)の5μLのサンプルを、E−PAGE(商標)48ゲルの幾つかのウェルにロードした。電気泳動的完了後、ゲルをカセットから取り出し、実施例1で詳細に説明したように、5分間エレクトロブロッティングした。エレクトロブロッティングを25Vで5分間実施した。陽極電極回路を実施例1で詳細に説明したように作製した。陰極電極回路を以下の通りに調製した。陰極電極回路に用いるゲルマトリックス基材を、長さ12cm×8cmの幅×1.5mmの厚のゲルスラブとして、別に(銅メッシュ電極なし)作製した。このゲルスラブの組成を、上記実施例1の陰極電極回路に用いる陰極ゲルマトリックスと同様にした。
【0201】
次いでゲルマトリックスのスラブをSypro Ruby blot stain(Molecular Probes社製、OR、USA、カタログ番号S11791)の調製済溶液50mLに一晩浸漬した。次いで陰極ゲルマトリックススラブを慎重に拭いて水分を除去し、Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ)を裁断して12cmの長さ、8cmの幅に作製した銅メッシュの編み物を用いて作製した銅メッシュ電極に接触させた。実施例1で詳細に説明したように、気泡除去装置60を用いて、E−PAGE48ゲル、陽極電極回路及び陰極電極回路からブロッティング電極回路を作製した。次いでブロッティング電極回路に25Vの電圧差を印加して5分間エレクトロブロッティングを実施した。エレクトロブロッティング操作の間、負電荷のSypro Rubyイオンは蛋白質の直後にブロッティング膜の方向へ電気泳動的に移動し、ブロッティング膜上の蛋白質バンドを染色した。5分間のエレクトロブロッティングの終了後、ブロッティング電極回路を分解し、ブロッティング膜を取り外した。ブロッティング膜を紫外線源(Alfaimager、アルファイノテック社製、CA(USA))を使用して視覚化し、蛍光染色蛋白質バンドをブロッティング膜で観察した。
【0202】
実施例7
エチジウムブロミドを含有するEゲル48 2%ゲル(Invitrogen社(USA)、カタログ番号G8008−02)を、E−Base電気泳動装置(Invitrogen社(USA)、カタログ番号EB−M03)上のプログラムEGを使用して20分間電気泳動した。low mass ladder(Invitrogen社(USA)社製、カタログ番号10068−013)1μLのサンプル(15μlの総量でアプライ)をE−ゲルの幾つかのウェルそれぞれにロードした。電気泳動による分離完了後、ゲルをUVライトボックスを使用して視覚化し、エチジウムで染色したバンドが観察された。次いで、E−ゲルをE−ゲルカセットから取り出し、実施例1で詳細に説明したようにエレクトロブロッティングした。陰極電極回路及び陽極電極回路を実施例1にて説明したように作製した。実施例1で詳細に説明したように、気泡除去装置60を用いて、Eゲル48 2%ゲル、陽極電極回路及び陰極電極回路からブロッティング電極回路を作製した。エレクトロブロッティングを25Vで5分実施した。
【0203】
エレクトロブロッティング完了後、E−ゲル48(2%)ゲルをUVライトボックス TFX−20M(Vilber Lourmat社製(フランス))を使用して視覚化したが、蛍光バンドが観察されず、ブロッティング膜へのDNAバンドの効率的な転写が示された。次いでブロッティング膜をモデルDR−45M dark reader(Clare Chemical Research社、CO、USA)を通じて視覚化し、撮影した。ブロッティングされた全てのバンドが直ちに視覚化された。
【0204】
実施例8
iBlot(商標)エレクトロブロッティング装置は電子回路部品によって制御される電源ユニットであり、指定されたプログラム通りの電界を発生させることができる。ドライ式エレクトロブロッティング装置をイオン貯蔵部として働くドライ式エレクトロブロッティング電極回路用に設計した。このシステムでは、分離ゲルからサンプルを駆動させるのに必要なイオンは、緩衝液又は浸漬した濾紙の代わりにゲルマトリックス(陽極電極回路の場合イオン交換マトリクスを含む)に含まれており、そのため操作がクリーンで簡便なものとなり、必要となる手作業も最小限となる。転送速度は電極と内蔵電源との間の距離を短くし、フィールド強度及び高電流を創出することにより増加する。
【0205】
装置はステンレス鋼、並びに転写膜、分離ゲル及び電極回路(電極+並設されたゲルマトリックス)との間の気泡の機械的除去に用いる「気泡除去装置」のアルミニウム製部品を有するCycoloyプラスチックシェル中に取り付けられる。装置には、イオン及びサンプルの駆動力を生じさせる、25Vで〜6Aの電流で225Wを生じさせることができる補助電源機構(100〜240V、AC:50〜60Hz)が含まれる。電源は3つの電子回路によって制御される。ソフトウェアにより制御されるコントロールパネルにより、ユーザーがそれらの分離システムから最良の転写結果を得るためのプログラムを選択できる。3つの実行プログラムが開発され、最適な転写のためにiBlot(商標)中にプログラミングされている。第1のプログラム(25Vで実行)では、サンプルを1つのミディ又は2つのミニサイズの1mm厚NuPAGEゲル及びEPAGEゲルから、それぞれ7及び8分で転写でき、23Vのプログラムでは1つのミニサイズのNuPAGEゲルを7分で転写する用途に使用できる。20Vで実行する第3のプログラムは、より長い転写が必要とされる用途に使用する。4つのプリント基板(PCB)上には、システム論理演算装置の実行、表示及び論理演算のための電圧及び電流の調整、及びエレクトロブロッティングプロセスへの給電に必要となる電子部品を担持される。更に装置はUSBポート(新規なプログラムのアップロード及び転写データのダウンロードに用いる)を有する。
【0206】
装置は、装置の背面の電源差込口及びUSBポート付近に位置する電源スイッチによってオンにされる。6桁の液晶ディスプレイ(LCD)は、プログラム番号及びブロッティング時間を示す。LCD付近に位置する3つのボタンでプログラム又は時間選択を制御する。赤いスタート/ストップボタンにより実行、停止がなされ、更に次の押圧でプログラムがリセットされる。赤と緑のLEDは実行状態又はエラー状態を示す。アラート音を、実行スタート、実行終了及び誤差動を通知するために利用してもよい。
【0207】
転写面にはスタック(陽極電極回路、分離ゲル、陰極電極回路)が転写の際に配置され電気接点を提供する陽極設置領域、並びに転写の間スタックを覆う形で配置される蓋が含まれる。蓋にはスポンジを固定する領域があり、更に電気接点が含まれる。陽極設置領域と蓋の電気接点は金めっきされた銅−ベリリウムである。
【0208】
使い捨て可能な電極回路はプラスチックトレイに設置され、ラミネートシールが施され、乾燥、光及びガスから電極回路を保護している。電極回路には、1つのミニゲル用のミニサイズ、及び2つのミニゲル又は1つのミディゲル又はEPAGEゲルを転写するためのレギュラーサイズの2つのサイズが存在する。
【0209】
陽極電極回路のゲルマトリックスの組成を表1に示す。
【0210】
(表1)陽極ゲルマトリックスの組成
【0211】
DEAEセルロース/トリシンとの混合前の陰極ゲルマトリックスのゲルマトリックス組成を表2に示す。DEAE−セルロース/トリシンを下記組成物と1:1で混合し、陰極ゲルマトリックス基材を調製した。
【0212】
(表2)陰極ゲルマトリックスの組成(イオン交換マトリクスとの混合前)
材料:
iBlot(商標)ユニット
陽極電極回路(底部スタック)
陰極電極回路(上部スタック)
使い捨て可能なスポンジ
分離されたサンプルを有するユーザーの分離ゲル
iBlot(商標)のセットアップ
【0213】
キットの備品のケーブルを使用してiBlot(商標)をAC出力に接続した。分離ゲルの泳動がほぼ完了したとき、iBlot(商標)の装置の裏の電源スイッチを押してオンにした。装置内の送風機が動作を開始し、デジタル表示が起動した。文字がディスプレイに表示され、2、3秒の安定化の後、操作のデフォルトパラメータ(プログラム、時間)が表示された。デフォルトパラメータは円形の選択ボタンを押圧することで変化させることができ、プログラム選択、動作時間(分及び秒)で変えることができる。現在選択された項目が点滅する。UP/DOWNボタン(+/−)を用いて所望のパラメータ値(秒を10秒単位で増加又は減少できる)に調節できる。
【0214】
iBlot(商標)がオンにされる毎に、予め設定されたデフォルトパラメータが表示される:以前の実行時のソフトウェアのバージョン、プログラム及び実行時間。表3は異なる分離ゲル毎に推奨されるプログラム及びそれらの実行パラメータの具体例を示す。
【0215】
(表3)推奨される実行パラメータ
最初の結果に基づいて、最適な結果を得るためにブロッティング条件(時間又はプログラム)を変更できる。
【0216】
ブロッティングの実施前に、気泡除去装置を使用したiBlot(商標)(例えばE−PAGE)を設置するため、蓋を開け、気泡除去装置の金属スペーサを引き上げ、気泡除去用のローラーを取り外した。スペーサ(棒)、気泡除去ローラー及びブロッティング面は清掃され、平滑である必要がある。そうでない場合には部品を湿った布で拭く。ブロッティング膜を有し、プラスチックトレイに設置されている陽極電極回路が梱包されている「転写スタック(底部)」とラベルされた包装を開封した。気泡除去ローラーの左側に置き、トレイのプルタブを気泡除去装置の右に位置させた。表面の左側に存在するストッパーで止まるまで、それを左に移動させた。次に、スペーサ#1(白いスリーブ付き)を濡らし、膜上に置いた。次に、分離ゲルをスペーサ#1の上に置き、底部スタック又は陽極電極回路(ゲルのウェルは上向きが望ましい)の右隅に配置した。気泡除去装置上に分離ゲルを配置する前の特殊な処理は必要でない。スペーサー#2を濡らし、ゲル上に置いた。
【0217】
上部スタック(陰極電極回路)を開き、赤いプラスチックトレイを廃棄し、上方を向く銅電極側と共にスペーサ#2上に配置した。効率的な気泡除去を実施するために全ての層を右に配置する必要がある。気泡除去ローラーを2本の斧溝に挿入し、右向きに、へこみの下にそれを押圧する。ローラーがその最も低い位置まで降ろされる一方、プルタブは保持される。
【0218】
両方のプルタブを使用して、気泡除去装置を通ってブロッティング領域の方へ、1つの滑らかな動作において、それがブロッティング面上の障壁に達するまでスタック及び分離ゲルを共に引いた。層は右に整列配置するのが望ましい。
【0219】
白い側がユーザーに面し、金属接触部が右上に位置するように、使い捨て可能なスポンジを蓋の内面上に設置した。スポンジをその位置に保持する小さい突起が蓋上に存在する。スポンジはブロッティングの間に発生しうる過剰な液体、及びスタック表面への圧力を吸収する機能を有する。蓋を閉じ、掛け金を固定した。回路が閉じられたことを示す赤ランプが点灯した。スタート/ストップボタンを押し、転写を開始させた。次いで制御ランプが赤から緑に変化した。ブロッティング操作終了後、デジタル表示が点滅し、「ビープ音」が繰り返し鳴った。次いでiBlot(商標)の蓋を開け、スポンジと上部スタック(陰極電極回路)を廃棄した。
【0220】
膜をゲルから慎重に剥がし、検出のための通常の操作を行った。膜の乾燥は厳禁である。
【0221】
使用した底部スタック(陽極電極回路)をそのプラスチックトレイと共に廃棄した。スポンジ、濾紙、上部及び底部スタック(電極回路)は再利用しなかった。必要に応じて、ブロッティング面を湿った布で清掃してもよい。この時点で、iBlot(商標)は他の実行の準備ができる(冷却時間は必要ない)。あるいは、iBlot(商標)の電源をオフにする。
【0222】
厚さ1.5mm以下のブロッティング分離ゲル用の、iBlot(商標)の設置:
蓋を開き、両方の金属スペーサを上げた。ブロッティング面は清潔である必要がある。汚れている場合には部品を湿った布で拭く。直接底部スタックをブロッティング面(丸い蓋の下)に配置し、右側のストッパーに整列させた。膜と底部(陽極)ゲルとの間の気泡を注意深く除去する必要がある。底部(陽極)スタックの膜上に分離ゲルを置いた。その上に水で湿潤させた濾紙(濾紙はキットに含まれる)を置いた。キットに含まれる手のひらサイズローラーを用いて膜と分離ゲルとの間にトラップされた気泡を除去した。
【0223】
上部スタック(陰極電極回路)を開き、プラスチックトレイを廃棄し、濾紙の上にスタックを置いた。白い側がユーザーに面し、金属接触部が右上に位置するように、使い捨て可能なスポンジを蓋の内面上に設置した。スポンジをその位置に保持する小さい突起が存在する。スポンジはブロッティングの間に発生しうる過剰な液体、及びスタック表面への圧力を吸収する機能を有する。蓋を閉じ、掛け金を固定した。回路が閉じられたことを示す赤ランプが点灯した。スタート/ストップボタンを押し、転写を開始させた。次いで制御ランプが赤から緑に変化した。ブロッティング操作終了後、デジタル表示が点滅し、「ビープ音」が繰り返し鳴った。次いでiBlot(商標)の蓋を開け、スポンジと上部スタック(陰極電極回路)を廃棄した。膜をゲルから慎重に剥がし、検出のための通常の操作を行った。
【0224】
使用した底部スタック(陽極電極回路)をそのプラスチックトレイと共に廃棄した。スポンジ、濾紙、上部及び底部スタック(電極回路)は再利用しなかった。必要に応じて、ブロッティング面を湿った布で清掃してもよい。この時点で、iBlot(商標)は他の実行(冷却時間は必要ない)の準備ができる。あるいは、iBlot(商標)の電源をオフにする。
【0225】
(表4)iBlot(商標)の基本的な操作条件
【0226】
実施例9
E−PAGE(商標)8% 48ゲル(EP048−08、Invitrogen社、カールズバッド、CA)において、25分間(プログラムEP)、E−Base(商標)(Invitrogen社EBM−03)電源を使用して泳動を行った。5μLのSeeBlue(登録商標)Plus2で前染色した蛋白質スタンダード(LC5700、Invitrogen社、カールズバッド、CA)を全てのウェルにロードした。
【0227】
実施後、カセットを開き、ゲルを取り出した。
【0228】
陽極電極回路は240mMのビストリス、190mMのトリシン、95mMのBES、及び20%のエチレングリコールを含んでなるポリアクリルアミド/アガロース複合材(5%の架橋剤及び0.5%のアガロースを有する10%アクリルアミド)により作製した厚さ3mmのゲルを用い、85×140mmの銅電極(Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ))上に設置して構築した。陽極電極回路(ゲルマトリックス+電極)をプラスチックトレイ上に置き、それをiBlot(商標)ドライ式エレクトロブロッティング装置の基部に設置した。電極及びゲルマトリックスと同じ寸法を有するニトロセルロース膜0.2μ(BA83、S&S社製、ドイツ)を陽極ゲルマトリックス上に置いた。電気泳動に供されたゲルを膜の上に置いた。
【0229】
19mmのゲル厚を有する陰極ゲルマトリックス(組成:トリシンイオンをロードしたDE−52イオン交換マトリクス50%に対し、3%のアガロース、120mMのビストリス及び95mMのトリシンからなるゲル溶液を1:1で混合)に、陽極と同一タイプの電極をその最上部に設置した。陰極電極回路(ゲルマトリックス+電極)を露出した上向きの電極と共に分離ゲルの上に置いた。
【0230】
ドライ式エレクトロブロッター装置の蓋を閉じ、スタックに圧力をかけ、25Vの電圧を8分間印加した。このプロセス終了後、スタックを分解し、膜を取り出した。着色マーカーが膜上で明瞭に観察できた(図11)。
【0231】
実施例10
Nu PAGE(登録商標)4−12%ゲル(Invitrogen社)を用い、製造業者の取扱説明書に従ってMES緩衝液を使用して電気泳動を行った。SeeBlue(登録商標)Plus2着色マーカーを5μLずつ、レーン1、2、3、11及び12において電気泳動させた。Magic Mark(商標)XPウェスタンブロットマーカーを1μLずつ、レーン4、5及び8にロードした。Magic Mark(商標)XPウェスタンブロットマーカーを1μLずつ、レーン6、7、9及び10にロードした。
【0232】
泳動後、カセットを開き、ゲルを取り出した。
【0233】
陽極電極回路をiBlot(商標)エレクトロブロッターの基部に配置した。陽極電極回路には、2%のアガロース、240mMのビストリス、190mMのトリシン、95mMのBES、20%のアルミナ、0.5%のキトサン及び10%のエチレングリコールから調製した厚さ3mmのゲルに接触する85×140mmの銅電極(Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ))を含めた。陽極電極回路をプラスチックトレイに置いた。陽極ゲルマトリックス及び電極と同じ寸法を有するニトロセルロース膜0.2μ(BA83、S&S社、ドイツ)を陽極ゲルマトリックスの上に置いた。電気泳動にかけられたゲルを膜の上に置いた。同じタイプの電極(ブロッティング膜なし)に並設される19mmのゲル厚を有する陰極ゲルマトリックス(組成:トリシンイオンをロードしたDE−52イオン交換マトリクス50%に対し、3%のアガロース、120mMのビストリス及び95mMのトリシンからなるゲル溶液を1:1で混合)を有する陰極電極回路を、露出した上向きの電極と共に分離ゲルの上に置いた。ドライ式エレクトロブロッティング装置の蓋を閉じ、次いでスタックに圧力をかけ、20Vの電圧を6.5分間印加した。このプロセス終了後、Westernbreeze(登録商標)Chromogenic検出キット(Invitrogen社、カールズバッド、CA)を用い、MagicMark(商標)蛋白質スタンダード(レーン4〜10)を検出した。このキットを使用すれば抗体とのインキュベートなしで検出できる。結果を図12に示す。
【0234】
実施例11
E−PAGE(商標)8% 48ゲル(EP048−08、Invitrogen社、カールズバッド、CA)において、25分間(プログラムEP)、E−Base(商標)(Invitrogen社EBM−03)電源を使用して泳動を行った。サンプルを表5に従ってロードした。BSAはウシ血清アルブミンを指し、SB+2はプレステイン蛋白質スタンダードのSeeBlue(登録商標)Plus2を指し、MMXPはMagic Mark(商標)XPウェスタンブロットマーカーを指し、BMはBenchMark(商標)蛋白質ラダー(以上、全てInvitrogen社製、カールズバッド、CA)を指す。
【0235】
(表5)
【0236】
泳動後、カセットを開きゲルを取り出した。
【0237】
陽極電極回路は60mMのビストリス、95mMのトリシン、95mMのBES、20%のエチレングリコール、及び6%酢酸を含んでなるポリアクリルアミド/アガロース複合材(5%の架橋剤及び0.5%のアガロースを有する10%アクリルアミド)により作製した厚さ3mmのゲルを用い、85×140mmの銅電極(Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ))上に設置して構築した。電極回路をプラスチックトレイ上に置き、それをiBlot(商標)ドライ式エレクトロブロッティング装置の基部に設置した。同じ寸法を有するニトロセルロース膜0.2μ(BA83、S&S社製、ドイツ)を陽極ゲルマトリックス上に置いた。電気泳動にかけられたゲルを膜の上に置いた。陰極ゲルは、トリシンイオンをロードしたDE−52イオン交換マトリクス50%に対し、3%のアガロース、120mMのビストリス及び95mMのトリシン及び0.5%のDirect blue 71 stain(Sigma社製)からなるゲル溶液50%から調製し、19mmの厚を有した。陽極と同じタイプの電極を陰極ゲルの上部に設置した。陰極電極回路(ゲルマトリックス+電極)を露出した上向きの電極と共に分離ゲル上に置いた。
【0238】
ドライ式エレクトロブロッター装置の蓋を閉じ、スタックに圧力をかけ、25Vの電圧を8分間印加した。このプロセスの間、BSAバンド及びマーカーが染色された。転写終了後、スタックを分解し、膜を取り出した。染色されたバンドが、10ng(図13)の強度で膜上に明瞭に観察された。
【0239】
実施例12
E−PAGE(商標)8% 48ゲル(EP048−08、Invitrogen社、カールズバッド、CA)において、25分間(プログラムEP)、E−Base(商標)(Invitrogen社EBM−03)電源を使用して泳動を行った。サンプルを実施例11(表5)に従ってロードした。BSAはウシ血清アルブミンを指し、SB+2はプレステイン蛋白質スタンダードのSeeBlue(登録商標)Plus2を指し、MMXPはMagic Mark(商標)XPウェスタンブロットマーカーを指し、BMはBenchMark(商標)蛋白質ラダー(以上、全てInvitrogen社製、カールズバッド、CA)を指す。
【0240】
泳動後、カセットを開きゲルを取り出した。
【0241】
陽極電極回路は60mMのビストリス、95mMのトリシン、95mMのBES、20%のエチレングリコール、及び6%酢酸を含んでなるポリアクリルアミド/アガロース複合材(5%の架橋剤及び0.5%のアガロースを有する10%アクリルアミド)により作製した厚さ3mmのゲルを用い、85×140mmの銅電極(Kiel銅pbn11ファブリック(Shildex社製、ドイツ))上に設置して構築した。電極回路をプラスチックトレイ上に置き、それをiBlot(商標)ドライ式エレクトロブロッティング装置の基部に設置した。同じ寸法を有するニトロセルロース膜0.2μ(BA83、S&S社製、ドイツ)を陽極ゲルマトリックス上に置いた。電気泳動にかけられたゲルを膜の上に置いた。厚さ19mmの陰極ゲル(組成:DE−52イオン交換マトリクス50%に対し、3%のアガロース、120mMのビストリス及び95mMのトリシン及び1%の銅フタロシアンインテトラスルホン酸塩染色(Sigma社製)からなるゲル50%)には、陽極と同一のタイプの電極が、その上部に含まれていた。陰極電極回路(ゲルマトリックス+電極)を露出した上向きの電極と共に分離ゲル上に置いた。
【0242】
ドライ式エレクトロブロッター装置の蓋を閉じ、スタックに圧力をかけ、25Vの電圧を8分間印加した。このプロセスの間、BSAバンド及びマーカーが染色された。転写終了後、スタックを分解し、膜を取り出した。染色されたバンドが、25ng(図14)の強度で膜上に明瞭に観察された。
【0243】
実施例13
2つの同一のNovex(登録商標)MIDIゲル(Invitrogen社)を用い、SeeBlue蛋白質スタンダード、M及びヒト結腸直腸癌細胞の溶菌液(SW480)を、製造の取り扱い説明書に従って電気泳動した。表6に従ってサンプルをロードした。
【0244】
(表6)
【0245】
1枚のゲルを実施例8のプロトコルに従いiBlotを使用して転写し、他のゲルをセミドライ式エレクトロブロッティングで転写した。抗チューブリン(1:10,000)及び抗アクチン(1:5000)抗体を膜上の蛋白質の検出に用い、WesternBreeze化学発光検出キット(Invitrogen社)を使用して化学発光検出を行った。図15Aでは、iBlotエレクトロブロッティングが従来のセミドライ式ブロッティング(図15B)よりも強力なシグナルを与えることを示す。iBlotでエレクトロブロッティングした膜では、従来のセミドライ式転写より4分の1未満の蛋白質を検出できる。(チューブリン及びアクチン蛋白質の検出において、従来の検出限界の溶菌液1.0μL(図15Bのレーン3)に対して、0.25μLの溶菌液(図15Aのレーン5)で検出できる。
【0246】
実施例14
2つの同一のTris−酢酸3〜8%ゲル(Invitrogen社)を用い、表7に記載のサンプルを、製造の取扱説明書に従って電気泳動した。
【0247】
(表7)
【0248】
1枚のゲルを実施例8のプロトコルに従いiBlotを使用して転写し、他のゲルをセミドライ式エレクトロブロッティングで転写した。抗チューブリン(1:10,000)及び抗アクチン(1:5000)抗体を膜上の蛋白質の検出に用い、WesternBreeze化学染色検出キット(Invitrogen社)を使用して化学染色検出を行った。図16Aでは、iBlotが従来のセミドライ式ブロッティング(図16B)よりも強力なシグナルを与えることを示す。チューブリン及びアクチン蛋白質はiBlot(図16A、レーン3)を使用したエレクトロブロッティングで0.5μLの溶菌液で検出できるが、湿式のブロッティング膜(図16B、レーン6)では、同程度のレベルの検出結果を得るには同じ溶菌液が4μL必要であった。
【0249】
本明細書において開示される、電極回路を構築する際に用いる材質及び各種装置を適宜変更させることも可能で、過度の試験を要せずに当業者によって容易に実施できる。本明細書において最適に例示された本発明は、本明細書において特に開示されない1つ以上のいかなる部品が存在しない場合でも、実施可能である。すなわち、使用される用語及び表現は説明のための用語であり限定的なものではなく、開示され記載された特徴と均等な事項、又はその一部は排他的なものではなく、更に様々な変更が本発明の技術的範囲内で可能であることが理解される。
【0250】
本発明を特定の実施態様を参照しながら実質的に詳細に記載したが、当業者であれば本明細書で特に開示した実施態様を適宜変化させ、またこれらの変形及び改良も本発明の技術的範囲及び技術的思想の範疇に含まれることを認識するであろう。本明細書に係る実施例は、特定の実施態様を代表し、典型的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の実施態様は以下の請求項に記載される。
【0251】
見出しは読者の便宜のためのものであり、いかなる形であれ本発明を限定することを意図するものではない。
【0252】
本明細書に援用される各特許、特許出願、刊行物及び文書の全内容は、全ての表、図面及び図を含め、参照により本明細書に援用される。全ての刊行物及び特許は、本明細書において各刊行物又は特許を具体的かつ個別に援用する場合と同程度に、本明細書に参照により援用される。上記の特許、特許出願、刊行物及び文書の引用は、前述のいずれも関連する先行技術であることを承認するものでもなく、またその内容又はこれらの刊行物又は書類の日付に関するいかなる承認を行うものでもない。
【0253】
本発明は本明細書において、例示のみを目的として添付の図面を参照しながら記載する。なお、同様の構成要素は同様の符号により示される。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】本発明の実施態様に係る、使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング装置の電極回路の模式的等角図。
【図2】図1で例示する電極回路の線II−IIに沿った横断面図。
【図3】メッシュタイプ又は織物タイプの電極を有する、使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング装置の電極回路を例示する図式的横断面図。
【図4】メッシュタイプの電極を有する使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング電極回路及びイオン交換マトリクスを含むゲル基材を例示する図式的横断面図。
【図5】本発明の実施態様に係る、ブロッティング膜を含む使い捨て可能なドライ式エレクトロブロッティング装置の電極回路を例示する図式的横断面図。
【図6】本発明のドライ式エレクトロブロッティング法の実施態様に係る、陽極側のドライ式エレクトロブロッティング電極回路と、陰極側の乾燥したエレクトロブロッティング装置電極回路との間に配置される分離ゲルを例示する図式的横断面図。
【図7】本発明の実施態様に係る、気泡除去装置の一部の図式的横断面図。気泡のトラッピングを減少させることができる一方、本発明のドライ式エレクトロブロッティング装置の電極回路をエレクトロブロットされるゲルに付着させる機能を有する。
【図8】本発明の装置を示す図。
【図9】本発明の装置を示す図。
【図10】本発明の装置を示す図。
【図11】本発明の実施態様に従い、本発明のドライ式エレクトロブロッティング装置の電極回路を使用して実施した蛋白質分離ゲルからのドライ式エレクトロブロッティング転写の完了後の、ブロッティング膜の写真。
【図12】本発明のドライ式エレクトロブロッティング装置の電極回路を使用して実施した分離ゲルからの蛋白質のドライ式エレクトロブロッティング転写の完了後の、ブロッティング膜の写真。
【図13】本発明のドライ式エレクトロブロッティング方法の実施による、分離ゲルからの蛋白質のドライ式エレクトロブロッティング転写の完了後の、ブロッティング膜の写真。
【図14】本発明のドライ式エレクトロブロッティング方法の実施による、分離ゲルからの蛋白質のドライ式エレクトロブロッティング転写の完了後の、ブロッティング膜の写真。
【図15】本発明の方法及び化学発光試薬を使用する免疫検出を用いるドライ式エレクトロブロッティングの実施による、分離ゲルからの蛋白質のドライ式エレクトロブロッティング転写の完了後のブロッティング膜の写真。
【図16】本発明の方法及び色素試薬を使用する免疫検出を用いるドライ式エレクトロブロッティングの実施による、分離ゲルからの蛋白質のドライ式エレクトロブロッティング転写の完了後のブロッティング膜の写真。
【図17】ドライ式エレクトロブロッティング用の保持トレイ内に設置された適切な電極を有し、ブロッティング電極回路が保持トレイ内に配置される、ブロッティング電極回路を例示する横断面図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源、陽極、この陽極に並設される陽極ゲルマトリックス基材、陰極及びこの陰極に並設される陰極ゲルマトリックス基材を含んでなるドライ式エレクトロブロッティングシステムであって、前記陽極ゲルマトリックス及び前記陰極ゲルマトリックスの各々が、電気泳動的転写に用いるイオン源を含む、ドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項2】
前記電気泳動ゲル及び前記陰極ゲルマトリックス基材の間に位置する1つ以上の濾紙を更に含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項3】
前記陽極が前記電源と一体化されている、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項4】
前記陽極が使い捨て可能である、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項5】
前記陽極がステンレス鋼、炭素、アルミニウム、銅、銀又は鉛を含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項6】
前記陽極が電気化学的にイオン化可能な金属を含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項7】
前記陽極が銅、銀又は鉛を含んでなる、請求項6記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項8】
前記陰極が前記電源と一体化されている、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項9】
前記陰極が使い捨て可能である、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項10】
前記陰極がステンレス鋼、炭素、アルミニウム、パラジウム、銅又は白金を含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項11】
前記陽極がステンレス鋼、炭素、銅、アルミニウム、銀、白金又は鉛を含んでなる、請求項10記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項12】
前記陽極ゲルマトリックス基材がアガロースを含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項13】
前記陽極ゲルマトリックス基材がアクリルアミドを含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項14】
前記陽極ゲルマトリックス基材がアガロースを更に含んでなる、請求項13記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項15】
前記陽極ゲルマトリックス基材が1つ以上の緩衝液を含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項16】
前記陽極ゲルマトリックス基材が有機緩衝液を含んでなる、請求項15記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項17】
前記陽極ゲルマトリックス基材が、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、(N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、グリシン又はビス[2−ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)を含んでなる、請求項16記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項18】
前記陽極ゲルマトリックス基材がpKa6〜8の緩衝液を含んでなる、請求項15記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項19】
前記陽極ゲルマトリックス基材がpKa6.2〜7.2の緩衝液を含んでなる、請求項18記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項20】
前記陽極ゲルマトリックス基材が、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1、1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、ビス−[2ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)又はN,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]グリシンを含んでなる、請求項14記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項21】
前記陰極ゲルマトリックス基材がビストリスを含んでなる、請求項20記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項22】
前記ビストリスが10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項21記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項23】
前記ビストリスが20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項22記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項24】
前記ビストリスが50mM〜300mMの濃度で存在する、請求項23記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項25】
前記陰極ゲルマトリックス基材がトリシンを更に含んでなる、請求項21記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項26】
前記トリシンが10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項25記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項27】
前記トリシンが20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項26記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項28】
前記トリシンが50mM〜300mMの濃度で存在する、請求項27記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項29】
前記陽極ゲルマトリックスが、前記陰極ゲルマトリックスに存在しない1つ以上のアニオン性緩衝化合物を更に含んでなる、請求項15記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項30】
前記アニオン性緩衝化合物がEDTA、コハク酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、カコジラート、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセタミド)イミノ二酢酸(ADA)、N−(2−アセトアミド)−2‐アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)又はN−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)である、請求項21記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項31】
前記アニオン性緩衝化合物が両性イオン緩衝液である、請求項29記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項32】
前記アニオン性化合物が2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2‐アミノエタンスルホン酸(ACES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2‐アミノエタンスルホン酸(BES)又は3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)である、請求項31記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項33】
前記アニオン性化合物がBESである、請求項32記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項34】
前記BESが10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項32記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項35】
前記BESが20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項34記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項36】
前記BESが50mM〜300mMの濃度で存在する、請求項35記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項37】
前記陽極ゲルマトリックス基材がエチレングリコールを含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項38】
前記陰極ゲルマトリックス基材がアクリルアミドを含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項39】
前記陰極ゲルマトリックス基材がアガロースを含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項40】
前記陰極ゲルマトリックス基材がイオン交換マトリクスを更に含んでなる、請求項39記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項41】
前記イオン交換マトリクスがDEAEイオン交換マトリクスである、請求項40記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項42】
前記イオン交換マトリクスがアニオンをロードされている、請求項40記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項43】
前記イオン交換マトリクスがトリシンアニオンをロードされている、請求項42記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項44】
前記陰極ゲルマトリックス基材が1つ以上の緩衝液を含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項45】
前記陰極ゲルマトリックス基材が有機緩衝液を含んでなる、請求項44記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項46】
前記陰極ゲルマトリックス基材が、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、(N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、グリシン又はビス[2−ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)を含んでなる、請求項45記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項47】
前記陰極ゲルマトリックス基材がpKa6〜8の緩衝液を含んでなる、請求項45記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項48】
前記陰極ゲルマトリックス基材がpKa7〜8の緩衝液を含んでなる、請求項47記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項49】
前記陰極ゲルマトリックス基材が、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1、1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、ビス−[2ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)又はN,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]グリシンを含んでなる、請求項44記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項50】
前記陰極ゲルマトリックス基材がビストリスを含んでなる、請求項49記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項51】
前記ビストリスが10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項50記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項52】
前記ビストリスが20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項51記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項53】
前記ビストリスが50mM〜300mMの濃度で存在する、請求項47記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項54】
前記陰極ゲルマトリックス基材がトリシンを更に含んでなる、請求項45記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項55】
前記トリシンが10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項54記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項56】
前記トリシンが20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項55記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項57】
前記トリシンが50mM〜300mMの濃度で存在する、請求項56記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項58】
前記陰極ゲルマトリックスがエチレングリコールを更に含んでなる、請求項44記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項59】
ブロッティング膜を更に含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項60】
前記ブロッティング膜がニトロセルロース、セルロース、ナイロン、PDVF又はその誘導体を含んでなる、請求項59記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項61】
1つ以上の生体分子を含むゲルを更に含んでなる、請求項59記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項62】
1つ以上の生体分子を含む前記ゲルが電気泳動ゲルである、請求項60記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項63】
前記ゲルが1つ以上の蛋白質を含んでなる、請求項61記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項64】
前記ゲルが1つ以上の核酸分子を含んでなる、請求項61記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項65】
ドライ式エレクトロブロッティングを実施するための電極回路であって、イオン供給源を含むゲルマトリックス基材及びゲルの基材に並設される電極を含んでなる電極回路。
【請求項66】
前記電極が前記ゲルマトリックス基材中に少なくとも部分的に埋め込まれる、請求項65記載の電極回路。
【請求項67】
前記電極が非金属導電性材料、非金属導電性材料を含むメッシュ、金属箔、金属メッシュ、金属で被覆された非導電性ポリマー層、金属で被覆された非導電性ポリマーメッシュ、導電性非金属で被覆された非導電性ポリマー層、導電性非金属で被覆された非導電性ポリマーメッシュ又はそれらの組み合わせを含んでなる層である、請求項65記載の電極回路。
【請求項68】
前記電極が電気化学的にイオン化可能な金属を含んでなる、請求項65記載の電極回路。
【請求項69】
前記電極が1つ以上の鉛、銅又は銀を含んでなる、請求項68記載の電極回路。
【請求項70】
前記電極が銅を含んでなる、請求項69記載の電極回路。
【請求項71】
前記電極が酸素ガスを吸収する金属を含んでなる、請求項65記載の電極回路。
【請求項72】
前記電極がアルミニウムを含んでなる、請求項71記載の電極回路。
【請求項73】
前記電極が水素ガスを吸収する金属を含んでなる、請求項65記載の電極回路。
【請求項74】
前記電極がパラジウムを含んでなる、請求項73記載の電極回路。
【請求項75】
前記電極回路が陽極電極回路である、請求項71記載の電極回路。
【請求項76】
前記電極回路が陰極電極回路である、請求項73記載の電極回路。
【請求項77】
前記イオン供給源が、前記ゲルマトリックス基材に含まれる緩衝液、前記ゲルマトリックス基材に含まれるイオン交換マトリクス又はそれらの組み合わせを含んでなる、請求項65記載の電極回路。
【請求項78】
前記イオン供給源が前記ゲルマトリックス基材に含まれる緩衝液を含んでなる、請求項77記載の電極回路。
【請求項79】
前記緩衝液が、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、(N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、グリシン又はビス[2−ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)の1つ以上を含んでなる、請求項77記載の電極回路。
【請求項80】
前記イオン供給源が、トリスグリシン緩衝液、グリシン緩衝液、トリス酢酸緩衝液、トリスホウ酸緩衝液、ビストリス緩衝液、ビストリストリシン緩衝液、ビストリスビシン緩衝液、MES緩衝液、MOPS緩衝液又はMOPSO緩衝液を含んでなる、請求項79記載の電極回路。
【請求項81】
前記イオン供給源がビストリストリシン緩衝液を含んでなる、請求項80記載の電極回路。
【請求項82】
前記ビストリス緩衝液が10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項81記載の電極回路。
【請求項83】
前記ビストリス緩衝液が20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項82記載の電極回路。
【請求項84】
前記ビストリス緩衝液が50mM〜250mMの濃度で存在する、請求項83記載の電極回路。
【請求項85】
前記トリシンが10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項81記載の電極回路。
【請求項86】
前記トリシンが20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項85記載の電極回路。
【請求項87】
前記トリシンが50mM〜250mMの濃度で存在する、請求項86記載の電極回路。
【請求項88】
N,N−ビス[ヒドロキシエチル]2‐アミノエタンスルホン酸(BES)を更に含んでなる、請求項81記載の電極回路。
【請求項89】
エチレングリコールを更に含んでなる、請求項80記載の電極回路。
【請求項90】
前記エチレングリコールが1%〜50%の濃度で存在する、請求項89記載の電極回路。
【請求項91】
前記エチレングリコールが5%〜35%の濃度で存在する、請求項90記載の電極回路。
【請求項92】
前記エチレングリコールが20%の濃度で存在する、請求項91記載の電極回路。
【請求項93】
前記イオン供給源が、前記ゲルマトリックス基材に含まれるイオン交換マトリクスを更に含んでなる、請求項78記載の電極回路。
【請求項94】
前記イオン交換マトリクスがDEAEセルロースである、請求項93記載の電極回路。
【請求項95】
前記イオン交換マトリクスが1つ以上の緩衝液を含むDEAEセルロースである、請求項94記載の電極回路。
【請求項96】
前記イオン交換マトリクスがトリシンを含むDEAEセルロースである、請求項95記載の電極回路。
【請求項97】
前記ゲルマトリックス基材が、1つ以上の抗腐食化合物、1つ以上の抗黴剤、1つ以上の可溶化剤、1つ以上の色素、1つ以上の還元剤、1つ以上のキレート剤、1つ以上のブロッキング剤又は1つ以上のプロテアーゼを更に含んでなる、請求項65記載の電極回路。
【請求項98】
前記ゲルマトリックス基材が1つ以上の可溶化剤を更に含んでなる、請求項97記載の電極回路。
【請求項99】
前記ゲルマトリックス基材が界面活性剤を更に含んでなる、請求項98記載の電極回路。
【請求項100】
前記ゲルマトリックス基材がアニオン性界面活性剤を更に含んでなる、請求項98記載の電極回路。
【請求項101】
前記ゲルマトリックス基材がSDSを更に含んでなる、請求項100記載の電極回路。
【請求項102】
前記ゲルマトリックス基材が1つ以上の色素を更に含んでなる、請求項97記載の電極回路。
【請求項103】
前記ゲルマトリックス基材が蛋白質染色色素を更に含んでなる、請求項102記載の電極回路。
【請求項104】
前記ゲルマトリックス基材が、クーマシー染色、SyproRuby、Direct Blue71又は銅フタロシアンテトラスルホン酸染色を更に含んでなる、請求項103記載の電極回路。
【請求項105】
前記ゲルマトリックス基材がポリアクリルアミド系ゲル、アガロース系ゲル、又はアクリルアミド及びアガロースを含んでなるゲルである、請求項65記載の電極回路。
【請求項106】
前記ゲルマトリックス基材がアガロース系ゲルである、請求項105記載の電極回路。
【請求項107】
前記ゲルマトリックス基材が0.1%〜5%のアガロースである、請求項106記載の電極回路。
【請求項108】
前記ゲルマトリックス基材が0.5%〜4%のアガロースである、請求項107記載の電極回路。
【請求項109】
前記ゲルマトリックス基材が1%〜3%のアガロースである、請求項108記載の電極回路。
【請求項110】
前記ゲルマトリックス基材がアクリルアミド系ゲルである、請求項105記載の電極回路。
【請求項111】
前記ゲルマトリックス基材が2.5%〜30%のアクリルアミドである、請求項110記載の電極回路。
【請求項112】
前記ゲルマトリックス基材が5%〜20%のアクリルアミドである、請求項111記載の電極回路。
【請求項113】
前記ゲルマトリックス基材が10%のアクリルアミドである、請求項112記載の電極回路。
【請求項114】
前記アクリルアミドが40:1〜5:1までの比率でアクリルアミドとビスアクリルアミドを含んでなる、請求項110記載の電極回路。
【請求項115】
前記アクリルアミドが30:1〜10:1までの比率でアクリルアミドとビスアクリルアミドを含んでなる、請求項114記載の電極回路。
【請求項116】
前記アクリルアミドが19:1の比率でアクリルアミドとビスアクリルアミドを含んでなる、請求項115記載の電極回路。
【請求項117】
アガロースを更に含んでなる、請求項110記載の電極回路。
【請求項118】
前記アガロースが0.1%〜2%の濃度で存在する、請求項117記載の電極回路。
【請求項119】
前記アガロースが0.2%〜1%の濃度で存在する、請求項118記載の電極回路。
【請求項120】
前記アガロースが0.5%の濃度で存在する、請求項119記載の電極回路。
【請求項121】
1つ以上のブロッティング膜を更に含んでなり、前記ゲルマトリックス基材が前記電極に並設される第1面、及び1つ以上のブロッティング膜に並設される第2面を含んでなる、請求項65記載の電極回路。
【請求項122】
前記1つ以上のブロッティング膜がナイロン系膜、ニトロセルロース系膜、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)系膜又は活性紙ブロッティング膜である、請求項121記載の電極回路。
【請求項123】
イオン供給源を含むゲルマトリックス基材及び前記ゲルマトリックス基材に並設される電極を含んでなる陰極電極回路。
【請求項124】
前記イオン供給源が緩衝液を含んでなる、請求項123記載の陰極電極回路。
【請求項125】
前記緩衝液がビストリストリシン緩衝液である、請求項124記載の陰極電極回路。
【請求項126】
前記イオン供給源がイオン交換マトリクスを更に含んでなる、請求項124記載の陰極電極回路。
【請求項127】
前記ゲルマトリックス基材がアガロースを含んでなる、請求項123記載の陰極電極回路。
【請求項128】
前記電極が銅を含んでなる、請求項123記載の陰極電極回路。
【請求項129】
前記電極が前記ゲルマトリックス基材に少なくとも部分的に埋め込まれる、請求項123記載の陰極電極回路。
【請求項130】
密封容器に設けられる、請求項123記載の陰極電極回路。
【請求項131】
イオン供給源を含むゲルマトリックス基材、及び前記ゲルマトリックス基材の第1面に並設される電極を含んでなる、陽極電極回路。
【請求項132】
前記ゲルマトリックス基材がアクリルアミドを含んでなる、請求項131記載の陽極電極回路。
【請求項133】
前記ゲルマトリックス基材が、アガロースを更に含んでなる、請求項132記載の陽極電極回路。
【請求項134】
前記イオン供給源が1つ以上の緩衝液を含んでなる、請求項133記載の陽極電極回路。
【請求項135】
前記緩衝液がビストリストリシンである、請求項134記載の陽極電極回路。
【請求項136】
BESを更に含んでなる、請求項135記載の陽極電極回路。
【請求項137】
前記電極が銅を含んでなる、請求項131記載の陽極電極回路。
【請求項138】
前記ゲルマトリックス基材の第2面に並設されるブロッティング膜を更に含んでなる、請求項131記載の陽極電極回路。
【請求項139】
前記ブロッティング膜がニトロセルロース、ナイロン又はPVDFを含んでなる、請求項138記載の陽極電極回路。
【請求項140】
前記電極、前記ゲルマトリックス基材及び前記ブロッティング膜を保持するトレイを更に含んでなる、請求項138記載の陽極電極回路。
【請求項141】
前記トレイがプラスチックを含んでなる、請求項140記載の陽極電極回路。
【請求項142】
ドライ式エレクトロブロッティングの実施方法であって、1つ以上の生体分子を含む分析ゲルと1つ以上のブロッティング膜を含む転写スタックを陽極電極回路と陰極電極回路との間に配置することと、陽極電極回路の陽極と陰極電極回路の陰極との間で電流を流して分析ゲルからブロッティング膜へ1つ以上の生体分子を転写することとを含んでなる方法。
【請求項143】
前記陽極が銅を含んでなり、前記電流を流す工程で用いる電流密度が、1つ以上の生体分子を含む前記ゲルの前記第1面1cm2当たり15mA以上である、請求項142記載の方法。
【請求項144】
1つ以上の生体分子を含む前記分析ゲルが電気泳動ゲルである、請求項142記載の方法。
【請求項145】
陽極ゲルマトリックスが、前記陰極ゲルマトリックス中に存在しないか又は顕著に少ない量で存在する1つ以上のアニオン性緩衝化合物を含んでなる、請求項142記載の方法。
【請求項146】
前記アニオン性緩衝化合物が、EDTA、コハク酸、クエン酸塩、マレイン酸、カコジラート、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、N−(2−アセトアミド)−2‐アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2‐アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)又はN−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)である、請求項145記載の方法。
【請求項147】
前記アニオン性緩衝化合物が、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2‐アミノエタンスルホン酸(ACES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2‐アミノエタンスルホン酸(BES)又は3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)である、請求項146記載の方法。
【請求項148】
前記方法が前記陽極電極回路、前記陰極電極回路又は前記転写スタックへのいかなる緩衝液の添加も含まない、請求項142記載の方法。
【請求項149】
陽極電極及び陰極電極間で電流を印加する前に、前記分離ゲル、前記陽極電極回路及び前記陰極電極回路の間にゲルセパレータ部材を有する消泡装置を通すことを更に含んでなり、前記分離ゲル、前記ブロッティング膜及び前記陰極ゲル基材との間への気泡のトラッピングが減少又は回避される、請求項142記載の方法。
【請求項150】
前記ブロッティング膜上へエレクトロブロッティングされる1つ以上の生体分子の検出を更に含んでなる、請求項142記載の方法。
【請求項151】
前記検出が核酸染色、核酸ハイブリダイゼーション、蛋白質染色又は免疫検出によるものである、請求項150記載の方法。
【請求項152】
前記検出が免疫検出によるものである、請求項151記載の方法。
【請求項153】
前記検出が化学発光検出、色素検出、放射性同位元素検出又は蛍光検出によるものである、請求項152記載の方法。
【請求項154】
ドライ式エレクトロブロッティング用のキットであって、イオン供給源を含むゲルマトリックス基材、及び前記ゲルマトリックス基材の第1面に並設される導電性電極を含む1つ以上の使い捨て可能な電極回路、並びに1つ以上のブロッティング膜を含んでなるキット。
【請求項155】
前記1つ以上の使い捨て可能な電極回路が、1つ以上の陽極電極回路、1つ以上の陰極電極回路、又は1つ以上の陽極電極回路と1つ以上の陰極電極回路の組み合わせである、請求項154記載のキット。
【請求項156】
前記1つ以上の陽極電極回路のイオン供給源が、緩衝液、イオン交換マトリクス、前記導電性電極又はそれらの組み合わせである、請求項154記載のキット。
【請求項157】
前記1つ以上の陰極電極回路のイオン供給源が、緩衝液、イオン交換マトリクス又はそれらの組み合わせである、請求項154記載のキット。
【請求項158】
電気泳動用のイオン供給源を含む陽極ゲルマトリックス基材、及び前記陽極ゲルマトリックス基材の第1面に並設される電極を含む1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路と、イオン供給源を含む陰極ゲルマトリックス基材、及び陰極ゲルマトリックス基材に並設される導電性電極を含む1つ以上の陰極電極回路とを含んでなる、ドライ式エレクトロブロッティング用キットであって、前記陽極ゲルマトリックス基材が、陰極ゲルマトリックス基材に含まれないか又は顕著に少ない量で含まれる1つ以上のアニオン性化合物を含むキット。
【請求項159】
前記陽極電極が銅を含んでなる、請求項158記載のキット。
【請求項160】
前記陰極電極が銅を含んでなる、請求項159記載のキット。
【請求項161】
前記1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路がプラスチックトレイに設けられる、請求項158記載のキット。
【請求項162】
1つ以上のブロッティング膜を更に含んでなる、請求項158記載のキット。
【請求項163】
1つ以上の使い捨て可能なスポンジを更に含んでなる、請求項158記載のキット。
【請求項164】
1つ以上の濾紙を更に含んでなる、請求項158記載のキット。
【請求項165】
電気泳動用のイオン供給源を含む陽極ゲルマトリックス基材、陽極ゲルマトリックス基材の第1面に並設される電極及び陽極ゲルマトリックス基材の第1面に並設されるブロッティング膜を含む1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路と、イオン供給源を含む陰極ゲルマトリックス基材、及び陰極ゲルマトリックス基材に並設される導電性電極を含む1つ以上の陰極電極回路とを含んでなる、ドライ式エレクトロブロッティング用のキット。
【請求項166】
前記陽極ゲルマトリックス基材が、前記陰極ゲルマトリックス基材に含まれないか又は顕著に少ない量で含まれる1つ以上のアニオン性化合物を含んでなる、請求項165記載のキット。
【請求項167】
前記陽極電極が銅を含んでなる、請求項165記載のキット。
【請求項168】
前記陰極電極が銅を含んでなる、請求項167記載のキット。
【請求項169】
前記1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路がプラスチックトレイに設けられる、請求項165記載のキット。
【請求項170】
1つ以上の使い捨て可能なスポンジを更に含んでなる、請求項165記載のキット。
【請求項171】
1つ以上の濾紙を更に含んでなる、請求項165記載のキット。
【請求項172】
前記1つ以上の陽極電極回路の各々、及び前記1以上陰極電極回路の各々が、密封容器中に封入される、請求項165記載のキット。
【請求項173】
電気泳動用のイオン供給源を含むゲルマトリックス基材及びゲルマトリックス基材の第1面に並設される電極を含んでなる、使い捨て可能な電極回路。
【請求項174】
電気泳動用のイオン供給源を含むゲルマトリックス基材、ゲルマトリックス基材の第1面に並設される電極及びゲルマトリックス基材の第2面に並設されるブロッティング膜を含んでなる、使い捨て可能な電極回路。
【請求項175】
電気泳動用のイオン供給源を含む陽極ゲルマトリックス基材及び前記陽極ゲルマトリックス基材の第1面に並設される電極を含む1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路と、イオン供給源を含む陰極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材に並設される導電性電極を含む1つ以上の陰極電極回路とを含んでなるドライ式エレクトロブロッティング用のキットであって、前記陽極ゲルマトリックス基材の組成と前記陰極ゲルマトリックス基材の組成が異なるキット。
【請求項1】
電源、陽極、この陽極に並設される陽極ゲルマトリックス基材、陰極及びこの陰極に並設される陰極ゲルマトリックス基材を含んでなるドライ式エレクトロブロッティングシステムであって、前記陽極ゲルマトリックス及び前記陰極ゲルマトリックスの各々が、電気泳動的転写に用いるイオン源を含む、ドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項2】
前記電気泳動ゲル及び前記陰極ゲルマトリックス基材の間に位置する1つ以上の濾紙を更に含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項3】
前記陽極が前記電源と一体化されている、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項4】
前記陽極が使い捨て可能である、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項5】
前記陽極がステンレス鋼、炭素、アルミニウム、銅、銀又は鉛を含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項6】
前記陽極が電気化学的にイオン化可能な金属を含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項7】
前記陽極が銅、銀又は鉛を含んでなる、請求項6記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項8】
前記陰極が前記電源と一体化されている、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項9】
前記陰極が使い捨て可能である、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項10】
前記陰極がステンレス鋼、炭素、アルミニウム、パラジウム、銅又は白金を含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項11】
前記陽極がステンレス鋼、炭素、銅、アルミニウム、銀、白金又は鉛を含んでなる、請求項10記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項12】
前記陽極ゲルマトリックス基材がアガロースを含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項13】
前記陽極ゲルマトリックス基材がアクリルアミドを含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項14】
前記陽極ゲルマトリックス基材がアガロースを更に含んでなる、請求項13記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項15】
前記陽極ゲルマトリックス基材が1つ以上の緩衝液を含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項16】
前記陽極ゲルマトリックス基材が有機緩衝液を含んでなる、請求項15記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項17】
前記陽極ゲルマトリックス基材が、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、(N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、グリシン又はビス[2−ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)を含んでなる、請求項16記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項18】
前記陽極ゲルマトリックス基材がpKa6〜8の緩衝液を含んでなる、請求項15記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項19】
前記陽極ゲルマトリックス基材がpKa6.2〜7.2の緩衝液を含んでなる、請求項18記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項20】
前記陽極ゲルマトリックス基材が、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1、1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、ビス−[2ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)又はN,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]グリシンを含んでなる、請求項14記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項21】
前記陰極ゲルマトリックス基材がビストリスを含んでなる、請求項20記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項22】
前記ビストリスが10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項21記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項23】
前記ビストリスが20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項22記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項24】
前記ビストリスが50mM〜300mMの濃度で存在する、請求項23記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項25】
前記陰極ゲルマトリックス基材がトリシンを更に含んでなる、請求項21記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項26】
前記トリシンが10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項25記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項27】
前記トリシンが20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項26記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項28】
前記トリシンが50mM〜300mMの濃度で存在する、請求項27記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項29】
前記陽極ゲルマトリックスが、前記陰極ゲルマトリックスに存在しない1つ以上のアニオン性緩衝化合物を更に含んでなる、請求項15記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項30】
前記アニオン性緩衝化合物がEDTA、コハク酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、カコジラート、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセタミド)イミノ二酢酸(ADA)、N−(2−アセトアミド)−2‐アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)又はN−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)である、請求項21記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項31】
前記アニオン性緩衝化合物が両性イオン緩衝液である、請求項29記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項32】
前記アニオン性化合物が2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2‐アミノエタンスルホン酸(ACES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2‐アミノエタンスルホン酸(BES)又は3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)である、請求項31記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項33】
前記アニオン性化合物がBESである、請求項32記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項34】
前記BESが10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項32記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項35】
前記BESが20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項34記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項36】
前記BESが50mM〜300mMの濃度で存在する、請求項35記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項37】
前記陽極ゲルマトリックス基材がエチレングリコールを含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項38】
前記陰極ゲルマトリックス基材がアクリルアミドを含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項39】
前記陰極ゲルマトリックス基材がアガロースを含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項40】
前記陰極ゲルマトリックス基材がイオン交換マトリクスを更に含んでなる、請求項39記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項41】
前記イオン交換マトリクスがDEAEイオン交換マトリクスである、請求項40記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項42】
前記イオン交換マトリクスがアニオンをロードされている、請求項40記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項43】
前記イオン交換マトリクスがトリシンアニオンをロードされている、請求項42記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項44】
前記陰極ゲルマトリックス基材が1つ以上の緩衝液を含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項45】
前記陰極ゲルマトリックス基材が有機緩衝液を含んでなる、請求項44記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項46】
前記陰極ゲルマトリックス基材が、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、(N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、グリシン又はビス[2−ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)を含んでなる、請求項45記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項47】
前記陰極ゲルマトリックス基材がpKa6〜8の緩衝液を含んでなる、請求項45記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項48】
前記陰極ゲルマトリックス基材がpKa7〜8の緩衝液を含んでなる、請求項47記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項49】
前記陰極ゲルマトリックス基材が、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1、1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、ビス−[2ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)又はN,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]グリシンを含んでなる、請求項44記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項50】
前記陰極ゲルマトリックス基材がビストリスを含んでなる、請求項49記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項51】
前記ビストリスが10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項50記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項52】
前記ビストリスが20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項51記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項53】
前記ビストリスが50mM〜300mMの濃度で存在する、請求項47記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項54】
前記陰極ゲルマトリックス基材がトリシンを更に含んでなる、請求項45記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項55】
前記トリシンが10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項54記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項56】
前記トリシンが20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項55記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項57】
前記トリシンが50mM〜300mMの濃度で存在する、請求項56記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項58】
前記陰極ゲルマトリックスがエチレングリコールを更に含んでなる、請求項44記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項59】
ブロッティング膜を更に含んでなる、請求項1記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項60】
前記ブロッティング膜がニトロセルロース、セルロース、ナイロン、PDVF又はその誘導体を含んでなる、請求項59記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項61】
1つ以上の生体分子を含むゲルを更に含んでなる、請求項59記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項62】
1つ以上の生体分子を含む前記ゲルが電気泳動ゲルである、請求項60記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項63】
前記ゲルが1つ以上の蛋白質を含んでなる、請求項61記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項64】
前記ゲルが1つ以上の核酸分子を含んでなる、請求項61記載のドライ式エレクトロブロッティングシステム。
【請求項65】
ドライ式エレクトロブロッティングを実施するための電極回路であって、イオン供給源を含むゲルマトリックス基材及びゲルの基材に並設される電極を含んでなる電極回路。
【請求項66】
前記電極が前記ゲルマトリックス基材中に少なくとも部分的に埋め込まれる、請求項65記載の電極回路。
【請求項67】
前記電極が非金属導電性材料、非金属導電性材料を含むメッシュ、金属箔、金属メッシュ、金属で被覆された非導電性ポリマー層、金属で被覆された非導電性ポリマーメッシュ、導電性非金属で被覆された非導電性ポリマー層、導電性非金属で被覆された非導電性ポリマーメッシュ又はそれらの組み合わせを含んでなる層である、請求項65記載の電極回路。
【請求項68】
前記電極が電気化学的にイオン化可能な金属を含んでなる、請求項65記載の電極回路。
【請求項69】
前記電極が1つ以上の鉛、銅又は銀を含んでなる、請求項68記載の電極回路。
【請求項70】
前記電極が銅を含んでなる、請求項69記載の電極回路。
【請求項71】
前記電極が酸素ガスを吸収する金属を含んでなる、請求項65記載の電極回路。
【請求項72】
前記電極がアルミニウムを含んでなる、請求項71記載の電極回路。
【請求項73】
前記電極が水素ガスを吸収する金属を含んでなる、請求項65記載の電極回路。
【請求項74】
前記電極がパラジウムを含んでなる、請求項73記載の電極回路。
【請求項75】
前記電極回路が陽極電極回路である、請求項71記載の電極回路。
【請求項76】
前記電極回路が陰極電極回路である、請求項73記載の電極回路。
【請求項77】
前記イオン供給源が、前記ゲルマトリックス基材に含まれる緩衝液、前記ゲルマトリックス基材に含まれるイオン交換マトリクス又はそれらの組み合わせを含んでなる、請求項65記載の電極回路。
【請求項78】
前記イオン供給源が前記ゲルマトリックス基材に含まれる緩衝液を含んでなる、請求項77記載の電極回路。
【請求項79】
前記緩衝液が、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、(N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、グリシン又はビス[2−ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)の1つ以上を含んでなる、請求項77記載の電極回路。
【請求項80】
前記イオン供給源が、トリスグリシン緩衝液、グリシン緩衝液、トリス酢酸緩衝液、トリスホウ酸緩衝液、ビストリス緩衝液、ビストリストリシン緩衝液、ビストリスビシン緩衝液、MES緩衝液、MOPS緩衝液又はMOPSO緩衝液を含んでなる、請求項79記載の電極回路。
【請求項81】
前記イオン供給源がビストリストリシン緩衝液を含んでなる、請求項80記載の電極回路。
【請求項82】
前記ビストリス緩衝液が10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項81記載の電極回路。
【請求項83】
前記ビストリス緩衝液が20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項82記載の電極回路。
【請求項84】
前記ビストリス緩衝液が50mM〜250mMの濃度で存在する、請求項83記載の電極回路。
【請求項85】
前記トリシンが10mM〜1Mの濃度で存在する、請求項81記載の電極回路。
【請求項86】
前記トリシンが20mM〜500mMの濃度で存在する、請求項85記載の電極回路。
【請求項87】
前記トリシンが50mM〜250mMの濃度で存在する、請求項86記載の電極回路。
【請求項88】
N,N−ビス[ヒドロキシエチル]2‐アミノエタンスルホン酸(BES)を更に含んでなる、請求項81記載の電極回路。
【請求項89】
エチレングリコールを更に含んでなる、請求項80記載の電極回路。
【請求項90】
前記エチレングリコールが1%〜50%の濃度で存在する、請求項89記載の電極回路。
【請求項91】
前記エチレングリコールが5%〜35%の濃度で存在する、請求項90記載の電極回路。
【請求項92】
前記エチレングリコールが20%の濃度で存在する、請求項91記載の電極回路。
【請求項93】
前記イオン供給源が、前記ゲルマトリックス基材に含まれるイオン交換マトリクスを更に含んでなる、請求項78記載の電極回路。
【請求項94】
前記イオン交換マトリクスがDEAEセルロースである、請求項93記載の電極回路。
【請求項95】
前記イオン交換マトリクスが1つ以上の緩衝液を含むDEAEセルロースである、請求項94記載の電極回路。
【請求項96】
前記イオン交換マトリクスがトリシンを含むDEAEセルロースである、請求項95記載の電極回路。
【請求項97】
前記ゲルマトリックス基材が、1つ以上の抗腐食化合物、1つ以上の抗黴剤、1つ以上の可溶化剤、1つ以上の色素、1つ以上の還元剤、1つ以上のキレート剤、1つ以上のブロッキング剤又は1つ以上のプロテアーゼを更に含んでなる、請求項65記載の電極回路。
【請求項98】
前記ゲルマトリックス基材が1つ以上の可溶化剤を更に含んでなる、請求項97記載の電極回路。
【請求項99】
前記ゲルマトリックス基材が界面活性剤を更に含んでなる、請求項98記載の電極回路。
【請求項100】
前記ゲルマトリックス基材がアニオン性界面活性剤を更に含んでなる、請求項98記載の電極回路。
【請求項101】
前記ゲルマトリックス基材がSDSを更に含んでなる、請求項100記載の電極回路。
【請求項102】
前記ゲルマトリックス基材が1つ以上の色素を更に含んでなる、請求項97記載の電極回路。
【請求項103】
前記ゲルマトリックス基材が蛋白質染色色素を更に含んでなる、請求項102記載の電極回路。
【請求項104】
前記ゲルマトリックス基材が、クーマシー染色、SyproRuby、Direct Blue71又は銅フタロシアンテトラスルホン酸染色を更に含んでなる、請求項103記載の電極回路。
【請求項105】
前記ゲルマトリックス基材がポリアクリルアミド系ゲル、アガロース系ゲル、又はアクリルアミド及びアガロースを含んでなるゲルである、請求項65記載の電極回路。
【請求項106】
前記ゲルマトリックス基材がアガロース系ゲルである、請求項105記載の電極回路。
【請求項107】
前記ゲルマトリックス基材が0.1%〜5%のアガロースである、請求項106記載の電極回路。
【請求項108】
前記ゲルマトリックス基材が0.5%〜4%のアガロースである、請求項107記載の電極回路。
【請求項109】
前記ゲルマトリックス基材が1%〜3%のアガロースである、請求項108記載の電極回路。
【請求項110】
前記ゲルマトリックス基材がアクリルアミド系ゲルである、請求項105記載の電極回路。
【請求項111】
前記ゲルマトリックス基材が2.5%〜30%のアクリルアミドである、請求項110記載の電極回路。
【請求項112】
前記ゲルマトリックス基材が5%〜20%のアクリルアミドである、請求項111記載の電極回路。
【請求項113】
前記ゲルマトリックス基材が10%のアクリルアミドである、請求項112記載の電極回路。
【請求項114】
前記アクリルアミドが40:1〜5:1までの比率でアクリルアミドとビスアクリルアミドを含んでなる、請求項110記載の電極回路。
【請求項115】
前記アクリルアミドが30:1〜10:1までの比率でアクリルアミドとビスアクリルアミドを含んでなる、請求項114記載の電極回路。
【請求項116】
前記アクリルアミドが19:1の比率でアクリルアミドとビスアクリルアミドを含んでなる、請求項115記載の電極回路。
【請求項117】
アガロースを更に含んでなる、請求項110記載の電極回路。
【請求項118】
前記アガロースが0.1%〜2%の濃度で存在する、請求項117記載の電極回路。
【請求項119】
前記アガロースが0.2%〜1%の濃度で存在する、請求項118記載の電極回路。
【請求項120】
前記アガロースが0.5%の濃度で存在する、請求項119記載の電極回路。
【請求項121】
1つ以上のブロッティング膜を更に含んでなり、前記ゲルマトリックス基材が前記電極に並設される第1面、及び1つ以上のブロッティング膜に並設される第2面を含んでなる、請求項65記載の電極回路。
【請求項122】
前記1つ以上のブロッティング膜がナイロン系膜、ニトロセルロース系膜、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)系膜又は活性紙ブロッティング膜である、請求項121記載の電極回路。
【請求項123】
イオン供給源を含むゲルマトリックス基材及び前記ゲルマトリックス基材に並設される電極を含んでなる陰極電極回路。
【請求項124】
前記イオン供給源が緩衝液を含んでなる、請求項123記載の陰極電極回路。
【請求項125】
前記緩衝液がビストリストリシン緩衝液である、請求項124記載の陰極電極回路。
【請求項126】
前記イオン供給源がイオン交換マトリクスを更に含んでなる、請求項124記載の陰極電極回路。
【請求項127】
前記ゲルマトリックス基材がアガロースを含んでなる、請求項123記載の陰極電極回路。
【請求項128】
前記電極が銅を含んでなる、請求項123記載の陰極電極回路。
【請求項129】
前記電極が前記ゲルマトリックス基材に少なくとも部分的に埋め込まれる、請求項123記載の陰極電極回路。
【請求項130】
密封容器に設けられる、請求項123記載の陰極電極回路。
【請求項131】
イオン供給源を含むゲルマトリックス基材、及び前記ゲルマトリックス基材の第1面に並設される電極を含んでなる、陽極電極回路。
【請求項132】
前記ゲルマトリックス基材がアクリルアミドを含んでなる、請求項131記載の陽極電極回路。
【請求項133】
前記ゲルマトリックス基材が、アガロースを更に含んでなる、請求項132記載の陽極電極回路。
【請求項134】
前記イオン供給源が1つ以上の緩衝液を含んでなる、請求項133記載の陽極電極回路。
【請求項135】
前記緩衝液がビストリストリシンである、請求項134記載の陽極電極回路。
【請求項136】
BESを更に含んでなる、請求項135記載の陽極電極回路。
【請求項137】
前記電極が銅を含んでなる、請求項131記載の陽極電極回路。
【請求項138】
前記ゲルマトリックス基材の第2面に並設されるブロッティング膜を更に含んでなる、請求項131記載の陽極電極回路。
【請求項139】
前記ブロッティング膜がニトロセルロース、ナイロン又はPVDFを含んでなる、請求項138記載の陽極電極回路。
【請求項140】
前記電極、前記ゲルマトリックス基材及び前記ブロッティング膜を保持するトレイを更に含んでなる、請求項138記載の陽極電極回路。
【請求項141】
前記トレイがプラスチックを含んでなる、請求項140記載の陽極電極回路。
【請求項142】
ドライ式エレクトロブロッティングの実施方法であって、1つ以上の生体分子を含む分析ゲルと1つ以上のブロッティング膜を含む転写スタックを陽極電極回路と陰極電極回路との間に配置することと、陽極電極回路の陽極と陰極電極回路の陰極との間で電流を流して分析ゲルからブロッティング膜へ1つ以上の生体分子を転写することとを含んでなる方法。
【請求項143】
前記陽極が銅を含んでなり、前記電流を流す工程で用いる電流密度が、1つ以上の生体分子を含む前記ゲルの前記第1面1cm2当たり15mA以上である、請求項142記載の方法。
【請求項144】
1つ以上の生体分子を含む前記分析ゲルが電気泳動ゲルである、請求項142記載の方法。
【請求項145】
陽極ゲルマトリックスが、前記陰極ゲルマトリックス中に存在しないか又は顕著に少ない量で存在する1つ以上のアニオン性緩衝化合物を含んでなる、請求項142記載の方法。
【請求項146】
前記アニオン性緩衝化合物が、EDTA、コハク酸、クエン酸塩、マレイン酸、カコジラート、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、N−(2−アセトアミド)−2‐アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2‐アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)又はN−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)である、請求項145記載の方法。
【請求項147】
前記アニオン性緩衝化合物が、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2‐アミノエタンスルホン酸(ACES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2‐アミノエタンスルホン酸(BES)又は3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)である、請求項146記載の方法。
【請求項148】
前記方法が前記陽極電極回路、前記陰極電極回路又は前記転写スタックへのいかなる緩衝液の添加も含まない、請求項142記載の方法。
【請求項149】
陽極電極及び陰極電極間で電流を印加する前に、前記分離ゲル、前記陽極電極回路及び前記陰極電極回路の間にゲルセパレータ部材を有する消泡装置を通すことを更に含んでなり、前記分離ゲル、前記ブロッティング膜及び前記陰極ゲル基材との間への気泡のトラッピングが減少又は回避される、請求項142記載の方法。
【請求項150】
前記ブロッティング膜上へエレクトロブロッティングされる1つ以上の生体分子の検出を更に含んでなる、請求項142記載の方法。
【請求項151】
前記検出が核酸染色、核酸ハイブリダイゼーション、蛋白質染色又は免疫検出によるものである、請求項150記載の方法。
【請求項152】
前記検出が免疫検出によるものである、請求項151記載の方法。
【請求項153】
前記検出が化学発光検出、色素検出、放射性同位元素検出又は蛍光検出によるものである、請求項152記載の方法。
【請求項154】
ドライ式エレクトロブロッティング用のキットであって、イオン供給源を含むゲルマトリックス基材、及び前記ゲルマトリックス基材の第1面に並設される導電性電極を含む1つ以上の使い捨て可能な電極回路、並びに1つ以上のブロッティング膜を含んでなるキット。
【請求項155】
前記1つ以上の使い捨て可能な電極回路が、1つ以上の陽極電極回路、1つ以上の陰極電極回路、又は1つ以上の陽極電極回路と1つ以上の陰極電極回路の組み合わせである、請求項154記載のキット。
【請求項156】
前記1つ以上の陽極電極回路のイオン供給源が、緩衝液、イオン交換マトリクス、前記導電性電極又はそれらの組み合わせである、請求項154記載のキット。
【請求項157】
前記1つ以上の陰極電極回路のイオン供給源が、緩衝液、イオン交換マトリクス又はそれらの組み合わせである、請求項154記載のキット。
【請求項158】
電気泳動用のイオン供給源を含む陽極ゲルマトリックス基材、及び前記陽極ゲルマトリックス基材の第1面に並設される電極を含む1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路と、イオン供給源を含む陰極ゲルマトリックス基材、及び陰極ゲルマトリックス基材に並設される導電性電極を含む1つ以上の陰極電極回路とを含んでなる、ドライ式エレクトロブロッティング用キットであって、前記陽極ゲルマトリックス基材が、陰極ゲルマトリックス基材に含まれないか又は顕著に少ない量で含まれる1つ以上のアニオン性化合物を含むキット。
【請求項159】
前記陽極電極が銅を含んでなる、請求項158記載のキット。
【請求項160】
前記陰極電極が銅を含んでなる、請求項159記載のキット。
【請求項161】
前記1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路がプラスチックトレイに設けられる、請求項158記載のキット。
【請求項162】
1つ以上のブロッティング膜を更に含んでなる、請求項158記載のキット。
【請求項163】
1つ以上の使い捨て可能なスポンジを更に含んでなる、請求項158記載のキット。
【請求項164】
1つ以上の濾紙を更に含んでなる、請求項158記載のキット。
【請求項165】
電気泳動用のイオン供給源を含む陽極ゲルマトリックス基材、陽極ゲルマトリックス基材の第1面に並設される電極及び陽極ゲルマトリックス基材の第1面に並設されるブロッティング膜を含む1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路と、イオン供給源を含む陰極ゲルマトリックス基材、及び陰極ゲルマトリックス基材に並設される導電性電極を含む1つ以上の陰極電極回路とを含んでなる、ドライ式エレクトロブロッティング用のキット。
【請求項166】
前記陽極ゲルマトリックス基材が、前記陰極ゲルマトリックス基材に含まれないか又は顕著に少ない量で含まれる1つ以上のアニオン性化合物を含んでなる、請求項165記載のキット。
【請求項167】
前記陽極電極が銅を含んでなる、請求項165記載のキット。
【請求項168】
前記陰極電極が銅を含んでなる、請求項167記載のキット。
【請求項169】
前記1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路がプラスチックトレイに設けられる、請求項165記載のキット。
【請求項170】
1つ以上の使い捨て可能なスポンジを更に含んでなる、請求項165記載のキット。
【請求項171】
1つ以上の濾紙を更に含んでなる、請求項165記載のキット。
【請求項172】
前記1つ以上の陽極電極回路の各々、及び前記1以上陰極電極回路の各々が、密封容器中に封入される、請求項165記載のキット。
【請求項173】
電気泳動用のイオン供給源を含むゲルマトリックス基材及びゲルマトリックス基材の第1面に並設される電極を含んでなる、使い捨て可能な電極回路。
【請求項174】
電気泳動用のイオン供給源を含むゲルマトリックス基材、ゲルマトリックス基材の第1面に並設される電極及びゲルマトリックス基材の第2面に並設されるブロッティング膜を含んでなる、使い捨て可能な電極回路。
【請求項175】
電気泳動用のイオン供給源を含む陽極ゲルマトリックス基材及び前記陽極ゲルマトリックス基材の第1面に並設される電極を含む1つ以上の使い捨て可能な陽極電極回路と、イオン供給源を含む陰極ゲルマトリックス基材及び陰極ゲルマトリックス基材に並設される導電性電極を含む1つ以上の陰極電極回路とを含んでなるドライ式エレクトロブロッティング用のキットであって、前記陽極ゲルマトリックス基材の組成と前記陰極ゲルマトリックス基材の組成が異なるキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2008−538137(P2008−538137A)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557084(P2007−557084)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/005933
【国際公開番号】WO2006/091525
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(502221282)インヴィトロジェン コーポレーション (113)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/005933
【国際公開番号】WO2006/091525
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(502221282)インヴィトロジェン コーポレーション (113)
[ Back to top ]