説明

エレクトロルミネッセンス表示装置

本発明は、電気泳動媒体と、駆動信号を受信するための各々の表示素子に関連付けられた第1電極(6)、第2電極(6´)及び第3電極(7)と、表示される情報に対応して、中間的光学状態を実現するために電極に駆動信号を印加するための制御手段とを有する、情報を表示するための表示装置に関する。表示装置の一時的ブランキングの原因となるリセットパルスを削除するように、表示装置の電気泳動媒体は電気泳動粒子の2つの群であって、正に帯電した電気泳動粒子の1つの群と負に帯電した電気泳動粒子の1つの群とを有し、第1群の電気泳動粒子の色は第2群の電気泳動粒子の色と同じである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動媒体を有する複数の表示素子を有する、連続画像を表示するための表示装置に関する。
【0002】
電気泳動表示装置は、異なる透過率又は反射率を有する2つの極限状態の間で電界の影響下で、通常、着色荷電粒子の動きに基づいている。このような表示装置を用いることにより、濃い(着色の)キャラクタを薄い(着色の)背景において画像化することができ、その逆も同様である。
【0003】
この種類の表示装置は、例えば、モニタ、ラップトップコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、携帯電話及び電子ブックにおいて用いられている。
【背景技術】
【0004】
上記のような種類の表示装置については、未公開の国際公開第02/00611号パンフレットにおいて記載されている。この特許文献においては、2つの基板であって、それらの1つは透明であり、その透明基板は行及び列電極を備えている、電子インクディスプレイについて記載している。行電極と列電極との間の交差は表示素子に関連付けられる。表示素子は薄膜トランジスタ(TFT)により列電極に結合され、そのトランジスタのゲートは行電極に結合される。この表示素子、即ち、TFTトランジスタ並びに行及び列電極の配置は共に、アクティブマトリクスを構成する。更に、その表示素子は、第1電極、第2電極及び第3電極を有する。行ドライバは、ソース電極が列電極に接続され、ゲート電極が行電極に接続されている薄膜トランジスタにより表示素子の第1電極を選択することが可能である。第1列電極におけるデータ信号は、ドレイン電極に結合されたTFTを介して第1電極に転送される。更に、各々の表示素子において、第2電極は、中間的光学状態を実現するための第2データ電圧を受信するための付加列電極と付加TFTとにより付加駆動手段に接続される。第3電極は、例えば、1つ又はそれ以上の共通対向電極によりアースに接続される。更に、電子インクが、第1電極、第2電極及び共通電極の間に備えられている。電子インクは、約10乃至100μmの多数のマイクロカプセルを有する。各々のマイクロカプセルは、白色流体中に浮遊する、黒色且つ正の荷電粒子を有する。正電圧Vが第1電極及び第2電極に印加されるとき、黒色粒子は、最低の電位であって、この場合は第3電極の方に向かってマイクロカプセルの側面の方に移動する。第1電極及び第2電極を有する透明基板の側面方向から表示装置を見る場合、ディスプレイは、流体であって、この場合は白色の色を有する。中間的光学状態を得るためには、例えば、第2電極はアースに接続され、第1電極は負電圧−Vに接続され、第3電極はアースに接続される。黒色且つ正の荷電粒子は最低電位であって、この場合、第1電極の周囲の領域に向かって移動する。透明基板の側面方向から表示装置を見るとき、表示素子は、一部のみが黒色粒子の色を有し、一部が流体の色を有する。これにより、灰色が得られる。中間的光学状態、即ち、階調は、マイクロカプセルの上部において、第1電極及び第2電極の方に移動する粒子数を制御することにより、表示装置において生成されることができる。例えば、第1電極、第2電極及び第3電極の間の電界線を制御することにより、第1電極と第2電極との間の領域の方に多かれ少なかれ粒子が移動し、種々の中間的光学状態(階調値)が得られる。
【0005】
既知の表示装置においては、中間的光学状態の再現性を改善するために、例えば、予め、荷電粒子が第3電極に均一に分散するようにするリセットパルスを印加することにより、選択に先立って規定状態に画素をすることが要求される。既知のディスプレイにおける欠点は、このリセットパルスはスクリーンの一時的なブランキングをもたらすことと、ゆっくりした映像再生に適応しないことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、一時的ブランキングを有しない、冒頭の段落において記載した種類の表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明の第1の特徴は、請求項1に記載している表示装置を提供する。
【0008】
本発明は、続く画像の続く中間状態を実現するとき、第1電極と第2電極との間の領域から、表示される情報の中間的光学状態を実現する粒子が取り除かれ、それ故、実質的に残っている粒子は続く画像の中間的光学状態に影響しないことを認識することに基づいている。
【0009】
同じ色を有するが、正の荷電粒子の第1群と負の荷電粒子の第2群とを有する、2つの粒子群を用いることにより、続く画像間でリセットパルスが必要とされないとき、適切な電圧が電極に印加されることが可能となる。適切な電圧が画素電極に印加されるとき、第1群の粒子は、好ましい中間的光学状態に従って、第1電極と第2電極との間の領域に移動し、第2群の粒子は第3電極の方に移動する。次に続く画像においては、電極に印加される電圧は、第1群の粒子が第1電極と第2電極との間の領域から解放され、第2群の粒子は第2の続く画像の中間的光学状態に従って第1電極と第2電極との間の領域に移動するように、選択されることができる。
【0010】
本発明の特定の実施形態は、中間的光学状態を構成する荷電粒子の群を交替させることにより、リセットパルスはもはや必要ではなく、それ故、ディスプレイを一時的にブランキングすることは実質的に削除される。
【0011】
更に、本発明の有利な実施形態については、更なる従属請求項において記載されている。
【0012】
請求項3に記載のような実施形態においては、再現性は、駆動信号の前に予め設定された信号を印加することにより更に改善されることができる。この実施形態においては、電気泳動粒子は、続く駆動パルスにより新しい位置に方向付けられる前に、電極から解放される。
【0013】
好適には、予め設定されたパルスは、駆動信号のパルスの極性とは逆の極性を有する。
【0014】
請求項5の実施形態においては、偶数の逆極性の予め設定されたパルスを有する予め設定された信号が、表示装置の予め設定されたパルスの視認性とDC成分とを最小化するために生成されることができる。2つの予め設定されたパルス、即ち、正極性を有する1つのパルスと負極性を有する1つのパルスは、この動作モードにおいて表示装置の電力損失を最小化する。
【0015】
請求項7に記載の実施形態においては、粒子は基板間の流体中に存在している。代替として、粒子がマイクロカプセル中に存在することが可能である。
【0016】
請求候8に規定されているような実施形態において、第3電極を有する基板の表面は疎水性層であって、例えば、テトラフルオロエチレンを備えている。これは、第3電極の電位によりこの表面に引き付けられる粒子がより一様に分布するように、滑り易い表面を提供する。
【0017】
本発明の上記の及び他の特徴は、以下に説明する実施形態を参照することにより明確になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明が適用できる表示装置1の一部の電気等価回路を示す図である。その表示装置は、行又は選択電極7と2つの列又はデータ電極6、6´の交差領域における画素10のマトリクスを有する。行電極は行ドライバ4により連続的に選択される一方、列電極1、1´乃至n、n´はデータレジスタ5によりデータを供給される。このために、入力データ2は、先ず、必要に応じて、処理器11において処理される。行ドライバ4とデータレジスタ5との間の相互同期化は駆動ライン8により行われる。
【0019】
行ドライバからの駆動信号は、ゲートが行電極7に選択的に接続され、ソース電極21が列電極6、6´それぞれに電気的に接続される薄膜トランジスタ(TFT)9、9´によりピクチャ電極を選択する。第1列ドライバ6における信号は、TFT9を経由して第1ピクチャ電極に転送される。画素10がアースに接続される場合は、1つ又はそれ以上の対向電極により第3ピクチャ電極に転送される。図1の実施例においては、そのようなTFT9、9´は、1つの画素10のみに対して図示されている。
【0020】
図2Aは、例えば、第3電極7を備えているガラス又は合成材料から成る第1基板11と第1電極6を備えた透明な第2基板12とを有する画素を示している。画素は、電気泳動媒体、即ち、例えば、黒色で正の荷電粒子14と黒色で負の荷電粒子14´とを有する白色流体で満たされている。透明な第2基板は、更に、第2電極6´に印加される電圧により中間的光学状態を実現するように、第2電極6´を有する。この第3スイッチング電極6´に印加される電圧は2つの光学状態間のスイッチングを支配する。
【0021】
例えば、図2Aにおいて、第1光学状態が生成される。更に、第3電極7はアースに接続され、第1電極6及び第2電極6´の一6は第1電圧+V1に接続され、第1電極6及び第2電極6´の他6は第2電圧V2に接続され、それにより、V1>V2>0であり、黒色で正の荷電粒子14は、最も低い電位の電極であって、この場合、第3スイッチング電極7の方に移動する。黒色で負の荷電粒子14´は、最も高い電位であって、この場合、第1電極の方に移動し、第1電極6の真下の領域に存在する。観測方向15から見ると、画素は、ここでは、実質的には、第1電極6の近傍の部分を除いて、流体13の色を呈しており、その画素の色は、この実施例においては略白色である。図2Bにおける実施例においては、極限の光学状態が実現している。図2Bにおいては、第3電極7はアースに接続される一方、第1電極6及び第2電極6´は電圧−Vに接続されている。黒色で正の荷電粒子14は最も低い電位の方であって、この場合、第1基板12に沿って平行である第1電極6と第2電極6´との間に規定された電位面の方に移動し、黒色で負の荷電流市14´は、最も高い電位の方であって、この場合、第3電極7により規定された電位面の方に移動する。観測方向15から見ると、画素は、ここでは、黒色粒子14の色を呈している。同様な光学状態は、第1電極6及び第2電極6´が電圧+Vに接続され、第3電極7がアースに接続される場合に生じる。黒色で負の荷電粒子14´は、最も高い電位の方であって、この場合、第1基板12に沿って平行は電位面の方に移動し、黒色で正の荷電流市14は、最も低い電位の方であって、この場合、第3電極7により規定された電位面の方に移動する。観測方向15から見ると、画素は又、黒色粒子の色を呈している。
【0022】
図2Cにおいては、中間的光学状態を生成するように、第1電極6は第1電圧+V1に接続され、第2電極6´は第3電圧+V3に接続され、ここでは、V1>V3>0及びV3<V2であるため、第3電極7はアースに接続される。黒色で正の荷電粒子14は、最も低い電位であって、この場合、第3電極7の周りの領域の方に移動する。黒色で負の荷電粒子14´は第1電極6の周りの領域の方に移動する。観測方向15から見ると、画素は、ここでは、部分的に黒色粒子の色で、部分的に白色流体の色を呈している。それ故、灰色の色合いが得られる。第2電極6´に印加される電圧V3の大きさを変化させることにより、種々のグレーシェーディングが得られる。図3は、電極6、6´及び7に印加される電圧の4つの有効な組み合わせに対する電位線と、正の荷電粒子に作用する力を示す矢印16とを示している。この場合、第1の灰色の色合いを有する第1画像がディスプレイ上に表示される。第2の灰色の色合いを有する続く第2画像は、第1電極6が負の第1電圧−V1に接続され、第2電極6´が負電圧−V3に接続されることにより表示され、ここでは、V1<V3<0であり、第3電極7はアースに接続されたままである。この場合、正の荷電粒子14は最も低い電位であって、この場合、第1電極6近傍の領域の方に移動する。負の荷電粒子14´は、第3電極7近傍の領域の方に移動し、それ故、新しい灰色の色合いが得られる。黒色粒子14の量が基板の下に存在し、それ故、灰色の色合いは、第1電極6及び第2電極6´における電圧V1及びV3の大きさに依存する。次に続く画像は、第1電極6を再び正電圧+V1に、第2電極6´を再び正電圧+V3も接続することにより表示される。各々の更に続く画像は、第3電極に関して、第1電極6及び第2電極6´それぞれに印加される電圧V1及びV3の極性を変化させることにより表示される。従来の電気泳動ディスプレイに比較して、本発明のディスプレイの優位性は、第1基板12から粒子14、14´全てを解放するリセットパルスを印加することなく、連続画像を表示することができることである。この方法においては、表示スクリーンの一時的ブランキングを回避できる。
【0023】
好適には、各々の新しい画像の前に、応答時間を改善するために、少数のプレパルスが、データパルスV1及びV3に先立って第1電極6及び第2電極6´に印加される。図4は、画素10の電極6、6´の一方又は両方に印加されるデータパルスV、Vn+1、Vn+2、Vn+3と4つのプレパルス40の組み合わせを示している。第1電極6に印加されるプレパルス40の大きさ及び持続時間は、第1電極6近傍の第1領域における電気泳動粒子14、14´を解放するに十分であるが、第3電極7近傍の領域にそれらを移動させるには小さすぎるエネルギーと結び付いている。好適には、最後のプレパルス40の極性は、第1電極6及び第2電極6´に印加される電圧V1及びV3の極性と逆である。代替として、プレパルス40は、電圧V1及びV2が電極6及び6´に印加される前に、第3電極7に印加されることができる。
【0024】
基板11、12は、疎水性層であって、例えば、基板に荷電粒子14、14´の付着を回避するためにテトラフルオロエチレンを備えることが可能である。
【0025】
代替として、文献、“Micro−encapsulated ELectrophoretic Materials for Electronic Paper Displays,20th IDRC conference,pp.84−87(2000)”に記載されているようなマイクロカプセルにカプセル化されることができる。電気泳動媒体、即ち、正の荷電粒子14及び負の荷電粒子14´を有する流体が、ここでは、透明基板又は結合剤におけるマイクロカプセルにおいて存在する。
【0026】
図5は、2つのマイクロカプセル16を有する表示装置の一部の断面50を示しており、第3電極7は又、アースに接続される一方、第1電極6及び第2電極6´は電圧V1及びV2それぞれに接続されている。マイクロカプセル16の横方向の大きさLは、第1電極6と第2電極6´との間の距離に略等しい。
【0027】
同時提出の特許請求の範囲における範囲から逸脱することなく、本発明の範囲内で多くの変形が可能であることは明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】表示装置の一部を示す図である。
【図2】異なる階調値又は中間的光学状態が実現された電気泳動表示装置の画素を示す図である。
【図3】電気泳動表示装置の画素における電位線を示す図である。
【図4】電気泳動表示装置の画素電極への印加のためのデータ信号に先立つプレパルスを示す図である。
【図5】帯電された電気泳動粒子を有するマイクロカプセルを備えた電気泳動表示装置の画素を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を表示するための電気泳動表示装置であって:
電気泳動粒子の2つの群であって、正に帯電した電気泳動粒子の1つの群と負に帯電にした電気泳動粒子の1つの群とを有し、第1群の電気泳動粒子の色は第2群の電気泳動粒子の色と同じである、電気泳動粒子の2つの群;
駆動信号を受信するための各々の表示素子に関連付けられた第1電極、第2電極及び第3電極;並びに
表示される情報に従って、中間的光学状態を実現するために前記電極に前記駆動信号を印加するための制御手段;
を有することを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気泳動表示装置であって、表示される前記情報は連続画像を有し、前記制御手段は、第1電極、第2電極及び第3電極それぞれの間の電圧差が各々の続く画像の表示と同期して正及び負に交互に変わるように、駆動信号を生成することができる、ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電気泳動表示装置であって、前記制御手段は、前記基板における前記電極の一の近傍の第1位置から電気泳動粒子を解放するために十分であるが前記基板における他の電極の一の近傍の第2位置に達するには小さ過ぎるエネルギーに関連する予め設定されたパルスを有する駆動信号の前に、予め設定された信号を印加するために、更に備えられている、ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電気泳動表示装置であって、前記の予め設定された信号は第1電極及び第2電極の1つに印加される、ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電気泳動表示装置であって、前記制御手段は負極性又は正極性を有する前記の予め設定されたパルスを生成するために更に備えられ、前記制御手段は負極性又は正極性を有するパルスを有する前記駆動信号を生成するために更に備えられている、ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項6】
請求項3に記載の電気泳動表示装置であって、前記の予め設定された信号は前記第3電極に印加される、ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電気泳動表示装置であって、前記電気泳動媒体は2つの基板であって、該2つの基板の一は前記第1電極及び第2電極を有する、2つの基板の間に存在し、それらの基板の他は第3電極を有する、ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気泳動表示装置であって、前記第3電極を有する前記の基板の他は疎水性層を備えている、ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項9】
請求項1に記載の電気泳動表示装置であって、前記電気泳動媒体はマイクロカプセル内に存在する、ことを特徴とする電気泳動表示装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−503320(P2006−503320A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544523(P2004−544523)
【出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【国際出願番号】PCT/IB2003/003928
【国際公開番号】WO2004/036305
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】