説明

エレベータかごの非常脱出ドア

本発明は、エレベータかご(1)において、エレベータかご(1)の少なくとも1つの壁に蝶番止めされたエレベータかごの非常脱出ドア(2)を対象とする。非常脱出ドア(2)は、実質的に垂直な2本の蝶番線を中心に回転するようにエレベータかご(1)の壁に蝶番止めされている。

【発明の詳細な説明】
【詳細な説明】
【0001】
本発明の対象は、請求項1の前段に記載のようなエレベータかごの非常脱出ドアである。
【0002】
従来技術では、なかでも、エレベータかごの側壁に配置された非常脱出ドアが知られている。非常脱出ドアは、その上縁部およびその下縁部がピン蝶番によってエレベータかごの側壁構体に取り付けられている。実用上の理由から、蝶番は非常脱出ドアの第2の縁部にぴったりと配置することはできないが、そのような場合、ドアをその蝶番線を中心にエレベータかごの内部へ回転させると、蝶番線に対して反対側のドアの縁部はエレベータかごの外側へ回転する。この種の機能は、例えばダブルデッキエレベータカーではスペース不足のため、必ずしも可能でない。このような蝶番取付けのドアがエレベータの内装を損なうことも問題である。例えばドアの幅だけの内装パネルは、常にドアの部分に配置する必要があり、そうした内装パネルは一般に他側の内装パネルより狭い。
【0003】
1つの非常脱出方式が特開平2-018275(A)で公知であるが、この方式はエレベータかごの内部に取り付け可能な別個のハッチを有し、ハッチは、エレベータの通常運転ではエレベータかごの側壁へ固定されている。この方式も、ハッチがエレベータの内装を損なう問題がある。重量を考慮すれば、ハッチが壁の全高さを占めることはできない。そのような場合、ハッチの上縁部が内装パネルを高さ方向に二分してしまう。さらにハッチは、ハッチを動かすのに十分丈夫な大型の持上げハンドルを備える必要がある。持上げハンドルも内装上、見えるので、内装の全体的外観を阻害する。
【0004】
本発明は、上述の欠点を解消し、エレベータかごの内装の一部として簡単に取り付け可能な、エレベータかごの簡易で安価な非常脱出ドアを達成することを目的とする。さらに、各規制に適合し、ドアを開いた時エレベータかごの外壁の外側線と交差しない非常脱出ドアを達成することを目的とする。本発明による非常脱出ドアは請求項1の特徴段に記載の事項を特徴とする。本発明の他の実施例はその他の請求項に開示の事項を特徴とする。
【0005】
本願の詳細な説明にも本発明のいくつかの実施例が記載されている。本願の発明内容は、後に記載の請求項とは異なるように定義することもできる。本発明の内容はまた、とくに表現上もしくは潜在的副題に照らして、またはその達成される利点もしくは利点の範疇の見地から本発明を検討する場合、複数の別個の発明で構成することもできる。その場合、後に記載の請求項に含まれる属性の一部が別個の発明概念の見地から余分なこともある。同様に、個々の実施例について記載するさまざまな詳細事項は他の実施例にも適用することができる。さらに、従属請求項の少なくとも一部は、少なくともいくつかの状況でそれら自体の権利上、発明性があるとみなせると言える。
【0006】
本発明による非常脱出ドアの一利点は、このドアによってエレベータかごの内装を以前よりも自在に作れることにある。その場合、例えば普通の大きさの内装パネルを非常脱出ドアの部分にも使用することができる。ドアの内側面へ取り付ける内装パネルよりも非常脱出ドア自体を狭く、浅くすることができる。このような内装パネルは、非常脱出ドアを開いた時に非常脱出ドアとともにエレベータかごの内側へ回転することができる。他の利点は、非常脱出ドアを標準サイズで製造できることにある。サイズおよび形状が同じドアはすべてのかごに適合し、内装パネルは他の内装に応じて選択される。その場合も、個々のエレベータに応じた設計はしないでよいので、設計作業が迅速かつ容易になる。同様に、設置作業が迅速かつ容易になり、以前ほど安易に設置ミスが発生することはない。他の利点は、本発明による非常脱出ドアは小型のエレベータかごにも適していることにある。更なる利点は、複雑で費用のかかる調節レバーシステムを省略でき、その場合、本発明による方式は簡易かつ安価に実現できることにある。
【0007】
次に、添付図面を参照して本発明の実施例を一例として本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による非常脱出ドアが閉じているエレベータかごの簡略化した上面図である。
【図2】本発明による非常脱出ドアが開いているエレベータかごの簡略化した上面図である。
【図3】本発明による非常脱出ドアの部分上断面図である。
【図4】本発明による非常脱出ドアを外側から見た、すなわち図3の方向Bから見た部分省略断面図である。
【図5】本発明による非常脱出ドアの閉位置における部分上断面図である。
【図6】本発明による非常脱出ドアが開く過程における部分上断面図である。
【図7】本発明による非常脱出ドアの開位置における部分上断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1および図2は、少なくとも側壁3および後壁4を有するエレベータかご1の上面図を提供する。一方の側壁3は非常脱出ドア2を有し、これは、非常脱出ドア2閉じたときにその内側面がエレベータかごの側壁3の内側面と実質的に同じ垂直面上に位置するように側壁の壁構体に沈み込んでいる。エレベータかご1の側壁3の内側面が例えばステンレススチールであれば、非常脱出ドア2の内側面も同様のステンレスチールでよい。エレベータかご1の内壁が何らかの内装パネルで被覆されていれば、同種の内装パネルを非常脱出ドア2の内側面へ取り付けることもでき、その場合、内装全体が統一される。さらに、非常脱出ドア2へ取り付ける内装パネルはドアより高くも幅広くもでき、非常脱出ドア2の側へ延在させることができる。したがって、非常脱出ドア2の上部には、例えばエレベータかごの他の内装パネルと同じ大きさの全面内装パネルを設けることができる。本実施例による場合、非常脱出ドア2はエレベータかご1の前壁よりも後壁に近くなる。
【0010】
図1では非常脱出ドア2は閉じ、図2では開いているが、その場合、ドアパネル2aは、2本の垂直蝶番線S1およびS2を中心に傾斜姿勢に回転している。蝶番線S1およびS2は図4および図5にさらに詳細に示す。非常脱出ドア2は、実質的にドアパネル2aの高さの支持手段5を有し、支持手段は、その第1の端部がエレベータかご1の側壁3の構体へピン型蝶番によって、またその第2の端部がドアパネル2aへ取り付けられている。非常脱出ドア2が開くと、エレベータかご1の側壁3には開口部7が出来て非常脱出口として働き、これを介して乗客は矢印で示す方向にエレベータかご1から脱出することができる。
【0011】
図3および図4では、本発明による非常脱出ドア2をさらに詳細に、切り離して、また明瞭化のため一部断面で示す。図3では、非常脱出ドア2はドアの内側が同図の底部になるように示されている。同様に図4では、非常脱出ドア2は外側から見たところ、すなわち図3の方向Bから見たところを示す。非常脱出ドア2は、ドア2全体の幅と少なくとも実質的に相当するドアパネル2aを有し、ドアパネルは、ドアパネル2aの終縁部2bおよび側縁部が内方へ約90度に曲がるように鋼板を曲げて作られている。両側縁部も約90度の第2の曲部を有し、これは、第1の側縁部が非常脱出ドア2の中心線に向かい、第2の側縁部はドアから外方に向かってデテント2cを形成し、後者がエレベータかご1の壁に当接している。
【0012】
ドアパネル2aの外側、すなわちドアパネル2aの平滑面には、直状背後部を有するC字形状断面のチャネル型固定要素8の後部が固定され、固定要素の断面の厚さはドアパネル2aの断面の厚さと実質的に同じである。固定要素8は実質的にドアの下縁部からドアの上縁部まで延在し、固定要素8の両端部とドアパネル2aの両端部の屈曲部2bとの間に小さな空隙を残している。また、ドアパネル2の外側には支持手段5がねじ式蝶番6によって取り付けられ、一方の蝶番6がドアの上部縁に、また他方の蝶番6がドアの下縁部にある。上縁部および下縁部にある両蝶番6は、両者間で第1の直線蝶番線S1を形成している。蝶番6は、支持手段5の凹部へ固定された支持部品11に配置されている。支持部品11はねじを切った穴を含み、蝶番6として働くねじが、非常脱出ドア2の設置の際、この穴の中へねじ込まれる。エレベータかご1の側壁3の壁構体は、ドア開口部7の上部および底部にある支持部品11に対応する支持部品を有している。非常脱出ドア2を設置する際、そのねじ部には、蝶番6として機能するねじがさらにねじ込まれる。したがって、非常脱出ドア2の高さ位置は蝶番ねじ6によって調節することができる。
【0013】
支持手段5はチャネル型構体であり、その断面の厚さはドアパネル2aの断面の厚さと実質的に同じである。固定要素8と同様に、支持要素5も実質的にドアの下縁部から上縁部まで延在して、固定用要素5の両端部とドアパネル2aの両端部の屈曲部2bとの間に小さな間隙を残している。支持要素5はその断面に2つのチャネル型部品を有し、それらのうち支持要素5の第1の縁にある狭い方の部分は、ドアから外へ開くとともに、上述の支持部品11を含み、また第2の縁にある広い方の部分は、反対方向、すなわち仕上がったドア構体におけるドアパネル2aの方向に開く。
【0014】
支持要素5の第2の縁部は固定要素8の第1の縁部から一定の水平距離にあるが、その場合、両縁部間にドアの垂直間隙12が残り、この間隙によって複数の蝶番9用のスペースが出来、蝶番は、固定要素8と支持要素5との間に垂直方向に互いに離間して配置されている。蝶番10のそれぞれの第1の端部は支持要素5の第2の縁部へボルトナット固定により、またそれぞれの第2の端部は固定要素の第1の縁部へやはりボルトナット固定により固定され、この固定によって蝶番9の水平方向の調節が可能である。蝶番9の各半体は蝶番ピン10により互いに連結され、その垂直線が第2の蝶番線S2を形成している。
【0015】
非常脱出ドア2をうまく閉じ、かつ開け易くするためには、蝶番9の位置とドアパネル2aの幅との比を適切にする必要がある。図3において、ドアパネル2aの第1の縁部から蝶番ピン10の中心線までの距離を参照記号D1で示す。同様に、ドアパネル2aの第2の縁部から蝶番ピン10の中心線までの距離を参照記号D2で示す。同図に記載の例では、距離D1の距離D2に対する比は約3/2、すなわち約1.5である。この比は他の大きさでもよく、また例えばおおよそ1.2〜1.8の間になるように異なっていてもよい。しかし好ましくは、この比は例えばおおよそ1.4〜1.6の間である。
【0016】
図5ないし図7は本発明による非常脱出ドア2の作動を示す上面図である。図5では、非常脱出ドア2は閉じ、その場合、エレベータかごの内側から操作されるロック13によってエレベータかごの側壁3にあるその開口部7へ係止されている。その場合、非常脱出ドア2の第1の縁部にあるロック13と非常脱出ドア2の第2の縁部にあるデテント2cによって、非常脱出ドア2自体がエレベータかごの内側に向かって開くのを防止している。同様に、非常脱出ドア2の上縁部および下縁部は、開口部7の上縁部および下縁部にあるそれぞれのデテントに対して内側から当接し、非常脱出ドア2は外側へ向かって開くことができない。開口部7の上縁部および下縁部にあるそれぞれのデテントは図示していない。
【0017】
図6では、非常脱出ドア2は開き始めの段階にある。ロック13はその開位置に回されて、非常脱出ドア2のロック13側の縁部はエレベータかごの内部の方へ引張られる。その場合、非常脱出ドア2は引込み始め、同時にその両蝶番線S1およびS2を中心に回転して開口部7から離れるべく上昇し、デテント2cは支障なく開口部7の側縁を通過できる。非常脱出ドア2が開くと、支持手段5は固定蝶番線S1上で蝶番ピン6を中心に回転し、また非常脱出ドア2は可動蝶番線S2上で蝶番9の蝶番ピン10を中心として支持手段5に対して回転する。図6では、非常脱出ドア2のドアパネル12の終端縁部2b内の溝14も見えるが、この溝によって、非常脱出ドア2は、閉じる時に非常脱出ドア2を蝶番ピン6へ導くことによって開口部7に入れることができる。
【0018】
図7において、非常脱出ドア2はその開位置にあり、その場合、非常脱出ドア2の第2の縁部と開口部7の第2の縁部との間には、人がエレベータかごから矢印Aの方向に脱出できる大きな間隙がある。図7から分かるように、支持手段5は蝶番ピン6を中心に反時計回りに回転するのに対して、非常脱出ドア2は同時に蝶番ピン10を中心として時計回りに回転する。したがって、このようにして支持手段5および非常脱出ドア2は、同じ同時運動中は蝶番を中心として互いに反対の方向に回転するよう取り付けられている。
【0019】
本発明が上述の実施例のみに限定されることはなく、下記の特許請求の範囲内で変化させてよいことは、当業者に明らかである。したがって、例えば非常脱出ドアおよび蝶番の構造は、上述のものと異なってもよい。
【0020】
さらに、非常脱出ドアを上述とは異なるエレベータかごの場所に配置できることは、当業者に明らかである。非常脱出ドアは、エレベータかごの後壁に、または後壁よりも前壁に近い側壁に、もしくは側壁の中央にも配置することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかご(1)において該エレベータかご(1)の少なくとも1つの壁に蝶番止めされたエレベータかごの非常脱出ドア(2)において、該非常脱出ドア(2)は、前記エレベータかご(1)の壁に蝶番止めされ、実質的に垂直な2本の蝶番線(S1、S2)を中心に回転することを特徴とするエレベータかごの非常脱出ドア。
【請求項2】
請求項1に記載の非常脱出ドアにおいて、該非常脱出ドア(2)は前記エレベータかごの壁に蝶番止めされて、実質的に垂直な2本の蝶番線(S1、S2)を中心に実質的に同時に回転することを特徴とする非常脱出ドア。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非常脱出ドアにおいて、該非常脱出ドア(2)は支持手段(5)を含み、その第1の端部が蝶番(6)により前記エレベータかご(1)の壁に取り付けられ、該支持手段(5)の第2の端部には、該非常脱出ドア(2)のドアパネル(2a)が蝶番(9)により取り付けられていることを特徴とする非常脱出ドア。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載の非常脱出ドアにおいて、前記支持手段(5)の第1の端部の蝶番(6)は第1の蝶番線(S1)を形成するように取り付けられ、該支持手段(5)の第2の端部の蝶番(9)は、その蝶番ピン(10)の点において第2の蝶番線(S2)を形成するように取り付けられていることを特徴とする非常脱出ドア。
【請求項5】
前記請求項のいずれかに記載の非常脱出ドアにおいて、前記支持手段(5)は、その蝶番線(S1)を中心として、前記ドアパネル(2a)の蝶番線(S2)を中心とするその回転とは反対の回転方向に、回転するように取り付けられていることを特徴とする非常脱出ドア。
【請求項6】
前記請求項のいずれかに記載の非常脱出ドアにおいて、前記ドアパネル(2a)の縁部および前記エレベータかごの内部に対向する面は該エレベータかごの内装の一部として働くように取り付けられていることを特徴とする非常脱出ドア。
【請求項7】
前記請求項のいずれかに記載の非常脱出ドアにおいて、幅および/または高さが前記ドアパネル(2a)より大きく前記エレベータかごの他の内装に適した内装パネルが前記ドアパネル(2a)の上部に取り付けられていることを特徴とする非常脱出ドア。
【請求項8】
前記請求項のいずれかに記載の非常脱出ドアにおいて、前記非常脱出ドアパネル(2a)において該ドアパネル(2a)の幅方向における前記蝶番(9)の蝶番ピン(10)の位置は、該ドアパネル(2a)の第2の縁部から前記蝶番ピン(10)の中心線までの距離に対する該ドアパネル(2a)の第1の縁部から該蝶番ピン(10)の中心線までの距離の比がおおよそ1.2〜1.8の間、好ましくは1.4〜1.6の間、適切にはおおよそ1.5であるように選択することを特徴とする非常脱出ドア。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−511455(P2013−511455A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539374(P2012−539374)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050934
【国際公開番号】WO2011/061401
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(591159044)コネ コーポレイション (75)
【氏名又は名称原語表記】KONE CORPORATION
【Fターム(参考)】