説明

エレベータの乗場機器の取付装置

【課題】乗場機器が取り付けられて壁本体に支持される意匠部材と壁本体との間の隙間を簡単に再調整できるエレベータの乗場機器の取付装置を得ることを目的とする。
【解決手段】意匠パネル41Bが表面に装着されるエレベータの乗場40の壁本体41Aにディスプレイ30を取り付けるためのエレベータの乗場機器の取付装置1において、乗場40に開口するように壁本体41Aに形成された配設穴41a内に配設穴41aの奥行き方向に移動可能に挿入され、配設穴41aの奥行き方向に延在する長穴7a,7bが形成された機器位置調整体7と、機器位置調整体7を、長穴7a,7bを介して壁本体に固定/固定解除自在に固定するビス10と、ディスプレイ30が取り付けられ、機器位置調整体7の配設穴41aの開口側に着脱自在に装着される意匠プレート11と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、広告などを表示する液晶モニタなどのエレベータの乗場機器を乗場の壁本体に取り付けるのに好適なエレベータの乗場機器の取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータシステムは、エレベータの乗場の壁に設置され、広告などを表示するディスプレイを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には詳細に記載されていないが、この種のディスプレイは、映像を表示する液晶パネルなどの表示部、及び表示部の表示画面が、前面に露出されるようにして表示部を収納する外装ケースを備える。
【0004】
ここで、乗場の壁は、建物の躯体を構成する壁本体、及び壁本体の表面を覆うように壁本体に装着されるタイルや意匠パネルなどの仕上げ部材により構成される。
そして、意匠性の観点から、ディスプレイは、壁本体の厚み方向に奥行き方向を一致させ、乗場に向けて開口するように壁本体に形成した配設穴を利用して、外装ケースが乗場に露出されないように以下のように壁本体に取り付けられることが多い。
【0005】
ディスプレイは、枠内に表示窓が構成される平板状の枠体に作製され、表(おもて)面が意匠面を構成する意匠プレートの裏面に取り付けられる。このとき、表示画面が表示窓に露出されるようにディスプレイが意匠プレートに取り付けられ、意匠プレートの外縁部は、外装ケースの外側に配置されている。さらに、ディスプレイは、外装ケースの背面側を配設穴に挿入固定されて、壁本体に取り付けられる。このとき、意匠プレートは、外縁部が壁本体の表面と相対する方向から見て、配設穴を囲繞する大きさとなっており、ディスプレイは、乗場に露出されることなく壁本体に取り付けられる。
【0006】
エレベータシステムを構築する際、乗場の意匠に関わる仕上げ部材は、傷などをおわせないように最後に壁本体の表面に装着される。
ここで、仮に、意匠プレートの裏面の外縁部側を壁本体の表面に当接させてディスプレイを設置した場合、仕上げ部材は、意匠プレートの外縁部を囲繞するように、壁本体の表面に取り付けることになる。このため、外装ケースは隠されるものの、意匠プレートと仕上げ部材の間の境界が目立って意匠性が損なわれる。
【0007】
そこで、仕上げ部材は、ディスプレイを、意匠プレートと壁本体の表面との間に、仕上げ部材の厚みに対応する隙間を開けて設置した後、意匠プレートと壁本体の表面との間に形成される隙間に入りこむように壁本体に取り付けられるのが一般的である。
例えば、ディスプレイは、予め、一端を配設穴内にビスなどで固定されて、外装ケースと配設穴の隙間を通るように配設穴の開口側に延在し、他端側が配設穴の開口から仕上げ部材の厚みだけ延出される複数の取付金具に取り付けられる。例えば、意匠プレートの裏面を取付金具の他端面に当接させ、意匠プレート及び意匠プレートに当接される取付金具の部位に予め形成しておいた下穴に、タッピングねじをねじこむことにより、ディスプレイが壁本体に取付金具を介して固定される。
【0008】
そして、仕上げ部材を、意匠プレートと壁本体の表面との間に形成される隙間に入りこむように壁本体に装着することで、意匠性を損なうことなく、ディスプレイ及び仕上げ部材を壁本体に装着することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−232528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のエレベータシステムにおいて、ディスプレイの設置後に、例えば、設計変更により壁本体への装着を予定していた仕上げ部材を、厚みの異なる他の仕上げ部材に変える場合、意匠プレートと壁本体の表面との間の隙間を変更しなければならい。つまり、仕上げ部材の厚みに対応させて、取付金具の配設穴からの延出量を変えなければならない。取付金具の配設穴からの延出量を変えるには、新たに配設穴の適当な位置にねじ孔を形成して、取付金具の固定位置を変更する必要がある。このように、意匠プレートと壁本体との間の隙間を変更するには、多大の労力を費やさなければならない。
【0011】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、乗場機器が取り付けられて壁本体に支持される意匠部材と壁本体との間の隙間を簡単に再調整できるエレベータの乗場機器の取付装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、仕上げ部材が表面に装着されるエレベータの乗場の壁本体に乗場機器を取り付けるためのエレベータの乗場機器の取付装置であって、乗場に開口するように壁本体に形成された配設穴内に配設穴の奥行き方向に移動可能に挿入され、配設穴の奥行き方向に延在する長穴が形成された機器位置調整体と、機器位置調整体を、長穴を介して壁本体に固定/固定解除自在に固定する締結部材と、乗場機器が取り付けられ、機器位置調整体の配設穴の開口側に着脱自在に装着される意匠部材と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るエレベータの乗場機器の取付装置によれば、意匠部材が固定される機器位置調整体が、締結部材を緩めたときに、配設穴の奥行き方向に移動可能となる。このため、乗場機器が装着される意匠部材と壁本体の表面との間の隙間は、締結部材を緩め、機器位置調整体を配設穴の奥行き方向に移動させるという簡単な作業を行うだけで調整できる。従って、乗場機器を設置した後に、例えば、設計変更により壁本体への装着を予定していた仕上げ部材を、厚みの異なる他の仕上げ部材に変えるのに伴って発生する意匠部材と壁本体の表面との間の隙間の再調整作業の労力を著しく軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場機器の取付装置の分解斜視図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場機器の取付装置において、被嵌合部材が取り付けられた意匠プレートを意匠プレートの裏面側から見た斜視図である。
【図3】図2のA方向から要部上面図である。
【図4】この発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場機器の取付装置を用いてディスプレイを乗場の壁本体に装着したエレベータの乗場まわりの正面図である。
【図5】図4のV−V矢視断面図である。
【図6】図5のVI−VI矢視断面図である。
【図7】図4において、ディスプレイを意匠プレートの表面側から見た斜視図である。
【図8】図4において、ディスプレイを意匠プレートの裏面側から見た要部斜視図である。
【図9】この発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場機器の取付装置を用いてディスプレイを乗場の壁本体に装着する作業を説明する図であり、固定ボックスが配設穴に装着された状態を示している。
【図10】この発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場機器の取付装置を用いてディスプレイを乗場の壁本体に装着する作業を説明する図であり、固定ボックスのガイド筒部に機器位置調整体が挿入された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1はこの発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場機器の取付装置の分解斜視図、図2はこの発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場機器の取付装置において、被嵌合部材が取り付けられた意匠プレートを意匠プレートの裏面側から見た斜視図、図3は図2のA方向から見た要部上面図である。
【0017】
図1〜図3において、エレベータの乗場機器の取付装置1は、後述するエレベータの乗場の壁本体に形成した配設穴を利用して、乗場機器としてのディスプレイ(図示せず)を壁本体に固定支持するものであり、固定ボックス2と、固定ボックス2を壁本体に固定するビス5と、固定ボックス2に嵌められる機器位置調整体7と、機器位置調整体7を配設穴の内壁に固定/固定解除自在に固定する締結部材としてのビス10と、ディスプレイが装着される意匠部材としての意匠プレート11と、ディスプレイを意匠プレート11の裏面に固定するディスプレイ固定金具13と、意匠プレート11を機器位置調整体7に着脱自在に固定するプレート固定金具16と、を備えている。
【0018】
固定ボックス2は、所定の幅及び高さの矩形形状を外形形状とし、所定の長さを有する筒体に作製されたガイド手段としてのガイド筒部3、ガイド筒部3の一端の高さ方向両側の縁部から互いに相反する方向に所定の長さだけ延出される矩形形状のツバ部4と、を備えている。ガイド筒部3の内形は、機器位置調整体7の外形より僅かに大きくなっている。また、ツバ部4のそれぞれの角部近傍には、取付穴4aが形成されている。
【0019】
ガイド筒部3の幅方向の両側の壁部には、幅方向に相対する2対の壁露出穴3a,3bが高さ方向に位置をずらして形成されている。壁露出穴3a,3bは、長軸方向がガイド筒部3の長さ方向に一致する長穴である。
【0020】
このとき、2対の壁露出穴3a,3bのうちの1対の壁露出穴3aが、ガイド筒部3の高さ方向の一方の内壁面から所定の第1高さの位置に形成され、もう一対の壁露出穴3bが、ガイド筒部3の高さ方向の一方の内壁面から所定の第2高さの位置に形成されている。
【0021】
機器位置調整体7は、所定の幅及び高さの矩形形状を外形形状とし、所定の長さを有する筒体に作製されている。機器位置調整体7の幅方向の両壁には、長軸方向が長さ方向に一致し、幅方向に相対する2対の長穴7a,7bが形成されている。2対の長穴7a,7bのうちの1対の長穴7aが、機器位置調整体7の高さ方向の一方の外壁面から所定の第1高さの位置に形成され、もう一対の長穴7bが、機器位置調整体7の高さ方向の一方の外壁面から所定の第2高さの位置に形成されている。これにより、機器位置調整体7の高さ方向の一方の外壁面が、ガイド筒部3の高さ方向の一方の内壁面に載置されるように、機器位置調整体7をガイド筒部3に嵌めたときに、壁露出穴3a,3bのガイド筒部3の機器位置調整体7の載置面からの高さ位置が、長穴7a,7bのガイド筒部3の機器位置調整体7の載置面からの高さ位置に一致する。
【0022】
意匠プレート11は、所定の幅及び高さの外形形状を有する平板状の枠体に構成され、表示窓11aが枠内に構成されている。
【0023】
プレート固定金具16は、機器位置調整体7の高さ方向の両内壁面の幅方向の中央部かつ長さ方向の一端近傍の部位に、互いに先端が相対するように突設された棒状の嵌合部材17と、意匠プレート11の裏面の幅方向の中央部、かつ高さ方向の両端近傍の部位に突設され、嵌合部材17に嵌合される被嵌合部材18と、を備えている。
【0024】
嵌合部材17は、断面円形に作製されている。
被嵌合部材18は、長尺のばね鋼を材料としてU字状に作製され、U字の側片を構成する部位が、一対の挟持部18A,18Bにより構成されている。
一対の挟持部18A,18Bは、図3に示されるように、先端側の所定領域、及び中間部の所定領域を除き、互いの間に略隙間をあけることなく延在されている。
【0025】
一対の挟持部18A,18Bの先端側は、先端に向かって漸次互いの間の隙間が広くなる口開き形状に構成されている。また、一対の挟持部18A,18Bの中間部の所定の領域は、互いに相対する面が凹面となるように湾曲された湾曲部18a,18bを構成している。嵌合部材17が湾曲部18a,18bの間に挿入されるように一対の挟持部18A,18Bを弾性変形させた場合には、湾曲部18a,18bが、嵌合部材17を大きな力で挟持するようになっている。
【0026】
そして、被嵌合部材18は、一対の挟持部18A,18Bが、意匠プレート11の幅方向に配列されるように、一対の挟持部18A,18Bの連結部側を意匠プレート11の裏面に取り付けられている。
【0027】
ディスプレイ固定金具13は、相対する一対の側片14A,14B、及び側片14A,14B間を連結する底部14Cを有するコ字状の支持部14と、一対の側片14A,14Bの端部から互いに先端が離間する方向に側片14A,14Bに垂直に延出されるフランジ部15と、を備える。
【0028】
次いで、ディスプレイ及び意匠パネルの壁本体への取付構造について説明する。
図4はこの発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場機器の取付装置を用いてディスプレイを乗場の壁本体に装着したエレベータの乗場まわりの正面図、図5は図4のV−V矢視断面図、図6は図5のVI−VI矢視断面図である。図7は図4において、ディスプレイを意匠プレートの表面側から見た斜視図、図8は図4において、ディスプレイを意匠プレートの裏面側から見た要部斜視図である。なお、図7及び図8は、意匠プレート、ディスプレイ、及びディスプレイ固定金具に特化して図示している。
【0029】
図4及び図5において、エレベータの乗場40の壁41には乗場出入り口45を構成する三方枠46が据え付けられている。また、詳細は後述の表示部30Aを有するディスプレイ30が、三方枠4の一方の縦枠に隣接する壁41の乗場40側に乗場機器の取付装置1を用いて壁41に取り付けられている。このとき、表示部30Aの表示画面が、乗場40に露出されるように、ディスプレイ30は壁41に取り付けられている。
【0030】
壁41は、建物の躯体を構成する壁本体41A、及び壁本体41Aの表面を覆うように壁本体41Aに装着される仕上げ部材としての意匠パネル41Bにより構成される。
そして、図5に示されるように、水平方向に所定の幅で所定の高さを有する断面矩形の配設穴41aが、壁本体41Aの厚さ方向に奥行き方向を一致させて、三方枠46の一方の縦枠近傍の壁本体41Aの部位の表面に開口するように設けられている。また、配設穴41aの高さ方向の両側の開口縁部の全域から高さ方向に互いに相反する方向に延在する一対の取付凹部41bが、ツバ部4の厚さに対応する深さで壁本体41Aの表面に形成されている。取付凹部41bの延在方向の長さは、ツバ部4のガイド筒部3からの延出長さより長くなっている。また、引き込み穴47が、配設穴41aと壁本体41Aの裏側に構成されている昇降路48とを連通するように設けられている。
【0031】
固定ボックス2のガイド筒部3が、長さ方向の一端を乗場40側に向け、幅方向及び高さ方向を、配設穴41aの幅方向及び高さ方向に一致させて配設穴41aに嵌められている。そして、固定ボックス2は、ツバ部4が取付凹部41bの表面に当接するまで、配設穴41aの奥行き方向に押し込まれている。
そして、ビス5が、取付穴4aに挿通されて壁本体41Aに螺着されて、ツバ部4が壁本体41Aに強固に固定される。これにより、ガイド筒部3が奥行き方向に延在するように配設穴41a内に配設された状態で、固定ボックス2が壁本体41Aに支持される。
【0032】
また、意匠パネル41Bが、配設穴41aを除いた壁本体41A及びツバ部4の表面全域に装着されている。
【0033】
また、機器位置調整体7が、幅方向及び高さ方向をガイド筒部3の幅方向及び高さ方向に一致させ、ガイド筒部3の高さ方向の一方の内壁面に載置されるようにガイド筒部3に嵌められている。このとき、機器位置調整体7に形成された長穴7a,7bは、ガイド筒部3に形成された壁露出穴3a,3bと相対する位置に配置されている。
【0034】
そして、図6に示されるように、機器位置調整体7に取り付けられた嵌合部材17が、意匠プレート11に取り付けられた被嵌合部材18の湾曲部18a,18bの間に嵌められて、意匠プレート11が、配設穴41aの開口側で、機器位置調整体7に着脱自在に固定されて、配設穴41aを塞口している。これにより、意匠プレート11は、壁本体41Aの表面と相対する方向から見て、外縁部側の部位が配設穴41aを囲繞するように配置されている。そして、意匠プレート11の外縁部側の部位が、意匠パネル41Bとの間に略隙間なく配置されるように、機器位置調整体7のガイド筒部3の長さ方向の配置位置、言い換えれば、配設穴41aの奥行き方向の配置位置が設定されている。
【0035】
また、長穴7a,7bの長軸方向のおおよその中間部と相対する配設穴41aの壁面には、ねじ孔(図示せず)が形成されている。そして、ビス10が長穴7a,7bと壁露出穴3a,3bに挿通されてねじ孔に螺合され、機器位置調整体7が配設穴41aに固定されている。
【0036】
また、ディスプレイ30が、ディスプレイ固定金具13を用いて意匠プレート11の裏面に取り付けられている。
図7及び図8において、ディスプレイ30は、液晶パネルなどの表示部30A、及び表示部30Aの表示画面が前面に露出されるように表示部30Aを収納する外装ケース30Bを備える。外装ケース30Bは、所定の幅及び高さで所定の長さを有する箱体に形成され、前面に表示部30Aの表示画面を露出させる開口部が形成されている。なお、ディスプレイ固定金具13の一対の側片14A,14Bの壁面間の距離が、外装ケース30Bの高さに対応し、側片14A,14Bの底部14Cからの延出長さが、外装ケース30Bの長さに対応している。
【0037】
そして、ディスプレイ30は、表示部30Aの表示画面が表示窓11aに露出されるように意匠プレート11の裏面に配置されている。ディスプレイ固定金具13は、支持部14と意匠プレート11との間に外装ケース30Bが挟まれるように、フランジ部15を意匠プレート11の裏面に当接させて配置される。そして、詳細には説明しないが、ビスが、フランジ部15に挿通されて意匠プレート11に螺合され、ディスプレイ30は、ディスプレイ固定金具13によって意匠プレート11に固定されている。
【0038】
また、ディスプレイ30に電源を供給する電源線や表示画面に表示させる画像信号を送信する通信線などの各種配線50が、引き込み穴47を介して機器位置調整体7内に引き込まれてディスプレイ30に接続されている。
以上のように、ディスプレイ30及び意匠パネル41Bが、壁本体41Aに装着されている。
【0039】
次いで、ディスプレイ30及び意匠パネル41Bの壁本体41Aへの取付方法について説明する。
図9はこの発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場機器の取付装置を用いてディスプレイを乗場の壁本体に装着する作業を説明する図であり、固定ボックスが配設穴に装着された状態を示している。図10はこの発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場機器の取付装置を用いてディスプレイを乗場の壁本体に装着する作業を説明する図であり、固定ボックスのガイド筒部に機器位置調整体が挿入された状態を示している。
【0040】
作業者は、まず、図8に示されるように、ディスプレイ30を、表示部30Aの表示画面が表示窓11aに露出されるように意匠プレート11の裏面に配置する。次いで、作業者は、支持部14と意匠プレート11との間に外装ケース30Bが挟まれ、フランジ部15が意匠プレート11の裏面に当接させるようにディスプレイ固定金具13を配置する。そして、フランジ部15を意匠プレート11に図示しないビスを用いて固定し、ディスプレイ30を意匠プレート11に固定する。
【0041】
次いで、作業者は、図9に示されるように、ガイド筒部3を長さ方向の他端側から配設穴41aに挿入し、ツバ部4を取付凹部41bの表面に押し当て取付穴4aと相対する壁本体41Aの部位にねじ孔(図示せず)を形成する。さらに、作業者は、ビス5をねじ孔に螺合し、固定ボックス2を壁本体41Aに固定する。これにより、ガイド筒部3が配設穴41aの奥行き方向に延在した状態で、壁本体41Aに支持される。
【0042】
次いで、作業者は、図10に示されるように、機器位置調整体7の幅方向及び高さ方向をガイド筒部3の幅方向及び高さ方向に一致させて、機器位置調整体7を長さ方向の他端からガイド筒部3に挿入し、ガイド筒部3への挿入部が、ガイド筒部3の高さ方向の下側の内壁面上に載置されるように固定ボックス2を配置する。さらに、作業者は、配設穴41aの奥に向かって押し込む。
ここで、機器位置調整体7の幅方向両側の外壁面の間の距離が、ガイド筒部3の幅方向両側の外壁面の間の距離より僅かに大きく、ガイド筒部3は、配設穴41aの奥行き方向に延在している。これにより、機器位置調整体7のガイド筒部3への挿入部は、下方及び幅方向への移動を規制され、機器位置調整体7は、ガイド筒部3にガイドされて配設穴41aの奥行き方向に移動される。
【0043】
また、壁露出穴3a,3bのそれぞれのガイド筒部3の機器位置調整体7の載置面からの高さ位置が、長穴7a,7bのそれぞれのガイド筒部3の機器位置調整体7の載置面からの高さ位置に一致するので、長穴7a,7bは、壁露出穴3a,3bを介して壁本体41Aと相対する。
【0044】
そして、作業者は、機器位置調整体7の配設穴41aの奥行き方向の位置を、機器位置調整体7に取り付けられた嵌合部材17と、意匠プレート11に取り付けられた被嵌合部材18とを嵌合させたときに、意匠プレート11の外縁部側の部位と壁本体41Aの表面との間に、意匠プレート11の厚みに対応する隙間が形成されるように設定する。
【0045】
次いで、長穴7a,7bの長軸方向のおおよその中間部と壁露出穴3a,3bを介して相対する配設穴41aの壁面に、ねじ孔41cを形成する。作業者は、図5に示されるように、ビス10を長穴7a,7bと壁露出穴3a,3bに挿通させてねじ孔41cに螺合し、機器位置調整体7を配設穴41aに固定する。
なお、ビス10を緩めることで、機器位置調整体7は配設穴41aに対する固定が解除され、機器位置調整体7は、長穴7a,7bの長さ方向、言い換えれば、配設穴41aの奥行き方向に移動自在となり、配設穴41aの奥行き方向の位置を調整可能となる。
【0046】
次いで、各種配線50を、引き込み穴47を介して機器位置調整体7内に引き込み、ディスプレイ30に接続しておく。
【0047】
次いで、意匠プレート11に取り付けられた被嵌合部材18が、機器位置調整体7に取り付けられた嵌合部材17と相対するように意匠プレート11の裏面を配設穴41aに相対させる。さらに、ディスプレイ30が機器位置調整体7の一端側に挿入されるように、また、嵌合部材17が口開き状に形成された挟持部18A,18Bの先端間に挿入されるように意匠プレート11を押し込む。意匠プレート11が所定量押し込まれたところで、嵌合部材17が挟持部18A,18Bの湾曲部18a,18bの間に嵌められ、意匠プレート11が機器位置調整体7に固定される。以上により、ディスプレイ30の壁本体41Aへの取り付けが終了する。
【0048】
なお、意匠プレート11を所定以上の力で乗場40側に引っ張ると、被嵌合部材18と嵌合部材17の間の嵌合が解除され、ディスプレイ30を壁本体41Aから引き出せる。
【0049】
次いで、作業者は、図5に示されるように、意匠パネル41Bを壁本体41Aの表面に装着する。このとき、意匠パネル41Bが、意匠プレート11と壁本体41Aの隙間にも入り込むように、壁本体41Aの表面に装着して作業を終了する。
【0050】
この発明のエレベータの乗場機器の取付装置1は、ガイド筒部3が、配設穴41a内に奥行き方向に延在するように配設されている。そして、機器位置調整体7が、ガイド筒部3にガイドされて奥行き方向に移動するようにガイド筒部3に嵌められている。また、機器位置調整体7には、配設穴41aの奥行き方向に延在する長穴7a,7bが形成され、壁露出穴3a,3bが、長穴7a,7bと長穴7a,7bと相対する配設穴41aの壁面との間に位置するガイド筒部3の所定部位に形成されている。
【0051】
さらに、ビス10が、長穴7a,7b、及び壁露出穴3a,3bを介して壁本体41Aに螺着され、機器位置調整体7が壁本体41Aに固定されている。なお、ビス10を緩めることで、機器位置調整体7の壁本体41Aへの固定が解除される。また、ディスプレイ30が裏面に取り付けられた意匠プレート11が、配設穴41aの開口側で、機器位置調整体7に着脱自在に取り付けられている。
【0052】
意匠プレート11が固定される機器位置調整体7は、ビス10を緩めたときに配設穴41aの奥行き方向に移動可能であるので、意匠プレート11と壁本体41Aとの間の隙間は、ビス10を緩め、機器位置調整体7を配設穴41aの奥行き方向に移動させることで、簡単に調整できる。従って、ディスプレイ30を設置した後に、設計変更により壁本体41Aへの装着を予定していた意匠パネル41Bを、厚みの異なる他の意匠パネルに変える必要が生じた場合でも、意匠プレート11と壁本体41Aの表面との間の隙間を調整するときの労力を著しく軽減できる。
【0053】
また、機器位置調整体7をガイドするガイド筒部3が、壁本体41Aに設けられているので、機器位置調整体7を、所望の姿勢から傾けることなく配設穴41aの奥行き方向に移動させることができる。ここで、壁本体41Aに配設穴41aを、平坦に精度よく形成することは難しく、配設穴41aに直接機器位置調整体7を挿入したときに、機器位置調整体7が、所望の姿勢から傾いてしまうことがある。このまま、ビス10で機器位置調整体7を固定すると、意匠プレート11が、壁本体41Aの表面に対して平行でなくなるので、機器位置調整体7の傾き調整を行う必要があるが、ガイド筒部3を配設穴41aに設ければ、このような調整作業が必要なくなる。
【0054】
なお、この実施の形態では、機器位置調整体7が嵌められるガイド筒部3を有する固定ボックス2を壁本体41Aに設けるものとして説明したが、固定ボックス2を省略し、機器位置調整体7を配設穴41aに直接挿入して配置してもよい。
【0055】
また、意匠部材は、平板状の枠体に構成された意匠プレート11であるものとして説明したが、意匠部材の形状は、取り付けられる乗場機器の形状に応じて、適宜設定したものを用いればよい。
【0056】
また、ディスプレイ30を意匠プレート11の裏面に取り付けるものとして説明したが、ディスプレイ30の外装ケースが意匠性を有するものであれば、ディスプレイ30を意匠プレートの表面に取り付けてもよい。この場合、意匠プレートは、矩形平板状に形成し、外装ケース30Bの背面を意匠プレートの表面に当接させて配置したディスプレイ30に対し、意匠プレートに裏面側から挿通させた複数のネジを、ディスプレイ30の外装ケース30Bに螺着するなどして、意匠プレート11に固定すればよい。
【0057】
また、機器位置調整体7は、外形形状が矩形形状の筒状に作製されるものとして説明したが、このものに限定されない。機器位置調整体は、乗場40に開口するように壁本体41Aに形成された配設穴41a内に配設穴41aの奥行き方向に移動できるように挿入可能な形状であり、配設穴41aに挿入配置された状態で、配設穴41aの奥行き方向に延在するように長穴7a,7bが形成されていれば、特に形状は問わない。
【0058】
また、ガイド手段は、外形形状を矩形形状とするガイド筒部3であるものとして説明したが、このものに限定されず、例えば、断面L字状をなす一対のガイド部材により構成してもよい。この場合、一対のガイド部材は、長手方向を配設穴の奥行き方向に一致させ、一対のガイド部材の一片の先端が相対するように、他片を配設穴41aの幅方向の両側の壁面に固定すればよい。これにより、一対のガイド部材の一片上に載置した機器位置調整体7は、配設穴41aの奥行き方向にガイド手段によりガイドされて移動可能になる。
【0059】
また、乗場機器の取付装置1は、ディスプレイ30を壁本体41Aに取り付けるものとして説明したが、乗場機器としてのホールランタンなどを壁本体41Aに取り付ける場合などにも適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 乗場機器の取付装置、3 ガイド筒部(ガイド手段)、7 機器位置調整体、7a,7b 長穴、10 ビス(締結部材)、11 意匠プレート(意匠部材)、30 ディスプレイ(乗場機器)、40 乗場、41A 壁本体、41B 意匠パネル(仕上げ部材)、41a 配設穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕上げ部材が表面に装着されるエレベータの乗場の壁本体に乗場機器を取り付けるためのエレベータの乗場機器の取付装置であって、
上記乗場に開口するように上記壁本体に形成された配設穴内に上記配設穴の奥行き方向に移動可能に挿入され、上記配設穴の奥行き方向に延在する長穴が形成された機器位置調整体と、
上記機器位置調整体を、長穴を介して上記壁本体に固定/固定解除自在に固定する締結部材と、
上記乗場機器が取り付けられ、上記機器位置調整体の上記配設穴の開口側に着脱自在に装着される意匠部材と、
を備えることを特徴とするエレベータの乗場機器の取付装置。
【請求項2】
上記配設穴内に奥行き方向に延在するように配設され、上記機器位置調整体の上記配設穴の奥行き方向の移動をガイドするガイド手段を備えることを特徴とする請求項1記載のエレベータの乗場機器の取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−190092(P2011−190092A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59671(P2010−59671)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】