説明

エレベータの表示装置

【課題】聴覚信号装置を内蔵した場合においても、意匠性や据付性を損なうことなく、聴覚信号装置が発した音を聞き取りやすくすることができるエレベータの表示装置を提供する。
【解決手段】エレベータの取付壁に設けられたボックス9と、ボックスの前面に設けられ、ボックス内外に貫通する貫通部を有するとともに、ボックスの前面側に意匠面を配置するフェースプレート7と、ボックス内に内蔵され、エレベータに関する音を発する聴覚信号装置13と、ボックス内側からフェースプレートの貫通部に嵌め込まれ、鍔部がフェースプレートの貫通部近傍に引っ掛かり、フェースプレートの前面側にエレベータの情報を表示する表示部8とを備え、表示部は、フェースプレート側に開口して鍔部外縁部から外周面まで延びた放音溝15が形成され、外周面と貫通部との間に隙間を空けて嵌め込まれ、エレベータに関する音を伝達するための経路を、放音溝と隙間とで確保した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、聴覚信号装置を内蔵したエレベータの表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの乗場においては、利用者にエレベータの位置階床や運行方向や到着等の情報を知らせる表示装置として、乗場位置表示器やホールランタン等の視覚信号装置が用いられている。この視覚信号装置は、主に乗場ドア上方付近の壁体に設けられる。また、チャイムや音声案内等を発する聴覚信号装置も用いられている。聴覚信号装置は、昇降路内のドア付近に設置されたり、視覚信号装置に内蔵されたりする。
【0003】
ここで、聴覚信号装置に関し、乗場にいる利用者に音を聞き取りやすくするために、乗場ドア、壁体、乗場器具等に放音穴を空けたものが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
しかし、特許文献1及び2に記載されたものにおいては、放音穴が乗場からよく見え、意匠的に好ましくないという問題があった。
【0005】
そこで、視覚信号装置に聴覚信号装置を内蔵し、放音穴をあける代わりに、微細穴が形成された部材を表示部に用いるものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。さらに、聴覚信号装置を内蔵した視覚信号装置の背面に放音穴を空けることにより、意匠性を保ち、スペーサを利用して壁から上記装置を浮かせて取り付け、音を背面より放出するものが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−193881号公報
【特許文献2】特開平10−305972号公報
【特許文献3】特開2009−184803号公報
【特許文献4】特開2008−201489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3に記載のものは、表示部に特殊な部材を用いる。このため、コストアップに繋がる可能性があるという問題があった。また、表示部に微細穴が空いている。このため、少なからず、従来の表示部よりも意匠性が悪くなるという問題があった。
【0008】
また、特許文献4に記載のものは、スペーサを入れて壁体から浮かせて取り付けられる。このため、通常と取付方法が異なり、据付性が悪くなるという問題があった。また、壁体付近から器具を眺めると、放音穴の空いた装置の背面が見えてしまい意匠性に影響が出てくるという問題があった。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、聴覚信号装置を内蔵した場合においても、意匠性や据付性を損なうことなく、聴覚信号装置が発した音を聞き取りやすくすることができるエレベータの表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るエレベータの表示装置は、エレベータの取付壁に設けられたボックスと、前記ボックスの前面に設けられ、前記ボックス内外に貫通する貫通部を有するとともに、前記ボックスの前面側に意匠面を配置するフェースプレートと、前記ボックス内に内蔵され、前記エレベータに関する音を発する聴覚信号装置と、前記ボックス内側から前記フェースプレートの貫通部に嵌め込まれ、外周面に設けられた鍔部が前記ボックス内側から前記フェースプレートの貫通部近傍に引っ掛かって保持され、前記フェースプレートの前面側に前記エレベータに関する情報を表示する表示部と、を備え、前記表示部は、前記フェースプレート側に開口して前記鍔部の外縁部から前記外周面まで延びた放音溝が形成され、前記外周面と前記貫通部との間に隙間を空けて嵌め込まれ、前記エレベータに関する音を前記ボックス内から外へ伝達するための経路を、前記放音溝と前記隙間とで確保したものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、聴覚信号装置を内蔵した場合においても、意匠性や据付性を損なうことなく、聴覚信号装置が発した音を聞き取りやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータの表示装置が利用されるエレベータの乗場の正面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるエレベータの表示装置に利用される表示部の正面図である。
【図5】この発明の実施の形態1におけるエレベータの表示装置に利用される表示部を下方からみた平面図である。
【図6】図4のB−B線における断面図である。
【図7】図3の要部拡大図である。
【図8】この発明の実施の形態2におけるエレベータの表示装置の正面図である。
【図9】この発明の実施の形態3におけるエレベータの表示装置の正面図である。
【図10】この発明の実施の形態4におけるエレベータの表示装置が利用されるかご内の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの表示装置が利用されるエレベータの乗場の正面図である。
図1には、一般的なエレベータの乗場が示される。図1において、1は乗場壁体である。この乗場壁体1は、エレベータが設置された建築物の壁体からなる。この乗場壁体1には、乗場の出入口(図示せず)が設けられる。この出入口には、三方枠2が設けられる。また、乗場出入口には、乗場ドア3が設けられる。
【0015】
さらに、乗場出入口の一側の乗場壁体1には、乗場呼び装置4が埋設される。この乗場呼び装置4には、操作部5が設けられる。また、この乗場呼び装置4の上方では、乗場壁体1に、視覚信号装置A6が埋設される。即ち、乗場壁体1は、エレベータの機器を取り付ける取付壁として利用される。
【0016】
図2は図1の要部拡大図である。
図2に示すように、視覚信号装置A6の前面には、フェースプレート7が設けられる。このフェースプレート7は、ステンレス等の金属からなる。このフェースプレート7は、前面に意匠面を配置する。また、フェースプレート7は、前後に貫通する一対の貫通部を備える。これらの貫通部には、表示部8が嵌め込まれる。これらの表示部8は、透明や乳白色の樹脂(アクリル等)やガラス等の透過性材料からなる。
【0017】
図3は図2のA−A線における断面図である。
図3において、9はボックスである。このボックス9は、フェースプレート7の裏面側で乗場壁体1に埋設される。このボックス9は、鉄板又は樹脂等で箱形形状に形成される。このボックス9は、視覚信号装置A6に必要な基板、配線等を収納するものである。10は取付板金である。この取付板金10は、ボックス9に内蔵される。この取付板金10は、上下の表示部8に対応して、区切り板により上下に区切られる。
【0018】
11は表示体である。この表示体11は、取付板金10の上下に分かれて、取付板金10の内側面に取り付けられる。取付板金10は、遮光機能を備える。12は配線である。この配線12は、表示体11を外部機器と接続する機能を備える。13は聴覚信号装置である。この聴覚信号装置13は、取付板金10の区切り板の下面に取り付けられる。
【0019】
かかる構成のエレベータの視覚信号装置A6においては、エレベータを制御する制御装置(図示せず)の指令に従って、表示部8がエレベータに関する情報を表示する。具体的には、表示体11が点灯し、エレベータの到着及び運転方向を乗場にいる利用者に報知する。また、聴覚信号装置13は、制御装置の指令に従って、エレベータに関する音を発する。具体的には、聴覚信号装置13は、到着音や音声案内等の音声信号を発し、各種情報を乗場にいる利用者に報知する。
【0020】
しかし、聴覚信号装置13は、視覚信号装置A6に内蔵されている。このため、なんらの工夫がなければ、聴覚信号装置13が発した音が乗場に伝わりにくい。そこで、本実施の形態においては、聴覚信号装置13が発した音が乗場に伝わりやすくなる構成とした。以下、本実施の形態における視覚信号装置A6を詳細に説明する。
【0021】
図4はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの表示装置に利用される表示部の正面図である。図5はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの表示装置に利用される表示部を下方からみた平面図である。図6は図4のB−B線における断面図である。
【0022】
図4乃至図6において、14は鍔部である。この鍔部14は、表示部8の後ろ側の外周面全体を囲むように設けられる。この鍔部14は、表示8をフェースプレート7の貫通部に嵌め込む際に、ボックス9の内側からフェースプレート7の貫通部近傍に引っ掛かるように形成される。これにより、表示部8は、フェースプレート7に保持されるようになっている。15は複数の放音溝である。これらの放音溝15は、表示部8の前側へ開口して、鍔部14の外縁部から本体部の外周面まで延びるように形成される。
【0023】
次に、図7を用いて、聴覚信号装置13が発した音の乗場への伝達方法について説明する。
図7は図3の要部拡大図である。
図7に示すように、表示部8は、嵌め合いの余裕を見て、フェースプレート7の貫通部との間に全周数ミリの隙間16を空けて取り付けられる。
【0024】
このとき、表示部8の鍔部14前面は、フェースプレート7に接触するように取り付けられる。しかし、上述したように、表示部8の鍔部14には、放音溝15が形成されている。その結果、放音溝15と隙間16とによって、取付板金10内から外へ繋がる音声経路17が形成される。このため、取付板金10内の聴覚信号装置13に発せられた音声信号18は、乗場側まで伝達される。
【0025】
以上で説明した実施の形態1によれば、聴覚信号装置13の音声経路17は、放音溝15と隙間16とで確保される。即ち、従来の表示部8に簡単な放音溝15を形成するだけで、意匠面に穴を空けることなく、音声経路17を確保することができる。このため、聴覚信号装置13を内蔵した場合においても、意匠性や据付性を損なうことなく、聴覚信号装置13が発した音を聞き取りやすくすることができる。
【0026】
また、乗場や昇降路に聴覚信号装置13を別途設ける必要がなくなり、省スペース化を図ることができる。さらに、聴覚信号装置13が乗場に設置されることにより、他の階の利用者に音が漏れることを防止することができる。加えて、乗場ドア3やかごドア等との干渉もないため、音を聞きやすくすることができる。
【0027】
なお、聴覚信号装置13を乗場呼び装置4に内蔵し、従来の操作部5に対し、放音溝15と隙間16を設けることでも、意匠性や据付性を損なうことなく、聴覚信号装置13が発した音を聞き取りやすくすることができる。
【0028】
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2におけるエレベータの表示装置の正面図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
実施の形態1の視覚信号装置A6は、点灯することでエレベータの到着及び運転方向を表示するものであった。一方、実施の形態2の視覚信号装置B19は、図8に示すように、LEDやLCD等の縦長の表示体11を用いて、エレベータの位置階床及び運転方向を表示するものである。かかる表示体11が使用される場合であっても、表示部8の放音溝15と隙間16とで、聴覚信号装置13の音声経路17を確保することができる。
【0030】
以上で説明した実施の形態2によっても、実施の形態1と同様に、聴覚信号装置13を内蔵した場合において、意匠性や据付性を損なうことなく、聴覚信号装置13が発した音を聞き取りやすくすることができる。
【0031】
実施の形態3.
図9はこの発明の実施の形態3におけるエレベータの表示装置の正面図である。なお、実施の形態2と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
実施の形態2の視覚信号装置B19は、縦長の表示体11が使用されていた。一方、実施の形態3の視覚信号装置C20は、図9に示すように、横長の表示体11が使用されている。かかる表示体11が使用される場合であっても、表示部8の放音溝15と隙間16とで、聴覚信号装置13の音声経路17を確保することができる。
【0033】
以上で説明した実施の形態3によっても、実施の形態2と同様に、聴覚信号装置13を内蔵した場合において、意匠性や据付性を損なうことなく、聴覚信号装置13が発した音を聞き取りやすくすることができる。
【0034】
実施の形態4.
図10はこの発明の実施の形態4におけるエレベータの視覚信号装置が利用されるかご内の正面図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
実施の形態1においては、乗場の視覚信号装置A6に対し、表示部8の放音溝15と隙間16とで、聴覚信号装置13の音声経路17を確保する構成とした。一方、実施の形態4においては、図10に示すように、かご21の視覚信号装置D22に対し、表示部8の放音溝15と隙間16とで、聴覚信号装置13の音声経路17を確保する構成とした。なお、視覚信号装置D22は、かご壁に設けられ、かご21が通過している階床又は停止している階床と運転方向とを表示するものである。
【0036】
以上で説明した実施の形態4によっても、実施の形態1と同様に、従来の表示板等に聴覚信号装置13を内蔵した場合において、意匠性や据付性を損なうことなく、聴覚信号装置13が発した音を聞き取りやすくすることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 乗場壁体、 2 三方枠、 3 乗場ドア、 4 乗場呼び装置、 5 操作部、
6 視覚信号装置A、 7 フェースプレート、 8 表示部、 9 ボックス、
10 取付板金、 11 表示体、 12 配線、 13 聴覚信号装置、
14 鍔部、 15 放音溝、 16 隙間、 17 音声経路、 18 音声信号、
19 視覚信号装置B、 20 視覚信号装置C、 21 かご、
22 視覚信号装置D

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの取付壁に設けられたボックスと、
前記ボックスの前面に設けられ、前記ボックス内外に貫通する貫通部を有するとともに、前記ボックスの前面側に意匠面を配置するフェースプレートと、
前記ボックス内に内蔵され、前記エレベータに関する音を発する聴覚信号装置と、
前記ボックス内側から前記フェースプレートの貫通部に嵌め込まれ、外周面に設けられた鍔部が前記ボックス内側から前記フェースプレートの貫通部近傍に引っ掛かって保持され、前記フェースプレートの前面側に前記エレベータに関する情報を表示する表示部と、
を備え、
前記表示部は、前記フェースプレート側に開口して前記鍔部の外縁部から前記外周面まで延びた放音溝が形成され、前記外周面と前記貫通部との間に隙間を空けて嵌め込まれ、前記エレベータに関する音を前記ボックス内から外へ伝達するための経路を、前記放音溝と前記隙間とで確保したことを特徴とするエレベータの表示装置。
【請求項2】
前記ボックスは、前記エレベータの乗場壁に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータの表示装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記エレベータの乗場呼び装置の操作部からなることを特徴とする請求項2に記載のエレベータの表示装置。
【請求項4】
前記ボックスは、前記エレベータのかご壁に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータの表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−136839(P2011−136839A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245(P2010−245)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】