説明

エレベータの釣合おもり

【課題】巻上ロープや釣合ロープなどの保守作業時に、カバー部材や固定ねじを取外す必要がなく、従って作業時間の短縮が可能で、取外した部材を落下させる危惧もないエレベータの釣合おもりを提供する。
【解決手段】乗りかごに対して釣り合いを取るためのおもりと、このおもりを保持するフレーム部材に設けられたロープの張力調節部と、おもり及び張力調節部の外側を覆うように設けられ張力調節部に対応する部分に点検窓30aを有するカバー部材30と、このカバー部材に可動に保持され点検窓を開閉する可動扉34を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば展望用エレベータ等のシースルーエレベータなどに好ましく用いることができるエレベータの釣合おもりに関する。
【背景技術】
【0002】
展望用エレベータのように、釣合おもりが乗りかご内又は昇降路外より見えるエレベータは、幾層も重ねられたおもり及び巻上ロープや釣合ロープなどロープの保守作業部が美観を損なっている為、見栄え向上目的で釣合おもりにカバー部材を取付けることが多い。また、風音・風圧対策として釣合おもりにカバー部材を取付けることも有り得る。巻上ロープ及び釣合ロープなどのロープは端部にねじが螺刻されたシャックルロッドを介して釣合おもりと連結されている。ロープは経年的な伸びにより張力が緩む為、シャックルロッドのねじ側のナットにより所定の張力を与えるように定期的に調整する必要がある。また、複数のロープの間で長さに誤差があると各ロープの張力にアンバランスが生じる為、均一な張力となるようにナットで調整する必要がある。従来技術としてはカバー部材のロープヒッチ部分に四角穴を設けこれを覆うロープヒッチプレートを取付けたものがある(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−245127号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のカバー部材は、釣合おもり全体を覆う板材か、あるいは該板材のロープヒッチ部分にあけた四角穴を覆う小さなプレートをねじで固定した構造であり、巻上ロープ及び釣合ロープの保守作業時には、毎回カバー部材ないしは点検口を覆うプレートと、これを取付ける多数のねじを全て取外す必要があり、作業に手間を要していた。また、取外したカバー部材やプレート、固定ねじを落下させてしまう恐れもあった。
【0005】
この発明は上記のような従来技術の課題を解消するためになされたもので、巻上ロープや釣合ロープなどの保守作業時に、カバー部材や多数の固定ねじを取外す手間を省力化し、従って作業時間の短縮が可能で、取外した部材を落下させる危惧を軽減したエレベータの釣合おもりを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によるエレベータの釣合おもりは、乗りかごに対して釣り合いを取るためのおもりと、このおもりを保持するフレーム部材に設けられたロープの張力調節部と、上記おもり及び張力調節部の外側を覆うように設けられ上記張力調節部に対応する部分に点検窓を有するカバー部材と、このカバー部材に対して可動に保持され上記点検窓を開閉する可動扉を備えてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明においては、点検窓を有するカバー部材に可動に保持されて該点検窓を開閉する可動扉を設けたことにより、保守点検時には可動扉を開くだけでよく、カバー部材やカバープレートを取外す必要がなくなるため、保守時の省力ができ、またカバー部材や固定ねじなどの落下の恐れをなくし、あるいは軽減したエレベータの釣合おもりを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1〜図5は、この発明の実施の形態1によるエレベータの釣合おもりを説明するもので、図1は可動扉を閉じた状態を示す正面図、図2は可動扉を開けた状態を示す正面図、図3は図2のIII−III線における矢視断面図、図4はカバー部材を全て外した状態を参考のために示す正面図、図5は展望用エレベータの一例を模式的に示す構成図である。図に示すように、昇降路1内で乗りかご2と釣合おもり3がロープとしての巻上ロープ4により吊られ、場合により乗りかご2と釣合おもり3がロープとしての釣合ロープ5で繋がれている。昇降路1の例えば図の左側の壁1Aはガラス板やプラスチック板など透明材料を用いて形成されており、外側から乗りかご2や釣合おもり3などが見えるように構成されている。なお、エレベータの乗場は図示を省略している。
【0009】
釣合おもり3は、板状のカバー部材30を取付けない状態では図4に示すように、フレーム部材31に保持された乗りかご2と釣り合いをとるための複数のおもり32、複数の巻上ロープ4の端部にそれぞれ固定された複数のシャックルロッド6A、このシャックルロッド6A端部に螺刻されたねじに螺合する巻上ロープ4の張力を調整するための複数のナット7A、釣合ロープ5の端部に固定されたシャックルロッド6B、このシャックルロッド6B端部に螺刻されたねじに螺合する釣合ロープ5の張力を調整するための複数のナット7Bなどがむき出しとなっている。なお、33A、33Bは巻上ロープ4、釣合ロープ5などのロープの張力調節部である。また、9は釣合おもり3を図示省略しているおもり用ガイドレールに沿わせるための案内部材である。
【0010】
見栄えを良くするためのカバー部材30は、この例では3枚用いられ、張力調節部33A、33B部分を覆うカバー部材30には、該張力調節部33A、33Bに対応する位置に長方形の穴からなる点検窓30aが設けられており、何れもフレーム部材31に固定ねじ35を用いて固定されている。点検窓30aの背面部には図3に示すように断面鍵形の一対のガイド部材30bが固定され、これら一対のガイド部材30bに沿って上下方向にスライドし得るように可動に可動扉34が設けられている。なお、34aは可動扉34の下部に固着された取っ手、34bは可動扉34を上方にスライドさせて点検窓30aを開いた時に開状態を保持するためのピンからなる係止手段であり、点検窓30aを開いた時に、カバー部材30の点検窓30aの上部近傍に空けられた固定穴30cから、可動扉34とガイド部材30bを貫通するように設けられた図示を省略している貫通穴に挿通して可動扉34を固定できるように構成されている。
【0011】
次に上記のように構成された実施の形態1の動作について説明する。先ず、通常のエレベータの運行時は図1に示すように、釣合おもり3のカバー部材30に設けられた可動扉34は下端部まで下ろして点検窓30aが閉じられており、外側から中身が見えないので美観を損なうことはない。次に、保守作業時に巻上ロープ4、釣合ロープ5などの張力などを点検するときは、図2に示すように可動扉34を取っ手34aにより上にカバー部材30の面方向に沿ってスライドさせて点検窓30aを開き、係止手段34bを固定穴30cから図示省略している貫通穴に挿通させて可動扉34を全開位置で固定することにより、点検作業を行うことができる。
【0012】
上記のように実施の形態1によれば、カバー部材30の点検窓30aにスライド開閉機構による可動扉34を設けたので、保守作業時に固定ねじを外したり、カバーを外すといった手間を無くすことができ、従って外した部材を落下させたり紛失させる恐れも回避できる。また、非作業時は可動扉34を閉じて見栄え向上および風音・風圧対策等の目的を果たすことができる。可動扉34に設けた取っ手34aは、スライドを容易に行えるようにすると共に、点検窓30aの内側部から外側に突設されているので、開閉時に点検窓30aの上端縁部または下端縁部に衝突することにより可動扉34の開き過ぎ、あるいは落下による外れ防止機能も有する。
【0013】
なお、上記係止手段34bは必ずしもピンに限定されるものではなく、例えばガイド部材30bに設けた貫通穴をねじ穴で形成し、係止手段34bとしてねじ(ボルト)を用いて、カバー部材30の固定穴30cから、該ねじを挿通してガイド部材30bにねじ止めするようにしても良く、その場合には開状態にした可動扉34の落下による挟まれ事故を防止する効果が高められる。さらに係止手段34bはピンやねじ(ボルト)などの棒状のもの以外の手段で構成することも差し支えない。
【0014】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2によるエレベータの釣合おもりを示す正面図である。図に示すように、この実施の形態2では、可動扉34は、その一角部(この例では図の左上部)をカバー部材30における点検窓30aの図の左上部に突設された支軸36に軸支され、該支軸36のまわりに矢印Aのように回動することにより点検窓30aを開閉するように構成されており、図の上部巻上ロープ4側の可動扉34は点検窓30aを閉じた状態を示している。そして、可動扉34の1辺、上記軸支位置とは略対角位置にはU字状の係止凹部34cが設けられており、可動扉34を閉じたときに、該係止凹部34cによってカバー部材30の点検窓30aの右下部に突設されたストッパを兼ねる係止ボルト37に係止され、通常時にはカバー部材30と可動扉34を係止ボルト37で共締めしておくことで閉状態が保持され振動・風圧による開きを防止している。
【0015】
また、図の下部釣合ロープ5側の可動扉34は、係止ボルト37を緩め、可動扉34を矢印Aのように回動して点検窓30aを開けた状態を示し、適宜の係止手段(図示省略)により開状態を保持している。その他の構成は上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。なお、各図を通じて同一符号は同一もしくは相当部分を示すものとする。
【0016】
上記のように構成された実施の形態2においては、係止ボルト37を緩めるだけで、可動扉34を支軸36のまわりに回動させることができ、点検窓30aを開状態にして保守作業領域を確保することが可能となる。このため、保守作業時に固定ねじを外したり、カバーを外すといった手間を無くすことができ、従って外した部材を落下させたり紛失させる恐れも回避できる。
【0017】
実施の形態3.
図7及び図8は、この発明の実施の形態3によるエレベータの釣合おもりを説明するもので、図7は釣合おもりを示す正面図、図8は可動扉の開閉を検知する検知スイッチの動作を説明する図であり、図8(a)は閉状態、(b)は開状態を示す断面図である。図に示すように、この実施の形態3では、可動扉34をカバー部材30に対して蝶番38で回動可能に取付けることで開閉を可能としている。また、可動扉34には取っ手34aを設け開閉を容易に行えるようにし、振動・風圧による開き防止のため、通常運転時にはカバー部材30と可動扉34を固定ねじなどの係止手段39で固定できるようにしている。
【0018】
また、上記のような開き戸方式を用いた場合は、可動扉34を万一開いた状態でエレベータを稼動させると、可動扉34が乗りかご2等と接触し、破損させてしまう可能性があるため、この例では、点検窓30a近傍に閉め忘れ防止用の検知スイッチ8を設け、可動扉34が開いた状態では図8(b)に示すように検知スイッチ7のロッド81が突出し、可動扉34が閉じた時には可動扉34が該検知スイッチ8のロッド81を押すことにより可動扉34の開閉を検知し、開状態の場合はエレベータが稼動できない機能が付加されている(詳細図示省略)。その他の構成は上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0019】
上記のように構成された実施の形態3では、保守点検時には2本の係止手段39を外して可動扉34を手前に開くだけでよく、カバー部材30や可動扉34自体を多数のねじを外して取外す必要がなくなるため、保守時の作業が簡単で省力ができる。またカバー部材や固定ねじなどの落下の恐れも減少したエレベータの釣合おもりを得ることができる。なお、係止手段39は固定ねじに限定されるものではなく、例えば重力、リンク機構、バネアクションなどを利用した掛け金などを用いて係止するものでも同様の効果が期待できる。
【0020】
なお、上記各実施の形態の説明では、釣合おもり3の下部に釣合ロープ5を備えた例について説明したが、釣合ロープ5は、昇降行程が長い場合に巻上ロープ4も長くなって重量も大きくなるため、巻上ロープ4と同等の重量の釣合ロープ5を釣合おもり3と乗りかご2下部に繋げることによって、巻上ロープ4の重量バランスをとるものであるので、昇降行程が短いエレベータなどでは釣合ロープ5を設ける必要がなく、その場合でも同様の効果が得られることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータの釣合おもりの可動扉を閉じた状態を示す正面図。
【図2】図1に示す釣合おもりの可動扉を開けた状態を示す正面図。
【図3】図2のIII−III線における矢視断面図。
【図4】図1に示すカバー部材を全て外した状態を示す正面図。
【図5】展望用エレベータの一例を模式的に示す構成図。
【図6】この発明の実施の形態2によるエレベータの釣合おもりを示す正面図。
【図7】この発明の実施の形態3によるエレベータの釣合おもりを示す正面図。
【図8】図7に示す可動扉の開閉を検知する検知スイッチの動作を説明する図であり、図8(a)は閉状態、(b)は開状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0022】
1 昇降路、 2 乗りかご、 3 釣合おもり、 4 巻上ロープ(ロープ)、 5 釣合ロープ(ロープ)、 30 カバー部材、 30a 点検窓、 30b ガイド部材、 30c 固定穴、 31 フレーム部材、 32 おもり、 33A、33B 張力調節部、 34 可動扉、 34a 取っ手、 34b 係止手段、 34c 係止凹部、 35 固定ねじ、 36 支軸、 37 係止ボルト、 38 蝶番、 39 係止手段、 6A、6B シャックルロッド、 7A、7B ナット、 8 検知スイッチ、 81 ロッド、 9 案内部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごに対して釣り合いを取るためのおもりと、このおもりを保持するフレーム部材に設けられたロープの張力調節部と、上記おもり及び張力調節部の外側を覆うように設けられ上記張力調節部に対応する部分に点検窓を有するカバー部材と、このカバー部材に対して可動に保持され上記点検窓を開閉する可動扉を備えてなることを特徴とするエレベータの釣合おもり。
【請求項2】
上記可動扉は、上記カバー部材の点検窓の内側を該カバー部材の面方向にスライドすることにより該点検窓を開閉するようにしてなることを特徴とする請求項1記載のエレベータの釣合おもり。
【請求項3】
上記可動扉は、上記カバー部材の点検窓の近傍に突設された支軸に軸支され、該支軸の周りに回動することにより該点検窓を開閉するようにしてなることを特徴とする請求項1記載のエレベータの釣合おもり。
【請求項4】
上記可動扉は、上記カバー部材の点検窓の縁部に設けられたヒンジに取付けられ、該点検窓を開閉するようにしてなることを特徴とする請求項1記載のエレベータの釣合おもり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−151603(P2006−151603A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345331(P2004−345331)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】