説明

エレベータ床暖房装置

【課題】床暖房時におけるエネルギー消費量を削減することができるエレベータ床暖房装置を得る。
【解決手段】エレベータ床暖房装置において、内部に暖房器具が設置された建屋内に据付されたエレベータに設けられるエレベータ床暖房装置であって、前記エレベータの昇降路内に昇降自在に配置された乗りかごと、前記暖房器具の排熱を前記昇降路内に供給する放熱手段と、前記放熱手段が供給する前記昇降路内の熱を回収してその熱を前記乗りかご内へと供給する熱供給手段と、を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータ床暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるエレベータ床暖房装置においては、乗りかごの床下に送風暖房機を、乗りかごの側面下部に給気口を、乗りかごの天井に排気口をそれぞれ設け、前記送風暖房機の吐出口と前記給気口とをダクトで結んで連通させ、前記吐出口から吐出した温風を前記ダクトを通して前記給気口から乗りかご内に吹出すように構成したものや(例えば、特許文献1参照)、かご室の床面側に設けられ通気孔を有する筺体と、この筺体と前記かご室の床面側とを連通するダクトと、前記筺体内の空気を前記ダクトへ送風する送風機と、この送風機と前記通気孔との間に位置する発熱体とを備えたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、天板とこの天板の下側に取付固定した根太でもって形成した比較的浅い複数の空間部に面状のヒーターをそれぞれ取り付け、前記ヒーターの適所にはサーモスタットを組み込み、前記サーモスタットとケーブルによって連接し、かつ他のケーブルによって相互に連接した複数のコネクタを前記天板の周縁部近傍下側あるいは根太に配設するとともに、前記空間部内には前記ヒーターを覆うように断熱材を配置して、かごパネルの底部上に前記根太を介して配設するようにし、前記コネクタの内の一つに電源コードを付設したものも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−235282号公報
【特許文献2】特開平08−188360号公報
【特許文献3】特開2004−269248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上の特許文献に示されたいずれにおいても、電気ヒーターを熱源としているため、床暖房時におけるエネルギー消費量が多くなるという課題がある。
【0005】
この発明は、前述のような課題を解決するためになされたもので、床暖房時におけるエネルギー消費量を削減することができるエレベータ床暖房装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータ床暖房装置においては、内部に暖房器具が設置された建屋内に据付されたエレベータに設けられるエレベータ床暖房装置であって、前記エレベータの昇降路内に昇降自在に配置された乗りかごと、前記暖房器具の排熱を前記昇降路内に供給する放熱手段と、前記放熱手段が供給する前記昇降路内の熱を回収してその熱を前記乗りかご内へと供給する熱供給手段と、を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明はエレベータ床暖房装置において、内部に暖房器具が設置された建屋内に据付されたエレベータに設けられるエレベータ床暖房装置であって、前記エレベータの昇降路内に昇降自在に配置された乗りかごと、前記暖房器具の排熱を前記昇降路内に供給する放熱手段と、前記放熱手段が供給する前記昇降路内の熱を回収してその熱を前記乗りかご内へと供給する熱供給手段と、を備えた構成としたことで、床暖房時におけるエネルギー消費量を削減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1から図6は、この発明の実施の形態1に関するもので、図1はエレベータ床暖房装置の全体構成を示す正面図、図2は乗りかごの平面図、図3は乗りかごの正面図、図4は床暖房パネルと間接熱回収用熱交換器の詳細を示す平面図、図5は床暖房パネルと暖気分散用パネルの詳細を示す正面図、図6は暖気分散用パネルの詳細を示す平面図である。
図において1はエレベータの設置された建屋内に鉛直に設けられた昇降路で、この昇降路1内には乗りかご2が昇降自在に配置されている。前記乗りかご2の正面にはかご扉3が開閉自在に設けられており、前記乗りかご2が階床に停止した際に、前記かご扉3と対向する位置には乗場扉4が開閉自在に設けられている。
前記乗りかご2の両側部には、前記昇降路1内に立設された一対のガイドレール(図示せず)に係合することにより、前記乗りかご2を案内するガイドローラ5がそれぞれ取付されている。前記乗りかご2の上部には主ロープ6の一端が連結されており、この主ロープ6は、滑車7に巻き掛けられた上で、その他端が図示しない釣合い重りに連結されている。
前記建屋の居住域内にはストーブ8が設置されており、このストーブ8から排出される排熱を前記建屋の外部へと排出するための煙道9が、前記建屋内の前記昇降路1及び前記居住域の間に、それぞれに隣接して鉛直に設けられている。そして、前記煙道9と前記昇降路1との間、及び、前記煙道9と前記居住域との間には、前記煙道9内の熱を前記昇降路1内又は前記居住域内へと放熱するための放熱用パネル10がそれぞれ設けられており、前記煙道9と前記昇降路1との間に設けられた前記放熱用パネル10は、前記昇降路1内へと露出している。なお、この放熱用パネル10は例えば石等の素材が用いられる。
【0009】
前記昇降路1底部の前記煙道9側の壁部には、直接熱回収用熱交換器11aが設置されている。この直接熱回収用熱交換器11aは例えば紙仕様熱交換器を使用する。
前記乗りかご2の床部には複数の暖気通過孔12aが穿設された床暖房パネル12が設けられている。前記床暖房パネル12と前記直接熱回収用熱交換器11aとは、前記乗りかご2の下方より前記床暖房パネル12へと接続される伸縮自在のダクト13により連通されており、前記直接熱回収用熱交換器11aより供給される暖気がこのダクト13を通って、前記床暖房パネル12の前記暖気通過孔12aを通過するようになっている。
前記床暖房パネル12の上には床暖気分散用パネル14が取付されており、この床暖気分散用パネル14には多数の暖気分散孔15が穿設されて、吹出口16が形成されている。前記乗りかご2内の天井部分には天井暖気分散用パネル17が取付されており、この天井暖気分散用パネル17には多数の暖気分散孔15が穿設されて、排出口18が形成されている。
【0010】
前記乗りかご2外側の一側壁下部には、間接熱回収用熱交換器11b及び循環ポンプ19が取付されている。この間接熱回収用熱交換器11bは例えばプレート型熱交換器を使用する。前記床暖房パネル12の内部は空洞になっており熱媒体20(ブライン)により満たされている。前記床暖房パネル12に設けられた前記暖気通過孔12aの縁部に隣接する位置には、前記床暖房パネル12内を循環する前記熱媒体20を整流するフィン12bが複数設けられている。このフィン12bは、特に前記床暖房パネル12内部を略中央で前記熱媒体20が通過する空隙を残しつつ二分するように設けられている。また、前記循環ポンプ19は、前記間接熱回収用熱交換器11bから前記熱媒体20を送り出す側ではなく、前記床暖房パネル12内を循環して戻ってきた前記熱媒体20を受ける、いわゆる還り側に設けられている。これは、後述するように前記熱媒体20の循環は自然循環を主とするためである。
そして、前記昇降路1最頂部には、前記昇降路1内の空気を前記昇降路1上方の屋根裏21へと排出するためのガラリ等の換気口22が設けられており、前記屋根裏21の上部には、内前記屋根裏21の空気を前記建屋の外へと排出するための換気口22が同じく設けられている。
【0011】
前記ストーブ8からの排熱は、前記煙道9により前記建屋外へと排出される。しかし、前記煙道9内の熱は、前記放熱用パネル10により、前記居住域側へは居住域暖房として、前記昇降路1側には昇降路内空気暖房として供給されることにより、再利用される。
そして、この前記昇降路1内の熱(輻射熱)は、前記直接熱回収用熱交換器11aにより回収され、暖気として例えば送風機等を用い前記ダクト13を介して前記床暖房パネル12へと送られる。
前記ダクト13により送られた暖気は、前記床暖房パネル12の前記暖気通過孔12aを通過し、前記床暖気分散用パネル14の前記暖気分散孔15により分散された上で、前記吹出口16から前記乗りかご2内へと吹出し、前記乗りかご2内の空気を暖める。ここで、前記床暖気分散用パネル14により、前記乗りかご2内の隅々まで暖気を行渡らせ、暖房のむらをなくすことが可能である。そして、前記乗りかご2床部の前記吹出口16から吹出した暖気は、前記乗りかご2天井部の前記排出口18より前記乗りかご2内から前記昇降路1内へと排出される。このようにして暖気を前記乗りかご2内を通過させることにより、新たな暖気を前記吹出口16より前記乗りかご2へと誘引させることができる。
なお、暖気が前記昇降路1内に滞留すると、空気の質が低下してくるため、最終的に前記昇降路1内の暖気は、前記換気口22を介して、前記昇降路1内から前記屋根裏21を経由し前記建屋外へと排出される。
【0012】
また、前記昇降路1内の熱(輻射熱)は、前記乗りかご2に設けられた前記間接熱回収用熱交換器11bによっても回収される。ここで、前記間接熱回収用熱交換器11bは、前記昇降路1内に露出した前記床暖房パネル12になるべく近い位置となるように前記乗りかご2に設けられると、熱の回収効率の点で有利である。前記間接熱回収用熱交換器11bにより回収された熱は、前記熱媒体20へと蓄熱される。熱を蓄えた前記熱媒体20は、前記循環ポンプ19により、前記床暖房パネル12内を循環して放熱し、前記乗りかご2内の床部付近の空気を暖める。加えて、前記床暖房パネル12の前記暖気通過孔12aを通過する前記ダクト13から供給される暖気をさらに暖める効果もある。
このようにして、前記間接熱回収用熱交換器11bにより回収した前記昇降路1内の熱を、前記熱媒体20に蓄熱して前記床暖房パネル12内を循環させることにより、床暖房開始時において暖房効果の立ち上がりを早めることができる。
なお、前記循環ポンプ19は床暖房開始時のみ使用し、前記熱媒体20が安定して循環するようになったら前記循環ポンプ19は停止し、以降は自然循環により前記熱媒体20を循環させる。
【0013】
以上のように構成されたエレベータ床暖房装置においては、ストーブの排熱を昇降路内空気暖房として供給することにより再利用し、さらに、昇降路内の熱を昇降路内に設けられた直接熱回収用熱交換器により回収し、乗りかごへと直接温風として送出することで、ストーブの排熱を有効に活用することにより、床暖房時におけるエネルギー消費量を削減することができる。
また、昇降路内の熱を乗りかごに設けられた間接熱回収用熱交換器により回収して熱媒体へ蓄熱し、熱を蓄えた熱媒体を乗りかご床部の床暖房パネル内を循環させて放熱させることで、上記同様の効果を得ることができる。
以上は、特にホームエレベータにおいて利用者が素足で乗りかごに搭乗する場合に有効である。
なお、ここでは、直接熱回収用熱交換器及び間接熱回収用熱交換器の両方を備えたエレベータ床暖房装置について説明したが、直接熱回収用熱交換器及び間接熱回収用熱交換器のうちのいずれか一方のみを備えることにより相応の床暖房効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータ床暖房装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】この発明の実施の形態1における乗りかごの平面図である。
【図3】この発明の実施の形態1における乗りかごの正面図である。
【図4】この発明の実施の形態1における床暖房パネルと間接熱回収用熱交換器の詳細を示す平面図である。
【図5】この発明の実施の形態1における床暖房パネルと暖気分散用パネルの詳細を示す正面図である。
【図6】この発明の実施の形態1における暖気分散用パネルの詳細を示す平面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 昇降路
2 乗りかご
3 かご扉
4 乗場扉
5 ガイドローラ
6 主ロープ
7 滑車
8 ストーブ
9 煙道
10 放熱用パネル
11a 直接熱回収用熱交換器
11b 間接熱回収用熱交換器
12 床暖房パネル
12a 暖気通過孔
12b フィン
13 ダクト
14 床暖気分散用パネル
15 暖気分散孔
16 吹出口
17 天井暖気分散用パネル
18 排出口
19 循環ポンプ
20 熱媒体
21 屋根裏
22 換気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に暖房器具が設置された建屋内に据付されたエレベータに設けられるエレベータ床暖房装置であって、
前記エレベータの昇降路内に昇降自在に配置された乗りかごと、
前記暖房器具の排熱を前記昇降路内に供給する放熱手段と、
前記放熱手段が供給する前記昇降路内の熱を回収してその熱を前記乗りかご内へと供給する熱供給手段と、を備えたことを特徴とするエレベータ床暖房装置。
【請求項2】
前記熱供給手段は、
前記昇降路内に設けられ、前記放熱手段が供給する前記昇降路内の熱を回収して暖気を生成する直接熱回収用熱交換器と、
前記直接熱回収用熱交換器が生成した暖気を、前記乗りかご内へと供給する暖気供給手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ床暖房装置。
【請求項3】
前記暖気供給手段は、伸縮自在に設けられ、前記直接熱回収用熱交換器と前記乗りかごとを連通するダクトであることを特徴とする請求項2に記載のエレベータ床暖房装置。
【請求項4】
前記熱供給手段は、
前記乗りかごに設けられ、前記放熱手段が供給する前記昇降路内の熱を回収してその熱を熱媒体へと蓄熱する間接熱回収用熱交換器と、
前記乗りかごの床部に設けられ、蓄熱した前記熱媒体がその内部を循環する床暖房パネルと、
前記乗りかごに設けられ、前記熱媒体を前記床暖房パネルの内部に循環させる循環ポンプと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ床暖房装置。
【請求項5】
前記床暖房パネルは、内部に前記熱媒体の循環を整流するフィンを備えたことを特徴とする請求項4に記載のエレベータ床暖房装置。
【請求項6】
前記フィンは、前記床暖房パネル内部を略中央で前記熱媒体が通過する空隙を残しつつ二分するように設けられていることを特徴とする請求項4又は請求項5のいずれかに記載のエレベータ床暖房装置。
【請求項7】
前記循環ポンプは、前記床暖房パネル内を循環して戻ってきた前記熱媒体を受ける還り側に設けられていることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載のエレベータ床暖房装置。
【請求項8】
前記熱供給手段は、
前記昇降路内に設けられ、前記放熱手段が供給する前記昇降路内の熱を回収して暖気を生成する直接熱回収用熱交換器と、
前記直接熱回収用熱交換器が生成した暖気を、前記乗りかご内へと供給する暖気供給手段と、
前記乗りかごに設けられ、前記放熱手段が供給する前記昇降路内の熱を回収してその熱を熱媒体へと蓄熱する間接熱回収用熱交換器と、
前記乗りかごの床部に設けられ、蓄熱した前記熱媒体がその内部を循環する床暖房パネルと、
前記乗りかごに設けられ、前記熱媒体を前記床暖房パネルの内部に循環させる循環ポンプと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ床暖房装置。
【請求項9】
前記床暖房パネルは、前記暖気供給手段が前記乗りかご内へと供給する暖気が通過する暖気通過孔が穿設されていることを特徴とする請求項8に記載のエレベータ床暖房装置。
【請求項10】
前記暖房器具の排熱を前記建屋の外へと排出する煙道を備え、
前記放熱手段は、前記煙道と前記昇降路との間に設けられ、前記昇降路内に露出した放熱パネルであることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載のエレベータ床暖房装置。
【請求項11】
前記乗りかごの床部に設けられ、複数の暖気分散孔が穿設された床暖気分散用パネルを備えたことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載のエレベータ床暖房装置。
【請求項12】
前記乗りかごの天井部に設けられ、複数の暖気分散孔が穿設された天井暖気分散用パネルを備えたことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載のエレベータ床暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−184812(P2009−184812A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29172(P2008−29172)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】