説明

エンジンの他の消費部とは独立な温度調節のための冷却回路

本発明は温度調節装置に関し、これは、エンジン(1)の冷却ハウジングの上流に配置されるポンプ(5)と常時冷却を必要とする少なくとも1つの消費部(6)とを含むエンジン(1)冷却システムのためのもので、該装置は、冷却ハウジングに冷却液を循環させるためのメインパイプ(2)と、冷却ハウジングを迂回するセカンダリパイプ(3)とを備え、エンジン(1)の冷却ハウジングのアウトレットにおけるメインパイプ(2)上に二方弁(4)が配置されており、セカンダリパイプ(3)は、ポンプ(5)の下流かつエンジン冷却に用いられるメインパイプ(2)部分の上流のメインパイプ(2)上に分岐を有しており、これによって、少なくとも1つの消費部(6)の冷却が確保されるように流量が一定かつ持続的に維持されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの温度調節のためのシステムの分野に関し、より具体的には、エンジンにおける冷却液分布を調整するシステムの分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃焼エンジンの温度を調節することにより、エンジンの暖機の際のエンジンの燃料消費による汚染物質の排出を低減することが可能になる。燃焼エンジンの暖機の際の過渡段階においては、燃焼室壁が低温であるため、エンジン潤滑油が高粘度であり、また、不完全燃焼現象の結果として、かなりの炭化水素および一酸化物、特に一酸化炭素や一酸化窒素の排出を伴って、過量の燃料を消費することがわかっている。
【0003】
燃焼エンジンの暖機の際に、消費および汚染物質排出を低減するため、エンジンの冷却を行わない。金属塊および潤滑油の温度は、冷却液をエンジンに循環させた場合よりも急速に上昇する。よって、暖機段階では、エンジン中の冷却液の流動が遮断される。
【0004】
これと同時に、一酸化物、例えば一酸化窒素の排出量を抑えるため、EGR(排ガス再循環)方式を用いて、排ガスがエキゾーストから燃焼エンジンの吸気側へフィードバックされ、これらは冷却段階を経ることになる。同じくターボコンプレッサのベアリングを冷却するためには、冷却液が循環して冷却されるケーシングを用いることが妥当であり、これにより金属塊から、またターボコンプレッサのオイルから、熱が取り出される。
【0005】
このように様々な温度調節が、一方ではエンジンで、他方ではターボコンプレッサやガスを再循環させるEGR装置といった消費部で、同時に行われる必要がある。特に、暖機段階において、ターボコンプレッサと排ガス再循環装置を常に冷却することは重要である。
【0006】
現在のところ、温度調節には、燃焼エンジン冷却回路に組み込まれたワックスサーモスタットが用いられる。現在の調節システムより優れた新しい調節を限られた追加コストで実現することが重要である。
【0007】
エンジンにおいて温度調節を実行する場合の、冷却液の循環を用いる様々な形態の温度調節の問題に対処するために、様々な装置が提案されている。
【0008】
冷却液の循環を調節するシステムとして知られているものの1つは、ウォーターポンプの下流で、エンジンのインレット側に三方弁を配置するものであり、この三方弁は、エンジンのウォーターポンプ下流側と、消費部に対して供給を行うエンジンのアウトレットとの間で冷却液を循環させるパイプに対して供給を行うものである。しかしながら、このようなシステムは取付け要件に適合しないという欠点があり、特に、ウォーターポンプとエンジンのクランクケース上半分との間に弁を設けることは依然として難しい課題である。
【0009】
冷却液の循環を調節するこのようなシステムの別の形態では、三方弁をエンジンのアウトレット側に配置し、この弁は、エンジンにおける冷却液の循環を回避させてパイプへの供給を行う。しかしながら、この解決法は、ウォーターポンプとエンジンのクランクケース上半分との間に分岐を設ける問題に対処するものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、先行技術の欠点の少なくとも1つを回避する解決法を提案することであり、特に、ウォーターポンプとエンジンのクランクケース上半分との間の境界に分岐を設ける必要なしに、燃焼エンジンおよびその消費部における冷却水の循環を制御する温度調節システムを提案することである。
【0011】
この目的は、少なくとも1つの内燃エンジンを冷却する冷却システムであって、エンジンのクランクケース/シリンダ・ブロックおよび/またはシリンダヘッドの冷却チェンバの上流に配置されたポンプと、常時冷却を必要とする少なくとも1つの消費部とを含む冷却システムのための、温度調節装置によって達成される。該装置は、エンジンの冷却チェンバにおける冷却液の循環を可能にする少なくとも1つのメインパイプと、エンジンの冷却チェンバを迂回するセカンダリパイプとを備え、メインパイプ上には、エンジンの冷却チェンバからのアウトレットに二方弁が配置されており、セカンダリパイプは、ポンプの下流、かつメインパイプがエンジンの冷却に貢献する部分の上流に、メインパイプからの分岐を有し、これによって、少なくとも1つの消費部の冷却に供給される流量が一定かつ持続的に保たれることを特徴としている。
【0012】
別の実施の態様によると、少なくとも1つの内燃エンジンを冷却するシステムのための、本発明の冷却装置は、メインパイプの、ポンプに連結されているその端部に、クランクケース/シリンダ・ブロックおよび/またはシリンダヘッドに沿って延びて冷却水をいくつかのアクセサリパイプに分配する分配ギャラリーを備えており、アクセサリパイプは分配ギャラリーからつながって、エンジンを冷却するためのものであり、ギャラリーはエンジンとの熱交換に貢献するものではなく、セカンダリパイプは分配ギャラリー上でメインパイプから分岐していることを特徴としている。
【0013】
別の実施の態様によると、少なくとも1つの内燃エンジンを冷却するシステムのための、本発明の冷却装置は、セカンダリパイプの分配ギャラリーからの分岐の位置が、セカンダリパイプといくつかのアクセサリパイプとの間で冷却液の流量が均等に分布するように決められていることを特徴としている。
【0014】
本発明の他の目的は、本発明の装置を組み込むことができるシステムを提案することである。
【0015】
この目的は、エンジンと少なくとも1つの消費部の温度調節のための冷却回路であって、冷却液を動かすためのフィードポンプを備える冷却回路によって達成される。該冷却回路は、本発明による温度調節装置を備え、該調節装置は、一方でそのメインパイプにより、エンジンのアウトレットにおいて、冷却を要する少なくとも1つのアクセサリを含む第1ループに対して供給を行い、他方でそのセカンダリパイプにより、エンジンの作動中に常時および/または継続的冷却を要する少なくとも1つの消費部を含む第2ループに対して供給を行い、第2ループはその下流側端部において当該冷却回路の第1ループに通じていることを特徴としている。
【0016】
別の実施の態様によると、冷却液を動かすことによるエンジンと少なくとも1つの消費部の温度調節のための、本発明の冷却回路は、エンジンのアウトレットにおいて、メインパイプが、少なくとも1つのアクセサリを冷却する第3ループに対して供給を行い、この第3ループはポンプの上流で第1ループに合流しており、この第3ループが二方温度調整弁を備えていることを特徴としている。
【0017】
別の実施の態様によると、冷却液を動かすことによるエンジンと少なくとも1つの消費部の温度調節のための、本発明の冷却回路は、第3ループが複動式温度調整弁を介して第1ループに合流しており、複動式温度調整弁には、第1ループの二方弁の下流で分岐しているパイプにより供給が行われ、複動式温度調整弁は、エンジンにおける冷却液流の流量を一定に保ちながら同時に冷却液の温度調節を可能にしていることを特徴とする。
【0018】
別の実施の態様によると、冷却液を動かすことによるエンジンと少なくとも1つの消費部の温度調節のための、本発明の冷却回路は、常時および/または継続的冷却を要する消費部が、少なくとも1つのターボコンプレッサおよび/または排ガス再循環装置により構成されていること、および/または、第1ループが、少なくとも1つのユニットヒータへの供給に貢献するものであること、および/または、第3ループが、少なくとも1つのラジエータへの供給に貢献するものであることを特徴としている。
【0019】
本発明の他の目的は、本発明の冷却回路を作動させる少なくとも1つの方法を提案することである。
【0020】
この目的は、冷却回路を作動させる本発明の方法によって達成される。該方法は、一方ではエンジンの冷却を一時停止するため、他方で少なくとも1つの消費部の持続冷却を維持するために、冷却回路の第1ループに取り付けられている二方弁を閉じる少なくとも1つのステップを含んでいることを特徴とする。
【0021】
別の実施の態様によると、冷却回路を作動させる本発明の方法は、一方ではエンジンの冷却を可能とするため、他方で少なくとも1つの消費部の持続冷却を維持するために、冷却回路の第1ループに取り付けられている二方弁を開く少なくとも1つのステップを含んでいることを特徴とする。
【0022】
別の実施の態様によると、冷却回路を作動させる本発明の方法は、冷却回路の第2ループを用いて少なくとも1つの消費部の持続冷却を維持すると同時に、一方でエンジンの冷却を可能とし、他方で第3ループの少なくとも1つのアクセサリの冷却を可能とするため、冷却回路の第3ループに取り付けられている二方温度調整弁を開く少なくとも1つのステップを含んでいることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は、その特徴および効果と共に、添付の図面を参照して記載される説明を読むことでより明確になるであろう。
【図1】図1は、先行技術によるエンジン領域の温度調節のための装置のレイアウト図である。
【図2】図2は、本発明によるエンジン領域の温度調節のための装置のレイアウト図である。
【図3】図3は、本発明の装置に相当するように構成することができる、エンジン領域の温度調節のための装置の一実施形態である。
【図4】図4は、本発明による、エンジン領域の温度調節のための装置の一実施形態である。
【図5】図5は、本発明の装置が組み込まれ、すべての弁が閉じた状態で作動している冷却回路の一例を概略的に示している。
【図6】図6は、本発明の装置が組み込まれ、メインパイプの弁のみが開いた状態で作動している冷却回路の一例を概略的に示している。
【図7】図7は、本発明の装置が組み込まれ、回路のすべての弁が開いた状態で作動している冷却回路の一例を概略的に示している。
【図8】図8は、図7の実施形態の別の形態を概略的に示している。
【図9】図9は、複動式温度調整弁を備える、図7の実施形態の別の形態を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
指摘しておかなければならないことは、本書において、様々な要素を互いに対して位置付けするために用いられる“上流”および“下流”という用語は、それらが関連している回路を流れる冷却液の方向を参照して用いられるということである。
【0025】
本発明の冷却システムの温度調節装置は、エンジン(1)の周辺に配置されるもので、特に、エンジンのクランクケース/シリンダ・ブロックやシリンダヘッドの冷却に関わるチェンバ領域に配置される。この装置は、クランクケース/シリンダ・ブロックやシリンダヘッド(1)のチェンバに冷却液を循環させるメインパイプ(2)を有している。このメインパイプ(2)に結合されているのがセカンダリパイプ(3)で、これはメインパイプ(2)からの流量の一部を取り出して、それをエンジン(1)の冷却チェンバから外れさせる。セカンダリパイプ(3)のメインパイプ(2)からの分岐は、エンジンの冷却液インレットの上流で、かつフィードポンプ(5)の下流であり、これによって、これら2つのパイプ(2,3)には同じポンプ(5)により供給が行われ、一方でそれと同時に、セカンダリパイプ(3)には、冷却を必要とする要素との間でまだ熱交換を行っていない冷却液が供給されるようになっている。エンジンのアウトレット側では、メインパイプ(2)は二方弁(4)を備え、これによりメインパイプ(2)における冷却液の流動を回復可能に一時停止させることができる。この弁(4)を配置することで、ポンプ(5)と冷却対象であるエンジン(1)との間の境界にコンポーネントを配置する必要がなくなる。さらに、セカンダリパイプ(3)がエンジンのインレットの上流でメインパイプ(2)から分岐していることによって、弁(4)を閉じると、メインパイプ(2)における冷却液の流動を停止させることが可能であるのと同時に、セカンダリパイプ(3)では継続的な流動を保つことができる。
【0026】
冷却チェンバにおいて、メインパイプ(2)は、その端部がポンプ(5)の直ぐ下流に位置付けられた分配ギャラリー(distribution gallery)(2a)を備えることができ、これは、エンジンのクランクケース/シリンダ・ブロックやシリンダヘッドの少なくとも一部に沿って延びている。この分配ギャラリー(2a)からは、いくつかのアクセサリパイプ(2b)が出ており、これらは、冷却チェンバの様々な区域に対して供給を行うことにより、エンジン(1)の冷却に直接貢献するものである。分配ギャラリー(2a)それ自体は、エンジン(1)の冷却において直接的な役割を担うものではなく、このことは、それを通過する冷却水はポンプ(5)から直接流れてきたものであって、エンジン(1)との熱交換をまだ行っていないものであるということを意味している。従って、セカンダリパイプ(3)により取り出される冷却液の熱交換能力は最適となっている。よって、セカンダリパイプ(3)は、分配ギャラリー(2a)の全長から直接分岐させることが可能である。好適な実施形態によると、セカンダリパイプ(3)の分配ギャラリー(2a)からの分岐は、セカンダリパイプ(3)といくつかのアクセサリパイプ(2b)との間での分配のバランスがよくなるように、設けられる。
【0027】
本発明の温度調節装置は、エンジン(1)の冷却回路に組み込まれるものであるが、1つ以上の消費部(6)および/またはアクセサリ(11,12,13,15,16)の冷却回路にも組み込まれる。これらの消費部(6)は、一般的には、ターボコンプレッサ(6a)と排ガス再循環装置(6b)であり、これらは、エンジン(1)のクランクケース/シリンダ・ブロックおよびシリンダヘッドの領域で実行される温度調節とは独立に、冷却回路による常時冷却を必要とするものある。
【0028】
本発明の装置が組み込まれた冷却回路は第1冷却ループ(7)を有し、これは、特に、ポンプ(5)と、エンジン(1)の冷却に貢献するメインパイプ(2)とを含んでおり、さらに、少なくとも1つのアクセサリ、例えばユニットヒータ(11)が、第1冷却ループ(7)の回路により冷却される。ユニットヒータの配置についての唯一の制限は、メインループ(7)上に配置される必要があることである。これは、後者には、サーモスタット(4)が開いているときにエンジンを通過した冷却液が供給されなければならいからである。冷却液流の第1冷却ループ(7)における循環は、冷却液をクランクケース/シリンダ・ブロックおよび/またはシリンダヘッドのチェンバ内に停滞させたままにしてエンジン(1)の冷却を停止させることが可能である二方弁(4)の開閉によって決まるものである。
【0029】
回路の第1冷却ループ(7)に加えて第2ループ(8)が設けられており、これは本発明の装置のセカンダリパイプ(3)によりエンジンの冷却を迂回することによって第1ループ(7)を短絡させるものである。この第2ループ(8)も、ポンプ(5)を含み、場合によって、例えばユニットヒータ(11)といった、冷却が必要である1つ以上のアクセサリを含んでいる。異なるのは、この第2ループ(8)は、メインパイプ(2)を短絡させてエンジン(1)の冷却を回避しているセカンダリパイプ(3)の領域に、持続した冷却を必要とする消費部(6)の1つ以上を含んでいることである。これらの消費部(6)は、望ましい冷却モードに応じて、直列あるいは並列に配置することができる。これらの消費部(6)の下流において、セカンダリパイプ(3)は、第1ループ(7)により冷却されるアクセサリ(11)のうちの1つ以上の上流または下流で、第1ループ(7)の回路と合流している。しかしながら、このセカンダリパイプ(3)と第1ループ(7)の回路との合流点は、エンジン(1)のチェンバにおける冷却液の流量を調節する二方弁(4)の下流にある。このように、冷却回路の第1ループ(7)とは違って、この第2ループ(8)はその経路に冷却液の流れを止めるための弁を備えていない。従って、この第2ループ(8)による消費部(6)の冷却は、持続的で、メインパイプ(2)の弁(4)の開閉とは無関係であり、従ってエンジン(1)のクランクケースの上半分の冷却および/またはシリンダヘッドの冷却とは独立である。
【0030】
これら第1の2つのループ(7,8)に対して、第3のループ(9)を冷却回路に加えることができる。このループ(9)は、第1ループ(7)と同様に、フィードポンプ(5)と、エンジン(1)の冷却に貢献するメインパイプ(2)とを含んでいる。異なるのは、実施形態に応じて第1ループ(7)の二方弁(4)の下流あるいは上流において、第3ループ(9)の回路が分岐していることであり、これは、ラジエータ(12)、ギアボックス(13)、電槽(jar)(15)、水/オイル交換器(16)など、1つ以上のアクセサリの冷却に貢献するためである。これらのアクセサリは、冷却ループ(9)上に、直列あるいは並列に配置される。第3ループ(9)は、フィードポンプ(5)の上流で、第1ループ(7)と合流している。第3ループ(9)の分岐が第1ループ(7)の弁(4)の上流であるか下流であるかによって、この第3ループ(9)における冷却液の流れを第1ループ(7)の弁(4)により制御することができる。しかしながら、好適な実施形態によると、分岐は、エンジン(1)のアウトレット側で、第1ループ(7)の弁(4)の上流に設けられ、一方、第3冷却ループ(9)の回路には、二方温度調整弁(10)が取り付けられる。本実施形態によると、この弁(10)は、ループ(9)上で、エンジンのアウトレット側の、第3ループ(9)の第1ループ(7)からの分岐より下流に配置され、その結果、これによって冷却液の供給が制御されるアクセサリ(12,13,15,16)の上流に位置することになる。冷却回路の別の実施形態では、この弁(10)は、ループ(9)上で、このループ(9)のアクセサリ(12,13,15,16)の下流、かつ第3ループ(9)と第1ループとの合流点の上流に配置され、この合流点はフィードポンプ(5)の上流に位置している。
【0031】
二方温度調整弁(10)により、循環する冷却液の温度に応じて、回路の第3ループ(9)における循環を制御することが可能である。1つの具体的な実施形態によると、温度調整弁は、例えばワックス混合物を含むものとすることができ、これは、温度調整弁が浸されている冷却液の温度が上昇するにつれて徐々に液化が進むものである。ワックス混合物は液化するにつれて徐々に膨張して、より大きな体積を占めるようになり、これによって、弁のシャッターあるいはピストンが動かされる。
【0032】
別の実施形態によると、第3ループ(9)と第1ループ(7)との合流点は、これらのループの戻り側の、フィードポンプ(5)の上流にあって、この点には、複動式温度調整弁(14)が配置されている。この複動弁(14)は、単動式温度調整弁と同様に冷却液の温度調節を可能とするものであるが、温度調整弁(14)が開位置であるか、閉位置であるか、調整位置であるかにかかわりなく、冷却液流の流量が一定になるように維持される。一定流量を維持するため、温度調整弁(14)には、メインパイプ(2)の二方弁(4)の下流で第1ループから分岐しているパイプ(14a)によって供給が行われる。
【0033】
本発明の調節装置が冷却回路で用いられる場合に、回路がたどるループは、いくつかの弁(4,10,14)の開放状態によって決まる。全ての弁が閉じているときには、冷却液の流量は、回路の第2ループ(8)において、換言すると、特にセカンダリパイプ(3)において、一定に保たれ、これによって、ターボコンプレッサ(6a)および/または排ガス再循環装置(6b)といった消費部(6)の冷却が可能であり、一方でそれと同時に、装置のメインパイプ(2)における流量はゼロとなってエンジン(1)の冷却が回避される。冷却液の循環はフィードポンプ(5)により一定に保たれ、セカンダリポンプ(3)によりエンジン(1)の冷却が回避される。
【0034】
二方弁(4)が開いているときには、冷却液は、第1ループ(7)および第2ループ(8)を循環する。この場合、装置のメインパイプ(2)に液が供給されて、エンジン(1)は流動する冷却液によって冷却される。
【0035】
回路の第3ループ(9)の二方温度弁(10)が開いているときには、冷却液はやはりメインパイプ(2)に循環してエンジン(1)の冷却が可能であると同時に、液が第3ループ(9)全体に渡って動かされることで1つ以上のアクセサリ(12,13,15,16)の冷却が可能である。
【0036】
本発明は、請求項に記載の発明の適用範囲から逸脱することなく、様々な他の具体的な実施形態が可能であることは、当業者にとって明らかである。従って、これらの実施形態は例示目的のものとみなされるべきであり、添付の特許請求の範囲により規定される範囲内で変形することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの内燃エンジン(1)を冷却する冷却システムのための温度調節装置であって、該冷却システムは、前記エンジン(1)のクランクケース/シリンダ・ブロックおよび/またはシリンダヘッドの冷却チェンバの上流に配置されたポンプ(5)と、常時冷却を必要とする少なくとも1つの消費部(6)とを含んでおり、該装置は、前記エンジン(1)の前記冷却チェンバにおける冷却液の循環を可能にする少なくとも1つのメインパイプ(2)と、前記エンジン(1)の前記冷却チェンバを迂回するセカンダリパイプ(3)と、を備え、
前記メインパイプ(2)上には、前記エンジン(1)の前記冷却チェンバからのアウトレットに、二方弁(4)が配置されていること、および、
前記セカンダリパイプ(3)は、前記ポンプ(5)の下流、かつ前記エンジン(1)の冷却に貢献する前記メインパイプ(2)の部分の上流に、前記メインパイプ(2)からの分岐を有し、これによって、少なくとも1つの消費部(6)の冷却に供給される流量が一定かつ持続的に保たれることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記メインパイプ(2)は、前記ポンプ(5)に連結されているその端部に、前記クランクケース/シリンダ・ブロックおよび/または前記シリンダヘッドに沿って延びて冷却水をいくつかのアクセサリパイプ(2b)に分配する分配ギャラリー(distribution gallery)(2a)を備えており、前記アクセサリパイプ(2b)は前記分配ギャラリー(2a)からつながって、前記エンジン(1)を冷却するためのものであり、前記ギャラリー(2a)は前記エンジン(1)との熱交換に貢献するものではなく、前記セカンダリパイプ(3)は前記分配ギャラリー(2a)上で前記メインパイプ(2)から分岐していることを特徴とする、請求項1に記載の、少なくとも1つの内燃エンジン(1)を冷却するシステムのための冷却装置。
【請求項3】
前記セカンダリパイプ(3)の前記分配ギャラリー(2a)からの前記分岐の位置は、前記セカンダリパイプ(3)と前記いくつかのアクセサリパイプ(2b)との間で冷却液の流量が均等に分布するように決められていることを特徴とする、請求項2に記載の、少なくとも1つの内燃エンジン(1)を冷却するシステムのための冷却装置。
【請求項4】
エンジン(1)と少なくとも1つの消費部(6)の温度調節のための冷却回路であって、冷却液を動かすためのフィードポンプ(5)を備える冷却回路において、
前記冷却回路は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の温度調節装置を備え、
前記調節装置は、一方でそのメインパイプ(2)により、前記エンジン(1)のアウトレットにおいて、冷却を要する少なくとも1つのアクセサリ(11)を含む第1ループ(7)に対して供給を行い、他方でそのセカンダリパイプ(3)により、前記エンジン(1)の作動中に常時および/または継続的冷却を要する少なくとも1つの消費部(6)を含む第2ループ(8)に対して供給を行い、前記第2ループ(8)はその下流側端部において前記冷却回路の前記第1ループ(7)に通じていることを特徴とする冷却回路。
【請求項5】
請求項4に記載の、冷却液を動かすことによる、エンジン(1)と少なくとも1つの消費部(6)の温度調節のための冷却回路において、
前記エンジン(1)のアウトレットにおいて、前記メインパイプ(2)は、少なくとも1つのアクセサリ(12,13,15,16)を冷却する第3ループ(9)に対して供給を行い、この第3ループ(9)は前記ポンプ(5)の上流で前記第1ループ(7)に合流しており、この第3ループ(9)は二方温度調整弁(10)を備えていることを特徴とする冷却回路。
【請求項6】
請求項5に記載の、冷却液を動かすことによる、エンジン(1)と少なくとも1つの消費部(6)の温度調節のための冷却回路において、
前記第3ループ(9)は複動式温度調整弁(14)を介して前記第1ループ(7)に合流しており、前記複動式温度調整弁(14)には、前記第1ループ(7)の前記二方弁(4)の下流で分岐しているパイプ(14a)により供給が行われ、前記複動式温度調整弁(14)は、前記エンジン(1)における冷却液流の流量を一定に保ちながら同時に冷却液の温度調節を可能にしていることを特徴とする冷却回路。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項に記載の、冷却液を動かすことによる、エンジン(1)と少なくとも1つの消費部(6)の温度調節のための冷却回路において、
常時および/または継続的冷却を要する前記消費部(6)は、少なくとも1つのターボコンプレッサ(6a)および/または排ガス再循環装置(6b)により構成されていること、および/または、
前記第1ループ(7)は、少なくとも1つのユニットヒータ(11)への供給に貢献するものであること、および/または、
前記第3ループ(9)は、少なくとも1つのラジエータ(12)への供給に貢献するものであることを特徴とする冷却回路。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれか1項に記載の冷却回路を作動させる方法であって、
前記方法は、一方で前記エンジン(1)の冷却を一時停止し、他方で少なくとも1つの消費部(6)の持続冷却を維持するために、前記冷却回路の前記第1ループ(7)に取り付けられている前記二方弁(4)を閉じる少なくとも1つのステップを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項4ないし7のいずれか1項に記載の冷却回路を作動させる方法であって、
前記方法は、一方で前記エンジン(1)の冷却を可能とし、他方で少なくとも1つの消費部(6)の持続冷却を維持するために、前記冷却回路の前記第1ループ(7)に取り付けられている前記二方弁(4)を開く少なくとも1つのステップを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項5ないし7のいずれか1項に記載の冷却回路を作動させる方法であって、
前記方法は、前記冷却回路の前記第2ループ(8)を用いて少なくとも1つの消費部(6)の持続冷却を維持すると同時に、一方で前記エンジン(1)の冷却を可能とし、他方で前記第3ループ(9)の少なくとも1つのアクセサリ(12,13)の冷却を可能とするために、前記冷却回路の前記第3ループ(9)に取り付けられている前記二方温度調整弁(10)を開く少なくとも1つのステップを含んでいることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−504205(P2012−504205A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528408(P2011−528408)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051857
【国際公開番号】WO2010/037970
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)