説明

エンジンへと供給されるディーゼル燃料中の気泡のサイズを小さくする装置

ディーゼル燃料用のフィルタであって、少なくともディーゼル燃料の導入管(4)および導出管(5)を有し、円筒形の支持部材(13)へと挿入されて該支持部材(13)により支持されたドーナツ形のフィルタ部材(3)が少なくとも設けられ、前記フィルタは、ディーゼル燃料に存在する気泡のサイズを小さくする装置をさらに備え、該装置が、前記円筒形の支持部材(13)に取り付けられた少なくとも1つの空気運搬室(10)を備え、前記空気運搬室(10)が、当該フィルタに溜まった空気を、小さな気泡の形態で、前記フィルタから出すディーゼル燃料の流れへと進入させるように出すことができる少なくとも1つの孔(11)を備え、前記空気運搬室が、前記円筒形の支持部材(13)の内側に向かって突出する該円筒形の支持部材(13)の膨出部により形成されているフィルタ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンへと供給されるディーゼル燃料に存在する気泡のサイズを縮小または微小化する装置に関する。
【0002】
より一般的には、本発明は、ディーゼルエンジン用のディーゼルフィルタまたは燃料供給システムに適用可能である。
【背景技術】
【0003】
これらの応用分野においては、気体の状態の或る量の物質(以下では、簡潔にするため「空気」と称する)を溶存させて含むディーゼル燃料の流れが存在する。
【0004】
ディーゼル燃料中に存在する空気は、ディーゼル燃料よりも比重が小さいがゆえに、フィルタ部材を収容しているチャンバの上部に溜まりがちであり、したがってフィルタの機能の最中に取り除かれなければならない。この問題を予防するために、ディーゼル燃料および空気の流れと交差するネットで構成された装置が先行技術に存在し、気泡を破壊することで、出口における気泡を入り口における気泡よりも小さくしようとしている。
【0005】
他の公知の技術的解決策においては、先行技術に関する添付の図1および2に示されているように、フィルタ部材の支持部材に少なくとも1つの半径方向の孔が形成されており、ここでは半径方向の孔が、参照符号50で示され、空気の高さが、Lで示されている。
【0006】
しかしながら、この公知の技術的解決策は、フィルタの上部に空気が溜まるほか、フィルタカートリッジの内部チャンバにも空気が溜まり(図2)、空気の高さが出口穴に達したとき、供給されるディーゼル燃料へと大きな気泡が突然に進入し、特に高圧ポンプおよびインジェクタなどといったフィルタの下流の機関において問題を引き起こすため、満足できるものではない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点を、ディーゼル燃料中の気泡のサイズをフィルタの下流に位置する機関に問題を引き起こすことがない小さなサイズにまで小さくする装置により、取り除くことにある。
【0008】
本発明のさらなる目的は、ディーゼル燃料中の気泡のサイズを小さくする装置であって、フィルタカートリッジの一般的な構成部品に一体化させることができる装置を実現することにある。
【0009】
本発明のまたさらなる目的は、上述の結果を有利かつ経済的な方法で達成することにある。
【0010】
これらの目的は、ディーゼル燃料用のフィルタであって、少なくともディーゼル燃料の導入管および導出管を有し、円筒形の支持部材へと挿入されて該支持部材により支持されたドーナツ形のフィルタ部材が少なくとも設けられ、前記フィルタは、ディーゼル燃料に存在する気泡のサイズを小さくする装置をさらに備え、該装置が、円筒形の支持部材に取り付けられた少なくとも1つの空気運搬室を備え、前記空気運搬室が、当該フィルタに溜まった空気を、小さな気泡の形態で前記フィルタから出すディーゼル燃料の流れへと進入させるように出すことができる少なくとも1つの孔を備え、前記空気運搬室が、前記円筒形の支持部材の内側に向かって突出する該円筒形の支持部材の膨出部により形成されているフィルタによって達成される。
【0011】
本発明のさらなる特徴を、従属請求項から推論することができる。
【0012】
本発明のさらなる特徴および利点が、あくまでも本発明を限定するものではない例として提示される以下の説明を、添付の図面に示される図と併せて検討することによって、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】先行技術によるディーゼル燃料用のフィルタの垂直面に沿った断面を示している。
【図2】先行技術によるディーゼル燃料用のフィルタの垂直面に沿った断面を示している。
【図3】本発明に従って実現されたディーゼル燃料用のフィルタの垂直面に沿った断面を示している。
【図4】本発明の装置に取り付けられたディーゼル燃料用のフィルタの図3の平面IV−IVに沿ったさらなる断面である。
【図5】図3と同じ断面であり、フィルタ内の空気の第1の高さを示している。
【図6】フィルタの内部で空気が適切な高さに達したときの本発明の装置の働きを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図3〜6は、内燃機関に設置され、本発明の装置が取り付けられるディーゼル燃料用のフィルタを示しており、そのようなフィルタの全体が、符号1によって示されている。
【0015】
フィルタは、ベース12に取り付けられた、おおむねビーカ状の外ケーシング2を備え、ケーシング2が、ケーシング2の内径よりも小さい外径を有するドーナツ形のフィルタ部材3を収容している。このようにして、ビーカ2の内側の空洞が、ビーカ2とフィルタ部材3との間に形成される環状の外チャンバ21と、フィルタ部材3を横切る中央の長手方向領域にもたらされる円柱形の内側チャンバ22とに分割されている。
【0016】
フィルタ処理すべきディーゼル燃料の導入管4が、外チャンバ21へと開口しており、内側チャンバ22が、ケーシング2の上部に用意されたフィルタ処理後の液体ディーゼル燃料の導出管5に連通している。
【0017】
フィルタ部材3は、円筒形の支持部材13へと挿入されてこの支持部材13によって支持され、上側プレート6と下側プレート7との間に備えられており、上側プレート6が、ブッシュ8によりディーゼル燃料の導出管5の下部に取り付けられている。
【0018】
さらに、支持部材13が、フィルタ処理後のディーゼル燃料を内側チャンバ22へと通過させることができる窓14を備えている。
【0019】
本発明によれば、ディーゼル燃料に存在する気泡のサイズを小さくする装置が、少なくとも1つの空気運搬室10を含んでおり、空気運搬室10は、円筒形の支持部材13と一体に設けられて内側チャンバ22の内部へと突出する円筒形の支持部材13の膨出部により形成されている。
【0020】
空気運搬室10には、流出するディーゼル燃料の流れの近くに位置する少なくとも1つの小孔11が設けられ、この小孔から小さな気泡の形態でディーゼル燃料へと進入するように空気を出すことができる。
【0021】
空気運搬室10は、上側プレート6に近接し、空気に対する物理的な障壁を形成する支持部材13の位置9に接続されている。
【0022】
好ましくは、運搬室には孔11が1つだけ存在するが、2つ以上の孔が横並びに位置する実施例も可能である。
【0023】
特に、孔11が、好ましくは、気泡の放出を容易にするよう、フィルタ処理後の液体ディーゼル燃料の導出管5の垂直方向において、導出管5の入り口からわずかに離れた位置に実現される。
【0024】
好ましくは、孔11が、円錐形を有しており、小径側の基部がディーゼル燃料の導出管5から遠位にあり、大径側の基部が導出管5の近位にある。
【0025】
孔11の小径側の基部の直径は、0.5mm〜2mmの間の範囲とすることが好ましい。
【0026】
本発明の装置の工業化作業を容易にするため、フィルタ部材の対称性に鑑みて、2つの気泡サイズ縮小装置をフィルタに一体に設けることができ、そのような装置は、取り付けミスの防止などのために互いに対称であってよい。
【0027】
好ましい実施形態(図4)においては、空気運搬室10が、垂直面に沿った断面において、フィルタ処理後のディーゼル燃料の流出に適した開放空間を残す円形の外形を呈している。
【0028】
装置の動作(図5および6)の際に、ディーゼル燃料に存在する空気が、ディーゼル燃料と比べて比重が小さいがゆえに、フィルタ部材3を収容しているチャンバ21の上部において、所定の高さLに達するまで溜まる傾向にある。装置は、下流への空気の流出を物理的な障壁9によって防止する。このようにして保持される空気の量が増加すると、空気が空気運搬室10へと進入しがちになり、空気運搬室10から孔11を通って出されて、小さな気泡の形態でディーゼル燃料へと進入することができる。
【0029】
本発明は、以下の重要な利点を呈する。
【0030】
第一に、本発明は、フィルタカートリッジ室の内部に溜まる空気を、気泡を供給用のフィルタ処理後のディーゼル燃料へと注入することにより取り除く可能性を提供し、そのような気泡は、フィルタの下流において問題を引き起こすことがない程度に十分に小さい。さらに、この装置は、例えばフィルタ部材の支持部材など、フィルタカートリッジおよび/またはフィルタの一般的な構成部品に一体化させることができ、これは必要な構成部品の総数の最適化につながる明白な利点である。
【0031】
このようにして、フィルタカートリッジの内部チャンバへの空気の蓄積が回避され、大きな気泡が供給用のディーゼル燃料へと比較的予測不可能に進入することも防止される。
【0032】
当然ながら、添付の特許請求の範囲に記載されるとおりの本発明の範囲から離れることなく、偶発的な出来事または特有の状況に応じて、本明細書において説明したとおりの本発明について、変更または改善を行うことが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼル燃料用のフィルタであって、
少なくともディーゼル燃料の導入管(4)および導出管(5)を有し、
円筒形の支持部材(13)へと挿入されて該支持部材(13)により支持されたドーナツ形のフィルタ部材(3)が少なくとも設けられ、
前記フィルタは、ディーゼル燃料に存在する気泡のサイズを小さくする装置をさらに備え、
該装置が、前記円筒形の支持部材(13)に取り付けられた少なくとも1つの空気運搬室(10)を備え、
前記空気運搬室(10)が、当該フィルタに溜まった空気を、小さな気泡の形態で前記フィルタから出るディーゼル燃料の流れへと進入させるように出すことができる少なくとも1つの孔(11)を備え、
前記空気運搬室が、前記円筒形の支持部材(13)の内側に向かって突出する該円筒形の支持部材(13)の膨出部により形成されているフィルタ。
【請求項2】
前記空気運搬室(10)が、前記円筒形の支持部材(13)の部位(9)へと接続され、該部位(9)は、前記空気運搬室(10)の中へと空気を運ぶための物理的な障壁を、前記フィルタ部材(3)に取り付けられた上側プレート(6)に近接して形成している請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記孔(11)が、気泡の排出を促進するなどの目的で、フィルタ処理後の液体ディーゼル燃料の前記導出管(5)の鉛直部分に設けられている請求項1に記載のフィルタ。
【請求項4】
孔(11)が、円錐形を有しており、円錐形の小径側の基部が前記ディーゼル燃料の導出管(5)から遠位にあり、円錐形の大径側の基部が前記出口管(5)の近位にある請求項1に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記孔(11)の小径側の基部の直径が、0.5mm〜2mmの間の範囲にて選択される請求項4に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記空気運搬室(10)が、垂直面に沿った断面において、フィルタ処理後のディーゼル燃料の流出に適した開放空間を残す円形の外形を呈している請求項1に記載のフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−504000(P2013−504000A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527271(P2012−527271)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061747
【国際公開番号】WO2011/029689
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(511259142)
【Fターム(参考)】