エンジンベンチシステムのパラメータ推定装置
【課題】エンジンベンチシステムにおけるパラメータでは推定は、1回の測定試験で複数のパラメータを推定することはできなかった。
【解決手段】実測した周波数ωでの周波数応答HRを算出する。また、モデルパラメータ初期値設定手段によりモデルパラメータの初期値PMOを設定し、設定されたモデルパラメータ初期値に基づいてモデルボード線図データHMを計算する。求めたHRとHMとを用いて(HRHM)/HRの絶対値を対数スケールで予め設定した周波数ω0からω1までを積分して評価関数を演算し、算出された評価関数が収束したか否かを収束判定手段にて判定する。収束してない場合には新たなモデルパラメータを算出してモデル関数算出手段によりHMを算出するよう構成した。
【解決手段】実測した周波数ωでの周波数応答HRを算出する。また、モデルパラメータ初期値設定手段によりモデルパラメータの初期値PMOを設定し、設定されたモデルパラメータ初期値に基づいてモデルボード線図データHMを計算する。求めたHRとHMとを用いて(HRHM)/HRの絶対値を対数スケールで予め設定した周波数ω0からω1までを積分して評価関数を演算し、算出された評価関数が収束したか否かを収束判定手段にて判定する。収束してない場合には新たなモデルパラメータを算出してモデル関数算出手段によりHMを算出するよう構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンベンチシステムにおけるパラメータ推定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンベンチシステムによって、ダイナモメータのトルク制御・速度制御を実施しながらエンジンの耐久性や燃費、排ガス計測等の性能試験ECU(Electronic Control unit)適合試験が行われる。その際、予めエンジンの慣性モーメントを測定し、その測定値をパラメータとして使用することが行われるが、エンジンの慣性モーメントの推定方法としては、特許文献1や特許文献2のようなものが公知となっている。
【0003】
特許文献1では、試供体であるエンジンの慣性モーメントを推定するために、エンジンが一般には回転数に略比例した損失を持つという特性を利用して、回転数に依存した損失を予め測定し、その後、エンジンをある回転数からある回転数まで変化させ、その時に要した加速トルクとエンジンの運動方程式(J(dw/dt)+c.w=T、ただしJ=慣性モーメント、w=回転数、c=損失、T=加速トルク)からエンジンの慣性モーメントを推定している。
【0004】
特許文献2では、エンジンベンチシステムのエンジンとダイナモメータを結合するシャフトの捩れ剛性を推定するために、シャフトを介してダイナモメータと固定装置を固定し、ダイナモメータから加振することにより測定された共振周波数とダイナモメータの慣性モーメント設計値からシャフトの捩れ剛性を算出している。
【特許文献1】特開2003−121307号公報
【特許文献2】特開2003−207423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1におけるエンジン慣性モーメントの推定方法は、エンジンの損失を予め測定し、測定された損失トルクを考慮してエンジン慣性モーメントを推定するものであるが、エンジンベンチシステムの機械系によっては、エンジンを含めた機械系の損失が、回転数の定常値のみに依存するだけでなく、回転数の変化の履歴にも依存する場合がある。そのような場合、回転数の定常値に依存した損失トルクのみの補正にとどまっているため、精確なエンジン慣性モーメントを推定することが困難となる。
【0006】
また、エンジンの慣性モーメントを推定するためには、エンジンをある回転数からある回転数まで変化させる必要がある。このとき、機械系の共振破壊を防ぐために、当該機械系の危険速度、例えば、エンジン脈動トルク周波数が機械系共振周波数と一致するような回転数がエンジン慣性モーメント測定時の速度に入らないようにする必要がある。その場合、エンジン脈動トルクの周波数分布と機械系共振周波数の組み合わせによっては、エンジン速度変化幅を十分にとることができず、エンジンの慣性モーメント測定が精確に実施できないことも考えられる。
【0007】
特許文献2におけるシャフトの捩れ剛性推定方法では、固定装置を必要とするため捩れ剛性を推定するのに手間がかかる。また、捩れ剛性推定の元になるパラメータとしてのダイナモメータ慣性モーメントの設計値を使用しているが、さまざまなカップリング装置の慣性モーメントなどの影響により、実際の加振装置(ダイナモメータ)の慣性モーメントが必ずしも設計値どおりにはならず、そのため、推定される捩れ剛性にも誤差が発生することになる。
【0008】
そこで、パラメータ推定方法として、エンジンベンチシステムの実測されたボード線図から、そのエンジンベンチシステムを2慣性機械系とみなした場合の慣性モーメント、ばね剛性、インバータ直流ゲインの各物理パラメータの推定方法が考えられている。この方法は複数のパラメータを1回の測定試験でパラメータの推定が可能となる優れた特徴を有している。
【0009】
しかし、この方法の場合、図10で○を付したア、イ、ウの部位のように実測されたボード線図でのゲイン特性などの特徴点のみに着目して物理パラメータの推定を行っているため、各種の遅れ要素の推定が不可能となっている。各種の遅れ要素とは、例えば、インバータのトルク指令の伝達遅れや、トルクおよび速度の検出無駄時間などである。
【0010】
また、この方法は、ボード線図の全体的な形状に合わせるようなパラメータの推定ではなく、例えば、共振周波数や直流ゲインといったある特徴点のみに着目した推定となっているため、場合によっては推定パラメータに基づくボード線図と実測されたボード線図にずれが発生する。図11、図12はその状態を示したもので、図11による太線は、実測した動力計トルク電流指令→軸トルク検出のボード線図、細線が推定したモデルパラメータから計算したモデルボード線図である。また、図12は動力計トルク電流指令→動力計速度検出の特性で、太線が実測であり細線がモデル計算値である。両図とも太線と細線との間にずれが生じている。
【0011】
そこで、本発明が目的とするところは、必要とされる制御性能を出すために各種検出遅れや機械系の3慣性系以上の特性をも推定可能としたエンジンベンチシステムのパラメータ推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1は、エンジンと動力計を結合シャフトを介して連結し、この動力計をインバータにて制御するよう構成したエンジンベンチシステムであって、動力計トルクをランダムに加振したときの動力計の速度と、軸トルクを実測して検出保存部に記憶し、記憶データを演算部によって取り出してエンジンベンチシステムのパラメータを推定するものにおいて、
前記演算部にパラメータ同定部を設け、このパラメータ同定部は、前記実測した周波数ωでの周波数応答HRを算出する実測ボード線図算出手段と、モデルパラメータの初期値PMOを設定するモデルパラメータ初期値設定手段と、設定されたモデルパラメータ初期値に基づいてモデルボード線図データHMを計算するモデル関数算出手段と、前記求めたHRとHMとを用いて(HR−HM)/HRの絶対値を対数スケールで予め設定した周波数ω0からω1までを積分して評価関数を演算する評価関数算出手段と、算出された評価関数が収束したか否かを収束判定手段にて判定し、収束してない場合には新たなモデルパラメータを算出して前記モデル関数算出手段によりHMを算出するよう構成したことを特徴としたものである。
【0013】
本発明の請求項2は、前記モデルパラメータ初期値設定手段によるパラメータ変数は、2慣性系の機械パラメータ、インバータ特性及び動力計速度、軸トルクの各検出器による検出遅れであることを特徴としたものである。
【0014】
本発明の請求項3は、前記モデルパラメータ初期値設定手段によるパラメータ変数は、3慣性系の機械パラメータ、インバータ特性及び動力計速度、軸トルクの各検出器による検出遅れであることを特徴としたものである。
【0015】
本発明の請求項4は、前記インバータを介して運転される動力計の制御は、トルク電流制御であることを特徴としたものである。
【0016】
本発明の請求項5は、前記インバータを介して運転される動力計の制御は、一定の速度指令が与えられる速度制御であることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、本発明によれば、2慣性系と3慣性系の機械系パラメータ及びインバータ特性、各種検出遅れ特性を精度よく推定可能となるものである。また、動力計を速度制御することにより、測定中にエンジン回転数が変化しても速度を一定に保ちながら安定した測定が可能となるものである。更に、3慣性系のパラメータ推定が可能となったことにより、クラッチなどのばね要素が存在しても精度よく推定可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1実施例を示す構成図で、エンジンベンチシステムにおける機械系パラメータの推定装置を示したものである。同図において、1は被試験体であるエンジン、2はダイナモメータ(動力計)で、結合シャフト3を介してエンジン1と連結されている。4は開度制御部で、開度指令部13からの指令に基づいて開度信号を演算する。5はスロットルアクチュエータで、このスロットルアクチュエータにより開度信号に基づきスロットル開度が制御される。
【0019】
6はトルクメータ、7は速度計で、これら各計測器によって検出されたトルク及び速度信号は検出保存部8によって所定の処理が実行され、その値が保存される。9はパーソナルコンピュータなどよりなる演算部で、エンジンベンチシステムの各種信号の入力・記録やシステムに対する各種パラメータのダウンロード、及び各種指令値の設定を行うと共に、モデルを構築してそのパラメータ同定を実行するパラメータ同定部を備えている。10はインバータで、トルク電流制御部11からの出力信号に基づいて動力計2に対するトルク・速度制御を実行する。12はトルク電流指令部で、直流値とランダム値を含む電流指令値を発生し、トルク電流制御部11と検出保存部8に出力される。
【0020】
この機械系パラメータの推定装置において、エンジン1は開度制御部4の出力によりある一定の開度状態で制御され、また、動力計2は直流値とランダム値を含む電流指令値に応じてトルク電流制御部11を介して制御される。
ここで、ランダム値とは、予め指定した標準偏差になるようなガウス分布の乱数信号である。トルクメータ6により検出された軸トルク検出値と、速度計7により検出された動力計の速度検出値、及びトルク電流指令部12からのトルク電流指令は検出保存部8において、ある時間長保存される。
【0021】
図2は、2慣性系の機械パラメータ及び、インバータ特性、各種検出遅れ特性を推定するためのモデルで、インバータの一次遅れ要素21にはトルク電流指令部12から出力されたトルク設定T2refが入力され、減算部27においてばね要素23によって生成されたばねトルクと減算される。その偏差値は2慣性系における第2の慣性モーメント要素22に出力され、所定の遅れを持って動力計速度の検出無駄時間要素25を経て出力ω2detとなる。
【0022】
第2の慣性モーメント要素22の出力は減算部28にも出力され、この減算部28において第1の慣性モーメント要素24の出力との差演算が実行され、その差信号はばね要素23に出力される。ばね要素23では、差信号に基づくPI演算を実行してばねトルクを生成し、その値を軸トルクの検出無駄時間要素26を経てT12detとして出力すると共に、減算部27と第1の慣性モーメント要素24に出力する。
【0023】
図3は、図1で示した推定装置の各種測定データを用いて2慣性系の機械パラメータ及び、インバータ特性、各種検出遅れ特性を推定するフローチャートを示したものである。
【0024】
先ず、ステップS1ではボード線図データ算出手段において実測されたボード線図データを算出する。そのために演算部9では、測定終了後に検出保存部8に保存された実測値によるトルク電流指令と軸トルク検出値を用いてボード線図A(トルク電流指令→軸トルク検出)と、トルク電流指令と動力計の速度検出値を用いてのボード線図B(トルク電流指令→動力計の速度検出)が演算され、これがステップS1の実測されたボード線図データの実測ボード線図データ(ω、HR)である。ここで、ωは周波数の実測値、HRはωでの周波数応答を表す複素数である。
【0025】
ステップS2では、モデルパラメータ初期値設定手段により図2で示すようなモデルに適切なパラメータ初期値PMOを設定する。初期値PMO設定のためのパラメータ変数としては、インバータ直流ゲインKI、インバータ応答周波数ωI、機械系慣性モーメントJ1,J2、機械系回転損失C1,C2、機械系ばね定数K12、機械系ばね損失C12、及び軸トルク検出無駄時間TT、動力計速度検出無駄時間TEである。ステップS3では、モデル関数算出手段によりモデルボード線図の周波数ω(実測値と同じ周波数)と周波数応答HMを計算する。
【0026】
すうータ)、図3ステップS4では、評価関数算出手段により実測されたωとHR及びモデルのHMとを用いて(1)式の演算を実行して評価関数F(HR、HM)を求める。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、関数Fの意味は、(HR−HM)/HRの絶対値をlogスケールで予め設定した周波数ω0からω1まで積分することである。ステップS5では、非線形計画法に基づく収束判定を実行し、収束してなかった場合には、ステップS6でモデルパラメータ算出手段により非線形計画法によって新たなモデルパラメータPMを算出し、算出値PMをモデル関数算出手段に送出して新たなHMを算出する。
【0029】
図2で示すモデルでは、T2ref→T12det、すなわち、T2ref→27→22→28→23→26→T12detのルートによるボード線図AMと、T2ref→ω2det、すなわち、T2ref→27→22→ω2detのルートによるボード線図BMを計算し、図3で示したフローチャートに基づいてモデルパラメータ推定が実行される。
【0030】
図4及び図5は本発明により推定したモデルパラメータから計算したモデルボード線図を示したものである。図4による太線は、実測した動力計トルク電流指令→軸トルク検出のボード線図、細線が推定したモデルパラメータから計算したモデルボード線図である。また、図5は動力計トルク電流指令→動力計速度検出の特性で、太線が実測であり細線がモデル計算値である。両図とも殆ど実測値と一致しており、第1の実施例によれば精度よくパラメータ推定がなされていることが分かる。
【0031】
図6は第2の実施例を示した構成図である。図1で示す第1の実施例との相違は、動力計2が速度制御されている点で他は図1と同様である。すなわち、速度指令部14により設定された一定の速度指令は低応答の速度制御部15に出力される。速度制御部15では、速度計7によって検出された動力計2の速度信号が入力されており、両者の差信号が0となる方向の速度制御信号が演算される。この速度制御信号は、トルク電流指令部12から出力されたランダム値からなるトルク電流指令と加算されてインバータ10に出力され、このインバータ10を介して動力計2を速度制御する。
【0032】
したがって、この実施例で使用するモデルには、図7で示すように実機に適用されている速度制御ブロックが含まれる。実測するボード線図は、T2ref→T12det(ボード線図AM)、及びT2ref→ω2det(ボード線図BM)を計算し、
図3で示すフローチャートによりモデルパラメータ推定が実行される。
【0033】
この実施例においても図4及び図5で示すような高精度のパラメータ推定が可能となると共に、次のような効果が生じる。
エンジンベンチシステムにおいて、エンジンが開度制御であるのに対して、動力計もトルク電流指令であり、システムとして速度を制御している装置がないと測定中にエンジン回転数が変化したとき、場合によってはエンストなどの異常現象が発生することがある。第2の実施例では、速度制御部15によって動力計を速度制御していることにより、速度を一定に保つことが可能となって安定な測定が可能となる。
【0034】
図8は第3の実施例を示すモデルで、図1で示す機械系パラメータの推定装置に適用した場合で、図2及び図7との相違点は機械系に第3の慣性モーメントJ3と機械系回転損失C3機械系ばね定数K23及びばね損失C23を有す場合を示したものである。これは、機械系構成にクラッチ+変速機が入っている場合を意図したものである。すなわち、31が第3の慣性モーメント要素で、この要素31には、減算部29によって算出されたインバータの一次遅れ要素21の出力と、ばね要素32によって算出された第2のばねトルクとの偏差信号を入力して第3の慣性モーメントの速度を演算し、その出力は動力計速度の検出無駄時間要素25’を経て出力ω3detとなる。
【0035】
第3の慣性モーメント要素31の出力は減算部30にも印加されて第2の慣性モーメント要素22の出力との差演算が実行され、その差信号は第2のばね要素32に出力される。ばね要素32では、差信号に基づくPI演算を実行して第2のばねトルクを生成し、その値を軸トルクの検出無駄時間要素26’を経てT23detとして出力すると共に、減算部27と29に出力する。第2の慣性モーメント要素22は減算部27によって算出された第2のばねトルクと第1のばねトルクとの差信号を導入し、この差信号に対応した遅れ信号を減算部28と30に出力する。以下は図2及び図7と同様である。
【0036】
この第3の実施例によれば、クラッチなどの結合シャフト以外のばね要素がある機械システムに対しても、第1の実施例と同様の精度を有するパラメータ推定が可能となる。
【0037】
図9は図6で示す機械系パラメータの推定装置に適用した場合の第4の実施例を示すモデルである。図9において、図8との相違点は実機に適用されている速度制御ブロックが含まれることで、他は図8と同様である。
この第4の実施例によれば、第3の実施例による効果に、更に安定な速度制御を行っている状態での測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明によるエンジンベチシステムのパラメータ推定装置の構成図。
【図2】本発明による2慣性モデル図。
【図3】本発明によるパラメータ推定のフローチャート。
【図4】パラメータ推定(動力計トルク電流指令→軸トルク検出)によるボード線図。
【図5】パラメータ推定(動力計トルク電流指令→動力計速度検出)によるボード線図。
【図6】本発明によるエンジンベチシステムのパラメータ推定装置の構成図。
【図7】本発明による他の2慣性モデル図。
【図8】本発明による3慣性モデル図。
【図9】本発明による他の3慣性モデル図。
【図10】従来の説明のためのボード線図。
【図11】従来のパラメータ推定(動力計トルク電流指令→軸トルク検出)によるボード線図。
【図12】従来のパラメータ推定(動力計トルク電流指令→動力計速度検出)によるボード線図。
【符号の説明】
【0039】
1… エンジン
2… 動力計
3… 結合シャフト
4… エンジン開度制御部
5… スロットルアクチュエータ
6… トルクメータ
7… 速度計
8… 検出・保存部
9… 演算部
10… インバータ
11… トルク電流制御部
12… トルク電流指令部
15…速度制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンベンチシステムにおけるパラメータ推定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンベンチシステムによって、ダイナモメータのトルク制御・速度制御を実施しながらエンジンの耐久性や燃費、排ガス計測等の性能試験ECU(Electronic Control unit)適合試験が行われる。その際、予めエンジンの慣性モーメントを測定し、その測定値をパラメータとして使用することが行われるが、エンジンの慣性モーメントの推定方法としては、特許文献1や特許文献2のようなものが公知となっている。
【0003】
特許文献1では、試供体であるエンジンの慣性モーメントを推定するために、エンジンが一般には回転数に略比例した損失を持つという特性を利用して、回転数に依存した損失を予め測定し、その後、エンジンをある回転数からある回転数まで変化させ、その時に要した加速トルクとエンジンの運動方程式(J(dw/dt)+c.w=T、ただしJ=慣性モーメント、w=回転数、c=損失、T=加速トルク)からエンジンの慣性モーメントを推定している。
【0004】
特許文献2では、エンジンベンチシステムのエンジンとダイナモメータを結合するシャフトの捩れ剛性を推定するために、シャフトを介してダイナモメータと固定装置を固定し、ダイナモメータから加振することにより測定された共振周波数とダイナモメータの慣性モーメント設計値からシャフトの捩れ剛性を算出している。
【特許文献1】特開2003−121307号公報
【特許文献2】特開2003−207423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1におけるエンジン慣性モーメントの推定方法は、エンジンの損失を予め測定し、測定された損失トルクを考慮してエンジン慣性モーメントを推定するものであるが、エンジンベンチシステムの機械系によっては、エンジンを含めた機械系の損失が、回転数の定常値のみに依存するだけでなく、回転数の変化の履歴にも依存する場合がある。そのような場合、回転数の定常値に依存した損失トルクのみの補正にとどまっているため、精確なエンジン慣性モーメントを推定することが困難となる。
【0006】
また、エンジンの慣性モーメントを推定するためには、エンジンをある回転数からある回転数まで変化させる必要がある。このとき、機械系の共振破壊を防ぐために、当該機械系の危険速度、例えば、エンジン脈動トルク周波数が機械系共振周波数と一致するような回転数がエンジン慣性モーメント測定時の速度に入らないようにする必要がある。その場合、エンジン脈動トルクの周波数分布と機械系共振周波数の組み合わせによっては、エンジン速度変化幅を十分にとることができず、エンジンの慣性モーメント測定が精確に実施できないことも考えられる。
【0007】
特許文献2におけるシャフトの捩れ剛性推定方法では、固定装置を必要とするため捩れ剛性を推定するのに手間がかかる。また、捩れ剛性推定の元になるパラメータとしてのダイナモメータ慣性モーメントの設計値を使用しているが、さまざまなカップリング装置の慣性モーメントなどの影響により、実際の加振装置(ダイナモメータ)の慣性モーメントが必ずしも設計値どおりにはならず、そのため、推定される捩れ剛性にも誤差が発生することになる。
【0008】
そこで、パラメータ推定方法として、エンジンベンチシステムの実測されたボード線図から、そのエンジンベンチシステムを2慣性機械系とみなした場合の慣性モーメント、ばね剛性、インバータ直流ゲインの各物理パラメータの推定方法が考えられている。この方法は複数のパラメータを1回の測定試験でパラメータの推定が可能となる優れた特徴を有している。
【0009】
しかし、この方法の場合、図10で○を付したア、イ、ウの部位のように実測されたボード線図でのゲイン特性などの特徴点のみに着目して物理パラメータの推定を行っているため、各種の遅れ要素の推定が不可能となっている。各種の遅れ要素とは、例えば、インバータのトルク指令の伝達遅れや、トルクおよび速度の検出無駄時間などである。
【0010】
また、この方法は、ボード線図の全体的な形状に合わせるようなパラメータの推定ではなく、例えば、共振周波数や直流ゲインといったある特徴点のみに着目した推定となっているため、場合によっては推定パラメータに基づくボード線図と実測されたボード線図にずれが発生する。図11、図12はその状態を示したもので、図11による太線は、実測した動力計トルク電流指令→軸トルク検出のボード線図、細線が推定したモデルパラメータから計算したモデルボード線図である。また、図12は動力計トルク電流指令→動力計速度検出の特性で、太線が実測であり細線がモデル計算値である。両図とも太線と細線との間にずれが生じている。
【0011】
そこで、本発明が目的とするところは、必要とされる制御性能を出すために各種検出遅れや機械系の3慣性系以上の特性をも推定可能としたエンジンベンチシステムのパラメータ推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1は、エンジンと動力計を結合シャフトを介して連結し、この動力計をインバータにて制御するよう構成したエンジンベンチシステムであって、動力計トルクをランダムに加振したときの動力計の速度と、軸トルクを実測して検出保存部に記憶し、記憶データを演算部によって取り出してエンジンベンチシステムのパラメータを推定するものにおいて、
前記演算部にパラメータ同定部を設け、このパラメータ同定部は、前記実測した周波数ωでの周波数応答HRを算出する実測ボード線図算出手段と、モデルパラメータの初期値PMOを設定するモデルパラメータ初期値設定手段と、設定されたモデルパラメータ初期値に基づいてモデルボード線図データHMを計算するモデル関数算出手段と、前記求めたHRとHMとを用いて(HR−HM)/HRの絶対値を対数スケールで予め設定した周波数ω0からω1までを積分して評価関数を演算する評価関数算出手段と、算出された評価関数が収束したか否かを収束判定手段にて判定し、収束してない場合には新たなモデルパラメータを算出して前記モデル関数算出手段によりHMを算出するよう構成したことを特徴としたものである。
【0013】
本発明の請求項2は、前記モデルパラメータ初期値設定手段によるパラメータ変数は、2慣性系の機械パラメータ、インバータ特性及び動力計速度、軸トルクの各検出器による検出遅れであることを特徴としたものである。
【0014】
本発明の請求項3は、前記モデルパラメータ初期値設定手段によるパラメータ変数は、3慣性系の機械パラメータ、インバータ特性及び動力計速度、軸トルクの各検出器による検出遅れであることを特徴としたものである。
【0015】
本発明の請求項4は、前記インバータを介して運転される動力計の制御は、トルク電流制御であることを特徴としたものである。
【0016】
本発明の請求項5は、前記インバータを介して運転される動力計の制御は、一定の速度指令が与えられる速度制御であることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、本発明によれば、2慣性系と3慣性系の機械系パラメータ及びインバータ特性、各種検出遅れ特性を精度よく推定可能となるものである。また、動力計を速度制御することにより、測定中にエンジン回転数が変化しても速度を一定に保ちながら安定した測定が可能となるものである。更に、3慣性系のパラメータ推定が可能となったことにより、クラッチなどのばね要素が存在しても精度よく推定可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1実施例を示す構成図で、エンジンベンチシステムにおける機械系パラメータの推定装置を示したものである。同図において、1は被試験体であるエンジン、2はダイナモメータ(動力計)で、結合シャフト3を介してエンジン1と連結されている。4は開度制御部で、開度指令部13からの指令に基づいて開度信号を演算する。5はスロットルアクチュエータで、このスロットルアクチュエータにより開度信号に基づきスロットル開度が制御される。
【0019】
6はトルクメータ、7は速度計で、これら各計測器によって検出されたトルク及び速度信号は検出保存部8によって所定の処理が実行され、その値が保存される。9はパーソナルコンピュータなどよりなる演算部で、エンジンベンチシステムの各種信号の入力・記録やシステムに対する各種パラメータのダウンロード、及び各種指令値の設定を行うと共に、モデルを構築してそのパラメータ同定を実行するパラメータ同定部を備えている。10はインバータで、トルク電流制御部11からの出力信号に基づいて動力計2に対するトルク・速度制御を実行する。12はトルク電流指令部で、直流値とランダム値を含む電流指令値を発生し、トルク電流制御部11と検出保存部8に出力される。
【0020】
この機械系パラメータの推定装置において、エンジン1は開度制御部4の出力によりある一定の開度状態で制御され、また、動力計2は直流値とランダム値を含む電流指令値に応じてトルク電流制御部11を介して制御される。
ここで、ランダム値とは、予め指定した標準偏差になるようなガウス分布の乱数信号である。トルクメータ6により検出された軸トルク検出値と、速度計7により検出された動力計の速度検出値、及びトルク電流指令部12からのトルク電流指令は検出保存部8において、ある時間長保存される。
【0021】
図2は、2慣性系の機械パラメータ及び、インバータ特性、各種検出遅れ特性を推定するためのモデルで、インバータの一次遅れ要素21にはトルク電流指令部12から出力されたトルク設定T2refが入力され、減算部27においてばね要素23によって生成されたばねトルクと減算される。その偏差値は2慣性系における第2の慣性モーメント要素22に出力され、所定の遅れを持って動力計速度の検出無駄時間要素25を経て出力ω2detとなる。
【0022】
第2の慣性モーメント要素22の出力は減算部28にも出力され、この減算部28において第1の慣性モーメント要素24の出力との差演算が実行され、その差信号はばね要素23に出力される。ばね要素23では、差信号に基づくPI演算を実行してばねトルクを生成し、その値を軸トルクの検出無駄時間要素26を経てT12detとして出力すると共に、減算部27と第1の慣性モーメント要素24に出力する。
【0023】
図3は、図1で示した推定装置の各種測定データを用いて2慣性系の機械パラメータ及び、インバータ特性、各種検出遅れ特性を推定するフローチャートを示したものである。
【0024】
先ず、ステップS1ではボード線図データ算出手段において実測されたボード線図データを算出する。そのために演算部9では、測定終了後に検出保存部8に保存された実測値によるトルク電流指令と軸トルク検出値を用いてボード線図A(トルク電流指令→軸トルク検出)と、トルク電流指令と動力計の速度検出値を用いてのボード線図B(トルク電流指令→動力計の速度検出)が演算され、これがステップS1の実測されたボード線図データの実測ボード線図データ(ω、HR)である。ここで、ωは周波数の実測値、HRはωでの周波数応答を表す複素数である。
【0025】
ステップS2では、モデルパラメータ初期値設定手段により図2で示すようなモデルに適切なパラメータ初期値PMOを設定する。初期値PMO設定のためのパラメータ変数としては、インバータ直流ゲインKI、インバータ応答周波数ωI、機械系慣性モーメントJ1,J2、機械系回転損失C1,C2、機械系ばね定数K12、機械系ばね損失C12、及び軸トルク検出無駄時間TT、動力計速度検出無駄時間TEである。ステップS3では、モデル関数算出手段によりモデルボード線図の周波数ω(実測値と同じ周波数)と周波数応答HMを計算する。
【0026】
すうータ)、図3ステップS4では、評価関数算出手段により実測されたωとHR及びモデルのHMとを用いて(1)式の演算を実行して評価関数F(HR、HM)を求める。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、関数Fの意味は、(HR−HM)/HRの絶対値をlogスケールで予め設定した周波数ω0からω1まで積分することである。ステップS5では、非線形計画法に基づく収束判定を実行し、収束してなかった場合には、ステップS6でモデルパラメータ算出手段により非線形計画法によって新たなモデルパラメータPMを算出し、算出値PMをモデル関数算出手段に送出して新たなHMを算出する。
【0029】
図2で示すモデルでは、T2ref→T12det、すなわち、T2ref→27→22→28→23→26→T12detのルートによるボード線図AMと、T2ref→ω2det、すなわち、T2ref→27→22→ω2detのルートによるボード線図BMを計算し、図3で示したフローチャートに基づいてモデルパラメータ推定が実行される。
【0030】
図4及び図5は本発明により推定したモデルパラメータから計算したモデルボード線図を示したものである。図4による太線は、実測した動力計トルク電流指令→軸トルク検出のボード線図、細線が推定したモデルパラメータから計算したモデルボード線図である。また、図5は動力計トルク電流指令→動力計速度検出の特性で、太線が実測であり細線がモデル計算値である。両図とも殆ど実測値と一致しており、第1の実施例によれば精度よくパラメータ推定がなされていることが分かる。
【0031】
図6は第2の実施例を示した構成図である。図1で示す第1の実施例との相違は、動力計2が速度制御されている点で他は図1と同様である。すなわち、速度指令部14により設定された一定の速度指令は低応答の速度制御部15に出力される。速度制御部15では、速度計7によって検出された動力計2の速度信号が入力されており、両者の差信号が0となる方向の速度制御信号が演算される。この速度制御信号は、トルク電流指令部12から出力されたランダム値からなるトルク電流指令と加算されてインバータ10に出力され、このインバータ10を介して動力計2を速度制御する。
【0032】
したがって、この実施例で使用するモデルには、図7で示すように実機に適用されている速度制御ブロックが含まれる。実測するボード線図は、T2ref→T12det(ボード線図AM)、及びT2ref→ω2det(ボード線図BM)を計算し、
図3で示すフローチャートによりモデルパラメータ推定が実行される。
【0033】
この実施例においても図4及び図5で示すような高精度のパラメータ推定が可能となると共に、次のような効果が生じる。
エンジンベンチシステムにおいて、エンジンが開度制御であるのに対して、動力計もトルク電流指令であり、システムとして速度を制御している装置がないと測定中にエンジン回転数が変化したとき、場合によってはエンストなどの異常現象が発生することがある。第2の実施例では、速度制御部15によって動力計を速度制御していることにより、速度を一定に保つことが可能となって安定な測定が可能となる。
【0034】
図8は第3の実施例を示すモデルで、図1で示す機械系パラメータの推定装置に適用した場合で、図2及び図7との相違点は機械系に第3の慣性モーメントJ3と機械系回転損失C3機械系ばね定数K23及びばね損失C23を有す場合を示したものである。これは、機械系構成にクラッチ+変速機が入っている場合を意図したものである。すなわち、31が第3の慣性モーメント要素で、この要素31には、減算部29によって算出されたインバータの一次遅れ要素21の出力と、ばね要素32によって算出された第2のばねトルクとの偏差信号を入力して第3の慣性モーメントの速度を演算し、その出力は動力計速度の検出無駄時間要素25’を経て出力ω3detとなる。
【0035】
第3の慣性モーメント要素31の出力は減算部30にも印加されて第2の慣性モーメント要素22の出力との差演算が実行され、その差信号は第2のばね要素32に出力される。ばね要素32では、差信号に基づくPI演算を実行して第2のばねトルクを生成し、その値を軸トルクの検出無駄時間要素26’を経てT23detとして出力すると共に、減算部27と29に出力する。第2の慣性モーメント要素22は減算部27によって算出された第2のばねトルクと第1のばねトルクとの差信号を導入し、この差信号に対応した遅れ信号を減算部28と30に出力する。以下は図2及び図7と同様である。
【0036】
この第3の実施例によれば、クラッチなどの結合シャフト以外のばね要素がある機械システムに対しても、第1の実施例と同様の精度を有するパラメータ推定が可能となる。
【0037】
図9は図6で示す機械系パラメータの推定装置に適用した場合の第4の実施例を示すモデルである。図9において、図8との相違点は実機に適用されている速度制御ブロックが含まれることで、他は図8と同様である。
この第4の実施例によれば、第3の実施例による効果に、更に安定な速度制御を行っている状態での測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明によるエンジンベチシステムのパラメータ推定装置の構成図。
【図2】本発明による2慣性モデル図。
【図3】本発明によるパラメータ推定のフローチャート。
【図4】パラメータ推定(動力計トルク電流指令→軸トルク検出)によるボード線図。
【図5】パラメータ推定(動力計トルク電流指令→動力計速度検出)によるボード線図。
【図6】本発明によるエンジンベチシステムのパラメータ推定装置の構成図。
【図7】本発明による他の2慣性モデル図。
【図8】本発明による3慣性モデル図。
【図9】本発明による他の3慣性モデル図。
【図10】従来の説明のためのボード線図。
【図11】従来のパラメータ推定(動力計トルク電流指令→軸トルク検出)によるボード線図。
【図12】従来のパラメータ推定(動力計トルク電流指令→動力計速度検出)によるボード線図。
【符号の説明】
【0039】
1… エンジン
2… 動力計
3… 結合シャフト
4… エンジン開度制御部
5… スロットルアクチュエータ
6… トルクメータ
7… 速度計
8… 検出・保存部
9… 演算部
10… インバータ
11… トルク電流制御部
12… トルク電流指令部
15…速度制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと動力計を結合シャフトを介して連結し、この動力計をインバータにて制御するよう構成したエンジンベンチシステムであって、動力計トルクをランダムに加振したときの動力計の速度と、軸トルクを実測して検出保存部に記憶し、記憶データを演算部によって取り出してエンジンベンチシステムのパラメータを推定するものにおいて、
前記演算部にパラメータ同定部を設け、このパラメータ同定部は、前記実測した周波数ωでの周波数応答HRを算出する実測ボード線図算出手段と、モデルパラメータの初期値PMOを設定するモデルパラメータ初期値設定手段と、設定されたモデルパラメータ初期値に基づいてモデルボード線図データHMを計算するモデル関数算出手段と、前記求めたHRとHMとを用いて(HR−HM)/HRの絶対値を対数スケールで予め設定した周波数ω0からω1までを積分して評価関数を演算する評価関数算出手段と、算出された評価関数が収束したか否かを収束判定手段にて判定し、収束してない場合には新たなモデルパラメータを算出して前記モデル関数算出手段によりHMを算出するよう構成したことを特徴とするエンジンベンチシステムのパラメータ推定装置。
【請求項2】
前記モデルパラメータ初期値設定手段によるパラメータ変数は、2慣性系の機械パラメータ、インバータ特性及び動力計速度、軸トルクの各検出器による検出遅れであることを特徴とする請求項1記載のエンジンベンチシステムのパラメータを推定装置。
【請求項3】
前記モデルパラメータ初期値設定手段によるパラメータ変数は、3慣性系の機械パラメータ、インバータ特性及び動力計速度、軸トルクの各検出器による検出遅れであることを特徴とする請求項1記載のエンジンベンチシステムのパラメータを推定装置。
【請求項4】
前記インバータを介して運転される動力計の制御は、トルク電流制御であることを特徴とする請求項1乃至3記載の何れかであることを特徴としたエンジンベンチシステムのパラメータを推定装置。
【請求項5】
前記インバータを介して運転される動力計の制御は、一定の速度指令が与えられる速度制御であることを特徴とした請求項1乃至3記載の何れかであるエンジンベンチシステムのパラメータを推定装置。
【請求項1】
エンジンと動力計を結合シャフトを介して連結し、この動力計をインバータにて制御するよう構成したエンジンベンチシステムであって、動力計トルクをランダムに加振したときの動力計の速度と、軸トルクを実測して検出保存部に記憶し、記憶データを演算部によって取り出してエンジンベンチシステムのパラメータを推定するものにおいて、
前記演算部にパラメータ同定部を設け、このパラメータ同定部は、前記実測した周波数ωでの周波数応答HRを算出する実測ボード線図算出手段と、モデルパラメータの初期値PMOを設定するモデルパラメータ初期値設定手段と、設定されたモデルパラメータ初期値に基づいてモデルボード線図データHMを計算するモデル関数算出手段と、前記求めたHRとHMとを用いて(HR−HM)/HRの絶対値を対数スケールで予め設定した周波数ω0からω1までを積分して評価関数を演算する評価関数算出手段と、算出された評価関数が収束したか否かを収束判定手段にて判定し、収束してない場合には新たなモデルパラメータを算出して前記モデル関数算出手段によりHMを算出するよう構成したことを特徴とするエンジンベンチシステムのパラメータ推定装置。
【請求項2】
前記モデルパラメータ初期値設定手段によるパラメータ変数は、2慣性系の機械パラメータ、インバータ特性及び動力計速度、軸トルクの各検出器による検出遅れであることを特徴とする請求項1記載のエンジンベンチシステムのパラメータを推定装置。
【請求項3】
前記モデルパラメータ初期値設定手段によるパラメータ変数は、3慣性系の機械パラメータ、インバータ特性及び動力計速度、軸トルクの各検出器による検出遅れであることを特徴とする請求項1記載のエンジンベンチシステムのパラメータを推定装置。
【請求項4】
前記インバータを介して運転される動力計の制御は、トルク電流制御であることを特徴とする請求項1乃至3記載の何れかであることを特徴としたエンジンベンチシステムのパラメータを推定装置。
【請求項5】
前記インバータを介して運転される動力計の制御は、一定の速度指令が与えられる速度制御であることを特徴とした請求項1乃至3記載の何れかであるエンジンベンチシステムのパラメータを推定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−203051(P2008−203051A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38716(P2007−38716)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
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