エンジンベンチシステムの制御装置
【課題】エンジンベンチシステムにおいては、エンジンの脈動トルクによる振動が重畳して運転条件によっては実際の軸トルク検出にまで影響を与える。
【解決手段】ダイナモメータに対するトルク制御部の前段に、エンジンのトルク変動に起因する振動成分を除去するためのバンド除去フィルタ回路を接続する。
また、このバンド除去フィルタ回路には回転速度信号を通す変換器を設け、この変換器の定数をエンジンのトルク変動の主要周波数成分を除去するように対応した定数に設定したものである。
【解決手段】ダイナモメータに対するトルク制御部の前段に、エンジンのトルク変動に起因する振動成分を除去するためのバンド除去フィルタ回路を接続する。
また、このバンド除去フィルタ回路には回転速度信号を通す変換器を設け、この変換器の定数をエンジンのトルク変動の主要周波数成分を除去するように対応した定数に設定したものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンベンチシステムの制御装置に係り、特にエンジン脈動トルクに起因する振動の発生を抑制した制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンベンチシステムは、エンジン、クラッチ、プロペラシャフト、軸トルクメータ及びダイナモメータ等より構成され、ダイナモメータのトルク制御を実施しながらエンジンの耐久試験や燃費、排ガス計測等の試験を行っている。このようなエンジンベンチシステムとしては、特許文献1が公知となっている。
【0003】
図11は特許文献1で示されたエンジンベンチシステムの制御装置の構成図で、エンジン1にシャフト2と軸トルクメータ3を介してダイナモメータ4を連結し、このダイナモメータ4はインバータ5によって駆動される。6は車両モデル部で、例えば4慣性系のばねモデルとサスペンション及びタイヤばねによる上下振動モデルよりなり、エンジン負荷トルク指令をトルク制御部7に出力する。トルク制御部7は、入力された車両モデル部6からのエンジンの負荷トルク指令値と、検出された回転速度信号、及び軸トルク信号とをもとにトルク電流指令を演算し、その出力に応じてインバータ5を介してダイナモメータ4を制御する。
【0004】
8はエンジン慣性モデル部で、このモデル部において(1/(Je・s))を演算してエンジンのモデル速度信号として車両モデル部6と減算部11に出力される。減算部11では、ダイナモメータ又はエンジンの速度検出信号とエンジンモデル速度信号との差演算が実行され、偏差信号はコントローラ9に出力される。コントローラ9の伝達関数G(s)は、例えばPIコントローラ(Kp+Ki/s)のような積分特性、もしくは比例特性をもった任意のコントローラが使用される。
ここで、Jeはエンジンの慣性モーメント、Kpは比例係数、Kiは積分係数である。
【0005】
コントローラ9の出力は、加算部12においてエンジントルクマップ10の出力と加算されて加算部13に出力され、この加算部13においてエンジンの負荷トルク指令値と加算されてエンジンモデル部に出力される。エンジントルクマップ10には、予め測定して用意したエンジン回転数とスロットル開度、及びエンジントルク特性の関係をグラフ化して格納されている。エンジンの試験が開始されると、検出されたダイナモメータ(又はエンジン)の速度信号とスロットル開度信号がエンジントルクマップ10に入力され、入力信号からエンジントルクを推定して加算部12に出力する。
【特許文献1】特開2004−177259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エンジンベンチシステムでは、機械的要因によってトルク制御部7の応答遅れが発生し、この応答遅れに起因してハンチング等の不安定現象が発生するが、 図 で示す制御装置は、その現象が防止できる効果を有している。しかし、エンジンが大型ディーゼルエンジンなどのように、大きなエンジン脈動トルクを発生する場合、車両モデル部6からのエンジン負荷トルク指令にエンジン脈動トルクによる振動が重畳し、運転条件によってはその振動が実際の軸トルク検出値までも振動させる虞を有している。
【0007】
よって本発明が目的とするところは、大型なエンジンの場合でも安定した制御を可能としたエンジンベンチシステムの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1は、シャフトを介してエンジンとダイナモメータを直結し、エンジンの慣性モデル速度部により生成されたエンジンのモデル速度信号を車両モデル部に出力してエンジン負荷トルク指令値を演算し、この演算値をトルク制御部に出力し、トルク制御部に入力されたエンジン負荷トルク指令値と検出された軸トルク及びダイナモメータの回転速度信号を用いてトルク電流指令値を求め、このトルク電流指令値をインバータに出力することによりダイナモメータを制御するエンジンベンチシステムにおいて、
前記トルク制御部の前段に、前記エンジンのトルク変動に起因する振動成分を除去するためのバンド除去フィルタ回路を接続したことを特徴としたものである。エンジンベンチシステムの制御装置。
【0009】
本発明の第2は、前記バンド除去フィルタ回路に、前記回転速度信号を通す変換器を設け、この変換器の定数をエンジンのトルク変動の主要周波数成分を除去するように対応した定数に設定したことを特徴としたものである。
【0010】
本発明の第3は、前記バンド除去フィルタ回路は複数段接続され、エンジンのトルク変動の主要周波数成分がエンジン回転数の整数倍の場合で、この整数倍の周波数に対応した複数のトルク変動分を除去するよう構成したことを特徴としたものである。
【0011】
本発明の第4は、前記検出された軸トルク信号と回転速度信号を、エンジンのトルクオブザーバに入力してエンジントルクを推定し、推定されたエンジントルク推定値と前記エンジン負荷トルク指令値との偏差を求め、この偏差値に基づいて前記エンジンのモデル速度信号を生成することを特徴としたものである。
【0012】
本発明の第5は、前記エンジンのモデル速度信号と検出された回転速度信号の偏差値を算出してエンジンのトルク推定値補正部に出力し、このトルク推定値補正部により偏差値に応じた補正値を生成して前記トルクオブザーバの出力値と加算するよう構成したことを特徴としたものである。
【0013】
本発明の第6は、前記検出された回転速度信号とエンジンのスロットル開度信号を、エンジンのトルクマップに入力してエンジントルクを推定し、推定されたエンジントルク推定値と前記エンジン負荷トルク指令値との偏差を求め、この偏差値に基づいて前記エンジンのモデル速度信号を生成することを特徴としたものである。
【0014】
本発明の第7は、前記エンジンのモデル速度信号と検出された回転速度信号の偏差値を算出してエンジンのトルク推定値補正部に出力し、このトルク推定値補正部により偏差値に応じた補正値を生成して前記トルクマップの出力値と加算するよう構成したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり、本発明によれば、トルク制御部の前段に、前記エンジンのトルク変動に起因する振動成分を除去するためのバンド除去フィルタ回路を設けたことにより、エンジンのトルク変動周波数に対応した振動周波数のみの除去を可能としたものである。このため、エンジンの脈動トルクの重畳されてないトルク電流指令が生成され、安定なエンジンベンチシステムの動作が実現できる。
また、複数段構成のバンド除去フィルタ回路とすることにより、エンジンのトルク変動の主要周波数成分が複数存在する場合でも、高精度制御を可能とし、安定なエンジンベンチシステムの動作が実現できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、車両モデル部で演算されたエンジン負荷トルク指令をフィルタ回路を介してトルク制御部に出力することで脈動を抑制するようにしたものである。図2は各実施例に共通して使用されるバンド除去フィルタ回路20を示したもので、21〜24は、定数A〜Dを各別に有する変換器、25は乗算器、26は積分器、27及び28は加算器である。各変換器中の定数(A、B、C、D)は、1[rad/s]を特性周波数として持つバンド除去フィルタの連続系状態方程式表現の各ABCD行列である。
連続系状態方程式は、dx/dt=A・x+B・u、y=C・x+D・uで表現される。
図3は、1[rad/s]を特性周波数として持つバンド除去フィルタのボード線図の例である。
【0017】
一般に、エンジンベンチシステムの主要な振動源はエンジンの発生するトルク変動である。エンジンのトルク変動の周波数は、通常エンジン回転数に比例しており、例えば、エンジン回転数の2倍、4倍、場合によっては0.5倍,1.5倍などの周波数を持つ。
従来では、これらの周波数のトルク変動が軸トルク検出やダイナモメータの回転数検出に重畳して制御装置の閉ループによりエンジン負荷トルク指令に入って振動現象が発生する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例を示すエンジンベンチシステムの制御装置の構成図を示したもので、図11と同一部分若しくは相当する部分に同一符号を付してその説明を省略する。
【0019】
図1で示す構成のものにおいて、エンジン1は図示省略された制御回路によりスロットル開度指令と検出されたスロットル開度信号との偏差がなくなるように制御される。トルク制御部7においては、バンド除去フィルタ回路20を通って入力された車両モデル部6からのエンジン負荷トルク指令値と、検出された回転速度信号、及び軸トルク信号とをもとにトルク電流指令を演算し、その出力に応じてインバータ5を介してダイナモメータ4を制御する。
【0020】
ダイナモメータ4(又はエンジン)の回転速度信号がエンコーダ等によって検出され、エンジンのトルクオブザーバ30とバンド除去フィルタ回路20に入力される。トルクオブザーバ30には検出された軸トルク信号も入力され、これら回転速度信号と軸トルク信号からエンジントルクを推定し、その推定値は減算部31に出力される。減算部31では、エンジントルク推定信号と車両モデル部6からのエンジン負荷トルク指令との差演算が実行され、その偏差信号はエンジン慣性モデル部8に出力されてエンジンのモデル速度信号が演算される。
【0021】
車両モデル部6では、入力されたエンジンのモデル速度信号をもとにエンジン負荷トルク指令を演算し、減算部31とバンド除去フィルタ回路20に出力する。バンド除去フィルタ回路20は図2のように構成されたもので、エンジン負荷トルク指令を変換器22と24で、それぞれ定数BDを掛けて出力する。変換器22の出力は加算器27で定数Aの加算器21の出力と加算され、その加算値は乗算器25において変換器29を通して入力されるダイナモメータ(又はエンジン)の速度信号と乗算される。乗算値は積分器26で積分された後、加算器28において変換器24の出力と加算されてトルク制御部7に出力される。
【0022】
バンド除去フィルタ回路20の周波数特性は、例えば図3のような特性を有していることから、10[rad/s]近辺のみが大きく減衰する特性を有し、他の周波数範囲においては減衰しない特性が維持されて1[rad/s]の脈動波形が除去されている。したがって、トルク制御部7には脈動のないトルク指令が入力される。
【0023】
ここで、例えば、エンジンのトルク変動周波数がエンジン回転数の2倍が主な成分のときには、ダイナモメータの速度信号を変換する変換器29の定数NをN=2と設定することにより、問題となる振動の周波数のみが図3で示す特性を有するバンド除去フィルタ回路20によって除去される。このため、トルク制御部7には、エンジンの脈動トルクが重畳されてないエンジン負荷トルク指令が入力されるため高精度制御を可能とするトルク電流指令が生成され、安定なエンジンベンチシステムの動作が実現できる。
【実施例2】
【0024】
図4は、本発明の実施例2の構成を示したものである。図1で示す実施例と相違するところは、エンジントルクの推定値補正部40を追加し、ダイナモメータ(又はエンジン)の速度信号とエンジン慣性モデル部8からのモデル速度信号との差を減算部33で求め、実速度とモデル速度との偏差に基づいてエンジントルク推定値を補正する。補正信号は、加算部32においてエンジンのトルクオブザーバ30からの出力信号と加算された後、減算部31に出力される。
【0025】
この実施例では、エンジンのトルクオブザーバ30からの振動成分に加え、トルク推定値補正部40による推定値補正を行ない、車両モデル部6を介してエンジン負荷トルク指令に振動成分が加わるような構成となっているが、この場合においてもバンド除去フィルタ回路20の作用により、エンジンのトルク変動に起因する振動成分の除去が可能となり、実施例1と同様に安定なエンジンベンチシステムの動作が実現できる。
【実施例3】
【0026】
図5は、本発明の実施例3の構成を示したものである。図1で示す実施例と相違するところは、エンジンのトルクオブザーバ30に代えてエンジンのトルクマップ10を設け、エンジンのスロットル開度信号と速度信号とが入力される。エンジンのトルクマップ10は、エンジンの試験動作中にエンジントルクを直接測定するものではなく、予め測定して用意したエンジン回転数とスロットル開度、及びエンジントルク特性の関係をグラフ化して表したものである。
【0027】
エンジンの試験動作中は、検出されたエンジン又はダイナモメータの速度信号とスロットルアクチュエータにおけるスロットル開度信号とを入力し、これら入力された信号からエンジントルクを推定し、その推定値を減算部34に出力してエンジン負荷トルク指令値との偏差が演算される。この偏差値に基づいて慣性モデル部8においてエンジンのモデル速度値が生成される。
【0028】
この実施例によれば、実施例1と比較して、トルクオブザーバ30に代えてエンジンのトルクマップ10を使用したことにより、軸トルクに重畳しているエンジントルクの変動成分をエンジン負荷トルク指令に伝達することは無くなるが、トルクマップ10に入力されるダイナモメータの速度信号に重畳されているエンジンのトルク変動分はエンジン負荷トルク指令値に伝達される。しかし、この場合もエンジントルク変動分に起因する振動成分は、バンド除去フィルタ回路20により除去され、安定なエンジンベンチシステムの動作が実現できる。
【実施例4】
【0029】
図6は本発明の実施例4の構成を示したものである。図5で示す実施例と相違するところは、エンジントルクの推定値補正部40を追加し、ダイナモメータ(又はエンジン)の速度信号とエンジン慣性モデル部8からのモデル速度信号との差を減算部33で求め、実速度とモデル速度との偏差に基づいてエンジントルク推定値を補正する。補正信号は、加算部35においてエンジンのトルクマップ10からの出力信号と加算された後、減算部34に出力される。
【0030】
この実施例においては、トルク変動分はエンジントルクマップ10からに加え、
エンジントルクの推定値補正部40からの補正値をとおしてエンジン負荷トルク指令値に伝達される。伝達されたトルク変動分はバンド除去フィルタ回路20により除去され、安定なエンジンベンチシステムの動作が実現できる。
【実施例5】
【0031】
図7は、図2で示すバンド除去フィルタ回路20を20−1,20−2の2段構成とした他の例を示したものである。図2で示すフィルタ回路は1段ため、除去できる周波数は1成分のみとなるが、図7では2段構成としたことにより2成分の周波数除去を可能としたものである。この場合、例えば、エンジンのトルク変動の主成分がエンジンの回転数の2倍、4倍の周波数であったとすると、フィルタ回路の変換器29−1,29−2の定数N1,N2を、N1=2,N2=4、または、N1=4,N2=2と設定することによりエンジン回転数の2倍、4倍の両周波数成分を持つトルク変動分を除去することができる。フィルタ回路の段数を2段のみではなく任意に選定できることは勿論である。
【0032】
図7のように構成されたバンド除去フィルタ回路20aを、実施例1〜4で示す各バンド除去フィルタ回路20にそれぞれ代えて使用することにより、複数周波数を持つエンジントルク変動分に起因する振動成分を除去することが可能となるものである。
【0033】
図8〜10は、本発明の検証に基づくエンジンベンチシステムの運転波形図である。図8は実施例1〜4で示すフィルタ回路が1段の場合、図9は、図1および図4〜6の構成でバンド除去フィルタ回路20に代えて2段のバンド除去フィルタ回路20aを使用した場合、図10は図11で示す従来のエンジンベンチシステムの運転波形をしめしたもので、それぞれの(a)はダイナモメータの回転数−時間の関係図、(b)は軸トルク−時間関係図、(c)は軸トルク指令周波数−時間関係図である。
【0034】
図10で示す従来においては、軸トルク指令値の標準偏差(図中、stdで示している値)が約35程度となっている。これに対し、図8で示す本発明における軸トルク指令値の標準偏差は約21にまで低下している。更に、図9で示したように、2段のバンド除去フィルタ回路20aを使用した場合の軸トルク指令値の標準偏差は約4まで低下しており、本発明の効果が確認された。
【0035】
なお、図8で示す運転波形は、図2で示す変換器29のNをN=1とした場合であり、図9での運転波形は、図7で示す変換器29−1のN1をN1=0.5、N2=1とした場合である。
また、図8〜10の各(c)図は、軸トルク指令値の振動周波数の分布を示したものであるが、選択したNまたはN1,N2に対応した軸トルク指令値の振動周波数成分が低減していることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態を示す構成図。
【図2】本発明に使用されるバンド除去フィルタ回路の構成図。
【図3】バンド除去フィルタ回路の特性図。
【図4】本発明の他の実施形態(実施例2)を示す構成図。
【図5】本発明の他の実施形態(実施例3)を示す構成図。
【図6】本発明の他の実施形態(実施例4)を示す構成図。
【図7】2段構成のバンド除去フィルタ回路の構成図。
【図8】本発明によるエンジンベンチシステムの運転波形図で、(a)はダイナモメータ回転数−時間関係図、(b)は軸トルク−時間関係図、(c)軸トルク指令周波数−時間関係図。
【図9】本発明によるエンジンベンチシステムの運転波形図で、(a)はダイナモメータ回転数−時間関係図、(b)は軸トルク−時間関係図、(c)軸トルク指令周波数−時間関係図。
【図10】従来のエンジンベンチシステムの運転波形図で、(a)はダイナモメータ回転数−時間関係図、(b)は軸トルク−時間関係図、(c)軸トルク指令周波数−時間関係図。
【図11】従来のエンジンベンチシステムの構成図。
【符号の説明】
【0037】
1… エンジン
2… シャフト
3… 軸トルクメータ
4… ダイナモメータ
5… インバータ
6… 車両モデル部
7… トルク制御部
8… エンジン慣性モデル部
10…トルクマップ
20… バンド除去フィルタ回路
30… エンジントルクオブザーバ
40… エンジントルク推定値補正部
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンベンチシステムの制御装置に係り、特にエンジン脈動トルクに起因する振動の発生を抑制した制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンベンチシステムは、エンジン、クラッチ、プロペラシャフト、軸トルクメータ及びダイナモメータ等より構成され、ダイナモメータのトルク制御を実施しながらエンジンの耐久試験や燃費、排ガス計測等の試験を行っている。このようなエンジンベンチシステムとしては、特許文献1が公知となっている。
【0003】
図11は特許文献1で示されたエンジンベンチシステムの制御装置の構成図で、エンジン1にシャフト2と軸トルクメータ3を介してダイナモメータ4を連結し、このダイナモメータ4はインバータ5によって駆動される。6は車両モデル部で、例えば4慣性系のばねモデルとサスペンション及びタイヤばねによる上下振動モデルよりなり、エンジン負荷トルク指令をトルク制御部7に出力する。トルク制御部7は、入力された車両モデル部6からのエンジンの負荷トルク指令値と、検出された回転速度信号、及び軸トルク信号とをもとにトルク電流指令を演算し、その出力に応じてインバータ5を介してダイナモメータ4を制御する。
【0004】
8はエンジン慣性モデル部で、このモデル部において(1/(Je・s))を演算してエンジンのモデル速度信号として車両モデル部6と減算部11に出力される。減算部11では、ダイナモメータ又はエンジンの速度検出信号とエンジンモデル速度信号との差演算が実行され、偏差信号はコントローラ9に出力される。コントローラ9の伝達関数G(s)は、例えばPIコントローラ(Kp+Ki/s)のような積分特性、もしくは比例特性をもった任意のコントローラが使用される。
ここで、Jeはエンジンの慣性モーメント、Kpは比例係数、Kiは積分係数である。
【0005】
コントローラ9の出力は、加算部12においてエンジントルクマップ10の出力と加算されて加算部13に出力され、この加算部13においてエンジンの負荷トルク指令値と加算されてエンジンモデル部に出力される。エンジントルクマップ10には、予め測定して用意したエンジン回転数とスロットル開度、及びエンジントルク特性の関係をグラフ化して格納されている。エンジンの試験が開始されると、検出されたダイナモメータ(又はエンジン)の速度信号とスロットル開度信号がエンジントルクマップ10に入力され、入力信号からエンジントルクを推定して加算部12に出力する。
【特許文献1】特開2004−177259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エンジンベンチシステムでは、機械的要因によってトルク制御部7の応答遅れが発生し、この応答遅れに起因してハンチング等の不安定現象が発生するが、 図 で示す制御装置は、その現象が防止できる効果を有している。しかし、エンジンが大型ディーゼルエンジンなどのように、大きなエンジン脈動トルクを発生する場合、車両モデル部6からのエンジン負荷トルク指令にエンジン脈動トルクによる振動が重畳し、運転条件によってはその振動が実際の軸トルク検出値までも振動させる虞を有している。
【0007】
よって本発明が目的とするところは、大型なエンジンの場合でも安定した制御を可能としたエンジンベンチシステムの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1は、シャフトを介してエンジンとダイナモメータを直結し、エンジンの慣性モデル速度部により生成されたエンジンのモデル速度信号を車両モデル部に出力してエンジン負荷トルク指令値を演算し、この演算値をトルク制御部に出力し、トルク制御部に入力されたエンジン負荷トルク指令値と検出された軸トルク及びダイナモメータの回転速度信号を用いてトルク電流指令値を求め、このトルク電流指令値をインバータに出力することによりダイナモメータを制御するエンジンベンチシステムにおいて、
前記トルク制御部の前段に、前記エンジンのトルク変動に起因する振動成分を除去するためのバンド除去フィルタ回路を接続したことを特徴としたものである。エンジンベンチシステムの制御装置。
【0009】
本発明の第2は、前記バンド除去フィルタ回路に、前記回転速度信号を通す変換器を設け、この変換器の定数をエンジンのトルク変動の主要周波数成分を除去するように対応した定数に設定したことを特徴としたものである。
【0010】
本発明の第3は、前記バンド除去フィルタ回路は複数段接続され、エンジンのトルク変動の主要周波数成分がエンジン回転数の整数倍の場合で、この整数倍の周波数に対応した複数のトルク変動分を除去するよう構成したことを特徴としたものである。
【0011】
本発明の第4は、前記検出された軸トルク信号と回転速度信号を、エンジンのトルクオブザーバに入力してエンジントルクを推定し、推定されたエンジントルク推定値と前記エンジン負荷トルク指令値との偏差を求め、この偏差値に基づいて前記エンジンのモデル速度信号を生成することを特徴としたものである。
【0012】
本発明の第5は、前記エンジンのモデル速度信号と検出された回転速度信号の偏差値を算出してエンジンのトルク推定値補正部に出力し、このトルク推定値補正部により偏差値に応じた補正値を生成して前記トルクオブザーバの出力値と加算するよう構成したことを特徴としたものである。
【0013】
本発明の第6は、前記検出された回転速度信号とエンジンのスロットル開度信号を、エンジンのトルクマップに入力してエンジントルクを推定し、推定されたエンジントルク推定値と前記エンジン負荷トルク指令値との偏差を求め、この偏差値に基づいて前記エンジンのモデル速度信号を生成することを特徴としたものである。
【0014】
本発明の第7は、前記エンジンのモデル速度信号と検出された回転速度信号の偏差値を算出してエンジンのトルク推定値補正部に出力し、このトルク推定値補正部により偏差値に応じた補正値を生成して前記トルクマップの出力値と加算するよう構成したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり、本発明によれば、トルク制御部の前段に、前記エンジンのトルク変動に起因する振動成分を除去するためのバンド除去フィルタ回路を設けたことにより、エンジンのトルク変動周波数に対応した振動周波数のみの除去を可能としたものである。このため、エンジンの脈動トルクの重畳されてないトルク電流指令が生成され、安定なエンジンベンチシステムの動作が実現できる。
また、複数段構成のバンド除去フィルタ回路とすることにより、エンジンのトルク変動の主要周波数成分が複数存在する場合でも、高精度制御を可能とし、安定なエンジンベンチシステムの動作が実現できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、車両モデル部で演算されたエンジン負荷トルク指令をフィルタ回路を介してトルク制御部に出力することで脈動を抑制するようにしたものである。図2は各実施例に共通して使用されるバンド除去フィルタ回路20を示したもので、21〜24は、定数A〜Dを各別に有する変換器、25は乗算器、26は積分器、27及び28は加算器である。各変換器中の定数(A、B、C、D)は、1[rad/s]を特性周波数として持つバンド除去フィルタの連続系状態方程式表現の各ABCD行列である。
連続系状態方程式は、dx/dt=A・x+B・u、y=C・x+D・uで表現される。
図3は、1[rad/s]を特性周波数として持つバンド除去フィルタのボード線図の例である。
【0017】
一般に、エンジンベンチシステムの主要な振動源はエンジンの発生するトルク変動である。エンジンのトルク変動の周波数は、通常エンジン回転数に比例しており、例えば、エンジン回転数の2倍、4倍、場合によっては0.5倍,1.5倍などの周波数を持つ。
従来では、これらの周波数のトルク変動が軸トルク検出やダイナモメータの回転数検出に重畳して制御装置の閉ループによりエンジン負荷トルク指令に入って振動現象が発生する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例を示すエンジンベンチシステムの制御装置の構成図を示したもので、図11と同一部分若しくは相当する部分に同一符号を付してその説明を省略する。
【0019】
図1で示す構成のものにおいて、エンジン1は図示省略された制御回路によりスロットル開度指令と検出されたスロットル開度信号との偏差がなくなるように制御される。トルク制御部7においては、バンド除去フィルタ回路20を通って入力された車両モデル部6からのエンジン負荷トルク指令値と、検出された回転速度信号、及び軸トルク信号とをもとにトルク電流指令を演算し、その出力に応じてインバータ5を介してダイナモメータ4を制御する。
【0020】
ダイナモメータ4(又はエンジン)の回転速度信号がエンコーダ等によって検出され、エンジンのトルクオブザーバ30とバンド除去フィルタ回路20に入力される。トルクオブザーバ30には検出された軸トルク信号も入力され、これら回転速度信号と軸トルク信号からエンジントルクを推定し、その推定値は減算部31に出力される。減算部31では、エンジントルク推定信号と車両モデル部6からのエンジン負荷トルク指令との差演算が実行され、その偏差信号はエンジン慣性モデル部8に出力されてエンジンのモデル速度信号が演算される。
【0021】
車両モデル部6では、入力されたエンジンのモデル速度信号をもとにエンジン負荷トルク指令を演算し、減算部31とバンド除去フィルタ回路20に出力する。バンド除去フィルタ回路20は図2のように構成されたもので、エンジン負荷トルク指令を変換器22と24で、それぞれ定数BDを掛けて出力する。変換器22の出力は加算器27で定数Aの加算器21の出力と加算され、その加算値は乗算器25において変換器29を通して入力されるダイナモメータ(又はエンジン)の速度信号と乗算される。乗算値は積分器26で積分された後、加算器28において変換器24の出力と加算されてトルク制御部7に出力される。
【0022】
バンド除去フィルタ回路20の周波数特性は、例えば図3のような特性を有していることから、10[rad/s]近辺のみが大きく減衰する特性を有し、他の周波数範囲においては減衰しない特性が維持されて1[rad/s]の脈動波形が除去されている。したがって、トルク制御部7には脈動のないトルク指令が入力される。
【0023】
ここで、例えば、エンジンのトルク変動周波数がエンジン回転数の2倍が主な成分のときには、ダイナモメータの速度信号を変換する変換器29の定数NをN=2と設定することにより、問題となる振動の周波数のみが図3で示す特性を有するバンド除去フィルタ回路20によって除去される。このため、トルク制御部7には、エンジンの脈動トルクが重畳されてないエンジン負荷トルク指令が入力されるため高精度制御を可能とするトルク電流指令が生成され、安定なエンジンベンチシステムの動作が実現できる。
【実施例2】
【0024】
図4は、本発明の実施例2の構成を示したものである。図1で示す実施例と相違するところは、エンジントルクの推定値補正部40を追加し、ダイナモメータ(又はエンジン)の速度信号とエンジン慣性モデル部8からのモデル速度信号との差を減算部33で求め、実速度とモデル速度との偏差に基づいてエンジントルク推定値を補正する。補正信号は、加算部32においてエンジンのトルクオブザーバ30からの出力信号と加算された後、減算部31に出力される。
【0025】
この実施例では、エンジンのトルクオブザーバ30からの振動成分に加え、トルク推定値補正部40による推定値補正を行ない、車両モデル部6を介してエンジン負荷トルク指令に振動成分が加わるような構成となっているが、この場合においてもバンド除去フィルタ回路20の作用により、エンジンのトルク変動に起因する振動成分の除去が可能となり、実施例1と同様に安定なエンジンベンチシステムの動作が実現できる。
【実施例3】
【0026】
図5は、本発明の実施例3の構成を示したものである。図1で示す実施例と相違するところは、エンジンのトルクオブザーバ30に代えてエンジンのトルクマップ10を設け、エンジンのスロットル開度信号と速度信号とが入力される。エンジンのトルクマップ10は、エンジンの試験動作中にエンジントルクを直接測定するものではなく、予め測定して用意したエンジン回転数とスロットル開度、及びエンジントルク特性の関係をグラフ化して表したものである。
【0027】
エンジンの試験動作中は、検出されたエンジン又はダイナモメータの速度信号とスロットルアクチュエータにおけるスロットル開度信号とを入力し、これら入力された信号からエンジントルクを推定し、その推定値を減算部34に出力してエンジン負荷トルク指令値との偏差が演算される。この偏差値に基づいて慣性モデル部8においてエンジンのモデル速度値が生成される。
【0028】
この実施例によれば、実施例1と比較して、トルクオブザーバ30に代えてエンジンのトルクマップ10を使用したことにより、軸トルクに重畳しているエンジントルクの変動成分をエンジン負荷トルク指令に伝達することは無くなるが、トルクマップ10に入力されるダイナモメータの速度信号に重畳されているエンジンのトルク変動分はエンジン負荷トルク指令値に伝達される。しかし、この場合もエンジントルク変動分に起因する振動成分は、バンド除去フィルタ回路20により除去され、安定なエンジンベンチシステムの動作が実現できる。
【実施例4】
【0029】
図6は本発明の実施例4の構成を示したものである。図5で示す実施例と相違するところは、エンジントルクの推定値補正部40を追加し、ダイナモメータ(又はエンジン)の速度信号とエンジン慣性モデル部8からのモデル速度信号との差を減算部33で求め、実速度とモデル速度との偏差に基づいてエンジントルク推定値を補正する。補正信号は、加算部35においてエンジンのトルクマップ10からの出力信号と加算された後、減算部34に出力される。
【0030】
この実施例においては、トルク変動分はエンジントルクマップ10からに加え、
エンジントルクの推定値補正部40からの補正値をとおしてエンジン負荷トルク指令値に伝達される。伝達されたトルク変動分はバンド除去フィルタ回路20により除去され、安定なエンジンベンチシステムの動作が実現できる。
【実施例5】
【0031】
図7は、図2で示すバンド除去フィルタ回路20を20−1,20−2の2段構成とした他の例を示したものである。図2で示すフィルタ回路は1段ため、除去できる周波数は1成分のみとなるが、図7では2段構成としたことにより2成分の周波数除去を可能としたものである。この場合、例えば、エンジンのトルク変動の主成分がエンジンの回転数の2倍、4倍の周波数であったとすると、フィルタ回路の変換器29−1,29−2の定数N1,N2を、N1=2,N2=4、または、N1=4,N2=2と設定することによりエンジン回転数の2倍、4倍の両周波数成分を持つトルク変動分を除去することができる。フィルタ回路の段数を2段のみではなく任意に選定できることは勿論である。
【0032】
図7のように構成されたバンド除去フィルタ回路20aを、実施例1〜4で示す各バンド除去フィルタ回路20にそれぞれ代えて使用することにより、複数周波数を持つエンジントルク変動分に起因する振動成分を除去することが可能となるものである。
【0033】
図8〜10は、本発明の検証に基づくエンジンベンチシステムの運転波形図である。図8は実施例1〜4で示すフィルタ回路が1段の場合、図9は、図1および図4〜6の構成でバンド除去フィルタ回路20に代えて2段のバンド除去フィルタ回路20aを使用した場合、図10は図11で示す従来のエンジンベンチシステムの運転波形をしめしたもので、それぞれの(a)はダイナモメータの回転数−時間の関係図、(b)は軸トルク−時間関係図、(c)は軸トルク指令周波数−時間関係図である。
【0034】
図10で示す従来においては、軸トルク指令値の標準偏差(図中、stdで示している値)が約35程度となっている。これに対し、図8で示す本発明における軸トルク指令値の標準偏差は約21にまで低下している。更に、図9で示したように、2段のバンド除去フィルタ回路20aを使用した場合の軸トルク指令値の標準偏差は約4まで低下しており、本発明の効果が確認された。
【0035】
なお、図8で示す運転波形は、図2で示す変換器29のNをN=1とした場合であり、図9での運転波形は、図7で示す変換器29−1のN1をN1=0.5、N2=1とした場合である。
また、図8〜10の各(c)図は、軸トルク指令値の振動周波数の分布を示したものであるが、選択したNまたはN1,N2に対応した軸トルク指令値の振動周波数成分が低減していることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態を示す構成図。
【図2】本発明に使用されるバンド除去フィルタ回路の構成図。
【図3】バンド除去フィルタ回路の特性図。
【図4】本発明の他の実施形態(実施例2)を示す構成図。
【図5】本発明の他の実施形態(実施例3)を示す構成図。
【図6】本発明の他の実施形態(実施例4)を示す構成図。
【図7】2段構成のバンド除去フィルタ回路の構成図。
【図8】本発明によるエンジンベンチシステムの運転波形図で、(a)はダイナモメータ回転数−時間関係図、(b)は軸トルク−時間関係図、(c)軸トルク指令周波数−時間関係図。
【図9】本発明によるエンジンベンチシステムの運転波形図で、(a)はダイナモメータ回転数−時間関係図、(b)は軸トルク−時間関係図、(c)軸トルク指令周波数−時間関係図。
【図10】従来のエンジンベンチシステムの運転波形図で、(a)はダイナモメータ回転数−時間関係図、(b)は軸トルク−時間関係図、(c)軸トルク指令周波数−時間関係図。
【図11】従来のエンジンベンチシステムの構成図。
【符号の説明】
【0037】
1… エンジン
2… シャフト
3… 軸トルクメータ
4… ダイナモメータ
5… インバータ
6… 車両モデル部
7… トルク制御部
8… エンジン慣性モデル部
10…トルクマップ
20… バンド除去フィルタ回路
30… エンジントルクオブザーバ
40… エンジントルク推定値補正部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを介してエンジンとダイナモメータを直結し、エンジンの慣性モデル速度部により生成されたエンジンのモデル速度信号を車両モデル部に出力してエンジン負荷トルク指令値を演算し、この演算値をトルク制御部に出力し、トルク制御部に入力されたエンジン負荷トルク指令値と検出された軸トルク及びダイナモメータの回転速度信号を用いてトルク電流指令値を求め、このトルク電流指令値をインバータに出力することによりダイナモメータを制御するエンジンベンチシステムにおいて、
前記トルク制御部の前段に、前記エンジンのトルク変動に起因する振動成分を除去するためのバンド除去フィルタ回路を接続したことを特徴としたエンジンベンチシステムの制御装置。
【請求項2】
前記バンド除去フィルタ回路に、前記回転速度信号を通す変換器を設け、この変換器の定数をエンジンのトルク変動の主要周波数成分を除去するように対応した定数に設定したことを特徴とした請求項1記載のエンジンベンチシステムの制御装置。
【請求項3】
前記バンド除去フィルタ回路は複数段接続され、エンジンのトルク変動の主要周波数成分がエンジン回転数の整数倍の場合で、この整数倍の周波数に対応した複数のトルク変動分を除去するよう構成したことを特徴とした請求項2記載のエンジンベンチシステムの制御装置。
【請求項4】
前記検出された軸トルク信号と回転速度信号を、エンジンのトルクオブザーバに入力してエンジントルクを推定し、推定されたエンジントルク推定値と前記エンジン負荷トルク指令値との偏差を求め、この偏差値に基づいて前記
エンジンのモデル速度信号を生成することを特徴とした請求項1から請求項3の何れか1項に記載のエンジンベンチシステムの制御装置。
【請求項5】
前記エンジンのモデル速度信号と検出された回転速度信号の偏差値を算出してエンジンのトルク推定値補正部に出力し、このトルク推定値補正部により偏差値に応じた補正値を生成して前記トルクオブザーバの出力値と加算するよう構成したことを特徴とした請求項4記載のエンジンベンチシステムの制御装置。
【請求項6】
前記検出された回転速度信号とエンジンのスロットル開度信号を、エンジンのトルクマップに入力してエンジントルクを推定し、推定されたエンジントルク推定値と前記エンジン負荷トルク指令値との偏差を求め、この偏差値に基づいて前記エンジンのモデル速度信号を生成することを特徴とした請求項1から請求項3の何れか1項に記載のエンジンベンチシステムの制御装置。
【請求項7】
前記エンジンのモデル速度信号と検出された回転速度信号の偏差値を算出してエンジンのトルク推定値補正部に出力し、このトルク推定値補正部により偏差値に応じた補正値を生成して前記トルクマップの出力値と加算するよう構成したことを特徴とした請求項6記載のエンジンベンチシステムの制御装置。
【請求項1】
シャフトを介してエンジンとダイナモメータを直結し、エンジンの慣性モデル速度部により生成されたエンジンのモデル速度信号を車両モデル部に出力してエンジン負荷トルク指令値を演算し、この演算値をトルク制御部に出力し、トルク制御部に入力されたエンジン負荷トルク指令値と検出された軸トルク及びダイナモメータの回転速度信号を用いてトルク電流指令値を求め、このトルク電流指令値をインバータに出力することによりダイナモメータを制御するエンジンベンチシステムにおいて、
前記トルク制御部の前段に、前記エンジンのトルク変動に起因する振動成分を除去するためのバンド除去フィルタ回路を接続したことを特徴としたエンジンベンチシステムの制御装置。
【請求項2】
前記バンド除去フィルタ回路に、前記回転速度信号を通す変換器を設け、この変換器の定数をエンジンのトルク変動の主要周波数成分を除去するように対応した定数に設定したことを特徴とした請求項1記載のエンジンベンチシステムの制御装置。
【請求項3】
前記バンド除去フィルタ回路は複数段接続され、エンジンのトルク変動の主要周波数成分がエンジン回転数の整数倍の場合で、この整数倍の周波数に対応した複数のトルク変動分を除去するよう構成したことを特徴とした請求項2記載のエンジンベンチシステムの制御装置。
【請求項4】
前記検出された軸トルク信号と回転速度信号を、エンジンのトルクオブザーバに入力してエンジントルクを推定し、推定されたエンジントルク推定値と前記エンジン負荷トルク指令値との偏差を求め、この偏差値に基づいて前記
エンジンのモデル速度信号を生成することを特徴とした請求項1から請求項3の何れか1項に記載のエンジンベンチシステムの制御装置。
【請求項5】
前記エンジンのモデル速度信号と検出された回転速度信号の偏差値を算出してエンジンのトルク推定値補正部に出力し、このトルク推定値補正部により偏差値に応じた補正値を生成して前記トルクオブザーバの出力値と加算するよう構成したことを特徴とした請求項4記載のエンジンベンチシステムの制御装置。
【請求項6】
前記検出された回転速度信号とエンジンのスロットル開度信号を、エンジンのトルクマップに入力してエンジントルクを推定し、推定されたエンジントルク推定値と前記エンジン負荷トルク指令値との偏差を求め、この偏差値に基づいて前記エンジンのモデル速度信号を生成することを特徴とした請求項1から請求項3の何れか1項に記載のエンジンベンチシステムの制御装置。
【請求項7】
前記エンジンのモデル速度信号と検出された回転速度信号の偏差値を算出してエンジンのトルク推定値補正部に出力し、このトルク推定値補正部により偏差値に応じた補正値を生成して前記トルクマップの出力値と加算するよう構成したことを特徴とした請求項6記載のエンジンベンチシステムの制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−203052(P2008−203052A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38717(P2007−38717)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
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