説明

エンジン作業機

【課題】重心位置を高くすることなく、漏洩した燃料などが外部に流出することを防止するオイルガードを設けたエンジン作業機を提供する。
【解決手段】ケーシング12の内部を仕切壁14で仕切って排風室15とエンジン室16とに区画し、排風室の下部に燃料タンク17と第1オイルガード18とを配置し、エンジン室の下部に第2オイルガード19をそれぞれ設ける。第1オイルガードの側壁18bは、ケーシング床台13のベースフレーム13aより上方に立ち上げて燃料タンクを囲む状態とし、第2オイルガードの側壁19bは、ベースフレームの高さ以下とする。第1オイルガードの側壁上部には、第1オイルガード内の液面があらかじめ設定された高さ以上になったときに、第1オイルガード内の液を第2オイルガード内に流下させる溢流部21を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン作業機に関し、詳しくは、エンジンによって発電機やコンプレッサなどの作業機と、該作業機を駆動するエンジンと、該エンジンの燃料を貯留する燃料タンクとをケーシング内に収容したエンジン作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
建設や土木工事などの現場あるいは災害時の現場や避難所では、発電機、コンプレッサ、油圧ユニットなどの各種作業機をエンジンで駆動する可搬式のエンジン作業機が稼働している。このようなエンジン作業機として、作業機やエンジン、燃料タンクなどの各種機器を防音構造を有するケーシング内に収容したものが広く用いられている。また、エンジン作業機外部に燃料などが流出することを防止するため、ケーシングの下部に大容量の燃料タンクを収納した防油堤(オイルガード)を重ねるようにして設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−274921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献のものでは、オイルガードの上部にエンジン作業機を積み重ねた状態になるため、エンジンや発電機などの重量物の位置が高くなり、オイルガードを含めたエンジン作業機の重心位置が高くなってしまう。特に、エンジンや発電機が大きく、大容量の燃料タンクを備えた大型のエンジン作業機では、オイルガードを高くする必要があることから、小型のエンジン作業機に比べて不安定な状態になることがある。このため、運転中に振動が発生しやすくなり、各種機器や配管類に悪影響を与えていた。また、底面積を大きくすればオイルガードの高さを低くすることもできるが、運搬時や使用時の寸法制限から底面積を大きくすることは困難である。
【0005】
そこで本発明は、エンジン作業機の重心位置を高くすることなく、漏洩した燃料などが外部に流出することを防止するオイルガードを設けたエンジン作業機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のエンジン作業機は、下部両側に一対のベースフレームを備えたケーシングの内部を仕切壁で仕切って排風室とエンジン室とに区画し、前記エンジン室内にエンジンと該エンジンにより駆動される作業機とを配置するとともに、前記排風室の下部に燃料タンクを配置したエンジン作業機において、前記排風室の下部に第1オイルガードを、前記エンジン室下部のベースフレーム間に第2オイルガードをそれぞれ設け、前記第1オイルガードの側壁は、前記ベースフレームより上方に立ち上げて前記燃料タンクを囲む状態とし、前記第2オイルガードの側壁は、前記ベースフレームの高さ以下とし、前記第1オイルガードの側壁上部に、該第1オイルガード内の液面があらかじめ設定された高さ以上になったときに、該第1オイルガード内の液を前記第2オイルガード内に流下させる溢流部を設けたことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明のエンジン作業機は、前記溢流部が、前記第2オイルガード側側壁の上縁を切り欠いた溢流開口部と、該溢流開口部の開口縁に連続して第2オイルガード側に突出した横樋部と、該横樋部の突出端から下方の第2オイルガード内に向かって屈曲した縦樋部とを備えていること、前記横樋部が前記エンジンと前記燃料タンクとの間に設けられる燃料パイプの挿通部を兼ねていることを特徴とし、また、前記第2オイルガードが該第2オイルガード内の液面があらかじめ設定された高さを超えたことを検知するレベルセンサを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエンジン作業機によれば、排風室下部に燃料タンクの下半部を囲む第1オイルガードを、エンジン室下部のベースフレーム間にベースフレームの高さ以下の第2オイルガードをそれぞれ設けているので、オイルガードをケーシング内に収めることができ、オイルガードによってエンジン作業機の重心位置が高くなることはない。したがって、ケーシングの下部にオイルガードを重ねて設けた場合に比べてエンジン作業機の安定性を向上させることができ、運転中の振動も低く抑えることができる。さらに、第1オイルガード内の液を第2オイルガード内に流下させる溢流部を設けているので、第1オイルガードの高さを低くしても、燃料タンクなどからの燃料漏れを第1オイルガードと第2オイルガードとで受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一形態例を示すエンジン作業機の要部正面図である。
【図2】同じくエンジン作業機の要部平面図である。
【図3】同じくエンジン作業機の要部側面図である。
【図4】同じく第1オイルガードと燃料タンクの説明図である。
【図5】同じく第1オイルガードと燃料タンクと第2オイルガードの説明図である。
【図6】同じく第1オイルガードの斜視図である。
【図7】同じく第2オイルガードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本形態例に示すエンジン作業機11は、図示しないエンジンによって発電機を駆動する可搬式のエンジン発電機であって、防音構造を有するケーシング12が床台13に立設され、ケーシング12の内部は、仕切壁14によって排風室15とエンジン室16とに区画されている。床台13は、長手方向に設けられた一対のベースフレーム13aと、両ベースフレーム13aの上部に掛け渡された機器支持部材13bとで形成されており、機器支持部材13bにエンジンや発電機が支持されている。また、仕切壁14は、ケーシング12の長手方向に対して約1/4の位置に設けられており、排風室15の大きさは、ケーシング12の1/4程度であり、エンジン室16に対して1/3程度の大きさとなっている。
【0011】
排風室15は、仕切壁14に設けられているラジエータを通過した温風をケーシング12の天板に設けた排風口から排出するダクト構造を有するものであり、排風室15の内部は、仕切板15aによって上方のダクト部15bと下方の燃料タンク収納部15cとに区画されている。燃料タンク収納部15cには、燃料タンク17と該燃料タンク17の下半部を囲む第1オイルガード18とが設けられている。また、エンジン室16内には、発電機、エンジン、ラジエータ、制御盤などの各種機器が配置されており、エンジン室16の下方には、第2オイルガード19が設けられている。また、エンジンと燃料タンク17との間には、一対の燃料パイプである燃料供給管20a及び燃料戻り管20bが設けられている。
【0012】
第1オイルガード18は、両ベースフレーム13aの間に収まる寸法を有する方形の底板18aと、該底板18aの四辺から立ち上がる4枚の側板18bとにより、底面及び側面が密閉されて上部が開口した箱形に形成され、排風室15の下端を塞ぐようにして底板18aがベースフレーム13aの間に挟まれた状態で設けられている。前記側板18bは、ベースフレーム13aの上面より上方に立ち上がり、燃料タンク17を囲む状態に形成され、燃料タンク17と側板18bとの間には、燃料タンク17から漏れた燃料を貯留するための空間が設けられている。
【0013】
また、第2オイルガード19側に位置する側板18bの上部には、第1オイルガード18内の液面があらかじめ設定された高さ以上になったときに、第1オイルガード18内の液体(燃料)を第2オイルガード19内に流下させるための溢流部21が設けられている。この溢流部21は、第2オイルガード19側の側板18bの上縁を切り欠いて形成した溢流開口部21aと、該溢流開口部21aの開口縁に連続して第2オイルガード19側に突出した横樋部21bと、該横樋部21bの突出端から下方の第2オイルガード19内に向かって屈曲した縦樋部21cとを備えている。また、底板18aには、第1オイルガード18内の液体を抜き取るための第1ドレン22aが設けられるとともに、燃料タンク17内の燃料を抜き取るための燃料タンク用ドレン22bが底板18aを貫通して設けられている。
【0014】
第1オイルガード18の容積及び溢流部21の高さは、燃料タンク17の容積及び形状に応じて設定されるもので、通常は、燃料タンク17の下部から第1オイルガード18内に燃料が漏れ出したときに、燃料タンク17内の液面と第1オイルガード18内の液面とが釣り合った状態で、第1オイルガード18内の液面が前記溢流部21より低い位置になるように設定することが好ましい。これにより、燃料タンク17の破損や腐食などで燃料タンク17から燃料が漏れたときに、第1オイルガード18のみで燃料を貯留した状態とすることができる。また、側板18bの高さと溢流部21の高さとは、エンジン作業機が許容された範囲内で溢流部21側が高くなるように傾斜した状態で設置された場合でも、溢流部21に対向する側板18bの上縁を超えて燃料が外部に溢れ出さないように設定されている。
【0015】
一方、前記第2オイルガード19は、両ベースフレーム13aの間に収まる寸法を有する方形の底板19aと、該底板19aの四辺から立ち上がる4枚の側板19bとにより、底面及び側面が密閉されて上部が開口した箱形に形成され、エンジン室16の下端、少なくとも、エンジンやラジエータなどの液漏れが発生するおそれのある機器の下方を塞ぐようにして底板19aがベースフレーム13aの間に挟まれた状態で設けられている。側板19bの高さは、ベースフレーム13aの高さ以下に形成されており、第2オイルガード19の全体が、機器支持部材13bより下方で床台13の内側に収まるように形成されている。また、第2オイルガード19の短辺側の側板19bの近傍には、レベルセンサ23と第2ドレン24とがそれぞれ設けられている。
【0016】
この第2オイルガード19の容積は、ベースフレーム13aの間隔(幅寸法)及びベースフレーム13aの高さ(高さ寸法)、エンジン室16の長手方向の寸法(長さ寸法)に制限されるが、排風室15に比べて長さ寸法が大きく、内側に燃料タンクのようなものが存在しないため、第2オイルガード19における側板19bの高さ寸法をベースフレーム13aの高さ以下にしても、十分に大きな容積を確保することができる。
【0017】
第1オイルガード18の底板18aに固定された燃料タンク17の上面には、給油口17aが突設されるとともに、燃料供給管20a及び燃料戻り管20bがそれぞれ連結され、燃料タンク17の一側外面には、レベルゲージ25が取り付けられている。燃料供給管20a及び燃料戻り管20bは、第1オイルガード18の上方から溢流部21の溢流開口部21aを抜けて横樋部21bを通り、さらに第2オイルガード19の上方を経てエンジンの燃料噴射装置に接続されている。
【0018】
このように形成されたエンジン作業機11は、腐食などによって燃料タンク17から燃料が漏洩した際には、漏れた燃料は第1オイルガード18内に貯留され、燃料タンク17内の燃料の液面と、第1オイルガード18内の燃料の液面とが同一となった時点で燃料タンク17から第1オイルガード18への燃料の漏れは停止し、エンジン作業機11の外部に燃料が流出することはない。この状態で、燃料タンク17内に残る燃料は燃料タンク用ドレン22bから、第1オイルガード18内に漏れ出した燃料は第1ドレン22aから、外部の回収容器などにそれぞれ回収することができる。
【0019】
一方、燃料タンク17の近傍で燃料戻り管20bが破損して燃料が漏れ出したときには、エンジンが運転中は燃料戻り管20bから連続して燃料が漏れるため、燃料タンク17内の燃料が無くなってエンジンが停止するまで燃料が漏れ続けることになる。したがって、燃料タンク17が満タンあるいは満タンに近い状態で燃料戻り管20bから燃料が漏れ出すと、漏れた燃料の全量を第1オイルガード18内に貯留することができず、第1オイルガード18内の燃料の液面が第1オイルガード18の上端に向かって次第に上昇する。そして、第1オイルガード18内の液面が溢流部21より高くなると、溢流部21から第2オイルガード19内に燃料が流下し、第1オイルガード18内で貯留可能な量以上の燃料は第2オイルガード19内に貯留される。
【0020】
このように、燃料戻り管20bから漏れた燃料を、第1オイルガード18内と第2オイルガード19内とで貯留することにより、エンジン作業機11の外部に燃料が流出することはない。第1オイルガード18内の燃料は前記同様に第1ドレン22aから抜き出すことができ、第2オイルガード19内の燃料は第2ドレン24から抜き出すことができる。
【0021】
また、エンジン室16内で燃料や冷却水、潤滑油が漏れた場合、通常は、容積が大きな第2オイルガード19内に貯留されて外部への流出が防止される。但し、燃料タンク17の容積が第2オイルガード19の容積よりも大きい場合や、燃料漏れと冷却水漏れとが同時に発生した場合や、エンジン作業機11が傾斜状態で設置されていた場合は、第2オイルガード19の側板18bを超えて燃料などがエンジン作業機11の外部に流出するおそれがある。これに対応するため、液面があらかじめ設定された高さを超えたことを検知するレベルセンサ23を第2オイルガード19内に設けておき、レベルセンサ23が液面上昇を検知したときにエンジンを自動的に停止させるように設定することが好ましい。
【0022】
エンジンが停止するとにより、燃料タンク17からエンジンへの燃料の供給が停止するので、大量の燃料が第2オイルガード19内に漏れることがなくなり、第2オイルガード19から燃料や冷却水などが溢れ出すことを防止できる。特に、レベルセンサ23を第2オイルガード19の対角となる2箇所の角部に設けておくことにより、エンジン作業機11が許容された範囲内で傾斜状態で設置されていても第2オイルガード19内の液面上昇を確実に検知することができ、エンジン作業機11の外部に燃料などの液体が流出することをより確実に防止することができる。
【0023】
このように、燃料タンク17を排風室15の下部に収容するとともに、オイルガードを、燃料タンク17の下半部を囲む第1オイルガード18と、エンジン室16の下部で床台13内に収納される第2オイルガード19とに分割したことにより、床台13の下方にオイルガードを重ねて設けた従来のエンジン作業機のようにエンジン作業機11の重心位置が高くなることががくなるので、エンジン作業機11の安定性が損なわれることはなく、エンジン作業機11の小型化や振動の抑制を図ることができ、エンジン作業機11の耐久性の向上や、エンジン作業機11を運搬する際の輸送コストを低減することができる。
【0024】
さらに、上方が開口した横樋部21bを燃料供給管20a及び燃料戻り管20bの挿通部として利用することにより、仕切壁14に燃料パイプ挿通孔を別途形成したり、保持部材を用意したりする必要がなくなり、燃料パイプの取り回しを容易に行うことができる。また、燃料供給管20aや燃料戻り管20bの途中で燃料が漏れた場合も、燃料供給管20a及び燃料戻り管20bを、第1オイルガード18、横樋部21b及び第2オイルガード19の上方を通る状態になるので、漏れた燃料が、オイルガード間の隙間などから外部に流出することを防止できる。
【0025】
なお、本形態例では、作業機として発電機を例示したが、コンプレッサや油圧ユニットなどの作業機をエンジンで駆動するエンジン作業機にも同様に適用でき、エンジン室内のエンジンや作業機などの機器の配置は任意である。また、溢流部は、前述のように樋状に形成する以外にパイプで形成することもでき、燃料供給管20a及び燃料戻り管20bの取り回しも任意である。 第1オイルガードと第2オイルガードとは、あらかじめ一体的に形成して床台に固定してもよく、第1オイルガードと第2オイルガードとを別々に床台に固定することもできる。
【符号の説明】
【0026】
11…エンジン作業機、12…ケーシング、13…床台、13a…ベースフレーム、13b…機器支持部材、14…仕切壁、15…排風室、15a…仕切板、15b…ダクト部、15c…燃料タンク収納部、16…エンジン室、17…燃料タンク、17a…給油口、18…第1オイルガード、18a…底板、18b…側板、19…第2オイルガード、19a…底板、19b…側板、20a…燃料供給管、20b…燃料戻り管、21…溢流部、21a…溢流開口部、21b…横樋部、21c…縦樋部、22a…第1ドレン、22b…燃料タンク用ドレン、23…レベルセンサ、24…第2ドレン、25…レベルゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部両側に一対のベースフレームを備えたケーシングの内部を仕切壁で仕切って排風室とエンジン室とに区画し、前記エンジン室内にエンジンと該エンジンにより駆動される作業機とを配置するとともに、前記排風室の下部に燃料タンクを配置したエンジン作業機において、前記排風室の下部に第1オイルガードを、前記エンジン室下部のベースフレーム間に第2オイルガードをそれぞれ設け、前記第1オイルガードの側壁は、前記ベースフレームより上方に立ち上げて前記燃料タンクを囲む状態とし、前記第2オイルガードの側壁は、前記ベースフレームの高さ以下とし、前記第1オイルガードの側壁上部に、該第1オイルガード内の液面があらかじめ設定された高さ以上になったときに、該第1オイルガード内の液を前記第2オイルガード内に流下させる溢流部を設けたことを特徴とするエンジン作業機。
【請求項2】
前記溢流部は、前記第2オイルガード側側壁の上縁を切り欠いた溢流開口部と、該溢流開口部の開口縁に連続して第2オイルガード側に突出した横樋部と、該横樋部の突出端から下方の第2オイルガード内に向かって屈曲した縦樋部とを備えていることを特徴とする請求項1記載のエンジン作業機。
【請求項3】
前記横樋部は、前記エンジンと前記燃料タンクとの間に設けられる燃料パイプの挿通部を兼ねていることを特徴とする請求項1又は2記載のエンジン作業機。
【請求項4】
前記第2オイルガードは、該第2オイルガード内の液面があらかじめ設定された高さを超えたことを検知するレベルセンサを備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のエンジン作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−144988(P2012−144988A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1659(P2011−1659)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)