説明

エンジン発電機

【課題】エンジンの始動を開始した後にエンジン回転センサと制御装置との間の断線判定を行なうことによって、エンジンの運転停止時に断線していると誤認することを防止しながら、断線の有無を容易に判断できるエンジン発電機を提供することを目的とする。
【解決手段】スタータモータ14により始動可能とされるエンジン10と、エンジン10により駆動されて発電を行なう発電装置20と、スタータモータ14へ制御信号を送信可能とする制御装置50とから構成されるエンジン発電機1において、エンジン10は、エンジン10の運転によって得られる検出信号を制御装置50へ送信可能とするエンジン回転センサ13が設けられ、制御装置50は、エンジン10の始動に際してスタータモータ14に電圧を印加する制御信号を送信した後に、エンジン回転センサ13と制御装置との間の断線判定を開始するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン発電機の制御技術に関する。より詳細には、エンジン発電機のエンジンの始動時および運転時における断線判定の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン発電機には、発電装置を駆動させるエンジンのエンジン回転数にかかわらず、発電された電力を任意の周波数の交流電力に変換できるインバータ装置が備えられている。そして、エンジン発電機においては、使用する電気機器の負荷に応じてエンジンの出力を変更すべく、負荷の増減に対する制御対象をエンジン回転数としたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、電気機器の負荷の増減に応じてエンジン回転数を制御するエンジン発電機では、エンジンに設けられたエンジン回転センサからの検出信号に基づいて燃料供給量等を適宜調量する必要があり、エンジン回転センサからの検出信号が断線等により不通となると、エンジン回転数の制御ができなくなるというおそれがあった。
【0004】
従って、エンジン回転センサと制御装置との間の断線判定を高い精度で行なうことが求められていたが、エンジン回転センサからの検出信号の有無を確認することによって断線判定を行なうとしたエンジン発電機では、エンジンの運転停止時に断線していると誤認される場合があった。また、断線していないことを確認した後にエンジンの始動を行なうとしたエンジン発電機では、自己断線診断機能を備えた制御装置等を用いる必要がある等、複雑な構成とならざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−45799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、エンジンの始動を開始した後にエンジン回転センサと制御装置との間の断線判定を行なうことによって、エンジンの運転停止時に断線していると誤認されることを防止するとともに、断線の有無を容易に判断できるエンジン発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、スタータモータにより始動可能とされるエンジンと、前記エンジンにより駆動されて発電を行なう発電装置と、前記スタータモータへ制御信号を送信可能とする制御装置と、から構成されるエンジン発電機において、前記エンジンは、当該エンジンの運転によって得られる検出信号を前記制御装置へ送信可能とするエンジン回転センサが設けられ、前記制御装置は、前記エンジンの始動に際して前記スタータモータに電圧を印加する制御信号を送信した後に、前記エンジン回転センサと前記制御装置との間の断線判定を前記エンジン回転センサからの検出信号に基づいて開始するとしたものである。
【0009】
請求項2においては、請求項1に記載のエンジン発電機において、前記スタータモータに印加された電圧の検出信号を前記制御装置へ送信可能とする電圧検出手段が設けられ、前記制御装置は、前記電圧検出手段からの検出信号を受信した後に、前記断線判定を開始するとしたものである。
【0010】
請求項3においては、請求項2に記載のエンジン発電機において、前記制御装置は、前記スタータモータに電圧を印加する制御信号を送信したときから所定の時間以上、連続して前記電圧検出手段からの検出信号を受信した後に、前記断線判定を開始するとしたものである。
【0011】
請求項4においては、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエンジン発電機において、前記制御装置は、前記エンジン回転センサからの検出信号を受信できない、又は前記断線判定を開始したときから所定の時間以上、連続して受信できない場合に、断線していると判断するとしたものである。
【0012】
請求項5においては、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のエンジン発電機において、前記エンジンのエンジン回転数を目標回転数に整定することができる出力制御アクチュエータを備え、前記制御装置は、前記エンジン回転センサと前記制御装置との間が断線していると判断した場合に、前記出力制御アクチュエータへエンジン回転数を低下させる制御信号を送信するとしたものである。
【0013】
請求項6においては、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のエンジン発電機において、前記エンジンの運転を停止させることができる運転停止アクチュエータを備え、前記制御装置は、前記エンジン回転センサと前記制御装置との間が断線していると判断した場合に、前記運転停止アクチュエータへ前記エンジンの運転を停止させる制御信号を送信するとしたものである。
【0014】
請求項7においては、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のエンジン発電機において、エラー情報を表示することができる表示手段を備え、前記制御装置は、前記エンジンの始動を中止した場合や前記エンジン回転センサと前記制御装置との間が断線していると判断した場合に、前記表示手段にその旨の表示を行なうとしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、スタータモータに電圧を印加する制御信号を送信した後に断線判定を行なうものとすることで、エンジン回転センサからの検出信号を受信することができないエンジンの運転停止時においても断線していると誤認されることがなくなる。そのうえで、エンジン回転センサからの検出信号を受信することによって、断線の有無を容易に判断することができる。また、自己断線診断機能を備えた制御装置等が不要となり、簡素な構成とすることが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、電圧検出手段からの検出信号を受信した後に断線判定を行なうものとすることで、エンジン回転センサからの検出信号を受信することができないエンジンの運転停止時においても断線していると誤認されることがなくなる。そのうえで、エンジン回転センサからの検出信号を受信することによって、断線の有無を容易に判断することができる。また、自己断線診断機能を備えた制御装置等が不要となり、簡素な構成とすることが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、電圧検出手段からの検出信号を連続して受信した後に断線判定を行なうものとすることで、電気系統に不具合が生じていないか確認することができるとともに、エンジン回転センサからの検出信号を受信することができないエンジンの運転停止時においても断線していると誤認されることがなくなる。そのうえで、エンジン回転センサからの検出信号を受信することによって、断線の有無を容易に判断することができる。また、自己断線診断機能を備えた制御装置等が不要となり、簡素な構成とすることが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、エンジン回転センサからの検出信号を受信できない、又は連続して受信できない場合に断線していると判断することで、断線の有無を高い精度で判断することが可能となる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、エンジン回転センサと制御装置との間が断線していると判断した場合にエンジンの出力を低下させることで、安全性を向上させることが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、エンジン回転センサと制御装置との間が断線していると判断した場合にエンジンの運転を停止させることで、更に安全性を向上させることが可能となる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、エンジンの始動を中止した場合やエンジン回転センサと制御装置との間が断線していると判断した場合にエラー情報を表示することで、不具合をオペレータに認識させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】エンジン発電機の構成を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係るエンジン発電機の制御フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明の一実施形態に係るエンジン発電機1の概略構成について説明する。
【0025】
図1に示すように、エンジン発電機1は、主にエンジン10と、発電装置20と、インバータ装置30と、表示パネル40と、制御装置50とで構成される。
【0026】
エンジン10は、発電装置20を駆動させる動力源であり、主にシリンダブロックやクランク軸等からなるエンジン本体部11、燃料を圧送するための燃料噴射ポンプ12、エンジン回転数を把握するためのエンジン回転センサ13、エンジン10を始動可能とするスタータモータ14等で構成されている。なお、本実施形態に係るエンジン10は、燃料噴射ポンプ12からエンジン本体部11に設けられた燃焼室へ燃料を圧送し、燃焼室内で燃焼させることによって回転動力を得るディーゼルエンジンとされる。
【0027】
燃料噴射ポンプ12は、エンジン本体部11の燃焼室へ燃料を圧送するポンプ部12aと、燃焼室へ圧送される燃料の調量を行なう調量部12bとから構成される。ポンプ部12aは、クランク軸によりギヤ等を介して駆動されて、該ポンプ部12aに内設されたプランジャバレルと、該プランジャバレルに摺動可能に嵌挿されたプランジャとによって燃焼室へ燃料を圧送するものである。また、調量部12bは、後述する出力制御アクチュエータ16により連動されて、ポンプ部12aから燃焼室へ圧送される燃料を調量するものである。
【0028】
エンジン回転センサ13は、エンジン10の運転によって回転するカム軸等の回転運動を検出し、この検出信号を制御装置50へ送信するものである。本実施形態においては、エンジン回転センサ13は、燃料噴射ポンプ12の調量部12bに設けられており、エンジン10の運転時において断続的なパルス信号を検出するものとされる。これによって、制御装置50は、単位時間当たりのパルス信号の数からエンジン10のエンジン回転数を算出することが可能とされる。なお、本実施形態においてエンジン回転センサ13は、燃料噴射ポンプ12の調量部12bに設けられているが、その配設位置は限定するものではなく、例えばクランク軸等に配置することも可能である。
【0029】
エンジン10の始動の際に駆動されるスタータモータ14は、エンジン本体部11の側方に備えられている。スタータモータ14は、エンジン発電機1の内部又は外部に備えられた電源を用いてエンジン10を従動回転させる電気モータである。このスタータモータ14によって、エンジン10は、所定のエンジン回転数まで従動回転されて自立運転を開始するものとされる。
【0030】
エンジン10の始動の際には、制御装置50からオーバラン防止リレー15を介してスタータモータ14へ制御信号が送信され、これによって、スタータモータ14は、電圧が印加されて駆動するものとされる。また、スタータモータ14に印加された電圧は、電圧検出手段14aによって検出されて、検出信号として制御装置50へ送信される。なお、スタータモータ14は、エンジン10が自立運転を開始した後にオーバラン防止リレー15によって制御信号が遮断されることで、その駆動を停止するものとされる。
【0031】
更に、本実施形態においては、エンジン10のエンジン回転数を目標回転数に整定させる出力制御アクチュエータ16、ならびにエンジン10の運転を停止させる運転停止アクチュエータ17が備えられている。
【0032】
出力制御アクチュエータ16は、ステッピングモータ等で構成されており、制御装置50からの制御信号によって駆動されて、燃料噴射ポンプ12の調量部12bを連動させるものである。これによって、制御装置50は、ポンプ部12aから燃焼室へ圧送される燃料を調量することができて、エンジン10の出力を変更することが可能とされる。
【0033】
運転停止アクチュエータ17は、ソレノイドバルブ等で構成されており、制御装置50からの制御信号によって駆動されて、燃料噴射ポンプ12の調量部12bを連動させるものである。これによって、制御装置50は、ポンプ部12aから燃焼室へ圧送される燃料を遮断することができて、エンジン10の運転を停止することが可能とされる。
【0034】
なお、エンジン10の運転を停止する際には、制御装置50から運転停止用リレー18を介して制御信号を送信するものとし、エンジン10の運転が停止された後に運転停止用リレー18によって制御信号を遮断するものとしている。但し、出力制御アクチュエータ16にポンプ部12aから燃焼室へ圧送される燃料を遮断する機能を付与し、エンジン10の運転を停止させる構成とすることも可能である。
【0035】
発電装置20は、エンジン10により駆動されて発電を行なうものであり、主に略円筒形状に形成された固定子と、その内部に回転自在に軸支された回転子とで構成されている。なお、発電装置20には、回転子に起電力が発生する回転電機子形と、固定子に起電力が発生する回転界磁形とがあるが、本発明では発電装置20の発電形式について限定するものではない。
【0036】
インバータ装置30は、主に発電装置20によって発電された交流電力を任意の周波数の交流電力に変換可能とするインバータ31と、表示手段である表示パネル40に電気的に接続されて電気信号を送信可能とする通信装置32とで構成される。
【0037】
インバータ31は、発電装置20によって発電された交流電力を直流電力に変換させるコンバータ回路と、該コンバータ回路により得られた直流電力を平滑化させる平滑用コンデンサと、該平滑用コンデンサにより平滑化された直流電力を任意の周波数の交流電力に変換させるインバータ回路等を具備している。これによって、エンジン発電機1は、任意の周波数の交流電力であって、且つ、波形歪みの少ない安定した電力を電気機器へ供給することが可能とされる。
【0038】
通信装置32は、前述したように表示パネル40と電気的に接続されており、例えば発電装置20により発電された電力量を表示パネル40に表示することを可能とするものである。また、通信装置32は、表示パネル40を介して制御装置50へ電気信号を送信可能とされる。これによって、制御装置50は、電気機器の負荷の増減を把握することが可能とされる。
【0039】
なお、表示パネル40には、電力量計や電圧計、電流計等とともにキースイッチ41が設けられており、オペレータがキースイッチ41を操作することによってエンジン10の始動又は停止を行なうことができるようにしている。
【0040】
制御装置50は、主に記憶装置と、中央処理装置等とで構成される。制御装置50は、前述したようにエンジン回転センサ13や電圧検出手段14a、表示パネル40等と電気的に接続されて、これらからの電気信号に基づいて制御信号を作成するものとされる。そして、制御装置50は、作成した制御信号をスタータモータ14や出力制御アクチュエータ16、運転停止アクチュエータ17等に出力することによってエンジン10の運転を最適に制御可能としている。
【0041】
制御装置50の記憶装置には、電気機器の負荷に応じたエンジン10の運転を可能とする制御マップが記憶されている。そして、例えば電気機器に急激な負荷が投入された場合においても、中央処理装置が制御マップから制御ファクターを呼出して制御信号を作成することによってエンジン10の運転を常に最適に制御可能としている。
【0042】
以上のような構成において、エンジン10の始動時および運転時におけるエンジン回転センサ13と制御装置50との間の断線判定について、一連の制御構成を説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るエンジン発電機1の制御フローを示したものである。
【0043】
まず、ステップS101において、オペレータが表示パネル40に設けられたキースイッチ41を操作(キースイッチON)することによって制御装置50に電力が通電される。そして、制御装置50は、エンジン10を始動させるための所定の制御を開始する。
【0044】
ステップS102において、制御装置50は、エンジン10を始動させることを許可するか否かの始動可否判定を行なう。始動可否判定は、例えばエンジン発電機1に不具合が生じたためにエンジン10の運転が現在停止されていた場合、制御装置50の記憶装置に記憶された不具合情報を参酌することによって、エンジン10の再始動に何らかの問題がないか判断するものである。
【0045】
これにより、制御装置50がエンジン10の始動を許可しなかった場合、即ちエンジン10の再始動に問題があると判断した場合には、ステップS111へ移行されて表示パネル40には始動を許可しない旨のエラー情報が表示されることとなる。一方、制御装置50がエンジン10の始動を許可した場合、即ちエンジン10の再始動に問題がないと判断した場合には、ステップS103へ移行する。
【0046】
ステップS103において、制御装置50は、オーバラン防止リレー15を介してスタータモータ14へ当該スタータモータ14を駆動させるための制御信号を送信する。これによって、電気系統に不具合が無ければ、スタータモータ14は電圧が印加されて駆動を始め、エンジン10が自立運転を開始するまでエンジン回転数を徐々に上昇させる。
【0047】
ステップS104において、制御装置50は、ステップS103にて送信された制御信号によってスタータモータ14に電圧が印加されたか否かの確認を行なう。この確認は、スタータモータ14に印加された電圧を電圧検出手段14aが検出し、その検出信号を制御装置50が受信できたか否かを判断することで行なわれる。
【0048】
これにより、制御装置50がスタータモータ14に印加された電圧を確認できなかった場合には、制御フェーズはステップS111へ移行されて表示パネル40には電気系統に不具合がある旨のエラー情報が表示されることとなる。一方、制御装置50がスタータモータ14に印加された電圧を確認できた場合には、ステップS105へ移行する。
【0049】
ステップS105において、制御装置50は、スタータモータ14に印加された電圧が安定したものであるか否かの判断を行なう。この判断は、スタータモータ14に印加された電圧を電圧検出手段14aが検出し、その検出信号を制御装置50が時々刻々と受信することで行なわれる。つまり、制御装置50は、スタータモータ14の印加電圧が所定の時間以上の間、連続して確認できた場合に安定していると判断し、印加電圧が瞬時に低下したり連続して確認できなかったりした場合に不安定であると判断する。
【0050】
これにより、制御装置50がスタータモータ14に印加された電圧が不安定であると判断した場合には、ステップS111へ移行して、表示パネル40には電気系統に不具合がある旨のエラー情報が表示されることとなる。一方、制御装置50がスタータモータ14に印加された電圧が安定したものであると判断した場合には、ステップS106へ移行する。
【0051】
なお、ステップS104にて行なわれるスタータモータ14の印加電圧の確認は、ステップS103におけるスタータモータ14への制御信号の送信と同時又は直後に行なわれる。また、ステップS105にて行なわれるスタータモータ14の印加電圧の安定性確認は、少なくともオーバラン防止リレー15によって制御信号が遮断されるまでに完了される。
【0052】
ステップS106において、制御装置50は、エンジン回転センサ13から送信されたパルス信号を用いてエンジン回転数の算出を行ない、算出されたエンジン回転数が閾値Nを超えると、ステップS107へ移行する。制御装置50は、エンジン10の運転によって断続的に得られる信号、即ちパルス信号をカウントし、単位時間当たりのパルス信号の数からエンジン回転数の算出を行なう。そして、算出されたエンジン回転数と記憶装置に記憶された閾値Nとを比較する。
【0053】
これにより、例えばエンジン10が自立運転を開始した直後であって、エンジン回転数が不安定な状態である場合においては、制御フェーズはステップS107に移行されないこととなる。これは、エンジン10のエンジン回転数が安定していない状態であるにもかかわらず、ステップS107においてエンジン10の出力の制御が行なわれる、即ち燃焼室へ圧送される燃料の調量が行われると、排気エミッションの悪化が避けられないからである。
【0054】
ステップS107において、制御装置50は、出力制御アクチュエータ16に対してエンジン10の出力を制御するための制御信号の送信を開始する。つまり、制御装置50は、調量部12bを連動可能とした出力制御アクチュエータ16へ制御信号を送信することによって燃料噴射ポンプ12から燃焼室へ圧送される燃料の調量を行ない、エンジン10の出力を制御する。
【0055】
その後、ステップS108において、制御装置50は、エンジン回転センサ13と制御装置50との間の断線判定を行なう。この断線判定は、エンジン回転センサ13から送信されたパルス信号を制御装置50が時々刻々と受信することによって行なわれる。つまり、制御装置50は、エンジン回転センサ13から送信されたパルス信号を、所定の間隔をおいて繰り返す連続した信号であると認識し、この連続した信号が所定の時間以上の間、連続して確認できた場合には断線していないと判断する。そして、制御装置50は、エンジン回転センサ13から送信されたパルス信号が全く確認できない、又は連続して確認できない場合には断線していると判断する。
【0056】
これにより、制御装置50がエンジン回転センサ13と制御装置50との間で断線していないと判断した場合にはエンジン10の始動に不具合は無いものとされて、エンジン10が運転している間はステップS108の断線判定を繰り返すこととなる。一方、制御装置50がエンジン回転センサ13と制御装置50との間で断線していると判断した場合には、ステップS109へ移行する。
【0057】
ステップS109において、制御装置50は、出力制御アクチュエータ16に対してエンジン10の出力を低下させるための制御信号を送信する。つまり、制御装置50は、燃料噴射ポンプ12からエンジン本体部11の燃焼室へ圧送される燃料を低減することによって、エンジン10の出力を制限する。具体的には、制御装置50は、出力制御アクチュエータ16を介して調量部12bを連動させることによって、エンジン10の運転状態をアイドリング状態に整定させる。
【0058】
これにより、エンジン回転センサ13と制御装置50との間で断線した場合においてもエンジン10の運転状態をアイドリング状態で維持させることができて、安全性を向上させることが可能となる。
【0059】
ステップS110において、制御装置50は、運転停止用リレー18を介して運転停止アクチュエータ17へエンジン10の運転を停止させるための制御信号を送信する。つまり、制御装置50は、燃料噴射ポンプ12からエンジン本体部11の燃焼室へ圧送される燃料を遮断することによって、エンジン10の運転を停止させる。具体的には、制御装置50は、出力制御アクチュエータ16を介して調量部12bを連動させることによって、エンジン10の運転を強制的に停止させる。
【0060】
これにより、エンジン回転センサ13と制御装置50との間で断線した場合においても、エンジン10の運転を停止させることができて、更に安全性を向上させることが可能となる。
【0061】
その後、ステップS111において、制御装置50は、エンジン回転センサ13と制御装置50との間で断線をしている旨のエラー情報を表示パネル40に表示させる。これにより、電気系統の不具合やエンジン回転センサ13と制御装置50との間の断線をオペレータに認識させることができて、整備性を向上させることが可能となる。
【0062】
このように、エンジン10の始動に際して、スタータモータ14に電圧が印加された後にエンジン回転センサ13と制御装置50との間の断線判定を当該エンジン回転センサ13からの検出信号に基づいて開始することで、エンジン回転センサからの検出信号を受信することができないエンジンの運転停止時においても断線していると誤認されることがなくなる。そのうえで、エンジン回転センサからの検出信号を受信することによって容易に断線の有無を判断することができる。また、自己断線診断機能を備えた制御装置等が不要となり、簡素な構成とすることが可能となる。
【0063】
そして、断線判定に際しては、エンジン回転センサ13からの検出信号を受信できない、又は断線判定を開始したときから所定の時間以上の間、連続して受信できない場合に断線していると判断することで、高い精度で断線の有無を判断することが可能となる。
【0064】
また、エンジン回転センサ13と制御装置50との間が断線していると判断した場合には、エンジン10の出力を制限したりエンジン10の運転を停止させたりすることで、安全性を向上させることが可能となる。
【0065】
更に、エンジン10の始動を中止した場合や、エンジン回転センサ13と制御装置50との間が断線していると判断した場合には、表示パネル40にその旨の表示を行なうことで、電気系統の不具合やエンジン回転センサ13と制御装置50との間の断線をオペレータに認識させることが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 エンジン発電機
10 エンジン
12 燃料噴射ポンプ
12a ポンプ部
12b 調量部
13 エンジン回転センサ
14 スタータモータ
14a 電圧検出手段
16 出力制御アクチュエータ
17 運転停止アクチュエータ
20 発電装置
30 インバータ装置
40 表示パネル(表示手段)
50 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタータモータにより始動可能とされるエンジンと、前記エンジンにより駆動されて発電を行なう発電装置と、前記スタータモータへ制御信号を送信可能とする制御装置と、から構成されるエンジン発電機において、前記エンジンは、当該エンジンの運転によって得られる検出信号を前記制御装置へ送信可能とするエンジン回転センサが設けられ、前記制御装置は、前記エンジンの始動に際して前記スタータモータに電圧を印加する制御信号を送信した後に、前記エンジン回転センサと前記制御装置との間の断線判定を前記エンジン回転センサからの検出信号に基づいて開始することを特徴とするエンジン発電機。
【請求項2】
前記スタータモータに印加された電圧の検出信号を前記制御装置へ送信可能とする電圧検出手段が設けられ、前記制御装置は、前記電圧検出手段からの検出信号を受信した後に、前記断線判定を開始することを特徴とする請求項1に記載のエンジン発電機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記スタータモータに電圧を印加する制御信号を送信したときから所定の時間以上、連続して前記電圧検出手段からの検出信号を受信した後に、前記断線判定を開始することを特徴とする請求項2に記載のエンジン発電機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記エンジン回転センサからの検出信号を受信できない、又は前記断線判定を開始したときから所定の時間以上、連続して受信できない場合に、断線していると判断することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエンジン発電機。
【請求項5】
前記エンジンのエンジン回転数を目標回転数に整定することができる出力制御アクチュエータを備え、前記制御装置は、前記エンジン回転センサと前記制御装置との間が断線していると判断した場合に、前記出力制御アクチュエータへエンジン回転数を低下させる制御信号を送信することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のエンジン発電機。
【請求項6】
前記エンジンの運転を停止させることができる運転停止アクチュエータを備え、前記制御装置は、前記エンジン回転センサと前記制御装置との間が断線していると判断した場合に、前記運転停止アクチュエータへ前記エンジンの運転を停止させる制御信号を送信することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のエンジン発電機。
【請求項7】
エラー情報を表示することができる表示手段を備え、前記制御装置は、前記エンジンの始動を中止した場合や前記エンジン回転センサと前記制御装置との間が断線していると判断した場合に、前記表示手段にその旨の表示を行なうことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のエンジン発電機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−24354(P2011−24354A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167855(P2009−167855)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】