説明

エンジン発電機

【課題】待機中のバッテリ電圧の低下を防止できるエンジン発電機を提供する。
【解決手段】負荷に供給する電力を発生させる発電機と、該発電機を駆動するエンジンと、エンジン始動用電源及び制御機器用電源となるバッテリと、前記エンジンにより駆動されるバッテリ充電用発電機とを備えたエンジン発電機において、前記バッテリの端子にエンジン発電機の外部から前記バッテリに充電するための外部充電回路を接続し、該外部充電回路に、該外部充電回路を流れる電流があらかじめ設定された電流許容値を超えたときに該外部充電回路を遮断する回路遮断器を設けるとともに、該外部充電回路に外部電源接続用端子を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン発電機に関し、詳しくは、エンジン発電機の発電機を駆動するエンジンに付属しているバッテリの回路に関する。
【背景技術】
【0002】
商用電源が十分に得られない工事現場などで使用する各種の負荷に電源を供給する場合、エンジンで発電機を駆動する可搬式のエンジン発電機が用いられる。この場合、エンジン発電機に異常が発生したときのために予備のエンジン発電機と電源切替装置とを配置しておき、電源供給中のエンジン発電機に異常が発生したときに、待機している予備のエンジン発電機を始動させて電源供給を行うようにしている。また、電力供給先の負荷容量の変動が大きい場合には、複数台のエンジン発電機を設置し、負荷容量が大きいときには複数台のエンジン発電機を運転し、負荷容量が小さいときには必要な台数のエンジン発電機だけを運転して他のエンジン発電機は待機状態とすることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−153259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジン発電機は、エンジンの始動用電源及び制御機器用電源として、エンジンに付属したバッテリを搭載しており、発電運転中は、エンジンにより充電用オルタネータを駆動してバッテリを充電するように形成されている。したがって、運転中のエンジン発電機に搭載されているバッテリは、充電用オルタネータからの電力で常時充電されて常に十分な充電状態を保っている。一方、待機中のエンジン発電機は、制御機器にて他のエンジン発電機の状態や電力供給量などを常時監視する必要があり、バッテリを制御機器用電源として使用するため、いわゆる待機電力が発生し、待機時間が長くなるとバッテリが放電してエンジンが始動できなくなるおそれがある。特に,気温が低い寒冷地ではバッテリの能力が低下するため、短時間の待機であっても、エンジンを始動できなくなるおそれがあった。
【0005】
このため、各エンジン発電機にバッテリ充電器をそれぞれ配置し、商用電源あるいは運転中のエンジン発電機から出力された交流電力を利用し、バッテリ充電器を介して各エンジン発電機のバッテリにそれぞれ充電するようにしており、バッテリ充電器の分だけコストアップになるだけでなく、無駄な電力消費を生じていた。また、バッテリ充電器を用意できない場合は、負荷容量が小さい場合でも、予備機を含めて全てのエンジン発電機を運転して各エンジン発電機のバッテリにそれぞれ充電しなければならず、燃料の無駄や二酸化炭素排出量増加などの問題がある。さらに、エンジン発電機を単独で使用する場合にはバッテリ充電器が不要であるから、エンジン発電機の用途に応じてバッテリ充電器を付属させるか否かの判断が必要であり、エンジン発電機及びバッテリ充電器の管理にも問題があった。
【0006】
そこで本発明は、簡単な電気回路を増設するだけで待機中のエンジン発電機のバッテリを、運転中のエンジンで駆動されているオルタネータで充電することができ、待機中のバッテリ電圧の低下を防止できるエンジン発電機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のエンジン発電機は、負荷に供給する電力を発生させる発電機と、該発電機を駆動するエンジンと、エンジン始動用電源及び制御機器用電源となるバッテリと、前記エンジンにより駆動されるバッテリ充電用発電機とを備えたエンジン発電機において、前記バッテリの端子にエンジン発電機の外部から前記バッテリに充電するための外部充電回路を接続し、該外部充電回路に、該外部充電回路を流れる電流があらかじめ設定された電流許容値を超えたときに該外部充電回路を遮断する回路遮断器を設けるとともに、該外部充電回路に外部電源接続用端子を設けたことを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明のエンジン発電機は、複数台の前記エンジン発電機を設置し、少なくとも1台のエンジン発電機を待機状態として運転するときに、該複数台のエンジン発電機の前記外部電源接続用端子同士を接続用電線にて接続し、運転中のエンジン発電機の前記バッテリ充電用発電機で発電した電力の一部によって待機状態のエンジン発電機のバッテリを充電することを特徴としている。また、前記回路遮断器がサーマルプロテクタであること、あるいは、前記回路遮断器に代えて抵抗を挿入したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエンジン発電機によれば、一つのエンジン発電機の外部に設置された他のエンジン発電機やエンジン作業機などに設けられているバッテリ充電用発電機で発電した電力の一部により、前記一つのエンジン発電機のバッテリを充電することができ、該一つのエンジン発電機が待機中であっても、該一つのエンジン発電機のバッテリが放電してしまうことを防止できる。特に、複数台のエンジン発電機を設置して少なくとも1台のエンジン発電機を待機状態として運転するときには、運転中のエンジン発電機のバッテリ充電用発電機からの電力の一部で待機状態のエンジン発電機のバッテリを充電することができるので、待機時間が長くなっても待機状態のエンジン発電機のバッテリが待機電力によって放電することを防止できる。また、回路遮断器としてサーマルプロテクタを採用することにより、低コストで外部充電回路を形成することができ、サーマルプロテクタに設定する電流許容値をバッテリ充電時の電流より僅かに高い電流値に設定することにより、バッテリから大電流が流れるエンジン始動時に外部充電回路を自動的に遮断するので、外部電源接続用端子に接続した電線に大電流が流れることがなくなり、細い電線を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のエンジン発電機の一形態例を示す回路図である。
【図2】エンジン発電機のブロック図である。
【図3】複数台のエンジン発電機を設置したときの接続状態を示す要部の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本形態例に示すエンジン発電機11は、負荷(L)12に供給する電力を発生させる発電機(G)13と、該発電機13を駆動するエンジン(E)14と、エンジン始動用モータ(セルモータ(M))15の電源及び制御機器用電気回路(C)16の電源となるバッテリ(B)17と、前記エンジン14により駆動されるバッテリ充電用発電機(オルタネータ(A))18とを備えるとともに、前記バッテリ17に接続された外部充電回路(T)21を備えている。
【0012】
外部充電回路21は、エンジン発電機11のバッテリ17の端子17a,17bに、前記オルタネータ18に対して並列に接続される一対の配線21a,21bと、一方の配線21aに設けられた回路遮断器22と、各配線21a,21bの先端に設けられた外部電源接続用端子23a,23bとを備えている。回路遮断器22は、配線21aを流れる電流があらかじめ設定された電流許容値、例えば、バッテリ17を普通充電する際の最大電流値を考慮した電流値を超えたときに外部充電回路21を遮断し、配線21aを流れる電流が低下したとき、回路遮断器22の温度が低下したとき、あるいは、あらかじめ設定された時間が経過したときに自動的に復帰するものであって、リレーを用いた電磁開閉器など、過電流を防止する各種機器を使用することができるが、安価な汎用品である市販のサーマルプロテクタを用いることにより、初期コストを大幅に削減することができる。また、回路遮断器22に代えて、配線21a,21bに抵抗を挿入することにより、大電流が流れることを抑制することもできる。
【0013】
前記外部電源接続用端子23a,23bには、接続用電線である接続線24a、24bを介して、エンジン発電機11の近傍に配置されている他のエンジン発電機やエンジン作業機などのエンジン31に付属するバッテリ32の同極の端子32a、32bがそれぞれ接続される。このように、エンジン発電機11のバッテリ17と他のエンジン31のバッテリ32とを外部充電回路21を介して接続することにより、他のエンジン31が運転中は、他のエンジン31によって駆動されるオルタネータ33で発電した電力が、該他のエンジン31に付属するバッテリ32を充電するとともに、オルタネータ33で発電した電力の一部が、接続線24a、24b及び外部充電回路21を介して前記エンジン発電機11のバッテリ17を充電する状態になる。
【0014】
なお、両バッテリ17,32の基準電圧が同一ならば各種組み合わせが可能であるが、エンジン発電機11のエンジン14、オルタネータ18及びバッテリ17と、他のエンジン31、バッテリ32及びオルタネータ33とは、同等の性能を有していることが好ましい。この場合、エンジン発電機11のエンジン14と他のエンジン31とが共に運転中は、バッテリ17とバッテリ32とが同電位で、オルタネータ18とオルタネータ33との発電量が同等ならば、接続線24a、24bに電流はほとんど流れない。同様に、エンジン発電機11のエンジン14と他のエンジン31とが停止中でバッテリ17とバッテリ32とが同電位のときにも、接続線24a、24bに電流はほとんど流れない。
【0015】
そして、待機中で停止しているエンジン発電機11のエンジン14を始動するときには、エンジン14を始動するためのセルモータ15にバッテリ17から電力が供給される。このとき、セルモータ15の始動電流が大量に流れてバッテリ17の電圧が一時的に大幅に低下するため、例えば、両バッテリ17,32の通常の電圧が12Vの場合、セルモータ15の始動電流によってバッテリ17の電圧が8V以下まで急激に低下するため、エンジン発電機11のバッテリ17と、エンジン31のバッテリ32との間に4V以上の電位差が発生し、この電位差によってバッテリ32からバッテリ17に向かって数百Aの大電流が流れることになる。
【0016】
このとき、この種のバッテリにおける通常運転時の充電電流、例えば10A程度を考慮して、前記回路遮断器22の電流許容値を20A程度に設定しておくことにより、エンジン14を始動するときに、配線21aに大電流が流れ出すと同時に回路遮断器22が作動して外部充電回路21を遮断するので、前記配線21a,21bや前記接続線24a、24bに大電流が流れることを回避できる。これにより、配線21a,21bや前記接続線24a、24bとして、充電電流を考慮した電流、例えば20A程度の電流に対応した2SQ(公称断面積2mm)程度の細い電線を使用することができる。一方、回路遮断器22を設けずに、単純にバッテリ端子同士を接続する場合は、数百Aの大電流に対応した100SQ(公称断面積100mm)程度の電線を使用する必要がある。
【0017】
したがって、外部充電回路21に回路遮断器22を設けることにより、外部充電回路21の配線21a,21bや他のエンジン31のバッテリ32に接続するための接続線24a、24bに細くて軽い電線を使用することができ、これら要するコストを大幅に削減できるとともに、接続線24a、24bの接続作業や運搬作業の軽減を図ることができる。また、このような外部充電回路21を設けることにより、バッテリ充電器を別に用意する必要がなくなり、エンジン発電機11の管理も容易になるとともに、商用電源も確保する必要がなく、無駄な燃料消費や電力消費も発生することがなくなる。
【0018】
図3に示すように、3台以上のエンジン発電機11(第1発電機11A、第2発電機11B、第3発電機11C)を並列に設置して負荷へ電力供給を行う場合は、各発電機11A,11B,11Cに設けられている外部充電回路21A,21B,21Cの外部電源接続用端子の同極同士を接続線24a、24bにより並列に接続する。
【0019】
各発電機11A,11B,11Cが停止状態のとき、各発電機11A,11B,11Cの各バッテリ17A,17B,17Cは、接続線24a、24b及び外部充電回路21A,21B,21Cを介して接続されているため、同電位、例えば12Vとなっている。運転を開始する際、第1発電機11Aのエンジンをセルモータ15Aによって始動するときに、前述のように、セルモータ15Aの始動電流によって第1発電機11Aのバッテリ17Aの電圧が急激に低下し、他の発電機11B,11Cのバッテリ17B,17Cからバッテリ17Aへ数百Aの大電流が流れようとするが、各外部充電回路21A,21B,21Cに設けられている回路遮断器がそれぞれ作動して各外部充電回路21A,21B,21Cを遮断するので、外部充電回路21A,21B,21C内の配線や接続用の接続線24a、24bに大電流が流れることはなく、これらを保護することができる。
【0020】
第1発電機11Aのエンジンが運転を開始すると、第1発電機11Aのエンジンにより駆動されるオルタネータ18Aが発電した電力によって各バッテリ17A,17B,17Cが充電される状態になる。このときの充電電流は、通常、最大で10A程度に設定されているので、回路遮断器が作動することはなく、各バッテリ17A,17B,17Cが同電位となり、待機中の発電機11B,11Cのバッテリ17B,17Cが待機電力によって放電状態になることはない。
【0021】
同様に、第2発電機11Bのセルモータ15Bによりエンジンを始動する際や、第3発電機11Cのセルモータ15Cによりエンジンを始動する際に、第2発電機11Bのバッテリ17Bや第3発電機11Cのバッテリ17Cの電圧が急激に低下した場合にも、回路遮断器がそれぞれ作動して各外部充電回路21A,21B,21Cを遮断し、外部充電回路21A,21B,21C内の配線や接続用の接続線24a、24bを保護する。
【0022】
したがって、複数のエンジン発電機11を設置して少なくとも1台のエンジン発電機11を予備として待機状態とするときや、前記特許文献1に記載された運転方法を実施する際に、各エンジン発電機11の各外部充電回路21同士を並列に接続しておくことにより、エンジン発電機11が1台でも運転していれば全てのエンジン発電機11の各バッテリ17を同電位に保つことができ、待機電力によって待機中のエンジン発電機11のバッテリ17が放電状態になってしまうことを防止できる。これにより、待機状態から運転状態に切り替えるときに、バッテリ17の電位低下によってエンジンを始動できなくなることを回避でき、エンジン発電機11を待機状態から運転状態に確実に切り替えることができる。
【0023】
さらに、エンジン発電機11に外部充電回路21をあらかじめ装備しておくことにより、エンジン発電機11を使用する際に、単機使用か、複数台の並列使用か、バッテリ充電器を必要とするかといった確認作業が不要となり、エンジン発電機11の管理が容易になるとともに、バッテリ充電器に要するコストの削減も図れる。
【符号の説明】
【0024】
11…エンジン発電機、12…負荷、13…発電機、14…エンジン、15…エンジン始動用モータ(セルモータ)、16…制御機器用電気回路、17…バッテリ、17a,17b…端子、18…バッテリ充電用発電機(オルタネータ)、21…外部充電回路、21a,21b…配線、22…回路遮断器、23a,23b…外部電源接続用端子、24a、24b…接続線、31…他のエンジン、32…バッテリ、32a、32b…端子、33…オルタネータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に供給する電力を発生させる発電機と、該発電機を駆動するエンジンと、エンジン始動用電源及び制御機器用電源となるバッテリと、前記エンジンにより駆動されるバッテリ充電用発電機とを備えたエンジン発電機において、前記バッテリの端子にエンジン発電機の外部から前記バッテリに充電するための外部充電回路を接続し、該外部充電回路に、該外部充電回路を流れる電流があらかじめ設定された電流許容値を超えたときに該外部充電回路を遮断する回路遮断器を設けるとともに、該外部充電回路に外部電源接続用端子を設けたことを特徴とするエンジン発電機。
【請求項2】
複数台の前記エンジン発電機を設置し、少なくとも1台のエンジン発電機を待機状態として運転するときに、該複数台のエンジン発電機の前記外部電源接続用端子同士を接続用電線にて接続し、運転中のエンジン発電機の前記バッテリ充電用発電機で発電した電力の一部によって待機状態のエンジン発電機のバッテリを充電することを特徴とする請求項1記載のエンジン発電機。
【請求項3】
前記回路遮断器は、サーマルプロテクタであることを特徴とする請求項1又は2記載のエンジン発電機。
【請求項4】
前記回路遮断器に代えて抵抗を挿入したことを特徴とする請求項1又は2記載のエンジン発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−147515(P2012−147515A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1654(P2011−1654)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】