説明

エージェントを利用した電力網における分散型状態計算

多数のノード(K1〜K11)を有する電力網(2)において状態計算を行うための計算装置および方法。本方法は、現地計算エージェント(A1〜A11)を多数のノード(K1〜K11)の各々に割り当てるステップと、地域計算エージェント(R1、R2)を地域網(3、4)に割り当てるステップと、地域計算エージェント(R1、R2)が状態計算の結果を対応付けられた現地計算エージェント(A1〜A11)から受信するステップと、この計算結果に基づき、対応付けられた地域網(3、4)の状態計算を行うステップと、を含む。本方法は、対応付けられた地域網(3、4)の単純化された網表現を作成するステップと、上位地域計算エージェント(R3)が地域計算エージェント(R1、R2)の状態計算の結果と単純化された網表現とを受信し、単純化された網表現に基づき、電力網(2)の状態を計算するステップと、をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のノード(母線)を有する電力網において状態計算(電力潮流または負荷潮流の計算)を行うための方法および計算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノードマン(M.M.Nordman)およびレートネン(M.Lehtonen)による「配電網のための分散エージェントを用いた状態推定(Distributed Agent−Based State Estimation for Electrical Distribution Networks)」と題された論文、IEEE トランザクションズ・オン・パワー・システムズ(Transactions on Power Systems)、第20巻、第2号、2005年5月、p.652−658、は、配電網における状態の推定方法を開示している。中央(一次変電所)の視点から、複数の二次変電所から成る網の状態が「トークン(token)」転送機構に基づき計算される。一次変電所は、トークンを定期的に初期化し、これを最も近い二次変電所に転送する。木構造が全ての二次変電所に張り巡らされ、網のトポロジーもトークンに供給される。(中央における)可観測性解析のために、何れの場合も現地データがトークンに追加される。次に、中央および現地で入手可能なデータに基づき、網全体の状態推定が行われる。トークンを送出して木構造を巡回させ、現地データをこのトークンに追加することによって、現地で入手可能なデータが再度収集される。この論文は、「状態推定」に関するもので、電力潮流計算がその一部を成す。
【0003】
状態計算のための異なる手法がスン(H.Sun)による「送電および配電を含む網全体の分散電力潮流計算(Distributed power flow calculation for whole networks including transmission and distribution)」と題された論文、IEEE/PES トランスミッション・アンド・ディストリビューション・コンフェランス(transmission and distribution conference)、2008年4月21〜24日、に開示されている。この論文では、送電網および配電網が順番に計算されるマスター・スレーブ分割法が適用されている。
【0004】
ストット(B.Stott)らによる「高速デカップルド負荷潮流(Fast Decoupled Load Flow)」と題された論文、IEEE トランザクションズ・オン・パワー・アパレイタス・システムズ(Transactions on Power Apparatus Systems)、第3号(5月)、1974年、では、中央地点において一組の非線形方程式を解くためにニュートン・ラプソン法が用いられ、行列を2つの部分に分割することによって計算プロセスを速めている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電力網における状態計算をより効率的に行える方法および計算装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明によると、複素電圧と入力および出力(有効および無効)電力とを含む状態が対応付けられたノードを多数有する電力網において状態計算を行うための方法が提供される。本方法は、以下のステップを含む。
−現地計算エージェントを多数のノードの各々に割り当てるステップであって、現地計算エージェントは対応付けられたノードについてのみ状態計算を行う、ステップと、
−地域計算エージェントを地域網に割り当てるステップであって、各地域網は多数のノードの一部を含み、これら地域網の合計は、ノード間の地域間接続を除く、電力網を形成する、ステップと、
−各地域計算エージェントがそれぞれに対応付けられた現地計算エージェントの状態計算の結果(すなわち外部変数のみ)を受信し、この計算結果に基づき、対応付けられた地域網の状態計算を(異なる地域網の影響を組み込まずに)行い、さらに対応付けられた地域網の単純化された網表現を作成するステップと、
−上位地域計算エージェントが地域計算エージェントの状態計算の結果と単純化された網表現とを受信し、単純化された網表現に基づき電力網の状態を計算するステップであって、地域間接続はこの計算に含まれない、ステップと、
を含む。
【0007】
独立した計算エージェントを複数有するこの種の階層化モデルは、異なる階層間のデータ交換が少なくて済む。これは、さまざまな計算の実行効率を、例えば並列計算によって、向上させる可能性も開く。エージェントは、例えば、入力と出力とを有し、明確に定義された目的を有する(ソフトウェア)エンティティとして実装されうる。本方法の複数の実施形態において、エージェントはユーザ、構成要素、またはエンティティの利益に注意を払う。複数の地域網とそれぞれに対応付けられた地域計算エージェントとを一緒に階層化することもできる。その結果、階層数が事実上無制限の網構造が作成される。この種のモデルは、「マルチエージェントシステム」とも称される。すなわち、複数のエージェントを有するシステムであって、このシステムでは、複数のエージェントが互いに交渉または連携可能であるか、または互いに交渉または連携する必要がある。
【0008】
1つの実施形態において、本方法は、
−上位地域計算エージェントが電力網の状態計算の結果を複数の地域計算エージェントに送るステップと、
−各地域計算エージェントが状態計算をもう一度行うステップと、
−地域計算エージェントが状態計算の結果を各現地エージェントに送るステップと、
をさらに含む。計算結果を下位の計算エージェントにフィードバックすることによって、定義されたデータの初期推定が算出データに置換され、新しい繰り返しの開始が可能になる。
【0009】
別の実施形態において、本方法は、各現地計算エージェント、各地域計算エージェント、および上位地域計算エージェントが状態計算を繰り返し行うステップをさらに含む。さまざまな状態計算を解くためのこの繰り返しアプローチ(複数の非線形方程式)により、より良好でより高速な解、すなわち誤差範囲がより小さい解、がもたらされるであろう。
【0010】
別の実施形態において、現地計算エージェント、地域計算エージェント、および上位地域計算エージェントのうちの2つ以上によって状態計算が並列に行われる。これにより、状態計算の実行に必要な時間の節約がもたらされる。
【0011】
別の実施形態において、現地計算エージェント、地域計算エージェント、および上位地域計算エージェントのうちの1つ以上が自律ユニットとして実装される。この場合、エージェントは、電力網内の同じ、または異なる、階層の他のエージェントから独立して計算を局所的かつ自律的に行える自律ユニットである。
【0012】
別の実施形態において、本方法は、地域計算エージェントが計算した状態を上位地域計算エージェントおよび対応付けられた各現地エージェントに同時に送るステップを含む。これにより、さらに直接的な繰り返しが保証され、その結果として、特定の状況においては状態計算の解の収束がより迅速に得られる。
【0013】
別の実施形態において、上位地域計算エージェントは状態計算を定期的に実行する。これにより、本方法の挙動が予測可能になる。これは、状態計算の結果が他の測定またはシミュレーションにさらに使用される場合に好都合でありうる。
【0014】
別の実施形態において、上位地域計算エージェントは、地域計算エージェントの各々から結果を受信した後に、状態計算を行う。したがって、この実施形態においては予測可能な結果も達成されるが、状態計算の結果の非同期受信が可能であるため、新しい状態計算に必要な全データが最初に収集される。
【0015】
別の態様において、本発明は、コンピュータシステムに読み込まれるや否や上記のように本発明の複数の実施形態のうちの1つによる方法の機能をコンピュータシステムにもたらす、コンピュータが実行可能な命令が格納されたコンピュータプログラム製品に関する。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、電力網に関する状態計算を実行する計算装置であって、この計算装置は1つ以上のコンピュータシステムを備え、この1つ以上のコンピュータシステムは現地計算エージェント、地域計算エージェント、および上位地域計算エージェントのうちの1つ以上を実装するように設計され、その結果として上記のように本発明の複数の実施形態のうちの1つによる方法の機能を得る計算装置に関する。この種の計算装置は、例えば、電力網の監視および電力網のシミュレーションの両方を行うために網管理者が好都合に使用できる。
【0017】
1つの実施形態において、計算装置は、測定データをセンサから受信するためのインタフェースをさらに備える。したがって、最新の測定データを計算に含めることができる。別の実施形態において、計算装置は、電力網内のノードの、例えば埋め込みシステムの形態である、一部である。
【0018】
次にいくつかの実施例に基づき添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用可能な(小型)電力網の概略表現を示す。
【図2】図1に示されている電力網に適用された本発明による方法の一実施形態の実装の概略表現を示す。
【図3】本方法(の複数部分)を実装可能なコンピュータシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
電力網に関する状態計算は、電力網の設計、計画、および運用において重要な資源である。状態計算は、関連の技術分野においては、電力潮流または負荷潮流の計算とも称される。状態計算では、網内の複数の分岐点において(複素)電圧が計算され、その後にケーブルおよび電線を通る(有効および無効)電力潮流の計算が可能になる。この状態計算は、非線形方程式を解く、または計算する、ために複数の数値解析法を含むことが多い。この種の電力網1の一例が図1に示されている。当該技術分野では、電力潮流計算の複雑度は、ノードK1〜K11の数の三乗で増すと一般に想定されている。
【0021】
上記の状態計算の複雑さにより、計算対象の電力網1のサイズ(すなわちノード数)は通常制限され、この状態計算を行える速度も制限される。従来の状態計算(電力潮流計算)は、例えばニュートン・ラプソン方程式を利用した、中央での計算方法に基づいている。ここでは、中央地点において複数の行列を利用して一組の非線形方程式が解かれる。従来技術からのこのような方法では、互いに独立して計算可能な複数の異なる部分に計算を分割できないことが多く、計算速度の向上および計算範囲の向上は実施困難である。
【0022】
図1は、電力網8内の11のノード(または母線)B1〜B11を模式的に示している。各ノードB1〜B11は他の1つ以上のノードB1〜B11に接続され、ゼロ、1つ、または複数の発電機G1〜G4から受電し、ゼロ、1つ、または複数の負荷L1〜L6に給電する。
【0023】
図示の例では、第1のノードB1は第1の負荷L1に接続されている。第1の負荷L1は、図示の例では、140MWの有効電力と50MVARの無効電力とを取り込む。第1のノードB1は、ノードB2およびB6にさらに接続されている。第2のノードB2は、9MWの有効電力と61MVARの無効電力とを発電機G2から受電し、ノードB3にさらに接続されている。残りのノードB4〜B11は、図1に示されているように、他の要素に接続されている。
【0024】
各ノードB1〜B11または母線には、電力網1における状態、すなわち複素電圧、入力および出力(有効および無効)電力など、が対応付けられている。
【0025】
表示される有効および無効電力は、当業者には公知の測定装置によって測定された、それぞれの電源G1〜G5、負荷L1〜L6、およびノードB1〜B11からの実際の最新の測定データにすることができる。あるいは、数字をシミュレートされたデータにすることもできる。例えば、上記の数字の1つ以上をパラメータとして定義可能であり、その後にその他の表示データが計算されて表示される。
【0026】
したがって、網管理者は、どの程度の太さのケーブルおよび/または電線を設計すべきかを判定でき、さらに、例えば、発電機G1〜G4、負荷L1〜L6、またはケーブルのうちの1つ以上が故障した場合に網の挙動(シミュレーション)を観察することができる。
【0027】
電力潮流または状態の計算は、例えば網における損失を低減することによって、網管理を最適化するためにも使用でき、その結果として運用コストを削減できる。
【0028】
本発明によると、電力潮流または状態の計算は、例えば電力潮流計算を現地レベルで(すなわち各ノードB1〜B11について)行える複数のローカルソフトウェア(エージェント)を利用して、分散方式で行われる。
【0029】
図2では、本発明による方法の一実施形態の実装が図1に示されている電力網に適用されている。図2に示されている電力網2は、11のノードK1〜K11を含む。ノードK1〜K11の各々は、図1を参照して説明した例のノードB1〜B11のうちの1つのような構成を有することができる。すなわち、発電機G1〜G4、負荷L1〜L6、および/または他の複数のノードを各ノードK1〜K11に接続可能である。ノードK1〜K6(およびそれぞれの相互接続)は第1の地域または地域網4を形成し、ノードK7〜K11は第2の地域または地域網3を形成する。提示されている電力網2全体を構成するために第1および第2の地域3、4を相互接続する地域間接続T1は、ノードK5およびK8の間にある。
【0030】
エージェントA1〜A11(現地計算エージェント)は各ノードK1〜K11に対応付けられ、何れの場合もあらゆる現地情報(それぞれのノードK1〜K11に対応付けられた測定またはシミュレーションデータ)を有する。これは、必要とされる全情報を電力網1の中央で入手可能でなければならない従来の方法とは対照的である。各エージェントA1〜A11は、対応付けられたノードK1〜K11の状態のみを表す。すなわち、各エージェントA1〜A11は、データ(推定または測定データ)に基づき、関連ノードK1〜K11の状態を計算できる。この状態は(従来の電力潮流計算とまさに同じく)、ノードK1〜K11の(複素)電圧および入力または出力(複素)電力を含む。各ノードK1〜K11では、一部のパラメータを既知数とすることができ、残りのパラメータは最初に推定され、最終的に計算される。
【0031】
地域3、4ごとに、地域計算エージェントR1、R2が存在するか、または割り当てられる。各地域網3、4は、多数のノードK1〜K11の一部を含み、地域網3、4の合計は、地域間接続T1(図示の例ではノードK5−K8間)を除く、電力網2を形成する。地域計算エージェントR1、R2は、関連データ、すなわち状態計算の結果、を関連地域3、4のノードK1〜K11に対応付けられたエージェントA1〜A11から受信する。次に、地域計算エージェントR1、R2は、範囲が限定された地域3、4について、一方の地域3または他方の地域4の動的影響(地域間接続T1による動的影響。これは考慮されず、境界条件としてのみ組み込まれる)を考慮せずに、それ自体は公知である電力潮流計算を行う。
【0032】
各地域計算エージェントR1、R2はそれぞれの地域網3、4の単純化も行い、これを対応付けられた地域網3、4の、例えば単一ノードのレベルにまで、または数ノード(関連地域網3、4内の総ノード数未満)の組み合わせにまで、単純化された網表現として格納する。これらのデータ(単純化された網トポロジー)も上位レベルに転送される。
【0033】
この例では、地域網3および4は、地域間接続T1と組み合わされて、電力網2全体を形成する。電力網2は、1つ以上の地域間接続によって多少複雑な方法で相互接続された、より多くの地域3、4を含むことも勿論可能である。
【0034】
上位の計算エージェントR3(または上位地域計算エージェント)は電力網2全体に対応付けられ、各地域3、4内の計算エージェントA1〜A11から直接ではなく、下位の地域計算エージェントR1、R2から、情報を受信する。上位の計算エージェントR3は、単純化された地域網に関するデータおよび対応付けられた測定またはシミュレーションデータを地域計算エージェントR1、R2から受信する。この結果、上位の計算エージェントR3は、(地域間接続T1を含む)電力網2から大幅に単純化された網をモデル化でき、収集された全てのデータを用いて、電力潮流計算によって電力網2全体を迅速かつより単純な方法で計算することができる。
【0035】
これらの計算が上位の計算エージェントR3によって行われた後、得られた情報(とりわけ、地域3、4間のリンクを含む情報)は、対応付けられた地域3、4に関連する情報であれば、下位の地域計算エージェントR1、R2と共有されるか、またはこれらの地域計算エージェントR1、R2に転送される。得られたデータは次に、現地レベルでの状態計算を行うために、地域計算エージェントR1、R2によって再利用される。こうして得られたデータは現地エージェントA1〜A11と再度共有されるか、または現地エージェントA1〜A11に転送される。次に現地エージェントA1〜A11は、新たな電力潮流計算を現地レベルで再度行うことができる。
【0036】
別の実施形態においては、網2全体の状態についての安定解に達するために、プロセス全体が繰り返される。階層の数は、この例に示されている3階層(現地エージェントA1〜A11、地域計算エージェントR1、R2、および上位地域計算エージェントR3)より多くてもよい。この結果、より複雑な電力網についても、依然として限られている計算実施手段を用いて、状態計算(電力潮流)を行うことが可能である。例えば利用可能な計算資源に基づき、各地域3、4のサイズを最適化できる。
【0037】
この繰り返しは、現地エージェントA1〜A11の階層から、地域計算エージェントR1、R2を介して、上位地域計算エージェントR3まで行うことができ、また元に戻すことができる。代わりに、別の実施形態においては、計算された状態が地域計算エージェントR1、R2から上位地域計算エージェントR3および対応付けられた現地エージェントA1〜A11に同時に送られる。特定の状況においては、これは、繰り返しステップのより高速な収束をもたらすことができる。
【0038】
本発明の別の実施形態において、上位地域計算エージェントR3は状態計算を定期的に行う。これは、本方法の容易に予測可能な挙動をもたらす。代わりに、上位地域計算エージェントR3は、地域計算エージェントの各々から結果を受信した後に、状態計算を行う。これにより、本方法の複数のサブステップを複数の下位階層で非同期に実行できるようになり、全体として実施すべき繰り返しをできる限り減らすことができる。
【0039】
1つの実施形態において、エージェントA1〜A11および地域計算エージェントR1、R2、R3は、コンピュータシステム25によって実行されるソフトウェア(複数のモジュール、複数のプログラム)として実装される。この種のコンピュータシステム25が(単純化された形態で)図3に示されている。コンピュータシステム25は、プロセッサ(PROC)20と、プロセッサ20および入/出力ユニット(I/O)22に接続されたメモリユニット(mem)21(ハードディスクおよび/または半導体メモリなど)とを備える。入/出力ユニット(I/O)22はさまざまな周辺装置23に接続される。
【0040】
周辺装置23の一例は、コンピュータ実行可能命令をメモリ21に読み込むための読取ユニットである。読取ユニットは、データ(コンピュータ実行可能命令など)をフロッピーディスク(登録商標)またはCD−ROMなどのコンピュータプログラム製品から読み取るように、さらに場合によってはデータをこれらの製品に格納するように、設計可能である。他の匹敵するデータ媒体として、当業者には公知のように、例えばメモリスティック、DVD、またはブルーレイディスクが挙げられる。
【0041】
コンピュータシステム25内のプロセッサ20は、スタンドアロンシステムとして実装されてもよく、またはより大きなプログラムのサブルーチンを実行するようにそれぞれが設計された複数の並列動作プロセッサとして実装されてもよく、または種々のサブプロセッサを有する1つ以上のメインプロセッサとして実装されてもよい。
【0042】
1つの実施形態において、さまざまな現地エージェントA1〜A11および地域計算エージェントR1、R2、R3は、1つの中央コンピュータシステム25上に実装される。これは、例えば、電力潮流計算が既存または将来の電力網2のシミュレーションとして行われる場合に、適用可能である。
【0043】
代わりに、例えば(センサ23の使用により)電力網2からの最新の測定値が使用される場合は、エージェントA1〜A11および計算エージェントR1、R2、R3を複数のコンピュータシステム25上に実装可能である(分散化)。1つの実施形態において、入/出力ユニット22は、(入/出力ユニット22に接続される周辺装置23の別の例としての)1つ以上のセンサ23とのデータ交換のためのインタフェース22である。センサ23は、ノードK1〜K11に対応付けられた電圧、電流、および/または他の運転パラメータを測定する。これらの測定データは、本願明細書に記載されている複数の実施形態において使用可能である。
【0044】
電力網のシミューレーションにおいては、(例えばコンピュータ網を介した)分散処理も使用可能である。
【0045】
別の代替案として、現地計算エージェント、地域計算エージェント、および上位地域計算エージェントのうちの2つ以上によって、例えばソフトウェアの並列実行に適したコンピュータシステム25上で、計算が並列に行われる。これは、本質的に複雑な計算を複数の(物理または仮想)プロセッサ20に分散することによって時間上の利得をもたらす。
【0046】
例として上で述べた全ての実施形態において、現地計算エージェントA1〜A11、地域計算エージェントR1、R2、および上位地域計算エージェントR3のうちの1つ以上を自律ユニットとして実装可能である。この種の自律ユニットは、同じ、または異なる、階層の他のエージェントから独立して、現地計算を自律的に行うことができる。
【0047】
さらに別の実施形態において、本発明は、計算装置として実装される。この計算装置は、図3に示されているように1つ以上のコンピュータシステム25を備える。この1つ以上のコンピュータシステム25は、現地計算エージェントA1〜A11および地域計算エージェントR1、R2、R3のうちの1つ以上を、例えばソフトウェアモジュールの形態で、実装するように設計される。この計算装置は、上記の複数の実施形態のうちの1つを実装するために、例えば複数のソフトウェアプログラムを利用して、設計される。
【0048】
さまざまな実施形態に言及して説明したような計算装置は、電力網2内のノードK1〜K11の一部を構成してもよく、例えば、埋め込みシステムとして実装されてもよい。
【0049】
以上、複数の実施形態および例に言及して本発明を詳細に説明してきた。記載されている複数の実施形態のさまざまな部分を異なる方法で実装でき、その場合も同じ結果を達成できることは当業者には明らかであろう。したがって、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲に規定されている要素およびその均等物によっても決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複素電圧、入力および出力電力を含む状態がそれぞれ対応付けられた多数のノード(K1〜K11)を有する電力網(2)において状態計算を行う方法であって、
−現地計算エージェント(A1〜A11)を前記多数のノード(K1〜K11)の各々に割り当てるステップであって、前記現地計算エージェント(A1〜A11)は前記対応付けられたノード(K1〜K11)についてのみ状態計算を行う、ステップと、
−地域計算エージェント(R1、R2)を地域網(3、4)に割り当てるステップであって、各地域網(3、4)は前記多数のノード(K1〜K11)の一部を含み、地域網(3、4)の合計は、地域網(3、4)間の地域間接続(T1)を除く、前記電力網(2)を形成する、ステップと、
−前記地域計算エージェント(R1、R2)が前記対応付けられた現地計算エージェント(A1〜A11)の前記状態計算の結果を受信し、前記結果に基づき、前記対応付けられた地域網(3、4)の状態計算を行い、さらに前記対応付けられた地域網(3、4)の単純化された網表現を作成するステップと、
−上位地域計算エージェント(R3)が前記地域計算エージェント(R1、R2)の前記状態計算および前記単純化された網表現の結果を受信し、前記単純化された網表現に基づき、前記電力網(2)の状態を計算するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
−前記上位地域計算エージェント(R3)が前記電力網の前記状態計算の前記結果を前記地域計算エージェント(R1、R2)に送るステップと、
−前記地域計算エージェント(R1、R2)が状態計算をもう一度行うステップと、
−前記地域計算エージェント(R1、R2)が前記状態計算の前記結果を前記現地エージェント(A1〜A11)に送るステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
−前記現地計算エージェント(A1〜A11)、前記地域計算エージェント(R1、R2)、および前記上位地域計算エージェント(R3)が状態計算を繰り返し行うステップ、
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記現地計算エージェント(A1〜A11)、地域計算エージェント(R1、R2)、および前記上位地域計算エージェント(R3)のうちの2つ以上によって状態計算が並列に行われる、請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記現地計算エージェント(A1〜A11)、地域計算エージェント(R1、R2)、および前記上位地域計算エージェント(R3)のうちの1つ以上が自律ユニットとして実装される、請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
−前記地域計算エージェント(R1、R2)が前記計算された状態を前記上位地域計算エージェント(R3)および前記対応付けられた現地エージェント(A1〜A11)に同時に送るステップ、
をさらに含む、請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記上位地域計算エージェント(R3)は前記状態計算を定期的に行う、請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記上位地域計算エージェント(R3)は、前記地域計算エージェント(R1、R2)の各々から結果を受信した後に、前記状態計算を行う、請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
コンピュータシステム(25)に読み込まれるや否や前記請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法の機能を前記コンピュータシステム(25)にもたらすコンピュータ実行可能命令が格納されたコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
電力網の状態計算を行うための計算装置であって、前記計算装置は1つ以上のコンピュータシステム(25)を備え、前記1つ以上のコンピュータシステム(25)は現地計算エージェント(A1〜A11)、地域計算エージェント(R1、R2)、および上位地域計算エージェント(R3)の1つ以上を実装するように設計され、その結果として前記計算装置は前記請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法の機能を得る、計算装置。
【請求項11】
測定データをセンサ(23)から受信するためのインタフェース(22)をさらに備える、請求項10に記載の計算装置。
【請求項12】
前記計算装置は前記電力網(2)内のノード(K1〜K11)の一部である、請求項10または11に記載の計算装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−514756(P2013−514756A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544414(P2012−544414)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050833
【国際公開番号】WO2011/074950
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(508353293)ネーデルランツ オルガニサティー フォール トゥーゲパストナトゥールヴェテンシャッペリーク オンデルズーク テーエンオー (41)
【Fターム(参考)】