説明

オイルミスト除去装置及び除去方法

【課題】オイルミストを高効率で除去することが可能な期間の長期化及びメンテナンス頻度低減を図ることのできるオイルミスト除去装置及び除去方法を提供する。
【解決手段】本発明のオイルミスト除去装置10は、工作機械の排気中に含まれるオイルミストを帯電させる放電極14と、前記オイルミストを付着させる集塵板16と、前記放電極14と前記集塵板16に電圧を印加する電源ユニット26と前記放電極14及び前記集塵板16とを接続する電極18,20と、前記電極18,20と他の構成部材との絶縁を図る碍子28,30と、を備えた電気集塵手段40と、前記電気集塵手段40に付着した前記オイルミストを洗浄する洗浄手段50と、前記電気集塵手段40の絶縁破壊を検出する絶縁破壊検出手段と、前記絶縁破壊検出手段の測定値と、前記電気集塵手段40の除去率の下限値に基づいて、前記洗浄手段50による洗浄を制御する洗浄制御手段46と、を備えたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車や産業装置等の機械装置部品を成型、研削、切削、研磨等で製造加工する工作機械から発生するオイルミストを除去するオイルミストの除去装置および除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工工場は、機械装置部品を製造するため、成型、研削、切削、研磨等を工作機械で行うところである。切削、研削、研磨等を伴う部品は、外形加工寸法に厳密な精度が要求される。そのため、部品の温度変化による膨張伸縮等を抑えた状態で加工する必要がある。ところが、切削、研削、研磨等を行う場合には、摩擦熱によりどうしても部品の加工部が高温となってしまう。加工現場においては、このような温度上昇を抑えるために、加工部品を切削油や研削油等に常時浸した状態又は常時吹き付けた状態で加工を行うようにしている。このような作業により、加工部品の温度上昇が抑えられるからである。しかし、切削油、研削油が高温となった場合、これが気化し、オイルミストを生ずることとなる。
【0003】
工作機械の中には、加工部品を加工時に設置しているステージ部が一般環境に露出した状態のものもあり、このような場合には、上記のようにして生じたオイルミストがそのまま工場内に拡散していた。工場内に拡散したオイルミストは更に揮発して小径化し、工場内上部に霞となって漂う。また、大径のオイルミストは床や壁、作業者に落下付着し、作業環境を著しく悪化させる要因となっていた。更に、加工後の洗浄を終えた製品へのオイル再付着等の問題も生じている。
【0004】
このような問題から、最近の工作機械は、ステージ部分をケーシングで覆うことでオイルミストの拡散を防ぎ、オイルミスト除去装置を通過させた空気を排気として工場内に放出するようにしている。
【0005】
ここでオイルミスト除去装置は、発生するオイルミスト粒径から、一般的に電気集塵機が用いられ、工作機械に対してダクトにより接続されている。このように使用される電機集塵機の一般的な構成は、図4の通りである。図4に示す電気集塵機1は、工作機械からの排気中のオイルミストを帯電させる放電部2、電界を構成し帯電したオイルミストを付着集塵する集塵部3、放電前の前段処理に用いられるプレフィルタ4、及び工作機械から排気を吸引し、工場内へ給気を行う送風ファン5を有する。
【0006】
このような工作機械の排気からオイルミストを除去するための電気集塵機における従来の構成を図5に示す。高電圧を構成する電源ユニット、放電を行う放電極2a、放電極2aと電源ユニットを繋ぐ電極7、電極7を絶縁状態にする碍子6、オイルミストを付着除去する集塵板3aから構成される。このような構成の電気集塵機1aでは、放電極2aと碍子6に囲われたエリアにオイルミストを高濃度に含んだ排気を通過させる。
【0007】
ここで問題となるのは、図6に示すように放電極2aの電極7と碍子6である。電極7は、高電圧を発生させるため、他の構成部材から絶縁状態を維持しなければならない。その為、構成上、他の構成部材との接触が避けられない場合には碍子6を挟み込むことにより絶縁状態を維持している。上記のような構成においては、碍子6がオイルミストを高濃度に含んだ工作機械からの排気と直接接触するため、碍子6表面にオイルミスト8が付着する。オイルミスト8は電気伝導率が高いため、碍子6表面にオイルミスト8が付着すると他の構成部材との絶縁状態を維持できず、放電電圧が低下し、オイルミストの除去効率が低下する。
【0008】
従来の電気集塵機の特性として、初期におけるオイルミスト除去効率は90%以上と高いが、時間経過と共に上記理由によりその能力は低下する。低下した除去効率を回復するには、主に電気集塵機内の碍子と放電極と集塵板をターゲットとして洗浄しなければならない。
【0009】
洗浄することで除去性能は回復するが、その頻度が問題となる。電気集塵機メーカーの推奨頻度は、使用条件にもよるが1ヶ月に1回程度である。電気集塵機は、基本的に工作機械1台に対して1台という割合で備えられているため、1工場内での電気集塵機数は百数十台となることもある。これを1ヶ月毎にメンテナンスしていてはメンテナンス費がかさみ、膨大なランニングコストとなってしまう。このため、工場の実状として、電気集塵機の性能劣化をそのままに、メンテナンスサイクルは3〜6ヶ月に1回という割合としている場合が多い。このため、オイルミストによる作業環境の悪化という問題は、依然として残っている状態である。
【0010】
そこで洗浄工程にかかるコストを安価にするとともに、排水量を減少させ、環境負荷を低減させる洗浄装置を備えたオイルミスト除去装置について、特許文献1が開示されている。
特許文献1に開示のオイルミスト除去装置では、極板に堆積した粉塵に対する第1の洗浄工程と、極板に堆積したオイルに対する第2の洗浄工程からなり、第1の洗浄工程は積算風量が所定値に達したときに行う構成であり、第2の洗浄工程はオイルミスト濃度に基づく積算オイル量が所定値に達したとき行う構成としている。これにより洗浄頻度を適正化し、水使用量と洗浄液使用量を適正化して洗浄工程にかかるコストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−212803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら特許文献1に開示のようなオイルミスト除去装置では、稼働時間や積算風量に基づいて洗浄開始時期を判断しているため、実際に電気集塵機が汚れていないにも係らず洗浄を行うおそれがある。例えば粉塵量が低濃度の場合には、吸い込み空気中にほぼ一定の濃度の粉塵が存在すると仮定して判断している。またオイルミスト濃度検出センサの設置箇所によりオイルミスト濃度の測定値に誤差が生じるおそれがある。このため、実際に電気集塵機の洗浄が必要ない状態でも洗浄を行う場合がある。また工作機械の稼動時間の場合、加工の種類によってオイルミストの発生量が異なり、オイルミストの発生量が少ない場合では、電気集塵機の洗浄が必要ないにも係らず洗浄を行うことがある。
【0013】
従ってオイルミスト濃度や積算風量などに基づいて洗浄工程開始時期を決める場合、適正な判断ができないという問題があった。
また従来の技術の項にて記述したが、電気集塵機の除去性能は連続で使用した場合、時間経過と共に除去性能が低下する問題を生じる。電気集塵機の処理風量、処理する空気中のオイルミスト数により除去性能は変わるが、除去性能は初期約90%から30時間運転後には約70%まで低下する。
【0014】
上記従来技術の問題を解決するため、本発明はオイルミストを高効率で除去することが可能な期間の長期化及びメンテナンス頻度低減を図ることのできるオイルミスト除去装置及び除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため本発明に係るオイルミスト除去装置は、工作機械の排気中に含まれるオイルミストを帯電させる放電極と、前記オイルミストを付着させる集塵板と、前記放電極と前記集塵板に電圧を印加する電源ユニットと前記放電極及び前記集塵板とを接続する電極と、前記電極と他の構成部材との絶縁を図る碍子と、を備えた電気集塵手段と、前記電気集塵手段に付着した前記オイルミストを洗浄する洗浄手段と、前記電気集塵手段の絶縁破壊を検出する絶縁破壊検出手段と、前記絶縁破壊検出手段の測定値と、前記電気集塵手段の除去率の下限値に基づいて、前記洗浄手段による洗浄を制御する洗浄制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0016】
このような構成により、電気集塵手段の除去性能が低下した時期を特定し、電気集塵手段の洗浄を行うことでオイルミストの長期的な高い除去率を維持することができる。従って、メンテナンス頻度を低減し、切削機械の稼動率を向上させると共に、メンテナンス費用を低減することができる。
【0017】
また、このような特徴を有するオイルミスト除去装置では、前記絶縁破壊検出手段は、前記電極の放電電圧を検出する電圧計又は/及び前記電気集塵手段のアース電流を検出する電流計であることが望ましい。
【0018】
このような特徴を有することにより、電気集塵手段の除去性能の低下をより正確に特定してオイルミストの高効率除去と、メンテナンスサイクルの長期化といった2つの効果を高い水準で両立させることが可能となる。
【0019】
また前記洗浄手段は、前記電気集塵手段を洗浄した洗浄水の油分濃度を測定する油分濃度測定手段と、前記洗浄水を予め定めた前記油分濃度の設定値以下に制御する濃度制御手段と、を備えていることが望ましい。
このような特徴を有することにより、洗浄水の洗浄力を油分濃度で再利用可能か否かを判断することにより、オイルミスト除去装置の高い除去性能を維持することができる。
【0020】
また前記洗浄手段は、前記電気集塵手段を洗浄した洗浄水の電気伝導率を測定する電気伝導率計と、前記洗浄水を予め定めた前記電気伝導率の設定値以下に制御する濃度制御手段と、を備えていることが望ましい。
このような特徴を有することにより、洗浄水の洗浄力を電気伝導率で再利用可能か否かを判断することにより、オイルミスト除去装置の高い除去性能を維持することができる。
【0021】
また、上記目的を達成するための本発明に係るオイルミスト除去方法は、オイルミストを帯電させる放電極と、電源ユニットと前記放電極を接続する電極と、前記オイルミストを付着させる集塵板を備えた電気集塵手段により工作機械の排気中に含まれるオイルミストを除去するオイルミスト除去方法であって、前記電気集塵手段の絶縁破壊を検出し、前記絶縁破壊の検出値と、前記電気集塵手段の除去率の下限値に基づいて、前記電気集塵手段に付着した前記オイルミストを洗浄することを特徴とする。
【0022】
このような方法により、電気集塵手段の除去性能が低下した時期を特定し、電気集塵手段の洗浄を行うことでオイルミストの長期的な高い除去率を維持することができる。従って、メンテナンス頻度を低減し、切削機械の稼動率を向上させると共に、メンテナンス費用を低減することができる。
【0023】
上記のような特徴を有するオイルミスト除去方法において、前記絶縁破壊の測定値は、前記電極の放電電圧の電圧値又は/及び前記電気集塵手段のアース電流の電流値であることが望ましい。
このような特徴を有することによれば、オイルミストの高効率除去と、メンテナンスサイクルの長期化といった2つの効果を高い水準で両立させることが可能となる。
【0024】
また前記電気集塵手段を洗浄した洗浄水の油分濃度を測定し、前記洗浄水を予め定めた前記油分濃度の設定値以下に制御することが望ましい。
このような特徴を有することにより、洗浄水の洗浄力を油分濃度で再利用可能か否かを判断することにより、オイルミスト除去装置の高い除去性能を維持することができる。
【0025】
また前記電気集塵手段を洗浄した洗浄水の電気伝導率を測定し、前記洗浄水を予め定めた前記電気伝導率の設定値以下に制御することが望ましい。
このような特徴を有することにより、洗浄水の洗浄力を電気伝導率で再利用可能か否かを判断することにより、オイルミスト除去装置の高い除去性能を維持することができる。
【発明の効果】
【0026】
上記のような特徴を有するオイルミスト除去装置及び除去方法によれば、オイルミストを高効率で除去することが可能な期間の長期化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るオイルミスト除去装置の構成概略を示す模式図である。
【図2】(A)は電気集塵手段の側断面図、図2(B)は同図(A)におけるA−A′矢視を示す。
【図3】オイルミスト除去性能70%のときの電流と電圧の関係を示したグラフである。
【図4】電気集塵機の基本構成を示す図である。
【図5】従来のオイルミスト除去装置の構成を示す図である。
【図6】従来のオイルミスト除去装置の問題点を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のオイルミスト除去装置及び除去方法に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本実施形態に係るオイルミスト除去装置について説明する。図1は本発明に係るオイルミスト除去装置の構成概略を示す模式図である。
【0029】
本実施形態に係るオイルミスト除去装置10は、電気集塵手段40と絶縁破壊検出手段と洗浄制御手段46と洗浄手段50を主な基本構成としている。
図2(A)は電気集塵手段の側断面図、図2(B)は同図(A)におけるA−A′矢視を示す。電気集塵手段40は、本体12と、電源ユニット26とから構成されている。
【0030】
本体12は、ケーシング12a、排気流路17、放電極14、集塵板16、及びファン22を有する。ここで、ケーシング12aは、本体12を構成する外殻であり、内部には、バッファ空間13を備えつつ、工作機械に接続されたダクト32から供給される排気を通過させる通路(排気流路17)を構成する。
【0031】
排気流路17は、ケーシング12aの内部に設けられた隔壁13aにより構成され、隔壁13aの内部が排気流路17、外部がバッファ空間13とされる。
放電極14は、詳細を後述する電源ユニット26と電極18を介して接続されており、ケーシング12aなどの他の構成部材との接触面には碍子28が設けられ、電極18と他の構成部材との間の絶縁が図られている。放電極14には、電源ユニット26から供給される直流高電圧が印加される。ケーシング12aの内部に隔壁13aを配置して構成された排気流路17の上流側に配置され、高電圧に維持された放電極14はコロナ放電により−電子を放電し、放電極14間を通過するオイルミストを帯電させる。
【0032】
集塵板16は、上述した放電極14の下流側に配置される。集塵板16も放電極14と同様に、電源ユニット26と電極20を介して接続されており、他の構成部材との間には碍子30が配置されることで、電極20と他の構成部材との間の絶縁が図られている。集塵板16は、−側電極となる板面から−電子を放電して電界を構成し、クーロン力により+側電極となる板面に対して帯電したオイルミストを付着させる。
【0033】
ファン22は、集塵板16の下流側、排気流路17の出口近傍に配置され、工作機械に接続されたダクト32から、排気流路17内へ排気を吸引する役割を担う。
本実施形態に係るオイルミスト除去装置10では、排気流路17の側面に隔壁13aにより構成されたバッファ空間13を設ける構成としている。隔壁13aと電極18,20との間には十分な隙間を設ける構成として他の構成部材との短絡を防ぐことができる。
【0034】
排気流路17とバッファ空間13とを隔離する隔壁13aには、高電圧が印加された放電極14や集塵板16を支持しつつ絶縁を図るための碍子28,30が固定されている。
電源ユニット26は、上述した放電極14、集塵板16に対して印加する電圧を供給する役割を担う。電圧は、電極18,20を介して供給され、上述したように、他の構成部材との接触部には、碍子28,30が設けられる。
【0035】
絶縁破壊検出手段は、オイルミストが碍子に付着して絶縁状態を維持できていない状態を検出する手段であり、具体的には以下の検出手段を用いている。
絶縁破壊検出手段となる電圧計42は、放電極14の電極18に取り付け、放電極14の放電電圧を測定している。電気集塵手段40の稼動時において放電極14には電源ユニット26から直流高電圧が印加されている。電気集塵手段40を長時間稼動させると碍子28にオイルミストが付着して碍子28の絶縁性が維持できなくなり、放電電圧が低下してしまう。電圧計42は、稼動している電気集塵手段40の放電電圧を継続的に測定し、高電圧の低下を測定することができる。
【0036】
絶縁破壊検出手段となる電流計44は、本体12のアース45に取り付け、電流計44はアース45に流れるアース電流を測定している。電気集塵手段40はアース45を取り付けて接地させている。通常、電気集塵手段40の初期稼動時は、碍子28にオイルミストが付着しておらず、アースに電流が流れることはない。しかし電気集塵手段40を長時間稼動させると碍子28にオイルミストが付着して碍子28の絶縁性が維持できなくなり、アース45にアース電流が流れる。電流計44は、稼動している電気集塵手段40のアース45のアース電流を継続的に測定し、電流を測定することができる。
【0037】
洗浄制御手段46は、絶縁破壊検出手段となる電圧計42及び/又は電流計44と、後述する洗浄手段50の洗浄ポンプ58と電気的に接続している。洗浄制御手段46は、絶縁破壊検出手段の測定値と、電気集塵手段40の除去率の下限値に基づいて、後述する洗浄手段50による洗浄を制御している。具体的に絶縁破壊検出手段の測定値とは、電圧計42による放電電圧の測定値又は/及び電流計44による電流の測定値である。また通常電気集塵手段40の稼動初期の除去性能を90%としたとき、30時間稼動後の除去性能は70%まで低下し洗浄が必要となる。本実施形態の電気集塵手段40の除去率の下限値とは、除去性能70%としている。
【0038】
洗浄手段50は、洗浄ノズル52と、洗浄水水槽54と、洗浄水配管56と、洗浄ポンプ58と、排水配管60と、排水ポンプ62と、補給水配管64と、油分濃度測定部66と、電気伝導率計68と、濃度制御部70と、を備えている。
【0039】
洗浄ノズル52は、電気集塵手段40の集塵板16と放電極14と碍子28,30に向けて洗浄水を噴霧している。洗浄ノズル52は、図1に示すように排気流路17の集塵板16及び放電極14の上流側及び下流側の2箇所に取り付けている。洗浄ノズル52による洗浄は、図2(B)に示すように洗浄水の噴霧面積内に集塵板16と放電極14と碍子28、30が収まるようにしている。洗浄ノズル52から噴霧される噴霧形状は、一例として、角錐、多円錐とすることができる。また洗浄ノズル52は、集塵板16又は放電極14の断面を網羅する噴霧面積を確保できるように複数取り付ける構成とすることもできる。
【0040】
洗浄水水槽54は、本体ケーシング12aの下部に設けられ、電気集塵手段40を洗浄した後の洗浄水が溜まる水槽である。洗浄水水槽54には洗浄水配管56と、排水配管60と、補給水配管64が接続している。
【0041】
洗浄水配管56は洗浄水水槽54と洗浄ノズル52を繋ぐ配管であり、配管途中には洗浄ポンプ58が取り付けられている。洗浄ポンプ58を稼動させると、洗浄水水槽54内の洗浄水が洗浄ノズル52から噴霧される。
【0042】
排水配管60は洗浄水水槽54から洗浄水を外部に排出する配管であり、配管途中に排水ポンプ62が取り付けられている。排水ポンプ62を稼動させると洗浄水水槽の洗浄水が外部へ排水される。
【0043】
補給水配管64は外部から洗浄水水槽54に水を補給するための配管であり、配管途中にボールタップ65が取り付けられている。ボールタップ65は、洗浄水水槽54の予め定められた水位が低下した場合、所定の水位を維持するように水を供給する開閉弁である。
【0044】
油分濃度測定部66は、洗浄水水槽54に溜まった洗浄水の油分濃度を測定するものである。
電気伝導率計68は、洗浄水水槽54に溜まった洗浄水の電機伝導率を測定するものである。
【0045】
濃度制御部70は、排水ポンプ62と、油分濃度測定部66と、電気伝導率計68と電気的に接続している。濃度制御部70は、油分濃度測定部66又は電気伝導率計68の測定値に基づいて、予め定めた油分濃度値又は電気伝導率の設定値以下となるように洗浄水水槽54内の洗浄水を制御している。例えば洗浄水水槽54の洗浄水の油分濃度が設定値よりも高い場合には、排水ポンプ62を稼動させて水槽内の洗浄水を外部へ排水させる。水槽内の水位が予め定めた水位よりも低下した場合には、ボールタップ66が開放されて給水配管64から水が所定の水位まで補給される。
【0046】
上記構成による本発明のオイルミスト除去装置によるオイルミストの除去方法について以下説明する。
電源ユニット26をONにして放電極14、および集塵板16に電圧を印加する。次に、ファン22を駆動し、オイルミストを含んだ工作機械の排気をダクト32を介して排気流路17に吸引する。
【0047】
そして、放電極14を通過する際に帯電したオイルミストは、集塵板16の+側に吸着されて除去される。
オイルミストが除去された空気は、ファン22を介して工場内へと放出される。オイルミスト除去装置10内では、このような一連の動作が繰り返される。
【0048】
電気集塵手段40を長時間稼動させると、碍子28,30にオイルミストが付着する。碍子28,30にオイルミストが付着すると装置内の絶縁抵抗が低下してくる。具体的にはケーシング本体12aに取り付けたアース15から電流が流れ始める。また放電極14の電極18に印加させている高電圧が低下する。
【0049】
本発明では、アース15に取り付けた電流計44によりアース15に流れる電流を測定し、電極18に取り付けた電圧計42で電圧を測定している。本発明の洗浄制御手段46では電圧計42又は/及び電流計44の測定が入力されて、予め定めた電気集塵手段40の除去率の下限値における電流値又は/及び電圧値よりも低下した場合には、洗浄ポンプ58を稼動させて電気集塵手段40の放電極14と、集塵板16と、碍子28,30に洗浄ノズル52から洗浄水を噴霧して洗浄するように制御している。なお洗浄手段50による洗浄中は、電気集塵手段40によるオイルミストの捕集は停止させている。
【0050】
予め定めた電気集塵手段40の除去率の下限値における電流値又は/及び電圧値は、一例として次のように定めることができる。
許容限界除去率70%を満足する条件として、各電圧時の電流値から測定電流が5%増加したとき、又は定格電圧から測定電圧が15%増加したときのいずれか一方の条件のとき洗浄手段による洗浄を行うように制御している。実施形態の定格電流は、設計上安定して使用できる電流をいう。また定格電圧は、設計上安定して使用できる電圧をいう。
【0051】
図3はオイルミスト除去性能70%のときの電流と電圧の関係を示したグラフである。具体的に図3のグラフは、横軸に電極の電圧(kV)、縦軸にアースに流れる電流(mA)を示し、オイルミスト除去性能70%時の電気特性をプロットしたグラフである。
【0052】
オイルミスト除去性能70%の電気特性は、電極の所定電圧を超えたとき電圧の上昇と共に電流も増加する。この電気特性を境にして図中右側の範囲であれば、オイルミストの除去性能が70%以上となる。
【0053】
また電気集塵手段の稼動時における電極の電圧は設定値A、実施形態では一例として12kVが定められている。この設定値Aを下回るとオイルミストの除去性能が低下し洗浄が必要となる。
【0054】
以上よりオイルミスト除去性能70%の電気特性と設定値Aのラインを結ぶオイルミスト除去性能が70%以上を維持するラインを境として、この維持ラインよりも図中右側の範囲Bであれば洗浄する必要はない。一方維持ラインよりも図中左側の範囲Cでは70%を下回るため洗浄が必要となる。従って範囲Cに相当する電流及び電圧の測定値が当てはまる場合には洗浄を行うように制御している。
【0055】
オイルミストの洗浄は、放電極14の入口側と集塵板16の出口側の2箇所に設けた洗浄ノズル52から液滴状の洗浄水を角錐状に噴霧し、放電極14と集塵板16断面と碍子28,30に万遍なく洗浄水を接触させるように噴霧させている。噴霧した洗浄水は、オイルミストの油分と共にケーシング本体12aの洗浄水水槽54に溜まる。洗浄後はオイルミスト除去装置10内に通風のみを行い装置内部を乾燥させる。乾燥終了後は、再度電気集塵手段40を稼動させてオイルミストの除去作業を行う。
【0056】
また洗浄制御手段46による洗浄手段50を稼動させるタイミングは、電気集塵手段40の除去率の下限値に達する前後の工作機械(不図示)が停止した空き時間を利用して洗浄するようにしてもよい。
【0057】
洗浄手段50の濃度制御部70は、油分濃度測定部66又は電気伝導率計68の測定値が入力される。入力された油分濃度又は電気伝導率の測定値に基づいて、予め定めた油分濃度値又は電気伝導率の設定値以下となるように洗浄水水槽54内の洗浄水を制御している。例えば洗浄水水槽54の洗浄水の油分濃度が設定値よりも高い場合には、排水ポンプ62を稼動させて水槽内の洗浄水を外部へ排水させる。水槽内の水位が予め定めた水位よりも低下した場合には、ボールタップ66が開放されて給水配管64から水が所定の水位まで補給される。一方、洗浄水の油分濃度が設定値よりも低い場合には、オイルミストの洗浄水として再利用することができる。
【0058】
このような本発明のオイルミストの除去方法によれば、電気集塵手段の除去性能が低下した時期を特定し、電気集塵手段の洗浄を行うことでオイルミストの長期的な高い除去率を維持することができる。従って、メンテナンス頻度を低減し、切削機械の稼動率を向上させると共に、メンテナンス費用を低減することができる。
また洗浄水の洗浄力を油分濃度又は電気伝導率で再利用可能か否かを判断することにより、オイルミスト除去装置の高い除去性能を維持することができる。
【符号の説明】
【0059】
10………オイルミスト除去装置、12………本体、12a………ケーシング、13………バッファ空間、13a………隔壁、14………放電極、16………集塵板、17………排気流路、18,20………電極、22………ファン、26………電源ユニット、28,30………碍子、32………ダクト、40………電気集塵手段、42………電圧計、44………電流計、45………アース、46………洗浄制御手段、50………洗浄手段、52………洗浄ノズル、54………洗浄水水槽、56………洗浄水配管、58………洗浄ポンプ、60………排水配管、62………排水ポンプ、64………補給水配管、66………油分濃度測定部、68………電気伝導率計、70………濃度制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の排気中に含まれるオイルミストを帯電させる放電極と、前記オイルミストを付着させる集塵板と、前記放電極と前記集塵板に電圧を印加する電源ユニットと前記放電極及び前記集塵板とを接続する電極と、前記電極と他の構成部材との絶縁を図る碍子と、を備えた電気集塵手段と、
前記電気集塵手段に付着した前記オイルミストを洗浄する洗浄手段と、
前記電気集塵手段の絶縁破壊を検出する絶縁破壊検出手段と、
前記絶縁破壊検出手段の測定値と、前記電気集塵手段の除去率の下限値に基づいて、前記洗浄手段による洗浄を制御する洗浄制御手段と、
を備えたことを特徴とするオイルミスト除去装置。
【請求項2】
前記絶縁破壊検出手段は、前記電極の放電電圧を検出する電圧計又は/及び前記電気集塵手段のアース電流を検出する電流計であることを特徴とする請求項1に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項3】
前記洗浄手段は、
前記電気集塵手段を洗浄した洗浄水の油分濃度を測定する油分濃度測定部と、
前記洗浄水を予め定めた前記油分濃度の設定値以下に制御する濃度制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項4】
前記洗浄手段は、
前記電気集塵手段を洗浄した洗浄水の電気伝導率を測定する電気伝導率計と、
前記洗浄水を予め定めた前記電気伝導率の設定値以下に制御する濃度制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項5】
オイルミストを帯電させる放電極と、電源ユニットと前記放電極を接続する電極と、前記オイルミストを付着させる集塵板を備えた電気集塵手段により工作機械の排気中に含まれるオイルミストを除去するオイルミスト除去方法であって、
前記電気集塵手段の絶縁破壊を検出し、
前記絶縁破壊の検出値と、前記電気集塵手段の除去率の下限値に基づいて、前記電気集塵手段に付着した前記オイルミストを洗浄することを特徴とするオイルミスト除去方法。
【請求項6】
前記絶縁破壊の測定値は、前記電極の放電電圧の電圧値又は/及び前記電気集塵手段のアース電流の電流値であることを特徴とする請求項5に記載のオイルミスト除去方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のオイルミスト除去方法において、
前記電気集塵手段を洗浄した洗浄水の油分濃度を測定し、
前記洗浄水を予め定めた前記油分濃度の設定値以下に制御することを特徴とするオイルミスト除去方法。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載のオイルミスト除去方法において、
前記電気集塵手段を洗浄した洗浄水の電気伝導率を測定し、
前記洗浄水を予め定めた前記電気伝導率の設定値以下に制御することを特徴とするオイルミスト除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−161348(P2011−161348A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25673(P2010−25673)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】