説明

オキソ陰イオン吸着イオン交換体

【課題】オキソ陰イオン吸着イオン交換体を提供する。
【解決手段】a)水性媒体中でフタルイミド法により製造されたビーズ状弱塩基性陰イオン交換体を鉄(II)塩または鉄(III)塩と接触させる工程と、b)a)で得られた混合物のpH値を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を加えることによって2.5〜12の範囲に調節する工程、および得られた前記鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有イオン交換体を既知の方法で分離する工程とからなる鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体の製造方法、オキソ陰イオンおよびそれらのチオ類似体、好ましくはヒ素を、水および水溶液から除去するためのその使用、並びに、再生方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタルイミド法により製造された鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物を含有する弱塩基性陰イオン交換体の製造方法、並びに、オキソ陰イオンおよびそれらのチオ類似体を水および水溶液から除去するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連するオキソ陰イオンは、式X、X2−、X3−、HXまたはH2−を有するもの、および、これらのチオ類似体である(式中、nは整数1、2、3または4であり、mは整数3、4、6、7または13であり、XはAu、Ag、Cu、Si、P、S、Cr、Ti、Te、Se、V、As、Sb、W、Mo、U、Os、Nb、Bi、Pb、Co、Ni、Fe、Mn、Ru、Re、Tc、Al、Bの群からの金属もしくは遷移金属、または、F、Cl、Br、I、CN、C、Nの群からの非金属である)。本発明によれば、用語オキソ陰イオンは、式XO2−、XO3−、HXOまたはHXO2−を表すことが好ましい(式中、mは整数3または4であり、Xは上記の群からの金属もしくは遷移金属(好ましくは、P、S、Cr、Te、Se、V、As、Sb、W、Mo、Bi)、または、Cl、Br、I、C、Nの群からの非金属である)。本発明によれば、用語オキソ陰イオンは、より好ましくは、(III)および(V)の酸化状態のヒ素、(III)および(V)の酸化状態のアンチモン、硫酸塩としての硫黄、リン酸塩としてのリン、クロム酸塩としてのクロム、ビスマス酸塩としてのビスマス、モリブデン酸塩としてのモリブデン、バナジウム酸塩としてのバナジウム、タングステン酸塩としてのタングステン、セレン酸塩としてのセレン、テルル酸塩としてのテルル、または、塩素酸塩もしくは過塩素酸塩としての塩素のオキソ陰イオンを表す。本発明において特に好ましいオキソ陰イオンは、HAsO3−、HAsO、HAsO2−、AsO3−、HSbO−、HSbO、HSbO2−、SbO3−、SeO2−、ClO、ClO、BiO2−、SO2−、PO3−およびこれらのチオ類似体である。本発明においてさらに好ましいオキソ陰イオンは、HAsO、HAsO、HAsO2−、AsO3−およびSeO2−、並びに、またこれらのチオ類似体である。本発明によれば、用語オキソ陰イオンは、上記式でOがSで置換されたチオ類似体も含む。
【0003】
飲料水の純度に対する要求は、この数十年間に大きく増大してきている。非常に多くの国の保険機関が水中の重金属濃度を制限している。これには、特に、ヒ素、アンチモンまたはクロムなどの重金属が関係している。
【0004】
例えば、ある特定の条件下では、ヒ素化合物は岩石から浸出し、地下水に混入する。天然水中では、ヒ素は3価および5価のヒ素を含む酸化物として存在する。天然水において多くみられるpH値においては、主に化学種HAsO、HAsO、HAsO、HAsO2−が存在することが知られている。
【0005】
クロム、アンチモンおよびセレンの化合物に加えて、容易に吸収されるヒ素化合物は非常に毒性が強く発癌性を有する。しかしながら、鉱石の分解によって地下水に混入するビスマスは、健康の観点からは議論の余地がある。
【0006】
米国、インド、バングラデシュ、中国の多くの地域および南アメリカでは、地下水中のヒ素濃度が非常に高いことがある。
【0007】
現在では、多くの医学的研究によって、長期間にわたって高濃度のヒ素の汚染に曝されたヒトは、慢性ヒ素中毒の結果、異常な皮膚の変化(過角化症)や様々なタイプの腫瘍を発症する可能性があることが示されている。
【0008】
医学的研究に基づいて、世界保険機関WHOは、1992年に、飲料水中のヒ素に対して10μg/lの制限値を国際的に導入するよう勧告している。
【0009】
ヨーロッパの多くの国および米国では、依然としてこの値を超えている。ドイツでは、1996年以来10μg/lを受け入れている。EU諸国では、2003年以来、米国では2006年以来、10μg/lの制限値が適用されている。
【0010】
未処理の水、排水および水性プロセス流を浄化するために、様々な方法でイオン交換体が使用されている。イオン交換体は、また、オキソ陰イオン、例えばヒ酸イオンの除去にも適している。そのため、(非特許文献1)には、第1級、第2級および第3級アミノ基を有するイオン交換体による、陰イオン、例えばヒ酸イオンの交換について記載されている。
【0011】
イオン交換体を使用して飲料水からヒ素を除去することは、研究論文の(非特許文献2)にも記載されている。この場合、例えば、タイプI樹脂として知られる、トリメチルアンモニウム基を有するスチレンまたはアクリレートベースの樹脂、および、タイプII樹脂として知られる、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基を有する樹脂というように、異なる構造パラメータを有する強塩基性陰イオン交換体が研究された。
【0012】
しかしながら、既知の陰イオン交換体の欠点は、それらが、オキソ陰イオン、特にヒ酸イオンに対する、所望のかつ必要な選択性と能力を有していないことである。したがって、飲料水中に通常存在する陰イオンの存在下で、ヒ酸イオンに対する吸収能はほんの僅かである。
【0013】
(非特許文献3)には、鉄(III)イオンが配位した(キレート化した)イミノ二酢酸基を有するキレート樹脂による、ヒ酸イオンの除去について記載されている。その製造において、酸形態のイミノ二酢酸基を有するキレート樹脂に、鉄(III)イオンが配位(キレート化)される。この場合、Fe(III)イオンの配位の過程でpHが2を超えないよう留意されているので、ヒ素に対する選択性が高い鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物相の生成は起こらない(非特許文献3、p.88)。したがって、この吸着剤は、水溶液から法的に要求される残留量にまでヒ素イオンを除去することができない。
【0014】
(特許文献1)には、鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有およびカルボキシル含有のイオン交換体の製造方法が記載されている。この材料は低残留濃度にまでヒ素を吸着するが、吸着能が限られている。
【0015】
(特許文献2)には、例えばヒ素の除去に対して選択性を有する吸着剤のさらに別の製造方法が開示されている。この方法では、陰イオン交換体を、酸化剤(例えば過マンガン酸カリウムなど)および金属塩(例えば硫酸鉄(II)など)と反応させる。(特許文献2)には、酸化工程がないと、陰イオン交換体マトリックスと金属カチオンとの間の反発力により、陰イオン交換体に金属カチオンを所望の程度まで導入することができないという事実が記載されている。さらに、(特許文献2)の方法の欠点は、酸化剤との反応によってイオン交換体がダメージを受け、そのことによって、ブリーディングが増加し、寿命が短縮されることである。
【0016】
(特許文献3)では、水を、特定の金属イオンまたは金属を含むイオンを含有する強塩基性陰イオン交換体と接触させることによって、水からヒ素を除去する方法が開示されている。(特許文献3)では、ヒ素に対する選択性は、第2級および第3級アミノ基がアルキル化によって第4アンモニウム基に変換されると向上すると指摘している。
【0017】
(特許文献3)は、正の電荷を帯び、この電荷が強塩基性陰イオン交換体としてCl、Br、FまたはOHなどの陰イオンと結合する陰イオン交換体を示している。
【0018】
第4アミンは、(特許文献3)においては、例えば、第3級アミンにアルキル基を付加することにより製造される。これとは対照的に、弱塩基性陰イオン交換体は、第1級アミノ基および/または第2級アミノ基および/または第3級アミノ基を含有する。
【0019】
先行技術で知られているヒ素吸着剤は、選択性および能力に関して、未だ所望するような特性を示していない。したがって、ヒ素イオンに対して選択的で、製造が容易であり、かつ、ヒ素の吸着能が向上した、新規なビーズ状のイオン交換体または吸着剤が必要とされている。
【特許文献1】WO 2004/110623 A1
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0156136号明細書
【特許文献3】EP−A 1 568 660
【非特許文献1】アール・クニン(R.Kunin)およびジェイ・メイヤーズ(J.Meyers)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of American Chemical Society)、1947年、第69巻、p.2874以降
【非特許文献2】「イオン イクスチェンジ アット ザ ミレニアム(Ion Exchange at the Millennium)」、インペリアル・カレッジ・プレス(Imperial College Press)、2000年、p.101以降
【非特許文献3】アイ・ラウ(I.Rau)ら、「リアクティブ アンド ファンクショナル ポリマーズ(Reactive&Functional Polymers)第54巻」、2003年、p85〜94
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
この問題の解決方法、したがって本発明の主題は、鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物を含有する弱塩基性陰イオン交換体を製造する方法であって、
a)水性媒体中でフタルイミド法により製造されたビーズ状弱塩基性陰イオン交換体を鉄(II)塩または鉄(III)塩と接触させる工程と、
b)a)で得られた懸濁液のpH値を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を加えることによって2.5〜12の範囲に調節する工程、および得られた鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有イオン交換体を既知の方法で分離する工程と
を特徴とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
先行技術に照らしてみて、これらの新規な鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物を含有する弱塩基性陰イオン交換体が、単純な反応で製造でき、かつ、先行技術に対して相当の改良が認められるのみならず、オキソ陰イオン(好ましくはヒ酸塩、アンチモン酸塩、リン酸塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩、ビスマス酸塩、タングステン酸塩、亜セレン酸塩またはセレン酸塩、特に好ましくは、ヒ酸塩または酸化状態が(III)および(V)のアンチモン酸塩または亜セレン酸塩およびセレン酸塩)を、水溶液から吸着するための使用に一般に適した、オキソ陰イオンの吸着を示すことは意外であった。このことは、これらのチオ類似体にも同様に当てはまる。
【0022】
オキソ陰イオンおよびそれらのチオ類似体の吸着のために、本発明において使用される弱塩基性陰イオン交換体は、ヘテロ分散(heterodisperse)であってもよく、単分散であってもよい。本発明においては、単分散の弱塩基性陰イオン交換体を使用することが好ましい。これらの粒径は、一般に、250〜1250μm、好ましくは300〜650μmである。
【0023】
本発明の単分散弱塩基性陰イオン交換体のベースとなる単分散ビーズポリマーは、例えば分級、ジェッティングまたはシードフィード(seed−feed)技術などの既知の方法で製造することができる。
【0024】
単分散イオン交換体の製造は、基本的に当業者には知られている。篩い分けによるヘテロ分散イオン交換体の分別は別として、前駆体、すなわち単分散ビーズポリマーの製造においては、2つの直接製造方法、具体的にはジェッティングおよびシードフィード法の間には本質的な相違がある。シードフィード法では、例えば、篩い分けまたはジェッティングによって得られる単分散の原料が使用される。本発明においては、ジェッティング法により得られる単分散弱塩基性陰イオン交換体が、オキソ陰イオンの吸着に好適に使用される。
【0025】
本出願において、単分散とは,分布曲線の均一性係数(uniformity coefficient)が1.2以下であるビーズポリマーまたはイオン交換体をいう。d60およびd10パラメータの比が、均一性係数と呼ばれるものである。d60は、分布曲線中の60質量%がそれより小さく、40質量%がそれより大きいかまたは等しい直径を表す。d10は、分布曲線中の10質量%がそれより小さく、90質量%がそれより大きいかまたは等しい直径をいう。
【0026】
単分散ビーズポリマー、すなわちイオン交換体の前駆体は、例えば、モノビニル芳香族化合物、ポリビニル芳香族化合物、および開始剤または開始剤の混合物、さらに場合によりポロゲン(porogen)からなるカプセル化した単分散のモノマー液滴を、水性懸濁液中で反応させることによって製造することができる。マクロ孔質イオン交換体を製造するためのマクロ孔質ビーズポリマーを得るには、ポロゲンの存在は絶対に必要である。本発明においては、ゲル状またはマクロ孔質の単分散弱塩基性陰イオン交換体を使用することができる。本発明の好ましい実施形態では、マイクロカプセル化したモノマー液滴から製造された単分散弱塩基性陰イオン交換体が、単分散ビーズポリマーの製造に使用される。単分散ビーズポリマーを製造する方法は、ジェッティング原理による方法も、シードフィード原理による方法も、当業者には先行技術から種々知られている。現時点では、米国特許第4,444,961号、EP−A 0 046 535、米国特許第4,419,245号およびWO93/12167が参照される。
【0027】
本発明において使用するモノビニル芳香族不飽和化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、アルファ−メチルスチレン、クロロスチレンまたはクロロメチルスチレンなどの化合物が好ましい。
【0028】
ポリビニル芳香族化合物(架橋剤)としては、ジビニル基含有脂肪族化合物またはジビニル基含有芳香族化合物が使用される。これらには、好適には、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンおよびジビニルエーテルが含まれる。
【0029】
好適なジビニルエーテルは、一般式(II)で表される化合物である。
【0030】
【化1】

(式中、RはC2n、(C2m−O)−C2mまたはCH−C−CHの群からの基であり、n≧2、m=2〜8、p≧2である)
【0031】
n>2の場合に適したポリビニルエーテルは、グリセロールのトリビニルエーテル、トリメチロールプロパンのトリビニルエーテル、または、ペンタエリスリトールのテトラビニルエーテルである。
【0032】
エチレングリコール、ジ−、テトラ−もしくはポリエチレングリコール、ブタンジオール、またはポリテトラハイドロフラン(polyTHF)のジビニルエーテル、あるいは、これらに対応するトリ−もしくはテトラビニルエーテルを使用することが好ましい。EP−A 11 10 608に記載されているように、ブタンジオールおよびジエチレングリコールのジビニルエーテルが特に好ましい。
【0033】
ゲル状の特性の代替としてのマクロ多孔質に要求される特性は、その前駆体であるビーズポリマーの合成という早い段階でイオン交換体に付与される。いわゆるポロゲンの添加は、この目的のために必須である。イオン交換体とマクロ孔質構造との関係に関しては、DE−B 1045102(1957年)およびDE−B 1113570(1957年)に記載されている。マクロ孔質陰イオン交換体を得るために本発明において好適に使用されるマクロ孔質ビーズポリマー製造用ポロゲンは、特に、モノマーに溶解するが、ポリマーに殆ど溶解せず、また膨潤させない有機物質である。その例としては、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカンなどの脂肪族炭化水素が挙げられる。また、ブタノール、ヘキサノールまたはオクタノールなどの4〜10個の炭素原子を有するアルコールも非常に適している。
【0034】
単分散ゲル状弱塩基性陰イオン交換体に加えて、オキソ陰イオンの吸着のために、マクロ孔質構造を有する単分散弱塩基性陰イオン交換体を使用することも、本発明においては好ましい。用語「マクロ孔質」は、当業者に公知である。その詳細は、例えば、ジェイ・アール・ミラー(J.R.Millar)ら、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティ(J.Chem.Soc.)、1963年、p.218に記載されている。マクロ孔質イオン交換体は、水銀ポロシメーター法により測定される空隙容積が、0.1〜2.2ml/g、好ましくは0.4〜1.8ml/gである。
【0035】
同様に、先行技術により得られるビーズポリマーに、単分散弱塩基陰イオン交換体の機能を付与することも、同様に、先行技術から当業者に広く知られている。例えば、EP−A 1 078 688には、いわゆるフタルイミド法により、弱塩基性基を有する単分散マクロ孔質陰イオン交換体を製造する方法であって、
a)少なくとも1種のモノビニル芳香族化合物、少なくとも1種のポリビニル芳香族化合物、そしてさらにポロゲン、および開始剤または開始剤の組み合わせからなるモノマー液滴を、単分散架橋ビーズポリマーに変換する工程、
b)この単分散架橋ビーズポリマーを、フタルイミド誘導体でアミドメチル化する工程、
c)このアミドメチル化したビーズポリマーをアミノメチル化ビーズポリマーに変換する工程、および
d)このアミノメチル化ビーズポリマーに部分アルキル化反応を起こさせ、第3級アミノ基を有する弱塩基性陰イオン交換体を得る工程
による方法が記載されている。
【0036】
本発明においては、水または水溶液からオキソ陰イオンおよびそれらのチオ類似体を吸着するために、例えば上記EP−A 1 078 688に記載されているような、フタルイミド法により製造された、単分散の弱塩基性のゲル状またはマクロ孔質の陰イオン交換体を使用する。本発明との関連で得られた知識によれば、EP−A 1 078 688のフタルイミド法により得られる単分散イオン交換体は、置換度が最高で約1.8まで、すなわち、統計的な平均で芳香核1個当たり最高で1.8個までの水素原子がCHNH基または他の弱塩基性基により置換されている。本発明においては、フタルイミド法により製造された単分散マクロ孔質弱塩基性陰イオン交換体の使用が特に好ましい。
【0037】
これとは対照的に、EP−A 1 568 660に記載の弱塩基陰イオン交換体は、クロロメチル化法により製造され、一般にスチレン/ジビニルベンゼンをベースとする架橋ビーズポリマーをクロロメチル化した後、アミンと反応させる(ヘルフェリッヒ(Helfferich)、イオネンアウスタウシャー(Ionenaustauscher)[イオン交換体]、p.46〜58、フェアラーク・ケミー(Verlag Chemie)、バインハイム(Weinheim)、1959年、そしてまたEP−A 0 481 603)。クロロメチル化ビーズポリマーと、例えば、ジメチルアミンとの反応では、窒素架橋の生成が第4アミンの生成とともに進行する。
【0038】
オキソ陰イオンおよびこれらのチオ類似体の吸着のために、本発明において使用される弱塩基性陰イオン交換体(フタルイミド法により製造)は均一な構造を有している。意外なことに、クロロメチル化法にはない後架橋とは裏腹に、芳香核の官能基による置換度が大きく向上し、その結果、弱塩基性陰イオン交換体の交換能が向上することがわかった。このことが、本発明でオキソ陰イオン交換体を使用する根拠となっている。さらに、本発明に関連した研究で、EP−A 1 568 660でクロロメチル化法により製造された弱塩基性陰イオン交換体よりも、モノマーをベースとする高交換能の弱塩基性陰イオン交換体の方がはるかに収率が高いことがわかった。
【0039】
したがって、これにより、フタルイミド法による高交換能の弱塩基性陰イオン交換体をベースとして、オキソ陰イオンおよびそれらのチオ類似体の吸着に極めて適した、高交換能の鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体が製造される。
【0040】
工程a)における、鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有イオン交換体を製造するための弱塩基性陰イオン交換体へのドーピングは、鉄(II)塩または鉄(III)塩により行われ、好ましい実施形態においては、錯体を形成していない鉄(II)塩または鉄(III)塩により行われる。本発明の方法の工程a)で使用される鉄(III)塩は、溶解性鉄(III)塩、好ましくは塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)または硝酸鉄(III)であってよい。
【0041】
鉄(II)塩として、すべての溶解性鉄(II)塩を使用することが可能である。好ましくは、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)または硝酸鉄(II)を使用することができる。工程a)の懸濁液中で空気により鉄(II)塩を鉄(III)塩に酸化することが好ましい。
【0042】
鉄(II)塩または鉄(III)塩はバルク状で使用してもよく、水溶液として使用してもよい。
【0043】
水溶液中の鉄塩の濃度は自由に選択できる。鉄塩含有量が20〜40重量%の溶液を使用することが好ましい。
【0044】
鉄塩水溶液を計量して添加する時間の調節はあまり重要ではない。技術的状況に応じて可能な限り急速に行うことができる。
【0045】
弱塩基性陰イオン交換体は、攪拌またはカラム内でのろ過により、鉄塩溶液と接触させることができる。
【0046】
使用する鉄塩1モル当たり、1〜10モル、好ましくは3〜6モルのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を使用する。
【0047】
イオン交換体の塩基性基1モル当たり、0.1〜3モル、好ましくは0.3〜2モルの鉄塩を使用する。
【0048】
工程b)におけるpHは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、特に水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩もしくは炭酸水素塩によって調節する。
【0049】
鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物の原子団が形成されるpHの範囲は、2〜12、好ましくは3〜9の範囲である。
【0050】
上述した物質は水溶液として使用することが好ましい。
【0051】
アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液濃度は最高で50重量%までであってよい。アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物の濃度が、20〜40重量%の範囲の水溶液を使用することが好ましい。
【0052】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を計量して添加する速度は、望ましいpHの大きさや技術的状況に依存する。例えば、この目的には120分を要する。
【0053】
望ましいpHに達した後、混合物をさらに1〜10時間、好ましくは2〜4時間攪拌する。
【0054】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液を計量し添加する工程は、10〜90℃、好ましくは30〜60℃の温度で行う。
【0055】
樹脂を良好に攪拌するために、塩基性基を有するイオン交換樹脂1ミリリットル当たり0.5〜3mlの脱イオン水を使用する。
【0056】
本出願のメカニズムを提案するものではないが、おそらく、工程b)において、自由に接近できるOH基を表面に有するFeOOH化合物が、イオン交換樹脂の空隙中に、pHの変化により形成されるのであろう。その後、オキソ陰イオン、好ましくはヒ素が、おそらく、OHと、例えば、HAsO2−またはHAsOとの交換によりAsO−Fe結合を形成して除去されるものと考えられる。
【0057】
しかしながら、本発明は、
a)ビーズ状弱塩基性陰イオン交換体を水性媒体中で鉄(II)塩または鉄(III)塩と接触させる工程と、
b)a)で得られた混合物のpHを、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物を加えることによって2.5〜12の範囲に設定する工程、および既知の方法によって、得られた鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物を含有するイオン交換体を分離する工程と
により得られる、弱塩基性陰イオン交換体にも関する。
【0058】
上述したように、同様にイオン交換が可能なイオンには、HAsO2−またはHAsOと同形のイオン、例えば、リン酸二水素塩、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、アンチモン酸塩、ビスマス酸塩、セレン酸塩またはクロム酸塩がある。本発明により合成される弱塩基性陰イオン交換体は、化学種HAsO、HAsO、HAsO2−、AsO3−、HSbO、HSbO、HSbO2−、SbO3−、SeO2−の吸着に特に好ましい。このことは、これらのチオ類似体にも関連する。特に、非常に好ましいことに、本発明において使用される鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体は、水または水溶液から、ヒ素、好ましくはオキソ陰イオンの形態でのヒ素を吸着するのに適している。
【0059】
本発明においては、鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体の合成における塩基としてNaOHまたはKOHを使用することが好ましい。しかしながら、NHOH、NaCO、CaO、Mg(OH)などの、FeOH基を生成するいかなる他の塩基も使用可能である。
【0060】
本発明との関連において、分離とは、水性懸濁液からのイオン交換体の取出しとその精製を意味する。取出しは、デカンテーション、遠心分離、ろ過などの当業者に知られた方法で行われる。精製は、例えば、脱イオン水で洗浄することにより行われ、微粉または粗粉部分を除くための分級を含んでいてもよい。得られた鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体は、場合により、好ましくは減圧により、および/または、より好ましくは20℃〜180℃の温度で乾燥してもよい。
【0061】
意外なことに、本発明の鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体は、オキソ陰イオン、例えば種々の形態のヒ素のオキソ陰イオンのみならず、さらに重金属、例えばコバルト、ニッケル、鉛、亜鉛、カドミウム、銅なども吸着する。
【0062】
本発明の鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体は、オキソ陰イオンを含むいかなるタイプの水の浄化にも使用することができ、好ましくは飲料水、化学産業もしくはごみ焼却施設の廃水、および坑水または埋立地の浸出水に使用される。
【0063】
本発明の鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体は、その用途に適した装置で使用することが好ましい。
【0064】
したがって、本発明は、また、オキソ陰イオンまたはそれらのチオ類似体、好ましくはヒ素、アンチモンおよびセレン、特にヒ素を、水性媒体から、好ましくは飲料水またはガスから除去するために、本出願に記載の方法により得られる鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体が充填され、処理すべき液体がその中を流れることができる装置、好ましくは、ろ過ユニット、より好ましくは吸着槽、特にフィルター吸着槽に関する。この装置は、例えば、家庭において清浄水および飲料水供給装置に取り付けることができる。
【0065】
フタルイミド法により製造され、本発明においてオキソ陰イオンおよびそれらのチオ類似体の吸着のために使用される、鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体は、アルカリ性塩化ナトリウム溶液によって容易に再生できることがわかった。したがって、本発明は、また、フタルイミド法で製造された鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体の再生方法であって、アルカリ性塩化ナトリウム溶液を作用させることを特徴とする方法を提供するものである。この塩化ナトリウム溶液は、塩化ナトリウム含有量が好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは1〜3重量%であり、また、pHは、6〜13、好ましくは8〜11、より好ましくは9〜10である。再生の好ましい実施形態においては、再生された吸着体を、さらに、希釈した鉱酸、特に好ましくは1〜10重量%の鉱酸、特に好ましくは硫酸または塩酸により処理する。
【0066】
[分析法]
〔酸化状態Vのヒ素の吸着能の測定〕:
ヒ素(V)の吸着を測定するために、2800ppbのAs(V)量を含有するNaHAsO水溶液250mlのpHを8.5に調節し、0.3mlのヒ素吸着剤とともに300mlのポリエチレン容器中で24時間攪拌する。24時間後、上澄み液中のヒ素(V)の残留量を分析する。
【0067】
〔アミノメチル化架橋ポリスチレンビーズポリマー中の塩基性アミノメチル基の定量〕
充填体積計(tamping volumeter)上で振盪することにより、アミノメチル化ビーズポリマー100mlを緊密化し、その後、脱塩水とともにガラスカラム中に流し込む。1時間40分以内に、1000mlの2重量%水酸化ナトリウム溶液を流す。その後、フェノールフタレインを混合した溶出液100mlに対する0.1N(0.1規定)塩酸の消費量が、最大でも0.05mlになるまで脱塩水を通す。
【0068】
ビーカー中で、この樹脂50mlに脱塩水50mlと1N塩酸100mlとを混合する。懸濁液を30分間攪拌し、その後、ガラスカラムに移す。液体を排出する。20分以内に、さらに1Nの塩酸100mlを樹脂に通す。その後、200mlのメタノールを流す。全ての溶出液を集めて混合し、メチルオレンジに対して1N水酸化ナトリウム溶液で滴定する。
【0069】
アミノメチル化樹脂1リットル中のアミノメチル基の量を、次式:(200−V)・20=樹脂1リットル当たりのアミノメチル基のモル数、により計算する。式中、Vは滴定で消費された1N水酸化ナトリウム溶液の容量を示す。
【0070】
〔架橋ビーズポリマーの芳香核の、アミノメチル基による置換度の測定〕
アミノメチル化樹脂全量中のアミノメチル基の量を、上記の方法により求める。
【0071】
この量中に存在する芳香核のモル量を、使用したビーズポリマーの量(グラム単位でA)を分子量で除すことによって算出する。
【0072】
例えば、1.8mol/lの量のアミノメチル基を含む、950mlのアミノメチル化ビーズポリマーを、300gのビーズポリマーから製造する。
【0073】
950mlのアミノメチル化ビーズポリマーが、2.82モルの芳香核を含有する。
【0074】
そのとき芳香核1モル当たり、1.8/2.81=0.64モルのアミノメチル基が存在する。
【0075】
架橋ビーズポリマーの芳香核のアミノメチル基による置換度は0.64である。
【実施例】
【0076】
[実施例1]
1a)スチレン、ジビニルベンゼン、およびエチルスチレンをベースにした単分散マクロ孔質ビーズポリマーの製造
まず、10lのガラス反応器に、3000gの脱塩水を仕込み、10gのゼラチン溶液、16gのリン酸水素二ナトリウム十二水和物、および320gの脱イオン水に溶解した0.73gのレゾルシノールを加え、混合する。この混合物を25℃に調節する。攪拌しながら、3.6重量%のジビニルベンゼンおよび0.9重量%のエチルスチレン(ジビニルベンゼン80%を含む、ジビニルベンゼンとエチルスチレンとの市販の異性体混合物の形態で使用)、0.5重量%の過酸化ジベンゾイル、56.2重量%のスチレン、並びに、38.8重量%のイソドデカン(ペンタメチルヘプタンを高い割合で含む工業用異性体混合物)からなる、マイクロカプセル化した、狭い粒径分布の、モノマー液滴の混合物3200gを加える。このマイクロカプセルは、ゼラチンと、アクリルアミドとアクリル酸との共重合体とのホルムアルデヒド硬化複合コアセルベートからなり、pH12の水相3200gを加える。モノマー液滴の平均粒径は460μmである。
【0077】
この混合物を攪拌しながら、25℃から開始し95℃で終了する温度プログラムにしたがって温度を上昇させて重合を完結させる。混合物を冷却し、32μmのスクリーンを通して洗浄し、その後、減圧下、80℃で乾燥させる。平均粒径440μmの、粒径分布が狭く、滑らかな表面を有するビーズ状ポリマー1893gが得られる。
【0078】
上から見るとポリマーはチョーク様の白色であり、約370g/lのバルク密度を有する。
【0079】
1b)アミドメチル化ビーズポリマーの製造
まず、室温で、ジクロロエタン3567g、フタルイミド867g、および29.8重量%のホルマリン604gを仕込む。水酸化ナトリウム溶液でこの懸濁液のpHを5.5〜6に調節する。その後、蒸留により水を除去する。硫酸63.5gを計量して加える。生成する水は蒸留により除去する。この混合物を冷却する。30℃で、65%オレウム232gを、次いで、工程1a)で製造した単分散ビーズポリマー403gを、計量して加える。懸濁液を70℃に加熱し、この温度でさらに6時間攪拌する。反応スラリーを取り出し、脱塩水を加え、蒸留により残留ジクロロエタンを除去する。
【0080】
アミドメチル化ビーズポリマーの収量:2600ml
元素分析組成:
炭素:74.9重量%;
水素:4.6重量%;
窒素:6.0重量%;
残部:酸素。
【0081】
1c)アミノメチル化ビーズポリマーの製造
50重量%の水酸化ナトリウム溶液624gおよび脱塩水1093mlを、1b)からのアミドメチル化ビーズポリマー1250mlに、室温で計量して加える。この懸濁液を2時間内で180℃に加熱し、この温度で8時間攪拌する。得られたビーズポリマーを脱塩水で洗浄する。
【0082】
アミノメチル化ビーズポリマーの収量:1110ml
総収量(外挿した収量)は2288mlである。
元素分析組成:
窒素:12.6重量%;
炭素:78.91重量%;
水素:8.5重量%。
【0083】
アミノメチル化ビーズポリマーの元素分析組成から、芳香核(スチレンおよびジビニルベンゼン単位に由来)1個当たり、平均で1.34個の水素原子がアミノメチル基により置換されたと、計算することができる。
【0084】
塩基性基の定量:2.41モル/リットル−樹脂
【0085】
1d)第3級アミノ基を有するビーズポリマーの製造
まず、反応器に脱塩水1380ml、1c)からのアミノメチル化ビーズポリマー920ml、および29.7重量%のホルマリン溶液490gを室温で仕込む。懸濁液を40℃に加熱する。85重量%の蟻酸を計量して加えることにより、懸濁液のpHを3に調節する。2時間内で、懸濁液を還流温度(97℃)にまで加熱する。この間、蟻酸を計量添加してpHを3.0に維持する。還流温度に達したら、最初に蟻酸を計量添加し、次いで、50重量%の硫酸を計量添加して、pHを2に調節する。混合物をpH2で30分間攪拌する。その後、50重量%の硫酸をさらに計量添加して、pHを1に調節する。pH1および還流温度で混合物をさらに8.5時間攪拌する。
【0086】
混合物を冷却し、樹脂を篩でろ過し、脱塩水で洗浄する。
【0087】
体積収量:1430ml
【0088】
カラム中で、4重量%の水酸化ナトリウム水溶液2500mlを樹脂に通してろ過する。その後、水で洗浄する。
【0089】
体積収率:1010ml
元素分析組成:
窒素:12.4重量%;
炭素:76.2重量%;
水素:8.2重量%;
塩基性基の定量:2.22モル/リットル−樹脂
【0090】
[実施例2] アミノメチル化ビーズポリマーをベースとするヒ素吸着剤の製造
40重量%濃度の硫酸鉄(III)水溶液271gを室温で反応器に仕込む。これに脱塩水40mlを加える。その後、攪拌しながら、実施例1c)で得られたアミノメチル化ビーズポリマー300mlを加え、次いで、脱塩水50mlを加える。懸濁液のpHは2.3となる。78重量%濃度の硫酸を使用して、懸濁液のpHを1.0にする。溶液を室温で30分間攪拌する。
【0091】
その後、50重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を使用し45分内で懸濁液のpHを3.0にする。pH3.0でこの混合物をさらに60分間攪拌する。その後、水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを3.5に上昇させ、この混合物をpH3.5でさらに60分間攪拌する。
【0092】
その後、水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを4.0に上昇させ、この混合物をpH4.0でさらに60分間攪拌する。
【0093】
その後、水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを4.5に上昇させ、この混合物をpH4.5でさらに60分間攪拌する。
【0094】
その後、水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを5.0に上昇させ、この混合物をpH5.0でさらに120分間攪拌する。
【0095】
水酸化ナトリウム溶液の添加の間中、冷却によって懸濁液の温度を20〜25℃に維持する。
【0096】
懸濁液を篩に通し、残留している反応溶液を流し落とし、脱塩水で洗浄することにより篩上でイオン交換体を抽出する。
【0097】
収量:370ml
湿潤樹脂100mlの乾燥重量は41.96グラム
鉄含有率:14.0重量%
ナトリウム含有率:10mg/kg−乾燥樹脂
【0098】
[実施例3] カラム法によるヒ素吸着剤の製造
脱塩水183mlおよび実施例1c)で得られたアミノメチル化ビーズポリマー305mlをガラスカラム(長さ50cm、直径12cm)に仕込む。上部から2時間内で40重量%濃度の硫酸鉄(III)水溶液212mlを仕込む。その後、樹脂が渦巻くように底部から懸濁液に空気を通す。全ての沈着および装入操作の間中、空気による渦を発生させる。懸濁液のpHは1.5である。渦を発生させながら、上部から、50重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を加える。懸濁液のpHを3.0:3.5:4.0:4.5:5.0と段階的に設定する。pHの各区分に達したら、それぞれさらに15分間渦を発生させ続ける。pHが5.0に達したら、このpHで混合物にさらに2時間渦を発生させ続ける。pHが3.5に達したら、さらに150mlの脱塩水を加える。その後、樹脂を篩に通し、脱塩水で洗浄して抽出する。その後、さらなる精製のために、ガラスカラムの底部から脱塩水を通して2時間洗浄し、分級する。
【0099】
50重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液の消費量:75ml
体積収量:350ml
樹脂100mlの乾燥重量:43.80グラム
鉄含有率:9.7重量%
ナトリウム含有率:94mg/kg−乾燥樹脂
【0100】
[実施例4] 第3級アミノ基を含むビーズポリマーをベースとするヒ素吸着剤の製造
40重量%濃度の硫酸鉄(III)水溶液421gを室温で反応器に仕込む。これに180mlの脱塩水を加える。その後、攪拌しながら、実施例1d)で得られた第3級アミノ基含有ビーズポリマー500mlを加え、次いで、脱塩水50mlを加える。懸濁液のpHは2.2となる。78重量%濃度の硫酸を使用して、懸濁液のpHを1.0にする。混合物を室温で30分間攪拌する。50重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を使用し45分内で懸濁液のpHを3.0にする。pH3.0でさらに60分間混合物を攪拌する。その後、水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを3.5に上昇させ、pH3.5でさらに60分間混合物を攪拌する。その後、水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを4.0に上昇させ、pH4.0でさらに60分間攪拌する。その後、水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを4.5に上昇させ、pH4.5でさらに60分間混合物を攪拌する。その後、水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを5.0に上昇させ、pH5.0でさらに120分間混合物を攪拌する。水酸化ナトリウム溶液を加えている間ずっと、冷却によって懸濁液の温度を20〜25℃に維持する。
【0101】
懸濁液を篩に通し、残留している反応溶液を流し落とし、篩上で脱塩水により洗浄してイオン交換体を抽出する。
【0102】
収量:780ml
湿潤樹脂100mlの乾燥重量は32.8グラム
鉄含有率:11.1重量%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体を製造する方法であって、
a)水性媒体中でフタルイミド法により製造されたビーズ状弱塩基性陰イオン交換体を鉄(II)塩または鉄(III)塩と接触させる工程と、
b)a)で得られた混合物のpH値を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を加えることによって2.5〜12の範囲に調節する工程、および得られた前記鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有イオン交換体を既知の方法で分離する工程と
を特徴とする方法。
【請求項2】
単分散弱塩基性陰イオン交換体が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用される前記単分散弱塩基性陰イオン交換体の前駆体が、アトマイゼーション法またはジェッティングで得られることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記単分散弱塩基性陰イオン交換体がマクロ孔質構造を有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記弱塩基性陰イオン交換体が、第1級アミノ基および/または第2級アミノ基および/または第3級アミノ基を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
a)水性媒体中でフタルイミド法により製造されたビーズ状弱塩基性陰イオン交換体を鉄(II)塩または鉄(III)塩と接触させる工程と、
b)a)で得られた混合物のpH値を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を加えることによって、2.5〜12の範囲に調節する工程、および得られたイオン交換体を既知の方法で分離する工程と
によって取得可能な、鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体。
【請求項7】
請求項6に記載の鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体の、オキソ陰イオンまたはそれらのチオ類似体を水または水溶液から吸着させるための使用。
【請求項8】
式X、X2−、X3−、HXまたはH2−(式中、nは整数1、2、3または4であり、mは整数3、4、6、7または13であり、XはAu、Ag、Cu、Si、P、S、Cr、Ti、Te、Se、V、As、Sb、W、Mo、U、Os、Nb、Bi、Pb、Co、Ni、Fe、Mn、Ru、Re、Tc、B、Alの群からの金属もしくは遷移金属、または、F、Cl、Br、I、CN、C、Nの群の非金属である)で示されるオキソ陰イオンが吸着されることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
水および水溶液、好ましくは飲料水、化学産業もしくはごみ焼却施設の廃水流からの水、および坑水または埋立地の浸出水から、オキソ陰イオンを吸着させる方法であって、請求項6に記載の鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体を使用することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体が、処理すべき液体がその中を通過しうる装置内で使用されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
フタルイミド法で製造された鉄酸化物/鉄オキシ水酸化物含有弱塩基性陰イオン交換体の再生方法であって、アルカリ性塩化ナトリウム溶液をそれらに作用させることを特徴とする再生方法。
【請求項12】
再生された吸着体を、さらに、希釈した鉱酸で処理することを特徴とする請求項11に記載の再生方法。

【公開番号】特開2007−301555(P2007−301555A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−103039(P2007−103039)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】