説明

オゾンガス生成装置

【課題】オゾンガスの要求量の変動に対応して、レスポンス良くオゾンガスを供給することができるオゾンガス生成装置を提供する。
【解決手段】オゾンガス生成装置は、分離タンク34から導入された液体オゾンを内部に貯留すると共に、液体オゾンを気化させてオゾンガスを発生させる気化器35と、気化器35内に貯留される液体オゾンの液面Hの上方に設けられ液体オゾンに熱を付与するヒータ35cと、溶解部50からのオゾンガス要求量iに基づいて、気化器35内の液体オゾンの液面Hの高さを調整する液面制御部43及びバルブV3,V33と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンガス生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として下記特許文献1のオゾンガス発生装置が知られている。このオゾンガス発生装置では、オゾナイザで発生したオゾンを冷却し、分離器で酸素と分離して得た液体オゾンを分離器から気化器に導入し、気化器の下部に設けられた加熱部により加熱し、液体オゾンを気化させ濃縮オゾンガスを得ている。このオゾンガス発生装置で得られた濃縮オゾンガスは、例えば、オゾン水を生成するオゾン溶解装置に送られて高濃度オゾン水の生成に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−197299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、当該オゾンガス発生装置の後段の装置(例えば、オゾン溶解装置)において、オゾン使用量を変化させたい要求がある場合、このオゾンガス発生装置においては、要求に応じてオゾンガスの供給量を変化させる必要がある。この種のオゾンガス発生装置では、気化器の下部の加熱部の出力を変更することで、気化器における液体オゾンの気化の速度を変化させてオゾンガス供給量を変化させることが考えられる。
【0005】
しかしながら、加熱部の出力を変更してから、気化器の筐体部分の温度が変化し、液体オゾンの気化の速度が変化するまでには、ある程度の時間が必要である。すなわち、加熱部の出力の変更によって、気化の速度を変化させることは、レスポンスが悪い。従って、このオゾンガス発生装置では、後段におけるオゾンガスの要求量の変動に対して、レスポンス良いオゾンガス供給が出来なかった。
【0006】
そこで、本発明は、オゾンガスの要求量の変動に対応して、レスポンス良くオゾンガスを供給することができるオゾンガス生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のオゾンガス生成装置は、液体オゾンを内部に貯留すると共に、液体オゾンを気化させてオゾンガスを発生させる気化器と、気化器内に貯留される液体オゾンの液面の上方に設けられ液体オゾンに熱を付与する高熱源と、発生すべきオゾンガスの量を示す所望発生量に基づいて、気化器内の液体オゾンの液面の高さを調整する液面調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
このオゾンガス生成装置では、気化器内に貯留された液体オゾンが、液面の上方に設けられた高熱源からの熱を受け取ることで気化し、オゾンガスが発生される。高熱源が液体オゾンの液面の上方にあるので、液面高さを調整することによって、高熱源と液体オゾン液面との距離を調整することができる。そして、高熱源と液面との距離が近いほど液体オゾンの気化量が多いのでオゾンガスの発生量が多く、高熱源と液面との距離が遠いほど液体オゾンの気化量が少ないのでオゾンの発生量が少ないといった調整が可能になる。そして、このような液体オゾンの液面高さの調整によるオゾンの発生量の調整は、レスポンスが良い。従って、このオゾンガス生成装置では、オゾンガスの要求量の変動に対応して、レスポンス良くオゾンガスを供給することができる。
【0009】
また、高熱源は、熱を発生するヒータであることが好ましい。気化器内の液体オゾンが高熱源からの熱により気化されると、オゾンの気化熱によって高熱源の熱が奪われるので、液体オゾンに対して熱量を安定的に付与することが難しい。そこで、自身で熱を発するヒータを高熱源とする構成により、オゾンの気化熱として消費される熱量を自身の発熱によって補うことができ、液体オゾンの気化量を安定させることができる。
【0010】
また、本発明のオゾンガス生成装置は、冷却により凝縮した液体オゾンを非凝縮気体から分離する分離器と、分離器と気化器とを接続し分離器から気化器までを液封可能とすると共に、分離器の液体オゾンを流通させて気化器に導入させるU字管と、を更に備え、液面調整手段は、分離器内の圧力と気化器内の圧力との差圧を調整することにより、液面の高さを調整することとしてもよい。
【0011】
このような、分離器と気化器との差圧の調整による気化器の液体オゾンの液面高さの調整は、レスポンスが良いので、更にレスポンス良くオゾンガスを供給することができる。
【0012】
また、本発明のオゾンガス生成装置は、オゾンガスを発生させ当該オゾンガスを含む混合ガスを得るオゾナイザと、オゾナイザで得られた混合ガスの冷却により凝縮した液体オゾンを非凝縮気体から分離し、気化器に液体オゾンを送出する分離器と、分離器及び気化器から排出されるオゾンの総量に基づいてオゾナイザにおけるオゾンガスの生成量を制御するオゾナイザ制御部と、を更に備えることとしてもよい。
【0013】
オゾンガスの要求量の変動が特に大きい場合には、気化器から発生するオゾン量が大きく変動することで、分離器内及び気化器内に存在するオゾンが一時的に不足したり過剰になったりする。これに対し、このオゾンガス生成装置は、分離器及び気化器から排出されるオゾンの総量が変動した場合には、オゾナイザにおけるオゾンガスの生成量が直接制御されるので、分離器内及び気化器内に供給されるオゾンが素早く変動に追従する。その結果、分離器内及び気化器内のオゾンの過不足が発生し難い。従って、オゾンガス要求量の比較的大きい変動に対応可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のオゾンガス生成装置によれば、オゾンガスの要求量の変動に対応して、レスポンス良くオゾンガスを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るオゾンガス生成装置の第1実施形態が適用される電子部品洗浄装置を示すブロック図である。
【図2】図1の電子部品洗浄装置の濃縮部の詳細を示す図である。
【図3】図2の濃縮部の要部を示す図である。
【図4】図1のオゾンガス生成装置の要部を示すブロック図である。
【図5】(a),(b)は、図3の濃縮部の変形例の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るオゾンガス生成装置の好適な一実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るオゾンガス生成装置73は、電子部品洗浄装置1に適用される。電子部品洗浄装置1は、オゾンガス生成装置73を用いて高濃度オゾンガスを生成し、この高濃度オゾンガスから生成した高濃度のオゾン水を半導体ウエハ、液晶、太陽電池、有機EL、プリント基板などの電子部品の表面に向けて噴射して洗浄する装置である。電子部品洗浄装置1のオゾン水生成装置71は、濃縮オゾンガスを生成するオゾンガス生成装置73と、この濃縮オゾンガスを超純水に溶解させて高濃度オゾン水を生成する溶解部50と、を備えている。そして、電子部品洗浄装置1は、このオゾン水生成装置71と、オゾン水生成装置71で得られた高濃度オゾン水で電子部品の表面を洗浄する洗浄部70と、を備えている。
【0018】
オゾンガス生成装置73は、オゾンガスを発生させるオゾナイザ10と、オゾナイザ10で発生したオゾンガスを濃縮するオゾンガス濃縮部30とを備えている。更に、オゾンガス生成装置73は、酸素タンク3と、窒素タンク5とを備えている。オゾナイザ10には、酸素タンク3からラインL1を通じて酸素が供給される。また、ラインL1には、窒素タンク5からの窒素ガス供給ラインが合流しており、酸素ガスに微量の窒素ガスが混入されてオゾナイザ10に導入される。オゾナイザ10は、酸素ガスを原料として放電方式によりオゾンガスを生成する。このオゾナイザ10では、10vol%程度の比較的低濃度のオゾンガス(約90vol%の酸素ガスと約10vol%のオゾンガスとの混合気体)が生成する。また、原料の酸素ガスに微量混入された窒素ガスに起因して、オゾナイザ10で生成されたオゾンガス(以下、「非濃縮オゾンガス」という)には微量の窒素酸化物(NOx)ガスが含まれる。オゾナイザ10から送出される非濃縮オゾンガスは、ラインL2を通じてオゾンガス濃縮部30に導入される。
【0019】
オゾンガス濃縮部30は、オゾナイザ10で生成される非濃縮オゾンガスを濃縮し、ほぼ100vol%の高濃度のオゾンガスを生成するものである。図2にも示すように、オゾンガス濃縮部30は、真空断熱チャンバ31内に設けられたNOx除去部32と、ガス冷却部33と、分離タンク34と、気化器35と、熱交換部36と、を備えている。チャンバ31は、排気ポンプ37によって真空引きされる。
【0020】
ラインL2からの非濃縮オゾンガスは、オゾンガス濃縮部30のNOx除去部32に導入される。NOx除去部32は、導入された非濃縮オゾンガスを、NOxの凝固点以下にまで冷却して、NOxを固化させて捕捉し、非濃縮オゾンガスから分離除去する。NOxよりも凝固点が低い酸素及びオゾンは、気体の状態でNOx除去部32を通過し、ラインL31を通じてガス冷却部33に導入される。一方、NOx除去部32で捕捉されたNOxは、NOx除去部32の清掃運転時に昇温されて再び気化し、必要に応じてパージガス(例えば、酸素、窒素または非濃縮オゾンガスなど)に追い出されるようにしてラインL21を通じ、排ガスラインL20に排出される。なお、ラインL31とラインL21の流路の切り替えは、運転状態に合わせて適宜に実行される。
【0021】
ガス冷却部33では、NOx除去後の非濃縮オゾンガスを、オゾンの沸点以下にまで冷却して、オゾンを液化させる。この液体オゾンは、ラインL32を通じて分離タンク34に導入され、当該分離タンク34の下部に溜まる。一方、オゾンよりも沸点が低い酸素等は、気体の状態でガス冷却部33及びラインL32を通過し、分離タンク34の上部に溜まる。分離タンク34上部に溜まる気体は、主に酸素であり、ラインL33を通じて分離タンク34外に送出される。
【0022】
前述のとおり、NOx除去部32とガス冷却部33においては、非濃縮オゾンガスの冷却のための低熱源が必要である。このオゾンガス濃縮部30では、極低温の低熱源としてクライオポンプ38を備えている。クライオポンプ38のクライオヘッド38aは、チャンバ31内部に挿入されており、クライオヘッド38aとNOx除去部32とが伝熱銅板39aで接続されている。また、クライオヘッド38aとガス冷却部33とが伝熱銅板39bで接続されている。この構成により、NOx除去部32とガス冷却部33とを、極低温に冷却することが可能となり、前述のNOx除去及びオゾン液化が実現される。
【0023】
分離タンク34の底部には、U字管41の一端が接続されている。このU字管41の他端は、気化器35の底部に接続されている。そして、分離タンク34内に溜まった液体オゾンは、U字管41内にも充填される。U字管41は、分離タンク34内の液体オゾンを気化器35に導くためのものであると共に、当該液体オゾンによって、分離タンク34上部に溜まる酸素ガスと気化器35側とを液封するものである。
【0024】
このU字管41内には、毛細管力を発現し、U字管41内の液体オゾンを気化器35内に導く充填材41aが充填されている。ここでは、充填材41aは金網状のものが用いられ、毛細管力を発現すべく密に構成されていると共に、気化器35の底部の入口35aを通して気化器35内に進入する構成とされている。この構成により、U字管41内の液体オゾンは、入口35aを通じて気化器35内に徐々に導入されていく。なお、この充填材41aとしては、金網状の充填材に限定されるものではなく、例えば密に配置される細い金属材料やガラス繊維、例えば多数配置される細かいシリカゲルやポーラスシリカ等であっても良く、要は、毛細管力を発現する充填材であればよい。
【0025】
気化器35は、U字管41を通じて分離タンク34から供給される液体オゾンを気化するためのもので、円筒状の胴部を有し、下部が下細りの擂り鉢状に閉じられて下端に入口35aが設けられていると共に、上端にオゾンガス出口35bが設けられている。この気化器35の入口35aは、分離タンク34における液体オゾンの液面以上の高さに位置する。この入口35aを通して内部に進入する金網状の充填材41aは、液体オゾンを毛細管力により気化器35内に送り込むべく、当該気化器35の底部内面に沿って広がるように配置されている。
【0026】
気化器35内部に進入した充填材41aの上方には、加熱用のヒータ35cが設けられている。ヒータ35cは、気化器35の底部に供される液体オゾンを加熱して気化させる。前述のとおり、気化器35内には、酸素が分離除去された液体オゾンが導入されるので、気化器35内で気化されるオゾンは、ほぼ100vol%の濃度である。また、気化器35には、ラインL12を介して、酸素タンク3からの酸素が希釈用酸素ガスとして導入される。液体オゾンの気化で得られたほぼ濃度100vol%のオゾンは、ラインL12からの希釈用酸素ガスによって気化器35上部で適宜希釈され、オゾンガス出口35b及びラインL3を通じて、濃縮オゾンガスとして送出される。このラインL3の濃縮オゾンガスは、溶解部50に導入される。また、この濃縮オゾンガスの一部の余剰分は、ラインL3から分岐したラインL25を通じて排ガスラインL20に排出される。また、ラインL3には、酸素タンク3からのラインL13も合流しており、ラインL3の濃縮オゾンガスは、ラインL13からの酸素ガスによっても必要に応じて希釈されて、溶解部50に導入される。なお、本実施形態では、気化器35で得られたオゾンをラインL12からの希釈用酸素ガスで主体的に希釈するため、ラインL13を省略することも可能である。
【0027】
なお、ラインL12は、気化器35よりも上流側で熱交換部36を通過している。熱交換部36では、分離タンク34からラインL33を通じて排出される排酸素ガスとラインL12の希釈用酸素ガスとの熱交換が行われる。これにより、希釈用酸素ガスは、熱交換部36で冷却され温度調整された後に気化器35内に導入される。また排酸素ガスは、熱交換部36から、ラインL23を通じて排ガスラインL20に排出される。
【0028】
図1に示すように、溶解部50は、ラインL3から導入される濃縮オゾンガスとラインL11から導入される超純水とを接触させる溶解モジュールを備えている。溶解モジュールとは、高分子膜、エジェクタ、マイクロリアクタなどオゾンガスを水に溶解させる装置をいう。溶解モジュールにおいては、超純水に濃縮オゾンガスが溶解し、高濃度のオゾン水が生成される。なお、超純水に溶解されなかった余剰の濃縮オゾンガスは、ガスラインL27を通じて排ガスラインL20に排出される。一方、オゾン水は、ラインL4を通じて洗浄部70に導入される。
【0029】
洗浄部70は、ラインL4から導入したオゾン水を、ノズルから半導体ウエハ、液晶、太陽電池、有機EL、プリント基板などの電子部品の表面に向けて噴射する。このようなオゾン水の噴射によって、電子部品の表面に形成されたレジストが洗浄除去される。すなわち、洗浄部70は、電子部品のレジスト除去の用途で用いられる。
【0030】
なお、前述のように、電子部品洗浄装置1の各部で発生する不要なガス(ラインL21の排NOxガス、ラインL23の排酸素ガス、ラインL25の排オゾンガス、及びL27の排オゾンガス)は、すべて合流して排ガスラインL20を通過する。そして、このラインL20の不要ガスは、触媒分解装置7と排ガス冷却器8とを通過し、排気ポンプ9によって系外に排出される。触媒分解装置7は、不要ガスを例えば活性炭などの触媒と接触させることにより、不要ガス中のオゾンガスを比較的無害な酸素ガスに分解する。排ガス冷却器8は、不要ガスを大気に排出する前に当該不要ガスを常温まで冷却する。
【0031】
続いて、オゾンガス発生装置73におけるオゾンガスの発生量を調整する構成について、図3を参照しながら更に詳細に説明する。図3には、濃縮部30の分離タンク34、気化器35、及びU字管41を示している。
【0032】
電子部品洗浄装置1では、洗浄部70の洗浄条件の変動により、後段の装置(ここでは、溶解部50)からオゾンガス発生装置73に要求されるオゾンガスの量が変動する場合がある。このような場合、溶解部50からのオゾンガスの要求量に対応して、オゾンガス発生装置73が、オゾンガスの発生量を増減させる必要がある。そこで、図3に示すように、オゾンガス発生装置73は、液面制御部43を備えている。液面制御部43は、溶解部50からのオゾンガスの要求量(以下、「オゾンガス要求量」という)に基づいて、気化器35におけるオゾンの気化量を調整すべく、気化器35内における液体オゾンの液面Hの高さを制御する。なお、前述のとおり、気化器35内に貯留される液体オゾンは、毛細管現象によって充填材41aに染み込んだ状態で存在するが、この場合の、「液体オゾンの液面H」とは、充填材41a染み込んだ状態の液体オゾンの上端の位置を意味するものとする。
【0033】
また、オゾンガス要求量は、溶解部50で単位時間当たりに必要とされるオゾンガスの質量を意味し、例えば、「g/秒」といったような単位で表される。また、気化器35におけるオゾンの気化量とは、単位時間当たりに気化してオゾンガスに変わる液体オゾンの質量を意味し、例えば、「g/秒」といったような単位で表される。
【0034】
液面制御部43には、溶解部50から送信されたオゾンガス要求量iの情報が、電気信号として入力される。このオゾンガス要求量iが、オゾンガス発生装置73が単位時間当たりに発生すべきオゾンガスの量(所望発生量)となる。気化器35からの濃縮オゾンガスが流通するラインL3上には、バルブV3が設けられており、バルブV3の開度によって気化器35内の圧力を調整することができる。また、分離タンク34で分離された気体(主に酸素)を排出させるラインL33上には、バルブV33が設けられており、バルブV33の開度によって分離タンク34内の圧力を調整することができる。そして、液面制御部43は、バルブV3,V33を操作して開度を調整することで、分離タンク34内の圧力から気化器35内の圧力を減じた差圧(以下、「タンク間差圧」という)を調整することができる。
【0035】
ここで、分離タンク34と気化器35とは、底部同士がU字管41で接続されていることから、気化器35における液体オゾンの液面Hの高さは、タンク間差圧に依存する。すなわち、タンク間差圧が大きいほど液面H位置は高くなり、タンク間差圧が小さいほど液面H位置は低くなる。以上のように、バルブV3,V33及び液面制御部43は、液面Hの高さを調整する液面調整手段として機能する。
【0036】
また、ヒータ35cは位置を変えないことから、液面H位置が高いほど、ヒータ35cと液面Hとが近くなるので、ヒータ35cから液面Hに付与される単位時間当たりの熱量が大きくなり、気化器35内で単位時間当たりに気化するオゾンが多くなる。また、液面H位置が低いほど、ヒータ35cと液面Hとが遠くなるので、ヒータ35cから液面Hに付与される単位時間当たりの熱量が小さくなり、気化器35内で単位時間当たりに気化するオゾンが少なくなる。ここで、ヒータ35cと液面Hとが近づきすぎると、ヒータ35cから急激な熱の進入によりオゾンの自己分解を引き起こす可能性があるため、液面H高さ又はタンク間差圧に上限を設けておくと好ましい。
【0037】
以上のとおり、オゾンガス生成装置73では、バルブV3,V33の開度の調整により、タンク間差圧を調整し、その結果、気化器35における単位時間当たりのオゾンの気化量を調整することができ、すなわち、オゾンガス発生装置73における単位時間当たりのオゾンガスの発生量を調整することができる。
【0038】
液面制御部43は、入力されたオゾンガス要求量iに対応するタンク間差圧を実現するように、バルブV3,V33の開度調整の操作を行う。これにより、液面Hの高さが調整され、その結果、上記オゾンガス要求量iに対応するオゾンガスの気化量が、気化器35で達成される。具体的には、ラインL3上に、濃縮オゾンガスのオゾン濃度を測定するオゾン濃度計、及び濃縮オゾンガスの流量を測定する流量計を設けることで、オゾンガス発生装置73における単位時間当たりのオゾンガスの発生量の実際の値を検知することができる。従って、液面制御部43は、上記オゾン濃度計及び流量計の測定値を取得し、オゾンガスの発生量の実際の値を用いてバルブV3,V33の開度をフィードバック制御してもよい。
【0039】
オゾンガス要求量iに応じてタンク間差圧を調整し、オゾンの気化量を調整するといった上記の制御は、例えばヒータ35cの出力を調整して気化量を調整する制御に比べてレスポンスが速い。従って、オゾンガス生成装置73によれば、溶解部50からのオゾンガス要求量の変動に対応して、レスポンス良く溶解部50にオゾンガスを供給することができる。
【0040】
また、オゾンガス生成装置73は、気化器35の液体オゾンを気化させるための高熱源として、自身で熱を発生するヒータ35cを採用している。この構成により、オゾンの気化熱として消費される熱量を、ヒータ35cの発熱によって補うことができるので、液体オゾンの気化量を安定させることができる。
【0041】
なお、気化器35のオゾンの気化量を調整することにより、気化器35における液体オゾンの消費速度が変動する。そして、気化器35における液体オゾンの消費速度が変動すれば、分離タンク34における液体オゾンの減少速度も変動する。従って、このオゾンガス生成装置73では、分離タンク34に液面計を設け、分離タンク34における液体オゾンの液面高さを一定化するように、オゾナイザ10の放電電圧を制御する。すなわち、分離タンク34の液体オゾンの液面が低下すれば、オゾナイザ10の放電電圧を大きくすることにより、オゾナイザ10で生成される単位時間当たりのオゾン量が増加し、分離タンク34の液体オゾンの減少が素早く補われる。また、分離タンク34の液体オゾンの液面が上昇すれば、オゾナイザ10の放電電圧を小さくすることにより、オゾナイザ10で生成される単位時間当たりのオゾン量が減少し、分離タンク34の液体オゾンが過剰になることを防止する。
【0042】
以上では、オゾンガス生成装置73が、溶解部50からのオゾンガス要求量の変動に対応して、レスポンス良くオゾンガスを供給することができる旨を説明したが、続いて、溶解部50からのオゾンガス要求量が、特に大きく変動した場合について考える。
【0043】
オゾンガス生成装置73が、溶解部50のオゾンガス要求量の大きな変動に対応して、気化器35におけるオゾンの気化量を特に大きく変化させた場合には、前述のような分離タンク34の液面高さを一定化する制御が間に合わず、濃縮部30内(主に、分離タンク34内及び気化器35内)のオゾンが一時的に不足したり過剰になったりする可能性もある。濃縮部30内のオゾンが一時的に不足すれば、濃縮部30から溶解部50へのオゾンガス供給が一時的に途切れてしまう。また、濃縮部30内のオゾンが一時的に過剰になれば、ラインL25を通じて廃棄される排オゾンガスが多くなり、無駄が多い。このようなオゾンの過不足を吸収するために、分離タンク34等の容量を大きくすることも考えられる。しかしながら、オゾンの自己分解反応が連続的に起きることを抑制する観点からは、装置内に保有されるオゾンの量は可能な限り小さくしておくことが必要であり、分離タンク34等の容量を大きくすることは好ましくない。
【0044】
そこで、オゾンガス生成装置73は、オゾンガス濃縮部30から排出されているオゾンの総量に基づいて、オゾナイザ10の放電電圧を直接制御する制御手段を更に備えている。なお、この場合のオゾンの総量とは、オゾンの総質量であり、例えば「グラム」の単位で表される。また同様に、以下の説明で「オゾン量」というときには、オゾンの質量を意味するものとする。
【0045】
具体的には、図4に示すように、オゾンガス生成装置73は、オゾナイザの出力を制御するオゾナイザ出力制御部11を備えている。また、オゾンガス生成装置73は、ラインL25の分岐点よりも下流側において、ラインL3上に設けられたオゾン濃度計N3及び流量制御装置R3を備えている。流量制御装置R3は、ラインL3を通じて溶解部50に供給する濃縮オゾンガス(以下「供給オゾンガス」という)の流量を制御しており、制御目標として設定された流量設定値を電気信号としてオゾナイザ出力制御部11に送信する。オゾン濃度計N3は、ラインL3の供給オゾンガスのオゾン濃度を測定し電気信号としてオゾナイザ出力制御部11に送信する。
【0046】
また、オゾンガス生成装置73は、ラインL25上に設けられたオゾン濃度計N25及び流量計R25を備えている。前述のとおり、ラインL25は、濃縮部30で生成された濃縮オゾンガスのうち、溶解部50に送られる前に余剰分として廃棄される濃縮オゾンガス(以下「余剰オゾンガス」という)を流通させる。流量計R25は、ラインL25における余剰オゾンガスの流量を測定し電気信号としてオゾナイザ出力制御部11に送信する。オゾン濃度計N25は、ラインL25の余剰オゾンガスのオゾン濃度を測定し電気信号としてオゾナイザ出力制御部11に送信する。また、このラインL25における余剰オゾンガスの圧力は、ラインL25上に設けられた圧力制御部P25で制御されている。
【0047】
また、オゾンガス生成装置73は、ラインL23上に設けられたオゾン濃度計N23及び流量計R23を備えている。前述のとおり、濃縮部30では、ガス冷却部33で凝縮しなかった酸素等のガス(非凝縮ガス)が、分離タンク34で分離除去され、ラインL23を通じて不要なガス(以下「分離排出ガス」という)として排出される。流量計R23は、ラインL23における分離排出ガスの流量を測定し電気信号としてオゾナイザ出力制御部11に送信する。オゾン濃度計N23は、ラインL23の分離排出ガスのオゾン濃度を測定し電気信号としてオゾナイザ出力制御部11に送信する。また、このラインL23における分離排出ガスの圧力は、ラインL23上に設けられた圧力制御部P23で制御されている。
【0048】
なお、上記のオゾン濃度計N3,N23,N25で測定されるオゾン濃度は、例えば、g/Nm3(25℃、1atmにおけるg/m3)等の単位で表される。また、流量制御装置R3の流量設定値、及び流量計R23,R25で測定される流量は、例えば、SLM(0℃、1atmにおける1分間当たりの流量)等の単位で表される。
【0049】
オゾナイザ出力制御部11は、オゾン濃度計N3の濃度測定値と流量制御装置R3の流量設定値との乗算に基づいて、供給オゾンガスに含まれるオゾン量を算出することができる。また、オゾナイザ出力制御部11は、オゾン濃度計N25の濃度測定値と流量計R25の流量測定値との乗算に基づいて、余剰オゾンガスに含まれるオゾン量を算出することができる。更に、オゾナイザ出力制御部11は、オゾン濃度計N23の濃度測定値と流量計R23の流量測定値との乗算に基づいて、分離排出ガスに含まれるオゾン量を算出することができる。そして、オゾナイザ出力制御部11は、供給オゾンガス、余剰オゾンガス、及び分離排出ガスにそれぞれに含まれるオゾン量の合計を算出することで、濃縮部30から排出されるオゾンの総量を検知することができる。このように、溶解部50で使用される供給オゾンガス中のオゾン量だけでなく、不要排出物(余剰オゾンガス及び分離排出ガス)中のオゾン量を算入することで、濃縮部30から排出されるオゾンの総量を正確に算出することができる。
【0050】
そして、オゾナイザ出力制御部11は、オゾナイザ10で単位時間当たりに生成されるオゾン量が、濃縮部30から単位時間当たりに排出されるオゾンの総量と等しくなるように、オゾナイザ10の放電の電圧を制御する。ここで、オゾナイザ10の放電電圧を大きくすれば、オゾナイザ10で生成される単位時間当たりのオゾン量が増加し、オゾナイザ10の放電電圧を小さくすれば、オゾナイザ10で生成される単位時間当たりのオゾン量が減少する。このような制御により、オゾナイザ10で生成される単位時間当たりのオゾン量が、濃縮部30から単位時間当たりに排出されるオゾンの総量と等しくなるようにオゾナイザ10の放電電圧が調整され、濃縮部30におけるオゾン量の収支が、ほぼプラスマイナスゼロとされる。なお、オゾナイザ10の放電電圧の制御によれば、酸素タンク3からの酸素ガスの流量を変更することなく、オゾンの生成量を調整することができる。このようなオゾナイザ10の放電電圧の制御は、前述したような分離タンク34の液面に基づくオゾナイザ10の制御よりも早く行われる。
【0051】
このように、オゾナイザ出力制御部11は、濃縮部30から単位時間当たりに排出されるオゾンの総量に基づいて、直接的にオゾナイザ10を制御する。これにより、例えば、溶解部50で単位時間当たりのオゾンの使用量が変動したとしても、この変動に応じて、直接的にオゾナイザ10が制御され濃縮部30に供給されるオゾン量が素早く追従される。従って、溶解部50におけるオゾン使用量がある程度大きく変動した場合にも、濃縮部30内(主に、分離タンク34や気化器35)に蓄積されているオゾンには過不足が生じ難い。よって、このオゾンガス生成装置73によれば、溶解部50におけるオゾン使用量のある程度大きい変動に対しても、濃縮部30からのオゾン供給量を素早く追従させて柔軟に変動させることができる。
【0052】
なお、ここでは、ラインL23,L25上に、それぞれ、オゾン濃度計N23,N25及び流量計R23,R25を設けているが、この構成に代えて、ラインL23,L25の合流点の直ぐ下流の位置に、オゾン濃度計及び流量計を1つずつ設けてもよい。このようなオゾン濃度計及び流量計の測定値に基づいて、分離排出ガスに含まれるオゾン量と余剰オゾンガスに含まれるオゾン量との合計のオゾン量を検知することができる。そして、この場合、オゾン濃度計と流量計との設置個数を少なくすることができるという利点がある。
【0053】
また、例えば、ラインL3の供給オゾンガスの濃度とラインL25の余剰オゾンガス濃度とは、ほぼ同じであると考えられる。従って、オゾン濃度計N3,N25の何れか一方のみを設置し、その一方のオゾン濃度計に供給オゾンガス濃度検知手段の機能と余剰オゾンガス濃度検知装置の機能とを併せ持たせてもよい。また、例えば、流量計R25の設置に代えて、ラインL3上におけるラインL25との分岐点の直ぐ上流側に流量計を設置し、当該流量計による流量測定値と流量制御装置R3の流量設定値との差分から余剰オゾンガスの流量を求めてもよい。すなわち、要するに、各ラインL3,L23,L25の流量検知手段又はオゾン濃度検知手段は、当該ラインにおける流量又はオゾン濃度を検知できればよく、必ずしも流量計やオゾン濃度計の当該ライン上への設置を必要とするものではない。
【0054】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、オゾンガス発生装置73のヒータ35cを省略し、気化器35の筐体の上部から液体オゾンの液面Hに移動する熱により、気化器35の下部に溜まる液体オゾンを気化させるようにしてもよい。この場合には、気化器35の筐体の上部が、気化器35内の液体オゾンに熱を付与するための高熱源となる。
【0055】
また、気化器35の液面Hの高さの調整手段として、実施形態では、タンク間差圧を調整するバルブV3,V33を用いているが、これに代えて、図5(a),(b)に示すような以下の構成としてもよい。図5(a)では、U字管41上にポンプ41bを設け、ポンプ41bによって分離タンク34から気化器35に液体オゾンを送り込むこととしている。そして、液面制御手段43が、ポンプ41bの出力を調整することにより、気化器35に液体オゾンを送り込む速度を調整し、液面Hの高さを調整することができる。
【0056】
また、図5(b)では、U字管41上にバルブ41cを設けることとしている。そして、液面制御手段43が、バルブ41cの出力を調整することにより、気化器35に液体オゾンを送り込む速度を調整し、液面Hの高さを調整することができる。なお、この図5(b)の構成の場合、分離タンク34の液面を、気化器35の液面よりも高く維持するように分離タンク34の貯液量を制御してもよく、分離タンク34内の圧力を気化器35内の圧力よりも高くするようにしてもよい。なお、図5(a),(b)の構成では、充填材41aを省略してもよく、この場合、気化器35内には水平な液面Hが現れる。また、実施形態では、オゾンガス要求量iの情報は溶解部50から液面制御部43に入力されるが、オゾンガス要求量iの情報は、例えば、手入力等で液面制御部43に入力されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
34…分離タンク(分離器)、35…気化器、35c…ヒータ(高熱源)、41…U字管、43…液面制御部(液面調整手段)、73…オゾンガス生成装置、H…液体オゾンの液面、V3,V33…バルブ(液面調整手段)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体オゾンを内部に貯留すると共に、前記液体オゾンを気化させてオゾンガスを発生させる気化器と、
前記気化器内に貯留される前記液体オゾンの液面の上方に設けられ前記液体オゾンに熱を付与する高熱源と、
発生すべき前記オゾンガスの量を示す所望発生量に基づいて、前記気化器内の前記液体オゾンの前記液面の高さを調整する液面調整手段と、
を備えたことを特徴とするオゾンガス生成装置。
【請求項2】
前記高熱源は、熱を発生するヒータであることを特徴とする請求項1に記載のオゾンガス生成装置。
【請求項3】
冷却により凝縮した前記液体オゾンを非凝縮気体から分離する分離器と、
前記分離器と前記気化器とを接続し前記分離器から前記気化器までを液封可能とすると共に、前記分離器の前記液体オゾンを流通させて前記気化器に導入させるU字管と、
を更に備え、
前記液面調整手段は、
前記分離器内の圧力と前記気化器内の圧力との差圧を調整することにより、前記液面の高さを調整することを特徴とする請求項1又は2に記載のオゾンガス生成装置。
【請求項4】
オゾンガスを発生させ当該オゾンガスを含む混合ガスを得るオゾナイザと、
前記オゾナイザで得られた前記混合ガスの冷却により凝縮した前記液体オゾンを非凝縮気体から分離し、前記気化器に前記液体オゾンを送出する分離器と、
前記分離器及び前記気化器から排出されるオゾンの総量に基づいて前記オゾナイザにおける前記オゾンガスの生成量を制御するオゾナイザ制御部と、を更に備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のオゾンガス生成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−136861(P2011−136861A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297891(P2009−297891)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】