説明

オゾンガス移送装置

【課題】配管内で、万一オゾン分解が生じても、装置の破損の虞が無いオゾンガス移送装置を提供することを課題とする。
【解決手段】配管4内に、オゾンを体積比率で10%以上含むオゾンガスとしての高濃度オゾンガスを通過可能とする例えば多数の球体や網状物等の充填材5を充填する構成を採用することで、高濃度オゾンガスが、配管4内で、万一オゾン分解した場合でも、発生する熱を、充填材5の熱容量により素早く吸収して、連鎖的なオゾン分解を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度オゾンガスを移送するための配管を備えたオゾンガス移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンを含有するオゾンガスをオゾン濃縮装置で濃縮し、この濃縮により高濃度とされた高濃度オゾンガスを、配管を経由して酸化処理槽に移送し、酸化膜の製造に供する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平5−17164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、高濃度オゾンガス(一般的にはオゾンの体積比率が10%以上)は、例えば、金属微粒子の触媒作用、高温、衝撃力、オゾンで分解する有機性ガス等のトリガーがあると、自己分解して発熱し(O→1.5O+143kJ/mol)、その分解時の発熱で他のオゾンが加熱されて自己分解するという連鎖反応を起こす虞がある。
【0004】
従って、上記装置にあっては、上記トリガー等が要因となって配管内で万一オゾン分解が生じると、このオゾン分解が連鎖し、温度が急上昇すると共に体積が急膨張して圧力が急上昇し、装置の破損を招く虞がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、配管内で万一オゾン分解が生じても、装置の破損の虞が無いオゾンガス移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるオゾンガス移送装置は、オゾンを体積比率で10%以上含むオゾンガスを移送するための配管を備えたオゾンガス移送装置であって、配管内に、オゾンガスの通過を可能とする充填材を充填したことを特徴としている。
【0007】
このようなオゾンガス移送装置によれば、オゾンを体積比率で10%以上含むオゾンガスとしての高濃度オゾンガスが配管内で万一オゾン分解しても、発生する熱は、配管内に充填された充填材の熱容量により素早く吸収されるため、連鎖的なオゾン分解が抑制され、装置の破損の虞が無くされる。
【0008】
ここで、充填材は、その表面積(m)/配管内体積(m)≧2000であると、連鎖的なオゾン分解が確実に防止される。
【0009】
また、充填材は、オゾンにより酸化されない表面を有しているのが好ましい。このような構成を採用した場合、高濃度オゾンガスが充填材を酸化して分解し濃度低下を起こすということが防止され、所望の高濃度オゾンガスが移送される。このような充填材としては、例えば、セラミック製充填材や、ステンレス製やチタン製等の金属製充填材等が挙げられる。このステンレス製やチタン製等の金属製充填材は、オゾンガスにより直後は酸化されるが、オゾンガスを継続して流すことにより表面に酸化膜が形成され、オゾンガスにより酸化されなくなる。
【0010】
また、充填材は、多数の球体であるのが好ましい。このような構成を採用した場合、充填材である多数の球体によりジグザク状の流路が形成され、熱伝達表面積が非常に大きくされると共に流路間隔が非常に小さくされ、充填材の熱伝達速度が非常に大きくされる。このため、オゾン分解によって生じる熱は、充填材の熱容量により一層素早く吸収され、連鎖的なオゾン分解が一層抑制される。
【0011】
このように、充填材により形成されるオゾンガスの通過流路は、ジグザク状の流路であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によるオゾンガス移送装置によれば、配管内で万一オゾン分解が生じても、装置の破損の虞を無くすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明によるオゾンガス移送装置の好適な実施形態について図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るオゾンガス移送装置を備えた高濃度オゾンガス生成・使用装置を示す概略構成図、図2は、図1中のオゾンガス移送装置を示す概略構成図である。
【0014】
図1に示すように、高濃度オゾンガス生成・使用装置100は、高濃度オゾンガス生成装置1と、高濃度オゾンガス使用装置2と、高濃度オゾンガス生成装置1と高濃度オゾンガス使用装置2とを接続するオゾンガス移送装置3と、を備えている。
【0015】
高濃度オゾンガス生成装置1は、酸素や空気を基にオゾナイザで生成されたオゾンガスを濃縮するオゾン濃縮装置や、酸素や空気を基にオゾンガスを生成するオゾナイザ等であり、高濃度オゾンガス(オゾンを体積比率で10%以上含むオゾンガス)を生成するものである。
【0016】
高濃度オゾンガス使用装置2は、高濃度オゾンガスを用いて例えば半導体製造装置等の酸化膜の形成等を行うものである。
【0017】
オゾンガス移送装置3は、高濃度オゾンガス生成装置1と高濃度オゾンガス使用装置2とを接続し高濃度オゾンガス生成装置1から高濃度オゾンガス使用装置2に高濃度オゾンガスを移送する移送配管4と、図2に示すように、移送配管4内に充填された多数の充填材5と、を備えている。
【0018】
移送配管4は、高濃度オゾンガスにより酸化されない表面を有する構成とされ、ここでは、ステンレス製とされている。このステンレス製の移送配管4は、予め内部に高濃度オゾンガスを所定時間流すことで、ステンレス表面に緻密な酸化膜が形成され、これ以上表面が酸化されないものが用いられている。このような処理が施されたステンレス製の移送配管4を用いることで、高濃度オゾンガスの移送時に、当該高濃度オゾンガスが移送配管4を酸化して分解し濃度低下を起こすということが防止され、所望の高濃度オゾンガスの移送が可能とされる。
【0019】
充填材5は、高濃度オゾンガスの通過を可能とする充填材であり、ここでは、多数の球体とされている。この充填材5は、高濃度オゾンガスが当該充填材5を酸化して分解し濃度低下を起こすということを防止すべく、オゾンにより酸化されない表面を有する構成とされ、例えば、セラミック製充填材や、ステンレス製やチタン製等の金属製充填材等とされている。このステンレス製やチタン製等の金属製充填材は、オゾンガスにより直後は酸化されるが、オゾンガスを継続して流すことにより表面に酸化膜が形成され、オゾンガスにより酸化されなくなる。
【0020】
このような高濃度オゾンガス生成・使用装置100によれば、高濃度オゾンガス生成装置1で、オゾンを体積比率で10%以上含むオゾンガスとしての高濃度オゾンガスが生成され、この高濃度オゾンガスは、移送配管4を通して高濃度オゾンガス使用装置2に移送され、当該高濃度オゾンガス使用装置2で使用に供される。
【0021】
ここで、高濃度オゾンガスが移送配管4内で万一オゾン分解しても、発生する熱は、移送配管4内に充填された充填材5の熱容量により素早く吸収される。このため、連鎖的なオゾン分解が抑制され、装置の破損の虞が無くされている。
【0022】
また、移送配管4内にあっては、充填材である多数の球体5によりジグザク状の流路が形成され、熱伝達表面積が非常に大きくされると共に流路間隔が非常に小さくされ、充填材5の熱伝達速度が非常に大きくされている。このため、オゾン分解によって生じる熱は、充填材5の熱容量により一層素早く吸収され、連鎖的なオゾン分解が一層抑制されている。
【0023】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好ましいとして、充填材5を多数の球体としているが、高濃度オゾンガスの通過を可能とする充填材であれば良く、例えば、多数の楕円体、円柱体、円筒体や、網状物等としても良く、これらの充填材を用いることで、ジグザク状のオゾンガスの通過流路が形成されることがより好ましい。そして、この場合も、充填材は、高濃度オゾンガスにより酸化されない表面を有する構成とすべきであるというのはいうまでもない。なお、充填材は、移送配管4内に粗に充填されていると、粗に充填されている部分で、オゾン分解によって生じた熱が充填材の熱容量により吸収されず、連鎖的なオゾン分解が十分に抑制できない場合があるため、移送配管4内にできるだけ密に充填することが望ましい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明者らが実施した実施例1について述べる。
【0025】
(実施例1)
試験に用いたオゾンガス移送装置を図3に示す。移送配管4は、予め表面に酸化膜が形成されたステンレス製配管とし、内径25mm、内径10mmの二種類を用意した。移送配管4の両端側にはバルブ6a,6bを設け移送配管4を開閉可能としバルブ6a,6b間長を1mとした。移送配管4内に充填される球体は、予め表面に酸化膜が形成されたステンレス製球体とし、内径25mmの移送配管4内に対しては、平均半径0.5mm、1mm、1.5mm、3mm、5mmの五種類を用意し、内径10mmの移送配管4内に対しては、平均半径0.5mm、1mm、1.5mm、2.5mmの四種類を用意した。
【0026】
移送配管4のバルブ6a,6b間の中央に一対のニクロム線8,8を入れてオゾン分解部を設定し、当該ニクロム線8,8間に高電圧を印加可能とした。この移送配管4内に進入する一対のニクロム線8,8の両側(移送配管4に沿う両側)に、一対の網板7a,7bを離間して設置し、バルブ6aと網板7aとの間、及び、バルブ6bと網板7bとの間に、上記球体を密に充填した。また、移送配管4の網板7bとバルブ6bとの間に温度計T1を設置した。
【0027】
そして、バルブ6a,6bを開にした状態で、100%高濃度オゾンガス(大気圧;25°C)を流速5m/sでバルブ6a側から流し、移送配管4内に高濃度オゾンガスが充満した状態でバルブ6aを閉とし、この状態で、ニクロム線8,8間に高電圧を印加してスパークさせ、意図的にオゾン分解部で高濃度オゾンガスを爆発させることでオゾン分解を生じさせた。このような試験を、内径25mmの移送配管4内に対しては、平均半径0.5mm、1mm、1.5mm、3mm、5mmの球体5を順次充填・入れ替えて行い、内径10mmの移送配管4内に対しても、平均半径0.5mm、1mm、1.5mm、2.5mmの球体5を順次充填・入れ替えて行った。
【0028】
試験後には、移送配管4内から取り出した球体5の重量を測定し計算により表面積を求めた。充填された球体5の表面積(m)/移送配管4内体積(m)と温度との関係を図4に示す。
【0029】
図4に示すように、充填材5の表面積(m)/配管内体積(m)≧2000であると、連鎖的なオゾン分解が確実に防止されることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係るオゾンガス移送装置を備えた高濃度オゾンガス生成・使用装置を示す概略構成図である。
【図2】図1中のオゾンガス移送装置を示す概略構成図である。
【図3】実施例1に用いられるオゾンガス移送装置を示す概略構成図である。
【図4】実施例1における充填材の表面積/配管内体積−温度の関係を示す線図である。
【符号の説明】
【0031】
3…オゾンガス移送装置、4…移送配管(配管)、5…充填材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンを体積比率で10%以上含むオゾンガスを移送するための配管を備えたオゾンガス移送装置であって、
前記配管内に、前記オゾンガスの通過を可能とする充填材を充填したことを特徴とするオゾンガス移送装置。
【請求項2】
前記充填材は、その表面積(m)/前記配管内体積(m)≧2000であることを特徴とする請求項1記載のオゾンガス移送装置。
【請求項3】
前記充填材は、オゾンにより酸化されない表面を有することを特徴とする請求項1又は2記載のオゾンガス移送装置。
【請求項4】
前記充填材は、多数の球体であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のオゾンガス移送装置。
【請求項5】
前記充填材により形成される前記オゾンガスの通過流路は、ジグザク状の流路であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のオゾンガス移送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate