説明

オゾン使用設備用メカニカルシールおよび該オゾン使用設備用メカニカルシールが用いられたオゾン水搬送ポンプ

【課題】すべり性に優れ、しかも、取り替えサイクルを長期化させ得るオゾン使用設備用メカニカルシール、ならびに、運転動力の低減を図りつつ、メンテナンス頻度を減少させ得るオゾン水搬送ポンプを提供することを課題としている。
【解決手段】回転環と固定環とは、摺接される表面が炭化ケイ素により形成されており、しかも、回転時に回転環と固定環とが摺接される摺接領域の一部を液体に接触させ得るように、前記回転環と前記固定環とは、環状の面接領域の外縁側および内縁側の内、前記液体に接触される側の輪郭線が前記回転中心軸からの距離が不均一な形状となるように形成されていることを特徴とするオゾン使用設備用メカニカルシールならびにこのようなオゾン使用設備用メカニカルシールが用いられたオゾン水搬送ポンプを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンを含有する液体が使用されるオゾン使用設備において、前記液体に接触された状態で用いられるオゾン使用設備用メカニカルシールと、該オゾン使用設備用メカニカルシールが用いられたオゾン水搬送ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を収容する槽内で液体を攪拌したり、液体を搬送するためのポンプを駆動させたりする場合など液体を流動させる場合においては、通常、液体内で回転体を回転させることが行われる。
例えば、液体の搬送ポンプなどにおいては、羽根車をケーシング内に収容させ、モーターの回転軸と羽根車とをシャフトにて連結するなどされている。
このような場合、ケーシングの壁面には、シャフトを貫通させる貫通孔が形成されており、ケーシングに形成された貫通孔とシャフトとの間隙部からケーシング内を流通する液体が漏洩しないようにメカニカルシールが用いられている。
【0003】
このメカニカルシールには、通常、相互に摺接して液体をシールする回転環と固定環とが用いられており、これらの形態については種々の検討がなされている(特許文献1参照)。
例えば、中抜き円盤形状を備える回転環と固定環とを用い、シャフトを回転環に挿通し、しかも、シャフトと回転環との隙間部から液体が漏洩しないようにしてシャフトと回転環とを固定する一方で、このシャフトがケーシングを貫通する貫通孔を包囲するように、固定環をケーシングの外壁面に固定させてシールに用いられたりしている。
そして、この貫通孔にシャフトを挿通させて固定環と回転環とを面接させ、この状態で貫通孔とシャフトとの間隙部を通過した液体が固定環と回転環との面接領域を通過しないように、この面接領域は、通常、シャフトを囲む環状に形成されており、さらに、この固定環と回転環とが強く面接されるように付勢する機構などがメカニカルシールに採用されたりもしている。
【0004】
しかも、回転環と固定環とが面接する面の形状は、前記シャフトを軸周りに回転させて搬送ポンプを運転させたときにも、回転環と固定環とを摺接させつつ、この摺接領域を液体が通過することを抑制し得るように形成されている。
そして、このように強く面接された状態で摺動されて用いられることから、回転環と固定環とには、炭化ケイ素や、酸化アルミニウムなどのセラミックスが用いられたりしている。
特に、炭化ケイ素は、酸化アルミニウムに比べてすべり性に優れ、搬送ポンプの運転動力を低減させたりし得ることからメカニカルシールに広く用いられている。
【0005】
ところで、オゾンを含有する液体として、純水にオゾンを溶解させたオゾン水などと呼ばれる液体が有機物の分解性能に優れることから半導体分野などの洗浄において、近年、広く用いられるようになってきている。
このオゾン水などに用いるオゾンは、例えば、下記特許文献2に記載されたオゾン発生装置などにより製造されたりしている。
【0006】
従来、この特許文献2に記載されているオゾン発生装置における気液分離される前の液体や、上記オゾン水製造設備におけるオゾン水を搬送するオゾン水搬送ポンプなどといったオゾン使用設備にも上記のようなメカニカルシールが用いられている。
そして、このオゾン使用設備に上記のような炭化ケイ素を用いたメカニカルシールを使用しようとすると、優れたすべり性を発揮するものの早期に摩耗してしまうという問題を有している。
したがって、液モレなどの問題が発生することを抑制すべく、取り替えサイクルを短期化しなければならず、取替え作業の回数を増大させるばかりでなく、取り替え作業のためにオゾン使用設備の運転自体を停止させる回数を増大させている。
【0007】
一方で炭化ケイ素以外の材質のメカニカルシールは、炭化ケイ素を用いたものに比べて、通常、すべり性を低下させる上にオゾン耐食性の点でも炭化ケイ素に劣ることから、これらをオゾン使用設備に用いることは実質困難である。
そのようなことから、従来、オゾン使用設備用メカニカルシールにおいては、すべり性に優れ、取り替えサイクルを長期化させ得るものを得ることが困難であるという問題を有している。
また、オゾン水搬送ポンプなどにおいては、運転動力の低減を図りつつ、メンテナンス頻度を減少させることが困難であるという問題を有している。
【0008】
【特許文献1】実開昭59−195252号公報
【特許文献2】特開2005−248212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、すべり性に優れ、しかも、取り替えサイクルを長期化させ得るオゾン使用設備用メカニカルシールを提供することを課題としている。
また、本発明は、運転動力の低減を図りつつ、メンテナンス頻度を減少させ得るオゾン水搬送ポンプを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、まず、炭化ケイ素を用いたメカニカルシールをオゾン使用設備用とした場合に生じる摩耗について調査を行った。
そして、本発明者らは、オゾン使用設備用メカニカルシールにおいては、その摺動領域にオゾン存在下での摩擦発熱による水熱酸化が発生することを見出した。
すなわち、炭化ケイ素が酸化ケイ素に変化して、表面剥離を発生させて摩耗を生じさせていることを見出した。
そして、その対策について鋭意検討を行った結果、摺動領域における良好なる液膜形成をさせることで、水熱酸化の発生を抑制させ得ることを見出し本発明の完成に到ったのである。
【0011】
すなわち、本発明は、前記課題を解決すべく、オゾンを含有する液体が使用されるオゾン使用設備での前記液体のシールに用いられ、回転環と固定環とが備えられており、前記回転環は周方向に回転自在に備えられ、前記固定環は前記回転環の回転中心軸方向側方から前記回転環に面接されて備えられており、前記回転環と前記固定環とが面接する面接領域は、回転環の回転中心軸を囲む環状に形成されており、しかも、前記回転環と前記固定環は、前記回転環が回転された場合に前記面接領域を環状に維持しつつ摺接して前記環状の面接領域にて前記液体をシールさせ得るように形成されているオゾン使用設備用メカニカルシールであって、前記回転環と前記固定環とは、前記摺接される表面が炭化ケイ素により形成されており、しかも、前記回転時に回転環と固定環とが摺接される摺接領域の一部を前記液体に接触させ得るように、前記回転環と前記固定環とは、前記環状の面接領域の外縁側および内縁側の内、前記液体に接触される側の輪郭線が前記回転中心軸からの距離が不均一な形状となるように形成されていることを特徴とするオゾン使用設備用メカニカルシールを提供する。
【0012】
また、本発明は、前記課題を解決すべく、オゾン水の搬送に用いられるオゾン水搬送ポンプであって、前記オゾン水をシールすべくメカニカルシールが用いられており、前記メカニカルシールには、回転環と固定環とが備えられており、前記回転環は周方向に回転自在に備えられ、前記固定環は前記回転環の回転中心軸方向側方から前記回転環に面接されて備えられており、前記回転環と前記固定環とが面接する面接領域は、回転環の回転中心軸を囲む環状に形成されており、しかも、前記回転環と前記固定環は、前記回転環が回転された場合に前記面接領域を環状に維持しつつ摺接して前記環状の面接領域にて前記液体をシールさせ得るように形成され、前記回転環と前記固定環とは、前記摺接される表面が炭化ケイ素により形成されており、しかも、前記回転時に回転環と固定環とが摺接される摺接領域の一部を前記液体に接触させ得るように、前記回転環と前記固定環とは、前記環状の面接領域の外縁側および内縁側の内、前記液体に接触される側の輪郭線が前記回転中心軸からの距離が不均一な形状となるように形成されていることを特徴とするオゾン水搬送ポンプを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転環と固定環とが摺接される表面を炭化ケイ素で形成することから、オゾン使用設備用メカニカルシールをすべり性に優れたものとし得る。
しかも、通常、メカニカルシールにおける回転環と固定環との面接領域は、その外縁側と内縁側の輪郭線を回転環の回転中心軸からの同心円となるように形成されているため、回転環を回転させた場合の回転環と固定環との摺接領域が常に同じ個所に形成されているが、本発明のオゾン使用設備用メカニカルシールは、面接領域の外縁側、あるいは、内縁側の輪郭線が、回転中心軸からの距離が不均一に形成されている。
【0014】
したがって、回転中心軸からの距離が不均一に形成された輪郭線を有する側を接液側とすることにより、回転中心軸から輪郭線までの径方向の距離が最も近い個所から最も遠い個所までの間の部分は、回転環が一回転する間に、少なくとも一回は露出状態とされる。
すなわち、回転環と固定環とが摺接される摺接領域の一部としながらも液体に接触される個所とし得る。
したがって、摺動部における摩擦発熱を抑制させて水熱酸化の発生を抑制させ得る。
すなわち、オゾン使用設備用メカニカルシールをすべり性に優れ、しかも、取り替えサイクルを長期化させ得るものとさせ得る。
【0015】
さらに、このようなオゾン使用設備用メカニカルシールをオゾン水搬送ポンプに採用することによりオゾン水搬送ポンプの運転動力を低減しつつ、メンテナンス頻度を減少させ得る。
【0016】
なお、通常、メカニカルシールは、固定環と回転環との間に数μm〜数十μm程度の厚さの液膜を形成させているものである。本明細書における、「摺接」「面接」なる用語は、物理的に接触していることのみを意味するものではなく、上記液膜を介した状態で近接されている状態も含んだ意味で用いている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の好ましい実施の形態についてオゾン水製造設備などのオゾン使用設備において用いられるオゾン使用設備用メカニカルシールの例として、オゾン水の搬送ポンプに用いられる場合を例に説明する。
【0018】
まず、このオゾン水搬送ポンプと該オゾン水搬送ポンプに用いられているオゾン使用設備用メカニカルシールの構造について図1乃至4を参照しつつ説明する。
図1は、オゾン水搬送ポンプ1を示す正面図であり、オゾン水の流動を一方向に加勢することによりオゾン水を側方側から吸引して上方側に吐出する液送部100と、この液送部の後方に配されて前記液送部100にオゾン水の流動を加勢するための動力を与えるモーター200とを備えている。
該モーター200は、その回転中心軸Cの方向が水平方向となるように配されており、該回転中心軸C周りに回転し、液送部100にその回転力を伝達するための軸体である外形略円柱状のシャフト201に連結されている。
【0019】
図2は、図1のX−X’矢視断面図であり、液送部100の側面視断面を示すものである。
この図2に示す液送部100は、回転することにより回転軸方向に沿って後方側から前方側にオゾン水を流動させる羽根体111がケーシング110に収容されて備えられている。該ケーシング110は、内部に広幅な略円筒形状の空間が形成されており、該空間は、円筒形状の中心軸方向が水平方向となるように形成されている。
そして、前記羽根体111は、このケーシング110の内部において前記円筒形状の中心軸周りに回転可能となるように収容されている。
【0020】
また、このケーシング110には、収容する羽根体111が回転した時に、この羽根体111の回転中心軸方向の後方の内部空間にオゾン水を導入させ得るようにオゾン水吸入孔101が形成され、このオゾン水吸入孔101から導入されて前記羽根体111の回転により回転方向前方に付勢されたオゾン水を回転中心軸方向と直角となる方向(上方)に転流させて吐出させ得るようにオゾン水吐出孔102が形成されている。
さらに、このケーシング110には、収容する羽根体111を前記モーター200により回転させ得るように、背面側中央部に前記シャフト201を貫通させる貫通孔が形成されている。
そして、このシャフト201は、その先端部をケーシング110内部に挿入させて、該先端部を前記羽根体111の中心部に固定させている。
該シャフト201もモーター200と同じ回転中心軸C周りに回転するようにモーター200に連結されている。
【0021】
また、このシャフト201の回転や、メカニカルシールの固定環130と回転環120と摺接などにより粉塵などが発生した場合にこの粉塵を排出すべくオゾン水搬送ポンプ1には、パーティクル排出部103が形成されている。
【0022】
なお、このオゾン水搬送ポンプ1におけるケーシング110、羽根体111、および、シャフト201などオゾン水に接触される接液部には、全てオーステナイト系ステンレス鋼が用いられている。
しかも、これらの部材は、電解研磨処理を施した表面上に鉄系酸化物を主とする金属酸化物の被膜が形成されるように表面処理が施されたものが好適である。
また、前記被膜の厚みは、200Å以下が好ましく、100〜200Åがさらに好ましい。
【0023】
このような箇所においてオーステナイト系ステンレス鋼が用いられているのは、ステンレス鋼の表面には、一般的にCr濃度の高い不動態被膜、例えばCr23、CrO水和物等の不動態被膜が形成されており、この不動態被膜により、通常、金属イオンの溶出が抑制されるためである。
しかも、単にオーステナイト系ステンレス鋼を用いた場合においては、オゾンのような極めて強い酸化力を有する酸化剤の存在下では過不動態化して不安定な6価となり、溶出しやすくなるおそれがあるが、上記のごとく鉄系酸化物を主とする金属酸化物の被膜の厚みを、200Å以下の厚みで形成させることによりオゾンのような極めて強い酸化力を有する酸化剤の存在下でも金属イオンの溶出を十分抑制させ得る。
【0024】
すなわち、FeはO2濃度が高くなると、安定な酸化物(Fe23)となり、溶出しにくくなる。したがって、ステンレス鋼の表面に鉄系酸化物層を形成することにより、オゾンを含有する純水への金属イオンの溶出を抑制することができる。
【0025】
なお、この鉄系酸化物を主とする金属酸化物の被膜の厚みが200Åを超えると、厚すぎて脆くなる。したがって、表面のクラックなどの発生を抑制でき、より確実に金属イオンの溶出を抑制させ得る点から、金属酸化物の被膜の厚みは、200Å以下とされることが好ましい。
また、この鉄系酸化物を主とする金属酸化物の被膜の厚みが薄いと、金属イオンが溶出するおそれが生じるので、金属酸化物の被膜の厚みは、100Å以上とされることが好ましい。
【0026】
ここで、鉄系酸化物を主とする金属酸化物の被膜とは、Fe23、FeOおよびFe34等を含む層をいい、この被膜の外層部には、Fe23が多く含まれていることが好ましい。
また、被膜とは、この外層部とその内側に形成される内層部(CrとFeの混在した層、Cr−(Fe)−O)を含んだ層を意図している。
【0027】
オーステナイト系ステンレス鋼の表面にこのような酸化被膜を形成させる方法としては、例えば、部材の表面を電解研磨して、酸洗浄、超純水洗浄して乾燥させたものを、大気中で400〜450℃に加熱するなどすればよく、外層部の厚みについては、加熱温度や加熱時間を制御して適宜調整することができる。
また、この金属酸化物の被膜の厚みについては、測定箇所を無作為に複数箇所選出して、それぞれの箇所についてX線電子分光分析(ESCA)により測定し、その測定値の平均を算出することで求めることができる。
【0028】
このように接液部が上記のような鉄系酸化物から成る外層部を有する酸化被膜が形成されたオーステナイト系ステンレス鋼で形成されることにより、オゾン水に金属イオンが溶出して、このオゾン水が用いられて洗浄される被洗浄物を金属イオンで汚染してしまうことを抑制し得る。
特に、シャフト201においては、本実施形態のオゾン使用設備用メカニカルシールが外嵌されることから、シャフト201から金属イオンの溶出が生じた場合には、回転環120あるいは固定環130の表面に金属間化合物が形成されてしまうおそれを有する。
したがって、少なくとも、このシャフト201の外表面は、上記のような酸化被膜が形成されたオーステナイト系ステンレス鋼で形成されることが好ましい。
【0029】
このようなケーシング110の貫通孔112をシャフト201が貫通する個所において、本実施形態のオゾン使用設備用メカニカルシール(以下、単に「メカニカルシール」ともいう)が用いられている。
このメカニカルシールには、回転環120と固定環130とが備えられており、この回転環120と固定環130とは互いに摺接可能に形成されている。
すなわち、回転環120は、前記シャフト201に外嵌可能な内径を有し、シャフト201の回転とともに回転されるべくシャフト201に外嵌されて固定されている。一方、前記固定環130は、シャフト201を遊嵌可能な内径を有しており、前記ケーシング110の貫通孔部に固定されている。
より詳しくは、前記回転環120と前記固定環130とは、前記シャフト201の回転時には、側面同士を面接させつつ互いに摺接した状態とさせ得るように、面接する互いの端面を前記シャフト201の回転中心軸C方向に垂直な面に展延させてシャフト201に外嵌されている。
【0030】
また、本実施形態のメカニカルシールは、図2に示すようにアウトサイド型に形成されている。
すなわち、回転環120が固定されたシャフト201を前記貫通孔部に固定された固定環130に挿入させることによりこれら回転環120と固定環130とが互いの側面を面接させた状態で隣接配置され、しかも、回転環120が大気側に位置し、固定環130が接液側に位置されることとなる。
したがって、回転環120と固定環130との摺接領域などにおいて水熱酸化が生じて酸化ケイ素などによる粉塵が発生したとしても、該粉塵がオゾン水に混入することを防止でき、大気側に排出させてパーティクル排出部103からオゾン水搬送ポンプ1外に排出させることができる。
【0031】
なお、要すれば、このパーティクル排出部103を洗浄して回転環120の外表面に付着した粉塵などを洗浄することもでき、さらには、メンテナンス時には、回転環120をモーター200側に移動させて、常時は互いに面接している回転環120と固定環130とを離間させて、それぞれの端面(摺接領域)を洗浄したりすることも容易である。
【0032】
次いで、これら回転環120と固定環130の構造について図3、図4を参照しつつさらに詳しく説明する。
前記回転環120は、図3、図4に示すように、回転中心軸に対して垂直な平面方向に配され、外形が略中抜き円盤形状に形成された基部121と、前記固定環130に摺接させるべく回転中心軸方向に前記基部121に隣接されており、前記基部121から突出された状態となるように形成された摺接部123とを有しており、この回転環120は、炭化ケイ素により前記基部と前記摺接部とが一体的に形成されている。
【0033】
前記基部121の中抜き部は、該中抜き部に前記シャフト201を挿通させて回転環120を前記シャフト201に外嵌し得るように、回転中心軸に垂直な平面による断面形状が前記シャフト201と同じく円形に形成されている。
しかも、前記基部121の中抜き部には、基部121の厚み方向略中央部において段差が形成されており、この段差を境にして、一方側に前記シャフト201の直径よりも僅かに径大な円形断面に形成された領域(以下「中抜き領域122」ともいう)が形成され、他方側に前記中抜き領域122より径大な円形領域(以下「段差部126」ともいう)が形成されている。
【0034】
前記摺接部123は、前記基部121の中抜き領域122が形成された側(段差部126とは反対側)において前記基部121から突出した状態に形成されており、基部121の中抜き領域122を包囲し、しかも、周方向を横断する断面が矩形となる円環形状に形成されている。
さらに、この摺接部123は、回転環120をシャフト201に外嵌させた際に、シャフト201の外表面と中抜き領域122の内周部とのクリアランスを摺接部123の先端部分まで後述の凹入部を除いて全体略同一状態に形成させ得るように、その内周側が中抜き領域122の内周部とともに一円筒形状を形成し得る形状を有している。
【0035】
すなわち、回転環120には、その中央部において表裏に貫通する貫通孔が形成され、該貫通孔は、摺接部123が形成された回転環120の一面側において前記シャフト201よりも僅かに径大に開口し、段差部126が形成された他面側において一面側よりも径大に開口している。
そして、回転環120は、シャフト201をこの貫通孔に貫通させた状態で、シャフト201と段差部126との間に形成される空隙部にシール材113を封入させてシャフト201に固定されている。
このようにして回転環120は、シール材113をシャフト201と段差部126との間に形成される空隙部に封入させることによりシャフト201に固定されており、前記シール材113で回転環120とシャフト201との間のシール(液封)がなされている。
【0036】
一方、前記摺接部123は、基部121とは反対側に位置する端面125が、回転中心軸に対する垂直面とされており、その全面を固定環130に面接させて固定環130と摺接させてオゾン水をシールすべく、この端面125全体が一平面となるように形成されている。
この摺接部123の端面125は、その外縁側の輪郭線125bがシャフト201の回転中心軸に対して等距離、すなわち、この回転中心軸Cを中心とした円形に形成されている。
【0037】
一方内縁側の輪郭線125aは、シャフト201の回転中心軸Cに対して等距離となる部分と、この回転中心軸Cに対して等距離となる部分よりも外縁側に突出させた部分が形成されており、前記回転中心軸Cからの距離が不均一に形成されている。
この内縁側輪郭線125aを外縁側に突出させた部分は、略矩形状に形成され、周方向に3箇所形成されている。すなわち、この摺接部123の端面125は、内側部分に矩形に切欠きされた凹入部124が3箇所形成された環状に形成されている。
そして、摺接部123の端面125には、この内縁側輪郭線125aがシャフト201の回転中心軸に対して等距離となる部分において径方向の幅が周方向に等しくなる等幅領域Wが形成され、内縁側輪郭線125aが外縁側に突出した部分(凹入部124)において前記等幅領域Wよりも径方向の幅が狭幅となる狭幅領域Nが形成されている。
【0038】
前記固定環130も、回転環120と略同形に形成されており、外形が略中抜き円盤形状に形成された基部131と、回転環120に摺接される摺接部133とを有して形成されている。また、炭化ケイ素により前記基部131と前記摺接部133とを一体的に形成させている点、前記基部131には前記シャフト201の直径よりも僅かに径大な円形の中抜き領域132が形成されている点においても回転環120と同様である。
【0039】
しかし、この固定環130の基部は、回転環120の基部に設けられていたような段差部126は設けられておらず、中央部において表裏に貫通する貫通孔は、一定の口径に形成されている。
また、基部131の中抜き領域132を包囲して断面矩形の環状に基部131の一側面から突出させた状態で前記摺接部133が形成されている点においても、回転環120と同様である。また、この固定環130の摺接部133の端面135も、回転環120に面接させて固定環130と摺接させるべく、回転中心軸に対する垂直面となる同一平面上に形成されている。
そして、前記固定環130は、この摺接部133が形成された側を回転環120側に面した状態で、摺接部133が形成された側とは反対側(基部131側)を前記ケーシング110に面接させてケーシング110の貫通孔112形成個所を包囲するようにケーシング110に固定されて備えられている。
また、この固定環130は、ケーシング110と基部131との面接箇所を液封状態としてケーシング110に固定されている。
【0040】
この固定環130の摺接部133は、その端面135に前記回転環120の端面125全面を面接させ得るように、前記回転環120の端面よりも僅かに広い面積に形成されている。
すなわち、外縁輪郭線135bをシャフト201の回転中心軸Cに対して等距離の円形とし、且つ、前記回転環120の端面外縁輪郭線125bよりも僅かに径大に形成させている。
一方内縁側の輪郭線135aは、シャフト201の回転中心軸Cに対して等距離となる円形とし、回転環120に形成されていたような外縁側に突出した部分(端面の凹入部124)は形成されていない。
すなわち、この固定環130の摺接部133の端面135は、内縁側輪郭線135a、外縁側輪郭線135bがいずれもシャフト201の回転中心軸Cに対して同心円となるように形成され、径方向の幅が全周にわたって均一に形成されている。
【0041】
この回転環120と、固定環130とは、前記シャフト201が前記ケーシング110の貫通孔112に挿入され、ケーシング110方向に押圧された状態とされて、互いの摺接部の端面どうしを面接させている。
このとき、前記回転環120の端面125の全面がこの固定環130に面接されることから、この回転環120の端面125の形状、すなわち、内側に凹入部124が形成されて等幅領域Wと狭幅領域Nとが形成された環状形状を有するようにして面接領域が形成されることとなる。
【0042】
しかも、面接領域を前記シャフト201の周囲を囲んだ状態で回転環120と固定環130との界面に形成させることとなる。
このようにして回転環120の端面125が面接される固定環130の端面135が、前記回転環120の端面125全体を面接させ得るように前記回転環120の端面125よりも広い面積を有することでより確実にシールを実施させ得る。
【0043】
さらに、上記に示したように、面接領域の内縁側輪郭線を回転中心軸Cからの距離を不均一に形成させるべく、この固定環に面接する回転環120の端面125に等幅領域Wと狭幅領域Nとが形成されるなどして、その端面125形状を回転中心軸C周りに径方向の幅が変化する環形状に形成されていることから、回転環の端面を径方向の幅が変化しない円環形状とし、回転中心軸Cに対して偏心するように配置して、この端面の内縁側輪郭線を回転中心軸Cからの距離を不均一に形成させる場合に比べて、凹入部124の切欠き形状などを変化させて最適化させることが容易でより確実にシールさせ得る。
【0044】
そして、ケーシング110内にオゾン水が導入された際には、シャフト201と固定環130との間を伝ってオゾン水が回転環120内側にまで達することとなるが、上記に説明したように、この回転環120とシャフト201とはシール材113でシールされていることから、回転環120とシャフト201との間を伝ってオゾン水が外部に漏洩することが十分抑制されている。
【0045】
さらに、回転環120と固定環130との界面にも環状の面接領域が形成されていることから、オゾン水は、前記狭幅領域N部(凹入部124)までは進入し得るもののそれ以上には回転環120と固定環130との界面を伝って外部に漏洩されることがなく、この回転環120と固定環130との界面でもオゾン水の漏洩が十分抑制される。
そして、回転環120と固定環130の面接領域は、回転環120と固定環130とがその摺接部の端面を上記に例示したように形成されていることから、シャフト201の回転時にもこの環状の面接領域が維持される。したがって、回転時にもオゾン水が外部に漏洩することが十分抑制される。
【0046】
このとき前記回転環120の端面125の全面が固定環130に面接された状態で回転環120が回転して、回転環120と固定環130とが摺接されることになる。
上記に示したように、回転環120の端面は、その全面が固定環130の端面に面接されることから、固定環130の端面の一部であり且つ回転環120の端面全面となる状態で面接領域が形成される。
そして、この回転環120の回転時には、面接領域における回転中心軸Cから最も離れた地点と回転中心軸Cとの距離を半径とし、且つ、回転中心軸Cを中心とする円形に摺接領域の外縁側輪郭線が形成され、面接領域における回転中心軸Cから最も近い地点と回転中心軸Cとの距離を半径とし、且つ、回転中心軸Cを中心とする円形に摺接領域の内縁側輪郭線が形成される。
したがって、この摺接される摺接領域としては、回転環120端面の等幅領域Wと同じ径方向の幅を有する環状に形成される。
【0047】
ただし、前記凹入部124が形成されている内縁側においては、凹入部124で摺接領域にオゾン水が接触れることとなる。
すなわち、摺接領域は、前記等幅領域Wと同じ径方向の幅を有する環状に形成され、この内、狭幅領域Nの径方向の幅に相当する外側部分をオゾン水に曝されない領域とし、凹入部124の深さ(径方向幅)に相当する内側部分をオゾン水に曝される領域として形成される。
【0048】
一般に液体の漏洩は、液体を収容する内部の圧力と、漏洩される側の外部の圧力との圧力差により生じるものであり、メカニカルシールについては、その摺接領域の通過抵抗によりシールする液体の圧力を摺接領域の途中部分におい大気圧など外部の圧力以下に低下させることによってシール性能を確保するものであるが、炭化ケイ素を用いたオゾン使用設備用メカニカルシールにおいては、この摺動領域における液膜形成が途切れてしまうと水熱酸化が発生しやすくなる。
本実施形態のオゾン使用設備用メカニカルシールは、摺動部分の内側部分にオゾン水に曝される領域を形成させることから、液膜が途切れた場合にもすばやく液(オゾン水)を供給させて新たなる液膜を形成させやすく、しかも、オゾン水に曝される部分においては、該オゾン水により冷却されやすく、温度上昇が抑制される効果も奏する。したがって、水熱酸化の発生がより一層抑制されることとなる。
【0049】
なお、この回転環120の端面に形成させる凹入部124を径方向にあまり奥深く形成させると狭幅領域Nの径方向の幅がその分狭く形成されることとなり、例えば、高いオゾン水の圧力を必要とする装置においてはオゾン水の漏洩を発生させるおそれを生じる他、この狭幅領域Nに僅かな傷や、摩耗など生じただけでオゾン水の漏洩が発生するおそれがある。
したがって、オゾン使用設備用メカニカルシールの信頼性を高め得る点、ならびに、オゾン水の圧力に制限が設けられるなど用途に制限が加えられることを抑制し得る点などにおいて、前記等幅領域Wの径方向の幅を100%としたときに、前記狭幅領域Nの幅が50〜90%であり、しかも、内縁側輪郭線125aにおける周方向の長さに占める前記等幅領域Wと前記狭幅領域Nとの比率が2:1〜10:1となるように前記回転環120の端面が形成されていることが好ましく5:1〜10:1となるように形成されていることがさらに好ましい。
【0050】
なお、本実施形態においては、回転環の端面の内側に矩形状の凹入部を形成させた場合を例に説明したが、回転環の端面形状は、上記のように内側に矩形状の凹入部を形成させる場合に限るものではなく図5a)、b)に示すようなものも使用可能である。
この図5は、シールのための端面が形成された側から回転環を見た正面図であり、図5a)は、摺接領域の一部にオゾン水などのシールする液体を接触させるべく、多角形(図では正六角形を例示している)の環状端面が形成されている。
また、図5b)は、摺接領域の一部にオゾン水などのシールする液体を接触させるべく、回転中心軸に対して偏心した円環状端面が形成されている。
さらに、このような例示によらず種々の改良を採用可能である。
【0051】
また、本実施形態においては、アウトサイド型メカニカルシールによる回転環の内側から外側に対してのオゾン水のシールを例に説明したため、回転環の端面内側に凹入部を形成しているが、逆に、インサイド型メカニカルシールによる回転環の外側から内側に対してのオゾン水のシールをする場合には、摺接領域の一部をオゾン水に接触させる構造を回転環の外側に形成させるようにしてもよく、内側から外側、外側から内側の両方のシールに共用し得るように、回転環の端面の内外両側に摺接領域の一部をオゾン水に接触させる構造を形成させることも可能である。
【0052】
また、本実施形態においては、上記のような摺接領域の一部をオゾン水に接触させるための構造を回転環側に形成させる場合を例に説明したが、本発明においては上記のような構造は回転環側ではなく固定環側に形成させることもできる。
【0053】
また、本実施形態においては、回転環と固定環とが面接される面接領域を回転中心軸に垂直な平面とすべく、回転環と固定環との端面を回転中心軸に対する垂直面としているが、本発明においては、面接領域をすり鉢状に形成させることも可能である。
すなわち、回転環の固定環側端面を円錐台側面形状などに形成し、該形状に見合うすり鉢状の構造を固定環に形成させてシールを行うこともできる。
【0054】
さらに、本実施形態においては、オゾン水製造設備の搬送ポンプを例に説明したが、本発明においては、オゾン使用設備に用いられる場合であれば、搬送ポンプ以外の用途に用いることも可能である。
また、本発明においては、オゾン使用設備をオゾン水製造設備に限定するものでもない。
【実施例】
【0055】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
SiC製の固定環と回転環とを有し、しかも、回転環に、内周側から外周側に向けて矩形状の切欠きが等間隔に3箇所設けられて、摺接領域と同じ径方向の幅を有する等幅領域(周方向長さ19.2mm)と、該等幅領域よりも径方向の幅が狭い狭幅領域(周方向長さ3mm)とが形成されたメカニカルシールを有するポンプを2900rpmの回転数で運転させて、65℃の純水を0.28MPaの圧力で吐出させた。
この、ポンプをメカニカルシールのスプリング荷重を適正化しつつ260時間運転させた後に、このメカニカルシールの摩耗量を測定し、該測定値から1年間にこのメカニカルシールに生ずる摩耗量を算出した。
結果を表1に示す。
【0056】
(実施例2)
スプリング荷重の適正化を行わなかったこと以外は実施例1と同様に試験を実施し、1年間の摩耗量を算出した。
結果を表1に示す。
【0057】
(比較例1)
切欠きが形成されていない回転環を用いたこと以外は実施例1と同様に試験を実施し、1年間の摩耗量を算出した。
結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
この表からも、摺接領域の一部を前記液体に接触させ得るように、前記環状の面接領域は、外側輪郭線もしくは内側輪郭線の少なくとも一方が前記回転中心軸からの距離が不均一となるように形成されているオゾン使用設備用メカニカルシールは、すべり性に優れ、長寿命化されていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】オゾン水搬送ポンプを示す概略正面図。
【図2】図1のX−X’線矢視断面図。
【図3】回転環、固定環を示す上面図。
【図4】図3のA−A’線矢視断面図、B−B’線矢視断面図。
【図5】回転環のその他の態様を示す概略正面図。
【符号の説明】
【0061】
1:オゾン水搬送ポンプ、120:回転環、123:(回転環)摺接部、124:凹入部、125:(回転環)端面、125a:内縁側輪郭線、125b:外縁側輪郭線、130:固定環、133:(固定環)摺接部、135:(固定環)端面、135a:内縁側輪郭線、135b:外縁側輪郭線、201:シャフト、C:回転中心軸、N:狭幅領域、W:等幅領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンを含有する液体が使用されるオゾン使用設備での前記液体のシールに用いられ、回転環と固定環とが備えられており、前記回転環は周方向に回転自在に備えられ、前記固定環は前記回転環の回転中心軸方向側方から前記回転環に面接されて備えられており、前記回転環と前記固定環とが面接する面接領域は、回転環の回転中心軸を囲む環状に形成されており、しかも、前記回転環と前記固定環は、前記回転環が回転された場合に前記面接領域を環状に維持しつつ摺接して前記環状の面接領域にて前記液体をシールさせ得るように形成されているオゾン使用設備用メカニカルシールであって、
前記回転環と前記固定環とは、前記摺接される表面が炭化ケイ素により形成されており、しかも、前記回転時に回転環と固定環とが摺接される摺接領域の一部を前記液体に接触させ得るように、前記回転環と前記固定環とは、前記環状の面接領域の外縁側および内縁側の内、前記液体に接触される側の輪郭線が前記回転中心軸からの距離が不均一な形状となるように形成されていることを特徴とするオゾン使用設備用メカニカルシール。
【請求項2】
前記回転環は、前記面接領域の外縁側輪郭線および内縁側輪郭線の少なくとも一方を前記回転中心軸からの距離を不均一に形成させるべく、前記固定環に面接する端面が回転中心軸周りに径方向の幅が変化する環形状に形成されており、前記回転環の端面が面接される前記固定環の端面は、前記回転環の端面全体を面接させ得るように前記回転環の端面よりも広い面積を有している請求項1に記載のオゾン使用設備用メカニカルシール。
【請求項3】
前記回転環の内側が前記液体に接触され、該回転環の内側から外側への前記液体の流通をシールすべく用いられ、回転環の前記端面は、該端面の内縁側輪郭線の一部を前記回転中心軸を中心とした円に沿って位置させ且つ他部を前記円よりも外縁側に突出させて位置させることにより、内縁側に凹入部を有する環形状に形成されている請求項2に記載のオゾン使用設備用メカニカルシール。
【請求項4】
前記回転環の端面には、回転中心軸周りに径方向の幅が変化しない等幅領域と、前記等幅領域よりも径方向の幅が狭い狭幅領域とが形成されており、前記回転環の端面の外側輪郭線が前記回転中心軸を中心とした円に沿って形成されることにより、前記内縁側輪郭線が回転中心軸を中心とした円に沿って位置している領域に前記等幅領域が形成され、前記凹入部を有する領域に前記狭い狭幅領域が形成されている請求項3に記載のオゾン使用設備用メカニカルシール。
【請求項5】
前記回転環の端面と前記固定環の端面とが前記回転中心軸に垂直な平面により形成され、前記環形状の面接領域が回転中心軸に垂直な平面上に形成されている請求項2乃至4の何れか1項に記載のオゾン使用設備用メカニカルシール。
【請求項6】
前記等幅領域の径方向の幅を100%としたときに前記狭幅領域の幅が50〜90%となるように形成されており、しかも、内縁側輪郭線における周方向の長さに占める前記等幅領域と前記狭幅領域との比率が5:1〜10:1となるように前記回転環の端面が形成されている請求項4または5に記載のオゾン使用設備用メカニカルシール。
【請求項7】
オゾンを含有する液体が外表面に接触される軸体に外嵌されて用いられ、前記軸体は、電解研磨処理を施した表面上に鉄系酸化物を主とする金属酸化物の被膜が形成されたステンレス鋼で前記外表面が形成されている請求項3乃至6の何れか1項に記載のオゾン使用設備用メカニカルシール。
【請求項8】
オゾン水を搬送するための羽根車を備え、該羽根車を回転させるべくオゾンを含有する液体が外表面に接触する状態で用いられる軸体が備えられているオゾン水搬送ポンプの前記軸体に外嵌されて用いられる請求項7記載のオゾン使用設備用メカニカルシール。
【請求項9】
オゾン水の搬送に用いられるオゾン水搬送ポンプであって、
前記オゾン水をシールすべくメカニカルシールが用いられており、前記メカニカルシールには、回転環と固定環とが備えられており、前記回転環は周方向に回転自在に備えられ、前記固定環は前記回転環の回転中心軸方向側方から前記回転環に面接されて備えられており、前記回転環と前記固定環とが面接する面接領域は、回転環の回転中心軸を囲む環状に形成されており、しかも、前記回転環と前記固定環は、前記回転環が回転された場合に前記面接領域を環状に維持しつつ摺接して前記環状の面接領域にて前記液体をシールさせ得るように形成され、前記回転環と前記固定環とは、前記摺接される表面が炭化ケイ素により形成されており、しかも、前記回転時に回転環と固定環とが摺接される摺接領域の一部を前記液体に接触させ得るように、前記回転環と前記固定環とは、前記環状の面接領域の外縁側および内縁側の内、前記液体に接触される側の輪郭線が前記回転中心軸からの距離が不均一な形状となるように形成されていることを特徴とするオゾン水搬送ポンプ。
【請求項10】
前記回転環は、前記面接領域の外縁側輪郭線および内縁側輪郭線の少なくとも一方を前記回転中心軸からの距離を不均一に形成させるべく、前記固定環に面接する端面が回転中心軸周りに径方向の幅が変化する環形状に形成されており、前記回転環の端面が面接される前記固定環の端面は、前記回転環の端面全体を面接させ得るように前記回転環の端面よりも広い面積を有している請求項9に記載のオゾン水搬送ポンプ。
【請求項11】
前記回転環の内側が前記液体に接触され、該回転環の内側から外側への前記液体の流通をシールすべく用いられ、回転環の前記端面は、該端面の内縁側輪郭線の一部を前記回転中心軸を中心とした円に沿って位置させ且つ他部を前記円よりも外縁側に突出させて位置させることにより、内縁側に凹入部を有する環形状に形成されている請求項10に記載のオゾン水搬送ポンプ。
【請求項12】
前記回転環の端面には、回転中心軸周りに径方向の幅が変化しない等幅領域と、前記等幅領域よりも径方向の幅が狭い狭幅領域とが形成されており、前記回転環の端面の外側輪郭線が前記回転中心軸を中心とした円に沿って形成されることにより、前記内縁側輪郭線が回転中心軸を中心とした円に沿って位置している領域に前記等幅領域が形成され、前記凹入部を有する領域に前記狭い狭幅領域が形成されている請求項11に記載のオゾン水搬送ポンプ。
【請求項13】
前記回転環の端面が、前記回転中心軸に垂直な平面により形成され、前記環形状の面接領域が回転中心軸に垂直な平面上に形成されている請求項10乃至12の何れか1項に記載のオゾン水搬送ポンプ。
【請求項14】
前記等幅領域の径方向の幅を100%としたときに前記狭幅領域の幅が50〜90%となるように形成されており、しかも、内縁側輪郭線における周方向の長さに占める前記等幅領域と前記狭幅領域との比率が5:1〜10:1となるように前記回転環の端面が形成されている請求項12または13に記載のオゾン水搬送ポンプ。
【請求項15】
オゾン水を搬送するための羽根車を備え、該羽根車を回転させる軸体を備えており、前記羽根車を回転させる前記軸体は、電解研磨処理を施した表面上に鉄系酸化物を主とする金属酸化物の被膜が形成されたステンレス鋼で前記外表面が形成されており、前記メカニカルシールが前記軸体に外嵌された状態で備えられている請求項9乃至14の何れか1項に記載のオゾン水搬送ポンプ。
【請求項16】
オゾン水に接触するすべての部分は、電解研磨処理を施した表面上に鉄系酸化物を主とする金属酸化物の被膜が形成されたステンレス鋼で外表面が形成されている請求項15に記載のオゾン水搬送ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−232401(P2008−232401A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77243(P2007−77243)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【出願人】(000226002)株式会社ニクニ (25)
【Fターム(参考)】