説明

オゾン水センサーの洗浄方法

【課題】オゾン水センサーを、常に付着物による汚染のない状態に保つことができ、オゾン水センサーの出力低下を防止することができ、また、確実に洗浄を行うことのできるオゾン水センサーの洗浄方法を提供する。
【解決手段】オゾン水生成装置100に取り付けられて、イオン化傾向が互いに異なる陰極の検出電極201と、陽極の比較電極202と、を備え、オゾン水生成装置100内の流水状態にあるオゾン水中において発生する起電力の大きさに基づいてオゾン水の濃度を検出するオゾン水センサー200の洗浄方法において、オゾン水生成装置100でオゾン水の生成を停止した際に、オゾン水生成装置100内の残留水を排水する排水工程と、排水工程中に、残留水の水質が原料水の状態に戻った時点で、検出電極201に負極、比較電極202に正極の電圧を所定時間印加して検出電極201及び比較電極202の洗浄を行う洗浄工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン水センサーの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン水は、その殺菌性や脱臭性、さらに細胞に与える活性などの多くの分野における寄与が認められ、さらに水に溶解したオゾンは呼吸器への影響がないことから、産業用を初め医療や介護などの分野で広く利用されている。しかしながら、オゾン水の濃度は短時間で減衰することから、使用する現場においての濃度の指示と確認が強く要求されている。
従来、オゾン水の濃度検量法としては、ヨウ化カリウム等の検定薬の色変化を見る滴定法が正規の測定法であったが、薬品や精密なピペットを必要とし、実験室では利用することができるが、一般のオゾン水利用現場では煩雑で実用することができなかった。そのため、オゾン水の紫外線吸収率を調べる紫外線吸収法や、オゾン透過メンブレンを使用したポーラログラフ方式等も利用されている。しかし、紫外線吸収法は極めて高価であり、いずれも一長一短があり、簡単に瞬時にオゾン濃度を知ることは困難とされていた。
【0003】
そこで、簡単にオゾン水濃度を電気信号に変換し、より簡便な電極法が注目されるようになっている。この電極法は、流動しているオゾン水流中に、第一電極と第二電極とを浸し、第一電極を金属銀又は塩化銀によって被覆された金属銀によって構成し、第二電極を、表面にオゾン酸化膜を形成したニッケル・クロム合金によって構成し、第一電極と第二電極との間に発生するオゾン水濃度変化に追従する電圧変化を検知している(例えば、特許文献1参照)。このような電極法のうち、裸電極式は特に構造がシンプルで応答が速いという優れた特徴を持つ。その他、裸電極式の技術としては、特許文献2、3の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−136501号公報
【特許文献2】特許第4397213号公報
【特許文献3】特開平8−304334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記電極法の裸電極式では、電極部が直接オゾン水に晒されるため、使用条件によっては他の方式に比べて早く劣化を起こすことがあるという問題がある。例えば、オゾン水が蒸留水や精製水を原料水とする場合は、オゾン水センサーの検出電極が直接オゾン水に晒されていても検出電極の汚染の心配は無いと考えても良いが、水道水を原料水とするオゾン水では、オゾン水中でセンサーに発生する起電力に伴ってセンサーの検出電極に流れる微弱電流によって、水道水中のカルシウムやマグネシウムが比較電極に引き寄せられて付着し、長い時間をかけて少しずつ劣化(出力低下)を起こすという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、オゾン水センサーを、常に付着物による汚染のない状態に保つことができ、オゾン水センサーの出力低下を防止することができ、また、確実に洗浄を行うことのできるオゾン水センサーの洗浄方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、オゾン水を生成するオゾン水生成装置に取り付けられて、
イオン化傾向が互いに異なる陰極の検出電極と、陽極の比較電極と、を備え、前記オゾン水生成装置内の流水状態にあるオゾン水中において発生する起電力の大きさに基づいてオゾン水の濃度を検出するオゾン水センサーの洗浄方法において、
前記オゾン水生成装置でオゾン水の生成を停止した際に、前記オゾン水生成装置内の残留水を排水する排水工程と、
前記排水工程中に、前記オゾン水生成装置内の残留水の水質が原料水の状態に戻った時点で、前記検出電極に負極、前記比較電極に正極の電圧を所定時間所定時間印加して前記検出電極及び比較電極の洗浄を行う洗浄工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のオゾン水センサーの洗浄方法において、
前記オゾン水生成装置は、陽極電極と陰極電極との間に陽イオン交換膜が狭持されてなる触媒電極を備え、前記陽極電極に原料水を供給し、陰極電極に陰極水を供給するとともに前記陽極電極及び前記陰極電極に直流電圧を印加することによってオゾン水を生成する直接電気分解式の装置であり、
前記オゾン水生成装置において、前記陽極電極及び前記陰極電極への通電を停止した際に、前記排水工程及び前記洗浄工程を自動的に行うことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のオゾン水センサーの洗浄方法において、
前記洗浄工程では、前記検出電極に負極、前記比較電極に正極の2V以下の電圧を1分以下、印加すること特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオゾン水センサーの洗浄方法において、
前記検出電極が、金、もしくは白金又は白金メッキであり、
前記比較電極が、銀の表面に塩化銀又は酸化銀を被覆したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オゾン水の生成を停止した際に、オゾン水生成装置内の残留水を排水し、残留水の水質が原料水の状態に戻った時点で、オゾン水センサーの検出電極が正極、比較電極が負極となるように電圧を所定時間印加してオゾン水センサーの洗浄を行う。つまり、オゾン水の原料水が水道水であった場合に、オゾン水センサーに付着したカルシウムやマグネシウム等が、逆電圧の印加によって水中に溶け出すので、これらカルシウムやマグネシウム等を随時除去することができる。したがって、オゾン水センサーを、常に付着物による汚染のない状態に保つことができ、オゾン水センサーの出力低下を防止することができる。
また、残留水中にオゾン水が残っている状態でオゾン水センサーの洗浄を行う場合には、洗浄後に、残留水中のオゾン水によって再びカルシウム等が付着する可能性があるが、本発明では、残留水を排水して、オゾン水生成装置内の残留水の水質が原料水の状態に戻った時点で洗浄を行うので、再びカルシウム等が付着することもなく、オゾン水センサーの洗浄を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】オゾン水センサーの使用状態を示した模式図である。
【図2】オゾン水センサー及びオゾン水生成装置の概略を模式的に示した縦断面図であり、オゾン水生成装置の初期運転時を示している。
【図3】オゾン水センサー及びオゾン水生成装置の概略を模式的に示した縦断面図であり、オゾン水生成装置の通常運転時を示している。
【図4】オゾン水センサー及びオゾン水生成装置の概略を模式的に示した縦断面図であり、オゾン水生成装置の停止時を示している。
【図5】オゾン水センサー出力とオゾン水生成装置の運転時間の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
[オゾン水センサー]
まず、本発明で使用するオゾン水センサーについて説明する。
図1は、オゾン水センサーの使用状態を示した模式図である。
図1に示すように、オゾン水センサー200は、互いにイオン化傾向の異なる、陰極の検出電極201と、陽極の比較電極202と、を備えている。
オゾン水センサー200は、例えば、後述するオゾン水生成装置100のケーシング1内(図2〜図4参照)に取り付けられて、検出電極201及び比較電極202を、流動するオゾン水又は原料水に接触させる。これによって起電力が発生し、オゾン水のオゾン濃度に比例した強さの電気信号を得て、オゾン水の濃度を測定するものである。
【0013】
検出電極201としては、金又は金メッキ、もしくは白金又は白金メッキからなるものが挙げられる。検出電極201の線径としては、0.4mm〜1mmが好ましい。
【0014】
比較電極202としては、銀線に塩化銀又は酸化銀の被膜を形成したものが挙げられる。比較電極202の線径としては、0.5mm〜1.2mmが好ましい。
また、比較電極202の表面は、導電性の被膜(図示しない)で被膜保護されていることが好ましい。導電性の被膜は、例えば、ナフイオン膜(陽イオン交換膜)の液体を比較電極202の表面に塗布して乾燥したものである。
【0015】
これら検出電極201及び比較電極202は、検出電極201の外側で検出電極201に接触しないようにコイル状に比較電極202が設けられている。
また、検出電極201の一端部にリード線203が接続され、比較電極202の一端部にリード線204が接続されている。
検出電極201に接続されたリード線203及び比較電極202に接続されたリード線204は、接続切り替え部205において、電流計(濃度表示メータ)206の正極207及び負極208、又は、直流電源装置209の負極210及び正極211に接続自在に設けられている。これら電流計206又は直流電源装置209への接続切り替えは、例えば、後述するオゾン水生成装置100の制御部4によって制御されており、自動化されている。
【0016】
電流計206としては、マイクロ・アンペア電流計を使用することができる。さらに、電流計206は、増幅回路212を介して検出電極201及び比較電極202に接続可能とされている。電流計206は、リード線203,204が接続された場合に、検出電極201及び比較電極202で計測した起電力に基づいたオゾン濃度を表示する。
【0017】
直流電源装置209は、オゾン水生成装置100において、オゾン水の生成(触媒電極2(陽極電極22、陰極電極23)への通電)を停止した際に、オゾン水生成装置100内の残留水が排水されて、その後、残留水中の水質が原料水の状態に戻った時点で、リード線203,204が接続された場合に、検出電極201及び比較電極202に逆極性の電圧を印加することによって、オゾン水センサー200の洗浄を行う。
【0018】
[オゾン水生成装置]
次に、本発明で使用するオゾン水生成装置の一例について説明する。
図2〜図4は、オゾン水生成装置の概略を模式的に示した縦断面図である。
オゾン水生成装置100は、原料水及び陰極水が流入されるケーシング1内に触媒電極2を配置して構成したものである。そして、触媒電極2に直流電圧を印加することによって陽極電極22側にオゾン気泡を発生させて、そのオゾン気泡を水に溶解させることによりオゾン水を生成する装置である。
原料水としては、遊離塩素を含まない脱塩素水や精製水、水道水等を使用することができる。特に、本発明では水道水を使用した場合に、オゾン水センサー200に付着しやすいカルシウムやマグネシウム等を除去できる点で好適である。
陰極水としては、例えば食塩水、塩化カリウム溶液、塩化カルシウム溶液などの電解液を使用することができる。
ケーシング1は、上下に長尺でその上下両端が閉塞された直方体状をなしている。ケーシング1の下面に、ケーシング1内に原料水、陰極水を流入するための流入路11a,1
1bが設けられ、ケーシング1の上面に、生成された陽極電極22側のオゾン水並びに陰
極電極23側の陰極水を流出するための流出路12a,12bが設けられている。
【0019】
陽極電極22側の流入路11aは、例えば、原料水が貯留されたタンクに接続された定
吐出圧の小型ポンプや、水道栓に連結されている。
また、陽極電極22側の流出路12aには、オゾン水センサー200が取り付けられている。
オゾン水センサー200は、上述したように、オゾン水生成装置100の運転開始(電極22,23への通電開始)時には、検出電極201及び比較電極202の各リード線203,204が電流計206に接続されており、生成されるオゾン水の濃度を常時検出する。そして、装置100の運転を停止(電極22,23への通電を停止)した際に、残留水が排水され、残留水中の水質が原料水の状態に戻った時点で、検出電極201及び比較電極202の各リード線203,204が直流電源装置209に接続され、直流電源装置209によって逆極性の電圧が印加されるようになっている。
【0020】
陽極電極22側の流出路12aは、例えば、3方向電磁弁3を介して出口の一方がオゾン水を吐出する吐水ライン31に繋がれ、他方が排水ライン32に繋がれている。吐水ライン31は、ケーシング1内で生成されたオゾン水を貯留するタンク(図示しない)やオゾン水を噴出させるノズル等(図示しない)に繋がれている。
3方向電磁弁3は、装置100の運転開始(電極22,23への通電開始)から、オゾン水の濃度が設定濃度になるまでは、排水ライン32側を開放して初期のオゾン水を排水し(図2参照)、オゾン水の濃度が設定濃度に達すると、排水ライン32側を閉鎖して吐水ライン31側を開放して設定濃度のオゾン水をタンクやノズルに送る(図3参照)。さらに、装置100の運転停止(電極22,23への通電停止)によって、吐水ライン31側を閉鎖して排水ライン32側を開放し、設定濃度未満のオゾン水(残留水)を排水するようになっている(図4参照)。
陰極電極23側の流出路12bは、陰極電極23側で生成された陰極水を一旦排出させ
た後、再び流入路12aを介して陰極電極23側に流入させて循環させる循環経路25に
接続されている。
また、二つの流入路11a,11bの間のケーシング1の内壁面には、後述する陽イオン交換膜21の上端部が挿入される挿入孔13が形成され、二つの流出路12a,12bの間のケーシング1の内壁面にも、陽イオン交換膜21の下端部が挿入される挿入孔14が形成されている。
ケーシング1内には、流入路11a,11bから原料水が流入し、流入路11a,11bから流出路12a,12bへと水流が発生している。
【0021】
循環経路25は、陰極電極23側の流出路12bと陰極電極23側の流入路11bとを繋いだ経路である。循環経路25の途中には、水を循環させるポンプ26と、水を一時的に貯留するタンク27が設けられている。
【0022】
タンク27には、陰極電極23側から排出された陰極水を例えば、20〜25℃程度に冷却するための冷却器271が設けられている。タンク27及び冷却器271としては、周知の小型チラー等を使用することができる。
【0023】
このように陰極電極23側の流出路12b、タンク27、ポンプ26、陰極電極23側
の流入路11bが、順に循環経路25によって接続されており、循環経路25内を陰極水
が循環するようになっている。
【0024】
触媒電極2は、ケーシング1内の略中央部に配置されて、陽イオン交換膜21と、陽イオン交換膜21の両面のうち一方の面に圧接された陽極電極22と、他方の面に圧接された陰極電極23とを備えている。陽イオン交換膜21は、上端部が挿入孔13に嵌め込まれ、下端部が挿入孔14に嵌め込まれて固定されている。さらに、ケーシング1の内壁面のうち陽極電極22側を向く面には凹部が形成されて、この凹部内に陽極電極22を保持する保持板15が取り付けられて、陽極電極22が保持板15に保持されている。同様に、ケーシング1の内壁面のうち陰極電極23側を向く面にも凹部が形成されて、この凹部内に陰極電極23を保持する保持板16が取り付けられ、陰極電極23が保持板16に保持されている。このように、ケーシング1内に陽イオン交換膜21と、陽極電極22及び陰極電極23とを配置することにより、陽イオン交換膜21によって陽極電極22側と陰極電極23側が分離され、陽イオン交換膜21の外周をケーシング1に固定でき、原料水、オゾン水並びに陰極水などが外部に漏れないように密閉されている。また、保持板15,16によって陽極電極22及び陰極電極23が陽イオン交換膜21側に適度に圧接されている。そして、流入路11a,11bから流入した原料水がそれぞれ陽極電極22と陰極電極23に連続的に接触するようになっている。
また、陽極電極22と陰極電極23との間には、オゾン水生成装置用電源装置(図示しない)の出力端24が電気的に連結され、直流電圧が印加されるように構成されている。印加する直流電圧は、例えば6〜24ボルトが好ましい。
【0025】
制御部4は、オゾン水生成装置用電源装置のON/OFFの動作に伴って、オゾン水センサー200のリード線203,204の接続の切り替えを行うよう制御している。
具体的には、オゾン水生成装置用電源装置をONとすると、陽極電極22及び陰極電極23への通電を開始し、オゾン水センサー200の検出電極201のリード線203を電流計206の正極207に接続し、比較電極202のリード線204を電流計206の負極208に接続するように制御する。これによってオゾン水センサー200は、生成されるオゾン水の濃度を検出する。
そして、オゾン水生成装置用電源装置をOFFとすると、陽極電極22及び陰極電極23への通電を停止し、これに伴って残留水が排水され、残留水中の水質が原料水の状態に戻った時点で(オゾン水センサー200での反応がなくなって原料水の濃度状態に戻ったら)、各リード線203,204と電流計206との接続を直流電源装置209に切り替えて、検出電極201のリード線203を直流電源装置209の負極210に接続し、比較電極202のリード線204を直流電源装置209の正極211に接続するように制御する。これによって直流電源装置209が、逆極性の電圧を印加することで、オゾン水センサー200の洗浄を行う。
そして、再び、オゾン水生成装置用電源装置をONとすると、陽極電極22及び陰極電極23への通電を開始し、検出電極201及び比較電極202の接続を直流電源装置209から電流計206に切り替えるように制御する。
【0026】
また、制御部4は、オゾン水生成装置用電源装置のON/OFFの動作に伴って、3方向電磁弁3の切り替えを行うよう制御している。
具体的には、オゾン水生成装置用電源装置をONとすると、3方向電磁弁3の排水ライン32を開放し吐水ライン31を閉鎖して、原料水及び初期のオゾン水(低濃度オゾン水)を排水する(図2参照)。オゾン水センサー200による検出濃度が設定濃度に達すると、3方向電磁弁3の排水ライン32を閉鎖して吐水ライン31を開放して、オゾン水を吐水ライン31に流す(図3参照)。さらに、オゾン水生成装置用電源装置をOFFとすると、3方向電磁弁3の排水ライン32を開放し吐水ライン31を閉鎖して、残留水を排水する(図4参照)。
以上のように制御部4は、オゾン水センサー200のリード線203,204の接続切り替えと、3方向電磁弁3の切り替えを適宜制御している。
【0027】
陽イオン交換膜21としては、従来公知のものを使用することができ、発生するオゾンに耐久性の強いフッ素系陽イオン交換膜を使用することができ、例えば厚さ100〜300μmが好ましい。
【0028】
陽極電極22は、陽イオン交換膜21を全面的に覆い隠すように密着されるものではなく、多数の通孔を設けて、陽イオン交換膜21に接触部と非接触部とを有して重ねられている。すなわち、陽極電極22はグレーチング状又はパンチングメタル状とすることが好ましい。なお、図2〜図4では陽極電極22がグレーチング状の場合を示している。具体的に、グレーチング状とは線材が一体化した格子状で、パンチングメタル状とは金属板に多数の通孔を形成した多孔板状である。
【0029】
陽極電極22としては、オゾン発生触媒機能を有する材料を使用する。具体的には、β−二酸化鉛、白金、白金族(パラジウム、ロジウム、ルテニウム)、金、カーボン(黒鉛)、ダイアモンド等が挙げられ、これらの貴金属の中でも、安定性が良い点で白金、金又はその被覆金属を使用することが好ましく、特にチタンに白金を被覆した金属を使用すると製品コストを安価に抑えることができる。被覆処理としては、例えばメッキや熱着等により行うことができる。
【0030】
このようにグレーチング状の陽極電極22とすることによって、陽極電極22を構成する部材の交点部位が尖って外面に突出し、水流と接触して渦流を生じ、陽極電極22で発生したオゾンの微泡を巻き込んで溶解を早めることができる。
【0031】
陰極電極23としては、オゾン生成触媒機能を有する材料を使用する。具体的には、上述した陽極電極22と同様の貴金属を使用することができ、安定性が良い点で白金、金又はその被覆金属を使用することが好ましく、特にチタンに白金を被覆した金属を使用すると製品コストを安価に抑えることができる。そして、陰極電極23は陽イオン交換膜21に接触するように配置されている。
また、陰極電極23も陽極電極22と同様にグレーチング状とすることが好ましく、特に、陰極電極部23は陽極電極22よりも目の粗さが粗くなるように形成されていることが好ましい。
以上の陽イオン交換膜21、陽極電極22及び陰極電極23は平板状に形成されて触媒電極2とされている。触媒電極2はケーシング1内の保持板15,16で圧接保持されている。
【0032】
次に、オゾン水生成装置100及びオゾン水センサー200の動作とともにオゾン水センサー200の洗浄方法について説明する。
まず、オゾン水生成装置用電源装置がONとされてオゾン水生成装置100が運転開始すると、陽極電極22側の流入路11aから原料水(水道水)をケーシング1内に流入させるとともに、食塩水などの電解液を陰極電極23側の流入路11bからケーシング1内に流入させる。そして、これら原料水及び陰極水を、陽極電極22、陰極電極23の各面に連続接触させる。同時に、陽極電極22及び陰極電極23間に所定の電圧を印加する。この通電により原料水が電気分解されて、原料水中の水素が陽極電極22側から陽イオン交換膜21中を通過して陰極電極23側へと加速して移動する。その結果、陽極電極22側にはオゾン気泡が発生し、陰極電極23側には水素気泡が発生する。
【0033】
ここで、陽極電極22側では原料水はわずかな陽極電極22の凹凸によって流れの方向が複雑に変わり渦流となる。そのため、陽極電極22側では、発生したオゾン気泡をいち早く水中に取り込んで溶解させることによってオゾン水を生成し、陽極電極22と陽イオン交換膜21との間(正確には陽極電極22と陰極電極23との間)に電流が多く流れる状態を確保することになる。
このようにしてオゾン水が生成される。
【0034】
一方、陰極電極23側においては、水素気泡が発生し、流出路12bから陰極水ととも
に排出される。排出された陰極水は循環経路25内を流通して、タンク27内に一時貯留される。このとき冷却器271によって冷却された後、さらにポンプ26によって再び陰極電極23側の流入路11bからケーシング1内の陰極電極23側に供給され、順次、陰
極水は循環する。
【0035】
上述のようにしてオゾン水が順次生成されている間、オゾン水センサー200の検出電極201及び比較電極202は電流計206に接続されており、オゾン水センサー200は、常時オゾン水濃度を検出している。そして、運転開始から一定時間は、オゾン水のオゾン濃度が低濃度であるので、図2に示すように、吐水ライン31が閉鎖され排水ライン32が開放されて、陽極電極22側の流出路12aから排水ライン32を介して排水される。
その後、オゾン水センサー200で検出した濃度が設定濃度に達すると、図3に示すように、排水ライン32が閉鎖され、吐水ライン31が開放されるので、オゾン水は吐水ライン31からオゾン水貯留タンク等に貯留される。
さらにその後、オゾン水生成装置用電源装置をOFFとすると、陽極電極22及び陰極電極23への通電が停止され、オゾン水センサー200での検出濃度が設定濃度から低下した場合に、吐水ライン31が閉鎖され、排水ライン32が開放されるので、低濃度のオゾン水(残留水)は排水ライン32から排水される(排水工程)。
その後、オゾン水センサー200での検出濃度が元の原料水の濃度に達すると、オゾン水センサー200の検出電極201及び比較電極202の接続が電流計206から切り替えられて直流電源装置209に接続される(図4参照)。直流電源装置209は、オゾン水センサー200の検出電極201が負極210となるように、比較電極202が正極211となるように、電圧を所定時間印加し、オゾン水センサー200の洗浄を行う(洗浄工程)。
このとき印加する電圧としては、2V以下、好ましくは1V以下である。また、印加時間としては1分以下、好ましくは30秒以下である。なお、印加する電圧を上げれば印加時間を短くすることができる。
【0036】
このようにしてオゾン水センサー200の検出電極201に負極210、比較電極202に正極211の電圧を印加することによって、各電極201,202に付着していた原料水中のカルシウムやマグネシウム等の不純物が除去される。除去されたカルシウムやマグネシウム等の不純物は、開放されている排水ライン32を介して、排水される。
逆極性の電圧を印加して所定時間経過したら、再び、オゾン水センサー200の検出電極201及び比較電極202の接続が直流電源装置209から切り替えられて電流計206に接続される。
【0037】
その後、再びオゾン水生成装置用電源装置をONとし、陽極電極22及び陰極電極23への通電が開始されると、オゾン水が生成され、オゾン水センサー200はオゾン濃度を検出する。検出したオゾン濃度が設定濃度となったら、排水ライン32を閉鎖して吐水ライン31を開放して、オゾン水をタンクやノズルに送る。
このようにして一連の動作が繰り返し行われ、オゾン水生成装置100での通電が停止されて、残留水が排水され、残留水の水質が原料水の状態に戻った時点で、オゾン水センサー200が洗浄される。そして、洗浄により除去されたカルシウム等の不純物も同時に排水されるようになっている。
【0038】
以上、本発明の実施形態によれば、オゾン水の生成を停止した際に、オゾン水生成装置100内の残留水を排水し、残留水の水質が原料水の状態に戻った時点で、オゾン水センサー200の検出電極201に負極210、比較電極202に正極211の電圧を所定時間印加してオゾン水センサー200の洗浄を行う。つまり、オゾン水の原料水が水道水であった場合に、オゾン水センサー200に付着したカルシウムやマグネシウム等が、逆電圧の印加によって水中に溶け出すので、これらカルシウムやマグネシウム等を随時除去することができる。したがって、オゾン水センサー200を、常に付着物による汚染のない状態に保つことができ、オゾン水センサー200の出力低下を防止することができる。
また、残留水が残っている状態で洗浄を行う場合には、洗浄後に残留水中のオゾン水によって再びカルシウム等が付着する可能性があるが、本発明では、残留水を排水して、オゾン水生成装置100内の残留水の水質が原料水の状態に戻った時点で洗浄を行うので、再びカルシウム等が付着することなく、オゾン水センサー200の洗浄を確実に行うことができる。
また、検出電極201及び比較電極202に逆極性の電圧を印加するだけで、オゾン水センサー200を装置100から取り外して洗浄するといった作業を行うことなく、容易にかつ短時間で洗浄することができる。
また、オゾン水生成装置100において、陽極電極22及び陰極電極23への通電を停止した際に、排水工程及び洗浄工程を自動的に行うので、オゾン水センサー200の洗浄忘れがなく、確実に洗浄することができる。
【0039】
なお、上記実施の形態は、上述したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記オゾン水生成装置100の形状、構成等は上述したものに限らず、適宜変更しても良い。例えば、上記実施形態のオゾン水生成装置100は、ケーシング1内に原料水及び陰極水を各流入口11a,11bから供給してオゾン水を生成する構成としたが、その他に、図示しないが、原料水を溜めた水槽内に触媒電極を配置し、水槽内にスターラー等の攪拌手段を設けて水槽内を流動させつつ、触媒電極に電圧を印加してオゾン水を生成する構成としても良い。この場合においても、水槽内にオゾン水センサーを配置して、同様の方法でオゾン水センサーを洗浄することができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明のオゾン水センサー200の洗浄方法による効果について実施例を挙げて説明する。
[実施例]
オゾン水センサーの検出電極として金線、比較電極として銀線に酸化銀のメッキを施したものを使用した。比較電極は、図1に示す通りコイル形状のものを使用した。
オゾン水生成装置において、原料水は総硬度が50mg/L、20〜30℃の水道水とし、生成したオゾン水の濃度は5ppm、流量は5L/minとした。
このようなオゾン水生成装置は2〜5時間毎に運転を停止し、全体で50時間使用した。そして、装置の運転を停止する度に、オゾン水センサーに逆極性の電圧を印加してオゾン水センサーに付着したカルシウム等の不純物をその都度除去した。逆極性の電圧は0.5Vでそれぞれ10秒間印加した。このときのオゾン水センサー出力とオゾン水生成装置の運転時間の関係を図5に示した。
【0041】
[比較例]
オゾン水センサーの検出電極、比較電極は、実施例と同様のものを使用した。また、オゾン水生成装置において、原料水、オゾン水の濃度、流量は実施例と同様である。
そして、オゾン水生成装置は2〜5時間毎に運転を停止し、全体で50時間使用したが、その際にオゾン水センサーの洗浄は全く行わなかった。このときのオゾン水センサー出力とオゾン水生成装置の運転時間の関係を図5に示した。
【0042】
図5に示す結果より、オゾン水生成装置の運転停止毎にオゾン水センサーに逆極性の電圧を印加して洗浄を行った実施例では、50時間運転経過後もセンサー出力が低下しなかった。一方、全く洗浄を行わなかった比較例では、オゾン水生成装置の運転毎にセンサー出力が明らかに低下した。したがって、オゾン水センサーに逆極性の電圧を印加することで、カルシウム等が除去されることが認められる。
【符号の説明】
【0043】
2 触媒電極
21 陽イオン交換膜
22 陽極電極
23 陰極電極
100 オゾン水生成装置
200 オゾン水センサー
201 検出電極
202 比較電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン水を生成するオゾン水生成装置に取り付けられて、
イオン化傾向が互いに異なる陰極の検出電極と、陽極の比較電極と、を備え、前記オゾン水生成装置内の流水状態にあるオゾン水中において発生する起電力の大きさに基づいてオゾン水の濃度を検出するオゾン水センサーの洗浄方法において、
前記オゾン水生成装置でオゾン水の生成を停止した際に、前記オゾン水生成装置内の残留水を排水する排水工程と、
前記排水工程中に、前記オゾン水生成装置内の残留水の水質が原料水の状態に戻った時点で、前記検出電極に負極、前記比較電極に正極の電圧を所定時間所定時間印加して前記検出電極及び比較電極の洗浄を行う洗浄工程と、を備えることを特徴とするオゾン水センサーの洗浄方法。
【請求項2】
前記オゾン水生成装置は、陽極電極と陰極電極との間に陽イオン交換膜が狭持されてなる触媒電極を備え、前記陽極電極に原料水を供給し、陰極電極に陰極水を供給するとともに前記陽極電極及び前記陰極電極に直流電圧を印加することによってオゾン水を生成する直接電気分解式の装置であり、
前記オゾン水生成装置において、前記陽極電極及び前記陰極電極への通電を停止した際に、前記排水工程及び前記洗浄工程を自動的に行うことを特徴とする請求項1に記載のオゾン水センサーの洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄工程では、前記検出電極に負極、前記比較電極に正極の2V以下の電圧を1分以下、印加すること特徴とする請求項1又は2に記載のオゾン水センサーの洗浄方法。
【請求項4】
前記検出電極が、金、もしくは白金又は白金メッキであり、
前記比較電極が、銀の表面に塩化銀又は酸化銀を被覆したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のオゾン水センサーの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−145436(P2012−145436A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3895(P2011−3895)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000226150)日科ミクロン株式会社 (29)
【出願人】(591145874)水青工業株式会社 (10)