説明

オゾン生成装置

【課題】高効率にオゾンを発生させる。
【解決手段】オゾン生成装置は電極部10を含んでいる。電極部10は、陽極1、陰極2、及びイオン透過膜3を備えている。陽極1は、基材と、基材の表面にコーティングされた導電性ダイヤモンド膜とにより構成されている。陰極2は、ステンレスワイヤにより構成されている。陰極2の表面は、帯状のイオン透過膜3によって螺旋状に巻き付けられている。そして、イオン透過膜3が覆われた陰極2を陽極1に対して螺旋状に巻き付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水または電解液中で、導電性ダイヤモンド膜の電極を備える電極部に電圧を印加することにより、殺菌及び滅菌等に使用されるオゾン水を高効率に生成する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オゾン(O)は酸化性が強い物質で殺菌及び滅菌、脱色、並びに脱臭作用を有するため、オゾンガスやオゾンが溶解した水(オゾン水)は半導体、医療、及び食品等の広範な分野で工業利用されている。オゾン自体は不安定な物質で、2O→3Oの反応で自然に分解して酸素(O)となるので、全く大気汚染がないという特徴がある。
【0003】
特許文献1〜6には、固体電解質膜を陽極と陰極とで挟んだ構造の電解セルに水を流して電気分解させる電極を持つオゾン生成装置が開示されている。具体的には、特許文献1には、電極基体とフッ素樹脂を有する二酸化鉛層との間に導電性電極層が形成された水電解用電極が開示されている。
【0004】
特許文献2には、オゾン発生触媒機能を有した貴金属により陽極を構成したオゾン水製造装置が開示されている。特許文献3には、チタンからなる多孔質体で形成された電極基材と、白金からなる中間層と、クロム−白金酸化物を含む複合組成物からなる電極触媒とを備える陽極が開示されている。このように、特許文献1〜3はいずれも、導電性ダイヤモンド膜を含む電極が用いられていない。
【0005】
特許文献4〜6では導電性ダイヤモンド膜が電極として用いられている。特許文献7はこれらを応用したものである。
【0006】
特許文献4、5では固体高分子膜の両側に導電性ダイヤモンド膜の構造を持つ陽極と陰極とを配置し、これに水を導入して電気分解を行うオゾン生成装置が開示されている。しかしながら、大面積基材に対して、十分な密着性を有する導電性ダイヤモンド膜を均一にコーティングすることが技術的に困難であるため、特許文献4、5の方式では装置の大型化が難しい。したがって、特許文献4、5の方式では、多量のオゾン水を連続して生成する必要があるため工業的に利用するには問題がある。
【0007】
特許文献6では棒状基材に導電性ダイヤモンド膜(例えばホウ素(B)を高濃度に含有した気相合成ダイヤモンド膜)をコーティングしたものを陽極とし、これに高分子電解質膜であるナフィオン(登録商標)の帯を巻きつけ、更にこれを白金線で固定する電解ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−17689号公報
【特許文献2】特開平8−134677号公報
【特許文献3】特開2002−80986号公報
【特許文献4】特開2007−44630号公報
【特許文献5】特開2010−37570号公報
【特許文献6】特許第4410155号
【特許文献7】特許第3501552号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、i)特許文献6の構造では、オゾンを生成する導電性ダイヤモンド膜の表面が高分子電解質膜に覆われることになり、導電性ダイヤモンド膜の有効面積を減少させてしまう。このため、オゾン生成効率が低いという問題がある。また、ii)特許文献6では、電解ユニットの長手方向に沿って水を流し導電性ダイヤモンド膜表面からオゾンを発生させている。したがって、導電性ダイヤモンド膜に巻き付けられたナフィオンとワイヤ状陰極との複雑な構造がオゾンを発生させる有効な水流を作らず、溶液の攪拌効果が低下する。これにより、電極界面の電気2重層で発生した活性種の効率的な輸送が妨げられ、オゾン同士が反応してOになり、水流の出口ではオゾン濃度が低下してしまうという問題が生じる。
【0010】
本発明の目的は、従来に比べて高効率にオゾンを発生させることができるオゾン生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明によるオゾン生成装置は、水又は電解溶液に電極部を浸漬し、前記電極部に電圧を印加することでオゾン水を生成するオゾン生成装置であって、前記電極部は、導電性ダイヤモンド膜が表面に形成された第1電極と、前記第1電極に対向する第2電極と、前記第2電極を覆うイオン透過膜とを備える。
【0012】
この構成によれば、導電性ダイヤモンド膜が表面に形成された陽極の表面が完全に露出されるので、オゾン水の発生に有効な表面積が拡大され、オゾン水の生成効率を大幅に向上させることができる。また、陰極がイオン透過膜で覆われているため、陽極の表面近傍の流水の低下が抑制され、よりスムースな水流が得られ、水の攪拌効果により高効率にオゾン水を発生することができる。
【0013】
なお、本オゾン生成装置は、運転条件を変えることによりオゾンガスを高効率に発生させることも可能であり、オゾンガス発生装置としての用途を妨げるものではない。また、オゾン発生の副産物として生じる水素を捕集できる電極構造のため、水素発生装置としての用途も妨げるものではない。
【0014】
(2)前記第2電極は、帯状の前記イオン透過膜により巻き付けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、イオン透過膜に第2電極を容易に覆わせることができる。
【0016】
(3)前記イオン透過膜は、前記第2電極を覆う筒体で構成され、前記筒体は、前記第2電極の長手方向に沿って一定の間隔を設けて複数配列されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、複数の筒体に第2陰極を挿入することで、イオン透過膜に第2電極を容易に覆わせることができる。
【0018】
(4)前記第1電極は、陽極であり、前記第2電極は、陰極であることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、表面に導電性ダイヤモンド膜が形成された陽極と、イオン透過膜で覆われた陰極とを持つ電極部によりオゾン水を生成することができる。
【0020】
(5)前記電極部は、前記第1及び第2電極を収納し、前記水又は電解溶液が流される電気絶縁性のホルダを更に備えることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、ホルダ内に水又は電解溶液が流されるため、効率良くオゾン水を生成することができる。
【0022】
(6)前記ホルダは、並列接続された複数の電極部を収納することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、1つのホルダに複数の電極部が収納されたものを1つのカートリッジとして提供することができる。
【0024】
(7)前記陰極より生成される気体は、収集されて再利用されることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、陰極に生成された気体を無駄なく使用することができる。
【0026】
(8)前記ホルダは、複数個配置されていることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、あるホルダに収納された電極部が破損した場合、他のホルダに収納された電極部によりオゾン水を生成させることができる。
【0028】
(9)前記電極部は、印加される電圧が一定期間中断されることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、電圧が一定期間中断されるため、劣化した電極部、特にイオン透過膜などの電解質膜の性能を回復させることができる。
【0030】
(10)前記第1電極は、平板状であり、前記第2電極は、前記イオン透過膜を介して前記第1電極に接触されていることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、第1電極が平板状に構成されているため、第1電極の表面の露出部分を増大し、オゾン水を効率良く生成することができる。
【0032】
(11)前記第2電極は、複数であることが好ましい。この構成によれば、第1電極の表面に第2電極を載置して電極部を構成することができる。
【0033】
(12)前記第1電極は、前記第2電極を介して複数積層されていることが好ましい。
【0034】
この構成によれば、電極部を3次元的に構成することができ、高密度に第1電極及び第2電極を配置することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、導電性ダイヤモンド膜が表面に形成された陽極の表面が完全に露出されるので、オゾン水の発生に有効な表面積が拡大され、オゾン水の生成効率を大幅に向上させることができる。また、陰極がイオン透過膜で覆われているため、イオン透過膜により電位を与えられて溶液に接するイオン透過膜の表面積が大きくなり、イオン透過膜表面で有効にOHイオンを生成できる。その結果、陽極の表面近傍の流水の低下が抑制され、よりスムースな水流が得られ、水の攪拌効果により高効率にオゾン水を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(A)は本発明の実施の形態によるオゾン生成装置の電極部の側面図であり、(B)は図1(A)の丸枠部分の断面図である。
【図2】図1に示す電極部を実際に試作したときの写真図である。
【図3】本発明の実施の形態による電極部の他の例を示した図である。
【図4】本発明の実施の形態によるオゾン生成装置に用いられるイオン透過膜の他の例を示した図である。
【図5】本発明の実施の形態によるオゾン生成装置の全体構成図である。
【図6】本発明の実施の形態による電極部10の更なる他の例を示した図である。
【図7】飽和カロメル電極を参照電極とし、0.1Mの硫酸ナトリウム溶液を用いた場合の、導電性ダイヤモンド電極と白金電極とのサイクリックボンタンメトリーの測定結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態による電極部と従来の電極部との効果の差を説明する図であり、(A)は本発明の実施の形態による電極部の拡大断面図であり、(B)従来の電極部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態によるオゾン生成装置について説明する。一般に水中に一対の陽極及び陰極を入れ電圧を印加すると、陽極では酸素発生反応(2HO→O+4H+4e)とオゾン発生反応(3HO→O+6H+6e)とが並行して起こる。ここでeは電子を表す。発生したオゾンは水に溶解するが一部はガスとして発生する場合もある。またこれらの電極反応で発生した水素イオン(H)は水中を拡散して陰極に集められるか、イオン透過膜を通過して陰極に達し、2H+2e→Hの反応により水素ガスとなる。従って、陽極と陰極とからは各々酸素ガス及び水素ガスの気泡が発生する場合がある。
【0038】
陽極として導電性ダイヤモンド膜を用いると、金属の陽極等と比較してオゾン発生効率が格段に向上することが知られており、オゾン発生用の電極として優れている。また、ダイヤモンド膜は、メタン及び水素の混合ガスを原料ガスとして、熱フィラメント化学気相蒸着法(CVD法)やマイクロ波プラズマCVD法等の方法により基材上にコーティングできる。このとき、原料ガス中にジボラン(B)を添加するとボロン(B)原子がダイヤモンド中に取り込まれ、ダイヤモンドはp形半導体特性を示すことが知られている。特にボロン(B)原子が高濃度(1020〜1022/cm)に取り込まれた場合には、ダイヤモンドは金属的な電気伝導特性を示し化学電極に適応可能であることも既に良く知られている。
【0039】
さて、特許文献6では棒状基材に導電性ダイヤモンド膜(例えばホウ素(B)を高濃度に含有した気相合成ダイヤモンド膜)をコーティングしたものを陽極とし、これに高分子電解質膜であるナフィオン(デュポン社の商品名)の帯を巻きつけ、更にこれを白金線で固定する電解ユニットが開示されている。しかしながら、前記の通り、この構造では導電性ダイヤモンド表面が高分子電解膜で覆われてオゾン発生効率が低下し、さらにスムースな水流が妨げられるという問題があった。
【0040】
本実施の形態では、図1に示すように、導電性ダイヤモンド膜が表面に形成された陽極1と、その陽極1に対向する陰極2とを備え、陰極2の周囲にイオン透過膜3を配置したことが最大の特徴である。
【0041】
これにより、導電性ダイヤモンド膜の表面はナフィオン膜との線状の接触面以外は露出されるので、オゾン水発生に有効な表面積が拡大され、オゾン水の生成効率を大幅に向上させることができる。また、陰極2がイオン透過膜3で覆われているため、イオン透過膜3により電位を与えられて溶液に接するイオン透過膜3の表面積が大きくなり、イオン透過膜3の表面で有効にOHイオンを生成できる。その結果、水の攪拌効果により高効率なオゾンの発生を行うことができる。
【0042】
本実施の形態において、イオン透過膜とは高分子電解質膜や固体高分子膜等と呼ばれるものと同様の機能を有するもので、上記水素イオンを透過でき、更に陰極と陽極との間で電気的絶縁性を確保できるものである。具体的には、イオン透過膜としては、プロトン透過膜が含まれる。
【0043】
図1(A)は本発明の実施の形態によるオゾン生成装置の電極部10の側面図であり、図1(B)は図1(A)の丸枠部分の断面図である。電極部10は、陽極(第1電極の一例)1、陰極2(第2電極の一例)、及び透過膜ホルダ3を備えている。陽極1は、基材と、基材の表面にコーティングされた導電性ダイヤモンド膜とにより構成されている。
【0044】
陽極1の断面形状及びその長さには特段の制限は無いが、平面形状、円柱状、又は楕円状を陽極1の断面形状として用いることが好ましい。この場合、導電性ダイヤモンド膜の均一なコーティングが容易となる。
【0045】
陰極2は、例えばステンレスワイヤにより構成されている。イオン透過膜3は、陰極2の表面を覆っている。この点が、図1の電極部10の特徴である。ここで、イオン透過膜3を中空状にし、この中に陰極2を入れても良い。また、イオン透過膜3は、陰極2の表面にコーティングされてもよい。また、イオン透過膜3を帯状にし、陰極2に対して螺旋状に巻き付けてもよい。そして、陽極1の表面には、表面がイオン透過膜3で覆われた陰極2を螺旋状に巻き付けられている。図1の例では、陰極2は一定の隙間を空けて陽極1に巻き付けられているが、これに限定されず、隙間を空けることなく陰極2に密に巻き付けられても良い。
【0046】
なお、イオン透過膜3としては、ナフィオン117(登録商標)、ナフィオン115(登録商標)、ナフィオン325(登録商標)、又はセレミオン(登録商標)等を採用することができる。
【0047】
このように構成された電極部10に水流4を流す。すると、陽極1において、酸素発生反応及びオゾン発生反応が並行して起こり、オゾン水が発生する。
【0048】
後述の実施例に示すように、発明者らは、特許文献6に提示されている構造と比較して、図1に示す電極部10の構造の方が、オゾン発生効率が格段に高いことを実験的に確かめた。また、図1の電極部10の構造は特許文献6に提示されている構造と比較して単純なので、水流4を妨げることが少なく、よりスムースにオゾン水を排出することができる。また、イオン透過膜3は柔軟であるので、陽極1に接触しない部分が生じるが、多少の隙間が空いていてもオゾン発生効率には影響を与えない。イオン透過膜3は陽極1に概ね接していれば良く、必ずしも全面が密着している必要はない。
【0049】
図2は、図1に示す電極部10を実際に試作したときの写真図である。図2の電極部10において、陽極1は、基材としてのチタン(Ti)棒と、基材に均一にコーティングされた導電性ダイヤモンド膜とにより構成されている。陽極1の表面には陰極2が螺旋状に巻かれている。図2の例では、陰極2は、ステンレスワイヤからステンレスワイヤオン透過膜3に入れられている。パイプ状のイオン透過膜3としては、例えば、ナフィオン117(登録商標)からなるパイプ状の部材を採用すればよい。
【0050】
図1に示す電極部10は、陽極1に陰極2を螺旋状に巻き付けて構成したが、本発明はこれに限定されず、図3のように構成してもよい。図3は、本発明の実施の形態による電極部10の他の例を示した図である。なお、図3は、電極部10を長手方向と直交する面で切ったときの断面図を示している。
【0051】
図3の例では、陰極2は、直線的なステンレスワイヤにより構成され、パイプ状のイオン透過膜3に入れられている。そして、陰極2は、その長手方向が陽極1の長手方向と平行、かつ、イオン透過膜3が陽極1に接するように配置されている。図3の例では、陰極2は陽極1に対して一定の間隔を設けて4本配置されているが、本発明はこれに限定されず、1本以上であればよい。また、図3の例では、水流4は例えば、電極部10の長手方向を向く。
【0052】
また、図3の電極部10はホルダ5により覆われている。ここで、ホルダ5は、長手方向が陽極1及び陰極2と平行な円筒状である。
【0053】
図3に示す電極部10を複数配置してオゾン生成装置を構成してもよい。この場合、各電極部10の長手方向が水流4の方向と平行になるように各電極部10を配置すればよい。なお、図3では、一部の陰極2はその表面を覆うイオン透過膜3が陽極1に接して図示されているが、残りの陰極2はその表面を覆うイオン透過膜3が陽極1から多少離れて図示されている。これは、上述した、“イオン透過膜3は陽極1に概ね接していれば良く、必ずしも全面が密着している必要はない”ことを再現するためである。
【0054】
また、本実施の形態において、陰極2を図4に示すように構成してもよい。図4は、本発明の実施の形態によるオゾン生成装置に用いられるイオン透過膜3の他の例を示した図である。図4の例では、イオン透過膜3は、陰極2を覆う筒体31で構成されている。ここで、筒体31は、陰極2の長手方向に沿って一定の間隔Dを設けて複数配列されている。図4の例では、陰極2は、例えば直線状の金属ワイヤにより構成されている。また、筒体31の間には透水性のスペーサ6が配置されている。つまり、陰極2の周囲にはスペーサ6と筒体31とが交互に配置されている。スペーサ6を配置することで、i)電極部10の作成工程を簡略化することができるとの効果が得られる。つまり、長い陰極2を円筒状のイオン透過膜3に挿入することは容易ではない。そこで、陰極2を適宜スペーサ6で区切ることで、陰極2がイオン透過膜3に挿入されやすくなり、電極部10の組み立てが容易になる。
【0055】
また、スペーサ6を配置することで、ii)陰極2で発生した水素を排出することができるとの効果が得られる。例えば陰極2に発生した水素を吸引により回収することが困難である場合、陰極2で発生した水素をスペーサ6の部分で捕集して、排出することができる。
【0056】
スペーサ6は、1つの間隔Dにつき2個、陰極2を挟むように配置されている。なお、間隔Dの値としては、例えば2mmが採用される。
【0057】
上記のように陽極1は、基材の表面に導電性ダイヤモンド膜がコーティングして構成されている。そのため、長時間電気分解を行うと導電性ダイヤモンド膜の表面に、水中に微量に存在する陰イオンを構成する原子が付着し、オゾン発生効率が低下する虞がある。
【0058】
この場合、一時的に陽極1及び陰極2の極性を逆転させればよい。つまり、陽極1にマイナス、陰極2にプラスの電圧を印加すればよい。これにより、導電性ダイヤモンド膜の表面に付着した物質は再び水に溶解され、陽極1に付着した物質が除去される。なお、陽極1及び陰極2の極性を逆転させる場合、概ね電解電位以下の電圧を陽極1及び陰極2間に印加することが好ましい。こうすることで、電解により陽極1及び陰極2の腐食を防止することができる。
【0059】
本発明によるオゾン生成装置は、小型スプレーに組み込んで簡易な殺菌及び滅菌や、脱色及び脱臭に使用するというように、小型のオゾン生成装置に適用することができる。この場合、図1に示すように電極部10を電気絶縁性のホルダ5に収納し、このホルダ5内部に水または電解液を流せばよい。なお、ホルダ5には1個の電極部10を入れても良いし、複数個の電極部10を入れても良い。
【0060】
複数個の電極部10を入れることにより、多量のオゾン水を生成することができる。以下の説明では、1つの電極部10及び電極部10の電気配線が収納されたホルダ5をカートリッジと記述する。
【0061】
図5は、本発明の実施の形態によるオゾン生成装置の全体構成図である。図5に示すようにオゾン生成装置は、カートリッジ8を覆う筐体9を備えている。筐体9の左側の側壁91の上部には注入孔71が設けられている。また、筐体9の右側の側壁91の下部には排出孔72が設けられている。左右の両側壁91間には、カートリッジ8を支持するための支持部材92が取り付けられている。図5の例では、支持部材92は、側壁91の上下方向のほぼ中央に設けられている。支持部材92には上下方向に複数(例えば3個)の貫通孔が形成されている。カートリッジ8はこの貫通孔に取り付けられている。なお、図5では、カートリッジ8の内部に設けられた電極部10は図示を省略している。
【0062】
このように構成されたオゾン生成装置は、注入孔71に水又は電解溶液が供給される。ここで、水又は電解溶液は例えばポンプ等の駆動力によって注入孔71に供給される。
【0063】
注入孔71に供給された水又は電解溶液は、カートリッジ8を通過する。この際、カートリッジ8の内部の電極部10には電圧が印加されているため、陽極1において上記の酸素発生反応とオゾン発生反応とが起こり、オゾン水が発生する。そして、生成されたオゾン水は排出孔72から排出される。
【0064】
工業用に大量のオゾン水が必要とされる場合には、ホルダ5に1つの電極部10を入れ、このホルダ5を図5に示すように複数個並列に接続し、各ホルダ5内に大量の水を注入することが考えられる。つまり、複数のホルダ5を用いてイオン水生成装置を構成することが考えられる。この方式を用いれば、1個の電極部10に異常が生じた場合でも、その電極部10を含むカートリッジ8自体を交換又は修理すれば良くなる。その結果、オゾン生成装置の稼働を停止させ、オゾン水を生成することができなくなる事態を回避することができる。
【0065】
また、一般的にイオン透過膜の性能は使用時間の増大に伴い、低下する事が知られている。しかしながら、一定時間、電極部10に電位を印加せずに放置すれば、陰極2を覆うイオン透過膜3の性能が回復することを本発明者は確認している。したがって、一定時間電極部10への電圧供給を中断すれば、イオン透過膜3が回復するため、永続的に電極部10の性能を維持することが可能である。なお、電極部10への電圧供給を、例えば、12時間以上、中断すれば、イオン透過膜3の回復効果が現れる。そして、電極部10への電圧供給を例えば24時間程度、中断することでイオン透過膜3の回復効果をより増大することができる。
【0066】
特に、複数のカートリッジから構成される大型のオゾン生成装置の場合には、オゾン水の生成に付随して、水素及び酸素等のガスが発生する。これらのガスは回収して燃料ガス等として再利用すれば、全体としてのオゾン水発生におけるコスト低減を図ることができる。
【0067】
図6は、本発明の実施の形態による電極部10の更なる他の例を示した図である。図6において、陽極1は平板状である。この場合、平板状の基材の表面及び裏面に導電性ダイオモンド膜をコーティングすることで陽極1を構成すればよい。
【0068】
陰極2は図3に示す陰極2と同様、直線状のステンレスワイヤにより構成されている。陰極2の表面はイオン透過膜3により覆われている。陽極1はイオン透過膜が覆われた陰極2を介して複数個(図6の例では3個)平行に積層されている。各陽極1間には1又は複数個(図6の例では3個)の陰極2が平行に配置されている。このような電極部10を用いても、図1、図3の電極部10と同様にしてオゾン水を高効率に生成することができる。
【0069】
以上、説明したように本発明はオゾン生成装置によれば、オゾン発生効率が大幅に向上するため、オゾン生成装置一層の小型化、及び運転コストの低減等が図れ、省エネや環境問題に貢献することができる。
【0070】
なお、上記の陽極1のように、導電性ダイヤモンドから構成された電極は電位窓が広く、安定した電極であることが知られており、その広い電位窓のために、効率の良くオゾンを発生することができる。
【0071】
以下、導電性ダイヤモンド電極が広い電位窓を有している事例を説明する。図7は、飽和カロメル電極を参照電極とし、0.1Mの硫酸ナトリウム溶液を用いた場合の、導電性ダイヤモンド電極と白金電極とのサイクリックボンタンメトリーの測定結果を示すグラフである。
【0072】
図7において、上部に縮小表示されたグラフは白金電極の測定結果を示し、中央に大きく表示されたグラフは導電性ダイヤモンド電極の測定結果を示している。また、図7において、白金電極のグラフの横軸は、参照電極に対する白金電極の電位を示し、縦軸は電流密度を示している。また、図7において、導電性ダイヤモンド電極のグラフの横軸は、参照電極に対する導電性ダイヤモンド電極の電位を示し、縦軸は電流密度を示している。
【0073】
なお、両グラフの縦軸、及び横軸の目盛りは同じである。
【0074】
図7から観察される様に、導電性ダイヤモンド電極は、広範囲の電位において電流が流れていることがわかる。白金電極は、サイクリックボルタンメトリーの測定結果にヒステリシスが存在する。これは、測定中に白金電極の表面が化学反応等により変化するため、電圧の掃引方向に応じて、白金電極に流れる電流が変化するからである。
【0075】
白金は金属の中でも反応性が乏しく最も貴な金属であるが、この実験結果から導電性ダイヤモンド電極は、白金電極よりも安定していることが分かる。これは、白金電極が金属結合で構成されているためである。つまり、白金電極は、電位が印加されることにより、金属結合が断ち切られた原子が溶液と反応してしまう。そのため、白金電極に印加できる電位の範囲は導電性ダイヤモンド電極よりも狭くなる。
【0076】
一方導電性ダイヤモンド電極は、金属結合よりも強固な共有結合で構成されている。そのため、導電性ダイヤモンド電極に対して広い範囲の電位を印加しても、原子が分解して溶液と反応することは無い。
【0077】
この様に、導電性ダイヤモンド電極は、白金電極に比べて印加できる電位の範囲が広いため、オゾンの発生の様に過電圧を必要とする電解反応をより効率良く実行することができ、オゾン発生効率を高めることができる。
【0078】
次に、本発明の電極構成について説明する。一般的に、オゾンの発生には、導電性ダイヤモンド電極、イオン透過膜(電解質膜)、水の三相界面が重要とされている。これは、オゾンを発生させる電解反応を行う電極に対して、多くの水が供給して電解させる必要があるからである。
【0079】
図8は、本発明の実施の形態による電極部10と従来の電極部との効果の差を説明する図であり、(A)は本発明の実施の形態による電極部10の拡大断面図であり、(B)従来の電極部の拡大断面図である。
【0080】
本実施の形態では、陰極2を覆うイオン透過膜3が陽極1の円周に接するため、三相界面近傍の水の流れが促進され、イオン透過膜3と陽極1との重なりが最小となるので、陽極1の死活を最小限にすることができる。
【0081】
また、イオン透過膜3内では、プロトン(H)の伝導が支配的となる。一般的にプロトンの電導性は低い。しかしながら、本実施の形態では、イオン透過膜3の円周の中心に陰極2が配置されている。よって、イオン透過膜3の表面から広範囲に伝導するプロトンは、陰極2により集約して効率的に捕集される。但し、陰極2にプロトンが集約されるということは、副生成物として生成される水素が陰極2の近傍で集中して発生することを意味する。この場合、イオン透過膜3を吸引する等の手法を用いて陰極2の濡れ性を確保することで、副生成物である水素を選択的に捕集することができる。
【0082】
また、帯状のイオン透過膜3を陰極2に対して螺旋状に巻く事により、不要な水素をイオン透過膜3の隙間から排出することもできる。
【0083】
一般に、溶液中では、電極の近傍で形成される電気二重層において強い電界が発生するが、電気二重層から離れると急激に溶液中の電界は緩和される。したがって、溶液中ではイオン等の活性種は、電界による影響ではなく、物理的拡散に支配されて移動することになる。
【0084】
本実施の形態ではイオン透過膜3は陰極2に対して円周状に接しているため、陽極1で反応するOH等の活性種は、イオン透過膜3の表面で生成される。そして、これらの活性種は、上記の三層界面の近傍に存在しているため、三相界面における反応に有効に寄与することができる。
【0085】
[実施例]
次に、本発明の実施の形態によるオゾン生成装置の実施例について説明する。オゾン生成装置の配管としては、テフロン(登録商標)又はステンレス鋼(SUS316)により構成される継ぎ手又はチューブを使用した。最大流量が19l/分の圧空式のダイアフラムポンプを用いて、紫外線吸収式の溶存オゾン測定装置の出口側を吸引して、溶存オゾン測定装置の吸入口を負圧にし、吸入口にオゾン水を連続的に吸入させ、オゾン濃度を測定した。
【0086】
溶存オゾン測定装置の吸入口の内部に上記の電極部を入れて、この電極部に電圧を印加してオゾン水を発生させ、溶存オゾンを測定した。オゾン濃度計の入り口には、泡による測定ノイズを防止するために、円筒状の容器に一定時間オゾン水を滞留させる抜気装置を設置した。
【0087】
溶存オゾン測定装置の出口とオゾン水排出口の中間に流量計を設置してオゾン水の流量の流量を測定した。圧空式ダイアフラムポンプは間欠的に吸引を行うので、オゾン水の吸引には脈動を伴う。しかしながら、大容量の圧空式ダイアフラムポンプを用いることで、間欠する際の吸引圧の変化のインターバルを長くすることができる。そのため、吸引による脈動はオゾン水の発生には影響を及ぼさない。但し、オゾン水の流量が大きい場合には、脈動が激しくなるため、流量計の測定値には誤差が生じてしまう。したがって、オゾン水の流量が大きい場合は、排出されるオゾン水をメスシリンダーで計量して、1分あたりの流量を測定した。
【0088】
溶存オゾン測定装置は、時間が経過するにつれてオゾン濃度のゼロ点がずれるため、測定前に電解を行わない軟水あるいは市水(水道水)を流して、電気的に紫外線センサーの出力を修正してゼロ点補正を行った。
【0089】
上記の電極部を、そのサイズに応じて、呼び径1/4インチ(内径3.95mm、外径6.35mm)、3/8インチ(内径6.35mm、外径9.53mm)のテフロン(登録商標)チューブに入れ、テフロン(登録商標)チューブを継ぎ手を介してオゾン濃度計に接続された配管に接続し、溶存オゾン濃度を測定した。
【0090】
測定に用いた水は水道水又は水道水を軟水器で軟水化した軟水を用いた。軟水器はイオン交換樹脂のイオン交換により、水道水中のカルシュウム、マグネシュウムなどのアルカリ金属濃度を低下させており、通常、水道水の硬度が60前後であるのに対して、軟水の硬度は0とみなして良い。
【0091】
[実施例1]
実施例1では、チタン(Ti)の丸棒(長さ8cm、直径2mm、もしくは3mm)に対して、マイクロ波プラズマCVD法により、炭素(C)の原子数に対するホウ素(B)の原子数が5000ppmで炭素にホウ素をドーピングした導電性ダイヤモンド膜を膜厚3ミクロンにコーティングすることで陽極1を構成した。
【0092】
また、陰極2としては、ステンレスワイヤ(SUS304直径0.5mm)を用いた。また、約2.5mm幅に切断した帯状のイオン透過膜3(デュポン社製ナフィオン117)を、陰極2の長手方向に対して斜め方向に向けて螺旋状に隙間無く巻き付け、陰極2の表面をイオン透過膜3で簡易に巻き付けた。そして、電極部10を図2に示すように、陽極1に対して螺旋状に巻きつけ、呼び径3/8インチのホルダ5に入れてカートリッジ8を構成した。ホルダ5としては、テフロン(登録商標)樹脂製のチューブを採用した。
【0093】
陽極1及び陰極2には絶縁膜で被覆された配線を取り付けた。配線には、電流電圧測定器を接続し、陰極2及び陽極1に対して電圧が印加できるようにした。
【0094】
流量500ml/分の軟水をホルダ5内に水を流してオゾン水を発生させたところ、初期のオゾン水のオゾン濃度は0.5ppmであった。その後、オゾン水のオゾン濃度は0.3ppmで安定した。
【0095】
[実施例2]
実施例2は、実施例1のホルダ5を、呼び径1/4インチのものに交換した。そして、ホルダ5内に流量500ml/分の軟水を流した。陽極1及び陰極2には20Vの電圧を印加し、700mAの電流を流した。そして、実施例1と同じ条件でオゾン濃度を測定した。排出されたオゾン水のオゾン濃度を測定したところ1.5ppmであった。この測定を20分継続した。20分経過後のオゾン濃度は、初期のオゾン濃度に比べて若干低下するものの、ほぼ一定(1.3ppm)であった。
【0096】
次に、水道水を用いて同様の実験を行ったところ、電極部10に電圧20Vの電圧を印加したとき、450mAの電流が流れ、オゾン濃度は1.3ppmであった。実施例2の結果から、陽極1の近傍の流速を上げることにより、溶液の攪拌効果を増大させて、活性種の反応が促進されたことが分かる。
【0097】
[実施例3]
実施例1のカートリッジに20Vの電圧を印加して水道水を2時間流した。この結果、電流量が電解初期より約30%減少し、オゾン濃度も同じく約30%減少した。この後、陽極1を負に、陰極2を正になるように極性を逆転し、5Vの電圧を印加して1時間放置した。そして、陽極1を正に、負極2を負にして極性を戻し、実施例1と同じ実験を行った。
【0098】
この結果、電流量及びオゾン濃度とも初期の値の90%に復帰したことが分かった。これは、極性を逆転したことにより、陽極1に付着した不純物質が溶解除去されたためである。
【0099】
また、電解を停止した後に12時間電極を放置して再度電解を行ったところ、電流量及びオゾン濃度とも初期の値の80%に復帰したことが確認できた。
【0100】
[実施例4]
実施例4は、電極部10を呼び径1/4インチのテフロン(登録商標)チューブからなるホルダ5に挿入してカートリッジ8を構成し、カートリッジ8に100ml/分〜500ml/分の範囲内で流量を変化させて軟水を流した。電極部10には20Vの電圧を印加した。電極部10に流す電流は、流量により電極のコンダクタンスが変化するため電極電圧が一定になる様に、例えば軟水の流量が100ml/分の時は400mA、軟水の流量が500ml/分のときは600mAというように変化させた。この時の電極電位は20Vであった。この条件下でオゾン水のオゾン濃度を測定した。
【0101】
電極部10から排出されたオゾン水のオゾン濃度を測定したところ、軟水の流量に依存せず1.5ppmであった。この測定を20分継続した後は、若干オゾン濃度が低下したが、オゾン濃度はほぼ一定(1.3ppm)で安定であった。これは、電極部10が有効に電解により生じたイオンや活性種を拡販しているために生じたものである。電極部10の構造の最適化を更に進めれば、オゾンの発生能力が理想的な値に達して流量に依存してオゾン濃度を変化させることができる。
【0102】
[実施例5]
実施例5は、2本の陽極1を用意する。そして、1本目の陽極1には、イオン透過膜3で覆われた1本の陰極2を螺旋状に12回巻き付ける。2本目の陽極1には、イオン透過膜3で覆われた2本の陰極2を一方の陰極2の間に他方の陰極2が配置されるように螺旋状に各々6回巻き付け、両者で合計12回巻き付ける。そして、2つの電極部10を1つのホルダ5に挿入して、オゾン生成装置を構成する。
【0103】
陽極1としては長さ8cm、直径2mm、有効電極長60mmの導電性ダイヤモンド膜を採用した。ホルダ5としては呼び径が1/4インチのテフロン(登録商標)チューブを採用した。
【0104】
1本巻の電極部10は、2本巻きの電極部10に比べて、陰極2の流路の幾何学的な形状が異なり水の流量が低下するが、その反面、流路が長くなるので水が陽極1に接触する時間は増大する。
【0105】
1本巻きの電極部10をホルダ5内に設置した場合、陰極2間の隙間に水が流れ、1本のらせん状の流路が形成される。
【0106】
一方、2本巻きの電極部10をホルダ5内に設置した場合、陽極1の長手方向に対する陰極2の角度は、1本巻きの電極部10に比べて小さくなる。そのため、2本巻きの電極部10の陰極2間に形成される流路(隙間)は、1本巻きの電極部10に比べて、陽極1の長手方向に対して平行に近くなる。また、2本巻きの電極部10では2系統の流路が形成され、流れ易い流路が並列して2本形成される。
【0107】
つまり、1本巻きの電極部10では、陽極1の長手方向に対して角度をもつ急な螺旋状の流路が1系統形成される。一方、2本巻きの電極部10では、陽極1の長手方向に対して平行に近い螺旋状の流路が2系統並列して形成され、かつ、2系統の流路のそれぞれの長さは、1本巻きの電極部10の流路の約半分となる。この違いから、1本巻きの電極部10と2本巻きの電極部10とでは流量が相違することになるが、その反面、陰極2の陽極1に対する面積はほぼ同じとなる。
【0108】
陰極2が2本巻き付けられた電極部10を1/4インチのテフロン(登録商標)チューブに入れてカートリッジ8を構成したときの電極部10のコンダクタンスは大きく、400ml/分の流水を得ることができた。そして、このカートリッジ8では、電解初期に最高、2.5ppmのオゾン発生を確認した。また、このカートリッジ8では、オゾン濃度は、その後低下して1ppmで安定化した。
【0109】
陰極2を1本だけで巻き付けてピッチを蜜にした電極部10を1/4インチのテフロン(登録商標)チューブに入れてカートリッジ8を構成したとき電極部10では250ml/分の流水が得られた。そしてこのカートリッジ8では、最高、3.7ppmのオゾン濃度を確認した。また、このカートリッジ8では、オゾン濃度はその後低下して2ppmで安定化した。実験には軟水を用いたが、水道水でも同じ結果が得られることを確認した。そして、両カートリッジ8において、上記の電解を一定時間実施した後、12時間、電解を停止させたところ、当初の性能の80%までカートリッジ8の性能が回復した。
【0110】
[参照例1]
次に、特許文献6の実施例1に従って、参照例1の電極部を作成し、この参照例1の電極部と実施例1の電極部との効果の差について説明する。この参照例1の電極部は、直径が2mm、長さが8cmのダイヤモンド電極を陽極として用いた。また、陽極に幅が2.5mmのナフィオン117(登録商標)を、隙間を空けて開けて巻きつけた。また、ナフィオンの上から、直径が0.5mmのステンレスワイヤを陰極として巻き付けた。そして、参照例1の電極部を、呼び径1/4インチのテフロン(登録商標)樹脂製のチューブに入れてカートリッジを構成した。
【0111】
この参照例1の電極部を用いて実施例1と同様、カートリッジに流量500ml/分の軟水を流した。また、陽極及び陰極間に20Vの電圧を印加し、250mAの電流を流した。実施例1と同様にして参照例1の電極部から排出されたオゾン水のオゾン濃度を測定したところ0.2ppmであった。
【0112】
これにより、参照例1の電極部よりも、実施例1の電極部の方が高効率で高濃度のオゾン水を生成することができ、本発明の優位性を確認することができた。
【0113】
次に、本発明の変形例を示す。この変形例は本発明と等価な作用を示す一例であって本発明を限定するものではない。
【0114】
[変形例1]
陽極1として実施例1と同様のものを採用する。陰極2としてステンレスワイヤ(直径0.5mm)を採用する。そして、長さ5mmの中空のナフィオン・パイプからなるイオン透過膜3と、長さ3mmのシリコン樹脂製のスペーサ6とが交互に配列されるように、イオン透過膜3とスペーサ6との内部に陰極2を挿入する(図4参照)。この陰極2を図2に示したように、陽極1の周囲に螺旋状に巻き付け、直径10mmのシリコン樹脂製の筒状のホルダ5に入れた。陽極1及び陰極2には絶縁膜で被覆された配線を取り付け、電圧が印加できるようにし、電流電圧測定器に接続した。
【0115】
[変形例2]
実施例1と同様に作製したカートリッジ8を、図5に示すように配置してオゾン生成装置を構成した。このとき、厚さ5mmの支持部材92を用意し、この支持部材92に、蜂の巣状に10個の貫通孔を形成し、各貫通孔に1つのカートリッジ8を挿入した。貫通孔としては、直径12mmで断面が円形のものを採用した。各カートリッジ8の陽極1及び陰極2からの電気配線を各々纏め、全カートリッジ8の陽極1及び陰極2に同時に電圧が印加できるようにした。なお、図5において、カートリッジ8の内部構造及び電気配線などは省略している。
【0116】
[変形例3]
実施例1と同様にして、導電性ダイヤモンド膜をコーティングした電極を2本作製した。一本目は、実施例1と同じく陽極1とした。2本目はイオン透過膜3である筒状のナフィオン117(登録商標)に挿入して陰極2とした。これらの2本の陽極1及び陰極2を筒状のシリコン樹脂からなるホルダ5に挿入し、カートリッジ8とした。
【0117】
そして、陽極1及び陰極2に電圧を印加して長時間稼働させた後、陽極1及び陰極2の極性を変え12時間時間以上放置した。すると、当初の性能を回復させることができた。よって、少なくともオゾンの発生を12時間程度停止すれば、当初の性能に対して80%相当の性能にオゾン生成装置を回復させることができる。
【0118】
[変形例4]
変形例4のオゾン生成装置は、変形例2の複数のカートリッジ8を備えるオゾン生成装置において、各電極部10を時間をずらして間欠稼働させたものである。
間欠稼働としては、6時間以上の稼働時間と所定の休止時間とを交互に繰り返す態様を採用すればよい。これにより、電極の回復とオゾン発生とを同時に行うことができるオゾン生成装置を構成することができる。
【0119】
[変形例5]
変形例5のオゾン生成装置は、変形例4の休止中のカートリッジ8に、電解電位以下の電圧を6時間以上印加したものである。これにより電極部10の回復とオゾン発生とを同時にえるオゾン生成装置を構成することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 陽極
2 陰極
3 イオン透過膜
5 ホルダ
6 スペーサ
8 カートリッジ
9 筐体
10 電極部
31 筒体
71 注入孔
72 排出孔
92 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水又は電解溶液に電極部を浸漬し、前記電極部に電圧を印加することでオゾン水を生成するオゾン生成装置であって、
前記電極部は、
導電性ダイヤモンド膜が表面に形成された第1電極と、
前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第2電極を覆うイオン透過膜とを備えるオゾン生成装置。
【請求項2】
前記第2電極は、帯状の前記イオン透過膜により巻き付けられている請求項1記載のオゾン生成装置。
【請求項3】
前記イオン透過膜は、前記第2電極を覆う筒体で構成され、
前記筒体は、前記第2電極の長手方向に沿って一定の間隔を設けて複数配列されている請求項1記載のオゾン生成装置。
【請求項4】
前記第1電極は、陽極であり、
前記第2電極は、陰極である請求項1〜3のいずれかに記載のオゾン生成装置。
【請求項5】
前記電極部は、前記第1及び第2電極を収納し、前記水又は電解溶液が流される電気絶縁性のホルダを更に備える請求項1〜4のいずれかに記載のオゾン生成装置。
【請求項6】
前記ホルダは、並列接続された複数の電極部を収納する請求項5記載のオゾン生成装置。
【請求項7】
前記陰極より生成される気体は、収集されて再利用される請求項4記載のオゾン生成装置。
【請求項8】
前記ホルダは、複数個配置されている請求項5又は6記載のオゾン生成装置。
【請求項9】
前記電極部は、印加される電圧が一定期間中断される請求項1〜9のいずれかに記載のオゾン生成装置。
【請求項10】
前記第1電極は、平板状であり、
前記第2電極は、前記イオン透過膜を介して前記第1電極に接触されている請求項1記載のオゾン生成装置。
【請求項11】
前記第2電極は、複数である請求項10記載のオゾン生成装置。
【請求項12】
前記第1電極は、前記第2電極を介して複数積層されている請求項10又は11記載のオゾン生成装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−241206(P2012−241206A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109847(P2011−109847)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】