説明

オフガス燃焼装置

【課題】オフガス中のメタンが大気放散してしまうことを確実に防止することが出来て、しかも、係るオフガス中のメタンを燃焼処理する際に補助燃料を必要としないオフガス燃焼装置を提供する。
【解決手段】メタン分離装置1からバーナ4に連通するオフガスラインL3から燃焼触媒7に連通する第2のオフガスラインL32が分岐しており、オフガスラインL3の分岐点には切換装置V4が設けられ、第2のオフガスラインL32には、熱交換器5と、加熱装置6と、オフガス温度計測装置21、22と、燃焼触媒7の表面温度を計測する触媒温度計測装置23とが介装されており、燃焼触媒7の排ガスが流れる排ガスラインLxは燃焼排ガスラインLx2と合流Bxすると共に熱交換器5に連通しており、燃焼触媒7に燃焼用空気を供給する空気供給装置8が設けられ、空気供給ラインLaは第2のオフガスラインL32の熱交換器5よりも上流側の領域に合流している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガスからメタン(CH)を分離する技術に関する。より詳細には、バイオガスからメタンを分離する装置から排出されるオフガスにメタンが含有される場合に、係るオフガス中のメタンが大気放散してしまうことを防止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスから生成したバイオガスは、メタン以外の成分を含有している。バイオガスの有効利用を図るためには、バイオガスからメタンを分離し、或いは、バイオガス中のメタン濃度を高める必要がある。
嫌気性発酵プロセスから発生するメタンリッチなバイオガスからメタンを分離して、高純度メタンを精製するための技術として、例えば、PSA(Pressure Swing Adsorption)方式による分離技術や、膜分離法に係る分離技術が存在する。
【0003】
図5は、PSA方式の概要を示しており、塔内に充填された吸着材により不要な成分(例えば、バイオガス中のメタン以外の成分)を吸着して除去し、以って、所定の成分(例えばメタン)を分離するための装置である。
【0004】
図5において、吸着材が充填された塔Pが複数(図5では3個)設けられており、塔Pの各々には、バイオガス供給ラインLb、流路切換装置Vc、バイオガス供給分岐ラインLb1〜Lb3を介して、バイオガスが供給される。
吸着材が充填された塔P(PSA)にバイオガスを供給し、バイオガス中のメタン以外の成分を吸着材により吸着して除去すれば、残余のガスにおけるメタン濃度を高くすることが出来る。仮に、バイオガスがメタンと二酸化炭素(CO)のみを含有するのであれば、COを吸着する触媒が充填された塔P内にバイオガスを供給すれば、塔Pから出てきたガス(メタンタンクに供給されるガス)はメタンのみを含有することになり、或いは、メタン濃度が高くなる。
すなわち、PSAをメタン分離装置として用いれば、メタン以外の成分(例えば、CO)を吸着して除去することにより、相対的にメタン濃度(或いは純度)を高くすることが出来る。
【0005】
ここで、吸着材を充填した塔Pが1つのみ設けられているならば、吸着と脱着とを繰り返し、吸着の場合にのみバイオガスを供給する必要がある。そのため、メタンの分離(メタン濃度の高度化)を、いわゆる「バッチ式」で処理しなければならない。
連続してメタンの分離或いは精製を行なうためには、複数の塔Pを設け、再生された吸着材が充填されている塔にバイオガスの供給を行い、吸着材の吸着能力が低減した塔Pについては、バイオガスの供給を中止して、吸着材の脱着(再生)を行なう。すなわち、ある塔Pでは吸着材によりメタン以外の成分(例えばCOを)吸着し、他の塔Pではメタン以外の成分(例えばCO)を脱着して、吸着材を再生する。以って、バイオガスからメタン以外の成分を、連続的に、吸着処理するのである。
【0006】
脱着工程においては、脱着(再生)をするべき吸着材が充填された塔Pを減圧し、吸着材に吸着された成分(上記の例ではCO)を吸着材から分離して、塔P外へ排出する。
脱着工程において、減圧により塔P外へ排出(吸引)されたガスが、オフガスを構成する。
【0007】
吸着材を充填した塔は、一般的に、塔P内の吸着材がメタン以外の成分(例えばCO)を吸着する限界に達する以前の段階で、脱着工程(再生工程)に切り換えられる。
吸着工程の際に、メタンの純度を高くするためには、バイオガスにおけるメタン以外の成分(例えばCO)がメタンに混入しない様に、注意しなければならない。そして、吸着材がメタン以外の成分を吸着しなくなり、メタン以外の成分がメタンと共にメタン貯蔵タンク側に出力されないようにするためには、吸着材の吸着能力に余裕がある段階で、吸着材による吸着工程から当該吸着材を再生する脱着工程に切り換える必要がある。すなわち、未だに吸着可能な吸着材が充填された塔について、脱着工程が行なわれる。
【0008】
上述したように、脱着工程では、塔内を減圧して排出するので、脱着工程に切り換えられた際に、当該塔内に残存しているバイオガスも、減圧により塔外に排出されて、オフガスとして処理される。
すなわち、メタンを包含するバイオガス(通常、バイオガスのメタン濃度は60%程度)がオフガスとして、塔外へ排出されるため、オフガスにはメタンが包含されてしまう。
【0009】
図5のPSAに関してのみ説明したが、その他のメタン分離装置でも、同様な問題が存在する。
例えば、膜分離法は、高分子膜、ゼオライト等の無機膜の制御された微細孔により、複数種類のガスの混合ガスから特定のガスを分離する方法であり、対象ガスの分子の大きさや、形状の違いを利用して、分離するべきガスを混合ガスから分離している。
しかし、係る膜分離法によるメタンの分離装置においても、オフガスにメタンガスが混入してしまう可能性があることは良く知られている。
【0010】
メタンを含有するオフガスについて、以前は大気放散するケースも存在した。
現状では、メタン濃度がある程度高い場合には、大気放散することはできない。メタンは、同じモル数では、COの20〜30倍の温暖化係数を持ち、メタンを大気放散することは、COの大気放散よりも20倍〜30倍のオーダーで地球環境に悪影響を与えてしまうからである。
【0011】
これに対して、メタンを包含するオフガスを燃焼して、地球環境にダメージが少なくする従来技術が存在する。係る従来技術では、余剰燃焼塔でメタンを包含するオフガスを燃焼している。
しかし、バイオガスにおけるメタン濃度は不安定であるため、上記オフガスにおけるメタン濃度も不安定である。そのため、補助燃料(例えば、都市ガス)を追加せずに、安定した燃焼をし続けることは困難である。そして、余剰燃焼塔で安定した燃焼をしないと失火の恐れがあり、余剰燃焼塔で失火すると、メタンを含有するオフガスが未燃物としてそのまま大気中に排出されてしまうので、メタンを大気放散するのと同様に、環境に対して甚大なる悪影響を及ぼしてしまう。
そのため、係る従来技術では、補助燃料(都市ガス等)を供給しつつ、メタンを含有するオフガスを燃焼しなければならず、補助燃料を供給するコストが必要となる。
【0012】
その他の従来技術として、例えば、メタン濃度やメタン貯蔵量の増加を図るために、脱硫装置と、メタン濃縮装置と、メタン吸蔵剤を充填したガスホルダとを備えた消化ガス貯蔵設備が提案されている(特許文献1参照)。
また、バイオガスの供給量や成分に応じて補助燃料ガスと空気を混合し、燃料ガスとして利用する技術も提案されている(特許文献2参照)。
しかし、これ等の従来技術(特許文献1、特許文献2)は、何れもバイオガスからメタンを分離する装置からのオフガスに含有されるメタンの処理については開示していない。
【特許文献1】特開2001−949号公報
【特許文献2】特開2002−226878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、バイオガスからメタンを分離する際に排出されるオフガスにメタンが含有されている場合に、係るオフガス中のメタンが大気放散してしまうことを確実に防止することが出来て、しかも、係るオフガス中のメタンを燃焼処理する際に補助燃料を必要としないオフガス燃焼装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、バイオガスからメタンを分離するメタン分離装置(1:例えば、PSA法によるメタン分離装置や、膜分離法によるメタン分離装置)のオフガスを燃焼するオフガス燃焼装置において、メタン分離装置(1)のオフガスが流れるオフガスライン(L3)と、オフガスを燃焼するバーナ(4)と、メタン分離装置(1)をバイパスしてバーナ(4)にバイオガスを供給するバイパスライン(L1b)と、バイパスライン(L1b)を流れるバイオガスの供給量を制御するバイオガス供給量制御装置(開閉弁V1)と、バーナ(4)の燃焼状態を検出する検出装置(例えば、オフガス中のメタン濃度を計測するメタン計、或いは、バーナ4の火炎における導電性を計測するフレームロッド41)と、制御装置(10)とを備え、バーナ(4)に連通する前記オフガスライン(L3)から燃焼触媒(7)に連通する第2のオフガスライン(L32)が分岐しており、オフガスライン(L3)の分岐点には切換装置(切換弁V4)が設けられ、第2のオフガスライン(L32)には、バーナ(4)の燃焼排ガス或いは燃焼触媒の排ガスが保有する熱量を燃焼触媒に供給されるオフガスへ投入する熱交換器(5)と、熱交換器(5)と燃焼触媒(7)との間の領域で燃焼触媒に供給されるオフガスを加熱する加熱装置(例えば、電気ヒータ6)と、燃焼触媒(7)に供給されるオフガスの温度を計測するオフガス温度計測装置(熱電対21、熱電対22)と、燃焼触媒(7)の表面温度を計測する触媒温度計測装置(熱電対23)とが介装されており、燃焼触媒(7)の排ガスが流れる排ガスライン(Lx)はバーナ(4)の燃焼排ガスが流れる燃焼排ガスライン(Lx2)と合流(Bx)すると共に前記熱交換器(5)に連通しており、燃焼触媒(7)に燃焼用空気を供給する空気供給装置(例えばブロワ8)が設けられ、空気供給装置(8)の吐出口と連通する空気供給ライン(La)は第2のオフガスライン(L32)の熱交換器(5)よりも上流側(メタン分離装置1側)の領域に合流している。
【0015】
ここで、メタン分離装置(1:例えばPSA)のオフガスに含有されるメタンを燃焼する燃焼装置である点で、バーナ(4)と燃焼触媒(7)は均等物である。
そして、燃焼触媒(7)としては、例えば、アルミナに担持されたパラジウム等を用いることが出来る。
【0016】
この場合、制御装置(10)は、起動時或いはバーナ(4)の燃焼状態が安定している場合には切換装置(切換弁V4)をバーナ(4)側に切り換え、起動時以外で且つバーナ(4)の燃焼状態が不安定な場合には切換装置(切換弁V4)を燃焼触媒(7)側に切り換える機能を有しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上述する構成を具備する本発明によれば、バーナ(4)と並列に燃焼触媒(7)を配置したので、燃焼触媒(7)はバーナ(4)における安定した燃焼が可能なメタン濃度の範囲よりも、さらにメタン濃度が低い範囲において、安定した燃焼が可能である。
そのため、オフガスに含有されるメタン濃度がバーナ(4)で燃焼するには低い様な場合には、オフガスライン(L3)を切り換えて、燃焼触媒(7)側に供給して、オフガスに含有されたメタンの燃焼を燃焼触媒側で実行することが出来る。
その結果、メタン分離装置(1)をバイパスするバイパスライン(L1b)経由でバイオガスを供給しなくても、オフガスに含有されたメタンを確実に燃焼することが出来る範囲(オフガス中のメタン濃度の範囲)が、特にメタン濃度が低下する側に拡大する。
すなわち、本発明によれば、補助燃料を使用することなく、しかも、失火することなく、オフガスに含有されるメタンが確実に燃焼される。その結果、メタンの大気放散が完全に防止され、地球環境に悪影響を与えてしまうことはなくなる。
【0018】
ここで、燃焼触媒(7)は高温(例えば400℃以上)の環境下でなければ燃焼反応を行なわないが、バーナ(4)でオフガスのメタンを燃焼している際に、その排ガスを用いて燃焼触媒(7)を加熱するように構成することにより、起動時以外であれば、燃焼触媒(7)を高温に維持することが出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1〜図4を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1において、全体を符号104で示すオフガス燃焼装置は、PSA方式によるメタン分離装置(PSA)1とメタン貯蔵タンク2とバーナ4と熱交換器5と制御手段であるコントロールユニット10とを備えている。
PSA1は、メタンガス供給ラインL1を介して、図示しないメタンガス供給源と連通しており、供給ラインL2を介してメタン貯蔵タンク2に接続されている。
メタンガス供給ラインL1は、分岐点BでバイパスラインL1bが分岐し、そのバイパスラインL1bは開閉弁V1を介してバーナ4と接続されている。
【0020】
図1において、メタン分離装置であるPSA1に接続されたメタン含有オフガスラインL3には三方弁V4が介装されており、三方弁V4において第1のラインL31と第2のラインL32に分岐している。
第1のラインL31はバーナ4に接続している。
【0021】
第2のラインL32には熱交換器5と第1の熱電対(温度センサ)21と電気ヒータ6と第2の熱電対22とを介装して燃料触媒7に接続され、その燃焼触媒7には、その表面温度を計測する第3の熱電対23が取り付けられ、燃焼触媒7の燃焼排ガスラインLxには第4の熱電対24が介装されている。
したがってバーナ4と燃焼触媒7とは並列に配置されている。
【0022】
燃焼触媒からの燃焼排ガスが流れる燃焼排ガスラインLxは、分岐点Bxで第1の排ガスラインLx1と第2の排ガスラインLx2とに分岐している。
第1の排ガスラインLx1は熱交換器5を経由して大気に開放されている。
【0023】
第2のラインL32において、三方弁(V4)と熱交換器5との間には合流点Gが形成され、この合流点Gには、空気供給ラインLaが合流している。
空気供給ラインLaには流量制御弁Vaが介装されており、且つ、その端部には空気供給用の機器であるブロワ8が接続されている。
【0024】
第1の熱電対21〜第4の熱電対24は、何れも入力信号ラインSiを介して、コントロールユニット10と接続されている。
PSA1、電気ヒータ6、流量制御弁、Va、開閉弁V1、三方弁V4は、何れも制御信号ラインSoを介して、コントロールユニット10と接続されている。
【0025】
燃焼触媒7は、例えば、アルミナに担持されたパラジウムが使用される。
燃焼触媒7で燃焼するためには、所定温度以上に加熱することが必要である。ただし、触媒の種類によって、必要な温度範囲は異なる。図示の実施形態で用いられる触媒は、オフガスに含有されているメタンを燃焼するために、例えば、400℃〜800℃の範囲内に加熱される必要がある。換言すれば、燃焼温度の下限目標値が400℃であり、上限目標値が800℃である。
上述したように、燃焼触媒7は、バーナ4が安定燃焼する程度にメタン濃度が高いオフガスの燃焼よりも、バーナ4では失火してしまう程度までメタン濃度が低いオフガスの燃焼に適している。
【0026】
燃焼触媒7でオフガスが燃焼するためには、燃焼用の空気が必要である。そのため、図1において、前述の空気供給ラインLa及びブロワ8が装備されている。
さらに、燃焼触媒7の焼結(シンタリング)を防止するため、燃焼触媒7の温度が上限値800℃を超えない様にすることも必要である。すなわち、燃焼触媒7における温度の上限値の制御も必要である。
ここで、図示の実施形態で用いられる燃焼触媒7において、400℃は燃焼温度の下限値に対して多少の余裕を有しており、800℃は燃焼温度の上限値に対して多少の余裕を持った数値として選定されている。
もちろん、触媒の種類によって、燃焼温度の上限値、下限値が異なるため、上述した温度800℃、400℃という上限目標値と下限目標値の具体例も異なる。
【0027】
燃焼触媒7に流入するガスの温度を、例えば400℃以上に昇温するために、排ガスラインLx(分岐ラインLx1)を流れる燃焼触媒7の燃焼排ガスが保有する熱量を、熱交換器5において、燃焼触媒7に流入するオフガスに投入している。
ここで、燃焼触媒7の燃焼状態によっては、熱交換器5で燃焼排ガスが保有する熱量を投入するのみでは、燃焼触媒7に流入するオフガスを必要な温度(400℃)まで昇温するのに不足である場合も存在する。その様な場合に対処するべく、図1では、第2のラインL32の熱交換器5よりも下流側(燃焼触媒7側)の領域には、加熱手段である電気ヒータ6が介装されており、燃焼触媒7に流入するオフガスを目標とする温度(例えば400℃)まで昇温することを可能にしている。
【0028】
ラインL31が接続しているバーナ4の燃焼排ガスは、第3の排ガスラインLxoを流れ、分岐点Gxを介して、第2の排ガスラインLx2を流れる。そして、第2の排ガスラインLx2は、合流点Bxにおいて、燃焼触媒7で発生する燃焼排ガスが流れる燃焼排ガスラインLxと合流して、第1の排ガスラインLx1を流れ、熱交換器5を経由して、大気に開放されている。
バーナ4に装備されたフレームロッド41は、コントロールユニット10と入力信号ラインSiで接続されている。
【0029】
バーナ4の上流側には、図示しないメタン計が設けられている。このメタン計の出力により、後述するように、オフガス供給側の切換弁である三方弁V4が、バーナ4側(L31側)或いは燃焼触媒7側(L32側)に切り換わる。
【0030】
図1において、バーナ4と燃焼触媒7とで同時に燃焼する場合は、バーナ4の燃焼排ガス(PSA1をバイパスして、バーナに供給されたバイオガスをバーナで燃焼する場合の燃焼排ガスも含む)は、燃焼排ガスラインLxo、分岐点Gx、排ガスラインLx2、合流点Bx、排ガスラインLx1を流れ、熱交換器5を経由して、系外(大気)に排出される。
一方、燃焼触媒7の燃焼排ガスは、燃焼排ガスラインLxを流れ、合流点Bxでバーナ4の燃焼排ガスと合流する。
熱交換器5では、バーナ4の燃焼排ガスと燃焼触媒7の燃焼排ガスとが合流した排ガスの保有する熱量が、分岐ラインL32を流れるメタン含有オフガスに熱を投与される。そのため、燃焼触媒7に流入するオフガスは、所定の温度(例えば400℃)まで昇温する。熱交換器5での廃熱投入量が不足しており、燃焼触媒7に流入するオフガスは、所定の温度(例えば400℃)まで昇温しない場合には、電気ヒータ6を作動して加熱すれば良い。
【0031】
ここで、バーナ4の燃焼排ガスが燃焼触媒7に流入することはなく、そのため、燃焼触媒7の上流側にフィルタを設ける必要が無い。
なお、オフガス中に異物が存在したとしても、バーナ4で燃焼してしまうので、バーナ4の上流側で異物を除去する必要は無い。そのため、基本的に、バーナ上流ではフィルタは不要である。
【0032】
バーナ4のみで燃焼運転を行い、燃焼触媒7ではオフガスを燃焼しない場合においては、ブロワ8から燃焼触媒7側へ空気を供給している。
上述したように、バーナ4の燃焼排ガスは、燃焼排ガスラインLxo、分岐点Gx、排ガスラインLx2、合流点Bx、排ガスラインLx1を流れ、熱交換器5を経由するので、ブロワ8から送り出されて第2のラインL32を流れる空気は、熱交換器5において、バーナ4の燃焼排ガスが保有する熱量が投入されて加熱される。廃熱投入量が不足する場合には、電気ヒータ6を作動して、ブロワ8から送り出されて第2のラインL32を流れる空気を加熱する。
【0033】
三方弁V4がバーナ4側に切り換えられ、オフガスが燃焼触媒7に供給されず、燃焼触媒7では燃焼しない場合でも、ブロワ8から送り出されて燃焼触媒7に流入する空気が所定の温度(400℃)まで昇温すれば、当該昇温された空気が流入することにより、燃焼触媒7は燃焼可能な温度まで昇温されて、予熱されている。そのため、三方弁V4が切り換えられて、オフガスが急に燃焼触媒7に供給されても、加熱されている燃焼触媒7により、オフガス中のメタンは直ちに燃焼する。
なお、バーナ4の燃焼排ガスは全量がラインLx2を流れるが、非常事態においては、非常用の排ガスライン(タッチダウン用ライン)Lcから系外に排出され、燃焼触媒7側には供給されない。
【0034】
図1で示すオフガス燃焼装置104の起動時の制御について、図2を参照して説明する。
図2で示す起動時の制御は、燃焼触媒7を加熱するため、燃焼触媒7を下限値温度(例えば400℃)以上に昇温するまでバイオガスによりバーナ4を燃焼させるようになっている。
【0035】
図2において、ステップS81では、バイオガスによりバーナを燃焼させる。そしてステップS82において、ブロワ8を起動し、燃焼触媒7側に空気を供給する。図1を参照して説明したように、バーナ4の燃焼排ガスが保有する熱量が、熱交換器5において、ブロワ8により供給された空気に投入され、空気温度を上昇させる。その空気が燃焼触媒7に供給されることにより、燃焼触媒表面温度も上昇する。
図2では明示されていないが、ステップS82では、必要な場合には電気ヒータ6を作動して、ブロワ8により供給された空気を加熱する。
【0036】
バイオガスによるバーナ4の燃焼は、熱電対22により、燃焼触媒7の入口温度(燃焼触媒7に流入するオフガス或いは空気の温度)が400℃以上になったことが計測されるまで、続行される(ステップS83がNOのループ)。
燃焼触媒入口温度(燃焼触媒7に流入するオフガス或いは空気の温度)が400℃以上になったなら(ステップS83がYES)、1塔目のPSA1を起動する(ステップS84)。
次に、ステップS85で、PSA1の脱着工程を開始する。そして、オフガスをバーナ4へ供給すると共に、バイパスラインL1bの開閉弁V1を閉じて、バイオガスのバーナ4への供給を停止する。
そしてステップS86に進み、定常運転時の制御(定常時の制御:図3、図4)に移行する。
【0037】
図1で示すオフガス燃焼装置104の定常時の制御においては、電気ヒータ6の制御と、ブロワ8の制御が実行される。
これに加えて、図3、図4で示す様な制御、すなわちオフガス供給切換弁である三方弁V4の切換制御が実行される。
図3で示す制御は、三方弁V4をバーナ4側から燃焼触媒7側に切り換える制御を示しており、図4で示す制御は、燃焼触媒7側からバーナ4側に切り換える制御を示している。なお、図3で示す制御と図4で示す制御は、同一のオフガス燃焼装置104において、異なる条件下でそれぞれ実行される。
【0038】
先ず、図3で示す三方弁V4の切換制御について説明する。
図4において、ステップS91の段階では、PSA1のオフガス全量がバーナ4側に供給される様に、三方弁V4は切り換えられている。
ステップS91において、図示しないメタン計によってオフガスのメタン濃度を計測し、及び/又は、フレームロッド41でフレームロッド電流値を計測する。そしてステップS92では、ステップS91の計測値(オフガスのメタン濃度及び/又はフレームロッド電流値)が、バーナ4における燃焼範囲以内であるか否かを判断する。
【0039】
ステップS91の計測値(オフガスのメタン濃度及び/又はフレームロッド電流値)がバーナ4の安定した燃焼範囲以内であれば(ステップS92がYES)、メタン含有オフガスラインL3を流れるオフガスの全量をバーナ4側に供給する様に三方弁V4を切り換えて(ステップS93)、ステップS97に進む。
一方、ステップS91の計測値(オフガスのメタン濃度及び/又はフレームロッド電流値)がバーナ4の安定した燃焼範囲を下回っている場合には(ステップS92がNO)、オフガス供給切換弁である三方弁V4を、徐々に燃焼触媒7側に切り換える。徐々に燃焼触媒7側に切り換えるのは、三方弁V4を急激に燃焼触媒7側に切り換えると、オフガスの条件によっては、燃焼触媒7で燃焼しない事態が生じ得るからである。換言すれば、バーナ4における失火及び燃焼触媒7における失火が、同時に起こってしまう事態を防止する趣旨である。
ここで、「徐々に」なる文言は、瞬時に切り換えるのではないことを示す文言である。「徐々に」がどの程度の切換速度を意味するのかについては、バイオガスの組成、バーナや燃焼触媒の使用、その他の条件により、ケース・バイ・ケースである。
【0040】
ステップS95では、コントロールユニット10はバーナ4が失火したか否かを判断する。バーナ4が失火したなら(ステップS95がYES)、切換弁V4を瞬時に燃焼触媒7側に切り換え(ステップS96)、ステップS97に進む。
燃焼触媒7が失火してないなら(ステップS95がNO)、ステップS94で述べた様に三方弁V4を徐々に燃焼触媒7側に切り換えつつ、ステップS97に進む。
ステップS97で、図3で示す制御を続行するのであれば(ステップS97がNO)、ステップS91まで戻り、ステップS91以降を繰り返す。
【0041】
次に、図4の制御を説明する。
図4において、ステップS101では、三方弁V4が燃焼触媒7側に切り換わるまで待機している(ステップS101がNOのループ)。
三方弁V4が燃焼触媒7側に切り換わったならば(ステップS101がYES)、燃焼触媒表面の熱電対23が触媒の上限温度(例えば、800℃)以上になるまで待機する(ステップS102がNOのループ)。
燃焼触媒7の表面の熱電対23が上限温度(800℃)以上であることを検出したならば(ステップS102がYES)、三方弁V4を徐々にバーナ4側に切り換える(ステップS103)。
ここで、三方弁V4を急激に切り換えず、徐々にバーナ4側に切り換えるのは、燃焼触媒7の失火と、バーナ4の失火とが同時に起こってしまう事態を防止する趣旨である。
【0042】
ステップS104では、バーナ4側の着火を確認したか否かを判断する。
バーナ4側で着火したことが確認された場合には(ステップS104がYES)、オフガスの供給切換弁V4を瞬時にバーナ4側に切り換え(ステップS105)、ステップS107に進む。ステップS107では、三方弁V4はバーナ4側に切り換わっており、オフガスは全てバーナ4側へ供給されるので、図3の制御を実行する。
【0043】
ステップS104で、バーナ4側の着火を確認できない場合には(ステップS104がNO)、燃焼触媒7の上限温度に達するメタン濃度であっても、バーナ4で良好な燃焼が出来ない程度のメタン濃度であると判断される。係る場合には、ステップS106において、流量制御弁Vaの開度を増し、及び/又は、ブロワ8の出力を増大し、燃焼触媒7への空気供給量を増大して、多量の空気を燃焼触媒7内部に供給し、燃焼触媒7の表面温度を低下させる。それと共に、オフガスによるバーナ4着火の可能性を考慮して、少量のオフガスをバーナ4側に供給する。
そして、ステップS103まで戻り、ステップS103以降を繰り返す。
【0044】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
例えば、図示の実施形態では、バイオガスからメタンを精製或いは分離する装置として、PSA法によるメタン分離装置を用いているが、膜分離法によるメタン分離装置を用いても良い。
また、メタン濃度及び/又はフレームロッド電流値を判断パラメータとしている判断工程においては、メタン濃度のみを判断パラメータとしても良いし、フレームロッド電流値のみを判断パラメータとしても良いし、メタン濃度とフレームロッド電流値とを共に判断パラメータとすることが出来る旨を付言する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図。
【図2】実施形態の起動手順を示すフローチャート。
【図3】実施形態の定常時の制御を示すフローチャート。
【図4】実施形態の定常時における図3とは別の制御を示すフローチャート。
【図5】PSA分離装置の概要を示す説明図。
【符号の説明】
【0046】
1・・・メタン分離装置/PSA
2・・・メタン貯蔵タンク
4・・・バーナ
5・・・熱交換器
6・・・電気ヒータ
7・・・燃焼触媒
8・・・ブロワ
10・・・制御手段/コントロールユニット
21〜24・・・熱電対
41・・・フレームロッド
L1・・・バイオガス供給ライン
L3・・・メタン含有オフガスライン
Lx・・・排ガスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオガスからメタンを分離するメタン分離装置(1)のオフガスを燃焼するオフガス燃焼装置において、メタン分離装置(1)のオフガスが流れるオフガスライン(L3)と、オフガスを燃焼するバーナ(4)と、メタン分離装置(1)をバイパスしてバーナ(4)にバイオガスを供給するバイパスライン(L1b)と、バイパスライン(L1b)を流れるバイオガスの供給量を制御するバイオガス供給量制御装置(V1)と、バーナ(4)の燃焼状態を検出する検出装置(41)と、制御装置(10)とを備え、バーナ(4)に連通する前記オフガスライン(L3)から燃焼触媒(7)に連通する第2のオフガスライン(L32)が分岐しており、オフガスライン(L3)の分岐点には切換装置(V4)が設けられ、第2のオフガスライン(L32)には、バーナ(4)の燃焼排ガス或いは燃焼触媒の排ガスが保有する熱量を燃焼触媒に供給されるオフガスへ投入する熱交換器(5)と、熱交換器(5)と燃焼触媒(7)との間の領域で燃焼触媒に供給されるオフガスを加熱する加熱装置(6)と、燃焼触媒(7)に供給されるオフガスの温度を計測するオフガス温度計測装置(21、22)と、燃焼触媒(7)の表面温度を計測する触媒温度計測装置(23)とが介装されており、燃焼触媒(7)の排ガスが流れる排ガスライン(Lx)はバーナ(4)の燃焼排ガスが流れる燃焼排ガスライン(Lx2)と合流(Bx)すると共に前記熱交換器(5)に連通しており、燃焼触媒(7)に燃焼用空気を供給する空気供給装置(8)が設けられ、空気供給装置(8)の吐出口と連通する空気供給ライン(La)は第2のオフガスライン(L32)の熱交換器(5)よりも上流側の領域に合流していることを特徴とするオフガス燃焼装置。
【請求項2】
制御装置(10)は、起動時或いはバーナ(4)の燃焼状態が安定している場合には切換装置(V4)をバーナ(4)側に切り換え、起動時以外で且つバーナ(4)の燃焼状態が不安定な場合には切換装置(V4)を燃焼触媒(7)側に切り換える機能を有している請求項1のオフガス燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−11436(P2013−11436A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175777(P2012−175777)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【分割の表示】特願2008−187061(P2008−187061)の分割
【原出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】