説明

オフセット印刷用インキ組成物の製造方法およびオフセット印刷用インキ組成物

【課題】 ロジン変性樹脂の低分子量化を抑制し、かつ熱エネルギーロスを少なくすることができるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 オフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程と、インキ調製工程とを含む。ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程では、140〜190℃の融点を有するロジン変性樹脂の合成後、前記ロジン変性樹脂が融点以上の温度を維持している間に、前記ロジン変性樹脂が100質量部に対して植物油成分の4〜31質量部を添加して撹拌混合し、溶融温度が80〜170℃となるように調整してロジン変性樹脂−植物油成分混合物を得る。そして、インキ調製工程では、顔料、前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分および油成分を用いてオフセット印刷用インキ組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷用インキ組成物の製造方法およびオフセット印刷用インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷は、印刷版上に供給されたインキを、ゴムブランケットなどの中間転写体に転写した後、紙などの被印刷体に印刷することを特徴とした印刷方式である。そして、オフセット印刷は、高精細かつ鮮明な画像の印刷物を短時間で大量に印刷することができることから、商業印刷、新聞印刷などの分野で広く用いられる印刷方式の代表的なものとなっている。この印刷方式で使用されるオフセット印刷用インキ組成物には、主要な樹脂成分としてロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂などが広く使用されている。これら樹脂成分を構成する樹脂の分子量は、種類にもよるが、一般的に数万〜数十万であり、また、その軟化点も150℃程度のものから200℃以上のものまで様々である。そして、樹脂成分を構成する樹脂は、求められるオフセット印刷用インキ組成物の特性に応じて適宜使い分けられるのが一般的である。
【0003】
オフセット印刷用インキ組成物は、鉱物油成分および植物油成分の少なくとも1つの油成分と樹脂と顔料とからなるが、これらを一度に混合して製造するものではない。通常は、まず、樹脂を油成分に溶解させて、オフセット印刷用インキ樹脂ワニス(以下、単に「ワニス」ということもある)と呼ばれる中間体の生成を介するのが一般的である。そして、ワニスに顔料および各種添加剤を配合して、最終的にオフセット印刷用インキ組成物が得られるのである。
【0004】
ところで、オフセット印刷用インキ組成物の樹脂成分を構成する樹脂は、通常、樹脂メーカーにおいてバルク重合(塊状重合)によって合成され、ブロック状もしくはフレーク状に解砕された塊状態の固形樹脂としてインキメーカーに供給される。このような塊状態の固形樹脂は、油成分とそのまま混合しても溶解しない。そこで、固形樹脂を油成分に溶解させてワニスを製造するとき、固形樹脂を油成分中に溶解させる工程(以下、「クッキング工程」ということもある)では、固形樹脂を油成分に投入した後、固形樹脂の軟化点以上に加熱して軟らかくしながら撹拌混合し、固形樹脂を油成分中に溶解させる。
【0005】
クッキング工程は、固形樹脂の種類にもよるが、通常180〜250℃程度という高温下で行われる。また、高温下で撹拌混合する場合であっても、溶解性の低い高分子量の固形樹脂を、油成分中に完全に溶解させるためには、長時間にわたって撹拌混合する必要がある。
【0006】
このように、ワニスを製造するときには、クッキング工程において、固形樹脂および油成分を高温下で長時間にわたって撹拌混合するので、多くの熱エネルギーを要する。しかしながら、高温下で長時間にわたって撹拌混合されて得られたワニスは、常温(25℃程度)〜100℃程度の温度下で、貯蔵もしくは使用されるので、クッキング工程において投入された熱エネルギーの多くが放冷により大気中に拡散されてしまうことになる。したがって、その分の熱エネルギーは無駄にせざるを得ない。
【0007】
さらに、固形樹脂を溶解する油成分が動植物油である場合には、200℃より高い温度でクッキング処理を行うと、ポリエステル樹脂の一種であるロジン変性フェノール樹脂およびロジン変性マレイン酸樹脂から選ばれるロジン変性樹脂と、動植物油(たとえば、グリセリンのトリ脂肪酸エステル)との間でエステル交換反応が起こり、固形樹脂の分子量が低下するという問題が発生する。そして、固形樹脂の分子量が低下すると、印刷時にインキのミスチング増加および対面セットオフが発生し、さらに印刷適性が大幅に低下する。そのため、ワニスを製造するときのクッキング工程における、固形樹脂および油成分の撹拌混合時に、エステル交換反応の発生を抑制する必要がある。
【0008】
エステル交換反応を抑制するには、固形樹脂を溶解する油成分として鉱物油を使用すること、撹拌混合時の温度を低下させることが効果的である。しかしながら、鉱物油の使用量を増加させることは、環境負荷の低減を目的として、オフセット印刷用インキ組成物の油成分を鉱物油から動植物油に置き換える動きとは逆行するものである。また、クッキング工程における撹拌混合時の温度を低下させるためには、軟化点の低い固形樹脂を使用すれば良いことになるが、軟化点の低い固形樹脂は、一般的に分子量が低い樹脂である。そのため、樹脂成分として軟化点の低い固形樹脂が用いられたオフセット印刷用インキ組成物は、印刷時におけるインキのミスチング増加および対面セットオフの発生などを避けることができず、印刷適性が大幅に低下する。
【0009】
このような問題を解決するために、たとえば、特許文献1には、高温(200℃以上)下で鉱物油などの高沸点溶剤に固形樹脂を溶解した後に、低温(80〜180℃)下で動植物油に溶解するワニスの製造方法が開示されている。特許文献1に開示されるワニスの製造方法によれば、高温下で固形樹脂を溶解する工程では、油成分として鉱物油が用いられており、動植物油が存在しないので、固形樹脂と油成分との間におけるエステル交換反応をある程度抑制することができる。また、特許文献1に開示されるワニスの製造方法では、高温下でのクッキング工程が長時間になるのを抑制することができるので、クッキング工程時の熱エネルギーロスを少なくすることができる。
【0010】
また、特許文献2には、ロジンエステル樹脂と、フェノールホルムアルデヒド初期縮合物とを、油成分中で縮合反応させることによって、ロジン変性フェノール樹脂が油成分中に溶解されてなるワニスを作製するワニスの製造方法が開示されている。特許文献2に開示されるワニスの製造方法によれば、固形樹脂を油成分中に溶解させる必要がないので、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
【0011】
また、特許文献3には、少なくとも樹脂、ゲル化剤および有機溶剤を含有する混合物を150℃以下で加熱して樹脂を高分子量化してワニスを作製するゲルワニスの製造方法が開示されている。特許文献3に開示されるゲルワニスの製造方法によれば、150℃以下という比較的温度の低い条件下でゲルワニスを製造するので、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−47950号公報
【特許文献2】特開平10−88052号公報
【特許文献3】特開2011−12187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に開示されるワニスの製造方法は、高温下で固形樹脂を油成分中に溶解させる工程を含むので、熱エネルギーロスを充分に少なくすることが可能な製造方法であるとはいえない。また、特許文献2に開示されるワニスの製造方法では、ロジンエステル樹脂とフェノールホルムアルデヒド初期縮合物とを縮合反応させる反応工程、作製された高粘度ワニスを輸送および貯蔵する輸送工程、貯蔵工程が新たに必要であり、製造工程が複雑化してしまう。また、特許文献3に開示されるゲルワニスの製造方法では、150℃以下という比較的温度の低い条件下でゲルワニスを製造するのに伴って、製造時間が長時間となってしまい、熱エネルギーロスを充分に少なくすることが可能な製造方法であるとはいえない。
【0014】
したがって本発明の目的は、簡単化された状態で、エステル交換反応による固形樹脂の低分子量化を抑制することができるとともに、熱エネルギーロスを少なくすることができるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法を提供することであり、該製造方法で得られるオフセット印刷用インキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、顔料と、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分と、油成分と、を主たる成分とするインキ用材料を用いるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法であって、
140〜190℃の融点を有するロジン変性樹脂の合成後、前記ロジン変性樹脂が融点以上の温度を維持している間に、前記ロジン変性樹脂が100質量部に対して植物油成分の4〜31質量部を添加して撹拌混合し、溶融温度が80〜170℃となるように調整してロジン変性樹脂−植物油成分混合物を得るロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程と、
顔料と、前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分と、油成分とを用いてオフセット印刷用インキ組成物を調製するインキ調製工程と、を含むことを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物の製造方法である。
【0016】
また本発明は、前記インキ調製工程は、
少なくとも前記顔料と、前記樹脂成分として顔料分散用樹脂および前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物と、前記油成分とを、撹拌部材が内部空間に設けられるタンクに投入し、撹拌部材を軸線まわりに回転駆動させて撹拌混合することによって、前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を前記油成分中に溶解させるとともに、予備混合し、顔料混合物を得る予備混合工程と、
分散装置を用いて前記顔料混合物を分散処理して顔料分散体を得る顔料分散工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記インキ調製工程は、
予め前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物と前記油成分とを、75〜110℃の温度下で撹拌混合し、前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を前記油成分中に溶解させたワニスと、前記顔料と、前記樹脂成分として顔料分散用樹脂とを、撹拌部材が内部空間に設けられるタンクに投入し、撹拌部材を軸線まわりに回転駆動させて撹拌混合し、顔料混合物を得る予備混合工程と、
分散装置を用いて前記顔料混合物を分散処理して顔料分散体を得る顔料分散工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記インキ調製工程は、
少なくとも前記顔料と、前記樹脂成分として顔料分散用樹脂と、前記油成分とを、撹拌部材が内部空間に設けられるタンクに投入し、撹拌部材を軸線まわりに回転駆動させて撹拌混合し、顔料混合物を得る予備混合工程と、
分散装置を用いて前記顔料混合物を分散処理して顔料分散体を得る顔料分散工程と、
前記インキ用材料のうち、前記予備混合工程で前記タンクに投入されたものを除く残余のインキ用材料を、前記顔料分散体が収容された前記タンクに投入し、撹拌部材を軸線まわりに回転駆動させて撹拌混合する後添加工程と、を含み、
前記残余のインキ用材料は、(1)前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物および前記油成分を含む残余材料、または、(2)予め前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物と前記油成分とを、75〜110℃の温度下で撹拌混合し、前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を前記油成分中に溶解させたワニスを含む残余材料、であることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記撹拌部材は、回転軸と、回転軸に固定されるカッター羽根とを有する部材であることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記顔料分散工程は、
前記予備混合工程で得られた前記タンク内の前記顔料混合物を、前記タンクから前記分散装置に供給し、顔料を分散処理して1次分散体を得る1次分散工程と、
前記1次分散体を、前記分散装置から吐出して元の前記タンクに戻す戻し工程と、
前記タンク内に収容される収容物を、前記タンクと前記分散装置との間で循環させて、前記分散装置における分散処理を顔料の粒子径が5μm以下となるまで繰り返し行って顔料分散体を得る循環工程と、を含むことを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記ロジン変性樹脂は、その融点が170〜190℃であり、下記の方法による0号ソルベントトレランス値が7g/g以下である、油成分に対する溶解性が低い樹脂であることを特徴とする。
(0号ソルベントトレランス値:ロジン変性樹脂とトルエンとを1:1の重量比で加熱混合したものに、25℃でさらに0号ソルベント(脂肪族炭化水素系溶剤、新日本石油株式会社製)を加えて、白濁するまでに要した0号ソルベント重量に対するロジン変性樹脂量から算出した値である。)
【0022】
また本発明は、前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程では、平均粒子径が3mm以下となるように粉砕処理して前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を得ることを特徴とする。
また本発明は、前記顔料が黄色顔料であることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、前記オフセット印刷用インキ組成物の製造方法によって得られるオフセット印刷用インキ組成物である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、オフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程とインキ調製工程とを含む。ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程では、140〜190℃の融点を有するロジン変性樹脂の合成後、前記ロジン変性樹脂が融点以上の温度を維持している間に、ロジン変性樹脂が100質量部に対して植物油成分の4〜31質量部を添加して撹拌混合し、溶融温度が80〜170℃となるように調整してロジン変性樹脂−植物油成分混合物を得る。そして、インキ調製工程では、顔料、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分および油成分を用いてオフセット印刷用インキ組成物を調製する。
【0025】
このように、溶融温度が80〜170℃となるように調整して得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いてオフセット印刷用インキ組成物を調製するので、140〜190℃の融点を有し、油成分に対する溶解性が低いロジン変性樹脂を、低い温度下で油成分中に溶解させることができる。そのため、エステル交換反応によるロジン変性樹脂の低分子量化を抑制することができるとともに、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
【0026】
また本発明によれば、インキ調製工程は、予備混合工程と、顔料分散工程とを含む。予備混合工程では、少なくとも顔料と、樹脂成分として顔料分散用樹脂および前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物と、油成分とをタンクに投入し、撹拌部材を回転駆動させて撹拌混合することによって、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させるとともに予備混合し、顔料混合物を得る。顔料分散工程では、分散装置を用いて、予備混合工程で得られた顔料混合物を分散処理して顔料分散体を得る。
【0027】
このように、インキ調製工程における予備混合工程では、溶融温度が80〜170℃となるように調整して得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いて顔料混合物を調製するので、低い温度下で、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させることができる。そのため、エステル交換反応によるロジン変性樹脂の低分子量化を抑制することができるとともに、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
【0028】
また本発明によれば、インキ調製工程は、予備混合工程と、顔料分散工程とを含む。予備混合工程では、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させたワニスと、顔料と、樹脂成分として顔料分散用樹脂とをタンクに投入し、撹拌部材を回転駆動させて撹拌混合し、顔料混合物を得る。このとき、予備混合工程においてタンクに投入する前記ワニスは、予め調製されたものであり、前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物と油成分とを、75〜110℃の温度下で撹拌混合して得られたものである。そして、顔料分散工程では、分散装置を用いて、予備混合工程で得られた顔料混合物を分散処理して顔料分散体を得る。
【0029】
このように、インキ調製工程における予備混合工程では、溶融温度が80〜170℃となるように調整して得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いて調製されたワニスであり、75〜110℃という低い温度下で、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させたワニスを用いて顔料混合物を得る。そのため、エステル交換反応によるロジン変性樹脂の低分子量化を抑制することができるとともに、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
【0030】
また本発明によれば、インキ調製工程は、予備混合工程と、顔料分散工程と、後添加工程とを含む。予備混合工程では、少なくとも顔料と、樹脂成分として顔料分散用樹脂と、油成分とをタンクに投入し、撹拌部材を回転駆動させて撹拌混合し、顔料混合物を得る。顔料分散工程では、分散装置を用いて、予備混合工程で得られた顔料混合物を分散処理して顔料分散体を得る。後添加工程では、最終的に製造されるオフセット印刷用インキ組成物中に含有されるインキ用材料の全量のうち、予備混合工程でタンク内に投入されたものを除く残余のインキ用材料を、顔料分散体が収容されたタンクに投入し、撹拌部材を回転駆動させて撹拌混合する。このとき、後添加工程においてタンクに投入する前記残余のインキ用材料は、(1)前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物および油成分を含む残余材料、または、(2)予め前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物と油成分とを、75〜110℃の温度下で撹拌混合し、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させたワニスを含む残余材料、である。
【0031】
このように、インキ調製工程における後添加工程では、溶融温度が80〜170℃となるように調整して得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む残余材料を用いるので、低い温度下で、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させることができる。また、後添加工程では、溶融温度が80〜170℃となるように調整して得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いて調製されたワニスであり、75〜110℃という低い温度下で、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させたワニスを含む残余材料を用いる。したがって、エステル交換反応によるロジン変性樹脂の低分子量化を抑制することができるとともに、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
【0032】
また本発明によれば、タンク内の収容物を撹拌混合するための撹拌部材は、回転軸と、回転軸に固定されるカッター羽根とを有する部材である。これによって、カッター羽根でロジン変性樹脂−植物油成分混合物を粉砕しながら撹拌混合することができるので、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に効率よく溶解させることができる。
【0033】
また本発明によれば、顔料分散工程は、1次分散工程と、戻し工程と、循環工程とを含む。1次分散工程では、予備混合工程で得られた顔料混合物を、タンクから分散装置に供給し、顔料を分散処理して1次分散体を得る。戻し工程では、1次分散工程で得られた1次分散体を、分散装置から吐出して元のタンクに戻す。そして、循環工程では、タンク内に収容される収容物を、タンクと分散装置との間で循環させて、分散装置における分散処理を顔料の粒子径が5μm以下となるまで繰り返し行って顔料分散体を得る。このように、タンク内の収容物を、タンクと分散装置との間で循環させて顔料分散体を得るので、高い生産効率でオフセット印刷用インキ組成物を得ることができる。
【0034】
また本発明によれば、ロジン変性樹脂は、その融点が170〜190℃であり、0号ソルベントトレランスが7g/g以下である油成分に対する溶解性が低い樹脂である。なお、0号ソルベントトレランスとは、ロジン変性樹脂とトルエンとを1:1の重量比で加熱混合したものに、25℃でさらに0号ソルベント(脂肪族炭化水素系溶剤、新日本石油株式会社製)を加えて、白濁するまでに要した0号ソルベント重量に対するロジン変性樹脂量から算出した値である。このような油成分に対する溶解性が低いロジン変性樹脂であっても、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で溶融温度が80〜170℃の油成分に対する溶解性に優れるロジン変性樹脂−植物油成分混合物を得ることができる。
【0035】
また本発明によれば、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程では、平均粒子径が3mm以下となるように粉砕処理してロジン変性樹脂−植物油成分混合物を得る。これによって、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に効率よく溶解させることができる。
【0036】
また本発明によれば、顔料が黄色顔料である。黄色顔料は、130℃以上の高温下で加熱処理を行うと変色する。本発明に係るオフセット印刷用インキ組成物の製造方法では、溶融温度が80〜170℃となるように調整したロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いるので、低い温度下でロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させることができ、これによって黄色顔料が変色するのを防止した状態でオフセット印刷用インキ組成物を得ることができる。
【0037】
また本発明によれば、オフセット印刷用インキ組成物は、エステル交換反応によるロジン変性樹脂の低分子量化を抑制可能な製造方法によって得られるものであるので、印刷時におけるインキのミスチング増加および対面セットオフの発生などが防止された、高い印刷適性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係るオフセット印刷用インキ組成物の製造方法の手順を示す工程図である。
【図2】撹拌装置100の構成を示す図である。
【図3】撹拌装置100に備えられるカッター羽根10の構成を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るオフセット印刷用インキ組成物の製造方法の手順を示す工程図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るオフセット印刷用インキ組成物の製造方法の手順を示す工程図である。
【図6】製造システム1の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法)
図1は、本発明の第1実施形態に係るオフセット印刷用インキ組成物の製造方法の手順を示す工程図である。第1実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程と、インキ調製工程とを含む。そして、インキ調製工程は、ワニス調製工程と、予備混合工程と、顔料分散工程と、後添加工程とを含む。このオフセット印刷用インキ組成物の製造方法では、顔料と、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分と、油成分と、を主たる成分とするインキ用材料を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造する。なお、本実施形態において樹脂成分は、顔料分散用樹脂およびバインダー樹脂からなる。また、本実施形態においてバインダー樹脂とは、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られるロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含めて、この分野で常用される顔料分散用樹脂以外の樹脂のことをいう。樹脂成分の詳細については、後述する。
【0040】
[ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程]
ステップs1のロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程では、従来公知の塊状重合法などにより加熱下で合成された140〜190℃の融点を有するロジン変性フェノール樹脂およびロジン変性マレイン酸樹脂から選ばれるロジン変性樹脂を合成後、前記ロジン変性樹脂が融点以上の温度を維持している間に、ロジン変性樹脂が100質量部に対して植物油成分の4〜31質量部を添加して撹拌混合し、溶融温度が80〜170℃となるように調整してロジン変性樹脂−植物油成分混合物を得る。
【0041】
たとえば、上記ロジン変性樹脂がロジン変性フェノール樹脂の場合は、塊状重合法として、溶融したロジン類にフェノール樹脂類および多価アルコールを添加し、250〜270℃の高温で反応させ、融点140〜190℃となるロジン変性フェノール樹脂を合成する。このような方法で合成された樹脂が合成終了後の樹脂が融点以上の液状の間に、ロジン変性フェノール樹脂が100質量部に対して植物油成分の4〜31質量部を添加して撹拌混合し、溶融温度が80〜170℃となるように調整してロジン変性フェノール樹脂−植物油成分混合物を得る。
【0042】
このようにして得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を、平均粒子径が3mm以下となるように粉砕処理するのが好ましい。これによって、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に効率よく溶解させることができる。
【0043】
ここで、ロジン変性樹脂の融点は、JIS K−0064に準じて測定したものであり、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物の溶融温度は、JIS K−0064に記載されている方法に基づいて、当該ロジン変性樹脂−植物油成分混合物が溶融したと判断されるときの温度である。
【0044】
また、ロジン変性樹脂は、その融点が170〜190℃であり、下記の方法による0号ソルベントトレランス値が7g/g以下である油成分に対する溶解性が低い樹脂がより好ましい。0号ソルベントトレランス値は、ロジン変性樹脂とトルエンとを1:1の重量比で加熱混合したものに、25℃でさらに0号ソルベント(脂肪族炭化水素系溶剤、新日本石油株式会社製)を加えて、白濁するまでに要した0号ソルベント重量に対するロジン変性樹脂量から算出した値である。
【0045】
油成分としては、オフセット印刷用インキ組成物の油成分として常用される油成分を用いることができ、植物油成分、鉱物油成分を挙げることができる。
【0046】
植物油成分としては、植物油および/または植物油由来の脂肪酸エステルが好適である。植物油としては、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油などの乾性油または半乾性油が例示できる。また、植物油由来の脂肪酸エステル化合物としては、上記植物油由来の脂肪酸のモノアルキルエステル化合物が挙げられる。上記脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸としては、炭素数16〜20の飽和または不飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸などが例示できる。脂肪酸モノエステルを構成するアルコール由来のアルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシルなどのアルキル基が例示できる。
【0047】
これら植物油、植物油由来の脂肪酸エステルからなる植物油成分は、要求される溶解性などに応じて、単独で、または、2種以上を組み合わせて使用できる。好ましい植物油成分は、大豆油および/または大豆油脂肪酸エステルである。
【0048】
鉱物油成分としては、水と相溶しない沸点160℃以上、好ましくは沸点200℃以上の非芳香族系石油溶剤、重質油が使用できる。非芳香族系石油溶剤の具体例としては、0号ソルベント、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号(以上、いずれも新日本石油株式会社製)などが挙げられる。これら鉱物油成分は、要求される溶解性などに応じて、単独で、または、2種以上を組み合わせて使用できる。重質油としては、JIS−M 0104に定義されている、石炭液化油、石油、サンドオイル、シェールオイルなどを処理した時に得られる、黒色または黒褐色の液体状、半固体状または固体状の高沸点の鉱物油を使用できる。重質油としては特に限定されず、上述の石炭液化油、石油、サンドオイル、シェールオイルなどを処理した時に得られる重質油が使用でき、たとえば、石油ナフサを熱分解して得られる石油系重質油が使用できる。また、近年の環境に対する配慮から米国のOSHA基準とEUのPCA基準を満たした石油系重質油を使用するのが好ましい。この重質油は、顔料を分散させるための分散助剤として使用されるものである。
【0049】
[インキ調製工程]
ステップs2のインキ調製工程は、顔料と、油成分と、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分とを用いてオフセット印刷用インキ組成物を調製する工程である。本実施形態では、インキ調製工程は、ワニス調製工程と、予備混合工程と、顔料分散工程と、後添加工程とを含む。
【0050】
<ワニス調製工程>
ステップs2−(a)のワニス調製工程は、後述の予備混合工程で用いるワニスを、予め調製する工程である。ステップs2−(a)のワニス調製工程では、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物と油成分とを、75〜110℃の温度下で撹拌混合し、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させてワニスを得る。このワニス調製工程で、さらにゲル化剤を添加してゲルワニスを調製してもよい。このような場合に使用するゲル化剤としては、アルミニウムアルコラート類、アルミニウムキレート化合物などが挙げられ、好ましい具体例としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、エチルアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテートなどが例示できる。
【0051】
ワニス調製工程において、より低い温度で短い時間のうちにロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させることができるほど、少ないエネルギーでオフセット印刷用インキ組成物を製造することができることになる。そのためには、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物の溶融温度が低いことが望ましいが、低すぎるとミスチングおよび対面セットオフの発生が起こりやすくなる傾向がある。
【0052】
本実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において、ワニス調製工程では、溶融温度が80〜170℃となるように調整して得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いてワニスを調製するので、75〜110℃という低い温度下で、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させることができる。そのため、エステル交換反応によるロジン変性樹脂の低分子量化を抑制することができるとともに、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
【0053】
ここで、ワニス調製工程においてロジン変性樹脂−植物油成分混合物と油成分とを撹拌混合させる撹拌装置について、図2を用いて説明する。図2は、撹拌装置100の構成を示す図である。撹拌装置100は、タンク20の内部空間に、カッター羽根10を備える撹拌部材が設けられて構成される。このタンク20にロジン変性樹脂−植物油成分混合物と油成分とを投入し、撹拌部材を軸線まわりに回転駆動させることによって、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物と油成分とを撹拌混合する。
【0054】
タンク20は、底面が円弧状の有底筒状に形成されたものであり、ステンレス鋼などの金属材料によって構成されている。撹拌装置100では、タンク20の外周面を覆うように加熱手段24が設けられており、この加熱手段24は、水などの流体が流体供給口24aから流体排出口24bに向けて流過することによって、タンク20内の温度を制御可能に構成されている。また、タンク20の内部空間には、内周面と所定の間隔をあけて対向するようにバッフルプレート25が配設され、タンク20内に投入されるインキ用材料が撹拌混合されるときの流れ方向および流速が制御される。また、タンク20の上縁端部には、着脱自在の蓋体26が設けられ、蓋体26が装着された状態では、タンク20内が密閉空間となる。
【0055】
そして、タンク20の底面中央部には、タンク20内の収容物が装置外部に向けて排出されるときの流過開口となるタンク排出口21が設けられ、タンク20の上方側面には、装置外部からの供給材料がタンク20内に供給されるときの流過開口となるタンク供給口22が設けられている。
【0056】
さらに、撹拌装置100には、タンク20の中心軸線と同一直線上となる軸線まわりに、駆動モータ27により回転駆動される回転軸23が、蓋体26を貫通して設けられ、この回転軸23の延在方向端部近傍には、カッター羽根10が固定されている。
【0057】
カッター羽根10は、タンク20内に投入されるロジン変性樹脂−植物油成分混合物の形態に応じて、最適な形状が異なる。平均粒子径が3mm以下に粉砕処理されたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いてワニスを調製する場合、この分野で常用されるディスクタービン羽根等の通常の撹拌羽根を撹拌羽根として用いても、油成分中にロジン変性樹脂−植物油成分混合物を充分に溶解させることができる。しかしながら、平均粒子径が3mmを超えるロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いてワニスを調製する場合、ディスクタービン羽根等の通常の撹拌羽根を用いて撹拌しても、油成分中にロジン変性樹脂−植物油成分混合物を溶解させることができないことがある。したがって、このような場合には、図3に示す形状を有するカッター羽根10を用いることが好ましい。
【0058】
図3は、撹拌装置100に備えられるカッター羽根10の構成を示す図である。図3(a)は、カッター羽根10の展開図を示し、図3(b)は、カッター羽根10の平面図を示し、図3(c)は、カッター羽根10の側面図を示す。カッター羽根10は、ステンレス鋼などの金属材料からなる部材であり、基部11と、第1ブレード12と、第2ブレード13と、第3ブレード14とを含んで構成されている。また、カッター羽根10の配設位置は、タンク20の底面から、タンク20の高さに対して10〜25%の高さ位置である。
【0059】
基部11は、タンク20の中心軸線と同一直線上となる軸線まわりに回転方向Aに回転駆動される回転軸23に、垂直に固定される板状の部分であり、平面視したときの形状が正六角形である。そして、カッター羽根10では、2枚の第1ブレード12と、2枚の第2ブレード13と、2枚の第3ブレード14との合計6枚のブレードが、軸線に関して周方向に等間隔に、正六角形状の基部11の各辺から半径方向外方に連なるように形成されている。6枚の各ブレード12,13,14は、同じ形状および大きさに形成されており、本実施形態では、平面視したときの形状が台形である。
【0060】
また、6枚の各ブレード12,13,14において、基部11から半径方向外方に延びる延在方向の長さL2は、正六角形状の基部11の各辺の長さL1に対して、150〜300%に設定されるのが好ましい。これによって、カッター羽根10における各ブレード12,13,14の強度を、充分に確保することができる。
【0061】
2枚の第1ブレード12のそれぞれは、基部11から半径方向外方になるにつれて基部11の回転面に対して一方側に離反するように傾斜したブレードである。そして、各第1ブレード12同士は、軸線に関して対称に設けられている。
【0062】
第1ブレード12における基部11の回転面に対する傾斜の角度θ1は、30〜50°に設定されるのが好ましい。これによって、カッター羽根10が回転駆動されるときに、タンク20内に収容される材料に対して撹拌流を作用させることができ、油成分中におけるロジン変性樹脂の粉砕効率を向上することができる。
【0063】
また、第1ブレード12は、回転方向Aの上流側の第1上流側基端部12aが回転方向Aの下流側の第1下流側基端部12bよりも半径方向外側に離反した位置で屈曲して基部11に連なっている。このように構成されたカッター羽根10を回転駆動させると、より効率よくロジン変性樹脂の粉砕効率を向上することができる。
【0064】
さらに、第1ブレード12は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部12cが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。これによって、カッター羽根10が回転駆動されるときに、先細状に形成される第1ブレード12の縁辺部12cによって、タンク20内に収容される材料に切り込みが入れられる。これによって、油成分中におけるロジン変性樹脂の粉砕効率を向上することができる。なお、先細状に形成される第1ブレード12の縁辺部12cの厚みは、縁辺部12c以外の厚みが4mm程度に設定されるのに対して、1mm程度に設定される。
【0065】
2枚の第2ブレード13のそれぞれは、基部11から半径方向外方になるにつれて基部11の回転面に対して他方側に離反するように傾斜したブレードである。そして、各第2ブレード13同士は、回転軸線に関して対称に設けられている。
【0066】
第2ブレード13における基部11の回転面に対する傾斜の角度θ2は、30〜50°に設定されるのが好ましい。これによって、カッター羽根10が回転駆動されるときに、タンク20内に収容される材料に対して撹拌流を作用させることができ、油成分中における樹脂の粉砕効率を向上することができる。
【0067】
また、第2ブレード13は、回転方向Aの上流側の第2上流側基端部13aが回転方向Aの下流側の第2下流側基端部13bよりも半径方向外側に離反した位置で屈曲して基部11に連なっている。このように構成されたカッター羽根10を回転駆動させると、より効率よくロジン変性樹脂−植物油成分混合物の粉砕効率を向上することができる。
【0068】
さらに、第2ブレード13は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部13cが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。これによって、カッター羽根10が回転駆動されるときに、先細状に形成される第2ブレード13の縁辺部13cによって、タンク20内に収容される材料に切り込みが入れられる。これによって、油成分中におけるロジン変性樹脂−植物油成分混合物の粉砕効率を向上することができる。なお、先細状に形成される第2ブレード13の縁辺部13cの厚みは、縁辺部13c以外の厚みが4mm程度に設定されるのに対して、1mm程度に設定される。
【0069】
2枚の第3ブレード14のそれぞれは、基部11から半径方向外方に連なり、基部11の回転面に平行なブレードである。そして、各第3ブレード14同士は、回転軸線に関して対称に設けられている。そして、第3ブレード14は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部14aが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。これによって、カッター羽根10が回転駆動されるときに、先細状に形成される第3ブレード14の縁辺部14aによって、タンク20内に収容される材料に切り込みが入れられる。これによって、油成分中におけるロジン変性樹脂−植物油成分混合物の粉砕効率を向上することができる。なお、先細状に形成される第3ブレード14の縁辺部14aの厚みは、縁辺部14a以外の厚みが4mm程度に設定されるのに対して、1mm程度に設定される。
【0070】
以上のように、2枚の第1ブレード12と、2枚の第2ブレード13と、2枚の第3ブレード14との合計6枚のブレードが、基部11から半径方向外方に連なるように形成されたカッター羽根10では、2枚の第3ブレード14の遊端部間の長さに対応する、最外周縁部の先端部における回転直径L4が、タンク20の内径に対して30〜80%に設定される。そして、第3ブレード14の遊端部の周速度、すなわち、各ブレード12,13,14における最外周縁部の先端部の周速度が、10m/s以上となる速度で、カッター羽根10を回転駆動させるのが好ましい。
【0071】
なお、撹拌装置100に備えられるカッター羽根は、前述したカッター羽根10の形状に限定されるものではない。前述したカッター羽根10は、6枚のブレードが基部11から半径方向外方に連なるように形成されたものであるが、カッター羽根のブレードの枚数としては、好ましくは3〜10枚、より好ましくは4〜8枚である。
【0072】
<予備混合工程>
ステップs2−(b)の予備混合工程では、前述した撹拌装置100を用いて各材料を撹拌混合することができる。具体的には、ステップs2−(b)の予備混合工程では、少なくとも顔料と、樹脂成分として顔料分散用樹脂と、ワニス調製工程で得られたワニスとを、撹拌羽根を備える撹拌部材が内部空間に設けられるタンク20に投入し、撹拌羽根を回転軸23の軸線まわりに回転駆動させて撹拌混合し、顔料混合物を得る。なお、予備混合工程において、上記成分に対して油成分、樹脂成分としてロジン変性樹脂−植物油成分混合物以外のバインダー樹脂を、さらに添加してもよい。予備混合工程では、後工程の顔料分散工程において、顔料に適度な分散力が付与されるように、各材料を用いて好適な流動性と粘度域に調整された顔料混合物を得る。
【0073】
なお、上記撹拌羽根としては、ディスクタービン羽根等の通常の撹拌羽根、カッター羽根10のどちらも使用可能であるが上述のワニス調製工程後、そのまま同一タンク20を使用する場合、予備混合工程や後述の後添加工程で固形のバインダー樹脂を使用する場合は、カッター羽根10を使用することが好ましい。
【0074】
予備混合工程においてワニスを用いた場合における、撹拌混合時の温度条件は、室温〜170℃、好ましくは、60〜120℃に設定される。
【0075】
顔料としては、オフセット印刷用インキ組成物の顔料成分として常用される顔料を用いることができ、無機顔料または有機顔料を挙げることができる。具体的には、二酸化チタン、磁性酸化鉄、カーボンブラックなどの無機顔料、アゾ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料などの有機顔料が使用できる。顔料のオフセット印刷用インキ組成物中における含有量は5〜25質量%程度が適当である。なお、好ましい含有量は、黄色顔料のときは6〜20質量%、紅色顔料のときは8〜20質量%、藍色顔料のときは8〜25質量%、墨顔料のときは10〜25質量%の範囲である。また、オフセット印刷用インキ組成物中の適正な固形分濃度、粘度、および水幅などの調整のために、上記の有色顔料以外に、必要に応じて、着色力のないクレー、タルク、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、ベントナイトなどの体質顔料をオフセット印刷用インキ組成物中に0〜35質量%の範囲で併用してもよい。
【0076】
ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られるロジン変性樹脂−植物油成分混合物以外のバインダー樹脂としては、オフセット印刷用インキ組成物の樹脂成分として常用されるバインダー樹脂を用いることができる。具体的には、石油樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリエステル樹脂、および、これら樹脂の変性樹脂などから選択される1種または2種以上の樹脂が使用できる。また、ミスチング、対面セットオフを発生させない範囲で、融点が低い従来から公知のロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂も利用できる。
【0077】
顔料分散用樹脂としては、オフセット印刷用インキ組成物の樹脂成分として常用される顔料分散用樹脂のうち、低粘度化が図れるもの(液状のもの)を用いることができる。具体的には、植物油変性アルキッド樹脂などのアルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂(天然アスファルタムから抽出された軟化点120〜125℃の炭化水素樹脂も含む)、高分子量の顔料分散剤などが例示できる。そして、使用する顔料に応じて、最適な顔料分散用樹脂を選択することが好ましい。
【0078】
オフセット印刷用インキ組成物中における樹脂成分の含有量は特に限定されないが、顔料分散用樹脂とバインダー樹脂の合計で通常15〜40質量%程度の範囲が適当である。
【0079】
また、予備混合工程では、前述した顔料、樹脂成分および油成分以外に、添加剤を用いてもよい。添加剤としては、オフセット印刷用インキ組成物の成分として常用される、ドライヤー、乾燥遅延剤、酸化防止剤、整面助剤、耐摩擦性向上剤、裏移り防止剤、非イオン系界面活性剤などを挙げることができる。なお、添加剤は、予備混合工程で用いてもよいし、後述する後添加工程で用いてもよい。
【0080】
<顔料分散工程>
ステップs2−(c)の顔料分散工程では、予備混合工程で得られた顔料混合物を分散処理して顔料分散体を得る。顔料混合物を分散処理する方法としては、顔料の二次粒子の凝集力より高いせん断力を付加することにより、顔料混合物中に顔料を微細分散する方法(ミリング法)と、顔料を水で湿潤させた含水スラリー(乾燥顔料に水を加えて湿潤させたもので、含水ケーキとも呼ばれる)を利用して、顔料を水相から油相に転相させるのに必要な応力(と熱と)を付加することにより、顔料混合物中に顔料を微細分散する方法(フラッシング法)を挙げることができる。
【0081】
顔料混合物をミリング法で分散処理する場合、ビーズミル、3本ロールミルなどのミル型分散装置を用いて、顔料混合物を練肉分散させることにより顔料分散体を得る。ビーズミルとしては、直径0.2〜3mm程度で、ジルコニアなどのセラミックスやスチールといった材質のビーズを粉砕メディアとしたダイノミル、DCPミルなどが使用できる。顔料混合物をフラッシング法で分散処理する場合、フラッシャー(ニーダー)などのフラッシング装置を用いて、顔料混合物をフラッシングすることにより顔料分散体を得る。その後、顔料分散体中の水の含有量を、好ましくは2質量%以下となるまで脱水させる。
【0082】
本実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において顔料分散工程では、顔料の粒子径が5μm以下となるまで分散処理を繰り返すのが好ましい。なお、顔料として含水スラリーを用いたときに、フラッシング法だけで、顔料の粒子径が5μm以下にならない場合には、必要に応じて、ビーズミル、3本ロールミルなどのミル型分散装置で、ミリング法単独よりずっと少ない応力を付加するようなミリング法の併用も可能である。
【0083】
<後添加工程>
ステップs2−(d)の後添加工程では、前述した撹拌装置100を用いて各材料を撹拌混合することができる。具体的には、ステップs2−(d)の後添加工程では、最終的に製造されるオフセット印刷用インキ組成物中に含有されるインキ用材料の全量のうち、予備混合工程でタンク20に投入されたものを除く残余材料を、顔料分散工程で得られた顔料分散体が収容されたタンク20に投入し、撹拌羽根を回転軸23の軸線まわりに回転駆動させて撹拌混合する。これによって、顔料が均一に分散されて粘度調整されたオフセット印刷用インキ組成物を得ることができる。
【0084】
なお、後添加工程に添加する残余材料中に、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物、ワニス調製工程で得られたワニスを用いることも可能である。後添加工程における撹拌混合時の温度条件は、室温〜170℃、好ましくは60〜120℃に設定される。ただし、後添加工程でロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いる場合には、撹拌混合時の温度条件としては、75〜110℃が好ましい。
【0085】
また、本実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法では、予備混合工程において、インキ用材料の全量を撹拌混合して顔料混合物を得るようにしてもよい。この場合には、後添加工程を省略することができるので、製造工程を簡略化することができる。
【0086】
以上の各工程を経て製造されるオフセット印刷用インキ組成物は、溶融温度が80〜170℃のロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用い、エステル交換反応によるロジン変性樹脂の低分子量化を抑制可能な製造方法によって得られるものであるので、印刷時におけるインキのミスチング増加および対面セットオフの発生などが防止された、高い印刷適性を有する。
【0087】
(第2実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法)
図4は、本発明の第2実施形態に係るオフセット印刷用インキ組成物の製造方法の手順を示す工程図である。第2実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程と、インキ調製工程とを含む。そして、インキ調製工程は、予備混合工程と、顔料分散工程と、後添加工程とを含む。このオフセット印刷用インキ組成物の製造方法では、顔料と、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分と、油成分と、を主たる成分とするインキ用材料を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造する。なお、本実施形態において樹脂成分は、顔料分散用樹脂およびバインダー樹脂からなる。また、本実施形態においてバインダー樹脂とは、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られるロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含めて、この分野で常用される顔料分散用樹脂以外の樹脂のことをいう。本実施形態で用いる樹脂成分、油成分および顔料は、前述した第1実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において用いたものと同様である。
【0088】
[ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程]
ステップa1のロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程では、140〜190℃の融点を有するロジン変性樹脂の合成後、前記ロジン変性樹脂が融点以上の温度を維持している間に、ロジン変性樹脂が100質量部に対して植物油成分の4〜31質量部を添加して撹拌混合し、溶融温度が80〜170℃となるように調整してロジン変性樹脂−植物油成分混合物を得る。このようにして得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を、平均粒子径が3mm以下となるように粉砕処理するのが好ましい。これによって、後述の予備混合工程において、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に効率よく溶解させることができる。
【0089】
本実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程は、前述した第1実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法におけるロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0090】
[インキ調製工程]
ステップa2のインキ調製工程は、顔料と、油成分と、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分とを用いてオフセット印刷用インキ組成物を調製する工程である。本実施形態では、インキ調製工程は、予備混合工程と、顔料分散工程と、後添加工程とを含む。
【0091】
<予備混合工程>
ステップa2−(a)の予備混合工程では、前述した撹拌装置100を用いて各材料を撹拌混合することができる。具体的には、ステップa2−(a)の予備混合工程では、少なくとも顔料と、樹脂成分として顔料分散用樹脂およびロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物と、油成分とを、カッター羽根10を備える撹拌部材が内部空間に設けられたタンク20に投入し、カッター羽根10を回転軸23の軸線まわりに回転駆動させて、75〜110℃の温度下で撹拌混合し、顔料混合物を得る。なお、予備混合工程において、上記成分に対して、樹脂成分としてロジン変性樹脂−植物油成分混合物以外のバインダー樹脂を、さらに添加してもよい。なお、一般に「ワニス」とは、樹脂成分が油成分中に溶解されたものであり、顔料を含まない状態を指すが、本実施形態では、顔料が存在する状態でロジン変性樹脂−植物油成分混合物が油成分中に溶解される過程をワニス化という場合がある。
【0092】
予備混合工程では、前述した撹拌装置100を用いて各材料を撹拌混合することができるが、撹拌部材は、撹拌羽根としてカッター羽根10を備える構成とする。これによって、予備混合工程において、固形であるロジン変性樹脂−植物油成分混合物を粉砕しながら撹拌混合することができ、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に効率よく溶解させることができる。本実施形態の予備混合工程では、溶融温度が80〜170℃となるように調整して得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いて顔料混合物を調製するので、75〜110℃という低い温度下で、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させることができる。そのため、エステル交換反応によるロジン変性樹脂の低分子量化を抑制することができるとともに、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
【0093】
<顔料分散工程>
ステップa2−(b)の顔料分散工程では、予備混合工程で得られた顔料混合物を分散処理して顔料分散体を得る。本実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において、顔料分散工程は、前述した第1実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法における顔料分散工程と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0094】
<後添加工程>
ステップa2−(c)の後添加工程では、前述した撹拌装置100を用いて各材料を撹拌混合することができる。具体的には、ステップa2−(c)の後添加工程では、最終的に製造されるオフセット印刷用インキ組成物中に含有されるインキ用材料の全量のうち、予備混合工程でタンク20に投入されたものを除く残余材料を、顔料分散工程で得られた顔料分散体が収容されたタンク20に投入し、カッター羽根10を回転軸23の軸線まわりに回転駆動させて撹拌混合する。これによって、顔料が均一に分散されて粘度調整されたオフセット印刷用インキ組成物を得ることができる。
【0095】
なお、後添加工程において、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物または前述した第1実施形態のワニス調製工程で得られたワニスを添加することも可能である。後添加工程における撹拌混合時の温度条件は、室温〜170℃、好ましくは60〜120℃に設定される。ただし、後添加工程でロジン変性樹脂−植物油成分混合物などの固形のバインダー樹脂を用いる場合には、撹拌混合時の温度条件としては、75〜110℃が好ましい。
【0096】
また、本実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法では、予備混合工程において、インキ用材料の全量を撹拌混合して顔料混合物を得るようにしてもよい。この場合には、後添加工程を省略することができるので、製造工程を簡略化することができる。
【0097】
以上の各工程を経て製造されるオフセット印刷用インキ組成物は、溶融温度が80〜170℃のロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用い、エステル交換反応によるロジン変性樹脂の低分子量化を抑制可能な製造方法によって得られるものであるので、印刷時におけるインキのミスチング増加および対面セットオフの発生などが防止された、高い印刷適性を有する。
【0098】
(第3実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法)
図5は、本発明の第3実施形態に係るオフセット印刷用インキ組成物の製造方法の手順を示す工程図である。第3実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程と、インキ調製工程とを含む。そして、インキ調製工程は、予備混合工程と、顔料分散工程と、後添加工程とを含む。このオフセット印刷用インキ組成物の製造方法では、顔料と、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分と、油成分と、を主たる成分とするインキ用材料を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造する。なお、本実施形態において樹脂成分は、顔料分散用樹脂およびバインダー樹脂からなる。また、本実施形態においてバインダー樹脂とは、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られるロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含めて、この分野で常用される顔料分散用樹脂以外の樹脂のことをいう。本実施形態で用いる樹脂成分、油成分および顔料は、前述した第1実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において用いたものと同様である。
【0099】
[ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程]
ステップc1のロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程は、後述の後添加工程で用いるロジン変性樹脂−植物油成分混合物を、予め調製する工程である。ステップc1のロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程では、140〜190℃の融点を有するロジン変性樹脂の合成後、前記ロジン変性樹脂が融点以上の温度を維持している間に、ロジン変性樹脂が100質量部に対して植物油成分の4〜31質量部を添加して撹拌混合し、溶融温度が80〜170℃となるように調整してロジン変性樹脂−植物油成分混合物を得る。このようにして得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を、平均粒子径が3mm以下となるように粉砕処理するのが好ましい。これによって、後述の後添加工程において、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に効率よく溶解させることができる。
【0100】
本実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程は、前述した第1実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法におけるロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0101】
[ワニス調製工程]
ステップc2のワニス調製工程は、後述の後添加工程で用いるワニスを、予め調製する工程である。ステップc2のワニス調製工程では、ステップc1のロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物と油成分とを、75〜110℃の温度下で撹拌混合し、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させてワニスを得る。このワニス調製工程で、さらにゲル化剤を添加してゲルワニスを調製してもよい。このような場合に使用するゲル化剤としては、アルミニウムアルコラート類、アルミニウムキレート化合物などが挙げられ、好ましい具体例としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、エチルアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテートなどが例示できる。
【0102】
本実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において、ワニス調製工程は、前述した第1実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法におけるワニス調製工程と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0103】
[インキ調製工程]
ステップb1のインキ調製工程は、顔料と、油成分と、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分とを用いてオフセット印刷用インキ組成物を調製する工程である。本実施形態では、インキ調製工程は、予備混合工程と、顔料分散工程と、後添加工程とを含む。
【0104】
<予備混合工程>
ステップb1−(a)の予備混合工程では、前述した撹拌装置100を用いて各材料を撹拌混合することができる。具体的には、ステップb1−(a)の予備混合工程では、少なくとも顔料と、樹脂成分として顔料分散用樹脂と、油成分とを、撹拌羽根を用いて撹拌混合し、顔料混合物を得る。なお、撹拌部材は、撹拌羽根としてディスクタービン羽根などの通常の撹拌羽根、カッター羽根10のどちらも使用可能であるが、後述の後添加工程でロジン変性樹脂−植物油成分混合物などの固形のバインダー樹脂を用いる場合は、カッター羽根10を使用する。
【0105】
<顔料分散工程>
ステップb1−(b)の顔料分散工程では、予備混合工程で得られた顔料混合物を分散処理して顔料分散体を得る。本実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において、顔料分散工程は、前述した第1実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法における顔料分散工程と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0106】
<後添加工程>
ステップb1−(c)の後添加工程では、前述した撹拌装置100を用いて各材料を撹拌混合することができる。具体的には、ステップb1−(c)の後添加工程では、最終的に製造されるオフセット印刷用インキ組成物中に含有されるインキ用材料の全量のうち、予備混合工程でタンク20に投入されたものを除く残余材料であって、ステップc1のロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物、および、ステップc2のワニス調製工程で得られたワニスの少なくともいずれか一方(ロジン変性樹脂−植物油成分混合物および/またはワニス)を含む残余材料を、顔料分散工程で得られた顔料分散体が収容されたタンク20に投入し、撹拌羽根を回転軸23の軸線まわりに回転駆動させて撹拌混合する。これによって、顔料が均一に分散されて粘度調整されたオフセット印刷用インキ組成物を得ることができる。
【0107】
後添加工程における撹拌混合時の温度条件は、ステップc2のワニス調製工程で得られたワニスを用いる場合には、室温〜170℃、好ましくは60〜120℃にして撹拌混合することが好ましい。また、後添加工程においてステップc1のロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いる場合には、撹拌混合時の温度条件を75〜110℃にして、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物が完全に溶解するまで撹拌混合することが好ましい。
【0108】
以上の各工程を経て製造されるオフセット印刷用インキ組成物は、溶融温度が80〜170℃のロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用い、エステル交換反応によるロジン変性樹脂の低分子量化を抑制可能な製造方法によって得られるものであるので、印刷時におけるインキのミスチング増加および対面セットオフの発生などが防止された、高い印刷適性を有する。
【0109】
(第4実施形態(好ましい実施形態)のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法)
次に、好ましい実施形態である第4実施形態に係るオフセット印刷用インキ組成物の製造方法について、図6を用いて説明する。図6は、製造システム1の構成を示す図である。第4実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、前述した撹拌装置100とビーズミルなどの分散装置110とが供給装置120を介して接続される製造システム1を用いて行われ、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程と、インキ調製工程とを含む。そして、インキ調製工程は、予備混合工程と、顔料分散工程と、後添加工程とを含み、顔料分散工程は、1次分散工程と、戻し工程と、循環工程とを含む。このオフセット印刷用インキ組成物の製造方法では、顔料と、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分と、油成分と、を主たる成分とするインキ用材料を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造する。なお、本実施形態において樹脂成分は、顔料分散用樹脂およびバインダー樹脂からなる。また、本実施形態においてバインダー樹脂とは、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られるロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含めて、この分野で常用される顔料分散用樹脂以外の樹脂のことをいう。本実施形態で用いる樹脂成分、油成分および顔料は、前述した第1実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において用いたものと同様である。
【0110】
[ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程]
ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程では、140〜190℃の融点を有するロジン変性樹脂の合成後、前記ロジン変性樹脂が融点以上の温度を維持している間に、ロジン変性樹脂が100質量部に対して植物油成分の4〜31質量部を添加して撹拌混合し、溶融温度が80〜170℃となるように調整してロジン変性樹脂−植物油成分混合物を得る。このようにして得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を、平均粒子径が3mm以下となるように粉砕処理するのが好ましい。これによって、後述の予備混合工程において、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に効率よく溶解させることができる。
【0111】
本実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程は、前述した第1実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法におけるロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0112】
[インキ調製工程]
インキ調製工程は、顔料と、油成分と、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分とを用いてオフセット印刷用インキ組成物を調製する工程である。本実施形態では、インキ調製工程は、予備混合工程と、顔料分散工程と、戻し工程と、循環工程と、後添加工程とを含む。
【0113】
<予備混合工程>
予備混合工程は、撹拌装置100を用いて行われる工程であり、少なくとも顔料と、樹脂成分として顔料分散用樹脂およびロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物と、油成分とを、撹拌羽根を備える撹拌部材が内部空間に設けられるタンク20に投入し、撹拌羽根を回転軸23の軸線まわりに回転駆動させて、撹拌混合し、顔料混合物を得る。
【0114】
なお、予備混合工程において、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いずに、予めロジン変性樹脂−植物油成分混合物と油成分とを撹拌混合して得られるワニスであって、前述した第1実施形態のワニス調製工程で得られたワニスを用いるようにしてもよい。
【0115】
上記撹拌部材は、撹拌羽根としてディスクタービン羽根等の通常の撹拌羽根、カッター羽根10のどちらも使用可能であるが、インキ調製工程でロジン変性樹脂−植物油成分混合物などの固形のバインダー樹脂を用いる場合は、カッター羽根10を使用する。
【0116】
また、予備混合工程において、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いる場合には75〜110℃、ワニスを用いる場合には室温〜170℃、好ましくは60〜120℃、の温度下で撹拌混合し、顔料混合物を得る。
【0117】
予備混合工程では、溶融温度が80〜170℃となるように調整して得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いて顔料混合物を調製するので、75〜110℃という低い温度下で、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させることができる。そのため、エステル交換反応によるロジン変性樹脂の低分子量化を抑制することができるとともに、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
【0118】
なお、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物は、予備混合工程で用いなくてもよい。この場合には、後添加工程で、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物、および、ワニス調製工程で得られたワニスの少なくともいずれか一方(ロジン変性樹脂−植物油成分混合物および/またはワニス)を用いるようにすればよい。
【0119】
<顔料分散工程>
顔料分散工程は、撹拌装置100と供給装置120を介して接続される分散装置110とを用いて行われる工程であり、1次分散工程と、戻し工程と、循環工程とを含む。分散装置110としては、予備混合工程で得られた顔料混合物、および後述する循環工程において循環供給されるタンク20内に収容される収容物を練肉することができる装置であれば特に制限されないが、本実施形態では、ビーズミルを用いる。
【0120】
供給装置120は、ポンプやスクリューエクストルーダーなどであり、撹拌装置100に備えられるタンク20のタンク排出口21から排出される顔料混合物および前記収容物を、加圧した状態で、分散装置110の分散供給口111に向けて送液する。
【0121】
<1次分散工程>
1次分散工程では、予備混合工程で得られて撹拌装置100のタンク20内に貯留されている顔料混合物を、ビーズミルからなる分散装置110のベッセル内の圧力(内圧)によって規定される所定の流量(供給量)で、タンク20のタンク排出口21から供給装置120を介して分散装置110の分散供給口111に向けて、連続的に供給する。そして、1次分散工程では、分散供給口111から所定の供給量で分散装置110に供給された顔料混合物を、連続的に分散処理(練肉)して1次分散体を得る。
【0122】
<戻し工程>
戻し工程では、1次分散工程で連続的に得られる1次分散体を、前記供給量と同じ流量(排出量)で分散装置110の分散排出口112から連続的に排出(吐出)し、タンク供給口22から流過させて、1次分散体を元の前記タンク20内に戻す。なお、戻し工程では、タンク20内の撹拌羽根の回転駆動は継続されており、タンク20内に収容される収容物は継続的に撹拌混合されている。
【0123】
<循環工程>
循環工程は、1次分散工程および戻し工程に引き続いて連続的に行われる工程である。循環工程では、戻し工程において分散処理後に得られる1次分散体がタンク20内に戻された状態のタンク20内に収容される収容物を、タンク20と分散装置110との間で循環させて、分散装置110における分散処理を、顔料の粒子径が5μm以下となるまで繰り返し行い、顔料分散体を得る。なお、循環工程では、タンク20内の撹拌羽根の回転駆動は継続されており、タンク20内に収容される収容物は継続的に撹拌混合されている。
【0124】
このように、タンク20内の収容物を、タンク20と分散装置110との間で循環させて顔料分散体を得るので、均一な顔料分散度を有する顔料分散体を、1つのタンク20を用いて高い生産効率で得ることができる。
【0125】
<後添加工程>
後添加工程は、最終的に製造されるオフセット印刷用インキ組成物中に含有されるインキ用材料の全量のうち、予備混合工程で用いた材料を除く残余材料を、循環工程が終了した後に顔料分散体が収容されたタンク20に投入し、撹拌羽根を回転駆動させて、顔料分散体と残余材料との混合物を撹拌混合し、オフセット印刷用インキ組成物を得る。
【0126】
なお、予備混合工程で、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物、および、ワニス調製工程で得られたワニスの少なくともいずれか一方(ロジン変性樹脂−植物油成分混合物および/またはワニス)を用いない場合には、残余材料中に、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物、および、ワニス調製工程で得られたワニスの少なくともいずれか一方(ロジン変性樹脂−植物油成分混合物および/またはワニス)を使用する。
【0127】
後添加工程における撹拌混合時の温度条件は、残余材料中にロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物、および、ワニス調製工程で得られたワニスの少なくともいずれか一方(ロジン変性樹脂−植物油成分混合物および/またはワニス)を使用しない場合には、室温〜170℃、好ましくは60〜120℃にして撹拌混合することが好ましい。また、後添加工程においてワニス調製工程で得られたワニスを用いる場合には、室温〜170℃、好ましくは60〜120℃にして撹拌混合することが好ましい。また、後添加工程においてロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程で得られたロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用いる場合には、撹拌混合時の温度条件を75〜110℃にして、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物が完全に溶解するまで撹拌混合することが好ましい。
【0128】
また、本実施形態のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法では、予備混合工程において、インキ用材料の全量を撹拌混合して顔料混合物を得るようにしてもよい。この場合には、後添加工程を省略することができるので、製造工程を簡略化することができる。
【0129】
以上の各工程を経て製造されるオフセット印刷用インキ組成物は、溶融温度が80〜170℃のロジン変性樹脂−植物油成分混合物を用い、エステル交換反応によるロジン変性樹脂の低分子量化を抑制可能な製造方法によって得られるものであるので、印刷時におけるインキのミスチング増加および対面セットオフの発生などが防止された、高い印刷適性を有する。
【0130】
(実施例)
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0131】
[ロジン変性樹脂−植物油成分混合物の油成分に対する溶解性評価]
<ロジン変性フェノール樹脂Aの製造>
撹拌器、還流冷却器、温度計を備えたフラスコに、p−オクチルフェノール200質量部と、90%のパラホルムアルデヒド70質量部と、トルエン130質量部とを仕込み、60℃まで加熱溶解した後、水酸化ナトリウム1.4質量部を投入する。次いで、110℃まで昇温し、同温度で脱水処理を行う。得られた樹脂を酸で中和、水洗してレゾール樹脂溶液を得る。次いで、撹拌器、還流冷却器、温度計を備えたフラスコに、ガムロジン150質量部を仕込み、窒素ガス気流中、200℃以下で溶融撹拌し、上記レゾール樹脂100質量部とグリセリン10質量部とを投入した後、4時間を要して265℃まで昇温した。その後、同温度でトルエン、水を水分離器付き還流冷却器で回収しながら10時間反応させ、酸価が18、融点が185℃のロジン変性フェノール樹脂Aを得た。なお、得られたロジン変性フェノール樹脂Aは、粗粒子でブロック状である。
【0132】
<ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Aの製造>
上記のロジン変性フェノール樹脂Aを用いて、265℃の温度下で、当該樹脂の100質量部に大豆油5質量部を添加し、10分間撹拌混合し、冷却し、酸価が18、溶融温度が165℃に調製されたロジン変性樹脂−植物油成分混合物Aを得た。
【0133】
<ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Bの製造>
ロジン変性フェノール樹脂Aの100質量部に対して大豆油10質量部を添加すること以外は、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Aと同様にして、酸価が18、溶融温度が145℃に調製されたロジン変性樹脂−植物油成分混合物Bを得た。
【0134】
<ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Cの製造>
ロジン変性フェノール樹脂Aの100質量部に対して大豆油20質量部を添加すること以外は、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Aと同様にして、酸価が16、溶融温度が122℃に調製されたロジン変性樹脂−植物油成分混合物Cを得た。
【0135】
<ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Dの製造>
ロジン変性フェノール樹脂Aの100質量部に対して大豆油30質量部を添加すること以外は、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Aと同様にして、酸価が13、溶融温度が87℃に調製されたロジン変性樹脂−植物油成分混合物Dを得た。
【0136】
なお、ロジン変性フェノール樹脂Aの融点は、JIS K−0064に準じて測定し、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物A〜Dの溶融温度は、JIS K−0064に記載されている方法に基づいて、当該ロジン変性樹脂−植物油成分混合物が溶融したと判断されるときの温度として測定した。また、ロジン変性フェノール樹脂Aおよびロジン変性樹脂−植物油成分混合物A〜Dの酸価は、JIS K−5902に準じて測定した。
【0137】
<油成分に対する溶解性評価>
ロジン変性フェノール樹脂Aおよびロジン変性樹脂−植物油成分混合物A〜Dについて、油成分に対する溶解性を評価した。
【0138】
まず、ロジン変性フェノール樹脂Aおよびロジン変性樹脂−植物油成分混合物A〜Dを、それぞれブレンダー(型式:HBB250S、ハミルトンビーチ社製)により、平均粒子径1mmとなるように粉砕処理した。次に、粉砕処理したロジン変性フェノール樹脂Aおよびロジン変性樹脂−植物油成分混合物A〜Dのそれぞれの43質量部と、大豆油6質量部、日石AFソルベント51質量部を、撹拌器、還流冷却管および温度計を備えたフラスコに仕込み、内容物の温度が、130℃、110℃、95℃、80℃となるように加熱しながら30分間撹拌混合し、油成分に対するロジン変性フェノール樹脂Aおよびロジン変性樹脂−植物油成分混合物A〜Dのそれぞれの溶解性を評価した。その結果を、表1に示す。
【0139】
【表1】

【0140】
表1から明らかなように、溶融温度が80〜170℃の範囲内に調整されたロジン変性樹脂−植物油成分混合物A〜Dでは、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物の油成分に対する溶解性が高く、溶け残りがなかった。これに対して、ロジン変性フェノール樹脂Aは、130℃、110℃、95℃、80℃の温度下で30分間撹拌混合しても、油成分に完全には溶解せず、溶け残りが観察された。なお、ロジン変性フェノール樹脂Aは、130℃の温度下で60分間撹拌混合すると、油成分に完全に溶解した。
【0141】
[オフセット印刷用インキ組成物の評価]
(実施例1)
高さ30cm、内径20cmのタンク内に、前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物A35質量部、大豆油37質量部、日石AF6号ソルベント28質量部を仕込んだ。なお、タンク内には、回転直径12cm(タンク内径に対して40%)の図3に示した6枚ブレードのカッター羽根を設置した。そして、到達温度が100℃となるように昇温速度8℃/minでタンクの加熱を開始し、加熱開始と同時に、カッター羽根のブレードの最外周縁部における先端部の周速度が10m/sとなるようにカッター羽根の回転駆動を開始させ、タンク内の収容されたロジン変性樹脂−植物油成分混合物Aおよび油成分を撹拌混合した。そのまま100℃到達後40分間撹拌混合を継続し、褐色透明なワニスAを得た。
【0142】
次に、フラッシャー(卓上フラッシャー、井上機械社製)に、紅顔料の水湿潤スラリー(顔料はPR57:1、顔料濃度は28質量%)58.2質量部、上記ワニスA38.3質量部、大豆油変性アルキッド樹脂5.5質量部、日石AF6号ソルベント2質量部を投入し、80℃で30分間フラッシングした。その後、本体を傾け侵出した水を除去し、さらに、減圧下、130℃で90分間の時間をかけてベース中に残留している水を水分3%以下となるまで除去し、オフセット印刷用ベースインキ(顔料分散体)を得た。次に、別のタンクに、上記オフセット印刷用ベースインキ63.4質量部と、上記ワニスA36.6質量部とを投入し、5分間撹拌混合して、実施例1のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0143】
(実施例2)
ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Aの代わりにロジン変性樹脂−植物油成分混合物Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0144】
(実施例3)
ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Aの代わりにロジン変性樹脂−植物油成分混合物Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0145】
(実施例4)
ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Aの代わりにロジン変性樹脂−植物油成分混合物Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0146】
(実施例5)
前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Bをブレンダー(型式:HBB250S、ハミルトンビーチ社製)により、平均粒子径1mmとなるように粉砕処理した。そして、高さ30cm、内径20cmのタンク内に、粉砕処理したロジン変性樹脂−植物油成分混合物B35質量部、大豆油37質量部、日石AF6号ソルベント28質量部を仕込んだ。なお、タンク内には、回転直径12cm(タンク内径に対して40%)の図3に示した6枚ブレードのカッター羽根を設置した。そして、到達温度が100℃となるように昇温速度8℃/minでタンクの加熱を開始し、加熱開始と同時に、カッター羽根のブレードの最外周縁部における先端部の周速度が10m/sとなるようにカッター羽根の回転駆動を開始させ、タンク内の収容されたロジン変性樹脂−植物油成分混合物Bおよび油成分を撹拌混合した。そのまま100℃到達後40分間撹拌混合を継続し、褐色透明なワニスBを得た。そして、実施例1で用いたワニスAの代わりに上記ワニスBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0147】
(実施例6)
高さ250mm、内径210mmのタンク内に、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物B27.2質量部、大豆油変性アルキッド樹脂3.5質量部、ピグメントレッド57:1の17.4質量部、大豆油28.8質量部、日石AF6号ソルベント23.1質量部を仕込んだ。なお、タンク内には、回転直径110mm(タンク内径に対して52%)の図3に示した6枚ブレードのカッター羽根を設置した。そして、到達温度が95℃となるように昇温速度8℃/minでタンクの加熱を開始し、加熱開始と同時に、カッター羽根のブレードの最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるようにカッター羽根の回転駆動を開始させ、95℃に到達後1時間、タンク内の収容物を撹拌混合し、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Bを粉砕しながら油成分中に溶解させて顔料混合物を得た。この顔料混合物は、ロジン変性フェノール樹脂が油成分中に完全に溶解されたものであった。次いで、顔料混合物を95℃に保持した状態で、輸送ポンプにより、ダイノミル(DYN O-MILL type KDL-PILOT 1.4L、スチールビーズ:Φ1.5mm、シンマルエンタイプライゼス社製)に供給し、表2の条件で分散処理を行う顔料分散工程と、分散処理して得られた1次分散体を輸送ポンプにより元のタンクに戻す戻し工程とを、グラインドゲージによる顔料の粒子径が5μm以下となるまで繰り返して行い、実施例6のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0148】
(実施例7)
顔料混合物を調製するときの、加熱到達温度を95℃から80℃に変更すること以外は、実施例6と同様にして、実施例7のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0149】
(実施例8)
高さ250mm、内径210mmのタンク内に、大豆油変性アルキッド樹脂5.1質量部、ピグメントレッド57:1の25.3質量部、大豆油41.9質量部、日石AF6号ソルベント27.7質量部を仕込んだ。なお、タンク内には、回転直径110mm(タンク内径に対して52%)の図3に示した6枚ブレードのカッター羽根を設置した。そして、到達温度が60℃となるように昇温速度8℃/minでタンクの加熱を開始し、加熱開始と同時に、カッター羽根のブレードの最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるようにカッター羽根の回転駆動を開始させ、60℃に到達後15分間、タンク内に収容された収容物を撹拌混合して、顔料混合物を得た。
【0150】
次に、顔料混合物を60℃に保持した状態で、輸送ポンプにより、ダイノミルに供給し、表2の条件で分散処理を行う顔料分散工程と、分散処理して得られた1次分散体を輸送ポンプにより元のタンクに戻す戻し工程とを、グラインドゲージによる顔料の粒子径が5μm以下となるまで繰り返して行い、顔料分散体を得た。
【0151】
次いで、分散処理が終了してタンク内に収容された顔料分散体の68.8質量部に対して、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物B27.2質量部、日石AF6号ソルベント4質量部を添加し、混合物の温度が95℃となるように昇温速度8℃/minで加温し、加温開始と同時にカッター羽根を、ブレードの最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるように回転駆動させ、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Bを粉砕しながら溶解させるとともに、各成分を撹拌混合し、実施例8のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0152】
(実施例9)
タンク内に投入する材料の投入量を、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Bを29.3質量部、大豆油変性アルキッド樹脂を3.1質量部、ピグメントレッド57:1の17.4質量部をピグメントイエロー13の8.6質量部、大豆油を31.3質量部、日石AF6号ソルベントを27.6質量部に変更すること以外は、実施例6と同様にして、実施例9のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0153】
(比較例1)
高さ30cm、内径20cmのタンク内に、固形のロジン変性フェノール樹脂A35質量部、大豆油37質量部、日石AF6号ソルベント28質量部を仕込んだ。なお、タンク内には、ディスクタービン羽根を備えた撹拌部材を設置した。そして、到達温度が200℃となるように昇温速度8℃/minでタンクの加熱を開始し、加熱開始と同時に、ディスクタービン羽根の最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるようにディスクタービン羽根の回転駆動を開始させ、タンク内に収容された収容物を撹拌混合した。そのまま200℃到達後40分間撹拌混合を継続し、褐色透明なワニスCを得た。そして、実施例1で用いたワニスAの代わりに上記ワニスCを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0154】
(比較例2)
まず、比較例1と同様にしてワニスCを得た。次に、高さ250mm、内径210mmのタンク内に、上記ワニスC65質量部、大豆油変性アルキッド樹脂5.5質量部、ピグメントレッド57:1の27.5質量部、日石AF6号ソルベント2質量部を仕込んだ。なお、タンク内には、ディスクタービン羽根を備えた撹拌部材を設置した。そして、到達温度が70℃となるように昇温速度8℃/minでタンクの加熱を開始し、加熱開始と同時に、ディスクタービン羽根の最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるようにディスクタービン羽根の回転駆動を開始させ、70℃に到達後60分間、タンク内に収容された収容物を撹拌混合して顔料混合物を得た。
【0155】
次に、この顔料混合物をタンクからダイノミルに供給し、表2の条件でダイノミルを2回通して分散処理を行い、オフセット印刷用ベースインキを得た。オフセット印刷用ベースインキ中の顔料は、粒子径が5μm以下に分散されていた。次に、上記オフセット印刷用ベースインキ63.4質量部に、ワニスC36.6質量部を添加し、ディスクタービン羽根を備えた撹拌部材により撹拌混合し、比較例2のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0156】
(比較例3)
フラッシャーへの仕込みとして、紅顔料の水湿潤スラリー58.2質量部を黄顔料の水湿潤スラリー(顔料はPY13、顔料濃度は8質量%)67.1質量部、ワニスCを29.2質量部、大豆油変性アルキッド樹脂を1.9質量部、日石AF6号ソルベントを1.1質量部とし、得られたオフセット印刷用ベースインキ61.5質量部に対して、ワニスCを36.3質量部、日石AF6号ソルベントを2.2質量部添加することに変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例3のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0157】
(比較例4)
ロジン変性樹脂−植物油成分混合物Bをロジン変性フェノール樹脂Aに、そして、顔料混合物を調製するときの加熱到達温度を130℃に変更する以外は、実施例6と同様にして、比較例4のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0158】
<インキ特性評価>
実施例1〜9および比較例1〜4のオフセット印刷用インキ組成物について、以下の評価を行った。
【0159】
<セット性>
オフセット印刷用インキ組成物の0.1ccをオーロラコート紙(斥量73g、二葉紙業株式会社製)にRI展色機(使用ローラ:4分割、株式会社明製作所製)により展色した後、展色物をセット試験機(AUTO INKSETTING TESTER、東洋精機株式会社製)にセットする。次いで、レバーを測定位置に下ろしスタートボタンを押しセット性を測定する。あて紙にインキが付着しなくなるまでの時間(セット時間)を目視にて観察し、その時間によりセット性を評価した。測定条件は、セット試験間隔時間を30秒とし、測定環境は、温度25℃/湿度50%とした。なお、評価基準は、セット時間が5分以内である場合を「5」、セット時間が5分を超え8分以内である場合を「4」、セット時間が8分を超え10分以内である場合を「3」、セット時間が10分を超え20分以内である場合を「2」、セット時間が20分を超える場合を「1」とした。
【0160】
<黄透明性>
黄色顔料を含有する実施例9および比較例3,4のオフセット印刷用インキ組成物について、黄色顔料の変色度合いを黄透明性として評価した。各オフセット印刷用インキ組成物をヘラでオーロラコート紙(斥量73g、二葉紙業株式会社製)に展色し、透明性を目視にて評価した。黄色顔料の変色がない場合を「○」とし、変色がある場合を「×」とした。
【0161】
<印刷適性評価>
オフセット印刷用インキ組成物の印刷適性は、DAIYA 1E型印刷機(三菱重工業株式会社製)で実際に印刷して評価した。印刷適性は、紅色顔料を含有する実施例1〜8および比較例1,2のオフセット印刷用インキ組成物については、比較例1を基準(良好:○)とし、黄色顔料を含有する実施例9および比較例3,4のオフセット印刷用インキ組成物については、比較例3を基準(良好:○)として評価した。
印刷機:三菱DAIYA 1E型印刷機(湿し水機構:連続給水方式、三菱重工業株式会社製)
湿し水:サイファ TP−3(湿し水濃度1%、サカタインクス株式会社製)
印刷速度:4500枚/時
温度/湿度:25℃/60%
印刷用紙:オーロラコート紙(日本製紙株式会社製)
【0162】
<紙面評価(光沢)>
オフセット印刷用インキ組成物の0.15ccをオーロラコート紙(斥量73g、二葉紙業株式会社製)にRI展色機(使用ローラ:2分割、株式会社明製作所製)により展色した。展色物の光沢を光沢計(GlossMater VGP−5000、日本電色工業株式会社製)を用いて計測した。光沢性は、紅色顔料を含有する実施例1〜8および比較例1,2のオフセット印刷用インキ組成物については、比較例1の光沢値の±1.5の範囲内であれば「良好:○」とし、黄色顔料を含有する実施例9および比較例3,4のオフセット印刷用インキ組成物については、比較例3の光沢値の±1.5の範囲内であれば「良好:○」とした。
【0163】
オフセット印刷用インキ組成物の評価結果を、表2に示す。
【表2】

【0164】
表2から明らかなように、実施例1〜9のオフセット印刷用インキ組成物は、低い温度下でロジン変性樹脂−植物油成分混合物を油成分中に溶解させることができてエネルギーロスの低減化が可能であり、かつ、基準となる比較例1および比較例3と同等程度の、高い印刷適性を有するものであった。
【符号の説明】
【0165】
1 製造システム
10 カッター羽根
11 基部
12 第1ブレード
13 第2ブレード
14 第3ブレード
12a 第1上流側基端部
12b 第1下流側基端部
12c 第1縁辺部
13a 第2上流側基端部
13b 第2下流側基端部
13c 第2縁辺部
14a 第3縁辺部
100 撹拌装置
110 分散装置
120 供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分と、油成分と、を主たる成分とするインキ用材料を用いるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法であって、
140〜190℃の融点を有するロジン変性樹脂の合成後、前記ロジン変性樹脂が融点以上の温度を維持している間に、前記ロジン変性樹脂が100質量部に対して植物油成分の4〜31質量部を添加して撹拌混合し、溶融温度が80〜170℃となるように調整してロジン変性樹脂−植物油成分混合物を得るロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程と、
顔料と、前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を含む樹脂成分と、油成分とを用いてオフセット印刷用インキ組成物を調製するインキ調製工程と、を含むことを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
【請求項2】
前記インキ調製工程は、
少なくとも前記顔料と、前記樹脂成分として顔料分散用樹脂および前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物と、前記油成分とを、撹拌部材が内部空間に設けられるタンクに投入し、撹拌部材を軸線まわりに回転駆動させて撹拌混合することによって、前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を前記油成分中に溶解させるとともに、予備混合し、顔料混合物を得る予備混合工程と、
分散装置を用いて前記顔料混合物を分散処理して顔料分散体を得る顔料分散工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
【請求項3】
前記インキ調製工程は、
予め前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物と前記油成分とを、75〜110℃の温度下で撹拌混合し、前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を前記油成分中に溶解させたワニスと、前記顔料と、前記樹脂成分として顔料分散用樹脂とを、撹拌部材が内部空間に設けられるタンクに投入し、撹拌部材を軸線まわりに回転駆動させて撹拌混合し、顔料混合物を得る予備混合工程と、
分散装置を用いて前記顔料混合物を分散処理して顔料分散体を得る顔料分散工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
【請求項4】
前記インキ調製工程は、
少なくとも前記顔料と、前記樹脂成分として顔料分散用樹脂と、前記油成分とを、撹拌部材が内部空間に設けられるタンクに投入し、撹拌部材を軸線まわりに回転駆動させて撹拌混合し、顔料混合物を得る予備混合工程と、
分散装置を用いて前記顔料混合物を分散処理して顔料分散体を得る顔料分散工程と、
前記インキ用材料のうち、前記予備混合工程で前記タンクに投入されたものを除く残余のインキ用材料を、前記顔料分散体が収容された前記タンクに投入し、撹拌部材を軸線まわりに回転駆動させて撹拌混合する後添加工程と、を含み、
前記残余のインキ用材料は、(1)前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物および前記油成分を含む残余材料、または、(2)予め前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物と前記油成分とを、75〜110℃の温度下で撹拌混合し、前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を前記油成分中に溶解させたワニスを含む残余材料、であることを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
【請求項5】
前記撹拌部材は、回転軸と、回転軸に固定されるカッター羽根とを有する部材であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
【請求項6】
前記顔料分散工程は、
前記予備混合工程で得られた前記タンク内の前記顔料混合物を、前記タンクから前記分散装置に供給し、顔料を分散処理して1次分散体を得る1次分散工程と、
前記1次分散体を、前記分散装置から吐出して元の前記タンクに戻す戻し工程と、
前記タンク内に収容される収容物を、前記タンクと前記分散装置との間で循環させて、前記分散装置における分散処理を顔料の粒子径が5μm以下となるまで繰り返し行って顔料分散体を得る循環工程と、を含むことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
【請求項7】
前記ロジン変性樹脂は、その融点が170〜190℃であり、下記の方法による0号ソルベントトレランス値が7g/g以下である、油成分に対する溶解性が低い樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
(0号ソルベントトレランス値:ロジン変性樹脂とトルエンとを1:1の重量比で加熱混合したものに、25℃でさらに0号ソルベント(脂肪族炭化水素系溶剤、新日本石油株式会社製)を加えて、白濁するまでに要した0号ソルベント重量に対するロジン変性樹脂量から算出した値である。)
【請求項8】
前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物調製工程では、平均粒子径が3mm以下となるように粉砕処理して前記ロジン変性樹脂−植物油成分混合物を得ることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
【請求項9】
前記顔料が黄色顔料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法によって得られるオフセット印刷用インキ組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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