説明

オフセット印刷用中性新聞用紙

【課題】吸水抵抗性に優れ、摩擦係数が最適な範囲にあるオフセット印刷用中性新聞用紙を提供すること。
【解決手段】填料として炭酸カルシウムを主体とする原紙上に、ポリエチレンを構成成分として含有するカチオン性表面サイズ剤、及び水溶性高分子物質を含有する表面処理剤が塗工されたオフセット印刷用中性新聞用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷用中性新聞用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新聞用紙は、古紙由来の炭酸カルシウムの有効利用の点から、従来の酸性抄紙から中性抄紙に移行している。さらに填料として炭酸カルシウムを多く使用し、紙中灰分を増やすことで、該新聞用紙は、オフセット印刷した場合、高白色なためカラー印刷面が鮮やかである、不透明性に優れる、他填料と比較してブランケット紙粉のパイリングが少ないといった品質と作業性の面で優れた印刷適性を有している。しかしながらその用紙の物性の面をみてみると、紙中灰分が増加するに従い、紙の摩擦係数が上昇する傾向にあり、オフセット印刷時の剣先詰まりや皺の発生、印刷テンション増加による色ずれ等の発生要因となる。
【0003】
さらに、中性新聞用紙では、従来の酸性新聞用の表面サイズ剤では十分な紙の吸水抵抗性(サイズ性)が得られないため、カチオン性表面サイズ剤(例えば、特許文献1、2参照)を塗布する方法があるが、一般的にこれらカチオン性表面サイズ剤は、紙表面に塗布することによって用紙の摩擦係数が上昇する。また、新聞用紙に表面処理剤として使用されるサイズ剤以外の澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子物質によっても、紙の摩擦係数が処理前に比べて上昇することがほとんどである。
【0004】
新聞用紙は、印刷所毎に実に様々な印刷機機種、印刷条件で使用されているため、同じ摩擦係数でも一方の印刷所で問題ない場合でも、もう一方で摩擦係数に起因する印刷走行性の問題が発生する場合がある。このように新聞用紙は摩擦係数が高過ぎても、低過ぎても紙流れ等の問題が起きるため最適な範囲にある必要があり、かつ必要に応じて摩擦係数を細かく調整する技術が必要である。
【0005】
一般的な紙の摩擦係数を低下させる方法として、内添と外添の方法がある。内添の方法としては、抄造時にアルキルケテンダイマー(AKD)やアルケニル琥珀酸無水物(ASA)等の樹脂成分を含有する内添サイズ剤によりすべり性を付与する方法や填料としてタルクを添加して紙に抄き込む方法がある。しかしながら、内添サイズ剤による方法は、目標とする吸水抵抗性を得るために必要とされるサイズ剤量が決まるため、その時、必ずしも最適な摩擦係数が得られるわけではない。逆に摩擦係数の調節を優先してAKDの添加量を決めると、最適な吸水抵抗性が得られない。さらにAKDを内添した場合にはAKDが紙巻取り内でマイグレーションすることにより、上巻きの摩擦係数が極端に低下するため、印刷時の紙流れを発生させる原因となる。タルク内添による方法は、相対的に炭酸カルシウムの添加量が減少するため、上述したような炭酸カルシウムの利点を損なうことや、炭酸カルシウムに比べて紙粉発生量が多くなる等の短所がある。
【0006】
このため、表面処理剤を原紙表面に塗布する外添による方法が検討されている。内添サイズ剤であるAKDやASAを適当な分散剤で処理したエマルジョンを表面サイズ剤として用いる場合があるが、表面処理剤の液中で加水分解を起こし、吸水抵抗性を損なう。しかも摩擦係数は少量で急激に低下するため、摩擦係数のコントロールが極めて困難である。例えば、吸水抵抗性と摩擦係数を最適な範囲にするためにサイズ剤としてアルケニルケテンダイマーを塗工する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
また、ポリエチレンワックスを含有する表面処理剤を塗布する技術として、例えば、表面処理剤の主成分である共重合体ラテックスに離型剤としてポリエチレンワックスを含有する方法が提案されている(特許文献4参照)。この技術では、ポリエチレンワックスと、新聞用紙用として一般的に使用されている澱粉やポリビニルアルコールよりも摩擦係数の高いラテックスとを併用することで摩擦係数の低下を抑制している。また、顔料塗工用の滑剤として、ポリエチレンワックス系滑剤の方法が提案されている(特許文献5参照)。
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2005/009288号
【特許文献2】特開2006-016713号公報
【特許文献3】特開2004-250844号公報
【特許文献4】特開平11-158795号公報
【特許文献5】特開平3-137295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献3は、サイズ剤としてアルケニルケテンダイマーを塗工するものであるが、摩擦係数のコントロールにサイズ剤の塗布量を変えて調節するため、点滴吸水度も大きく変化してしまい、製品品質の安定性に欠けるという問題がある。
特許文献4は、表面処理剤の主成分である共重合体ラテックスに離型剤としてポリエチレンワックスを含有するものであるが、ネッパリ性と表面強度の改善について記載されているものの、積極的に摩擦係数をコントロールすることに主眼を置いてはおらず、吸水抵抗性や表面サイズ剤との併用に関しての記述もない。
また、特許文献5には、顔料塗工用の滑剤としてポリエチレンワックス系滑剤が記載されているが、顔料塗工では塗料のpHは通常7以上、中性新聞用紙では通常使用される澱粉とカチオン性サイズ剤を含む塗料ではpHは4.5〜6.5となる。そのため中性新聞用紙の表面処理剤に顔料塗工用の滑剤を添加すると表面処理剤液の分散安定性が低下し、塗布時に大きなシェアがかかると凝集物が発生し、操業上大きな問題となる。
以上のように、いずれの特許文献の方法においても、中性新聞用紙に表面処理剤を塗工して効果的な吸水抵抗性を付与し、かつ吸水抵抗性を目標とする程度に維持しながら摩擦係数を最適な範囲に調節するには不十分であり、これを可能とする表面処理剤の開発が望まれていた。
そこで、本発明は、吸水抵抗性を目標とする程度に維持しながら、摩擦係数の上昇が抑えられて最適な範囲に調節されたオフセット印刷用中性新聞用紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、原紙上に、表面処理剤が塗工されたオフセット印刷用中性新聞用紙であって、前記表面処理剤が下記の(A)及び(B)を少なくとも含有することを特徴とする。
(A)ポリエチレンを構成成分として含有するカチオン性表面サイズ剤
(B)水溶性高分子物質
請求項2に記載の発明は、前記カチオン性サイズ剤が、下記の(1)成分a及び成分bを共重合して得られた共重合体、(2)成分a、成分b及び成分cを共重合して得られた共重合体、または(3)これらの共重合体のうち成分bとして第3級アミン基含有ビニルモノマーを使用して得られた共重合体を成分dで第4級化した共重合体、のいずれかであることを特徴とする。
成分a;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン又はシアノスチレンから選ばれる少なくとも1種類以上のスチレン系モノマー
成分b;第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基又は第4級アンモニウム基のいずれか1つを含有するビニルモノマーから選ばれたカチオン性モノマー
成分c;上記成分(a)又はbに共重合可能なモノマーであり、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類から選ばれる少なくとも1種類の疎水性モノマー
成分d;エピクロルヒドリン、塩化メチル、塩化エチル、塩化ベンジル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、オキシド類、エポキシ化合物、有機ハロゲン化物から選ばれる少なくとも1種類の4級化剤
請求項3に記載の発明は、前記カチオン性表面サイズ剤が、ポリエチレンの存在下に、前記の成分a及び成分bを共重合して得られたもの、または、成分a、成分b及び成分cを共重合して得られたものであることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、前記カチオン性表面サイズ剤が、前記の成分a及び成分bを共重合した後、または、成分a、成分b及び成分cを共重合した後、ポリエチレンを溶解混合し水溶化したもののいずれかであることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、前記原紙の紙中灰分が固形分比で10〜20重量%であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、前記オフセット印刷用中性新聞用紙の静摩擦係数が0.50〜0.75かつ動摩擦係数が0.40〜0.60であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オフセット印刷用中性新聞用紙において、カチオン性サイズ剤の高いサイズ性を維持したまま、摩擦係数を最適な範囲に調整できる。従って、摩擦係数に起因するオフセット印刷時の剣先詰まりや皺の発生、印刷テンション増加による色ずれ等の問題を改善することができる。
さらに、填料である炭酸カルシウムを紙中灰分として多く含有させても、紙の摩擦係数を過度に大きくすることがなく、白色度、不透明性の高いオフセット印刷用中性新聞用紙を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のオフセット印刷用中性新聞用紙は、填料として炭酸カルシウムを主体とする原紙上に、下記の(A)及び(B)を少なくとも含有する表面処理剤を塗工、乾燥することにより得ることができる。
(A)ポリエチレンを構成成分として含有するカチオン性表面サイズ剤
(B)水溶性高分子物質
【0013】
1.表面処理剤
<カチオン性表面サイズ剤>
本発明では、表面処理剤に含有される(A)として、ポリエチレンを構成成分として含有するカチオン性表面サイズ剤を用いる。ポリエチレンを構成成分とすることにより、カチオン性表面サイズ剤を含む表面処理剤にすべり性が付与されて、カチオン性表面サイズ剤の高い吸水抵抗性を維持したまま、摩擦係数の上昇を抑えて最適な範囲に調整することができる。
このようなカチオン性表面サイズ剤は、ポリエチレンの存在下で、カチオン性サイズ剤の共重合成分を重合させる方法、または、カチオン性サイズ剤の共重合成分を重合させた後、ポリエチレンを溶解混合し水溶化する方法により得ることができる。
具体的には、ポリエチレンの存在下で、前記したスチレン系モノマー(成分a)とカチオン性モノマー(成分b)、または、スチレン系モノマー(成分a)、カチオン性モノマー(成分b)及びその他の疎水性モノマー(成分c)を共重合させて得られる。また、別の方法として、スチレン系モノマー(成分a)とカチオン性モノマー(成分b)、または、スチレン系モノマー(成分a)、カチオン性モノマー(成分b)及びその他の疎水性モノマー(成分c)を共重合させた後、ポリエチレンを溶解混合し水溶化して得られる。なお、カチオン性表面サイズ剤の共重合体は、成分bとして第3級アミン基含有ビニルモノマーを使用した共重合体を成分dで第4級化したものが好ましい。
【0014】
このようにして得られた表面サイズ剤のカチオン化度は1.3〜3.0meq/gであることが好ましい。さらに好ましくは1.3〜2.5meq/g、最適には1.4〜2.0meq/gである。この表面サイズ剤を含有する表面処理剤を塗布することにより、原紙に十分な吸水抵抗性(サイズ度)を付与できる。1.3meq/g未満では、パルプ繊維の被覆性に劣り、3.0meq/gを超えると親水性が強すぎて十分な吸水抵抗性が得られにくい。
【0015】
本発明で使用する表面サイズ剤の組成について、以下に詳細に説明する。
成分aのスチレン系モノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、シアノスチレンから選ばれる少なくとも1種類のスチレン系モノマーである。
【0016】
成分bのカチオン性モノマーは、第1級アミノ基含有ビニルモノマー、第2級アミノ基含有ビニルモノマー、第3級アミノ基含有ビニルモノマー、第4級アンモニウム基含有ビニルモノマーのうちのいずれか1種類のカチオン性ビニルモノマーである。第1級アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アリルアミン、メタリルアミンを挙げることができる。第2級アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ジアリルアミン、ジメタリルアミンを挙げることができる。3級アミノ基を有するモノマーとしては、3級アミノ基を有するビニル化合物であり、具体的には、例えば次のものを挙げることができる。
(1)(ジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート;例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等。
(2)(ジアルキル)アミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート:ジメチルアミノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等。
(3)(ジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミド:ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等。
(4)ビニルピリジン
(5)ビニルイミダゾール
4級アンモニウム塩を有するモノマーとしては、前記3級アミノ基を有するモノマーを4級化剤で4級化したものを挙げることができる。4級アンモニウム塩を有するモノマーを得るにあたって使用する4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、塩化ベンジル、エピクロロヒドリン、アルキレンオキシド、スチレンオキシド、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、及び3−クロロ−2−ヒドロキシアンモニウムクロライド等のエポキシ化合物や有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸、並びにジエチル硫酸を挙げることができる。
【0017】
成分cのその他の疎水性モノマーは共重合可能なモノマーであり、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類から選ばれる少なくとも1種類の疎水性モノマーである。メタクリル酸エステル類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート類、ベンジル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。アクリル酸エステル類としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート類、ベンジルアクリレート等の環状アルキルアクリレート等を挙げることができる。
【0018】
成分dの4級化剤は、成分bとして第3級アミノ基を有するモノマーを使用した場合に使用されるものである。成分aと成分bとの共重合物中、または成分aと成分b及び成分cとの共重合物中の第3級アミンを第4級アンモニウム基とするために4級化剤を用いる。この4級化剤としては、例えば、エピクロルヒドリン、塩化メチル、塩化エチル、塩化ベンジル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、オキシド類、エポキシ化合物、有機ハロゲン化物から選ばれる少なくとも1種類の4級化剤である。4級化剤の添加量は、成分bのカチオン性モノマーと等モル量である。
【0019】
この共重合体組成物において、成分aのスチレン系モノマーと成分bのカチオン性モノマーとの固形分重量比率は、80:20〜20:80の範囲が好ましい。更に好ましくは、80:20〜50:50である。カチオン性モノマーの比率が20%未満では、共重合物のカチオン化度が低く、吸水抵抗性付与の効果が小さい。カチオン性モノマーの比率が高いほど、共重合物のカチオン化度は高くなるが、吸水抵抗性改善は、80%以上ではレベルオフする。また、吸水抵抗性に支障のない範囲で、成分cのその他の疎水性モノマーを少量共重合させてもよい。成分aと成分bとの合計を100とすると、成分cは最大30程度である。
【0020】
成分aとbとの共重合、あるいは成分aとb及びcとの共重合は、成分aとb、あるいは成分aとb及びcを溶解できる有機溶媒中で行う。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の低級アルコール系有機溶剤中にて、あるいはベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系油性有機溶剤や酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤やメチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルnブチルケトン等のケトン系有機溶剤中にて、ラジカル重合触媒を使用して60〜130℃で1〜10時間重合させ、重合終了後に必要があれば有機溶剤を蒸留除去する。
【0021】
なお、本発明ではカチオン性表面サイズ剤の中にポリエチレンを構成成分として含有させるため、共重合反応時または共重合の後のポリエチレンの添加は、用いるポリエチレンの融点以上の温度で行う必要がある。上記の成分aとb、あるいは成分a〜cを構成モノマーとする共重合体は、重合時の反応温度が高く、ポリエチレンの溶融温度以上の温度で重合させることができるため、ポリエチレンを構成中に含むことが容易である。これに対し、重合温度がポリエチレンの溶融温度に達しないものである場合は、ポリエチレンが溶けない、増粘が起こるなどの問題があり、本発明のポリエチレンを構成成分として含有するカチオン性表面サイズ剤を得ることができない。
【0022】
ラジカル重合触媒は公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)、ジメチル2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)等の油溶性アゾ系触媒、ベンジルパーオキシド、ターシャリブチルパーオキシベンゾエート、ターシャリブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート等の油溶性有機過酸化物などを挙げることができる。また、必要に応じてアルキルメルカプタン等の公知の連鎖移動剤を適宜併用してもよい。
【0023】
<ポリエチレン>
本発明で使用するカチオン性表面サイズ剤は、構成成分としてポリエチレンを含有している。このポリエチレンは公知の方法で製造されるものであり、例えばエチレンをラジカル触媒による高温高圧下で重合するか、あるいは、チーグラー触媒により低圧で重合して得られる。また、このポリエチレンとしては、酸化型、非酸化型を問わず融点又は軟化点が80℃〜160℃の低分子量ポリエチレンが好ましく、より好ましくは融点又は軟化点が90℃〜130℃のポリエチレンである。
本発明でいうポリエチレンを構成成分として含有するカチオン性表面サイズ剤は、ポリエチレンをカチオン性表面サイズ剤の共重合成分の重合時に存在させる方法や重合後に添加する方法で、ポリエチレンを構成成分として含有するカチオン性表面サイズ剤として仕上げることができる。
通常、上記したポリエチレンは常温で固体であり、表面処理剤の調整にあたって単にカチオン性表面サイズ剤と混合するだけでは分散しないため、予め乳化剤で水に分散しエマルジョン化して使用しなければならない。これに対し、本発明では、ポリエチレンをカチオン性表面サイズ剤の共重合時に存在させる、あるいは共重合後、水溶化前に添加されることにより、ポリエチレンを別途エマルジョン化して用いる必要がない。また、これらの方法によれば、単にポリエチレンのエマルジョンとカチオン性表面サイズ剤とを混合分散した場合とは異なって、ポリエチレン粒子表面にカチオン性表面サイズ剤が乳化分散層として存在し、通常の乳化剤が存在することがない。このため、一般の乳化剤の存在が原因として起こる吸水抵抗性の低下や塗工液の発泡トラブルを軽減できるものである。
【0024】
<水溶性高分子物質>
本発明では、表面処理剤に含有される成分(B)として、水溶性高分子物質を用いる。水溶性高分子物質としては、例えば、澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉(例えば、ヒドロキシエチル化澱粉等)、カチオン化澱粉等の澱粉類、ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド等のポリアクリルアミド類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。新聞用紙の表面強度を向上させ、オフセット印刷時の紙粉パイリング(ブランケトパイリング)、結束パルプ繊維に起因するヒッキー、ベッセルに起因する白ポチなどの発生を抑制する上で、これらの水溶性高分子物質の使用は重要である。中でも、表面強度の向上効果とネッパリ防止とのバランスから澱粉類が好ましく使用でき、その中でも、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉が最も好ましい。
【0025】
<塗布量>
原紙へのカチオン性表面サイズ剤の塗布量(固形分重量)は、両面当たり0.01〜0.5g/mであり、この塗布量で適正な摩擦係数を有するオフセット印刷用中性新聞用紙が得られる。0.01g/m未満では充分な吸水抵抗性が得られにくい。0.5g/mを超えると吸水抵抗性は高く問題はないが、オフセット印刷時に用いる湿し水へ表面サイズ剤が溶出、蓄積し、印刷版を感脂化し、印刷面に地汚れが発生する場合がある。また摩擦係数が適正な範囲よりも低くなる。より好ましくは両面当たり0.025〜0.125g/mである。
【0026】
また、本発明では、表面処理剤を塗布する原紙の摩擦係数の程度と、該表面処理剤を塗布して得られる中性新聞用紙に要求される吸水抵抗性と摩擦係数の程度を考慮して、ポリエチレンの含有率を調整する。カチオン性表面サイズ剤に含まれるポリエチレン成分は、原紙への塗布量として両面当たり0.005〜0.025g/mとすることが好ましい。0.005g/m未満では摩擦係数を低下させる効果が小さく、0.025g/mを超えると摩擦係数が著しく低下したり吸水抵抗性が強くなりすぎるため、摩擦係数が適切な範囲となり吸水抵抗性とのバランスが良好となるためには、上記の範囲の塗布量が好ましい。より好ましくは0.008〜0.02g/mである。
また、水溶性高分子物質の塗布量は、原紙における原料パルプの種類と配合、紙中灰分量、必要とされる表面強度等により適宜調整するが、一般的には原紙に対し両面当たりの塗布量(固形分重量)で0.05〜1.5g/mである。水溶性高分子物質の塗布量がこの範囲未満では十分な表面強度が得られにくく、この範囲を超えるとネッパリ強度が高くなるという問題が起こりやすい。
【0027】
<塗工装置>
表面処理剤を原紙に塗布する塗工装置としては、特に限定されるものではなく、例えば、ゲートロールコーター、サイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター等、一般に公知公用の塗工装置が適宜使用される。
【0028】
2.原紙
本発明のオフセット印刷用中性新聞用紙に用いられる原紙は、填料として炭酸カルシウムを主体として含有するものが好ましく、紙面pH6〜9程度である。通常の中性抄紙では抄紙工程で紙料に硫酸バンドを添加しても炭酸カルシウムが相対的に多く存在することにより完全に中和され、特にpH調整を行わない限り、紙料や白水のpHは安定的に中性領域となる。このようにして抄造された中性新聞用紙の紙面pHは上記の範囲内となる。
本発明における原紙は、グランドパルプ(GP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミカルサーモメカニカルパルプ(CTMP)、等のメカニカルパルプ(MP)、クラフトパルプ(KP)に代表されるケミカルパルプ(CP)、これらのパルプを含む古紙を脱墨して得られる脱墨パルプ(DIP)、及び抄紙工程からの損紙を離解して得られる回収パルプ等を、単独あるいは任意の比率で混合し、一般に公知公用の抄紙機によって抄紙されたものである。全パルプ中のDIPの配合率は、最近のDIPの高配合化の流れからすると50〜100重量%の範囲が好ましい。
【0029】
本発明における原紙は、絶乾重量に対する灰分が3重量%以上であることが好ましく、10〜20重量%の範囲であることがより好ましい。灰分が10重量%以上であると、紙の不透明性が高く、オフセット印刷した場合のインキ裏抜けが目立たない。また灰分が高すぎると紙の強度や吸水抵抗性が低下し、断紙や紙粉パイリング等の問題が生じやすいため、20重量%以下程度が好適である。さらに灰重量に対する炭酸カルシウムの割合が60重量%以上であることが好ましい。通常DIPの灰成分の中では炭酸カルシウムの割合が多くを占める場合が多いが、DIPには炭酸カルシウム以外の灰成分も多く含まれ、その割合は新聞古紙、雑誌古紙等の古紙種類や回収状況等により異なるため、品質変動の要因になる。また灰成分はトナーや異物を含有し、紙面ダートや紙面欠陥の原因となる場合もある。そのためDIPの灰分を填料として利用することも行うが、DIP中の灰成分を洗浄工程である程度洗い出し、新たにフレッシュな填料として炭酸カルシウムを添加する。
填料として炭酸カルシウムを添加し、紙中の炭酸カルシウムを増やすほど紙の摩擦係数が上昇する。このため、オフセット印刷用中性新聞用紙の中でも、紙中の炭酸カルシウムが多いほど、本発明で使用するポリエチレンを構成成分として含有するカチオン性表面サイズ剤を塗布することによる紙の摩擦係数の低減効果が大きくなる。このようにして、得られるオフセット印刷用中性新聞用紙の摩擦係数を過度に上昇させることなく、填料として炭酸カルシウムを高配合できるため、紙の白色度、不透明度を向上させることができる。
【0030】
本発明における原紙の抄造時、必要に応じて、一般に公知公用の製紙用填料、抄紙用薬品を適宜使用することができる。填料としては、炭酸カルシウム以外に、ホワイトカーボン、クレー、シリカ、タルク、酸化チタン、合成樹脂填料(塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、スチレン/ブタジエン系共重合体樹脂等)等を使用しても良い。また、抄紙用内添薬品としては、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン化澱粉、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂等の紙力増強剤、アクリルアミド−アミノメチルアクリルアミド共重合体の塩、カチオン化澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体等の濾水性及び/又は歩留まり向上剤、ロジンサイズ剤、エマルジョンサイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル琥珀酸無水物(ASA)等の内添サイズ剤、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、紫外線防止剤、退色防止剤、消泡剤等の助剤等を含有してもよい。また、原紙の坪量としては特に限定されるものではないが、34〜50g/mの範囲である。この新聞原紙の物性に関しては、オフセット印刷で印刷可能である必要があり、通常の新聞用紙程度の引張り強度、引裂き強度、伸び等の物性を有するものであればよい。
【0031】
3.摩擦係数
本発明におけるオフセット印刷用中性新聞用紙の適切な摩擦係数の範囲とは、静摩擦係数0.50〜0.75、動摩擦係数0.40〜0.60の範囲であり、この範囲にあることにより、摩擦係数が高いことに起因するオフセット印刷時の剣先詰まりや皺の発生、印刷テンション増加による色ずれ等の問題を改善することができる。好ましくは静摩擦係数0.55〜0.70、動摩擦係数0.45〜0.55の範囲である。
【0032】
(実施例)
以下、実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例の中の%、部は特に断らない限り、それぞれ重量%、重量部を示す。
【0033】
[カチオン性表面サイズ剤の製造方法]
実施例、比較例において使用する表面サイズ剤は、以下の各モノマーや4級化剤から選んだものを原料として共重合させ製造した。
<表面サイズ剤の原料モノマーなど>
成分a;スチレン系モノマー
a−1 スチレン
成分b;カチオン性モノマー
b−1 メタクリル酸ジメチルアミノエチル
成分c;その他疎水性モノマー
c−1 メタクリル酸メチル
c−2 メタクリル酸イソブチル
成分d;4級化剤
d−1 エピクロルヒドリン
【0034】
なお、スチレン系モノマー/カチオン性モノマーの固形分重量比率は、80/20〜20/80の範囲にあるのは言うまでもない。
また、Mutech Particle Charge Detector 03を使用して、1/1000規定度のポリスルホン酸ナトリウム(PVSK)で滴定して、流動電流がゼロになる点を終点として決定した、カチオン性表面サイズ剤のカチオン化度は、1.3〜3.0meq/ggの範囲内にあることも言うまでもない。
【0035】
[実施例用カチオン性表面サイズ剤1]
4つ口フラスコに有機溶剤(トルエン)70部を仕込み、成分a−1と、成分b−1を80部:20部の固形分重量比で仕込み、連鎖移動剤t-ドデシルメルカプタン2部を添加した。100℃まで加熱して、開始剤として、AIBN2部を加えて110℃で3時間重合した、ここに融点110℃の低分子量ポリエチレン20部(ヤスハラケミカル製)を仕込み溶解した後、水250部と酢酸7.6部を加え水溶化した後、加熱して有機溶剤を蒸留除去した。次に80℃に保持して成分b−1と等モル量の成分d−1を11.9部を添加して80℃で3時間反応し、3級カチオン部を4級化して微黄白色の実施例用カチオン性表面サイズ剤1を得た。
【0036】
[実施例用カチオン性表面サイズ剤2]
4級化剤成分d−1)を用いない以外は実施例用カチオン性表面サイズ剤1とで同じ操作をして、微黄白色の実施例用カチオン性表面サイズ剤2を得た。
【0037】
[実施例用カチオン性表面サイズ剤3]
4つ口フラスコ中にて軟化点104℃の酸化型低分子量ポリエチレン15部(三洋化成製)、有機溶剤(nブタノール)70部を仕込み、成分a−1と成分b−1と成分c−1を60部:30部:10部の固形分重量仕込み比で仕込み、連鎖移動剤t-ドデシルメルカプタン2部を添加した。100℃まで加熱して、開始剤として、ターシャリブチルパーオキシベンゾエート2部を加えて105℃で3時間重合し、水250部と酢酸11.5部を加え水溶化し、加熱して有機溶剤を蒸留除去した。冷却して水を添加し、微黄白色の実施例用カチオン性表面サイズ剤3を得た。
【0038】
[実施例用カチオン性表面サイズ剤4]
4つ口フラスコ中にて軟化点104℃の酸化型低分子量ポリエチレン15部(三洋化成製)、有機溶剤(nブタノール)70部を仕込み、成分a−1と成分b−1と成分c−2を60部:30部:10部の固形分重量仕込み比で仕込み、連鎖移動剤t-ドデシルメルカプタン2部を添加した。100℃まで加熱して、開始剤として、ターシャリブチルパーオキシベンゾエート2部を加えて105℃で3時間重合し、水250部と酢酸11.5部を加え水溶化し、加熱して有機溶剤を蒸留除去した。次に80℃に保持して成分b−1と等モル量の成分d−1を17.8部添加して80℃で3時間反応し、3級カチオン部を4級化して微黄白色の実施例用カチオン性表面サイズ剤4を得た。
【0039】
[比較例用カチオン性表面サイズ剤1]
融点110℃の低分子量ポリエチレン20部を用いないで実施例用カチオン性表面サイズ剤1と同様の操作を行い、黄色水溶性の比較例用カチオン性表面サイズ剤1を得た。
【0040】
[比較例用カチオン性表面サイズ剤2]
融点110℃の低分子量ポリエチレン20部を用いないで実施例用カチオン性表面サイズ剤2と同様の操作を行い、黄色水溶性の比較例用カチオン性表面サイズ剤2を得た。
【0041】
[比較例用カチオン性表面サイズ剤3]
軟化点104℃の酸化型低分子量ポリエチレン15部を用いないで実施例用カチオン性表面サイズ剤3と同様の操作を行い、黄色水溶性の比較例用カチオン性表面サイズ剤3を得た。
【0042】
[比較例用カチオン性表面サイズ剤4]
軟化点104℃の酸化型低分子量ポリエチレン15部を用いないで実施例用カチオン性表面サイズ剤4と同様の操作を行い、黄色水溶性の比較例用カチオン性表面サイズ剤4を得た。
【0043】
【表1】

【0044】
[実施例1]
TMP20部、DIP75部、NBKP5部から成る混合パルプスラリーを調製し、この混合パルプ100部(固形分重量)に対して硫酸バンドを1.3部、炭酸カルシウム20部(商品名:オプチカルHF、イメリス社製、平均粒子径1.5μm)を添加し、ツインワイヤー型抄紙機にて、坪量43g/m、厚さ70μm、灰分18%の中性新聞用紙の原紙を得た。
次いで、ヒドロキシエチル化澱粉(商品名:ETHYLEX-2025、STAYLEY社製)を蒸煮したものを濃度7%に調製し、澱粉固形分重量に対し、上記の実施例用カチオン性表面サイズ剤1を15固形分重量%添加し、表面処理剤を調製した。次にゲートロールコーターにて塗工速度1200m/分で上記の原紙に表面処理剤を澱粉塗布量が両面で0.5g/m(カチオン性表面サイズ剤の塗布量は両面で0.075g/m)になるように塗工し乾燥後、80℃のホットソフトニップカレンダーで1ニップ処理し、オフセット印刷用中性新聞用紙を得た。
【0045】
[実施例2]
実施例用カチオン性表面サイズ剤1を実施例用カチオン性表面サイズ剤2に変更した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用中性新聞用紙を得た。
【0046】
[実施例3]
実施例用カチオン性表面サイズ剤1をカチオン性表面サイズ剤3に変更した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用中性新聞用紙を得た。
【0047】
[実施例4]
実施例用カチオン性表面サイズ剤1を実施例用カチオン性表面サイズ剤4に変更した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用中性新聞用紙を得た。
【0048】
[実施例5]
中性新聞用紙の原紙を製造するに際して、炭酸カルシウムを16部添加し、紙中灰分を15%にした以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用中性新聞用紙を得た。
【0049】
[実施例6]
ヒドロキシエチル化澱粉の変わりに酸化澱粉(SK−20、日本コーンスターチ株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用中性新聞用紙を得た。
【0050】
[実施例7]
実施例用カチオン性表面サイズ剤1の配合を澱粉固形分重量に対し30固形分重量%とした以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用中性新聞用紙を得た。
【0051】
[実施例8]
実施例用カチオン性表面サイズ剤1の配合を澱粉固形分重量に対し25固形分重量%とした以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用中性新聞用紙を得た。
【0052】
[実施例9]
実施例用カチオン性表面サイズ剤1の配合を澱粉固形分重量に対し7固形分重量%とした以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用中性新聞用紙を得た。
【0053】
[比較例1]
実施例用カチオン性表面サイズ剤1を比較例用カチオン性表面サイズ剤1に変更した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用中性新聞用紙を得た。
【0054】
[比較例2]
実施例用カチオン性表面サイズ剤1を比較例用カチオン性表面サイズ剤2に変更した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用中性新聞用紙を得た。
【0055】
[比較例3]
実施例用カチオン性表面サイズ剤1を比較例用カチオン性表面サイズ剤3に変更した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用中性新聞用紙を得た。
【0056】
[比較例4]
実施例用カチオン性表面サイズ剤1を比較例用カチオン性表面サイズ剤4に変更した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用中性新聞用紙を得た。
【0057】
実施例、比較例で得られたオフセット印刷用中性新聞用紙について、摩擦係数と点滴吸水度を測定し、以下のように評価を行い、結果を表2に示した。
<摩擦係数>
ISO 15359に準拠し測定した。測定装置はAmontons II(Mu Mesurements Inc.社製)を用いた。この方法では、静摩擦係数と動摩擦係数を同じサンプルを使用して3回測定する。ISOでは静摩擦係数は1回目と3回目、動摩擦係数は3回目の数値と規定しているが、本発明では静摩擦係数と動摩擦係数はいずれも1回目の数値を採用した。
<点滴吸水度>
Japan TAPPI No.33に準拠して、紙面に水1μlを滴下し、水滴が紙に吸収され、紙面に見えなくなるまでの時間を測定した。
<紙中灰分(重量%)>
JIS P 8251(対応ISO1762)に準拠して測定し、灰化は525℃、2時間で行った。
【0058】
【表2】

【0059】
表2に示した結果から次のことがいえる。
(1)実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4との比較から、ポリエチレンを構成成分として含有するカチオン性表面サイズ剤を塗布した実施例1〜4の本発明のオフセット印刷用中性新聞用紙は、ポリエチレンを含有しないカチオン性表面サイズ剤を塗布した比較例1〜4の紙と同等の点滴吸水度を有しながら、摩擦係数が低下し、適正な摩擦係数の範囲内に入っていることがわかる。
(2)実施例1と実施例5の結果から、上記(1)の効果は、オフセット印刷用中性新聞用紙の填料量、即ち、炭酸カルシウムの添加量が変わっても、同じように得られる。
(3)実施例1と実施例6の結果から、上記(1)の効果は、ポリエチレンを構成成分として含有するカチオン性表面サイズ剤と併用する水溶性高分子物質の種類が変わっても、同じように得られる。
(4)実施例1と実施例7〜9の結果から、ポリエチレンの塗布量範囲が多目(実施例7、8)あるいは少な目(実施例9)よりも、実施例1の方が摩擦係数と吸水抵抗性とのバランスが良いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙上に、表面処理剤が塗工されたオフセット印刷用中性新聞用紙であって、
前記表面処理剤が下記の(A)及び(B)を少なくとも含有することを特徴とするオフセット印刷用中性新聞用紙。
(A)ポリエチレンを構成成分として含有するカチオン性表面サイズ剤
(B)水溶性高分子物質
【請求項2】
前記カチオン性サイズ剤が、下記の(1)成分a及び成分bを共重合して得られた共重合体、(2)成分a、成分b及び成分cを共重合して得られた共重合体、または(3)これらの共重合体のうち成分bとして第3級アミン基含有ビニルモノマーを使用して得られた共重合体を成分dで第4級化した共重合体、のいずれかであることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷用中性新聞用紙。
成分a;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン又はシアノスチレンから選ばれる少なくとも1種類以上のスチレン系モノマー
成分b;第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基又は第4級アンモニウム基のいずれか1つを含有するビニルモノマーから選ばれたカチオン性モノマー
成分c;上記成分(a)又はbに共重合可能なモノマーであり、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類から選ばれる少なくとも1種類の疎水性モノマー
成分d;エピクロルヒドリン、塩化メチル、塩化エチル、塩化ベンジル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、オキシド類、エポキシ化合物、有機ハロゲン化物から選ばれる少なくとも1種類の4級化剤
【請求項3】
前記カチオン性表面サイズ剤が、ポリエチレンの存在下に、前記の成分a及び成分bを共重合して得られたもの、または、成分a、成分b及び成分cを共重合して得られたものであることを特徴とする請求項2記載のオフセット印刷用中性新聞用紙。
【請求項4】
前記カチオン性表面サイズ剤が、前記の成分a及び成分bを共重合した後、または、成分a、成分b及び成分cを共重合した後、ポリエチレンを溶解混合し水溶化したもののいずれかであることを特徴とする請求項2記載のオフセット印刷用中性新聞用紙。
【請求項5】
前記原紙の紙中灰分が固形分比で10〜20重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオフセット印刷用中性新聞用紙。
【請求項6】
前記オフセット印刷用中性新聞用紙の静摩擦係数が0.50〜0.75かつ動摩擦係数が0.40〜0.60であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のオフセット印刷用中性新聞用紙。

【公開番号】特開2008−248400(P2008−248400A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87301(P2007−87301)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【出願人】(000233860)ハリマ化成株式会社 (167)
【Fターム(参考)】