説明

オフセット用オーバープリントニス組成物および印刷物

【課題】地球環境に配慮しつつ、マット効果、耐摩擦性、乳化流動性に優れたヒートセット型オフセット用オーバープリントニス組成物の提供。
【解決手段】シリカ、高反応性金属有機化合物、バインダー樹脂、植物油類および石油系溶剤を含有するオフセット用オーバープリントニス組成物において、シリカが、平均粒径0.05〜5μmおよびBET比表面積50〜400m/gであり、高反応性金属有機化合物が、シリカ全量の3〜20重量%含有されてなることを特徴とするオフセット用オーバープリントニス組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球環境に配慮しつつ、艶消し感、耐摩擦性、乳化流動性に優れたオフセット用オーバープリントニス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートセット型のオフセット印刷とは、印刷インキ各色(黄・紅・藍・墨等)を印刷した後、熱風ドライヤーを通過させて、熱によって紙面に転写されたインキ中からの溶剤離脱を促し、乾燥及び皮膜形成を行う印刷方法である。
通常、ヒートセット型オフセット用オーバープリントニス組成物は、印刷インキ各色印刷後の表面に印刷され、カレンダー、ポスター、カタログ等の印刷物に対して、印刷面保護、印刷面の艶消しによる凹凸感、立体感、マット調、触感効果等を付与する際に使用されている。
【0003】
オフセット用オーバープリントニス組成物のうち艶消し効果を付与するためのニスとしては、一般的にマット化剤、バインダー樹脂、植物油、溶剤を主成分として構成される。マット化剤とは、一般的に印刷面に対し艶消し効果を得るための無機・或いは有機材料の微粒子集合体である。紙面に印刷されたニス中でマット化剤同士が構造を形成し、その構造を保ったまま乾燥・薄膜化することによって、表面に凹凸が形成され、印刷面に艶消し効果が現れる。
【0004】
従来、オフセット用オーバープリントニス組成物用のマット化剤としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリカ、炭酸カルシウム等が主に用いられてきた。中でも艶消し効果が高く乳化性能も良好なポリ塩化ビニル系樹脂がマット化剤の主流になりつつあった。
一方、オフセットインキ業界は地球環境への負荷低減に取り組んできており、使用する材料は焼却の際、有害ガスの発生がないことが望ましいとされている。印刷物焼却の際、一般的にダイオキシンの発生量は塩素の量に比例するとの実験データもあり、ポリ塩化ビニル系樹脂をマット化剤として使用した印刷物は焼却時にダイオキシン等の有害ガスを発生させる懸念があり、環境負荷軽減の観点から好ましくない。
【0005】
環境負荷軽減を目的として、シリカや炭酸カルシウムを主成分とするオフセット用オーバープリントニス組成物の検討がなされてきた。シリカは、大別するとその製造方法の違いから乾式法シリカ、湿式法シリカの2種類があり、乾式法シリカは湿式法シリカに比べ嵩高く、シラノール基が少ないという特徴があり、製造工程における作業効率に劣り、艶消し効果は弱いため、湿式法シリカが主流としてマット化剤に用いられている。湿式法シリカをマット化剤主成分に使用した場合、乾式法シリカと比べ表面シラノール基が多いことが起因し、乳化すると著しく流動性を失い易く、乳化したニスが印刷機上での壺上がりやローラー感での転移不良を招き易い等の問題が生じる。
【0006】
また、炭酸カルシウムをマット化剤主成分に使用した場合、炭酸カルシウムは艶消し効果が弱いため、ポリ塩化ビニル系樹脂と比べ含有率を大幅に増加させなければならず、製造工程における分散性の劣化等の負荷が大きくなる、印刷時に版磨耗しやすい等の問題を生じる。
【0007】
その他、マット化剤として用いられる微粒子集合体についても過去広く検討がなされてきた。例えば、無機材料としては、特許文献1記載の多孔性アルミナ、特許文献2記載の酸化チタン多孔体、特許文献3の多孔質炭酸カルシウム等が挙げられるが、何れも、安価な材料を出発地点としているが、加工に手間がかかり、高コストであるため実用的ではなく、更に、オフセット印刷用途での艶消し効果としては乏しい。
【0008】
また、有機材料として、特許文献4では架橋重合体微粒子の集合体が挙げられているが、平均粒径が好ましくは5〜100μmの範囲と記載されており、膜厚が5μm以下で印刷されるのが主であるオフセット印刷において、膜厚よりも大きい平均粒径であるマット化剤の含有はパイリング等の問題を生じ易いため好ましくなく、さらに、特許文献5で示されるように有機材料のマット化剤としてはハロゲン化ビニル系化合物が用いられることが多く、環境負荷軽減という点で好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−231119号公報
【特許文献2】特開平10−259023号公報
【特許文献3】特開平10−182491号公報
【特許文献4】特開2001−81335号公報
【特許文献5】特開2001−89689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、地球環境に配慮しつつ、マット効果、耐摩擦性、乳化流動性に優れたヒートセット型オフセット用オーバープリントニス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために誠意研究した結果、シリカ、バインダー樹脂、植物油および溶剤を含有するオフセット用オーバープリントニス組成物において、シリカに対し特定の高反応性金属有機化合物を特定量添加することによって乳化流動性が大幅に改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、シリカ、高反応性金属有機化合物、バインダー樹脂、植物油類および石油系溶剤を含有するオフセット用オーバープリントニス組成物において、
シリカが、平均粒径0.05〜5μm
および
BET比表面積50〜400m/gであり、
高反応性金属有機化合物が、シリカ全量の3〜20重量%
含有されてなることを特徴とするオフセット用オーバープリントニス組成物に関するものである。
【0013】
さらに、本発明は、シリカが、湿式シリカであり、ニス全量の5〜30重量%含有されてなることを特徴とする上記のオフセット用オーバープリントニス組成物に関するものである。
【0014】
また、本発明は、平均粒径0.05〜5μmであるポリテトラフルオロエチレンが、オフセット用オーバープリントニス組成物に、ニス全量の2〜15重量%含有されてなることを特徴とする上記のオフセット用オーバープリントニス組成物に関するものである。
【0015】
さらに、本発明は、オフセット用オーバープリントニス組成物が、ヒートセット型であることを特徴とするオフセット用オーバープリントニス組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、上記のオフセット用オーバープリントニス組成物を、インキ全量の5〜30重量%含有してなることを特徴とするオフセットインキに関するものである。
【0017】
さらに、本発明は、上記のオフセットインキを基材に印刷してなることを特徴とする積層物に関するものである。
【0018】
また、本発明は、上記のオフセット用オーバープリントニス組成物を基材に印刷してなることを特徴とする積層物に関するものである。
【0019】
さらに、本発明は、基材が、印刷物であることを特徴とする上記の積層物に関するものである。
【発明の効果】
【0020】
カレンダー、ポスター、カタログ等の印刷物に対して印刷面保護、艶消し効果を付与する本発明のヒートセット型であるオフセット用オーバープリントニス組成物は、艶消し感、耐摩擦性、乳化流動性に優れ、しかも環境負荷が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0022】
シリカは、製法の違いによって乾式法シリカと湿式法シリカに分かれる。乾式法シリカは四塩化珪素ガスなどを気相中で燃焼させて製造されたものを称し、湿式法シリカは珪酸ソーダ水溶液の酸又はアルカリ金属塩による中和、分解反応によって製造されたものを称する。
【0023】
乾式法シリカは、湿式法シリカに比べ嵩高く、マットニス製造時の仕込み等での作業効率が悪く、さらに艶消し効果が弱いためマット化剤として用いられるシリカは湿式法シリカであることが望ましい。また、湿式法シリカにおいては、生成過程の違いから沈降法シリカ、ゲル法シリカ等が挙げられるが、請求項1記載の物性範囲を満たせばどの生成過程でも良い。
【0024】
また、本発明におけるシリカは、平均粒径が0.05〜5μm、好ましくは0.1〜4μm、さらに好ましくは0.3〜3μmであることが望ましい。平均粒径が0.05μm未満であると、表面でシリカ粒子が構造を造った際凹凸を形成する効果が弱いため艶消し効果に劣る。また、平均粒径が5μmより大きいと、印刷時のパイリングや、版磨耗性に劣る。また、本発明におけるシリカ含有率は5〜30重量%、好ましくは7〜25%、さらに好ましくは10〜20%が望ましい。シリカ含有率が5重量%未満であると印刷時にニスの盛り量を増やしても必要な艶消し効果が得られず、30重量%より大きいと、高反応性金属有機化合物の添加による乳化流動性の向上効果に劣り、また、高反応性金属有機化合物を多量に用いなければならないため、乳化性能の劣化を招く。
【0025】
また、本発明におけるシリカは、BET比表面積が50〜400m/g、好ましくは80〜300m/g、さらに好ましくは100〜250m/gであることが望ましい。BET比表面積が50m/g未満であると、オフセット用オーバープリントニスに必要な粘弾性を得にくく、また粒径が比較的大きくなることにより、パイリング等の問題を招きやすい懸念がある。また、BET比表面積が400m/gより大きいと、シリカの1次粒子同士の凝集力が強くなりすぎてしまい、分散工程における負荷が大きくなり分散不良、版磨耗性の劣化等の問題が生じる。
【0026】
本発明における微粒子集合体の平均粒径は、一般的なレーザー回折法、散乱法等により測定して求めることができ、その微粒子集合体の投影面積に等しい円を仮定した時の直径の平均値を平均粒径とする。
【0027】
また、本発明におけるBET比表面積は、BET式(Brunauer,Emmet and Teller‘s equation)に従って単分子吸着量を測定した比表面積値である。
【0028】
本発明に用いられる高反応性金属有機化合物としては、アルミニウム及びジルコニウムのアルコキシド、キレート、アシレート、すなわち、アルミニウムイソプロピレート、モノsec-ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec-ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノステアレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、チタン系のアルコキシド、キレート、アシレート等も高反応性金属有機化合物として一般的であるが、チタン系の高反応性金属有機化合物はシラノール基と化学反応した際にニスの変色を招く懸念があるため、好ましくない。
【0029】
本発明において、シリカ重量に対して3〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の高反応性金属有機化合物を含有することが望ましい。高反応性金属有機化合物が3重量%未満であると、シラノール基と水との水素結合ネットワーク構造を十分に弱める或いは破壊することができず、乳化流動性を十分に向上させることができず、20重量%より大きいと、ニス自体の乳化性能の劣化を招く、或いは未反応の高反応性金属有機化合物がバインダー樹脂のヒドロキシル基、カルボキシル基、不飽和結合等と反応し、経時でゲル化反応を促進させ、保存安定性の劣化を招く懸念があるため好ましくない。また、選択した高反応性金属有機化合物によりシリカとの反応性が異なるため、選択したシリカと高反応性金属有機化合物との組み合わせに応じて上記範囲内において最適な量を添加するのが望ましい。
【0030】
湿式シリカ表面は乾式シリカ表面と比べシラノール基が多く、マットニス組成物が乳化状態になった時、シラノール基と水が水素結合ネットワークを作りやすいため、乳化したマットニスは流動性を失ってしまう。
【0031】
そのため、シリカ表面のシラノール基と水との水素結合ネットワーク構造を特定の高反応性金属有機化合物を介在させることで弱める、或いは、高反応性金属有機化合物とシリカ表面のシラノール基を化学的に結合させ、部分的な疎水化を図り水素結合ネットワーク構造を壊すことで流動性を向上させることが可能となる。そのため、未反応の高反応性金属有機化合物をオフセット用オーバープリントニス組成物の製造における仕込時、或いは分散工程時直前に仕込み、シリカと共分散及び反応させることが望ましい。即ち、本発明におけるオフセット用オーバープリントニス組成物製造方法の簡易的な一例としては、シリカ、高反応性金属有機化合物、ワニス、植物油、溶剤を仕込み、均一になるまで撹拌し、三本ロール等で分散することが望ましい。
【0032】
本発明における、ワニスとは、バインダー樹脂を植物油及び石油系溶剤等に加熱溶解させたものを称し、必要に応じてゲル化剤を添加してゲル化反応させたゲルワニスの形態としても使用される。本発明で用いられる高反応性金属有機化合物は、一部、ゲルワニス製造時のゲル化剤としても用いられる。ゲル化反応は、通常200℃程度の高温で行われ、高反応性金属有機化合物は、バインダー樹脂同士の架橋に活性部位が使用されてしまう。即ち、オフセット用オーバープリントニス組成物の製造過程において、ゲルワニス中の高反応性金属有機化合物は、シリカと混合、撹拌及び分散してもシリカ表面のシラノール基と反応を起こさないため、乳化流動性を向上させることができない。
【0033】
そのため、シリカ重量に対して3〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の未反応である高反応性金属有機化合物を本発明のヒートセット型オフセット用オーバープリントニス組成物製造における仕込時、或いはシリカ分散工程直前に含有させることが望ましい。
【0034】
また、高反応性金属有機化合物として、シランカップリング剤を用いたり、表面をシラン類やシリコーン類で疎水化処理したシリカを用いることにより、乳化流動性を改良する方法もあるが、ヒートセット型オフ輪印刷で用いられている排気ガスを脱臭処理する触媒として用いられている白金に対してシラン類やシリコーン類は強い触媒毒であり、白金触媒の被毒による脱臭性能の低下を招くため、ヒートセット型オフセット印刷に使用する場合に好ましくない。
【0035】
本発明は、平均粒径が0.05〜5μmであるポリテトラフルオロエチレンを2〜15重量%、より好ましくは3〜10重量%併用して含有することが望ましい。ポリテトラフルオロエチレンを上記範囲内で用いることにより、耐摩擦性を向上させる効果と艶消し能を補助的に得ることができる。併用するポリテトラフルオロエチレンが2重量%未満であると、耐摩擦性を向上させる効果と艶消し効果を得られず、15%より大きく併用させると、製造工程における練肉性の劣化やパイリング等の問題を生じ易い。
【0036】
本発明におけるポリテトラフルオロエチレンは、平均粒径が0.05〜5μm、より好ましくは0.1〜3μm、さらに好ましくは0.3〜2.0μmであることが望ましい。
平均粒径が0.05μm未満であると、艶消し効果を得られず、平均粒径が5μmより大きいと耐摩擦性を向上させる効果に劣り、パイリング等の問題を生じ易い。
【0037】
本発明において、艶消し効果を補助的に得るために、必要に応じて炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、多孔質炭酸カルシウム、多孔質酸化チタン、多孔質アルミナ等を単独或いは2種類以上併用することもできるが、オフセット用オーバープリントニス組成物中の15重量%以下の含有率であることが望ましい。15重量%より大きく併用して含有させると、ニスの製造工程における練肉性の劣化や、印刷時の版磨耗性の劣化、乳化性能の劣化、パイリングを起こし易い等の問題が生じる。
【0038】
本発明で用いられるバインダー樹脂としては、一般的なオフセット用オーバープリントニス組成物で用いられているロジンフェノール樹脂が望ましく、さらに重量平均分子量が10000〜120000であることが好ましく、より好ましくは10000〜100000、さらに好ましくは10000〜70000であることが望ましい。重量平均分子量が10000未満であるとニスに必要な粘弾性が得られず、重量平均分子量が120000より大きいと未反応の高反応性金属有機化合物とロジンフェノール樹脂がゲル化反応を起こした際、ニスの大幅に増粘を招く懸念があるため好ましくない。また必要に応じて、一般的なヒートセット型オフセット印刷で用いられているロジンアルキッド樹脂、石油樹脂等を併用して用いても良い。
【0039】
本発明における植物油類とは植物油並びに植物油由来の化合物であり、グリセリンと脂肪酸とのトリグリセリドにおいて、少なくとも1つの脂肪酸が炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する脂肪酸であるトリグリセリドと、それらのトリグリセリドから飽和または不飽和アルコールとをエステル反応させてなる脂肪酸モノエステル、あるいは植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類を挙げることができる。
【0040】
本発明で用いられる植物油としては、大豆油、再生大豆油、菜種脂、ヤシ油、綿実脂、落花生油、パーム脂、コーン油、オリーブ油、亜麻仁油、キリ油、サフラワー油、米ぬか油等の植物由来のものや、それらの熱重合油及び酸素吹き込み重合油等を用いることができ、これらを単独或いは2種類以上組み合わせて併用して用いることもできるが、ヨウ素価の範囲が80〜120の植物油を使用することが好ましい。
脂肪酸モノエステルは上記植物油とモノアルコールとをエステル交換したものや植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステルである。モノアルコールの代表的なものは、メタノール、エタノール、n−又はiso−プロパノール、n,sec又はte t−ブタノール、ヘプチノール、2−エチルヘキサノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール等の飽和アルコール、オレイルアルコール、ドデセノール、フイセテリアルコール、ゾンマリルアルコール、ガドレイルアルコール、11−イコセノール、11−ドコセノール、15−テトラコセノール等の不飽和脂肪族系アルコールを挙げることができる。
【0041】
エーテル類として代表的なものは、ジ−n−オクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジへプチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジデシルエーテル、ノニルへキシルエーテル、ノニルヘプチルエーテル、ノニルオクチルエーテル等を挙げることができる。
本発明のインキに用いられる石油系溶剤は、芳香族炭化水素の含有率が1重量%以下でアニリン点が75〜95℃好ましくは80〜95℃及び、沸点が240℃〜350℃好ましくは280〜350℃の範囲にある石油系溶剤が好ましい。アニリン点が75℃未満の場合には、樹脂を溶解させる能力が高すぎる為、インキのセット性が遅くなり好ましくなく、また95℃を超える場合には樹脂の溶解性が乏しい為、着肉、保存安定性等が劣るため好ましくない。沸点が240℃未満の場合には、印刷機上でのニス溶剤の蒸発が多くなり、ニスの流動性の劣化により、ニスのローラー、ブランケット、版等への転移性の劣化、パイリング等を誘発する懸念があり好ましくない。また、350℃を超える場合には、ヒートセット型のインキの乾燥が劣る為、好ましくない。
【0042】
さらに、本発明は、上記記載のオフセット用オーバープリントニス組成物をオフセットインキ中に5〜30重量%添加して用いても良い。
【0043】
その場合において、使用される顔料としては、任意の無機及び有機顔料が使用できる。
無機顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉などがあげられ、有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系などオフセットインキに用いられる顔料が相当する。有機顔料に関しては、例えば、銅フタロシアニン系顔料(C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、C.I.Pigment Green 7、36)、モノアゾ系顔料(C.I.Pigment Red 3、4、5、23、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、53:1、57:1)、ジスアゾ系顔料(C.I.Pigment Yellow 12、13、14、17、83)、アントラキノン系顔料(C.I.Pigment Red 177)、キナクリドン系顔料(C.I.Pigment Red 122、C.I.PigmentViolet 19)、ジオキサジン系顔料(C.I.Pigment Violet 23)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、本発明のオフセット用オーバープリントニス組成物およびオフセットインキには、必要に応じて ゲル化剤、顔料分散剤、金属ドライヤー、乾燥抑制剤、酸化防止剤、耐摩擦向上剤、裏移り防止剤、非イオン系海面活性剤、多価アルコール等の添加剤を便宜使用することができる
【0044】
なお、本発明のオフセット用オーバープリントニス組成物およびオフセットインキを印刷する基材としては、上質紙等の非塗工紙、微塗工紙、アート紙、コート紙、軽量コート紙、キャストコート紙等の塗工紙、白板紙、ボールコート等の板紙、合成紙、アルミ蒸着紙、およびポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックシートが挙げられる。
【0045】
積層物とは、本発明で使用される基材に、
(1)本発明の平版印刷インキを印刷したもの、
(2)本発明のオーバープリント組成物を印刷したもの
または
(3)本発明の平版印刷インキもしくは他の印刷インキ(平版印刷インキ、グラビア 印刷インキあるいはスクリーン印刷インキ等)で印刷を行った印刷物の印刷面 上に本発明のオーバープリント組成物を印刷したもの
をさす。
【実施例】
【0046】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、本発明中の「部」は重量部を表し、「%」は特に断らない限り、「重量%」を表す。
【0047】
(フェノール樹脂製造例)
撹拌機、冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコにP−オクチルフェノール1000部、35%ホルマリン850部、93%水酸化ナトリウム60部、トルエン1000部を加えて、90℃で6時間反応させたる。その後6N塩酸125部、水道水1000部の塩酸溶液を添加し、撹拌、静置し、上層部を取り出し、不揮発分49%のレゾールタイプフェノール樹脂のトルエン溶液2000部を得て、これをレゾール液Xとした。
【0048】
(ロジン変性フェノール樹脂の製造例)
撹拌機、水分分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン1000部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、レゾール液X1360部を添加し、トルエンを除去しながら230℃で4時間反応させた後、グリセリン110部を仕込み、250〜260℃で酸化20以下になるまでエステル化して、重量平均分子量40000のロジン変性フェノール樹脂A(以下、樹脂Aと称す)を得た。
【0049】
(ゲルワニスの製造)
攪拌機、リービッヒ冷却管、温度計付4つ口フラスコに樹脂A(重量平均分子量40000)43部、大豆油9部、AFソルベント7号(新日本石油(株)製)47部を仕込み、190℃に昇温、同温で30分間攪拌した後、放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート1重量部(川研ファインケミカル(株)製ALCH、以下ALCHと称す)を仕込み、190℃で30分間攪拌してゲルワニス1(以下ワニス1と称す)を得た。
【0050】
(ヒートセット型オフセット用オーバープリントニスベース及びニス組成物の製造)
市販の湿式法シリカ1(平均粒径3.6μm、BET比表面積120m/g)17部、ゲルワニス1を52部、AFソルベント7号(新日本石油(株)製)15部、大豆油5部、ALCH1.5部、計90.5部を3本ロール上に仕込み、60℃の3本ロールで2回練肉し、ヒートセット型のオフセット用オーバープリントニスベース1(以下ベース1)を得た。光散乱法式粒度分布計によりベース1の平均粒径を測定したところ、0.7μmであった。このベース1に、ゲルワニス1を3部、AFソルベント7号を6.5部を加えて実施例1のオフセット用オーバープリントニス組成物を約100部得た。
【0051】
上記と同様のヒートセット型オフセット用オーバープリントニスベース作製方法にて、表1に示す配合にてヒートセット型オフセット用オーバープリントニスベースを作製し、同様の測定方法で平均粒径を測定した。更に、各オフセット用オーバープリントニスベースをAFソルベント7号とゲルワニス1にて調整し、実施例2〜5、比較例1〜3のオフセット用オーバープリントニス組成物を約100部得た。
【0052】
【表1】



【0053】
上記実施例1〜5及び比較例1〜3のヒートセット型のオフセット用オーバープリントニス組成物における、艶消し感、耐摩擦性、乳化流動性について下記の評価を実施し、結果を表2に示した。
【0054】
【表2】

【0055】
<艶消し効果の測定方法>
ヒートセット型オフセット墨インキ(東洋インキ製造(株)製、WDレオエックス墨M)をRIテスター(株式会社明製作所製)にてコート紙に展色し、光沢値を測定したところ(村上色彩研究所光沢計)、光沢値70の印刷面を得た。紙面乾燥後、実施例1〜5、比較例1〜3の各オフセット用オーバープリントニス組成物を上から展色し、自製コンベア式熱風乾燥試験機を通した後、光沢値を測定し、以下の評価基準に基づいて評価を行った。光沢値が低い程、艶消し効果が高いことを示す
(評価基準)
○:光沢値が20未満
△:光沢値が20以上、40未満
×:光沢値が40以上
【0056】
<耐摩擦性の測定方法>
上記のヒートセット型オフセット墨インキをRIテスター(株式会社明製作所製)にてマットコート紙に展色後、実施例1〜5、比較例1〜3の各オフセット用オーバープリントニス組成物を上から展色し、自製コンベア式熱風乾燥試験機を通した後、マットコート紙を展色面上に当て、学振型耐摩擦性試験機(重り1kg)にて5往復摩擦をかけ、目視により展色面上に当てたマットコート紙への墨インキの取られ度合いを観測し、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
(評価基準)
○:展色面上に当てたマットコート紙へ墨インキがほとんど移らない
△:展色面上に当てたマットコート紙へ少し墨インキが移る
×:展色面上に当てたマットコート紙へ多く墨インキが移る
【0057】
<乳化流動性の測定方法>
実施例1〜5、比較例1〜3の各ヒートセット型オフセット用オーバープリントニス組成物18gに蒸留水を2g添加し、強制乳化させ、乳化ニスを得る。乳化ニス2.1ccを半球状の容器にセットし、60°に傾けた傾斜板の上にインキを垂らし、10分間で流れた長さを測定し、以下の評価基準に基づいて評価を行った。値が高い程乳化したニスの流動性が良好であることを示す。
【0058】
(評価基準)
○:20mm以上
△:5mm以上、20mm未満
×:5mm未満
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によるヒートセット型オフセット用オーバープリントニス組成物は、従来よりも艶消し効果、耐摩擦性、乳化流動性に優れ、しかも環境負荷が少なく、カレンダー、ポスター、カタログ等の印刷分野において有益な活用が図られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ、高反応性金属有機化合物、バインダー樹脂、植物油類および石油系溶剤を含有するオフセット用オーバープリントニス組成物において、
シリカが、平均粒径0.05〜5μm
および
BET比表面積50〜400m/gであり、
高反応性金属有機化合物が、シリカ全量の3〜20重量%
含有されてなることを特徴とするオフセット用オーバープリントニス組成物。
【請求項2】
シリカが、湿式シリカであり、ニス全量の5〜30重量%含有されてなることを特徴とする請求項1記載のオフセット用オーバープリントニス組成物。
【請求項3】
さらに、平均粒径0.05〜5μmであるポリテトラフルオロエチレンが、オフセット用オーバープリントニス組成物に、ニス全量の2〜15重量%含有されてなることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のオフセット用オーバープリントニス組成物。
【請求項4】
オフセット用オーバープリントニス組成物が、ヒートセット型であることを特徴とする
請求項1〜3いずれか記載のオフセット用オーバープリントニス組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載のオフセット用オーバープリントニス組成物を、インキ全量の5〜30重量%含有してなることを特徴とするオフセットインキ。
【請求項6】
請求項5記載のオフセットインキを基材に印刷してなることを特徴とする積層物。
【請求項7】
請求項1〜4いずれか記載のオフセット用オーバープリントニス組成物を基材に印刷してなることを特徴とする積層物。
【請求項8】
基材が、印刷物であることを特徴とする請求項6記載の積層物。

【公開番号】特開2010−229302(P2010−229302A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78798(P2009−78798)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】