説明

オブジェ

【課題】猪威しの原理を利用し、かつ、猪威しでは表現することができない新なた動きを表現するオブジェを得る。
【解決手段】台と該基台に設けられた支軸と該支軸に軸止された揺動体とを有するオブジェにおいて、揺動体に一端側から伸びる空洞を形成し、空洞に空洞内へ液体を流入する流入口を設けると共に流入口よりも一端側に空洞内から液体を排出する排出口を設け、揺動体の重心を空洞内に液体を流し込まれていない状態において支軸よりも他端側寄りに位置させ、流入口から空洞内へ流入した液体の重さによって揺動体が一端側を下げるように傾いた状態において空洞内から液体を排出するように排出口を位置し、揺動体が最も一端側を下げるように傾いた状態において空洞内の液体の一部が排出口から排出されることなく空洞内に留まるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、庭園に設置されるオブジェには、燈篭や自然石など多種多様なものがあるが、その中でも猪威しは、静的な庭園の中で動的な表現を加えるものとして設置されることが多い。
【0003】
猪威しは、一端が開口していると共に他端が閉口している竹筒を基台に対して軸止めしたものであり、竹筒の重心は支点よりも上方であって他端側寄りに位置付けられている。従って、竹筒は外力が加わらない限り他端側を下げるように傾いた状態となる。そして、竹筒の開口から水を流し込むと、竹筒内に所定量の水が溜まることにより、竹筒は水の重みによって一端側を下げるように傾いた状態となり、竹筒内の水を開口から排出する。続いて、竹筒内の水が排出されることにより、竹筒は水の重みが無くなって再び他端側を下げるように傾いた状態となり、竹筒内に水を溜め始める。なお、猪威しは、竹筒内に流し込まれる水の量を一定に保つことによって前記一連の動作を周期的に繰り返す。
【0004】
前記猪威しの原理を利用したものとして、後述特許文献1には、一定間隔で定量づつ水等を鉢植に給水する自動給水装置において、前記水等を所定量収容し、かつ前記水等を少量づつ注出する注出孔を有したタンクと、前記注出孔から注出された水等を受け、該水等が一定量以上溜まると揺動して溜まった水等を排出するししおどしを設けた鉢植自動給水装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−28351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記猪威しや前記猪威しの原理を利用した給水装置においては、竹筒(タンク)に溜まった水を排出する際に、竹筒内の支軸よりも他端側(後部側)に溜まった水が一気に一端側(前部側)に移動するため、一端側を下げるように傾く動作が素早くなり、この時、竹筒内の水は一気に全て排出されるため、一端側が急激に軽くなり、これにより、他端側(後部側)を下げるように傾く動作も素早くなり、緩やかに揺動するものではなかった。
【0007】
そこで、本発明者は、前記猪威しの原理を利用し、かつ、前記猪威しでは表現することができない新なた動きを表現するオブジェを得ることを技術的課題として、その具現化をはかるべく、試行錯誤的に実験を重ねた結果、基台と該基台に設けられた支軸と該支軸に軸止された揺動体とを有するオブジェにおいて、揺動体に一端側から伸びる空洞を形成し、空洞に空洞内へ液体を流入する流入口を設けると共に流入口よりも一端側に空洞内から液体を排出する排出口を設け、揺動体の重心を空洞内に液体を流し込まれていない状態において支軸よりも他端側寄りに位置させ、流入口から空洞内へ流入した液体の重さによって揺動体が一端側を下げるように傾いた状態において空洞内から液体を排出するように排出口を位置し、揺動体が最も一端側を下げるように傾いた状態において空洞内の液体の一部が排出口から排出されることなく空洞内に留まるようにすれば、揺動体を緩やかに揺動させることができるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【0008】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0009】
すなわち、本発明に係るオブジェは、基台と該基台に設けられた支軸と該支軸に軸止された揺動体とを有するオブジェであって、揺動体には一端側から伸びる空洞が形成されており、空洞には空洞内へ液体を流入する流入口が設けられていると共に流入口よりも一端側に空洞内から液体を排出する排出口が設けられており、揺動体の重心は空洞内に液体を流し込まれていない状態において支軸よりも他端側寄りに位置しており、流入口から空洞内へ流入した液体の重さによって揺動体が一端側を下げるように傾いた状態において空洞内から液体を排出するように排出口が位置しており、揺動体が最も一端側を下げるように傾いた状態において空洞内の液体の一部が排出口から排出されることなく空洞内に留まるものである。
【0010】
また、本発明は、前記オブジェにおいて、排出口が揺動体の底面から空洞内へ突出する筒体の開口によって形成されているものである。
【0011】
また、本発明は、前記いずれかのオブジェにおいて、揺動体の支軸よりも一端側に空洞が形成されているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、揺動体に一端側から伸びる空洞を形成し、空洞に空洞内へ液体を流入する流入口を設けると共に流入口よりも一端側に空洞内から液体を排出する排出口を設け、揺動体の重心を空洞内に液体を流し込まれていない状態において支軸よりも他端側寄りに位置し、流入口から空洞内へ流入した液体の重さによって揺動体が一端側を下げるように傾いた状態において空洞内から液体を排出するように排出口を位置し、揺動体が最も一端側を下げるように傾いた状態において空洞内の液体の一部が排出口から排出されることなく空洞内に留まるように構成したので、揺動体が一端側を下げるように傾いた状態から他端側を下げるように傾いた状態になる場合においては、空洞内に溜まった液体の一部が空洞内から排出されることなく残存するため、これによって揺動体の一端側の重さが減少が緩和されて緩やかに他端側が下がるように傾く。また、揺動体が他端側を下げるように傾いた状態から一端側を下げるように傾いた状態になる場合においては、空洞内に徐々に溜まる液体の重さによって緩やかに一端側が下がるように傾く。従って、揺動体は、緩やかな周期で揺動を繰り返すという猪威しにはない新たな動きを表現することができる。
【0013】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係るオブジェを示した斜視図である。
【図2】図1に示すオブジェを示した縦断面図である。
【図3】図1に示すオブジェの動作を説明する説明図である。
【図4】実施の形態2の変形例1に係る揺動体を示した縦断面図である。
【図5】実施の形態2の変形例2に係る揺動体を示した縦断面図である。
【図6】図5に示す揺動体の空洞内に液体が流し込まれた状態を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
実施の形態1.
【0017】
本実施の形態に係るオブジェ1は、図1及び図2に示すように、設置面2に対して垂直に立てられる基台3と、基台3の上端に設けられた設置面2に対して水平方向へ伸びる支軸4と、支軸4に軸止めされた矩形状の揺動体5とを有するオブジェである。
【0018】
揺動体5には、下面から上方へと窪んだ凹部6が形成されており、凹部6の両内側面に支軸4が掛け渡されている。これにより、揺動体5は支軸4を回転軸としてシーソー状に揺動可能になっている。
【0019】
また、揺動体5は、支軸4よりも一端7側に位置する部分に空洞8が形成されており、空洞8には、支軸4側に空洞8内へ水を流入させるための流入口9が形成されており、また、流入口9よりも一端7側に位置するように空洞8内から水を排出させるための排出口10が形成されている。
【0020】
流入口9は、貫通孔11を介して凹部6へと繋がっている。そして、筒状の基台3の内部に通されたホース12の先端が貫通孔11を介して流入口9へと接続されている。
【0021】
排出口10は、空洞8の底面に形成された開口13から空洞8内へ突出するパイプ14の上端によって形成されている。そして、排出口10は、流入口9から空洞8内へ流入した液体の重さによって揺動体5が一端7側を下げるように傾いた状態において空洞8内から液体を排出するように空洞8内の所定の高さに位置付けられている。
【0022】
なお、揺動体5の重心は、空洞8内に液体が流入されていない状態において支軸4よりも他端15側に位置付けられている。そして、揺動体5の重心は、空洞8内に液体を出し入れすることによって揺動体5を水平に保った状態における支軸4の下方に位置する部分を跨ぐように移動する。
【0023】
次に、本実施の形態に係るオブジェの動作を説明する。
【0024】
先ず、図3の(a)に示すように、空洞8内に液体が流入されていない状態においては、揺動体5の重心は支軸4よりも他端15側に位置するため、揺動体5は支軸4を支点として他端15側が下がるように傾いた状態となる。
【0025】
次に、基台3内を通るホース12に液体を流して流入口9から空洞8内に液体を流し込むと、図3の(b)に示すように、空洞8内に液体16が溜まって揺動体5の一端7側の重さが増して一端7側が徐々に下がり始める。なお、空洞8内に流し込む液体16は流入口9から一定流量で常に流し続けられる。そして、空洞8内に溜まった液体16が所定量に達すると、揺動体5の重心が支軸4よりも一端7側に移動するため、揺動体5は支軸4を支点として一端7側が下がるように傾いた状態となる。この時、揺動体5が一端7側を下げるように傾くことにより、空洞8内に溜まった液体16が空洞8内を一端7側に移動するため、揺動体5は更に一端7側を下げるように傾いた状態となる。
【0026】
次に、揺動体5がある程度一端7側を下げるように傾くと、図3の(c)に示すように、排出口10が空洞8内に溜まった液体16の水面よりも下方に位置付けられた状態となり、空洞8内に溜まった液体16が排出され始める。そして、空洞8内に溜まった液体16がある程度排出されると、図3の(d)に示すように、揺動体5の一端7側よりも他端15側が重くなり、揺動体5は支軸4を支点として他端15側を下げるように傾き始める。この時、空洞8内に溜まった液体16の一部が空洞8内に留まった状態を維持すると共に、流入口9から空洞8内へ液体16が流入し続けるため、揺動体5の一端7側の重さの減少が緩和され、揺動体5は緩やかに一端7側を下げるように傾けた状態から他端15側を下げるように傾けた状態に移行する。
【0027】
そして、空洞8内には一定流量の液体16が流入口9から流れ込み続けているため、図3の(e)に示すように、揺動体5がある程度他端15側を下げるように傾けた時点で、空洞8内に溜まった液体16の重みによって揺動体5の一端7側が他端15側よりも重くなり、再び揺動体5は緩やかに他端15側を下げるように傾けた状態から一端7側を下げるように傾けた状態に移行する。
【0028】
この後、図3の(b)〜図3の(e)の動作を繰り返すことによって揺動体5は緩やかに揺動動作を行う。
【0029】
なお、本実施の形態においては、空洞8の下方に流入口9を設けたが、空洞8の上方に流入口9を設けてもよい。
【0030】
また、本実施の形態におけるパイプは、液体が通貨できるものであれば、断面形状は円形状や多角形状であってもよく、特に限定されない。
【0031】
また、本実施の形態においては、パイプ14によって排出口10を形成しているため、空洞8内に突出するパイプ14の長さや、パイプ14先端の内径を調整することにより、空洞8内から排出される液体16の流量を簡易に調整することができる。
【0032】
実施の形態2.
【0033】
本実施の形態は前記実施の形態における揺動体5の変形例である。
【0034】
変形例1:本変形例における揺動体5においては、図4に示すように、排出口10が空洞8の上方を残して空洞8内を支軸4側と一端7側とで二分するように堰壁17を設け、その堰壁18よりも一端7側に位置する底面を開口することによって形成されている。よって、空洞8の高い位置に排出口10が形成される。
【0035】
本変形例においても前記実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0036】
変形例2:本変形例における揺動体5においては、図5に示すように、排出口10が空洞8の底面に形成された開口から空洞8内へ突出するパイプ14によって形成されており、パイプ14の空洞8側へ突出した先端は支軸4側から一端7側へ下るように傾斜して切断されている。
【0037】
本変形例によれば、排出口10を形成するパイプ14の先端が支軸4側(他端15側)から一端7側へ下がるように傾斜して形成されているため、図6の(a)に示すように、揺動体5が他端15側を下げるように傾いている場合には、より多くの液体を空洞8内に保持することができ、図6の(b)に示すように、揺動体5が一端7側を下げるように傾いている場合には、より多くの液体16を排出口10から排出することができる。
【0038】
本変形例においても前記実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
本発明において、空洞内へ流入させる液体は、水が好ましいが、流動するものであれば水以外のものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 オブジェ
2 設置面
3 基台
4 支軸
5 揺動体
6 凹部
7 一端
8 空洞
9 流入口
10 排出口
11 貫通孔
12 ホース
13 開口
14 パイプ
15 他端
16 液体
17 堰壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と該基台に設けられた支軸と該支軸に軸止された揺動体とを有するオブジェであって、揺動体には一端側から伸びる空洞が形成されており、空洞には空洞内へ液体を流入する流入口が設けられていると共に流入口よりも一端側に空洞内から液体を排出する排出口が設けられており、揺動体の重心は空洞内に液体を流し込まれていない状態において支軸よりも他端側寄りに位置しており、流入口から空洞内へ流入した液体の重さによって揺動体が一端側を下げるように傾いた状態において空洞内から液体を排出するように排出口が位置しており、揺動体が最も一端側を下げるように傾いた状態において空洞内の液体の一部が排出口から排出されることなく空洞内に留まることを特徴とするオブジェ。
【請求項2】
排出口が揺動体の底面から空洞内へ突出する筒体の開口によって形成されている請求項1記載のオブジェ。
【請求項3】
揺動体の支軸よりも一端側に空洞が形成されている請求項1又は2記載のオブジェ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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