説明

オメガ−3脂肪酸による心房細動の予防および治療

本発明は、一般に、負荷投与量で、その後、維持量で、オメガ−3脂肪酸を使用する、対象体における心房細動の治療および予防方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、負荷投与量、次いで、維持量のオメガ−3脂肪酸を用いる、対象体における心房細動の治療および予防の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動は、ヒトにおける最も一般的な心不整脈の一種であり、心調律障害に関する入院数の約3分の1を占める。米国では200万〜300万人がこの症状を持っていると推定され、診断および治療に数十億ドルが費やされている。加えて、毎年50万件の新しいケースが診断されている。
【0003】
心房細動は、心臓における異常な放電によって生じる急速な非協調性収縮を特徴とする心房の調律障害である。これにより、心房が血液を心室へ送り込む能力の低下が起こり、しばしば、心房のいくつかの部分で血液の貯留が生じる。血液の停滞は血餅の形成を引き起こすことがあり、その後、該血餅は血管を通って移動し、閉塞を引き起こすことがある。心房細動は、脳卒中および心室性不整脈のリスク、ペースメーカー療法の必要性、ならびに有害な恐れのある薬物の使用を増加させることがある。
【0004】
心房細動患者のほとんどは、高血圧、冠動脈疾患または心臓弁もしくは心筋の疾患のような基礎慢性心血管疾患を有する。しかしながら、心房細動は、ある種の薬物の摂取、肉体的もしくは心理的ストレス、心筋梗塞、心膜炎、甲状腺機能亢進症または肺塞栓症のような急性の可逆的事象によって起こることがある。心房細動はまた、一般的に、心臓手術、胸部手術、股関節手術、ならびに他の手術および処置のような手術の後に発症する。実際、心房細動は、冠動脈バイパス移植(CABG)術の後に生じる最も一般的な合併症である。この状況における発生率は10〜15%であり、高齢者ではより一般的に現れる。
【0005】
心房細動の治療法の選択肢は、薬理学的および非薬理学的な方法を包含する。薬理学的処置は、ジゴキシン、β遮断薬、およびカルシウムチャネル遮断薬のような心拍数を減少させる薬物を包含する。ワルファリンのような抗凝血剤もまた、心房細動に伴う血餅形成のリスクを低下させるために使用することができる。正常洞調律を回復させるかまたは維持するために、しばしば、電気的除細動、ならびにソタロール、アミオダロン、プロパフェノン、フレカイニド、ジソピラミドおよびドフェチリドのような薬物による化学的除細動が行われる。
【0006】
最近の研究によって、魚の消費量が心房性および心室性不整脈ならびに突然死の発生率の低下に関連していることが示された。この関連の基礎にあるメカニズムが完全に理解されているわけではないが、研究者たちは、該抗不整脈効果は、魚および魚油の中に豊富にある長鎖n−3脂肪酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)によってもたらされると考えている。
【0007】
オメガ−3脂肪酸の1つの形態は、DHAおよびEPAを含有している魚油由来のオメガ−3長鎖ポリ不飽和脂肪酸の濃縮物であり、LOVAZATMの商標の下に販売されている。かかる形態のオメガ−3脂肪酸は、例えば特許文献1、2および3において記載されている(出典明示により本明細書の一部を構成する)。
【0008】
Jahangiriらによる研究では、n−3ポリ不飽和脂肪酸類(PUFAs)であるドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエン酸(EPA)の投与により、ラットの心房筋細胞におけるイソプロテレノール誘発性非同調性収縮が止まった。非特許文献1。
【0009】
Mozaffarianらによる65歳以上の成人の前向き疫学的研究では、ツナまたは他の直火もしくは天火による焼き魚の消費量が心房細動の発生率に反比例して関連することが示された。非特許文献2。
【0010】
Biscioneらによる研究では、心房性頻脈性不整脈(AT)のエピソードを呈したペースメーカー移植患者40人に1回投与としてポリ不飽和脂肪酸1g(それぞれ0.9〜1.5の比率で850mg以上の量のエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸)を4ヶ月間毎日投与した。4ヶ月の治療前期間の後に4ヶ月の治療期間があり、その後に、4ヶ月の離脱期間があった。この研究は、最初の4ヶ月は、治療前ATエピソード数が平均444±1161であり、AT負荷は、3.89%であった。治療期間の間、ATエピソード数は、181±436(−59%、p=0.037)まで59%(p=0.037)減少し、AT負荷は、1.06%まで67%(p=0.065)減少した。離脱期間の間、ATエピソード数は552±1717に増え、総AT負荷は2.69%に上昇した。非特許文献3。
【0011】
Caloらによって行われた無作為化対照臨床試験では、冠動脈バイパス術(CABG)を受けた正常洞調律の個体を、CABGの前に少なくとも5日間、および退院の日まで、EPAおよびDHAの組合せまたはプラセボのどちらかで処置した。手術の前および後のどちらもEPAおよびDHAの投与量は、2g/日であった。術後心房細動は、EPAおよびDHAを投与した対象体では15.2%が発症したのに対して、プラセボを投与した対象体では33.3%が発症した。Caloらの臨床試験では、対象体には2g/日の一定投与量が投与され、より迅速にPUFAsが定常状態濃度に達するようにするための負荷投与量またはボーラス投与量の投与は行われなかった。非特許文献4。
【0012】
負荷投与量は、定常状態濃度に達するための時間が相当である場合または治療レベルが迅速に達成されなければならない場合にしばしば用いられる。負荷投与量は、薬物についての分布容積を「負荷する」かまたは「満たす」ために用いられる。分布容積は、体内の薬物の全体量を血漿中の濃度と関連付ける比例因子である。それは、血液から組織へ全身に分布する薬物の能力を説明している。薬物が体内に蓄積するのに要する時間は、薬物の半減期と称される。さらに詳しくは、薬物の半減期は、薬物の血漿中濃度が0時の初期濃度の半分に達するのに要する時間であり、しばしば、負荷投与量を投与する必要があるかどうかを決定するのに役立つ。Katanらによる一研究は、EPAおよびDHAの脂肪酸としての血漿コレステリルエステルへの平均半減期がそれぞれ4.8日および10.3日であることを見出した。同研究は、EPAおよびDHAの脂肪酸としての赤血球中の平均半減期がそれぞれ28.1日および38.5日であることを見出した。非特許文献5。オメガ−3脂肪酸の動態学は古典的ではないこと、また、遊離EPA、DHAおよび/またはそのエチルエステルは相対的な摂取量に匹敵する量で血中に存在するわけではないことに注目しなければならない。オメガ−3脂肪酸は、生物学的に有用な様々な形態での提供および/または利用のために肝臓における最初の通過において広範に代謝される傾向がある。EPAおよびDHAの動態学は古典的ではない(例えば、該動態学は、EPAおよびDHAの形態、ならびに赤血球膜、血清コレステリルエステル、脂肪組織のような部位に依存する)ので、Katanらは、治療の初期にオメガ−3脂肪酸の治療レベルを確立することを開示していない。
【0013】
負荷投与量を対象体に投与することが必ずしも適切または有用であるとは限らない。短時間に高用量が対象体に投与された場合に実質的なまたはしばしば重篤な副作用を有するいくつかの剤がある。速度制限代謝経路によってのみ生じ得る活性代謝物を有する他の剤がある。また、初回量に関係なく全身的な作用の開始がゆっくりの他の剤があることもある。
【0014】
オメガ−3脂肪酸が、他の活性な剤(例えば、ワルファリン)との負の相互作用を有する可能性があるかまたは手術または他の処置の間またはその後に出血リスクを増大させる可能性がある抗凝血効果を有することは文献に記載されている。例えば、非特許文献6を参照。
【0015】
加えて、EPAおよび/またはDHAのどの形態、どの代謝物またはどの身体的部位が術後に抗不整脈活性をもたらすのか知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,502,077号
【特許文献2】米国特許第5,656,667号
【特許文献3】米国特許第5,698,594号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Jahangiri A. et al., Termination of asynchronous contractile activity in rat atrial myocytes by n-3 polyunsaturated fatty acids. Mol. Cell. Biochem. 2000; 206-33-41
【非特許文献2】Mozaffarian D. et al., Fish intake and risk of incident atrial fibrillation. Circulation. 2004; 110:368-373
【非特許文献3】Biscione F et al., Effetti degli acidi grassi omega-3 nella prevenzione delle aritmie atriali (Effects of omega-3 fatty acids in the prevention of atrial arrhythmia). Ital Heart J Suppl. 2005; 6(1):53-59
【非特許文献4】Calo L et al., N-3 Fatty Acids for the Prevention of Atrial Fibrillation After Coronary Artery Bypass Surgery. J Am Coll Cardiol. 2005; 45:1723-8
【非特許文献5】Katan et al., Kinetics of the incorporation of dietary fatty acids into serum cholesteryl esters, erythrocyte membranes, and adipose tissue: an 18-month controlled study. J. Lipid Res. 1997; 38:2012-2022
【非特許文献6】Buckley et al., Ann Pharmacother. January 2004; 38(1):50-52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
DHAおよびEPAは、心房細動の予防および治療の両方に有益な効果を及ぼす可能性がある。したがって、当該技術分野では、心房細動のリスクと関連することが知られている処置の前または心房細動の長期治療の開始時のDHAおよびEPAの投与を含む治療計画が必要とされている。加えて、DHAおよびEPAの長い半減期および薬物の定常状態濃度に達するのに要する時間の長さのために、最も有効な治療のためにできる限り迅速に体内のオメガ−3脂肪酸が高レベルに達するのが望ましい。
【0019】
本発明の実施態様は、上記した、治療の初期段階でオメガ−3脂肪酸が治療的レベルに達する、心房細動の治療および予防のための治療計画の必要性について取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一の実施態様は、対象体における心房細動の治療または予防方法であって、1〜30日の負荷投与量期間の間、負荷投与量で、その後、維持量で、オメガ−3脂肪酸の有効量を該対象体に投与すること(ここで、負荷投与量は維持量の約2倍またはそれ以上である)を含む方法である。
【0021】
本発明の別の実施態様は、介入処置後の対象体における心房細動の予防方法であって、介入処置の前1〜30日の負荷投与量期間の間または介入処置の直後に、負荷投与量で、その後、介入処置後に維持量で、オメガ−3脂肪酸の有効量を投与すること(ここで、負荷投与量は、維持量の約2倍またはそれ以上である)を含む方法である。
【0022】
本発明の別の態様は、対象体における心房細動の治療方法であって、1〜30日の負荷投与量期間の間、負荷投与量で、その後、維持量で、オメガ−3脂肪酸の有効量を該対象体に投与すること(ここで、負荷投与量は、維持量の約2倍またはそれ以上である)を含む方法である。
【0023】
かかる治療目的は、これらの対象体における心房細動時間または発生頻度の減少である。この治療の恩恵を受ける心房細動患者の一の群は、房室結節機能不全および遮断、洞結節機能不全、洞房徐脈疾患、徐脈頻脈症候群、心代償不全、慢性心不全、慢性二枝および三枝ブロック、肥大性閉塞性心筋症、突発性拡張型心筋症、QT延長症候群、過敏性頚動脈洞、および神経心臓性失神のような状態のためにペースメーカーをつけている患者である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、負荷投与量で、その後、維持量で、オメガ−3脂肪酸を使用する、心房細動の治療および予防の方法に関する。
【0025】
「心房細動」とは、ACC/AHA/ESC Guidelines for the Management of Patents with Atrial Fibrillation (J Am Coll Cardiol. 2001, 38(4):1266i-1266lxx)において検討されているように、結果として生じる心房の機械的機能の低下を伴う協調性のない心房興奮を特徴とする上室性頻脈性不整脈をいう。心房細動は、心電図(ECG)にて、一貫性のあるP波が、高速振動、または、房室(AV)伝導が無傷である場合に不規則な頻繁に迅速な心室応答を伴う、サイズ、形状およびタイミングが変化する細動波に置き換えられることによって特徴付けられる。心房細動の様々なタイプの例は、急性、慢性、発作性、間欠性、定常性、持続性および永久的なものである。
【0026】
本明細書で用いる場合、「負荷投与量」なる用語は、治療開始時に投与される初回量をいう。「維持量」なる用語は、負荷投与量の後に投与される投与量をいう。本発明では、負荷投与量は、維持量の約2倍またはそれ以上であり得る。
【0027】
本発明の一の実施態様では、オメガ−3脂肪酸の負荷投与量は、維持量の1.5〜8倍であり得る。好ましい実施態様では、オメガ−3脂肪酸の負荷投与量は、2〜10g/日であり得る。
【0028】
本発明の一の実施態様では、維持量は、1〜4g/日であり得る。
【0029】
「負荷投与量期間」は、負荷投与量が投与される期間である。「維持量期間」は、維持量が投与される期間である。本発明の一の実施態様では、負荷投与量期間は、1〜30日であり得、その後に維持量期間が続く。好ましい実施態様では、負荷投与量期間は、1〜14日、最も好ましくは、1〜7日であり得、その後に維持量期間が続く。
【0030】
いくつかの好ましい実施態様では、オメガ−3脂肪酸は、米国特許第5,502,077号、第5,656,667号および第5,698,594号(出典明示により本明細書の一部を構成する)に記載されているように、LovazaTMオメガ−3脂肪酸を含む。他の好ましい実施態様では、オメガ−3脂肪酸は、組成物の総脂肪酸含量と比べて少なくとも40重量%の濃度で存在する。さらに他の好ましい実施態様では、オメガ−3脂肪酸は、組成物の総脂肪酸含量と比べて少なくとも50重量%のEPAおよびDHAを含む。好ましくは、EPAおよびDHAは、EPA:DHAの重量比が99:1〜1:99、好ましくは、1:4〜4:1、より好ましくは、1:3〜3:1、最も好ましくは、1:2〜2:1である。オメガ−3脂肪酸はまた、純粋なEPAまたは純粋なDHAを含み得る。
【0031】
本明細書で用いる場合、「オメガ−3脂肪酸」は、天然または合成オメガ−3脂肪酸またはその医薬上許容されるエステル、誘導体、抱合体(例えば、Zalogaらの米国特許出願公開第2004/0254357号、およびHorrobinらの米国特許第6,245,811号を参照(それぞれ、出典明示により本明細書の一部を構成する))、前駆体または塩およびそれらの混合物を包含する。オメガ−3脂肪酸油の例としては、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコトヘキサエン酸(DHA)およびα−リノレン酸のようなオメガ−3脂肪酸ポリ不飽和長鎖脂肪酸;モノ−、ジ−およびトリグリセリドのようなグリセロールによるオメガ−3脂肪酸のエステル;ならびに脂肪酸メチルエステルおよび脂肪酸エチルエステルのようなオメガ−3脂肪酸と第一、第二または第三アルコールとのエステルが挙げられる。好ましいオメガ−3脂肪酸油は、EPAまたはDHAのような長鎖脂肪酸、そのトリグリセリド、そのエチルエステルおよびそれらの混合物である。オメガ−3脂肪酸またはそのエステル、誘導体、抱合体、前駆体、塩およびそれらの混合物は、それらの純粋な形態で、または、魚油(好ましくは、精製魚油濃縮物)のような油の成分として、使用され得る。本発明における使用に適した市販のオメガ−3脂肪酸の例としては、Incromega F2250、F2628、E2251、F2573、TG2162、TG2779、TG2928、TG3525およびE5015(英国ヨークシャーのCroda International PLC)、およびEPAX6000FA、EPAX5000TG、EPAX4510TG、EPAX2050TG、K85TG、K85EE、K80EEおよびEPAX7010EE(ノルウェー国ライサカー1327のPronova Biocare a.s.)が挙げられる。
【0032】
別の好ましい組成物としては、オメガ−3脂肪酸が少なくとも40重量%、好ましくは、少なくとも50重量%、より好ましくは、少なくとも60重量%、さらに好ましくは、少なくとも70重量%、最も好ましくは、少なくとも80重量%、さらに好ましくは、少なくとも90重量%の濃度で存在するものを包含する。好ましくは、オメガ−3脂肪酸は、EPAおよびDHAを少なくとも50重量%、より好ましくは、少なくとも60重量%、さらに好ましくは、少なくとも70重量%、最も好ましくは、少なくとも80重量%、例えば、約84重量%含む。好ましくは、オメガ−3脂肪酸は、EPAを約5〜約100重量%、より好ましくは、約25〜約75重量%、さらに好ましくは、約40〜約55重量%、最も好ましくは、約46重量%含む。好ましくは、オメガ−3脂肪酸は、DHAを約5〜約100重量%、より好ましくは、約25〜約75重量%、さらに好ましくは、約30〜約60重量%、最も好ましくは、約38重量%含む。上記のパーセンテージは全て、他に指示がない限り、組成物中の総脂肪酸含量と比べた場合の重量によるものである。重量によるパーセンテージは、遊離酸に基づいてもエステル形態に基づいてもよいが、他の形態が本発明に従って利用される場合であっても、オメガ−3脂肪酸のエチルエステル形態に基づくのが好ましい。
【0033】
オメガ−3脂肪酸は、約300mg〜約10g、より好ましくは、約500mg〜約6g、最も好ましくは、約750mg〜約4gの量で存在することができる。この量は、1つまたはそれ以上の投与形態中に存在することができ、好ましくは、1つの投与形態中に存在することができる。オメガ−3脂肪酸組成物は、αトコフェロールのような化学的酸化防止剤、大豆油および部分硬化植物油のような油、ならびに、精製ヤシ油、レシチンおよびその混合物のような滑沢剤を含んでいてもよい。
【0034】
オメガ−3脂肪酸の最も好ましい形態は、LOVAZATMオメガ−3脂肪酸(K85EE、ノルウェー国ライサカーのPronova Biocare A.S.)であり、好ましくは、以下の特徴を含む(1つの投与形態あたり):
【表1】

【0035】
本発明の活性成分、オメガ−3脂肪酸は、1種類またはそれ以上の非活性医薬成分(本明細書では一般的に「賦形剤」としても知られている)と組合せて投与され得る。非活性成分は、例えば、活性成分を、可溶化すること、懸濁すること、増粘すること、希釈すること、乳化すること、安定化すること、保存すること、保護すること、着色すること、矯味矯臭すること、および安全で、便利で、そして他の点で使用にふさわしい適用可能かつ有効な製剤へ調製することに役立つ。
【0036】
賦形剤としては、プロピレングリコール・モノカプリレート、長鎖脂肪酸のグリセロールおよびポリエチレングリコールエステルの混合物、ポリエトキシ化ヒマシ油、グリセロールエステル、オレオイルマクロゴールグリセリド、プロピレングリコール・モノラウレート、プロピレングリコール・ジカプリレート/ジカプレート、ポリエチレン−ポリプロピレングリコール・コポリマー、およびポリオキシエチレンソルビタン・モノオレエートのような界面活性剤、エタノール、グリセロール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールのような共溶媒、ならびにヤシ油、オリーブ油または紅花油のような油が挙げられる。界面活性剤、共溶媒、油またはそれらの組合せの使用は、一般に、製薬の技術分野で知られており、当業者に理解されるように、いずれの適当な界面活性剤も本発明およびその実施態様と併せて使用することができる。
【0037】
いくつかの好ましい実施態様では、オメガ−3脂肪酸は、介入処置前の負荷投与量期間の間、負荷投与量で投与することができる。かかる介入処置の例としては、冠動脈バイパス移植(CABG)術、大動脈弁置換術、僧帽弁置換術、バルーン血管形成術、胸部外科手術、腹部外科手術、股関節手術、ならびに他の外科手術および処置が挙げられる。好ましい実施態様では、介入処置は、CABG術であり得る。
【0038】
いくつかの好ましい実施態様では、オメガ−3脂肪酸は、他の医薬化合物と一緒に投与することができる。これらの医薬化合物としては、心血管治療薬を挙げることができる。例としては、IA型の抗不整脈薬(例えば、ジソピラミド、プロカインアミドおよびキニジン)、1B型の抗不整脈薬(例えば、トカイニド、リドカインおよびメキシレチン)、1C型の抗不整脈薬(例えば、フレカイニド、モリシジン、プロパフェノンおよびインデカイニド)、II型の抗不整脈薬(アテノロール、プロパノロールおよびエスモロールのようなβ遮断薬)、III型の抗不整脈薬(例えば、アミオダロン、ブレチリウム、ドフェチリド、イブチリドおよびソタロール)、およびIV型の抗不整脈薬(ベラパミルおよびジルチアゼムのようなカルシウムチャネル遮断薬)が挙げられる。また、ジゴキシン、抗凝血剤(例えば、ワルファリンおよびヘパリン)および抗血小板薬(例えば、アスピリン、チクロピジンおよびクロピドグレル)を投与することができる。
【0039】
本明細書の全体にわたって、種々の特許および刊行物が引用されている。これらの特許および刊行物の開示内容は、本発明が関連する現在の技術水準をより十分に説明するために、出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する。
【0040】
本発明は、この開示を利用できる関連技術分野の当業者が想到するような相当な修正、変更、ならびに形態および機能の等価が可能である。
【0041】
本発明は、現在好ましい実施態様と考えられるものについて記載されているが、本発明は、それに限定されない。反対に、本発明は、上記の詳細な説明の精神および範囲内に含まれる様々な修正および等価な配置を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体における心房細動の治療または予防方法であって、1〜30日の負荷投与量期間の間、負荷投与量で、その後、維持量で、オメガ−3脂肪酸の有効量を該対象体に投与すること(ここで、負荷投与量は維持量の約2倍またはそれ以上である)を含む方法。
【請求項2】
負荷投与量が維持量の1.5〜8倍である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、1種類またはそれ以上のさらなる抗不整脈薬を投与することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
負荷投与量期間が1〜7日である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
負荷投与量が1日あたり1.5〜10gである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
維持量が1日あたり750mg〜4gである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
介入処置後の対象体における心房細動の予防方法であって、介入処置の前1〜30日の負荷投与量期間の間または介入処置の直後に、負荷投与量で、その後、負荷投与量エピソード後に維持量で、オメガ−3脂肪酸の有効量を投与すること(ここで、負荷投与量は、維持量の約2倍またはそれ以上である)を含む方法。
【請求項8】
負荷投与量が維持量の1.5〜8倍である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
さらに、1種類またはそれ以上のさらなる抗不整脈薬を投与することを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
負荷投与量期間が1〜7日である、請求項7記載の方法。
【請求項11】
負荷投与量が1日あたり1.5〜10gである、請求項7記載の方法。
【請求項12】
維持量が1日あたり750mg〜4gである、請求項7記載の方法。
【請求項13】
介入処置が冠動脈バイパス移植(CABG)術、大動脈弁置換術、僧帽弁置換術、バルーン血管形成術、胸部外科手術、腹部外科手術、股関節手術、ならびに他の手術および処置の1つまたはそれ以上である、請求項7記載の方法。
【請求項14】
オメガ−3脂肪酸が介入処置の前および直後に負荷投与量で投与される、請求項7記載の方法。
【請求項15】
対象体における心房細動の治療方法であって、1〜30日の負荷投与量期間の間、負荷投与量で、その後、維持量で、オメガ−3脂肪酸の有効量を該対象体に投与すること(ここで、負荷投与量は、維持量の約2倍またはそれ以上である)を含む方法。

【公表番号】特表2010−510313(P2010−510313A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538407(P2009−538407)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/024283
【国際公開番号】WO2008/066745
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(506219731)リライアント・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】RELIANT PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】