説明

オリフィス部材

【課題】配管の減肉化を低減可能なオリフィス部材を提供することにある。
【解決手段】配管よりも小径で流体の通過可能な孔部11と、オリフィス部材10一面側に形成されて配管内壁全周に沿って配置可能なテーパ部位(12f,12s)と、一面とは異なるオリフィス部材10他面側を構成して配管内壁に対して垂直状に配置可能な垂直面部位16とを有し、オリフィス部材10を配管内に配置する際に、配管上流側に向かって拡開するようにテーパ部位(12f,12s)を配置しつつ、配管下流側に垂直面部位16を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリフィス部材(差圧式流量計の構成部材)に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、火力発電所及び化学プラントなど各種設備では、設備内外に配管を配設して、各種の流体(液体や気体等)を流通させる。そして配管内の流体流量を測定する流量計として、比較的構造の簡単なオリフィス部材が採用されることが多い。
この種のオリフィス部材は、配管途中に配設される部材(典型的にプレート状)であり、配管内径よりも小さい孔部を有する(特許文献1を参照)。公知技術では、オリフィス部材を配管内に配置する。そして配管内の流体が、オリフィス部材(孔部)を通過することで、オリフィス部材の前後(上流と下流)で流体の圧力差が生じる。
【0003】
ここでオリフィス部材の前後(上流と下流)の圧力差と流体流量には一義的な関係があることが知られる。
そこで一対の導圧管を、それぞれオリフィス部材を挟んで配管の上流側及び下流側に設けるとともに、一対の導圧管に差圧計をつなげる。そしてオリフィス部材の前後(上流と下流)の圧力差を測定することで、配管内を流れる流体の流量を測定する。
【0004】
ところで上述の構成では、オリフィス部材の下流側の配管内壁が、流体の乱流化などにより剥離欠損する(いわゆる減肉現象が生じる)ことがあった。特に高温高圧下に置かれる配管(原子力発電所等の配管)は減肉現象が促進されやすい環境にあった。
このため典型的な設備では、各種の検知手段によって配管の減肉度合いを検知したのち、必要に応じて新たな配管に取換えることで対応していた(特許文献2を参照)。特に高温高圧下の配管は減肉化が促進されやすいことから、配管の取換え頻度が多くなりがちであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−68446号公報
【特許文献2】特開2009−041924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため従来、配管の減肉化を低減可能な技術(特にシンプルな技術)が望まれていた。而して本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、配管の減肉化を低減可能なオリフィス部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、第1発明のオリフィス部材は、流体の流通可能な配管内に配置される部材である。そしてこの種の配管では、例えばオリフィス部材(比較的簡単な構成)によって、配管の減肉化を低減できることが望ましい。
そこで本発明のオリフィス部材は、孔部と、テーパ部位と、垂直面部位を有する。孔部は、配管よりも小径で流体の通過可能な部位である。またテーパ部位は、断面視で内壁に対して直線状に傾斜する部位であり、オリフィス部材一面側に形成されて配管内壁全周に沿って配置可能である。そして垂直面部位は、配管内壁に対して垂直状に配置可能な部位であり、前記一面とは異なるオリフィス部材他面側を構成する。
そして本発明では、オリフィス部材を配管内に配置する際に、配管上流側に向かって拡開するようにテーパ部位を配置しつつ、配管下流側に垂直面部位を配置する構成とした。
このようにテーパ部位を配管上流側に配置することで、オリフィス部材の前後における圧力変動を適切に低下させつつ、流体の流れを比較的スムーズ化して流体の乱流化を抑制することができる。またオリフィス部材の他面側を垂直面部位で構成することにより、オリフィス部材の構成が簡略化される。
【0008】
第2発明のオリフィス部材は、第1発明のオリフィス部材であって、上述のテーパ部位が、孔部周縁に形成される第一テーパ部位と、オリフィス部材一面側に形成されて配管上流側に配置される第二テーパ部位とを有する。
本発明では、第一テーパ部位と第二テーパ部位によって、オリフィス部材の前後における圧力変動を好適に低下させることにより、流体の流れが更にスムーズ化する。
【0009】
第3発明のオリフィス部材は、第2発明のオリフィス部材であって、上述の第二テーパ部位が、配管壁面に対して20°〜45°の角度で傾斜する。
本発明では、第二テーパ部位を適切な角度で傾斜させることで、流体の流れがより確実にスムーズ化される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る第1発明によれば、配管の減肉化を低減可能なオリフィス部材を提供することができる。また第2発明によれば、配管の減肉化をより確実に低減することができる。そして第3発明によれば、配管の減肉化を更に確実に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1のオリフィス部材の断面図である。
【図2】実施形態2のオリフィス部材の断面図である。
【図3】比較例2におけるオリフィス部材の配設状態を示す断面図である。
【図4】試験装置の概略図である。
【図5】流量係数の試験結果を示す図である。
【図6】流量係数の試験結果を示す別の図である。
【図7】圧力分布の試験結果を示す図である。
【図8】変動圧力分布の試験結果を示す図である。
【図9】変動圧力分布の試験結果を示す別の図である。
【図10】表面形状の試験結果を示す図である。
【図11】減肉パターンの試験結果を示す図である。
【図12】最大変動圧力分布の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図12を参照して説明する。
そして各実施形態では、図4の装置を基準として各部材の上下を定めるとともに、各図に、適宜、各装置又は部材の上方に符号UP、各装置又は部材の下方に符号DWを付す。
なお本実施形態では、鉛直管(鉛直方向に向けて配置される配管)を一例に説明するが、配管の配設方向を限定する趣旨ではない。例えば配管として、水平管(水平方向に向けて配置される配管)や斜め管(斜め方向に向けて配置される配管)等の各種配管を単体又は複数組み合わせて用いることができる。
【0013】
<実施形態1>
本実施形態のオリフィス部材10は、配管内部の流体流量を測定する流量計であり、配管(30u,30d)内に配設することができる(図1を参照)。ここで配管は、流体(液体や気体等)の通過可能な筒状部材であり、各種設備(原子力発電所、火力発電所、化学プラントなど)の内外に配設できる。
そして上述の構成では、オリフィス部材10の下流側の配管内壁が、流体の乱流化などにより剥離欠損する(減肉現象が生じる)ことがあった。そこで本実施形態では、後述するオリフィス部材10の構成(比較的シンプルな構成)によって、配管の減肉化を低減することとした。以下、各構成について詳述する。
【0014】
[オリフィス部材]
オリフィス部材10は、孔部11と、後述のテーパ部位(第一テーパ部位12f、第二テーパ部位12s)及び垂直面部位16を有する(図1を参照)。
そして本実施形態では、後述するように、配管下流側に垂直面部位16を配置するとともに、配管上流側に向かって拡開するようにテーパ部位(12,14)を配置することとした。
【0015】
(孔部)
孔部11は、配管(30u,30d)よりも小径で流体の通過可能な貫通孔(正面視で略円形状)であり、オリフィス部材10の中央に形成できる(図1を参照)。
ここで配管内径Dに対する孔部11の径寸法dを適宜設定することで、オリフィス部材10の前後(上流と下流)で所定の圧力差を生じさせる。
例えばJIS規格では、後述の圧力取出し方法(D・D/2タップとフランジタップ)に応じて、配管内径D(mm)が50≦D≦760のとき、孔部11の径寸法d(mm)を、d≧12.5に設定できる。また同条件において、絞り直径比β(=d/D)を、0.2≦β≦0.75に設定できる。
【0016】
(テーパ部位)
本実施形態のテーパ部位は、オリフィス部材10一面側(配管上流側)に形成される部位であり、第一テーパ部位12fと、第二テーパ部位12sを有する(図1を参照)。
第一テーパ部位12fは、孔部11周縁に形成される部位であり、例えば孔部11(上流側)の内縁全周を傾斜状に切欠くことで形成できる。
そして本実施形態では、第一テーパ部位12fを、孔部11の内面部18(配管内壁に対して平行な部位)に対して角度θ1で直線状に傾斜させることができる(図2を参照)。角度θ1の範囲は特に限定しないが、典型的には20°〜45°である。
ここで角度θ1が20°未満であると、θ1>θ2の関係があるためテーパ部位が長くなり、オリフィス部材が大型化するが、大型化に見合った顕著な効果は得難い。また角度θ1が45°より大きいと、期待する減肉効果が得難い状況となる。
【0017】
また第二テーパ部位12sは、オリフィス部材10一面側に向けて突出する部位であり、配管上流側に配置される。第二テーパ部位12sの上流側が配管内壁につながるとともに、第二テーパ部位12sの下流側が第一テーパ部位12fにつながる。
このように第二テーパ部位12sにより、配管内壁と第一テーパ部位12fを連続的につなげることで、配管内の流体の流れがスムーズになる。そして第二テーパ部位12sをオリフィス部材10に設けることで、オリフィス部材10における圧力変動の最大値(P’max)を、従来構成のオリフィス部材10よりも更に低下(減少)させることができる(後述の試験結果を参照)。
本実施形態では、第二テーパ部位12sを、配管内壁に対して角度θ2で直線状に傾斜させることができる。角度θ2の範囲は特に限定しないが、典型的には20°〜45°であることが好ましい。ここで角度θ2が20°未満であると、第二テーパ部位12sが長くなり、オリフィス部材10が大型化するが、大型化に見合った顕著な効果は得難い。またθ1≧θ2の関係があるため角度θ2が45°より大きいと、公知技術のオリフィス特性に近づき、本発明に特有の減肉効果が得難い状況になる。
【0018】
(垂直面部位)
垂直面部位16は、断面視で配管内壁に対して直線状に立設する(配管内壁を水平線と見立てたときにそれに対して垂直状に配置する)部位である(図1を参照)。この垂直面部位16は、前記一面とは異なるオリフィス部材10他面側(配管下流側)を構成する部位であり、配管内壁に対して略90°で配置可能である。
そして本実施形態では、後述するように配管下流側(図1では下方)に垂直面部位16を配置する。このように配管下流側に垂直面部位16を配置することで、下流側の配管内壁に流体が案内されること(配管内壁に過度の流体圧力がかかること)を極力阻止することができる。
【0019】
[オリフィス部材の配設]
図1を参照して、オリフィス部材10を配管(30u,30d)内に配設する。
ここでオリフィス部材10を配管内に配置する手段は特に限定しない。例えば配管一部に予めオリフィス部材10を配設する。つぎに配管一部の端部外周に切削加工(ネジ切り)を施して、他の配管に接続可能なネジ山を形成する。そして配管一部に、他の配管(上流側の配管30d、下流側の配管30u)を接続することにより、オリフィス部材10を配管の所定位置に配置できる。
本実施形態では、オリフィス部材10を配管内に配置する際に、下流側の配管30uに垂直面部位16を向けて配置する(配管下流側に配置する)。そして上流側の配管30d(配管上流側)に向かって拡開するように各テーパ部位12f,12sを配置する。
【0020】
つぎにオリフィス部材10を挟んで、配管の上流側の圧力と、配管の下流側の圧力を取出す。ここで圧力の取出し方法は特に限定しないが、例えばD・D/2タップ方式を採用できる。
例えば本実施形態では、配管の上流側と下流側に、各々導圧管20u,20d(配管内外を連通する管部材)を設ける。そして一対の導圧管20u,20dに差圧計をつなげることにより、オリフィス部材10の前後(上流と下流)の圧力差を測定できる。
【0021】
そして本実施形態では、各テーパ部位12f,12sを配管上流側に配置することにより、配管上流側の流体が比較的スムーズに孔部11に案内される。このため本実施形態によれば、オリフィス部材10の下流における流体の流れをスムーズ化させ乱流の程度を抑制することで、圧力変動を適切に低下させることができる。
また本実施形態によれば、両テーパ部位12f,12sによって、オリフィス部材10の下流における圧力変動(最大値)を好適に低下させることにより、流体の流れを更にスムーズ化することができる。
またオリフィス部材10の他面側を垂直面部位16で構成することにより、従来構成(例えばベンチュリ管等)と比較して、オリフィス部材10の構成が簡略化される。さらに垂直面部位16を配管下流側に配置することにより、下流側の配管内壁に流体が案内されること(配管内壁に過度の流体圧力がかかること)を極力阻止できる。
そして本実施形態のオリフィス部材10によれば、流体の圧力差が極端に低下することがないため、従来のオリフィス部材10と遜色のない精度で配管内の流体流量を測定することができる。
この結果として本実施形態によれば、オリフィス部材10(比較的シンプルな構成)によって、配管の減肉化を好適に低減することができる。特に本実施形態のオリフィス部材10は、高温高圧下に置かれる配管(原子力発電所等の配管)に好適に採用できる。
【0022】
<実施形態2>
第2の実施形態を図2に示す。実施形態2の基本構造は、実施形態1の基本構造とほぼ同一であるため、共通の構造等については対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施形態のオリフィス部材10aは、孔部11と、第一テーパ部位12fと、垂直面部位16を有する(第二テーパ部位を省略した構成である)。そして配管下流側に垂直面部位16を配置するとともに、配管上流側に向かって拡開するように第一テーパ部位12fを配置する構成とした。なお本実施形態における圧力の取出し方法は特に限定しないが、D・D/2タップ方式、フランジタップ及びコーナータップを例示できる。
そして本実施形態においても、オリフィス部材10a(比較的シンプルな構成)によって、配管の減肉化を好適に低減することができる。
【0023】
<試験例>
以下、本実施形態を試験例に基づいて説明するが、本発明は試験例に限定されない。
[実験装置]
本試験の試験装置40は、タンク2Aと、ポンプ4Aと、流量調整バルブ6Aと、電磁流量計8Aと、光源11A(ハロゲンランプ)と、ハイスピードカメラ12Aと、マノメータ14A(圧力計)と、オリフィス部材(10,10a)と、直流増幅器18Aと、拡散形半導体圧力変換器20Aと、オシロスコープ22Aと、コンピュータ24Aを有する(図4を参照)。
テストセレクション13Aとして、円筒状の配管(配管内径D40mm、全長2300mm、アクリル樹脂製)を使用した。電磁流量計8Aとして、型式:FMR104W(日立ハイテクコントロールシステムズ社製)を使用した。拡散形半導体圧力変換器20Aとして、型式:PD104SW(JTEKT社製)を使用した。
【0024】
本試験では、テストセレクション13Aを垂直に配置した。そしてテストセレクション13A途中(その下部から1300mmの位置)に、後述のオリフィス部材(10,10a)を設置した(図4を参照)。
つぎにテストセレクション13A途中(オリフィス部材の上流と下流)の壁面に圧力孔(直径0.8mm)を穿設してマノメータ14Aを接続した。光源11A(ハロゲンランプ)とハイスピードカメラ12Aを、テストセレクション13A途中(オリフィス部材の設置位置)の周囲に配置して、テストセレクション13A内部(表面形状や減肉パターン)を観察した。そして直流増幅器18Aと拡散形半導体圧力変換器20Aとオシロスコープ22Aとコンピュータ24Aは、テストセレクション13A上部に接続した。
つぎに他の配管によって、テストセレクション13A下部とタンク2Aを、ポンプ4Aと流量調整バルブ6Aと電磁流量計8Aを介してつなげるとともに、テストセレクション13A上部とタンク2Aをつなげた。そしてタンク2Aからの水が、ポンプ4Aで加圧され電磁流量計8Aを通過し、テストセレクション13Aの最下部から円管内に流入しオリフィス部材で噴流となって下流へ噴出されたのち、上部からタンク2Aに戻り循環する構成とした。さらにオリフィス前後(上流と下流)の圧力分布を、マノメータ14Aと拡散形半導体圧力変換器20A等を使って測定した。
【0025】
(実施例1)
本実施例のオリフィス部材は、実施形態1のオリフィス部材10であり、孔部11と、第一テーパ部位12f(厚み寸法L3:4.0mm)と、第二テーパ部位12sを有する(図1を参照)。
本実施例では、孔部11の径寸法d=15.0mm、絞り面積比CR=0.14とした。また第一テーパ部位12fの傾斜角度θ1=45°に設定し、第二テーパ部位12sの傾斜角度θ2=20°に設定した。
本実施例では、第一テーパ部位12fと第二テーパ部位12sを上流側(図4で見て下方)に向けつつ、テストセレクション途中(その下部から1300mmの位置)にオリフィス部材10を設置した。そして一対の導圧管20u,20d(内径0.8mm)をオリフィス部材に設けた。そして下流側の導圧管20uとオリフィス部材のクリアランスL1を10.0mmとし、上流側の導圧管20dとオリフィス部材のクリアランスL2を35.6mmとした。
【0026】
(実施例2)
本実施例のオリフィス部材(厚み寸法L6:4.0mm)は、実施形態2のオリフィス部材10aであり、第二テーパ部位を有さない(図2を参照)。第一テーパ部位と孔部は、上述の実施例1のオリフィス部材と同一構成である。そして本比較例では、第一テーパ部位を上流側に向けつつ、テストセレクション途中にオリフィス部材を設置した。
そして一対の導圧管20u,20dをオリフィス部材に設けた。このとき下流側の導圧管20uとオリフィス部材のクリアランスL4を10.0mmとし、上流側の導圧管20dとオリフィス部材のクリアランスL5を10.0mmとした。
【0027】
(実施例3)
本実施例のオリフィス部材は、実施例1と略同一構成である。そして本実施例では、オリフィス部材に、孔部から管壁面に対してθ2=30°の第二テーパ部位を有する形状とした。そして実施例1と同一の向きで、オリフィス部材をテストセレクション途中に設置した。
【0028】
(実施例4)
本実施例のオリフィス部材は、実施例1と略同一構成である。そして本実施例では、オリフィス部材に、孔部から管壁面に対してθ2=45°の第二テーパ部位を有する形状とした。そして実施例1と同一の向きで、オリフィス部材をテストセレクション途中に設置した。
【0029】
(比較例1)
本比較例のオリフィス部材は、実施例2と略同一構成である。そして本比較例では、実施例とは逆向きで(第一テーパ部位を下流側(図4で見て上方)に向けつつ)、テストセレクション途中にオリフィス部材を設置した。
【0030】
(比較例2)
本比較例のオリフィス部材は、実施例1と略同一構成である。そして本比較例では、実施例とは逆向きで(第一テーパ部位と第二テーパ部位を下流側に向けつつ)、テストセレクション途中にオリフィス部材を設置した(図3を参照)。
【0031】
(比較例3)
本比較例のオリフィス部材は、実施例3と略同一構成である。そして本比較例では、実施例とは逆向きで、テストセレクション途中にオリフィス部材を設置した。
【0032】
(比較例4)
本比較例のオリフィス部材は、実施例4と略同一構成である。そして本比較例では、実施例とは逆向きで、テストセレクション途中(その下部から1300mmの位置)にオリフィス部材を設置した。
【0033】
[試験結果]
以下に、実施例と比較例の試験結果を示す。なお図5〜12では、便宜上、実施例1をSp20−rev、実施例2をStd−rev、実施例3をSp30−rev、実施例4をSp45−revと表記する。また同様に図5〜12では、便宜上、比較例1をStd、比較例2をSp20、比較例3をSp30、比較例4をSp45と表記する。
【0034】
(流量係数)
図5に、実施例1,2のオリフィス部材の流量係数Cと、比較例1,2のオリフィス部材の流量係数Cを示す。測定誤差は、約0.5%であった。また図6に、実施例1〜4のオリフィス部材の流量係数Cと、比較例1〜4のオリフィス部材の流量係数Cを示す。図6の各サークルに、各グラフの位置関係を概略的に示す。
図5を参照して、流量係数Cは、レイノルズ数Re=umD/ν=(1〜7)×104,(um:管内平均流速,ν:動粘度)で一定であり、実施例1のオリフィス部材は流量計として使用可能であることがわかった。また比較例1のオリフィス部材の流量係数Cは規格値(JIS Z 8762等を参照)と誤差±0.5%以内で一致した。
また同様に図6を参照して、実施例2〜4のオリフィス部材の流量係数Cも、実施例1のオリフィス部材と同様に一定であることから、流量計として使用可能であることがわかった。
【0035】
(圧力分布)
図7に、実施例1及び比較例1,2におけるオリフィス下流域の圧力分布pを、圧力係数Cp=2(P−pref)/(ρum2)(pref:代表圧力,y/D=‐6.25での静圧力とした)で示す。実施例1及び比較例1,2では、レイノルズ数Re=5.0×104に設定し、pについては位置水頭分を補正した。
図7を参照して、オリフィス部材の下流では、オリフィス部材のエッジから剥離した流れと管壁との間に環状の負圧の渦領域が形成されることがわかった。その結果、オリフィス部材の直後で圧力は大きく低下し下流に向かって回復した後摩擦圧力損失に従って一定圧力勾配で減少することがわかった。
そして圧力回復に至る領域は実施例1と比較例1でほぼ等しく(y/d≒4)、実施例1で圧力損失が他に比し大きく減少することがわかった。すなわち圧力損失は,比較例1に対して実施例1で約38%減少する一方、比較例2で約3%減少するにとどまった。
【0036】
(変動圧力分布)
図8及び図9を参照して、各実施例及び各比較例におけるCR=0.14,Re=5.0×104での変動圧力分布を示す。
ここで図8を参照して、比較例1の変動圧力の最大値はy/D=2近傍で、それはオリフィス部材と圧力分布から推測されるオリフィスエッジからの剥離流線の再付着点y/D≒4とのほぼ中間位置にある。なおこれは、オリフィス下流の減肉の最大位置と一致する(“米田公俊・森田良,配管減肉現象に関わる流動特性の解明(その1)−単相流中のオリフィス下流域の乱流特性−,電力中央研究所,研究報告L05007(2006),pp.1−23”、“米田公俊・森田良,流れ加速型腐食に対する影響因子の定量的な評価 (その1)−流体力学因子と減肉率との相関−,電力中央研究所,研究報告L06007(2007),pp.1−22”(以下、従来の研究とも呼ぶ)を参照)。
また従来の研究では、減肉の最大位置で乱流運動エネルギが最大になることから、それを減肉の主原因の一つとしている(一般に、本減肉現象は物理的あるいは化学的壊蝕の結果と考えられる)。
しかし、減肉の最大位置は変動圧力の最大位置(図8)と一致し減肉の直接的な主原因の一つ、物理的壊蝕の原因は管壁における圧力変動と考えることができる。
そして図8を参照して、各実施例における最大変動圧力値は、比較例1と比較して好適に減少することがわかった。また図9を参照して、比較例2〜4における最大変動圧力値は、比較例1と比較して増加することがわかった。
このことからノズルの配置方法(オリフィス部材の設置方向)は、オリフィス下流域での流動特性や減肉特性に大きく影響し、例えば実施例1の使用は、圧力変動量や減肉量の軽減の可能性を強く示唆する。
【0037】
さらに図8を参照して、比較例1の圧力損失最大値(P’max)を100%とした場合、実施例1では、圧力損失最大値(P’max)が78.5%に減少した。
また比較例1の圧力損失最大値(P’max)を100%とした場合、実施例2では圧力損失最大値(P’max)が81.7%に減少し、実施例3では圧力損失最大値(P’max)が78.5%に減少した。
【0038】
(減肉模擬試験)
下記の手法により、減肉模擬試験を行った。なおオリフィス下流域の管壁の減肉現象を実験的に明らかにするには長時間を要するなど困難が伴う。
まず管壁に、グリース(信越シリコーン:HIVAC−G)を厚さ0.5mmで一様に塗り、Re=5.0×104で15分後のはく離の様子を観察した。
図10(a)は、比較例1の減肉模擬試験の結果であり、グリースのはく離した領域はy/D=1.5〜2.5に存在し、それは最大変動圧力の領域と一致した。また図10(b)の比較例2の結果も同様で,比較例1より上流に減肉位置が移動した。
そして図10(c)は、実施例1の減肉模擬試験の結果であり、グリースのはく離した領域はy/D=1.5〜2.5に存在し、それは最大変動圧力の領域と一致した。
【0039】
図11(b)を参照して、配管内壁の表面形状を観察したところ、グリースが引きずられた跡と鱗片状の小さなディンプルが見られた。
この鱗片状の模様は、実機の減肉状況(従来の研究、「図11(a)実機配管」を参照)と類似しており、実機における減肉現象が流れの影響(変動圧力等)を強く受けることがわかった。
【0040】
(減肉量)
図12に、各実施例及び比較例のオリフィス部材の最大変動圧力値P’maxと平均流速umとの関係を示す。最大変動圧力値P’maxは、平均流速umの増加とともに二次関数的に増加し比較例1では次式(1)で表わされる。
P’max=0.826um2 (1)
またP’maxは、比較例2で最大(P’max=0.909um2)になり、実施例1で最小(P’max=0.509um2)になることがわかった。
ところで減肉量はum2の増加とともに増加することが実験的に明らかにされている(従来の研究を参照)。これらのことから、減肉量は変動圧力P’maxと線形関係になることが予測される。
【0041】
[結論]
以上の試験結果から、実施例1〜4のオリフィス部材によると、配管の減肉化を好適に低減可能であることがわかった。
この効果は、テーパ部位を配管上流側に配置することで、オリフィス部材の前後における圧力変動を適切に低下させつつ、流体の流れを比較的スムーズ化したためであると容易に推測される。
さらに試験結果から、下記(1)〜(3)が判明した(又は予測できた)。
(1)変動圧力が最大となる位置は、オリフィス部材と再付着点のほぼ中間に位置し、それは減肉量が最大となる位置と一致した。
(2)変動圧力の最大値は、比較例1に対し比較例2で約28%増加し、実施例1で約21%減少した。
(3)減肉量は、P’maxと線形関係になることが予測される。
【0042】
本実施形態のオリフィス部材は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施形態では、第一テーパ部位12fと第二テーパ部位12sを有するオリフィス部材を例示した。本実施形態のオリフィス部材は、第一テーパ部位と第二テーパ部位の少なくとも1つを有することができる。
(2)本実施形態では、孔部11の構成(形成箇所や個数等)を例示したが、孔部の構成を限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0043】
10 オリフィス部材
11 孔部
12f 第一テーパ部位
12s 第二テーパ部位
16 垂直面部位
18 内面部
20u,20d 導圧管
30u,30d 配管
40 試験装置
2A タンク
4A ポンプ
6A 流量調整バルブ
8A 電磁流量計
11A 光源
12A ハイスピードカメラ
13A テストセレクション
14A マノメータ
18A 直流増幅器
20A 拡散形半導体圧力変換器
22A オシロスコープ
24A コンピュータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流通可能な配管内に配置されるオリフィス部材において、
前記配管よりも小径で前記流体の通過可能な孔部と、前記オリフィス部材一面側に形成されて前記配管内壁全周に沿って配置可能なテーパ部位と、前記一面とは異なる前記オリフィス部材他面側を構成して前記配管内壁に対して垂直状に配置可能な垂直面部位とを有し、
前記オリフィス部材を前記配管内に配置する際に、前記配管上流側に向かって拡開するように前記テーパ部位を配置しつつ、前記配管下流側に前記垂直面部位を配置する構成のオリフィス部材。
【請求項2】
前記テーパ部位が、前記孔部周縁に形成される第一テーパ部位と、前記オリフィス部材一面側に形成されて前記配管上流側に配置される第二テーパ部位とを有する請求項1に記載のオリフィス部材。
【請求項3】
前記第二テーパ部位が、前記配管壁面に対して20°〜45°の角度で傾斜する請求項2に記載のオリフィス部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−52573(P2012−52573A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193868(P2010−193868)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年3月1日 日本機械学会東海支部発行の「東海支部第59期総会講演会 講演論文集 No.103−1」に発表
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【Fターム(参考)】