説明

オルダムカップリング用ハブ、オルダムカップリング、およびハブ加工装置

【課題】 ハブ10の凸部12の側面11,13を精度よく加工すること。
【解決手段】 平板のスライダー20に形成されている直線状の凹部22,24に結合される直線状の凸部12が形成されているオルダムカップリング用ハブ10において、オルダムカップリング用ハブ10は、焼結合金によって成形されており、凸部12の両側面11,13は、両側から挟み込むようにプレスすることによって加工してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルダムカップリング用ハブ、オルダムカップリング、およびハブ加工装置に関し、特に、正確に回転方向の力を伝達可能なオルダムカップリング用ハブ、オルダムカップリング、およびハブ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半田付け装置などの産業用装置、自動車、ポンプなどに設けられている回転体のシャフト相互を継なぐために、オルダムカップリングが用いられている。オルダムカップリングは、両面に直線状の凹部が形成されている平板のスライダーと、スライダーの凹部に対応する凸部が形成されている一対のハブとを含む。各ハブの間にスライダーを位置させ、各凸部と各凹部とを結合させることで、オルダムカップリングを組み立てる。
【0003】
ハブの製造工程の概要は、以下の2工程に大別される。すなわち、焼結合金などによって、凸部を有する形状に成形する工程と、その後に、ハブの凸部を、スライダーの凹部に所要の圧入で結合できるように、結合面を加工する工程とに大別される。この加工工程は、熟練工が、ヤスリ等により手作業で凸部の両側面を、平らになるように削るというものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のように、ヤスリを使って手作業で凸部の加工を行った場合には、いくら熟練工とはいえども、凸部の側面の加工精度には限界がある。このため、面精度がよくなかったし、オルダムカップリングにバックラッシュが生じることもあった。したがって、オルダムカップリングの歩留まりが高くなかった。特に、面精度がよくないと、ハブとスライダーとの結合面が小さくなるので、ハブとスライダーとの摩擦係数が大きく、これらがすべりにくいという不都合があった。
【0005】
さらに、手作業による凸部の加工は、オルダムカップリングの生産性の向上にも限界があり、したがって、オルダムカップリングのコストダウンが困難であった。オルダムカップリングの歩留まりが高くないことも、オルダムカップリングのコストダウンの困難さに拍車をかけていた。
【0006】
また、オルダムカップリングは、使用により、主として、スライダーが摩耗することになる。このため、オルダムカップリングの購入者から、スライダーだけを再度購入したいという需要がある。ところが、スライダーは、モールド成形することが一般的である。モールド成型品は、成形環境により製品ばらつきが生じる。特に、製品ばらつきは、ロットによるものが大きく、さらには成形時期によるものも大きい。したがって、スライダーだけを再販した場合には、そのスライダーが、必ずしも、既に販売されているハブにうまく結合しない場合がある。そこで、現状では、完成品であるオルダムカップリングを販売しており、部品であるハブおよびスライダーを個別に販売することは困難である。
【0007】
しかし、スライダーの凹部の加工は、ハブの凸部の加工よりも容易に行うことができる。したがって、ハブの凸部の側面を精度よく加工することができれば、そのハブにきちんと結合するスライダーを作成し、それを再販することが容易に行えるようになる。こうすれば、購入者側では、たとえスライダーが摩耗しても、部品で販売されているスライダーを購入し、今まで使用していたものと交換するだけで、ハブとスライダーとの結合面が大きいオルダムカップリングの再生を実現することができる。
【0008】
本発明は、ハブの凸部の側面を精度よく加工することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のオルダムカップリング用ハブは、焼結合金によって成形されており、オルダムカップリング用ハブに形成されている直線状の凸部の両側面を、両側から挟み込むようにプレスすることによって加工する。具体的には、この加工は、上記オルダムカップリング用ハブを作成するために、凸部の各側面に対応する一対のプレス部と、プレス部の少なくとも一方をスライドさせるスライド機構と、プレス部のスライド位置を規定する規定部とを有する、本発明のハブ加工装置を用いて行う。また、本発明のオルダムカップリングは、上記オルダムカップリング用ハブを備える。
【0010】
本発明のハブ加工装置を用いて、ハブの凸部の側面を加工すると、凸部の側面を、ヤスリで削るよりも早く、しかも精度よく、調整することができる。したがって、ハブとスライダーとの面精度を向上させることができる。しかも、オルダムカップリングの生産性を向上させることもできる。さらには、ハブのみ、あるいはスライダーのみを販売できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態のオルダムカップリング30の分解斜視図である。図1には、一対のハブ10と、各ハブ10の間に位置する平板のスライダー20とを備える、たとえば円柱状のオルダムカップリング30を分解した状態を示している。
【0013】
ハブ10は、ハブ本体14の第一面に、直線状の一対の凸部12が形成されている。また、ハブ本体14の第一面から第二面にかけて、シャフト等が挿入される軸線に沿う貫通孔16が形成されている。ハブ10の側面には、シャフト等とハブ本体14とを結合するための図示しないネジを通すネジ受け15が形成されている。
【0014】
ハブ10は、まず、ステンレス、鉄、銅合金、または真ちゅうなどの金属の粉末を用いて、焼結合金によって中間品である成形品を製造する。つづいて、成形品の少なくとも表面に樹脂を含浸させる。樹脂を含浸させるにより、ハブ10とスライダー20との接触面の摩擦係数(すべり抵抗)を小さくし、ハブ10とスライダー20とのすべり易さを担保している。凸部12の両側面11,13は、後述するように、両側から挟み込むようにプレスすることによって、加工してある。これにより、側面11,13は、表面粗さがなくなるし、互いの平行性が担保される。
【0015】
スライダー20は、スライダー本体26の第一面,第二面に、凸部12を通じてハブ10と連結される直線状の凹部22,24が形成されている。凹部22,24は、互いに直交する方向で形成されている。スライダー本体26の第一面から第二面にかけて、貫通孔16に対応する貫通孔28が形成されている。
【0016】
スライダー20は、スーパーエンプラ、プラスチックなどの樹脂を材料としている。樹脂には、ガラス、カーボンなどの強化剤が含有されている。これにより、スライダー20の強度が担保される。
【0017】
オルダムカップリング30は、側面11,13相互の平行性が担保されているハブ10と、強度が担保されているスライダー20とを備えているため、トルクに強いものとなる。さらに、スライダー20は、強度を有しているため、樹脂を材料としているものよりも、使用による磨耗が少なく、長時間使用してもバックラッシュが生じにくい。
【0018】
図2は、図1に示すオルダムカップリング30のハブ10の凸部12の加工装置40のプレス部分の模式的な構成図である。加工装置40は、凸部12の各側面11,13に対応する一対のプレス部42,44を有する。ハブ10の加工の際には、凸部12を、プレス部42,44間に位置させる。このとき、両側面11,13が、それぞれプレス部42,44と対向する態様で位置させる。
【0019】
プレス部42,44は、裁置台41,43にそれぞれ取りつけられている。プレス部42,44は、裁置台41,43に対して、着脱可能に構成している。このため、短手方向の長さが異なる複数のプレス部を用意しておけば、凸部12の側面11,13間の長さ、すなわち凸部12の上面の幅を自由に変更することが可能である。
【0020】
なお、同様の効果は、以下説明する規定部48,49を可動式とすることでも達成することができるし、以下のエアシリンダーへのエアの注入量等を制御することでも達成することができる。
【0021】
本実施形態では、プレス部42を固定式とし、プレス部44を可動式としている。プレス部42は、たとえば8カ所、ボルトを用いて加工装置40本体に固定している。プレス部44は、ガイド部50,51によって位置決めされた状態でスライド可能に構成されている。プレス部44は、プレス部42と逆側で連結されているスライド部47と一体でスライドされる。
【0022】
スライド部47は、図示しないエアシリンダーまたは油圧シリンダーまたは電動シリンダーなどによって動力が与えられることでスライドする。なお、プレス部42,44の双方をスライド可能に構成し、プレス部42側にもエアシリンダー等に接続されているスライド部を備え、側面11,13の両側から同時にプレスを行うようにしてもよい。
【0023】
プレス部44の最大スライド位置は、スライド方向に対して垂直方向の突出している規定部48,49によって規定される。スライド部47への動力が停止されると、プレス部44は、プレス時に伸びた一対のバネ部45,46が縮むことによって、スライド前の位置に戻される。
【0024】
プレスによって側面11,13の加工を行うことができるのは、ハブ10を、焼結合金により成型しているためである。すなわち、たとえば、ハブを、アルミニウムを材料として成型したものであれば、プレス加工を行うと、側面以外の部位(たとえば貫通孔16)の形状も変形してしまう。このようなものは、オルダムカップリングとしての体をなさない場合があるが、焼結合金であれば、貫通孔16等の形状が変形することがないので、上記不都合が生じないという理由からである。
【0025】
プレス時にスライド部47へ与える力は、金属を変形させる場合よりも、小さくてよい。また、加工装置40を用いると、ハブ10の加工時間は、短時間となる。
【0026】
なお,加工装置40は、可能な限り小型化するとよい。こうすると、プレス加工時に加工装置40にかかる、応力ひずみを小さくすることが可能となり、凸部12の上面の幅を、精度よく規定することができる。
【0027】
実際に、図2に示す加工装置40によって加工した凸部12の側面11,13と、ヤスリを用いて加工した凸部の側面とを比較したところ、本実施形態のハブ10の凸部12の側面11,13の方が、ヤスリを用いて加工したものよりも、表面粗さが小さく、かつ、側面11,13全体に亘って平滑であることがわかった。また、オルダムカップリングの製造時間も短くなった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のオルダムカップリングは、たとえば、半田付け装置などの産業用装置、自動車、ポンプ、ターボチャージャー、ボイラーのように、シャフトを有する回転体を備えている装置等への利用が可能である。また、本発明のオルダムカップリングは、たとえば、NC工作機械の送りねじ駆動部分、計測機器およびOA機器および半導体製造装置などの精密位置決め部分に利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態のカップリングの分解斜視図である。
【図2】図1に示すオルダムカップリングのハブの凸部の加工装置のプレス部分の模式的な構成図である。
【符号の説明】
【0030】
10 ハブ
11,13 側面
12 凸部
14 ハブ本体
15 ネジ受け
16 貫通孔
20 スライダー
22,24 凹部
26 スライダー本体
28 貫通孔
30 オルダムカップリング
40 加工装置
41,43 裁置台
42,44 プレス部
45,46 バネ部
47 スライド部
48,49 規定部
50,51 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板のスライダーに形成されている直線状の凹部に結合される直線状の凸部が形成されているオルダムカップリング用ハブにおいて、
前記オルダムカップリング用ハブは、焼結合金によって成形されており、
前記凸部の両側面は、両側から挟み込むようにプレスすることによって加工してあることを特徴とするオルダムカップリング用ハブ。
【請求項2】
前記オルダムカップリング用ハブは、ステンレス、鉄、銅合金、または真ちゅうを材料としていることを特徴とする請求項1記載のオルダムカップリング用ハブ。
【請求項3】
さらに、樹脂を含浸していることを特徴とする請求項1または2記載のオルダムカップリング用ハブ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか記載の一対のオルダムカップリング用ハブと、前記各オルダムカップリング用ハブの間に位置する前記スライダーとを備えることを特徴とするオルダムカップリング。
【請求項5】
前記スライダーは、スーパーエンプラ、プラスチックを含む樹脂を材料としていることを特徴とする請求項4記載のオルダムカップリング。
【請求項6】
前記樹脂は、ガラス、カーボンを含む強化剤入り樹脂であることを特徴とする請求項5記載のオルダムカップリング。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか記載のオルダムカップリング用ハブを加工するハブ加工装置であって、
前記凸部の各側面に対応する一対のプレス部と、
前記プレス部の少なくとも一方をスライドさせるスライド機構と、
前記プレス部のスライド位置を規定する規定部と、
を有することを特徴とするハブ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−29400(P2006−29400A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206698(P2004−206698)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(593182381)アサ電子工業株式会社 (5)