説明

オレフィンポリマーの粘度を低下させる方法

【課題】オレフィンポリマーの粘度を低下させる方法を提供する。
【解決手段】開示されるのは、ポリプロピレンポリマー、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンポリマーブレンドの粘度を低下させる方法であって、連鎖移動剤及び開始剤を、ポリプロピレンポリマー、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンポリマーブレンドに添加すること、及び得られた組成物を加熱することを含む方法である。連鎖移動剤は、130℃でのエチレン重合において測定されたおよそ0.04に等しいか又はそれより大きいCs値を有する。開始剤は例えば、有機又は無機ペルオキシド、炭素ベースのラジカル発生剤、ビスアゾ化合物、安定なニトロキシル化合物、立体障害性NO−アシル化合物又は立体障害性アルコキシアミン化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示されるのは、ポリプロピレン、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンブレンド組成物、及びポリプロピレン、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンブレンドの粘度を低下させる(ビスブレーキング)方法である。
【背景技術】
【0002】
慣用の配合方法による、例えば押出し又は射出成形によるポリオレフィン等級(種々の分子量、溶融粘度、密度、分子量分布等を有するポリマー型)の制御された製造は、ポリマー製造者及びポリマー加工者/配合者により用いられるルーチンプロセスである。
このポリマー加工段階により望まれるパラメータ、例えば溶融粘度の設定は、用いられる添加剤の制御された反応性及び作用の様式に非常に依存している。
ポリオレフィンの溶融粘度(レオロジー)を改質するフリーラジカル開始剤の使用は、一般に既知の方法である。それが分子量の減少(分解)又は分子量の増加のいずれを引き起こすかどうかは、主としてポリオレフィンの化学構造に左右される。
ポリマープロセス段階中のポリプロピレン型のポリマーと遊離ラジカル開始剤との反応は、一般にポリマーの分解を引き起こすが、ポリエチレン型のポリマーは架橋する傾向にある。
コポリマー及びターポリマー又はコポリマーブレンドの場合には、高比率のプロピレンがポリプロピレンのような挙動を引き起こす一方で、高比率のエチレンがポリエチレンのような挙動を引き起こす。上記のコポリマー及びターポリマー又はコポリマーブレンドが大きな比率で不飽和オレフィンを含む場合、架橋の可能性は、遊離二重結合の濃度の低下とともに低下する。
【0003】
低分子量及び狭い分子量分布を有する製品を与えるためのポリプロピレン(PP)の制御された分解は、‘制御されたレオロジー’のポリプロピレン(CR−PP)を製造するための商業上重要なプロセスである。非特許文献1を参照のこと。特定のPP等級(“反応器等級”)は、合成プロセス又は触媒系(メタロセン触媒、チグラー触媒)の最適化により得られ得、標準のPP等級は、合成の後の加工段階に従う合成により加工技術において頻繁に改質される。
既知の分解プロセスは、熱で、特に280℃よりも高い温度で、又はフリーラジカル開始剤の存在下のいずれかで進行する。プロセス技術において、フリーラジカルにより引き起こされるプロセスは、例えば180℃よりも高い温度にて、押出し機又は射出成形機内で行われる。適するフリーラジカル開始剤は、希釈形態で(オイル中に希釈され無機支持体上で安定化されたPPマスターミックス(PP Mastermix))、又は液体として直接に加工段階中に添加される有機ペルオキシドである。与えられた加工条件下、ペルオキシドは、フリーラジカルへと分解し、それは鎖分解反応を開始し、そして所望のレオロジー特性(所望の溶融粘度)を有するポリマーを形成する。低分子量(より高いメルトフローレート(MFR))を有する製品を形成するためのPPの分解は一般に、粘度を低下させる方法又はビスブレーキング方法として言及される。該方法はまた、制御されたレオロジープロセスとして言及される。
【0004】
CR−PP等級は主として、低い溶融粘度が経済的なプロセスのための必須要件である繊維用途及び射出成形用途に使用される。広い範囲の溶融粘度又は分子量が今日、加工技術において必要とされている。
分子量の他に、ポリマーの加工挙動に影響するさらなるパラメータは、分子量分布(MWD)である。広いMWDを有するポリマー等級が、紡糸プロセスにおける低い引っ張り速度でのポリマー鎖の改良された配向挙動を示す一方で、高い引っ張り速度及び広いMW
Dの場合にはその反対である。この理由として、紡糸プロセスにおける改良された連続性を達成するために、高い引っ張り速度において狭いMRDが不可欠である。
ペルオキシドの使用は、一般にポリマー加工の慣用の温度よりも下であるその分解温度のために、単に限定された“加工温度窓”が利用できるのみであるという不利さを有する。さらには、ペルオキシドの貯蔵、操作及び加工の間に厳格な安全規制が順守されなければならない。ペルオキシドのさらなる不利さは、ポリマーとの分解の無い溶融配合の不可能さである。
ペルオキシドの他に、フリーラジカル源、例えばクミル系をベースとしたC−ラジカル発生剤が既知であるが、これらは280℃よりも高い温度においてのみ使用され得る。
【0005】
特許文献1は、基:
【化1】

(式中、Gは、水素原子又はメチル基を表し、及びG1及びG2は、各々水素原子、メチル基を表すか一緒にオキソ基を表す。)
を含む化合物である所謂NOR−HALS(HALS:Hindered Amino Light Stabilizer)を用いた280℃より高い温度でのポリマーの分子量を減少させる方法を記載している。これら既知のNOR−HALS化合物は、280℃より高い温度においてのみ適切なポリマー分解を引き起こす。
【0006】
特許文献2は、式:
【化2】

(式中、特にRa’はモノアシル基を表し、及びR1ないしR4はアルキル置換基を表す。)
で表されるヒドロキシルアミンエステルを、分解されるポリプロピレンポリマーに添加し、そして混合物を280℃よりも低い温度に加熱するところの、ポリプロピレン、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンブレンドの分子量を減少させる方法を開示している。
【0007】
特許文献3は、亀裂耐性ポリマーを用いた高いメルトフローレートのプロピレンポリマーの製造を教示している。
ビスブレーキング方法に共通する1つの事項は、揮発成分の形成である。ビスブレーキング又は配合の間に生成する相当割合の揮発物は、所謂“スモーク”と呼ばれる。特許文献4は、成分の中でも特に2,2’,2”−ニトリロ[トリエチル−トリス(3,3’,5,5’−テトラ−第三ブチルフェニル)ホスフェートを含む安定系を用いることによりスモーク形成を減少させる手法を議論している。
非特許文献2は、フリーラジカル重合において分子量を減少させる連鎖移動剤の使用を議論している。連鎖移動剤は、成長ポリマーラジカルと反応することによりフリーラジカル重合に作用して、停止ポリマー及び新ラジカルを形成する。無次元の転換定数であるCsは、モノマーとの反応によるポリマー鎖の伸長についての速度定数に対する、連鎖移動剤へのラジカルの転換についての速度定数の割合として定義される。種々のモノマーのフリーラジカル重合の間に得られたCsに対する実験値は、Polymer Handbook中に応じる。
【非特許文献1】Plastic Additives Handobook,第5版,H.Zweifel編,2001,Hanser出版,第791頁ないし第796頁
【特許文献1】米国特許第6,133,414号明細書
【特許文献2】米国出願公開第2003/216494号明細書
【特許文献3】米国特許第6,599,985号明細書
【特許文献4】米国特許第5,834,541号明細書
【非特許文献2】Polymer Handbook(第4版,John Wiley & Sons,Brandrup,Innergut,及びGrulke編)
【発明の開示】
【0008】
本発明は、ポリプロピレンのより効率的なビスブレーキング方法により従来技術を改良するという問題に関する。本発明の方法は、ポリプロピレンポリマーのビスブレーキング中のスモーク(揮発分)発生をさらに最少化する。同様に、本発明は、いかなるPPの高温溶融加工中のスモーク発生も最少化するであろう。さらには、所望量のビスブレーキングを達成するのに必要とされる開始剤の量が減少される。
開示されるのは、ポリプロピレンポリマー、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンポリマーブレンドの粘度を低下させる方法であって、該方法は、
連鎖移動剤及び開始剤を、ポリプロピレンポリマー、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンポリマーブレンドに添加すること、及び得られた組成物を加熱することを含み、
ここで、該連鎖移動剤は、130℃にてエチレン重合において測定されたおよそ0.04に等しいか又はそれより大きいCs値を有する、方法である。
また開示されるのは、ポリプロピレンポリマー、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンブレンド
連鎖移動剤、及び
開始剤を含むポリマー組成物であって、
ここで、該連鎖移動剤は、130℃にてエチレン重合において測定されたおよそ0.04又はそれより大きいCs値を有する、ポリマー組成物である。
【0009】
ポリプロピレンポリマー、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンポリマーブレンド
分解される本ポリプロピレン型のポリマーは、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー及びポリプロピレンブレンドを含み得る。プロピレンコポリマーは、種々の割合の、例えばおよそ90%までの、又はおよそ50%までのコモノマーを含み得る。そのようなコモノマーの例は:1−オレフィン、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン又は1−オクテン、イソブチレンのようなオレフィン;シクロオレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン又はエチリデンノルボルネン;ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン又はノルボルナジエンのようなジエン;及びまたアクリル酸誘導体及びマレイン酸無水物のような不飽和カルボン酸無水物である。
用いられ得るポリプロピレンブレンドは例えば、ポリプロピレンとポリオレフィンとの混合物である。この例は、高密度ポリエチレン(HDPE)、高分子量及び高密度ポリエチレン(HMW HDPE)、超高分子量及び高密度ポリエチレン(UHMW HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、枝分れ状低密度ポリエチレン(BLDPE)及び小割合の
ジエンを含むエチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)からなる群より選択されるポリエチレンとポリプロピレンとのブレンドである。
【0010】
連鎖移動剤;
本連鎖移動剤は、130℃でのエチレン重合において測定されたおよそ0.04に等しいか又はそれより大きいCs値を有する。
連鎖移動剤は、チオール、ジスルフィド、リン酸エステル、ホスフィン、有機ヨウ化物、有機塩化物、プロピオン(又はより高級の)酸エステル、アルデヒド及び三級アミンの類のものであり得る。
以下の表がCsの幾つかの数値を示す:
【表1】

例えば、130℃でのエチレン重合において測定された本連鎖移動剤のCs値は、およそ0.05に等しいか又はそれより大きく、およそ0.07に等しいか又はそれより大きく、およそ0.08に等しいか又はそれより大きく、およそ0.1に等しいか又はそれより大きく、およそ0.15に等しいか又はそれより大きく、およそ0.20に等しいか又はそれより大きく、およそ0.50に等しいか又はそれより大きく、およそ1.0に等しいかそれより大きく、或いはおよそ2.0、3.0、4.0又は5.0に等しいか又はそれより大きい。
例えば連鎖移動剤は、チオール、ジスルフィド又は三級アミンである。
【0011】
例えば、本チオール及びジスルフィドは、式
R−S−A
又は
R−S−S−R
[式中、
Rは、炭素原子が硫黄原子に結合した一価、二価、三価又は四価のヒドロカルビル基を表し、及び
Aは、水素原子又は−SO3-+(式中、B+は有機又は無機カチオンを表す。)
を表す。]
で表されるものである。
また含まれるのは、チオウラム(thiouram)スルフィド、ジチオカルバメート、メルカプトベンズチアゾール及びスルフェンアミドである。
炭素原子により硫黄原子に結合したヒドロカルビル基としてのRは例えば、炭素原子数8ないし22のアルキル基、ヒドロキシ−炭素原子数2ないし8のアルキル基、メルカプト−炭素原子数2ないし8のアルキル基、1つ以上の−NH−基により中断されたメルカプト−炭素原子数8ないし20のアルキル基、1つ以上の−OCO−基により中断されたメルカプト−炭素原子数8ないし20のアルキル基、1つ以上のヒドロキシル基により置換されたメルカプト−炭素原子数8ないし18のアルキル基、炭素原子数6ないし10のアリール基を表すか、又は炭素原子数1ないし4のアルキル基、4−チオフェニル基、3−メチル−4−チオフェニル基及び炭素原子数6ないし10のアリール−炭素原子数1ないし4のアルキル基からなる群より選択された1つ以上の置換基により置換された炭素原子数6ないし10のアリール基である。
【0012】
炭素原子数8ないし22のアルキル基として定義されるRは、直鎖状の又は枝分れ状の炭素原子数8ないし18のアルキル基、例えばn−オクチル基、イソオクチル型、例えば3,4−、3,5−又は4,5−ジメチル−1−ヘキシル基又は3−又は5−メチル−1−ヘプチル基、他の枝分れ状のオクチル型、例えば1,1,3,3−テトラメチルブチル基又は2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、1−メチルウンデシル基、2−n−ブチル−n−オクチル基、イソトリデシル基、2−n−ヘキシル−n−デシル基、2−n−オクチル−n−ドデシル基又は直鎖状の炭素原子数12ないし19のアルキル基、例えばラウリル基(C12)、ミリスチル基(C14)、セチル基(C16)又はn−オクタデシル基(C18)である。
ヒドロキシ−炭素原子数2ないし8のアルキル基として定義されるRは、例えば、2−ヒドロキシエチル基、2−又は3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシ−2−ヘキシル基又は4−ヒドロキシ−3−ヘキシル基である。
メルカプト−炭素原子数2ないし8のアルキル基として定義されるRは、例えば、チオール(メルカプト)基により末端炭素原子において置換された炭素原子数2ないし8のアルキル基、例えば6−メルカプト−n−ヘキシル基又は5−メルカプト−n−ペンチル基である。
1つ以上の−NH−基により中断されたメルカプト−炭素原子数8ないし20のアルキル基として定義されるRは、置換されたジアミノ−炭素原子数2ないし4のアルキレン基:
【化3】

(式中、★は、S−A基に対する結合を表す。)
により例示される。
【0013】
1つ以上のヒドロキシ基により置換されたメルカプト−炭素原子数8ないし18のアルキル基として定義されるRは、メルカプトエチレングリコール基
【化4】

により例示される。
1つ以上の−OCO−基により中断されたメルカプト−炭素原子数8ないし20のアルキル基としてのRは、例えば、
【化5】

である。
炭素原子数6ないし10のアリール基として定義されるRは、例えばフェニル基である。
炭素原子数1ないし4のアルキル基、4−チオフェニル基及び3−メチル−4−チオフェニル基からなる群より選択された1つ以上の基により置換された炭素原子数6ないし10のアリール基として定義されるRは、以下の部分式:
【化6】

(式中、Ra及びRbは、互いに独立して水素原子又はメチル基を表す。)
により例示される。
炭素原子数6ないし10のアリール−炭素原子数1ないし4のアルキル基として定義されるRは、例えば、ベンジル基、フェネ−1−エチル基又はフェニル−2−エチル基である。
【0014】
カチオン又はカチオン基B+は、例えば、アルカリ金属カチオン、例えばナトリウム又
はカリウムイオン、アンモニウムイオン、トリ−炭素原子数1ないし4のアルキルアンモニウムイオン、例えばテトラメチル−又はテトラエチルアンモニウムイオン、又はコリニル(cholinyl)カチオンである。
式中のRが上記定義された炭素原子により硫黄原子に結合したヒドロカルビル基を表し、及びAが水素原子又は基
【化7】

(式中、B+は、上記定義されたカチン又はカチオン基を表す。)を表すところの適する
硫黄化合物は、例えば、以下の構造式:
【化8】

(式中、Ra及びRbは、互いに独立して水素原子又はメチル基を表す。)により表される。
硫黄化合物は既知であるか、又は既知の方法により得られ得る。
【0015】
本発明の特定の態様においては、連鎖移動剤は、式
R−S−A
又は
R−S−S−R
(式中、
Rは、炭素原子数8ないし22のアルキル基、ヒドロキシ−炭素原子数2ないし8のアルキル基、メルカプト−炭素原子数2ないし8のアルキル基、1個以上の−NH−基により中断されたメルカプト−炭素原子数8ないし20のアルキル基、1個以上の−OCO−基により中断されたメルカプト−炭素原子数8ないし20のアルキル基、1個以上のヒドロキシル基により置換されたメルカプト−炭素原子数8ないし18のアルキル基、炭素原子数6ないし10のアリール基を表すか、又は炭素原子数1ないし4のアルキル基、4−チオフェニル基、3−メチル−4−チオフェニル基及び炭素原子数6ないし10のアリール−炭素原子数1ないし4のアルキル基からなる群より選択された1個以上の置換基により置換された炭素原子数6ないし10のアリール基を表し、及び
Aは、上記定義されたとおりである。)
で表されるチオール又はジスルフィドである。
【0016】
開始剤;
典型的に、開始剤は、有機又は無機ペルオキシド、炭素ベースのラジカル発生剤、ビスアゾ化合物、安定なニトロキシル化合物、立体障害性NO−アシル化合物であるか、又は立体障害性アルコキシアミン化合物である。
本開始剤は、例えば、有機又は無機ペルオキシドである。適するペルオキシドの典型例は、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、3,6,6,9,9−ペンタメチル−3−(酢酸エチル)−1,2,4,5−テトラオキシシクロノナン、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート、ジ−t−ブチルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルジペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド;t−ブチルヒドロキシエチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド及び2,5−ジメチルヘキセン−2,5−ジペルイソノナノエート、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド、ジイソプ
ロピルペルオキシジカルボネート、第三アミルペルネオデカノエート、第三ブチル−ペルネオデカノエート、第三ブチルペルピバレート、第三アミルペルピバレート、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(2−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジスクシノイルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、第三ブチルペルイソブチレート、第三ブチルペルマレエート、1,1−ビス(第三ブチルペルオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(第三ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、第三ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート、第三ブチルペルイソノナオエート、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジベンゾエート、第三ブチルペルアセテート、第三アミルペルベンゾエート、第三ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(第三ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(第三ブチルペルオキシ)プロパン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジ−第三ブチルペルオキシド、3−第三ブチルペルオキシ−3−フェニルフタリド、ジ−第三アミルペルオキシド、α,α’−ビス(第三ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,5−ビス(第三ブチルペルオキシ)−3,5−ジメチル−1,2−ジオキソラン、ジ−第三ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキシン2,5−ジ−第三ブチルペルオキシド、3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン、p−メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンモノ−α−ヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド又は第三ブチルヒドロペルオキシドを包含する。
他の既知の開始剤は、炭素ベースのラジカル開始剤、例えばクミルベースの系である。
【0017】
適するビスアゾ化合物がまた、遊離ラジカル源として用いられ得る。そのようなアゾ化合物は、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチラミド)二水和物、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、遊離塩基又は塩酸塩として2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチラミジン)、遊離塩基又は塩酸塩として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}又は2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}である。
【0018】
遊離ラジカル開始剤はまた、既知の安定なニトロキシル化合物から選択され得る。ニトロキシル開始剤は、例えば、一般構造
【化9】

のものであるか、又は式
【化10】

(式中、各々のRはアルキル基を表し、及びTは5−又は6−員環を完成するのに必要とされる基を表す。)
で表される1個以上の基を含む化合物である。
以下に例示されるように式中のEが架橋基を表す場合にT部分を介して結合されることにより、2個以上のニトロキシル基が同一の分子中に存在し得る。
【化11】

【0019】
典型的なニトロキシルは、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)セバケート、4−ヒドロキシ−1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−エトキシ−1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−プロポキシ−1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アセトアミド−1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−オン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イルアセテート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル2−エチルヘキサノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イルステアレート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イルベンゾエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル4−t−ブチル−ベンゾエート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)スクシネート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)アジペート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)n−ブチルマロネート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)フタレート、ビス(1−オキシル−2,2,2,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)イソフタレート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)テレフタレート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)ヘキサヒドロテレフタレート
、N,N’−ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)アジパミド、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)カプロラクタム、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)ドデシルスクシンイミド、2,4,6−トリス−[N−ブチル−N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)]−s−トリアジン、4,4’−エチレンビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペラジノ−3−オン)、2−オキシル−1,1,3,3−テトラメチル−2−イソベンザゾール、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン、及びN,N−ビス−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ニトロキシドを包含する。
他の適する遊離ラジカル開始剤は、NO−アシルヒンダードアミン(立体障害性NO−アシル)化合物からなる群より選択され得る。これら化合物は、参照により内容が本願明細書に組み込まれている特許文献2に開示されている。
【0020】
特に、安定なNO−アシル化合物は、式
【化12】

で表される部分を1つ以上含む。
さらに、開始剤は、例えば参照により内容が本願明細書に組み込まれている特許文献1に開示されるようなヒンダードN−アルコキシヒンダードアミン化合物からなる群より選択され得る。
例えば、適するヒンダードN−アルコキシ(NORヒンダードアミン又は立体障害性アルコキシアミン化合物)は、式
【化13】

(式中、Rは、例えば、炭素原子数1ないし20のアルキル基、OHで置換された炭素原子数1ないし20のアルキル基又は炭素原子数5ないし12のシクロアルキル基を表す。)
で表される部分を1つ以上含む。
制御された分解に用いられる上記の遊離ラジカル開始剤は、それらが従来の方法において単独で用いられるときの慣用の量よりも、より少ない量でポリプロピレンポリマーに有
利に添加される。
【0021】
本発明のさらに好ましい態様においては、ポリマーの分解が2段階で起き得るように、異なる分解温度を有する少なくとも2種の異なるフリーラジカル開始剤が用いられる。このプロセスはまた、逐次分解として言及される。
適する組成物は、例えば、上記ペルオキシドとNOR−化合物又はNO−アシル化合物との組み合わせを含む。
2つの分解温度が2段階プロセスを効果的にするために十分に差があることが不可欠である。例えば、およそ180℃ないしおよそ220℃の範囲の分解温度を有するペルオキシドは、およそ240℃ないしおよそ280℃の範囲の分解温度を有するNO−アシル化合物と、及び/又はおよそ300℃の分解温度を有するNOR−化合物と組み合わせることができる。
該プロセスにおいて異なる分解温度を有する遊離ラジカル発生剤の混合物を使用することがもちろん可能である。
【0022】
ポリプロピレン、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンブレンドへの添加は、ポリマーが溶融され及び添加剤と混合されるすべての慣用の混合機内で行われ得る。適する機械は当業者に既知である。それらは主として、ミキサー、ニーダー及び押出し機である。
【0023】
本発明の好ましい態様に従うと、添加剤は、高密度ポリエチレン(HDPE)、高分子量高密度ポリエチレン(HMW HDPE)、超高分子量高密度ポリエチレン(UHMW
HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、枝分れ状低密度ポリエチレン(BLDPE)及び小割合のジエンを含むエチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)からなる群より選択されるポリエチレンとポリプロピレンとのブレンドからなる群より選択されるポリエチレンとポリプロピレンのブレンドに添加される。
該プロセスは、好ましくは、加工の間に添加剤を導入することにより押出し機内で行われる。
特に好ましい加工機は、一軸スクリュー押出機、逆回転及び同一回転二軸スクリュー押出機、遊星ギア押出機、リング押出機又はコニーダーである。真空が適用され得る少なくとも1つのガス除去室付きの加工機を使用することがまた可能である。
適する押出機及びニーダーは例えば、Handbuch der Kunststoffextrusion,第1巻 Grundlagen,編者 F.Hensen,W.Knappe,HPotente,1989年,第3頁ないし第7頁,ISBN:3−446−14339−4(第2巻 Extrusionsanlagen 1986年,ISBN 3−446−14329−7)に記載される。例えば、スクリュー長は、1ないし60スクリュー直径であり、好ましくは35ないし48スクリュー直径である。スクリューの回転速度は、好ましくは1分当り10ないし600回転(rpm)であり、非常に特に好ましくは25ないし300rpmである。
最大処理量は、スクリュー直径、回転速度及び駆動力による。本発明の方法はまた、言及したパラメータを変えるか又は適用量を供給する計量機を使用することにより、最大処理量よりも低い水準で行われ得る。
多くの成分が添加される場合、これらは前混合され得るか又は個々に添加され得る。
【0024】
ポリマーは、所望の分解が起きるように、十分な期間の間、高温にさらされる必要があり得る。温度は一般に、ポリマーの軟化点よりも高い。
本発明の方法の好ましい態様においては、280℃よりも低い温度範囲、特におよそ160℃ないしおよそ280℃の温度範囲が用いられる。特に好ましい変法においては、およそ200℃ないし270℃の温度範囲が用いられる。
分解に必要な期間は、温度、分解される材料の量、及び例えば使用される押出機の型に
応じて変わり得る。大抵は、およそ10秒ないし20分間であり、特に20秒ないし10分間である。
【0025】
ポリプロピレポリマーの分子量を減少する方法(分解方法)において、連鎖移動剤は例えば、該ポリマーの質量に基づき、およそ10ないしおよそ2000質量ppmの水準で添加される。例えば、連鎖移動剤は、該ポリプロピレンポリマーの質量に基づき、およそ50ないしおよそ1500ppm、又はおよそ100ないしおよそ1000ppm存在する。
開始剤は、連鎖移動剤と同様の範囲の量で添加される。開始剤と連鎖移動剤の質量:質量比は、およそ1:10ないしおよそ10:1であり、例えばおよそ1:9ないしおよそ9:1、およそ1:8ないしおよそ8:1、およそ1:7ないしおよそ7:1、およそ1:6ないしおよそ6:1、およそ1:5ないしおよそ5:1、およそ1:4ないしおよそ4:1、およそ1:3ないしおよそ3:1、およそ1:2ないしおよそ2:1、又はおよそ1:1.5ないしおよそ1.5:1である。
ペルオキシド(開始剤)の揮発性の分解生成物(スモーク)が分解されたポリマー中で変色又は臭いを引き起こすことがある一方で、ペルオキシドの量が減少され及び温度が低下され得るために、本方法においては変色及び臭いが非常にわずかしか起こらない。
【0026】
ポリマーへの配合は例えば、加工技術における慣用の方法を用いて、上記の添加剤及び所望により他の添加剤をポリマーに混合することにより、行われ得る。
その代わりに、配合は、ポリマーの分解をまだ引き起こさない温度にて行われ得る(潜在性の化合物)。この方法で製造されたポリマーはその後、2回目の加熱をされ得、そして所望のポリマー分解が生じるような十分な期間の間、高温とされ得る。
【0027】
本添加剤はまた、これら化合物が例えばおよそ1.0ないし25.0質量%の濃度で存在するマスターバッチの形態で、分解されるポリマーに添加され得る。マスターバッチ(濃縮物)は、本発明の化合物の分解をまだ引き起こさない温度にて製造され得る。
このことは、特定の適用量により定義され及び他の添加剤とともに配合され得る生成物を与える。マスターバッチはその後、分解されるポリマーと混合され得る。
本発明はそれ故、連鎖移動化合物がおよそ1.0ないしおよそ25.0質量%の濃度で存在し、且つ分解されるポリマーに添加され得る濃縮物をさらに与える。所望の生成物はこのように、有利な2段階プロセスにおいて得られ得る。
【0028】
特別の態様において、金属塩、例えばCa、Fe、Zn又はCuの塩のような適する他の添加剤が、分解されるポリマーに添加される。特に好ましくは、CaO、CaCO3
ZnO、ZnCO3、MgO、MgCO3及びMg(OH)2からなる群より選択される金
属塩の存在である。
本願明細書で議論された添加剤の他に、さらなる添加剤がまた、ポリマー中に存在し得る。前記添加剤は、例えば、ジアルキルヒドロキシルアミン、立体障害性アミン、フェノール系抗酸化剤、ベンゾフラノン、有機リン化合物及びヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニル−s−トリアジン及びベンゾフェノン紫外線吸収剤からなる群より選択される添加剤である。
例えば、さらなる添加剤は、ペンタエリトリチルテトラキス(3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、3,3’,3’,5,5’,5’−ヘキサ−第三ブチル−α,α’,α’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス(((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスホネート)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、トリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスフィッ
ト、トリス(ノニルフェニル)ホスフィット、テトラキス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、ジドデシル3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’−チオジプロピオネート、5,7−ジ−第三ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラノ−2−オン及びジ−水素化牛脂アルキルヒドロキシルアミン〜なる群より選択される添加剤である。
さらなる添加剤は、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛、ヒドロタルサイト又は乳酸カルシウム又は乳酸カルシウム(calcium lactylate)のような制酸剤である。
【0029】
本発明を以下の実施例により示す。量は、示されない限りポリオレフィンに基づく質量%である。
【実施例】
【0030】
実施例1
スフェリポール(Spheripol)プロセスにより製造された、バセル ポリオレフィンズ(Basell Polyolefins)からプロファックス(Profax)(登録商標)として市販の、公称のメルトインデックスが4.6dg/分(2.36kg/230℃)のポリプロピレンホモポリマーを、2,5−ジメチル−2,5−ジ−第三ブチルペルオキシ−ヘキサン(DTBPH)と配合することにより、目的とする38のメルトインデックスまでビスブレーキングした。DTBPHの量は、目的とするメルトフローを得るために必要に応じて調節した。ベースとなる安定剤は、トリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスフィット1000ppm、ジ−水素化牛脂アルキルヒドロキシルアミン加工安定剤500ppm及び乳酸カルシウム500ppmであった。本発明の配合物を、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PTOP;CASRN7575−23−7;アルドリッヒケミカルカンパニー(Aldrich chemical company)から入手可能)200ppmと、或いは連鎖移動剤としてトリドデシルアミン356ppmと付加的に配合した。配合物を、MPM一軸スクリュー押出し機にてビスブレーキングした。押出し機には、90RPMにて操作したマドック(Maddock)混合ヘッド付きのポリオレフィン用スクリューが取り付けられていた。4つの領域温度を、246℃(475°F)、260℃(500°F)、274℃(525°F)及び274℃(525°F)に設定した。押出し機は、長さと直径が24:1の比を有していた。結果は、2回の実験の平均値とした。結果を以下のとおりである。
【表2】


本連鎖移動剤とのさらなる配合は、必要とされる開始剤の量の著しい減少を生ずることが判る。
【0031】
実施例2
トリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスフィット1000ppm、ジ−水素化牛脂アルキルヒドロキシルアミン500ppm及び乳酸カルシウム250ppmのベースとなる安定剤を用いて、実施例1を繰り返した。本実験において、ペルオキシドDTBPHの量を変えた。200ppmのPTOPを有する及び有していないメルトフローを以下の表に示す。
【表3】

ペルオキシド及び特定の連鎖移動剤の両方を含む本発明の配合物により、ずっと大きなメルトフローレートが達成されたことが判る。
【0032】
実施例3
ホスフェート加工安定剤500ppm、ジ−水素化牛脂アルキルヒドロキシルアミン500ppm及び乳酸カルシウム250ppmのベースとなる安定剤を用いて、実施例1を繰り返した。再度、PPホモポリマーを、実施例1のように開始剤を用いて目的とする38dg/分のメルトフローまでビスブレーキングした。連鎖移動剤を有していない場合、642ppmのDTBPHが必要とされ、200ppmのPTOPを有する場合、241ppmのDTBPHが必要とされた。ビスブレーキング方法の間に生成した低分子量フラグメントの相対比率を評価するために、以下の手順を用いた。押出し機からのポリマーペレットを、各々の試料を時折振とうしながら室温にて2日の期間、メチレンクロリドと接触させた。
抽出物を、1マイクロリッターの一定の射出容量にてGCに入れた。3分ないし20.5分のピークを統合及び合計し、そして揮発物(抽出可能分)として考慮した。GCは、以下の条件の下で行った:30mZB−5キャピラリーカラム(DB−5と同等)、温度プログラムは、40℃にて1分間保持し、その後1分当り15℃で300℃まで上げそして保持するようプログラムした。種々の配合物についての累積計算値を以下に示す。
【表4】

★は、ヒドロキシルアミン安定剤の代わりに、ペンタエリトリチルテトラキス(3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート1000ppmを含む。
ビスブレーキングの間の連鎖移動剤PTOPの存在は、ビスブレーキング方法の間に生成した低分子量の抽出可能物の量を著しく減少させた。
【0033】
実施例4
ポリプロピレンホモポリマー(バセル(Basell)からのMoplen(登録商標)FLF20)を、DTBPH500ppmを用い、及びオクタデカンチオール(C18−SH)の量を変えて、ビスブレーキングした。配合物のすべては、ペンタエリトリチルテトラキス(3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート500ppm、トリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスフィット500ppm、及びステアリン酸カルシウム500ppmのベースとなる安定剤を含んでいた。押出し温度は250℃であった。メルトフローレートは、0.75mmのダイ径で2.16kg荷重を用い230℃にて決定した。結果を以下に示す。
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンポリマー、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンポリマーブレンドの粘度を低下させる方法であって、該方法は、
連鎖移動剤及び開始剤を、ポリプロピレンポリマー、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンポリマーブレンドに添加すること、及び得られた組成物を加熱することを含み、
ここで、該連鎖移動剤は、130℃でのエチレン重合において測定されたおよそ0.04に等しいか又はそれより大きいCs値を有する、方法。
【請求項2】
前記連鎖移動剤は、チオール、ジスルフィド、リン酸エステル、ホスフィン、有機ヨウ化物、有機塩化物、プロピオン酸エステル、アルデヒド及び三級アミンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記連鎖移動剤は、チオール、ジスルフィド又は三級アミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記連鎖移動剤は、式
R−S−A
又は
R−S−S−R
[式中、
Rは、炭素原子により硫黄原子に結合した一価、二価、三価又は四価のヒドロカルビル基を表し、及び
Aは、水素原子又は−SO3-+(式中、B+は有機又は無機カチオンを表す。)
を表す。]
で表されるチオール又はジスルフィドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記連鎖移動剤は、式
R−S−A
又は
R−S−S−R
(式中、
Rは、炭素原子数8ないし22のアルキル基、ヒドロキシ−炭素原子数2ないし8のアルキル基、メルカプト−炭素原子数2ないし8のアルキル基、1個以上の−NH−基により中断されたメルカプト−炭素原子数8ないし20のアルキル基、1個以上の−OCO−基により中断されたメルカプト−炭素原子数8ないし20のアルキル基、1個以上のヒドロキシル基により置換されたメルカプト−炭素原子数8ないし18のアルキル基、炭素原子数6ないし10のアリール基を表すか、又は炭素原子数1ないし4のアルキル基、4−チオフェニル基、3−メチル−4−チオフェニル基及び炭素原子数6ないし10のアリール−炭素原子数1ないし4のアルキル基からなる群より選択された1個以上の置換基により置換された炭素原子数6ないし10のアリール基を表し、及び
Aは、請求項4において定義されたとおりである。)
で表されるチオール又はジスルフィドである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記開始剤は、有機又は無機ペルオキシド、炭素ベースのラジカル発生剤、ビスアゾ化合物、安定なニトロキシル化合物、立体障害性NO−アシル化合物であるか、又は立体障害性アルコキシアミン化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記開始剤は、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、3,6,6,9,9
−ペンタメチル−3−(酢酸エチル)−1,2,4,5−テトラオキシシクロノナン、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート、ジ−t−ブチルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルジペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド;t−ブチルヒドロキシエチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド及び2,5−ジメチルヘキセン−2,5−ジペルイソノナノエート、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボネート、第三アミルペルネオデカノエート、第三ブチル−ペルネオデカノエート、第三ブチルペルピバレート、第三アミルペルピバレート、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(2−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジスクシノイルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、第三ブチルペルイソブチレート、第三ブチルペルマレエート、1,1−ビス(第三ブチルペルオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(第三ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、第三ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート、第三ブチルペルイソノナオエート、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジベンゾエート、第三ブチルペルアセテート、第三アミルペルベンゾエート、第三ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(第三ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(第三ブチルペルオキシ)プロパン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジ−第三ブチルペルオキシド、3−第三ブチルペルオキシ−3−フェニルフタリド、ジ−第三アミルペルオキシド、α,α’−ビス(第三ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,5−ビス(第三ブチルペルオキシ)−3,5−ジメチル−1,2−ジオキソラン、ジ−第三ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキシン2,5−ジ−第三ブチルペルオキシド、3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン、p−メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンモノ−α−ヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド又は第三ブチルヒドロペルオキシドである有機又は無機ペルオキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記開始剤は、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチラミド)二水和物、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、遊離塩基又は塩酸塩として2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチラミジン)、遊離塩基又は塩酸塩として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}又は2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}であるアゾ化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記開始剤は、式
【化1】

で表される安定なニトロキシル化合物であるか、又は式
【化2】

(式中、各々のRはメチル基又はエチル基を表し、及びTは5−又は6−員環を完成するのに必要とされる基を表す。)
で表される1個以上の基を含む安定なニトロキシル化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記開始剤は、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)セバケート、4−ヒドロキシ−1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−エトキシ−1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−プロポキシ−1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アセトアミド−1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−オン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イルアセテート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル2−エチルヘキサノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イルステアレート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イルベンゾエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル4−t−ブチル−ベンゾエート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)スクシネート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)アジペート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)n−ブチルマロネート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)フタレート、ビス(1−オキシル−2,2,2,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)イソフタレート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)テレフタレート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)ヘキサヒドロテレフタレート、N,N’−ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)アジパミド、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)カプロラクタム、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)ドデシルスクシンイミド、2,4,6−トリス−[N−ブチル−N−(1−オキシル−2,
2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)]−s−トリアジン、4,4’−エチレンビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペラジノ−3−オン)、2−オキシル−1,1,3,3−テトラメチル−2−イソベンザゾール、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン又はN,N−ビス−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ニトロキシドである安定なニトロキシル化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記開始剤は、式
【化3】

で表される部分を1つ以上含む立体障害性NO−アシル化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記開始剤は、式
【化4】

(式中、Rは、炭素原子数1ないし20のアルキル基、OHで置換された炭素原子数1ないし20のアルキル基又は炭素原子数5ないし12のシクロアルキル基を表す。)
で表される部分を1つ以上含む立体障害性アルコキシアミン化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記連鎖移動剤及び開始剤は、前記ポリプロピレンポリマー、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンポリマーブレンドの質量に基づき、およそ10質量ppmないしおよそ2000質量ppm存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
開始剤と連鎖移動剤の質量:質量の割合は、およそ1:10ないしおよそ10:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記加熱は押出機中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記加熱はおよそ160℃ないしおよそ280℃で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ポリプロピレンポリマー、プロピレンコポリマー又はポリプロピレンブレンド
連鎖移動剤、及び
開始剤
を含むポリマー組成物であって、
ここで、該連鎖移動剤は、130℃でのエチレン重合において測定されたおよそ0.04に等しいか又はそれより大きいCs値を有する、組成物。

【公表番号】特表2009−527608(P2009−527608A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555749(P2008−555749)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051407
【国際公開番号】WO2007/096276
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】