説明

オレフィン樹脂組成物、シートおよび熱成形体

【課題】熱成形時の加工性と室温衝撃強度と低温衝撃強度とのバランスに優れたシートの製造に適したオレフィン樹脂組成物、該樹脂組成物からなるシート、および熱成形体を提供する。
【解決手段】プロピレン単独重合体とプロピレンランダム共重合体とからなる群より選ばれる1種以上のプロピレン重合体(成分(A))80〜95質量%および下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))5〜20質量%を含有するオレフィン樹脂組成物(ただし、成分(A)および成分(B)の合計の質量を100質量%とする。)。
成分(B):メルトフローレートが0.01〜1.9g/10分であり、流動の活性化エネルギーが50〜150kJ/molであり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定される分子量分布が5〜15であるエチレン−α−オレフィン共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン樹脂組成物、シートおよび熱成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロピレン重合体からなるシートを真空成形や圧空成形など熱成形して得られる熱成形体は、食品包装、医薬品包装等の容器として用いられている。プロピレン重合体からなるシートは熱成形する際の加工性が十分でないため、加工性を改良するために例えば少量のエチレン重合体を混合して用いることが行われる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭52−136247
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなプロピレン重合体とエチレン重合体を含む樹脂組成物からなるシートは、室温衝撃強度や低温衝撃強度が十分なものではなかった。以上の課題に鑑み、本発明は熱成形時の加工性が十分であり、室温衝撃強度や低温衝撃強度が優れ、熱成形時の加工性と室温衝撃強度と低温衝撃強度とのバランスに優れたシートの製造に適したオレフィン樹脂組成物、該樹脂組成物からなるシート、および熱成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、プロピレン単独重合体とプロピレンランダム共重合体とからなる群より選ばれる1種以上のプロピレン重合体(成分(A))80〜95質量%および下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))5〜20質量%を含有するオレフィン樹脂組成物(ただし、成分(A)および成分(B)の合計の質量を100質量%とする。)である。
成分(B):メルトフローレートが0.01〜1.9g/10分であり、流動の活性化エネルギーが50〜150kJ/molであり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定される分子量分布が5〜15であるエチレン−α−オレフィン共重合体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、熱成形時の加工性と室温衝撃強度と低温衝撃強度とのバランスに優れたシートの製造に適したオレフィン樹脂組成物、該樹脂組成物からなるシート、および熱成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、プロピレン単独重合体とプロピレンランダム共重合体とからなる群より選ばれる1種以上のプロピレン重合体(成分(A))80〜95質量%および下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))5〜20質量%を含有するオレフィン樹脂組成物(ただし、成分(A)および成分(B)の合計の質量を100質量%とする。)である。
成分(B):メルトフローレートが0.01〜1.9g/10分であり、流動の活性化エネルギーが50〜150kJ/molであり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定される分子量分布が5〜15であるエチレン−α−オレフィン共重合体。
以下、詳細に説明する。
【0008】
[オレフィン樹脂組成物]
<プロピレン重合体(成分(A))>
プロピレン重合体(成分(A))は、プロピレンを単独重合する方法、プロピレンと他の共重合性コモノマーとを共重合する方法などによって製造することができる。重合用触媒としては、たとえば、(a)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分からなるTi−Mg系触媒、(b)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物などの第三成分とを組み合わせた触媒系、(c)メタロセン系触媒などが挙げられる。
【0009】
プロピレン重合体(成分(A))は、プロピレン単独重合体とプロピレンランダム共重合体からなる群より選ばれる1種以上のプロピレン重合体である。
プロピレン単独重合体は、プロピレンを単独重合させたものである。
プロピレンランダム共重合体は、プロピレンを主体とし、それと共重合可能なコモノマーを少量ランダム共重合させたものであって、共重合に用いる全てのモノマーの質量を100質量%とするときに、コモノマーを例えば20質量%以下、好ましくは10質量%以下の割合で共重合させたものである。コモノマーの質量は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上である。
【0010】
プロピレンランダム共重合体のコモノマーとしては、エチレンまたは炭素原子数4〜20のα−オレフィンが好ましい。炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等が挙げられる。
エチレンまたは炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、共重合性の観点からは、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンがより好ましく、とりわけ1−ブテンおよび1−ヘキセンが特に好ましい。また、前記のエチレンまたは炭素原子数4〜20のα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
プロピレンランダム共重合体としては、具体的には、プロピレン/エチレンランダム共重合体やプロピレン/1−ブテンランダム共重合体を挙げることができる。プロピレン/エチレンランダム共重合体やプロピレン/1−ブテンランダム共重合体において、エチレンに基づく単量体単位の含有量や1−ブテンに基づく単量体単位の含有量は、たとえば「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法により、赤外線(IR)スペクトル測定を行い、求めることができる。
【0012】
プロピレン重合体(成分(A))は、JIS K 7210に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレイト(MFR)が、0.01〜50g/10分の範囲内にあることが好ましく、0.1〜10g/10分の範囲内にあることが、熱成形時の加工性の点からより好ましい。
【0013】
プロピレン重合体(成分(A))の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれであってもよい。本発明においては、耐熱性の点から、シンジオタクチックまたはアイソタクチックのプロピレン重合体が好ましく用いられる。
【0014】
プロピレン重合体(成分(A))は、たとえば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶液重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマーをそのまま重合させる気相重合法などによって、製造することができる。これらの方法による重合は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
【0015】
<エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))>
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))は、エチレンと1種類以上の炭素原子数3〜12のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。炭素原子数3〜12のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。このうち、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンを用いることが好ましく、1−ブテン、1−ヘキセンを用いることがより好ましい。
【0016】
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体等が挙げられる。このうち、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体を用いることが好ましく、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体を用いることがより好ましい。
【0017】
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))の密度(以下、「d」と記載することがある。)は、880〜940kg/m3であり、得られるシートや熱成形体の機械強度のうち衝撃強度を高める観点から、好ましくは930kg/m3以下であり、より好ましくは925kg/m3以下である。得られるシートや熱成形体の機械強度のうち剛性を高める観点から、好ましくは890kg/m3以上であり、より好ましくは900kg/m3以上であり、更に好ましくは910kg/m3以上である。なお、該密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される。また、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))の密度は、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))中のエチレンに基づく単量体単位の含有量により変更することができる。
【0018】
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))のメルトフローレート(以下、「MFR」と記載することがある。)は、0.01〜1.9g/10分である。該メルトフローレートは、シートや熱成形体の表面平滑性を高める観点やプロピレン重合体(成分(A))との相容性を高める観点から、好ましくは0.05g/10分以上である。また、得られるシートや熱成形体の機械強度を高める観点から、好ましくは1.7g/10分以下であり、より好ましくは1.5g/10分以下、更に好ましくは0.8g/10分以下である。該メルトフローレートは、JIS K7210−1995に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定される値である。なお、該メルトフローレートの測定では、通常、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))に予め酸化防止剤を1000ppm程度配合したものを用いる。
【0019】
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))の重量平均分子量(以下、「Mw」と記載することがある。)と数平均分子量(以下、「Mn」と記載することがある。)との比である分子量分布(以下、「Mw/Mn」と記載することがある。)は、5〜15である。Mw/Mnが5以上であると、押出し成形加工時の押出負荷が低く好ましい。Mw/Mnは、好ましくは6以上である。Mw/Mnが15以下であると、得られるシートや熱成形体の機械強度が高くなったり、成形体のベタツキの原因となる低分子量成分が少なくなったりするため好ましい。なお、ベタツキ成分量は、冷キシレン可溶部割合(CXS)測定などで定量することができる。Mw/Mnは、好ましくは14以下であり、より好ましくは13以下であり、更に好ましくは12以下である。
【0020】
Mw/Mnは、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、MwをMnで除した値(Mw/Mn)である。また、GPC法での測定条件としては、例えば、次の条件をあげることができる。
(1)装置:Waters製Waters150C
(2)分離カラム:TOSOH TSKgelGMH6−HT
(3)測定温度:140℃
(4)キャリア:オルトジクロロベンゼン
(5)流量:1.0mL/分
(6)注入量:500μL
(7)検出器:示差屈折計
(8)分子量標準物質:標準ポリスチレン
【0021】
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))の流動の活性化エネルギー(以下、「Ea」と記載することがある。)は、押出し成形加工時の押出負荷をより低減する観点から、50kJ/mol以上であり、好ましくは60kJ/mol以上である。また、流動の活性化エネルギーは、シートや熱成形体の機械強度を高める観点からは、150kJ/mol以下であり、好ましくは130kJ/mol以下であり、より好ましくは110kJ/mol以下であり、更に好ましくは90kJ/molであり、特に好ましくは80kJ/mol以下である。
【0022】
流動の活性化エネルギー(Ea)は、温度−時間重ね合わせ原理に基づいて、190℃での溶融複素粘度(単位はPa・secである。)の角周波数(単位:rad/sec)依存性を示すマスターカーブを作成する際のシフトファクター(aT)からアレニウス型方程式により算出される数値であって、以下に示す方法で求められる値である。すなわち、130℃、150℃、170℃および190℃夫々の温度(T、単位:℃)におけるオレフィン重合体の溶融複素粘度−角周波数曲線(溶融複素粘度の単位はPa・sec、角周波数の単位はrad/secである。)を、温度−時間重ね合わせ原理に基づいて、各温度(T)での溶融複素粘度−角周波数曲線毎に、190℃でのオレフィン重合体の溶融複素粘度−角周波数曲線に重ね合わせた際に得られる各温度(T)でのシフトファクター(aT)を求め、夫々の温度(T)と、各温度(T)でのシフトファクター(aT)とから、最小自乗法により[ln(aT)]と[1/(T+273.16)]との一次近似式(下記(II)式)を算出する。次に、該一次式の傾きmと下記式(III)とからEaを求める。
ln(aT) = m(1/(T+273.16))+n (II)
Ea = |0.008314×m| (III)
T :シフトファクター
Ea:流動の活性化エネルギー(単位:kJ/mol)
T :温度(単位:℃)
上記計算は、市販の計算ソフトウェアを用いてもよく、該計算ソフトウェアとしては、Rheometrics社製 Rhios V.4.4.4などが挙げられる。
なお、シフトファクター(aT)は、夫々の温度(T)における溶融複素粘度−角周波数の両対数曲線を、log(Y)=−log(X)軸方向に移動させて(但し、Y軸を溶融複素粘度、X軸を角周波数とする。)、190℃での溶融複素粘度−角周波数曲線に重ね合わせた際の移動量であり、該重ね合わせでは、夫々の温度(T)における溶融複素粘度−角周波数の両対数曲線は、各曲線ごとに、角周波数をaT倍に、溶融複素粘度を1/aT倍に移動させる。また、130℃、150℃、170℃および190℃の4点の値から(II)式を最小自乗法で求めるときの相関係数は、通常、0.99以上である。
【0023】
溶融複素粘度−角周波数曲線の測定は、粘弾性測定装置(例えば、Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800など。)を用い、通常、ジオメトリー:パラレルプレート、プレート直径:25mm、プレート間隔:1.5〜2mm、ストレイン:5%、角周波数:0.1〜100rad/秒の条件で行われる。なお、測定は窒素雰囲気下で行われ、また、測定試料には予め酸化防止剤を適量(例えば1000ppm。)を配合することが好ましい。
【0024】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))の下記式(I)で定義されるg*が0.50〜0.95であり、好ましくは0.70〜0.90であり、より好ましくは0.73〜0.85であり、更により好ましくは0.74〜0.81である(g*については以下の文献を参考にした:Developments in Polymer Characterisation-4,. J. V.. Dawkins,. Ed.,. Applied Science, London,. 1983, Chapter. I,. “Characterization. of. Long Chain Branching in Polymers,” Th. G. Scholte著)。
g*=[η]/([η]GPC×gSCB*) (I)
[式中、[η]は、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))の極限粘度(単位:dl/g)を表し、下記式(I−I)によって定義される。[η]GPCは下記式(I−II)によって定義されるものとした。gSCB*は、下記式(I−III)によって定義される。
[η]=23.3×log(ηrel) (I−I)
(式中、ηrelは、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))の相対粘度を表す。)
[η]GPC=0.00046×Mv0.725 (I−II)
(式中、Mvは、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))の粘度平均分子量を表す。)
SCB*=(1−A)1.725 (I−III)
(式中、Aは、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))中の短鎖分岐の含量測定から直接求めることができる。)]
【0025】
[η]GPCは、分子量分布がエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))と同一の分子量分布であって、かつ分子鎖が直鎖状であると仮定した重合体の極限粘度(単位:dl/g)を表す。
SCB*は、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))に短鎖分岐を導入することによって生じるg*への寄与を表す。
式(I−II)は、L. H. Tung著 Journal of Polymer Science, 36, 130 (1959) 287-294頁に記載の式を用いた。
【0026】
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))の相対粘度(ηrel)は、熱劣化防止剤としてブチルヒドロキシトルエン(BHT)を5重量%含むテトラリン溶液100mlに、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))100mgを135℃で溶解してサンプル溶液を調製し、ウベローデ型粘度計を用いて前記サンプル溶液と熱劣化防止剤としてBHTを0.5重量%のみを含むテトラリン溶液からなるブランク溶液との降下時間から算出される。
【0027】
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))の粘度平均分子量(Mv)は、下式(I−IV)

で定義され、a=0.725とした。ここで分子量Mμの分子数をnμとする。
【0028】
式(I−III)中のAについては、短鎖分岐の分岐炭素原子数をn(例えばα−オレフィンとしてブテンを用いた場合はn=2、ヘキセンを用いた場合はn=4)とし、NMRないしは赤外分光より求められる炭素原子数1000個あたりの短鎖分岐数をyとした時、
A=((12×n+2n+1)×y)/((1000−2y−2)×14+(y+2)×15+y×13)
として見積もった。
【0029】
g*は、長鎖分岐に起因する、溶液中での分子の収縮度を表す指標であり、長鎖分岐を含有する量が多ければ分子鎖の収縮は大きくなり、g*は小さくなる。エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))のg*は、短い緩和時間を有しつつ、長鎖分岐を十分含有し、熱成形時の加工性を改良する観点から、好ましくは0.95以下である。また、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))のg*は、機械強度向上の観点から、好ましくは0.50以上である。
【0030】
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))の製造方法としては、例えば、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機亜鉛化合物などの助触媒成分を粒子状担体に担持させた固体粒子状の助触媒成分と、アルキレン基やシリレン基等の架橋基で2つのシクロペンタジエニル型アニオン骨格が結合した構造を持つ配位子を有するメタロセン錯体と、からなる重合触媒の存在下、エチレンとα−オレフィンとを共重合する方法が挙げられる。
【0031】
本発明で用いるオレフィン樹脂組成物中の各成分の含有量としては、該樹脂組成物に含まれる成分(A)および(B)の合計量を100質量%として、成分(A)の含有量が80〜95質量%であり、成分(B)の含有量が5〜20質量%である。好ましくは、成分(A)の含有量が85〜90質量%であり、成分(B)の含有量が10〜15質量%である。各成分の配合割合を、上記のような範囲とすることにより、熱成形時の加工性と室温衝撃強度と低温衝撃強度とのバランスに優れたシートの製造に適したオレフィン樹脂組成物、該樹脂組成物からなるシート、および熱成形体を提供することが可能となる。
【0032】
なお、上記オレフィン樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、造核剤、紫外線防止剤、可塑剤、分散剤、防曇剤、抗菌剤、有機多孔質パウダー、顔料等の添加剤を組み合わせて添加することが可能である。
【0033】
本発明のオレフィン樹脂組成物は、必要に応じ、プロピレン重合体(成分(A))やエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))とは異なる熱可塑性樹脂を含有してもよい。該熱可塑性樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩、ポリスチレン、ABS樹脂、スチレン・ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体およびその水素添加物などのスチレン系重合体、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6・66などのポリアミド類、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、エチレン・プロピレン共重合ゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0034】
オレフィン樹脂組成物の製造方法はしては、例えば、成分(A)と成分(B)と必要に応じて添加剤等の他の成分とを、ドライブレンドやメルトブレンドする方法等が挙げられる。ドライブレンドする方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いる方法が挙げられ、メルトブレンドする方法としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いて溶融混練する方法が挙げられる。
【0035】
本発明のオレフィン樹脂組成物からなるシートの成形方法としては、例えばインフレーション法やTダイキャスト法などの押出し成形法、射出成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法などを挙げることが出来る。
【0036】
本発明のポリオレフィン系樹脂を用いたシートの成形方法として、共押出法、押出コーティング法などを採用することにより、多層シートにしてもよい。また、酸素などの気体や水蒸気のバリア層;吸音層;遮光層;酸素吸収層;接着層;粘着層;着色層;導電性層;再生樹脂含有層;発泡層などを設けてもよい。
【0037】
本発明のポリオレフィン系樹脂を用いたシートの厚みは、目的、用途等により異なるが、通常100μm〜5mmであり、好ましくは200μm〜2mmであり、より好ましくは300μm〜1mmであり更により好ましくは400μm〜900μmである。
【0038】
本発明のシートを熱成形して熱成形体とする場合、熱成形方法としては、例えば真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法などを挙げることができる。具体的には、フリードローイング法、プラグアンドリング成形法、リッジ成形法、マッチドモールド成形法、ストレート成形法、ドレープ成形法、リバースドロー成形法、エアスリップ成形法、プラグアシスト成形法、プラグアシストリバースドロー成形法、接触加熱圧空成形法などが挙げられる。
【0039】
本発明の熱成形体としては、各種容器(ボトル、トレー、カップ、丼、蓋等)、気泡緩衝材などが挙げられ、該シートは容器の熱成形に好適に用いられる。また、これら熱成形体は、食品(バター、納豆、弁当、惣菜など)、飲料、工業用の部品、雑貨、玩具、日用品、事務用品、医療用品など包装材として用いられる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。物性の評価は、以下の方法によって行った。
【0041】
(1)エチレン重合体とプロピレン重合体のメルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K 7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.18Nで、エチレン重合体は温度190℃、プロピレン重合体は温度230℃の条件で測定した。
【0042】
(2)エチレン重合体のメルトフローレート比(MFRR)
JIS K7210−1995に規定された方法において、試験荷重211.82N、測定温度190℃の条件で測定されるメルトフローレート(H−MFR)と、JIS K7210−1995に規定された方法において、荷重21.18Nおよび温度190℃の条件で測定されるメルトフローレート(MFR)とを測定し、H−MFRをMFRで除した値を求めた。
【0043】
(3)エチレン重合体のスウェル比(SR)
(1)のメルトフローレートの測定において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、オリフィスから15〜20mm程度の長さで押出したエチレン重合体のストランドを、空気中で冷却し、固体状のストランドを得た。次に、該ストランドの押出し上流側先端から約5mmの位置でのストランドの直径D(単位:mm)を測定し、その直径Dをオリフィス径2.095mm(D0)で除した値(D/D0)を算出し、スウェル比とした。
【0044】
(4)エチレン重合体の密度(d、単位:kg/m3
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、試料には、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った。
【0045】
(5)融点(Tm、単位:℃)
(5−1)エチレン重合体の融点
熱プレスにより作製した厚さ約0.5mmのシートから、約10mgの試片を切り出したものを測定用サンプルとし、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 Diamond DSC)を用いて測定した。測定では、測定用サンプルを、150℃で5分間保持した後、1℃/分で40℃まで降温し、次に40℃で5分間保持した後、10℃/分の速度で150℃まで昇温した。40℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温した際に得られる融解曲線の融解ピークから融点を求めた。
(5−2)プロピレン重合体の融点
熱プレスにより作製した厚さ約0.5mmのシートから、約10mgの試片を切り出したものを測定用サンプルとし、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 Diamond DSC)を用いて測定した。測定では、測定用サンプルを、220℃で5分間保持した後、急速に150℃まで冷却し、150℃で1分間保持した後、5℃/分の降温速度で50℃まで降温した。その後に50℃で1分保持した後、5℃/分で180℃まで昇温させて、得られた融解吸熱カーブの最大ピークの温度を融点(Tm)とした。
【0046】
(6)エチレン重合体の分子量分布(Mw/Mn)
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、下記の条件(1)〜(8)により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、Mw/Mnを求めた。クロマトグラム上のベースラインは、試料溶出ピークが出現するよりも十分に保持時間が短い安定した水平な領域の点と、溶媒溶出ピークが観測されたよりも十分に保持時間が長い安定した水平な領域の点とを結んでできる直線とした。
(1)装置:Waters製Waters150C
(2)分離カラム:TOSOH TSKgelGMH6−HT
(3)測定温度:140℃
(4)キャリア:オルトジクロロベンゼン
(5)流量:1.0mL/分
(6)注入量:500μL
(7)検出器:示差屈折計
(8)分子量標準物質:標準ポリスチレン
【0047】
(7)エチレン重合体の流動の活性化エネルギー(Ea、単位:kJ/mol)
粘弾性測定装置(Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800)を用いて、下記測定条件で130℃、150℃、170℃および190℃での溶融複素粘度−角周波数曲線を測定し、次に、得られた溶融複素粘度−角周波数曲線から、Rheometrics社製計算ソフトウェア Rhios V.4.4.4を用いて、190℃での溶融複素粘度−角周波数曲線のマスターカーブを作成し、活性化エネルギー(Ea)を求めた。
<測定条件>
ジオメトリー:パラレルプレート
プレート直径:25mm
プレート間隔:1.5〜2mm
ストレイン :5%
角周波数 :0.1〜100rad/秒
測定雰囲気 :窒素
【0048】
(8)エチレン重合体のg*
前記式(I)によってg*を求めた。
なお、[η]は、エチレン−α−オレフィン共重合体の相対粘度(ηrel)を、熱劣化防止剤としてブチルヒドロキシトルエン(BHT)を5重量%含むテトラリン溶液100mlに、エチレン−α−オレフィン共重合体100mgを135℃で溶解してサンプル溶液を調製し、ウベローデ型粘度計を用いて前記サンプル溶液と熱劣化防止剤としてBHTを0.5重量%のみを含むテトラリン溶液からなるブランク溶液との降下時間から算出し、式(I−I)によって求め、[η]GPCは、(6)のエチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布の測定から、式(I−II)によって求め、gSCB*は、(2)のエチレン−α−オレフィン共重合体の短鎖分岐数の測定から式(I−III)によって求めた。
【0049】
(9)バンク成形により作製したシ−トのドローダウン(単位:mm)
後述のバンク成形により作製したシ−トの中央部から90mm×90mmのサイズに切出したサンプルを、外枠125mm×125mm、中枠65mm×65mmのスペーサーに挟んでクランプで固定した。次にオーブンを190℃になるように加熱し、サンプルを投入した。投入後50分後にクランプ固定面を基準面として鉛直方向下向きに最もドロ−ダウンしている位置までの距離を計測することにより、ドロ−ダウン量を測定した。このドローダウンの度合いが大き過ぎる場合には、成形品に大きなしわができる場合があり、度合いが小さいものほど熱成形時の加工性が優れるとする。
【0050】
(10)バンク成形により作製したシ−トの低温衝撃強度(単位:J/mm)
後述のバンク成形により作製したシート中央部から100mm×100mmのサイズに切出したサンプルを、0℃で2時間冷却した。冷却したサンプルをデュポン衝撃試験機(東洋精機製作所製)にて試験し、50%破壊エネルギー(J)を求めた。求めたエネルギーをシート厚み(mm)で割り、低温衝撃強度(J/mm)とした。試験条件の詳細は以下の通り。
試料固定:エアシリンダー締付け方式
使用方法:ステアケース法
試験片受皿:内径50mmφ
撃芯先端の直径:12.7mmφ
重錘:0.5kg
【0051】
(11)バンク成形により作製したシ−トの室温衝撃強度(単位:J/mm)
(10)と同様の方法にて23℃で試験を行なった。
【0052】
本発明の実施例で使用した各成分は、以下のとおりである。
成分(A):プロピレン重合体
MFR=0.5g/10min、融点=163℃のプロピレン単独重合体
【0053】
成分(B):エチレン−α−オレフィン共重合体
PE(1):
(1)固体触媒成分の調製
窒素置換した撹拌機を備えた反応器に、窒素流通下で300℃において加熱処理したシリカ(デビソン社製 Sylopol948;50%体積平均粒子径=55μm;細孔容量=1.67ml/g;比表面積=325m2/g)2.8kgとトルエン24kgとを入れて、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン0.9kgとトルエン1.4kgとの混合溶液を反応器の温度を5℃に保ちながら30分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌し、次に95℃に昇温し、95℃で3時間撹拌し、ろ過した。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで6回、洗浄を行った。その後、トルエン7.1kgを加えスラリーとし、一晩静置した。
【0054】
上記で得られたスラリーに、ジエチル亜鉛のヘキサン溶液(ジエチル亜鉛濃度:50質量%)1.73kgとヘキサン1.02kgとを投入し、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、3,4,5−トリフルオロフェノール0.78kgとトルエン1.44kgとの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら60分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌し、次に40℃に昇温し、40℃で1時間撹拌した。その後、22℃に冷却し、H2O0.11kgを反応器の温度を22℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、22℃で1.5時間撹拌し、次に40℃に昇温し、40℃で2時間撹拌し、更に80℃に昇温し、80℃で2時間撹拌した。撹拌後、室温にて、残量16Lまで上澄み液を抜き出し、トルエン11.6kgを投入し、次に、95℃に昇温し、4時間撹拌した。撹拌後、室温にて、上澄み液を抜き出し、固体生成物を得た。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで4回、ヘキサン24リットルで3回、洗浄を行った。その後、乾燥することにより、固体触媒成分を得た。
【0055】
(2)予備重合触媒成分の調製
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン80リットルを投入した後、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド34.5mmolを投入し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次にオートクレーブを30℃まで降温して系内が安定した後、エチレンをオートクレーブ内のガス相圧力で0.03MPa分仕込み、(1)に記載の固体触媒成分0.7kgを投入し、続いてトリイソブチルアルミニウム140mmolを投入して重合を開始した。エチレンを0.7kg/Hrで連続供給しながら30分経過した後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素をそれぞれ3.5kg/Hrと10.2リットル(常温常圧体積)/Hrで連続供給することによって合計4時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素ガスなどをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、上記固体触媒成分1g当り15gのポリエチレンが予備重合された予備重合触媒成分を得た。
【0056】
(3)エチレン−1−ヘキセン−1−ブテン共重合体(PE(1))の製造
上記で得た予備重合触媒成分を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ブテン、1−ヘキセンの共重合を実施し、重合体パウダーを得た。重合条件としては、重合温度を84℃、重合圧力を2MPa、エチレンに対する水素モル比を1.04%、エチレンと1−ブテンと1−ヘキセンとの合計に対する1−ブテンモル比を2.16%、1−ヘキセンモル比をそれぞれ0.73%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウムを連続的に供給し、流動床の総パウダー質量80kgを一定に維持した。平均重合時間4hrであった。得られた重合体パウダーを押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200〜230℃の条件で造粒することによりエチレン−1−ヘキセン−1−ブテン共重合体(以下PE(1))を得た。得られた共重合体の物性評価の結果を表1に示した。
【0057】
PE(2):
(1)エチレン−1−ヘキセン−1−ブテン共重合体(PE(2))の製造
上記PE(1)の(2)で得た予備重合触媒成分を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ブテン、1−ヘキセンの共重合を実施し、重合体パウダーを得た。重合条件としては、重合温度を84℃、重合圧力を2MPa、エチレンに対する水素モル比を1.4%、エチレンと1−ブテンと1−ヘキセンとの合計に対する1−ブテンモル比を2.3%、1−ヘキセンモル比をそれぞれ1.0%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウムを連続的に供給し、流動床の総パウダー質量80kgを一定に維持した。平均重合時間4hrであった。得られた重合体パウダーを押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200〜230℃の条件で造粒することによりエチレン−1−ヘキセン−1−ブテン共重合体(以下PE(2))を得た。得られた共重合体の物性評価の結果を表1に示した。
【0058】
PE(3):
(1)エチレン−1−ヘキセン共重合体(PE(3))の製造
上記PE(1)の(2)で得た予備重合触媒成分を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ヘキセンの共重合を実施し、重合体パウダーを得た。重合条件としては、重合温度を80℃、重合圧力を2MPa、エチレンに対する水素モル比を0.4%、エチレンと1−ヘキセンとの合計に対する1−ヘキセンモル比を1.6%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウムを連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間4hrであった。得られた重合体パウダーを押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200〜230℃の条件で造粒することによりエチレン−1−ヘキセン共重合体(以下PE(3))を得た。得られた共重合体の物性評価の結果を表1に示した。
【0059】
PE(4):
(1)予備重合触媒成分の調製
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン119リットルを投入した後、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド131.7mmolを投入し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次にオートクレーブを30℃まで降温して系内が安定した後、エチレンをオートクレーブ内のガス相圧力で0.03MPa分仕込み、上記PE(1)の(1)で得られた固体触媒成分1.1kgを投入し、続いてトリエチルアルミニウム794mmolを投入して重合を開始した。エチレンを1.1kg/Hrで連続供給しながら30分経過した後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素をそれぞれ3.4kg/Hrと9.96リットル(常温常圧体積)/Hrで連続供給することによって合計9.3時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素ガスなどをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、上記固体触媒成分1g当り28.6gのポリエチレンが予備重合された予備重合触媒成分を得た。
【0060】
(2)エチレン−1−ヘキセン共重合体(PE(4))の製造
上記で得た予備重合触媒成分を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ヘキセンの共重合を実施し、重合体パウダーを得た。重合条件としては、重合温度を84℃、重合圧力を2MPa、エチレンに対する水素モル比を0.10%、エチレンと1−ヘキセンとの合計に対する1−ヘキセンモル比をそれぞれ1.45%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウムを連続的に供給し、流動床の総パウダー質量80kgを一定に維持した。平均重合時間4hrであった。得られた重合体パウダーを押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200〜230℃の条件で造粒することによりエチレン−1−ヘキセン共重合体(以下PE(4))を得た。得られた共重合体の物性を表1に示した。
【0061】
PE(5):
(1)エチレン−1−ヘキセン−1−ブテン共重合体(PE(5))の製造
上記PE(1)の(2)で得た予備重合触媒成分を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ブテン、1−ヘキセンの共重合を実施し、重合体パウダーを得た。重合条件としては、重合温度を81.4℃、重合圧力を2MPa、エチレンに対する水素モル比を1.82%、エチレンと1−ブテンと1−ヘキセンとの合計に対する1−ブテンモル比を2.46%、1−ヘキセンモル比をそれぞれ0.76%とした。
重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウムを連続的に供給し、流動床の総パウダー質量80kgを一定に維持した。平均重合時間4hrであった。得られた重合体パウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200〜230℃の条件で造粒することによりエチレン−1−ヘキセン−1−ブテン共重合体(以下PE(5))を得た。得られた共重合体の物性を表1に示した。
【0062】
F101−1:住友化学株式会社製、商品名「スミカセン F101−1」(高圧法低密度ポリエチレン、MFR(190℃)=0.3g/10分、密度=922kg/m
【0063】
〔実施例1〜比較例2〕
成分(A)および成分(B)を表2に記載の組成割合で、一括混合した後、スクリュー径65mmφ、L/D=33の押出機(住友重機械工業株式会社製)を用いて以下の条件でバンク成形によりシート加工を行った。得られたシートの評価結果を表2に示した。
加工温度:280℃
ロール温度:C1/C2/C3(60℃/80℃/80℃)
ロールC1、C2間でバンクを形成
スペーサー:0.3mm
Tダイ幅:450mm
リップ開度:1.2mm
吐出量:37kg/h
引取り速度:4.0m/min
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単独重合体とプロピレンランダム共重合体とからなる群より選ばれる1種以上のプロピレン重合体(成分(A))80〜95質量%および下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))5〜20質量%を含有するオレフィン樹脂組成物(ただし、成分(A)および成分(B)の合計の質量を100質量%とする。)。
成分(B):メルトフローレートが0.01〜1.9g/10分であり、流動の活性化エネルギーが50〜150kJ/molであり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定される分子量分布が5〜15であるエチレン−α−オレフィン共重合体。
【請求項2】
請求項1に記載のオレフィン樹脂組成物からなるシート。
【請求項3】
請求項2に記載のシートを熱成形してなる熱成形体。