説明

オレフィン重合体の製造方法

【課題】効率的に水素濃度を低減させて、より高分子量のオレフィン重合体を製造することができるオレフィン重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】気相反応器を使用し、水素の存在下にオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを重合させるオレフィン重合体の製造方法であって、水素添加触媒を該気相反応器内のベッド部に添加する工程を有するオレフィン重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合体の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、効率的に水素濃度を低減させて、より高分子量のオレフィン重合体を製造することができるオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水素の存在下に、気相重合反応を用いるオレフィン重合体の製造方法において、気相重合反応器内の水素含有ガスの一部を抜き出し、次いで該抜出したガス中の水素をオレフィンに付加させて該ガスを水素化処理して、その後前記水素化処理後のガスを再び重合反応器に供給することにより、気相重合反応器内の水素濃度を低下させる、気相重合反応器内の水素濃度の制御方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、水素の存在下でのオレフィン重合体の製造方法において、反応器に水素添加触媒を添加して、水素濃度を低減させて、製造されるオレフィン重合体の分子量分布などを制御する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−204123号公報
【特許文献2】特開平8−151408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている水素濃度の制御方法では、水素添加触媒を用いるために別途反応層を設ける必要があり、該反応層や循環ガスラインのつまりや触媒性能の低下が起こり、効率的に水素濃度を低減することができないという問題があった。
また、上記特許文献2に記載されている水素添加触媒を気相重合に用いた場合には、気相反応器内に水素添加触媒を添加する場所によっては、十分に水素濃度を低減できないという問題があった。
かかる現状に鑑み本発明の目的は、効率的に水素濃度を低減させて、より高分子量のオレフィン重合体を製造することができるオレフィン重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、本発明が上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、気相反応器を使用し、水素の存在下にオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを重合させるオレフィン重合体の製造方法であって、水素添加触媒を該気相反応器内のベッド部に添加する工程を有するオレフィン重合体の製造方法にかかるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のオレフィン重合体の製造方法により、効率的に水素濃度を低減させて、より高分子量のオレフィン重合体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、気相反応器を使用し、水素の存在下にオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを重合させるオレフィン重合体の製造方法であって、水素添加触媒を該気相反応器内のベッド部に添加する工程を有する。
【0008】
本発明に用いる水素添加触媒を添加するベッド部とは、気相反応器中の流動状態での重合パウダーのかさ密度(以下、「ベッド密度」と記載することがある。)が0.10g/cc以上のパウダー濃厚部のことである。本発明においては、ベッド密度が0.13g/cc以上0.70g/cc以下のベッド部に水素添加触媒を添加するのが好ましく、ベッド密度が0.16g/cc以上0.50g/cc以下のベッド部に水素添加触媒を添加するのがより好ましい。
【0009】
[水素添加触媒]
本発明に用いる水素添加触媒とは、オレフィン性不飽和二重結合を選択的に水素化する能力を持つ触媒であり、気相反応器内に存在する水素は、プロピレンやエチレンなどのオレフィンと反応し、プロパンやエタンとなって除去される。水素添加触媒としては、公知の水素添加触媒が挙げられる。例えば、チタン、白金、パラジウム、パラジウム−クロム、ニッケル、ルテニウムを含有する化合物、具体的には、(イ)前記金属、(ロ)前記金属の酸化物、(ハ)前記金属のハロゲン化物、(ニ)上記の(イ)、(ロ)、(ハ)等をシリカ、アルミナ等の多孔質担体に担持させた化合物、等が挙げられる。
【0010】
ニッケルを含有する化合物としては、例えば、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、テトラキス(ジエチルフェニルホスフォナイト)ニッケル、テトラキス(メチルジフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフルオロホスフィン)ニッケル等が挙げられる。
【0011】
チタンを含有する化合物としては、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基およびそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を配位子に持つチタノセン化合物、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、チオアリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルホスフィノ基、アリールホスフィノ基、下記一般式[1]で表される基、下記一般式[2]で表される基、およびそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を配位子に持つ非チタノセン化合物が挙げられる。
【0012】
13P=N− [1]
(式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素オキシ基、シリル基、アミノ基を表し、3つのR1は互いに同じであっても異なっていても良く、それら2つ以上が互いに結合していても良く、環を形成していても良い。)
【0013】


[2]

(式中、R2は、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基を表し、複数のR2は互いに同じであっても異なっていても良く、それら2つ以上が互いに結合していても良く、環を形成していても良い。)
【0014】
上記(イ)、(ロ)、(ハ)等をシリカ、アルミナ等の多孔質担体に担持させた化合物としては、例えば、Pd/Al23、Pd/SiO2・Al23、Pd/SiO2、Pt/Al23、等が挙げられる。
【0015】
これらの中でも、チタノセン化合物が好ましい。チタノセン化合物としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジヨージド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジフルオリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムクロルブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムメトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムエトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフェノキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジメトキシド等が挙げられる。
【0016】
また、本発明に用いる水素添加触媒としては、液状又は溶媒に可溶な状態のものが好ましい。
【0017】
また、本発明に用いる水素添加触媒は、還元剤と組み合わせて用いることもできる。還元剤としては、例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物等を挙げることができる。還元剤として、好ましくは、有機アルミニウム化合物である。
【0018】
前記の有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、アルミニウムアルコキシド、アルモキサン等が挙げられる。
【0019】
トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等が挙げられる。
アルキルアルミニウムハライドとしては、例えば、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド等が挙げられる。
アルキルアルミニウムハイドライドとしては、例えば、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等が挙げられる。
アルミニウムアルコキシドとしては、例えば、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド等が挙げられる。
アルモキサンとしては、例えば、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン等が挙げられる。
【0020】
これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましく、トリエチルアルミニウムがより好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0021】
還元剤中の金属原子と水素添加触媒中の金属原子とのモル比は、1:1〜30:1であるのが好ましく、2:1〜10:1であるのがより好ましく、3:1〜7:1であるのが更に好ましい。
【0022】
水素添加触媒は、不活性有機溶媒で希釈してフィードすることができる。この際、水素添加触媒は還元剤とあらかじめ接触しておいてもよい。前記の不活性有機溶媒とは、溶媒が水添反応のいかなる関与体とも反応しないものを意味する。好適な溶媒は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類やその異性体、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂環式炭化水素類やその誘導体、が挙げられる。
【0023】
本発明に用いる水素添加触媒としては、チタノセン化合物を含むものであるのが好ましく、チタノセン化合物と還元剤とを接触させてなる化合物であるのがより好ましく、チタノセン化合物と有機アルミニウム化合物とを接触させてなる化合物であるのが更に好ましい。
【0024】
[オレフィン重合用触媒]
本発明に用いるオレフィン重合用触媒としては、オレフィン重合に用いられる公知の重合触媒を使用することができ、チーグラーナッタ系触媒(例えば、特開昭57−63310号公報、特開昭58−83006号公報、特開昭61−78803号公報、特開平7−216017号公報、特開平10−212319号公報、特開昭62−158704号公報、特開平11−92518号公報に記載されている。)、又はメタロセン系触媒(特開平5−155930号公報、特開平9−143217号公報、特開2002−293817号公報、特開2003−171412号公報、特表平8−511044号公報、特開2001−31720号公報に記載されている。)を挙げることができる。
【0025】
チーグラーナッタ系触媒としては、下記成分(a)、及び下記成分(b)を接触させてなるものが好ましく、下記成分(a)、下記成分(b)、及び下記成分(c)を接触させてなるものがより好ましい。
成分(a):チタン、マグネシウム、及びハロゲンを含有する固体成分
成分(b):有機アルミニウム化合物
成分(c):電子供与性化合物
【0026】
チタン、マグネシウム、ハロゲンを含有する固体成分(a)の調製方法としては、以下(1)〜(5)の方法を例示することができる。
(1)ハロゲン化マグネシウム化合物とチタン化合物とを接触させる方法。
(2)ハロゲン化マグネシウム化合物と、電子供与体と、チタン化合物とを接触させる方法。
(3)ハロゲン化マグネシウム化合物とチタン化合物とを電子供与性溶媒に溶解させて溶液を得、次いで、該溶液を担体物質に含浸させる方法。
(4)ジアルコキシマグネシウム化合物と、ハロゲン化チタン化合物と、電子供与体とを接触させる方法。
(5)マグネシウム原子、チタン原子および炭化水素オキシ基を含有する固体成分と、ハロゲン化化合物と、電子供与体および/または有機酸ハライドとを接触させる方法。
なかでも(5)の方法により得られる固体成分が好ましく、電子供与体としてフタル酸エステル化合物を含有する固体成分であることがより好ましい。
【0027】
成分(b)の有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、アルミニウムアルコキシド、アルモキサン等が挙げられる。
【0028】
トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等が挙げられる。
アルキルアルミニウムハライドとしては、例えば、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド等が挙げられる。
アルキルアルミニウムハイドライドとしては、例えば、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等が挙げられる。
アルミニウムアルコキシドとしては、例えば、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド等が挙げられる。
アルモキサンとしては、例えば、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン等が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましく、トリエチルアルミニウムがより好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
成分(c)の電子供与性化合物としては、下記一般式[3]で表されるケイ素化合物が好ましく用いられる。

3rSi(OR44-r [3]

(式中、R3は、水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、又はヘテロ原子を含有する基を表し、R4は、炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、rは、0〜3の整数を表す。R3が複数ある場合は、複数のR3はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。R4が複数ある場合は、複数のR4はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0031】
3の炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素原子数1〜20の分岐鎖状アルキル基、炭素原子数1〜20のシクロアルキル基、炭素原子数1〜20のシクロアルケニル基、炭素原子数1〜20のアリール基等が挙げられる。
【0032】
炭素原子数1〜20の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜20の分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜20のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜20のシクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンテニル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
【0033】
3のヘテロ原子を含有する基としては、例えば、酸素原子を含有する基、窒素原子を含有する基、硫黄原子を含有する基、リン原子を含有する基等が挙げられる。具体的には、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルn−プロピルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基等のジアルキルアミノ基、ピロリル基、ピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジル基、パーヒドロインドリル基、パーヒドロイソインドリル基、パーヒドロキノリル基、パーヒドロイソキノリル基、パーヒドロカルバゾリル基、パーヒドロアクリジニル基、フリル基、ピラニル基、パーヒドロフリル基、チエニル基等が挙げられ、これらの中でも、ヘテロ原子がケイ素化合物のケイ素原子と直接結合できる基が好ましい。
【0034】
4の炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、R3の炭素原子数1〜20の炭化水素基として例示したものと同じものを挙げることができる。
【0035】
成分(c)の電子供与性化合物としては、上記一般式[3]において、ケイ素原子と直接結合した炭素原子が2級もしくは3級炭素である炭化水素基、又はジアルキルアミノ基をR3として少なくとも1つ持つケイ素化合物が好ましい。
【0036】
成分(c)の電子供与性化合物の好ましい具体例としては、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−ブチルジメトキシシラン、tert−アミルメチルジメトキシシラン、tert−アミルエチルジメトキシシラン、tert−アミル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−アミル−n−ブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロブチルジメトキシシラン、シクロブチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロブチルイソブチルジメトキシシラン、シクロブチル−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロペンチルイソブチルジメトキシシラン、シクロペンチル−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソプロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシル−tert−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルイソプロピルジメトキシシラン、フェニルイソブチルジメトキシシラン、フェニル−tert−ブチルジメトキシシラン、フェニルシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、tert−ブチルメチルジエトキシシラン、tert−ブチルエチルジエトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジエトキシシラン、tert−ブチル−n−ブチルジエトキシシラン、tert−アミルメチルジエトキシシラン、tert−アミルエチルジエトキシシラン、tert−アミル−n−プロピルジエトキシシラン、tert−アミル−n−ブチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)メチルジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)メチルジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)エチルジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)エチルジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)(n−プロピル)ジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)(n−プロピル)ジメトキシシラン、((パーヒドロキノリノ)(tert−ブチル)ジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)(tert−ブチル)ジメトキシシラン、及びジエチルアミノトリエトキシシランが挙げられる。
これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用して用いても良い。
【0037】
オレフィン重合用触媒としてメタロセン系触媒を用いる場合は、メタロセン化合物としては、下記一般式[4]で表されるメタロセン化合物であるのが好ましい。

CpnMX4-n [4]

(式中、Cpは置換若しくは非置換のシクロペンタジエニル基、インデニル基又はフルオレニル基から選ばれる基、Mはジルコニウム、ハフニウムから選ばれる元素、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜10個のアルキル基、又はアリーロキシ基から選ばれる基、複数のCpおよびXは互いに架橋基を介して結合してもよい。nは、1〜3の整数を表す。)
【0038】
[重合工程]
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、バッチ重合プロセスにも連続重合プロセスにも適用できる。また、例えばメタロセン系触媒をオレフィン重合用触媒とする場合、生成オレフィン重合体は末端に不飽和結合を持つものとして得られることが多いが、そのような不飽和結合は一旦生成した飽和末端が脱水素されて形成されるもののようであって、従って循環オレフィン中にはそのような水素が徐々に濃縮される可能性がある。よって、このような場合、単段の重合工程でその水素濃度を制御する技術として本発明が適用できる。
【0039】
また、重合条件の異なる複数の重合工程を有する多段重合においても本発明が必要となる場合がある。多段重合は、ひとつの反応器で重合条件を変化させて重合を行っても、直列に接続された重合条件の異なる複数の反応器で重合を行ってもよい。ひとつの反応器で後段水素濃度を前段と比較して効率良く低い条件とする場合、あるいは、複数の反応器での多段重合において、前段反応器から後段反応器にパウダーと共に流入する水素を効率良く低減させるために本発明が適用できる。
【0040】
従って、本発明のオレフィン重合体の製造方法においては、水素を含有する気相の存在下でオレフィンを重合できるものであれば、重合条件が単一の単段重合でも重合条件の異なる複数の重合工程からなる多段重合でもよく、ひとつの反応器を用いて重合を行っても、複数の反応器で重合を行ってもよい。ここで重合条件とは、重合形式、温度、圧力、原料組成等を指し、重合形式とは、液相重合あるいは気相重合を指す。多段重合の場合、水素添加触媒を添加する重合工程の前段が液相重合でも気相重合でもよい。液相重合とは、バルク重合やスラリー重合のことを指し、気相重合とは、攪拌槽式気相重合、流動層式気相重合、噴流層式気相重合を指す。本発明における気相重合としては、円塔型の反応器にガス分散板を備え、鉛直上方にガスを流通させる流動層式のものが好ましい。
【0041】
流動層式気相重合における水素添加触媒の添加位置は、重合体と水素添加触媒がよく混ざって水添性能が上がる観点から、分散板直上に形成されるベッド部内であることが好ましい。分散板の高さを0、ベッド部の高さをHとした場合、水素添加触媒を0〜0.5Hの部分に添加するのが好ましく、0〜0.3Hの部分に添加するのが最も好ましい。
【0042】
水素添加触媒の投入量は、反応器内の重合パウダー1kgに対する水素添加触媒の金属原子のモル量(mmol/kg)が、0.0001mmol/kg以上1mmol/kg以下が好ましく、0.0003mmol/kg以上0.5mmol/kg以下がより好ましく、0.001mmol/kg以上0.1mmol/kg以下が最も好ましい。
また、水素添加触媒は、反応器内に連続的に投入しても断続的に投入してもよい。
【0043】
[本重合]
本発明のオレフィン重合体の製造方法において、気相反応器で製造されるオレフィン重合体としては、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。本発明において、重合されるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等が例示できるが、所望重合体製品の種類によって決定される。即ち、単独重合体製品として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等を、また共重合体製品として、EPR(エチレン−プロピレン共重合体)、PBR(プロピレン−ブテン共重合体)、EPBR(エチレン−プロピレン−ブテン共重合体)等を製造する場合には、重合工程に使用されるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテンであり、それ以外の極少量のオレフィンを使用する場合がある。
多段重合の場合は、各段で同じ重合体を製造しても良いし、組成の異なる重合体を製造しても良い。各段で同じ重合体を製造する場合は、後段の気相反応器内のベッド部に水素添加触媒を添加することで、後段の気相反応器内の水素濃度を低減し、前段で製造する重合体に比して、後段で製造する重合体の方が分子量が高くなり、その結果、広い分子量分布を有するオレフィン重合体を製造することができる。また、各段で組成の異なる重合体を製造する場合は、前段で製造する組成の重合体の分子量を低くし、後段で製造する前段と異なる組成の重合体の分子量を高くしたオレフィン重合体を製造する際に本発明を用いることができる。
【0044】
本発明のオレフィン重合体の製造方法おいては、水素及びオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレンを重合させてプロピレン単独重合体を得る第1重合工程と、前記第1重合工程によって得られたプロピレン単独重合体の存在下に、エチレン及びプロピレンを共重合させてエチレンとプロピレンとの共重合体を得る第2重合工程とを有するエチレン−プロピレンブロック共重合体の製造方法であって、前記第2重合工程が、気相反応器を使用し、水素添加触媒を該気相反応器内のベッド部に添加する工程を有するエチレン−プロピレンブロック共重合体の製造方法であるのが好ましい。
前記エチレン−プロピレンブロック共重合体の製造方法においては、前記第1重合工程で生成するプロピレン単独重合体の極限粘度に対する前記第2重合工程で生成するエチレンとプロピレンとの共重合体の極限粘度の比が、好ましくは、2〜20であり、より好ましくは、2.5〜15であり、更に好ましくは、3.5〜10である。
また、前記第1重合工程及び/又は前記第2重合工程は、単段の重合工程であっても、多段の重合工程であってもよい。
【0045】
重合温度はモノマーの種類、製品の分子量等によっても異なるが、オレフィン重合体の融点以下であり、好ましくは融点より10℃以上低い温度であり、更に好ましくは室温〜200℃であり、特に好ましくは40〜160℃であり、最も好ましくは60〜130℃である。また重合温度をこの範囲に維持するため、重合系は冷却器で冷却される。その他、重合圧力は、大気圧〜15MPaであり、好ましくは0.2〜7MPaであり、最も好ましくは1〜5MPaである。
【0046】
本発明においては、多段重合に適用する場合は、前段の気相部の水素濃度が30%以下の条件にすることが好ましい。水素濃度が30%を超える程高くても本発明の製造方法を実施する上で特に支障はないが、後段に持ち込まれる多量の水素により気相反応器内で生成するオレフィン水素化物(プロパン、エタン等)の濃度が高くなり、後段の重合活性が低下するので、水素濃度が余り高すぎるのは好ましくない。
【0047】
また、水素添加触媒を気相反応器に添加する場合、粉体性状の改良、重合体物性の改良、の観点から、重合活性抑制物質を重合反応系内に添加する工程を有することが好ましい。
【0048】
ここで用いられる重合活性抑制物質としては、一般的にオレフィン重合触媒の活性を低減させる作用を有し、例えば、電子供与性化合物、活性水素含有化合物、常温、常圧下で気体である酸素含有化合物が挙げられる。
電子供与性化合物としては、アルコキシシラン類、エステル類、エーテル類等が挙げられる。
活性水素含有化合物としては、アルコール類、水等が挙げられる。
常温、常圧下で気体である酸素含有化合物としては、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素等が挙げられる。
アルコキシシラン類としては、テトラブトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0049】
重合活性抑制物質として、好ましくは、活性水素含有化合物、又は常温、常圧下で気体である酸素含有化合物であり、より好ましくは、アルコール類、酸素又は一酸化炭素であり、更に好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、酸素又は一酸化炭素である。
重合活性抑制物質は1種単独で又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0050】
[予備重合]
重合工程の前に少量のオレフィンを重合(以下、予備重合と称する。)し、予備重合触媒成分としてもよい。予備重合されるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等が例示できる。予備重合されるオレフィンの量は、触媒成分1g当たり、通常、0.1〜200gであり、該予備重合の方法としては、公知の方法があげられ、例えば、触媒成分及び有機アルミニウム化合物の存在下、少量のオレフィンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で予備重合を実施する方法があげられる。予備重合に用いられる溶媒としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの不活性炭化水素及び液状のオレフィンがあげられ、これらは2種類以上混合して用いてもよい。また、予備重合におけるスラリー濃度は、溶媒1L当たりに含まれる触媒成分の重量として、通常1〜500gであり、好ましくは3〜150gである。
【0051】
予備重合における有機アルミニウム化合物の使用量は、触媒成分に含まれる遷移金属原子1モル当たり0.1〜700モルであり、好ましくは0.2〜200モルであり、より好ましくは0.2〜100モルである。予備重合において、必要に応じてアルコキシケイ素化合物などの電子供与体を共存させてもよく、電子供与体の使用量は、触媒成分に含まれる遷移金属原子1モル当たり、好ましくは0.01〜400モルであり、より好ましくは0.02〜200モルであり、さらに好ましくは0.03〜100モルである。
【0052】
予備重合温度は、通常−20〜100℃であり、好ましくは0〜80℃である。また、予備重合時間は、通常2分〜15時間である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明する。物性測定及び評価は、下記の方法で行った。
(1)極限粘度(単位:dl/g)
ウベローデ粘度計を用いて、テトラリン溶媒及び温度135℃の条件で、濃度0.1、0.2、及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。次に「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版会社刊)第491頁に記載の計算法に従い、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって極限粘度を求めた。
(2)共重合部含有量(単位:重量%)
第1段共重合工程で生成した共重合部含有量X(重量%)は、下記式により算出した。
X=(Pb−Pa)/Pb×100
Pa:第3段プロピレン重合工程から排出された時間当りのポリマー重量
Pb:第1段共重合工程から排出された時間当りのポリマー重量
(3)共重合部で生成した重合体の極限粘度(単位:dl/g)
第3段プロピレン重合工程で生成した重合体成分の極限粘度[η]a(dl/g)、および第1段共重合工程で生成した重合体成分の極限粘度[η]b(dl/g)は、下記式により算出した。
[η]a=[η]1
[η]b=([η]2−[η]a×(1−X/100))/(X/100)
[η]1:第3段プロピレン重合工程後の重合体の極限粘度(dl/g)
[η]2:第1段共重合工程後の重合体の極限粘度(dl/g)
【0054】
[実施例1]
[チタノセン化合物溶液の調製]
内容積1Lのフラスコ内を窒素で置換した。この容器内にジシクロペンタジエニルチタニウムジクロリド(関東化学製)4.5g、ヘキサン928mLを投入すると共に室温で攪拌し、トリエチルアルミニウム72ミリモルを投入して溶液を得た。この溶液を、更にヘキサンで希釈した。
【0055】
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水及び脱気処理したn−ヘキサン1.5L、トリエチルアルミニウム30ミリモル、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン3.0ミリモルを収容させた。その中に特願2008−277945号の実施例1と同様の方法で製造した固体触媒成分16gを添加し、オートクレーブ内の温度を約3〜10℃に保ちながらプロピレン32gを約40分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積200Lの攪拌機付きSUS製オートクレーブに移送し、液状ブタン132Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
上記のようにして調製した予備重合触媒成分のスラリーを用いて3段階のプロピレン単独重合をそれぞれ異なるリアクターで行ってポリプロピレン粒子を製造した。その後、このポリプロピレン粒子の存在下、1段階のプロピレンとエチレンとの共重合を行ってプロピレン−エチレンブロック共重合体を製造した。以下、各重合ステージについて説明する。
【0056】
[第1段プロピレン重合(液相重合反応)]
内容積163Lの攪拌機付きベッセルタイプのリアクターを用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、トリエチルアルミニウム、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン及び予備重合触媒成分のスラリーをリアクターに連続的に供給した。反応条件は、重合温度:73℃、攪拌速度:150rpm、リアクターの液レベル:44L、プロピレンの供給量:25kg/時間、水素の供給量:160NL/時間、トリエチルアルミニウムの供給量:40.6ミリモル/時間、シクロヘキシルエチルジメトキシシランの供給量:5.9ミリモル/時間、予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.445g/時間とした。当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.73時間であり、排出されたポリプロピレン粒子量は5.0kg/時間であった。
【0057】
[第2段プロピレン重合(液相重合反応)]
上記第1段のプロピレン重合を経たスラリーを、別のリアクター(ベッセルタイプ)に連続的に移送し、プロピレンの単独重合を更に行った。なお、当該リアクターに対しては、プロピレン及び水素の供給は行わなかった。反応条件は、重合温度:69℃、攪拌速度:150rpm、リアクターの液レベル:44Lとした。当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.84時間であり、排出されたポリプロピレン粒子量は9.3kg/時間であった。
【0058】
[第3段プロピレン重合(気相重合反応)]
上記第2段のプロピレン重合を経て得られたポリプロピレン粒子を、内容積1.4m3の攪拌機付き流動層反応器に連続的に移送し、このリアクターにプロピレン、水素を連続的に供給し、圧力を一定に保つように過剰ガスをパージしながら、プロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は、重合温度:80℃、重合圧力:1.8MPa、循環ガス風量:100m3/時間、プロピレンの供給量:10kg/時間、水素の供給量:930NL/時間、流動層の重合体粒子ホールド量:50kgとした。当該反応器においては、ポリマー粒子の平均滞留時間は3.5時間であり、反応器内ガスの濃度比(モル%):水素/(水素+プロピレン)=8.9、排出されたポリマー粒子量は14.1kg/時間、その極限粘度は0.97dl/gであった。
【0059】
[第1段共重合(気相重合反応)]
上記第3段のプロピレン重合を経て得られたポリプロピレン粒子を、別の内容積1m3のガス分散板、攪拌機付き流動層反応器に連続的に移送し、この反応器にプロピレン、エチレン及び水素を連続的に供給し、圧力を一定に保つように過剰ガスをパージしながら、プロピレンとエチレンとの共重合を行った。反応条件は、重合温度:70℃、重合圧力:1.4MPa、循環ガス風量:150m3/時間、プロピレンの供給量:22.5kg/時間、エチレンの供給量:8.3kg/時間、水素の供給量:200NL/時間、流動層の重合体粒子ホールド量:55kgとした。また、第1段プロピレン重合反応器に供給したトリエチルアルミニウム1モルに対し、チタノセン分子量に換算して2.56ミリモルに相当する量の上記チタノセン化合物溶液を、ベッド部に添加した。ベッド部のベッド密度は、303g/ccであった。また、第1段プロピレン重合反応器に供給したトリエチルアルミニウム1モルに対し、酸素分子量に換算して4.2ミリモルに相当する量の酸素を、重合活性抑制物質として当該反応器に添加した。当該反応器においては、ポリマー粒子の平均滞留時間は2.9時間であり、反応器内ガスの濃度比(モル%):エチレン/(プロピレン+エチレン)=27、水素/(水素+プロピレン+エチレン)=0.59、排出されたポリマー粒子量は19.1kg/時間、共重合部の極限粘度は4.9dl/g、共重合部含有量は26重量%であった。
【0060】
[比較例1]
チタノセン化合物溶液をベッド部に供給する代わりに循環ガスラインに供給し、実施例1と同じ共重合部含有量になるように重合体ホールド量を調整して重合した。当該反応器においては、ポリマー粒子の平均滞留時間は3.3時間、反応器内ガスの濃度比(モル%):エチレン/(プロピレン+エチレン)=27、水素/(水素+プロピレン+エチレン)=0.91、共重合部の極限粘度は4.2dl/gであり、水素濃度が高く、共重合部の分子量が低いものであった。
【0061】
[比較例2]
チタノセン化合物溶液を投入せずに、実施例1と同じ共重合部含有量になるように重合体ホールド量を調整して重合した。当該反応器においては、ポリマー粒子の滞留時間は3.9時間、反応器内ガスの濃度比(モル%):エチレン/(プロピレン+エチレン)=27、水素/(水素+プロピレン+エチレン)=1.5、その極限粘度は3.5dl/gであり、水素濃度が高く、共重合部の分子量が低いものであった。
【0062】
[実施例2]
実施例1と同様の方法によって予備重合触媒成分のスラリーを調整し、このスラリーを用いて3段階のプロピレン単独重合をそれぞれ異なるリアクターで行ってポリプロピレン粒子を製造した。以下、各重合プロセスについて説明する。
【0063】
[第1段プロピレン重合(液相重合反応)]
内容積163Lの攪拌機付きベッセルタイプのリアクターを用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、トリエチルアルミニウム、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン及び予備重合触媒成分のスラリーをリアクターに連続的に供給した。反応条件は、重合温度:70℃、攪拌速度:150rpm、リアクターの液レベル:44L、プロピレンの供給量:60kg/時間、水素の供給量:330NL/時間、トリエチルアルミニウムの供給量:41.2ミリモル/時間、シクロヘキシルエチルジメトキシシランの供給量:6.2ミリモル/時間、予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.649g/時間とした。当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.29時間であり、排出されたポリプロピレン粒子量は8.34kg/時間、その極限粘度は1.14dl/gであった。
【0064】
[第2段プロピレン重合(気相重合反応)]
上記第1段のプロピレン重合を経て得られたポリプロピレン粒子を、内容積1.4mの攪拌機付き流動層反応器に連続的に移送し、また、この反応器に水素を連続的に供給し、圧力を一定に保つように過剰ガスをパージしながら、プロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は、重合温度:70℃、重合圧力:1.6MPa、循環ガス風量:100m3/時間、水素の供給量:1515NL/時間、流動層の重合体粒子ホールド量:30kgとした。当該反応器においては、ポリマー粒子の平均滞留時間は1.7時間であり、反応器内ガスの濃度比(モル%):水素/(水素+プロピレン)=6.9、排出されたポリマー粒子量は17.2kg/時間、その極限粘度は1.12dl/gであった。
【0065】
[第3段プロピレン重合(気相重合反応)]
上記第2段のプロピレン重合を経て得られたポリプロピレン粒子を、別の内容積1mのガス分散板、攪拌機付き流動層反応器に連続的に移送し、この反応器にプロピレンを連続的に供給し、圧力を一定に保つように過剰ガスをパージしながら、プロピレンの単独合を行った。反応条件は、重合温度:70℃、重合圧力:1.4MPa、循環ガス風量:130m3/時間、プロピレンの供給量:49.3kg/時間、流動層の重合体粒子ホールド量:95kgとした。また、第1段プロピレン重合反応器に供給したトリエチルアルミニウム1モルに対し、チタノセン分子量に換算して7.28ミリモルに相当する量の上記チタノセン化合物溶液を、ベッド部に添加した。ベッド部のベッド密度は、320g/ccであった。当該反応器においては、ポリマー粒子の平均滞留時間は4.7時間であり、反応器内ガスの濃度比(モル%):水素/(水素+プロピレン)=0.033、排出されたポリマー粒子量は20.3kg/時間、極限粘度は1.87dl/gであった。すなわち、第3段目で生成したポリマー粒子の極限粘土は6.03dl/gに相当することになり、第3段プロピレン重合で製造するプロピレン重合体の方が、第1段プロピレン重合および第2段プロピレン重合で製造するプロピレン重合体に比して、分子量が高く、その結果、広い分子量分布を有するプロピレン重合体を製造できたことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相反応器を使用し、水素の存在下にオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを重合させるオレフィン重合体の製造方法であって、水素添加触媒を該気相反応器内のベッド部に添加する工程を有するオレフィン重合体の製造方法。
【請求項2】
水素添加触媒がチタノセン化合物を含むものである請求項1に記載のオレフィン重合体の製造方法。