説明

オレフィン/アクリルポリマーブレンド

【課題】グラフィックアート膜に有用な特性を有するポリマーを提供。
【解決手段】1種以上のポリオレフィンおよび1種以上のアクリル系ポリマーを含むポリマー膜であって、前記アクリルポリマー:前記ポリオレフィンの重量比が0.02:1〜5:1であり、前記ポリオレフィンが1種以上の官能性モノマーの重合単位を含み、前記ポリマー膜中の前記ポリオレフィンの量は前記ポリマー膜の重量を基準にして30重量%より多く、並びに前記アクリル系ポリマーが1種以上の水素結合可能なモノマーの重合単位を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
様々な目的のためにポリマー膜は有用である。例えば、ポリマー膜はグラフィックアート膜として使用されうる。いくつかのグラフィックアート膜は、例えば、以下の特性の1種以上:滑らかな外観の膜として製造される能力;応力白化耐性;引張試験における望ましく高い破断点伸び;望ましく高い引張弾性率、望ましく高い引張強さ、および印刷性のような特性を有することを必要とする。
【0002】
米国特許出願公開第2006/0189735号は高耐衝撃性ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィンベース熱可塑性エラストマー、アクリラート官能性ポリマー、鉱物フィラーおよび滑剤を含む樹脂を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0189735号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グラフィックアート膜に有用な特性の1以上を有し、かつポリオレフィンベース熱可塑性エラストマーを必要としないポリマー膜を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態においては、1種以上のポリオレフィンおよび1種以上のアクリル系ポリマーを含むポリマー膜であって、前記アクリル系ポリマー:前記ポリオレフィンの重量比が0.02:1〜5:1であり、前記ポリオレフィンが1種以上の官能性モノマーの重合単位を含み、前記ポリマー膜中の前記ポリオレフィンの量は前記ポリマー膜の重量を基準にして30重量%より多く、並びに前記アクリル系ポリマーが1種以上の水素結合可能なモノマーの重合単位を含む、ポリマー膜が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書において使用される場合、2つの数の比率が「X以上:1」と称される場合には、その比率が値Y:1(YはX以上である)を有することを意味する。同様に、2つの数の比率が「W以下:1」と称される場合には、その比率が値Z:1(ZはW以下である)を有することを意味する。
【0007】
本明細書において使用される場合、「膜」は他の2つの寸法(長さおよび幅)と比べて比較的小さい1つの寸法(厚み)を有する物体である。膜の厚みは0.01mm〜2mmである。膜の長さおよび幅はそれぞれ1cm以上である。その長さおよび幅により定義される膜の表面は本明細書においては膜の「面」と称される。
【0008】
本明細書において使用され、FWビルメイヤー(Billmeyer)JR.によってポリマー科学のテキストブック(Textbook of Polymer Science)第2版、1971に定義されるように、「ポリマー」はより小さな化学繰り返し単位の反応生成物から構成される比較的大きな分子である。ポリマーは線状、分岐、星形、ループ、超分岐、架橋またはこれらの組み合わせである構造を有することができ;ポリマーは単一の種類の繰り返し単位を有することができ(ホモポリマー)またはポリマーは1種より多い繰り返し単位を有することができる(コポリマー)。コポリマーは、ランダムに、シークエンスで、ブロックで、他の配置で、またはこれらの何らかの混合もしくは組み合わせで配置された様々な種類の繰り返し単位を有することができる。
【0009】
ポリマー分子量は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC、ゲル透過クロマトグラフィーまたはGPCとも称される)などの標準的な方法によって測定されうる。一般的に、ポリマーは1,000以上の重量平均分子量(Mw)を有する。ポリマーは極端に高いMwを有することができ;あるポリマーは1,000,000を超えるMwを有し;典型的なポリマーは1,000,000以下のMwを有する。あるポリマーは架橋されており、架橋されたポリマーは無限のMwを有するものとみなされる。あるポリマーはMnすなわち数平均分子量によって特徴づけられる。
【0010】
本明細書において使用される場合、「ポリマーの重量」とはポリマーの乾燥重量を意味する。
【0011】
本明細書においては、互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成できる分子は「モノマー」と称される。
【0012】
ポリマーを特徴付ける方法の1つは示差走査熱量測定によって測定されるガラス転移温度(Tg)である。本明細書において使用される場合、「硬質」ポリマーは30℃以上のTgを有するポリマーである。ポリマーが1つより多いTgを有する場合には、その最も低いTgが30℃以上であるならばそのポリマーは「硬質」であるとみなされる。本明細書において使用される場合、「軟質」ポリマーは20℃以下のTgを有するポリマーである。ポリマーが1つより多いTgを有する場合には、その最も高いTgが20℃以下であるならばそのポリマーは「軟質」であるとみなされる。
【0013】
本明細書において使用される場合、ポリマー中の無視できる量の材料はそのポリマーの全重量を基準にして0.02重量%以下である。
【0014】
本発明は少なくとも1種のアクリル系ポリマーを伴う。本明細書において使用される場合、アクリル系ポリマーは重合単位として、アクリル系ポリマーの重量を基準にして50重量%以上のアクリル系モノマーを含む。アクリル系モノマーは(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の置換もしくは非置換エステル、および(メタ)アクリル酸の置換もしくは非置換アミドである。本明細書において使用される場合、「(メタ)アクリル」とはアクリルもしくはメタクリルを意味し;「(メタ)アクリラート」とはアクリラートもしくはメタクリラートを意味し;「(メタ)アクリルアミド」とはアクリルアミドもしくはメタクリルアミドを意味する。
【0015】
多官能性モノマーは、重合反応に関与することができる2つの官能基を有するモノマーである。多官能性モノマーはポリマー鎖分岐および/または架橋を生じさせると考えられる。
【0016】
アクリル系ポリマーの重合単位を形成するのに好適なモノマーのグループは非置換アルキルメタクリラートのグループである。好ましいアルキルメタクリラートは1〜18個の炭素原子のアルキル基を有し、より好ましくは8個以下の炭素原子であり、より好ましくは6個以下の炭素原子であり、より好ましくは4個以下の炭素原子である。好ましい実施形態においては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、もしくはこれらの混合物が使用される。より好ましいのは、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ブチルの双方が使用される実施形態である。
【0017】
アクリル系ポリマーの重合単位を形成するのに好適なモノマーの別のグループは非置換アルキルアクリラートのグループである。好ましい実施形態においては、1〜18個の炭素原子のアルキル基を有する1種以上の非置換アルキルアクリラートが使用される。好ましい実施形態においては、2個以上の炭素原子のアルキル基を有する1種以上の非置換アルキルアクリラートが使用される。好ましい実施形態においては、8個以下の炭素原子のアルキル基を有する、より好ましくは6個以下の炭素原子である、より好ましくは2〜4個の炭素原子である1種以上の非置換アルキルアクリラートが使用される。最も好ましい非置換アルキルアクリラートはアクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびこれらの混合物である。
【0018】
ある実施形態においては、本発明の1種以上のアクリル系ポリマーは重合単位として、アクリル系モノマーではない1種以上のモノマーを含む。ある好適な非アクリル系モノマーには、例えば、アクリル系モノマーではないビニル化合物が挙げられる。このようなビニル化合物の好適ないくつかには、例えば、酢酸ビニル、およびビニル芳香族化合物が挙げられる。好ましいアクリル系ポリマーはアクリル系モノマー以外のモノマーを有しない。本発明の好ましい組成物においては、全てのポリマーはモノマー単位の全てがアクリル系モノマーであるモノマー単位を有する。
【0019】
アクリル系ポリマーの重合単位を形成するのに好適なモノマーのグループは水疎結合可能なモノマーのグループである。本明細書において使用される場合、水素結合可能なモノマーは、アクリル系ポリマーの重合単位を形成することができ、水素結合可能な基を含むモノマーである。水素結合可能な基は、モノマーに共有結合しかつ水素原子に共有結合した電気陰性原子を含む。電気陰性原子はフッ素、酸素もしくは窒素であるはずである。好適な水素結合可能なモノマーはアクリル系モノマーであってよく、またはアクリル系モノマーでなくても好い。好ましい水素結合可能なモノマーには、1以上のカルボキシル基を有するアクリル系モノマー、アミン置換アルキル(メタ)アクリラート、ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリラート、フタル酸から生じたアクリル系モノマー、並びにこれらの混合物がある。好適な水素結合可能なモノマーのいくつかの他の例は、窒素含有ビニル化合物、例えば、ビニルイミダゾール、n−ビニルピロリドンおよびこれらの置換体などである。
【0020】
アクリル系ポリマーの重合単位を形成するために使用されうる好ましい水素結合可能なモノマーには、フタル酸から生じたモノマー、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、アミン置換(メタ)アクリラート、並びにこれらの混合物がある。より好ましいのには、フタル酸から生じたモノマー、アミン置換(メタ)アクリラート、(メタ)アクリル酸およびこれらの混合物がある。最も好ましい水素結合可能なモノマーはアクリル酸である。
【0021】
アクリル系ポリマーのある重合は連鎖移動剤の存在下で行われる。連鎖移動剤はフリーラジカル重合により生長するポリマー鎖の長さを制限する化合物である。メルカプタン、例えば、ドデシルメルカプタン(n−DDM)およびアルデヒド、例えば、1−ヘキサナールは有用な連鎖移動剤の例である。連鎖移動剤はポリマー鎖に付加するので、連鎖移動剤もポリマー鎖に官能基を導入するのに有用である。メルカプトプロピオン酸は、ポリマーにカルボン酸官能基を付加することができる連鎖移動剤の例である。
【0022】
好ましいアクリル系ポリマーは多段階ポリマーである。多段階ポリマーは、第1の重合が完了までもしくはほぼ完了まで行われ、次いで、1以上のその後の重合が行われ、その後の重合のそれぞれは従前の1段階もしくは複数段階の存在下で行われ、かつその後の重合のそれぞれは完了までもしくはほぼ完了まで行われる方法により製造されるポリマーである。第1の重合により形成されるポリマーは第1段階ポリマーと称され、第2の重合により形成されるポリマーは第2段階ポリマー、などと称される。第1段階の完了後に重合が行われない場合には、生じるポリマーは本明細書においては単一段階ポリマーと称される。2段階だけで製造される多段階ポリマーは本明細書においては「2段階」ポリマーと称される。
【0023】
好ましい多段階ポリマーは少なくとも1つの軟質段階ポリマーを有する。好ましい軟質段階ポリマーは10℃以下のTgを有する。独立して、好ましい軟質段階は−60℃以上、より好ましくは−30℃以上のTgを有する。
【0024】
好ましい軟質段階ポリマーはアルキル基が2〜18個の炭素原子を有する1種以上の非置換アルキルアクリラートモノマーの重合単位を有する。より好ましいのは、アルキル基が2〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリラートモノマー、より好ましいのはアクリル酸エチル、、アクリル酸ブチル、およびアクリル酸2−エチルヘキシルである。このようなモノマーの好ましい量は、軟質段階ポリマーの重量を基準にして、25重量%以上であり、より好ましいのは50重量%以上であり、より好ましいのは60重量%である。独立して、このようなモノマーの好ましい量は95重量%以下であり、より好ましいのは80重量%以下である。
【0025】
好ましい軟質段階ポリマーは、アルキル基が1〜4個の炭素原子を有する1種以上の非置換アルキルメタクリラートモノマーの重合単位を有する。好ましいのは、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ブチルであり;より好ましいのはメタクリル酸メチルである。このようなモノマーの好ましい量は、軟質段階ポリマーの重量を基準にして、2重量%以上であり、より好ましいのは5重量%以上であり、より好ましいのは10重量%であり、より好ましいのは20重量%以上である。独立して、このようなモノマーの好ましい量は75重量%以下であり、より好ましいのは50重量%以下であり、より好ましいのは30重量%以下である。
【0026】
好ましい軟質段階ポリマーは1種以上の水素結合可能なモノマーの重合単位を有する。このようなモノマーの好ましい量は、軟質段階ポリマーの重量を基準にして、1重量%以上であり、より好ましいのは2重量%以上であり、より好ましいのは4重量%であり、より好ましいのは5重量%以上である。独立して、このようなモノマーの好ましい量は30重量%以下であり、より好ましいのは20%重量%以下であり、より好ましいのは10重量%以下である。
【0027】
好ましい軟質段階ポリマーは連鎖移動剤の非存在下で製造され、または無視できる量の連鎖移動剤の存在下で製造される。より好ましい軟質段階ポリマーは連鎖移動剤の非存在下で製造される。
【0028】
好ましい軟質段階ポリマーは多官能性モノマーの重合単位を有しないか、または無視できる量の多官能性モノマーの重合単位を有する。より好ましくは、多官能性モノマーの重合単位を有しない軟質段階ポリマーが使用される。
【0029】
好ましい多段階ポリマーは1種以上の硬質段階ポリマーを有する。好ましい硬質段階ポリマーは40℃以上、より好ましくは50℃以上のTgを有する。
【0030】
硬質段階ポリマーにおける使用に好ましいモノマーは軟質段階ポリマーでの使用に好ましいとして本明細書において上述したものと同じである。
【0031】
好ましい硬質段階ポリマーは1種以上の非置換アルキルアクリラートの重合単位を有する。硬質段階ポリマーにおいて非置換アルキルアクリラートが使用される場合には、好ましい量は2%以上であり、より好ましいのは5%以上であり、より好ましいのは10%以上である。独立して、硬質段階ポリマーにおいて非置換アルキルアクリラートが使用される場合には、好ましい量は75%以下であり、より好ましいのは50%以下であり、より好ましいのは25%以下である。
【0032】
好ましい硬質段階ポリマーは1種以上の非置換アルキルメタクリラートの重合単位を有する。硬質段階ポリマーにおいて非置換アルキルメタクリラートが使用される場合には、好ましい量は10%以上であり、より好ましいのは20%以上であり、より好ましいのは40%以上であり、より好ましいのは50%以上である。独立して、硬質段階ポリマーにおいて非置換アルキルメタクリラートが使用される場合には、好ましい量は95%以下であり、より好ましいのは85%以下である。
【0033】
好ましい硬質段階ポリマーは1種以上の水素結合可能なモノマーの重合単位を有する。硬質段階ポリマーにおける好ましい量の水素結合可能なモノマーは本明細書において上述した軟質段階ポリマーについての好ましい量と同じである。
【0034】
好ましい硬質段階ポリマーは1種以上の連鎖移動剤の存在下で製造される。硬質段階ポリマーの重合において使用される連鎖移動剤の好ましい量は、硬質段階ポリマーの重量を基準にして、0.12重量%以上、より好ましくは0.25重量%以上、より好ましくは0.4重量%以上である。独立して、硬質段階ポリマーの重合において使用される連鎖移動剤の好ましい量は、硬質段階ポリマーの重量を基準にして、5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0035】
好ましい硬質段階ポリマーは、多官能性モノマーの重合単位を有しないか、または無視できる量の多官能性モノマーの重合単位を有する。より好ましくは、多官能性モノマーの重合単位を有しない硬質段階ポリマーが使用される。
【0036】
好ましい多段階ポリマーは、硬質段階ポリマー:軟質段階ポリマーの重量比0.1以上:1、より好ましくは0.3以上:1、より好ましくは0.45以上:1、より好ましくは0.6以上:1を有する。独立して、好ましい多段階ポリマーは、硬質段階ポリマー:軟質段階ポリマーの重量比10以下:1、より好ましくは5以下:1、より好ましくは3以下:1を有する。
【0037】
好ましい多段階ポリマーは、少なくとも1種の軟質段階ポリマーの存在下で重合された少なくとも1種の硬質段階ポリマーを有する。より好ましいのは、軟質段階ポリマーの存在下で重合された硬質段階ポリマーを有する2段階ポリマーである。
【0038】
本明細書において定義される場合、ポリオレフィンはポリマーの重量を基準にして50重量%以上の1種以上のモノオレフィンモノマーの重合単位を含むポリマーである。本明細書において定義される場合、モノオレフィンモノマーは、1分子当たり1つだけの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素である。モノオレフィンモノマーの例は、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブト−1−エン、4−メチルペンテ−1−エン、ヘキセ−1−エン、オクテ−1−エン、10個以下の炭素原子を有し、かつ第1および第2炭素原子の間に配置された1つだけの二重結合を有する他のアルケン、並びにこれらの混合物である。好ましいモノオレフィンモノマーはエチレン、プロピレン、およびこれらの混合物である。より好ましいのはエチレンである。
【0039】
好ましいポリオレフィンはモノオレフィンモノマーではない重合単位を幾分か含む。モノオレフィンモノマーではなくかつモノオレフィンモノマーと共重合可能なビニル化合物が本発明のポリオレフィンにおける重合単位として好適である。モノオレフィンモノマーではなく、かつモノオレフィンモノマーと共重合可能な好適なビニル化合物のいくつかは、ジエン、例えば、ブタジエン、イソプレンおよびこれらの混合物などである。1種以上のジエンが存在する場合には、ジエンモノマーの量はポリオレフィンの重量を基準にして、5重量%以下であり、より好ましくは1重量%以下である。モノオレフィンモノマーではなく、かつモノオレフィンモノマーと共重合可能なビニル化合物の好ましいグループは、本明細書において、「官能性モノマー」と称されるモノマーのグループであり、これは、酢酸ビニル;無水マレイン酸;アクリル系モノマー;酸素、窒素、硫黄およびこれらの組み合わせから選択される1以上の原子を含む他のビニル化合物;並びにこの混合物からなるグループである。より好ましい官能性モノマーには、酢酸ビニル、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の置換および非置換エステル、並びにこれらの混合物がある。より好ましい官能性モノマーには、酢酸ビニル、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、アルキル基が8個以下の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸の非置換アルキルエステル、並びにこれらの混合物がある。より好ましい官能性モノマーには、酢酸ビニル、アクリル酸、アルキル基が3個以下の炭素原子を有するアクリル酸の非置換アルキルエステル、並びにこれらの混合物がある。
【0040】
好ましいポリオレフィンはモノオレフィンモノマーの重合単位をポリオレフィンの重量を基準にして、55重量%以上、より好ましくは65重量%以上の量で含む。独立して、好ましいポリオレフィンはモノオレフィンモノマーの重合単位をポリオレフィンの重量を基準にして、95重量%以下、より好ましくは90重量%以下の量で含む。
【0041】
好ましいポリオレフィンは官能性モノマーの重合単位をポリオレフィンの重量を基準にして、5重量%以上、より好ましくは10重量%以上の量で含む。独立して、好ましいポリオレフィンは官能性モノマーの重合単位をポリオレフィンの重量を基準にして、45重量%以下、より好ましくは35重量%以下の量で含む。
【0042】
本発明の好ましいポリオレフィンはブロックコポリマーではない。統計(statistical)コポリマーであるポリオレフィンが好ましい。
【0043】
好ましいポリオレフィンは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、より好ましくは200,000以下の重量平均分子量を有する。独立して、好ましいポリオレフィンは10,000以上、より好ましくは20,000以上、より好ましくは50,000以上の重量平均分子量を有する。
【0044】
本発明のポリマー膜においては、アクリル系ポリマー:ポリオレフィンの好ましい重量比は0.05以上:1、より好ましくは0.1以上:1、より好ましくは0.2以上:1、より好ましくは0.3以上:1、より好ましくは0.4以上:1である。独立して、本発明の組成物において、アクリル系ポリマー:ポリオレフィンの好ましい重量比は2以下:1、または1以下:1、または0.8以下:1、または0.6以下:1である。
【0045】
本発明のポリマー膜においては、ポリオレフィンの好ましい量はポリマー膜の重量を基準にして、35重量%以上であり、より好ましいのは40重量%以上であり、より好ましいのは50重量%以上である。独立して、本発明のポリマー膜においては、ポリオレフィンの好ましい量はポリマー膜の重量を基準にして、90重量%以下であり、より好ましいのは80重量%以下であり、より好ましいのは70重量%以下である。
【0046】
本発明の膜は任意の方法によって製造される。アクリル系ポリマー、ポリオレフィンおよび任意の追加の成分が固体(例えば、ペレットもしくは粉体もしくはこれらの混合物)として、または液体(例えば、ラテックス、溶液、もしくはこれらの混合物)として、またはこれらの混合物として混合されうる。アクリル系ポリマーはその重合の方法に関係なく、粉体もしくはペレットのような固体として単離されうる。アクリル系ポリマーは、次いで、ペレットもしくは粉体形態のポリオレフィンと、任意の追加の成分と共に混合されることができ、この混合物は溶融されることができ、溶融状態で混合されることができ、押出、吹き込み、キャスティング、または他の方法によって膜が製造されうる。
【0047】
本発明の膜の厚みは0.01mm以上、または0.02mm以上、または0.05mm以上である。独立して、本発明の膜の厚みは2mm以下、または1mm以下、または0.5mm以下、または0.2mm以下である。ある実施形態においては、本発明の膜の長さおよび幅は互いに独立して、1cm以上、または10cm以上、または1メートル以上である。
【0048】
本発明の膜はポリオレフィンおよびアクリル系ポリマーに加えて、成分を含むことができる。この追加の成分には、例えば、加工助剤、UV安定化剤、抗ブロッキング剤、可塑剤、滑剤、耐衝撃性改良剤、他の追加の成分、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
本発明の膜について意図される用途の他の例は、グラフィックアート膜の一部分もしくは全部である。グラフィックアート膜はその上に目に見える像が現れる膜である。目に見える像は英数字、または絵、または抽象的な形、または他の形態、これらの任意の組み合わせであり得る。ある実施形態においては、目に見える像は本発明の膜の面に、例えば、印刷によって、付着させられる。
【0050】
本発明の膜がグラフィックアート膜の一部分もしくは全部として使用される実施形態においては、本発明の膜は多層構造の一部分であってもよいし、なくてもよい。独立して、目に見える像は、例えば、目に見える像に固定剤を噴霧することによって、または透明な膜の面を目に見える像に接触させることによって、保護されても好いし、保護されなくても好い。
【0051】
本発明の膜がグラフィックアート膜の一部分もしくは全部として使用される好ましい実施形態においては、グラフィックアート膜は伸びることができる(すなわち、引き裂かれることなく10%以上の引張伸びが可能である)。
【0052】
本発明の膜がグラフィックアート膜の一部分もしくは全部として使用されるある実施形態においては、本発明の膜の1つの面は感圧接着剤の層と接触している。このような実施形態のいくつかにおいては、グラフィックアート膜は、このグラフィックアート膜を剛性基材に、感圧接着剤の層をこの基材に押し付けることによって、取り付けることによって使用される。このような実施形態のいくつかにおいては、剛性基材は平坦である。このような実施形態のいくつかにおいては、剛性基材の全部もしくは一部分は曲がっている。基材が曲がっている場合には、グラフィックアート膜は、その膜が剛性基材の湾曲に一体化するように伸ばされうるように充分に伸びうることが意図される。好適な剛性基材には、例えば、コーティングされた、またはコーティングされていない金属、コーティングされたまたはコーティングされていない木材、剛性プラスチック、ガラス、塗装されたもしくは塗装されていない石膏もしくは石膏板、他の剛性基材、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。このような好適な剛性基材は、例えば、乗り物、例えば、自動車、バス、もしくはトラックなどの外表面である。他の好適な基材は、例えば、窓、床もしくは壁である。
【0053】
本実施例の目的のために、ここで開示されるそれぞれの操作は他に特定されない限りは25℃で行われることが理解される。
【0054】
本明細書および特許請求の範囲の目的のために、ここで開示されるそれぞれの操作は他に特定されない限りは25℃で行われることが理解される。
【実施例】
【0055】
試験膜はASTM D882に従って製造された。引張試験はインストロン引張試験機で12.7cm/分のクロスヘッド速度で行われた。ゲージ長さは2.54cmであり、サンプルは8.89cm×1.27cmの寸法の形状の長方形であった。破断点引張強さ(破断点での力/当初断面積)、および破断点伸びパーセント[100×(破断点伸び−ゲージ長さ)/ゲージ長さ]が測定された。ヤング率は、応力−歪曲線の、当該曲線の初期直線部分での傾きである。
【0056】
ここで以下の略語が使用される:
n−DDM=n−ドデシルメルカプタン
HBM1=フタル酸から生じた水素結合可能なアクリル系モノマー
HBM2=窒素含有水素結合可能なアクリル系モノマー
PA1=パラロイド(Paraloid商標)K147加工助剤、ダウケミカルカンパニー、水素結合可能なモノマーを有していない
PA2=パラロイドK−120ND加工助剤、ダウケミカルカンパニー、水素結合可能なモノマーを有していない
PO1=エルバックス(Elvax商標)4260ポリオレフィン、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸(重量比71/28/1)
PO2=アンプリファイ(Amplify商標)EA100ポリオレフィン、ダウケミカルカンパニー、エチレン/アクリル酸エチル(重量比85/15)
AP1=パラロイドB−48ポリマー、ダウケミカルカンパニー
PLA=ポリ酢酸、ネイチャーワークス(Nature Works商標)LLC、ポリマー2002D
PU1=クリスタルグラン(Kristalgran商標)PN03−217、ハンツマン(Huntsman)からの熱可塑性ウレタン
Elong=破断点伸び(%)
Stress=破断点応力、メガパスカル単位(MPa)(psi)
Modulus=ヤング率、メガパスカル単位(MPa)(psi)
Mw=重量平均分子量、1000単位(k)
【0057】
実施例1:溶液重合によるアクリル系ポリマーの製造
アクリル系ポリマーを製造するために以下の混合物が使用された:
【表1】

【0058】
攪拌機および凝縮器を備え、窒素を入れられた反応器に混合物Aを入れた。25%の混合物Bをこの反応器に入れて、110℃に加熱した。温度が110℃に到達したときに、25.4%の混合物Cをこの反応器に添加した。攪拌した反応器内容物に残りの混合物BおよびCをそれぞれシリンジポンプを用いて68分間にわたって添加した。次いで、シリンジポンプを用いて60分間にわたって、この反応器に混合物Dを入れた。この添加が完了した後で、この混合物を110℃で30分間保持し、その後この反応器に混合物Eを入れた。得られた混合物を110℃でさらに30分間攪拌し、その後、アルミニウムパンに移して、排気システムを備えたオーブンを用いて150℃で乾燥させた。
【0059】
実施例2:溶液重合によるアクリル系ポリマーの製造
実施例1の方法を用いてアクリル系ポリマーを製造するために、以下の混合物が使用された。
【表2】

【0060】
実施例3:溶液重合によるアクリル系ポリマーの製造
実施例1の方法を用いてアクリル系ポリマーを製造するために、以下の混合物が使用された。
【表3】

【0061】
実施例4:溶液重合によるアクリル系ポリマーの製造
実施例1の方法を用いてアクリル系ポリマーを製造するために、以下の混合物が使用された。
【表4】

【0062】
実施例5:溶液重合によるアクリル系ポリマーの製造
実施例1の方法を用いてアクリル系ポリマーを製造するために、以下の混合物が使用された。
【表5】

【0063】
実施例6:溶液重合によるアクリル系ポリマーの製造
実施例1の方法を用いてアクリル系ポリマーを製造するために、以下の混合物が使用された。
【表6】

【0064】
実施例7:溶液重合によるアクリル系ポリマーの製造
実施例1の方法を用いてアクリル系ポリマーを製造するために、以下の混合物が使用された。
【表7】

【0065】
実施例8:溶液重合による2段階アクリル系ポリマーの製造
【表8】

【0066】
攪拌機および凝縮器を備え、窒素を入れられた反応器に混合物Aを入れた。25%の混合物Bをこの反応器に入れて、110℃に加熱した。温度が110℃に到達したときに、25.4%の混合物Cをこの反応器に添加した。攪拌した反応器内容物に残りの混合物BおよびCをそれぞれシリンジポンプを用いて45分間にわたって添加した。次いで、シリンジポンプを用いて45分間にわたって、この反応器に混合物Dを入れ、110℃で20分間保持した。混合物EおよびFを90分間にわたってこの反応器に添加し、この混合物を110℃で5分間保持した。次いで、混合物Gをこの反応器にシリンジポンプを用いて60分間にわたって添加した。この添加が完了したら、この混合物を110℃で30分間保持し、その後この反応器に混合物Hを添加した。得られた混合物を110℃でさらに30分間攪拌し、その後、アルミニウムパンに移して、排気システムを備えたオーブンを用いて150℃で乾燥させた。
【0067】
実施例9:溶液重合による2段階アクリル系ポリマーの製造
実施例8の方法を使用して2段階アクリル系ポリマーを製造するために以下の混合物が使用された。
【表9】

【0068】
実施例10:溶液重合による2段階ポリマーの製造
実施例8の方法を使用して2段階アクリル系ポリマーを製造するために以下の混合物が使用された。
【表10】

【0069】
実施例11〜16:試験結果
上記アクリル系ポリマーを排気アウトレットを備えたオーブンを用いて150℃で乾燥させ、30mm二軸押出機および4mmの2−ストランドダイ(レイストリッツ(Leistritz)、ソマービル、ニュージャージー州)を用いて、このポリマーは以下の表に示されるポリオレフィン組成物および他のポリマー組成物と共にペレット化させた。ペレット化条件は以下の通りであった:温度は190℃であり、フィード速度は4.5〜6.8kg/時(10〜15 lbs/時)であり、並びに1分間あたりの回転数(RPM)は100であった。次いで、ペレットは、2.25mmダイを備えた(キロン(Killon)24:1 D/L、ニュージャージー州)単一層インフレーションフィルムラインで処理されて、単一層膜を生じさせ、または8インチフラットフィルムダイ(Leistritz、ソマービル、ニュージャージー州)を備えた30mm二軸押出機で押し出された。
【0070】
表1.膜
ポリオレフィンはPO1であった。アクリル系ポリマー:ポリオレフィンの比率は40:60であった。「Ex#」は実施例番号を意味する。
【表11】

【0071】
表2.膜
ポリオレフィンはPO1であった。アクリル系ポリマー:ポリオレフィンの重量比は40:60であった。「HBG」はアクリル系ポリマーの水素結合可能な基である。全ての膜は滑らかな表面を有していた。
【表12】

【0072】
表3.膜
それぞれの組成物は、組成物の重量を基準にして30重量%のPO2を有していた。示される量は組成物の重量を基準にした重量%である。膜の滑らかさは目によって、非常に劣悪(vp)、劣悪(p)、良好(g)、非常に良好(vg)、および優秀(ex)の評定で評価された。応力白化は手で膜を延ばし、目によって、同じ評定スケールを用いて結果を評価することにより査定された。
【0073】
【表13】

【0074】
表4.膜
全ての膜はPO1を有しており、アクリル系ポリマー:ポリオレフィンの重量比は35:65であった。膜はフラットダイを通して押し出された。「MD」は機械方向であり;「TD」は横方向である。「SW」は応力白化で、表3におけるように評定される。
【0075】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のポリオレフィンおよび1種以上のアクリル系ポリマーを含むポリマー膜であって、
前記アクリル系ポリマー:前記ポリオレフィンの重量比が0.02:1〜5:1であり、
前記ポリオレフィンが1種以上の官能性モノマーの重合単位を含み、
前記ポリマー膜中の前記ポリオレフィンの量は前記ポリマー膜の重量を基準にして30重量%より多く、並びに
前記アクリル系ポリマーが1種以上の水素結合可能なモノマーの重合単位を含む、
ポリマー膜。
【請求項2】
前記ポリオレフィンが酢酸ビニル、無水マレイン酸、アクリル系モノマーおよびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の官能性モノマーの重合単位を含む、請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項3】
前記官能性モノマーが酢酸ビニルを含む、請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項4】
前記官能性モノマーの量が前記ポリオレフィンの重量を基準にして5重量%〜35重量%である、請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項5】
前記アクリル系ポリマーが硬質ポリマーおよび軟質ポリマーを含む多段階ポリマーである請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項6】
前記軟質ポリマーが、無視できるもしくはゼロの量の連鎖移動剤の存在下で製造された、請求項4に記載のポリマー膜。
【請求項7】
前記硬質ポリマーが1種以上の連鎖移動剤の存在下で製造された、請求項4に記載のポリマー膜。
【請求項8】
前記ポリマー膜中の前記ポリオレフィンの量が前記ポリマー膜の重量を基準にして35重量%以上である、請求項1に記載のポリマー膜。

【公開番号】特開2012−25950(P2012−25950A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−149773(P2011−149773)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】