説明

オンデマンド印刷可能な粘着テープ及び印刷された粘着テープロール

【課題】 製品用小巻ロールに直接、必要に応じて印刷できる粘着テープ、オンデマンド印刷方法、及び当該オンデマンド印刷方法で印刷した粘着テープロールを提供する。
【解決手段】 基材の一面に粘着剤層が設けられ、該基材の他面に離型性被印刷層が設けられた粘着テープを、前記粘着剤層が内側となるように巻回してなる粘着テープロールであって、前記被印刷層は、非晶性ポリエステルと非シリコーン系離型性ポリマーとが、質量比で非晶性ポリエステル:離型性ポリマー=75:25〜99.5:0.5の割合で含有されていて、前記被印刷層には、インクで絵柄、文字がオンデマンド印刷されている。染料タイプのインクを用いることが好ましく、前記被印刷層には、硬化剤が含有されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既に個々の製品用の巻回体とされた粘着テープロールに、オンデマンド印刷した粘着テープロール及びその製造方法(オンデマンド印刷方法)及びオンデマンド印刷可能な粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜結束テープなどに使用する粘着テープでは、粘着テープに野菜名や生産業者名、販売者名などが印刷されている。このような印刷された粘着テープロールは、まず、広幅のプラスチックフィルム等の基材の片面にグラビア印刷した後、印刷面又は印刷されていない側の面に粘着剤を塗工し、反対側の面に離型剤を塗工した後、所定幅にスリットして巻回することで、製品用の小巻粘着テープロールを製造している。
【0003】
近年、食品の安全性、生産業者の明確化の要求が高まり、賞味期限や個々の生産者農家といった、少量多品種な内容を、必要に応じて、印刷又は印字したいという要求が出されている。
【0004】
このような少量多品種な内容については、ユーザーが使用現場で個々にインクジェットプリンタや熱転写等により印字した粘着ラベルを作成し、別途商品に貼付することで、現在対応している。個々に印刷する使用の粘着ラベルは、インクジェット用インクに適したインク受理層を有する基材あるいは感熱記録紙など、記録方法に適した記録媒体を使用する必要があるため、単なるプラスチックフィルムを基材として使用した粘着テープロールより高価になる傾向がある。また、資源ゴミ削減の観点、手間省略の観点から、野菜結束テープのように、商品に結束テープを使用しているユーザーからは、すべての必要事項を印刷した野菜結束テープの小巻ロール製品の使用で代用したいという要望が高まっている。ユーザーの少量多品種印刷の要求に応えるためには、グラビア印刷のように、高価な印刷原版を作成しなくても印刷できるような粘着テープロールの製造方法の確立が求められる。
【0005】
多品種少量生産の要求に応じた後印刷可能な小ロット用粘着テープとしては、特開平5−25442に、OPPフィルム基材の片面に粘着剤層を設け、他面にコロナ放電による前処理を行なった後にフレキソ印刷し、印刷面に離型剤層を形成した粘着テープロールが提案されている。エマルジョン系粘着剤を使用することで、離型剤が塗工されていない粘着テープの原反ロールを印刷のために展開することを可能としている。また、コロナ放電処理を行ない、フレキソ印刷を採用することにより、印刷版としては比較的安価なゴム製又は樹脂製のものを使用して、基材への印字を可能にしている。そして、印刷インキとしてはニトロセルロース系樹脂をイソプロピルアルコールで希釈したインキを使用し、印刷後、印字部分に変性ポリオレフィン系離型剤を塗工して、離型剤層を形成し、次いで、所定幅にスリット加工して、粘着剤層が内側、離型剤層が外側となるように巻回した製品用の小巻粘着テープロールを形成する。印字部の上に、離型剤層を形成することで、40mm幅にまでスリット加工した個々の製品用小巻ロールに該当する状態において、ユーザーによる使用時の巻戻し操作をスムーズに行なうことができるとともに、粘着面にインキ移りするなどといったことも防止できるというものである。
【0006】
しかしながら、印刷にあたって、コロナ放電処理を行ない、印刷後には離型剤処理を行なう必要があることから、印刷した粘着テープロールの製造装置の小型化には限界がある。このため、テープ幅としては数100mm以上のものを作成した後、製品用小巻ロール用の幅にスリットすることになる。また、離型処理を行なっていない状態で、印刷のための展開操作を行なうので、粘着テープの原反ロールから、粘着剤層と基材との巻剥がしに必要な力で引張る必要がある。従って、OPPフィルムのような引張強度がそれほど高くない基材を使用する場合、幅数cmといった小巻ロール製品状態では、印刷工程でテープが切れてしまうといった問題も起こりえる。このような事情から、後印刷可能な上記方法であっても、1ロットで、10個程度の製品用ロールを製造することになる。
【0007】
しかし、近年のように、個々の農家毎、賞味期限といったオンデマンド印刷の要望に応えるためには、広幅の原反ロールに印刷後、所定幅にカットするような小巻ロールの製造方法では対応できない。高価な原版を作成せずに、小巻ロール1〜数個分を印刷できる方法の開発が求められる。
【0008】
【特許文献1】特開平5−25442
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製品用小巻ロールに直接、必要に応じて印刷できる粘着テープ、オンデマンド印刷方法、及び当該オンデマンド印刷方法で印刷した粘着テープロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の粘着テープロールは、基材の一面に粘着剤層が設けられ、該基材の他面に離型性被印刷層が設けられた粘着テープを、前記粘着剤層が内側となるように巻回してなる粘着テープロールであって、前記被印刷層は、非晶性ポリエステルと非シリコーン系離型性ポリマーとが、質量比で非晶性ポリエステル:離型性ポリマー=75:25〜99.5:0.5の割合で含有されていて、前記被印刷層には、インクで絵柄、文字がオンデマンド印刷されている。
【0011】
前記インクは、着色剤として染料を含有しているものが好ましく、前記被印刷層には、さらに硬化剤が含有されていることが好ましい。
また、離型性ポリマーは、マレアミド又はマレイミド系共重合物であることが好ましく、前記基材は、ポリエステルフィルム又はポリオレフィンフィルムであることが好ましい。
【0012】
前記基材と前記粘着剤層との間には、印字部が介在していてもよく、前記粘着テープは、幅6〜100mmのものに好適に適用できる。
【0013】
本発明のオンデマンド印刷方法は、基材の一面に粘着剤層が設けられ、該基材の他面に非晶性ポリエステルと離型性ポリマーとが、質量比で非晶性ポリエステル:離型性ポリマー=75〜99.5:25〜0.5の割合で含有されている離型性被印刷層が設けられた粘着テープを、前記粘着剤層が内側となるように巻回してなる粘着テープロールの前記被印刷層に、オンデマンド印刷する方法であって、前記被印刷層が上面となるように粘着テープを引出し、溶剤が低沸点系有機溶剤である速乾タイプのインクで印刷した後、再び粘着テープを巻取ってテープロールとする方法である。
【0014】
前記インクは、着色剤として染料を含有していることが好ましい。また、前記印刷は、前記インキを付着させた版行でをつけた版行で、前記被印刷層に押印することにより行なわれることが好ましく、前記版行はゴム印であることが好ましい。また、前記粘着テープは、幅6〜100mmのものに好適に適用できる。
【0015】
本発明のオンデマンド印刷可能な粘着テープは、幅6〜100mmの基材の一面に粘着剤層が設けられ、該基材の他面に離型性被印刷層が設けられた粘着テープであって、前記被印刷層は、非晶性ポリエステルと離型性ポリマーとが、質量比で非晶性ポリエステル:離型性ポリマー=75:25〜99.5:0.5の割合で含有されている。前記被印刷層には、さらに硬化剤が含有されていることが好ましい。
【0016】
尚、本明細書において、「インク」及び「インキ」とは、いずれも着色剤、樹脂、溶剤からなるもので、置換可能に用いられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のオンデマンド印刷可能な粘着テープは、製品の小巻ロールの状態で、被印刷層に絵柄、文字を随時印刷することができる。本発明のオンデマンド印刷方法によれば、個々の製品小巻ロールに対してオンデマンド印刷できるので、汎用性のない絵柄、文字などであっても、随時印刷することができる。さらに、本発明の粘着テープロールは、オンデマンド印刷されたものであっても、印刷事項に耐久性があるので、まとめてオンデマンド印刷した粘着テープロールを、随時使用するような使用態様にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔粘着テープ〕
はじめに、本発明のオンデマンド印刷した粘着テープロールの基となるオンデマンド印刷可能な粘着テープについて説明する。
オンデマンド印刷可能な粘着テープは、図1に示すように、テープ基材1の片面に粘着剤が塗工された粘着剤層2を有し、他面に、印刷される離型性被印刷層3が積層されたものである。このような粘着テープは、オンデマンド印刷された状態で製品として供給されることもできるし、ユーザー側が必要に応じて印刷できるように、印刷していない状態で供給されてもよい。従って、このオンデマンド印刷可能な粘着テープ自体で個々の製品として供給できるので、テープ幅(基材1の幅に相当)6〜100mm、好ましくは6〜40mmである。
【0019】
テープ基材1としては、従来より粘着テープの基材として用いられるポリ塩化ビニル、OPP等のポリオレフィン系フィルム、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、綿、レーヨンなどの繊維もしくはフラットヤーンからなる織布、不織布あるいはこれらの片面又は両面にオレフィン樹脂等をラミネートしたもの;クラフト紙、グラシン紙、紙、合成紙などの紙にオレフィン樹脂等をラミネートしたものなどを用いることができ、これらのうち、プラスチックフィルムが好ましく用いられる。これらのプラスチックフィルムは、無延伸、一軸延伸、二軸延伸タイプいずれでもよい。野菜結束フィルムとしては、吸湿による強度低下がないという点でポリエステルフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)が好ましく用いられる。
【0020】
基材1は、予め片面に図形、文字等が印刷されたものを用いてもよい。例えば、野菜結束テープの場合には、野菜名、所属農協名などのような大量印刷可能な事項については、基材に直接印刷しておく方が便利である。基材1に直接印刷されている場合、基材1と粘着剤層2との間に印字部4が形成される(図2参照)、あるいは基材1と離型性被印刷層3との間に印字部が形成されることになる。基材1に汎用事項を印刷する場合、広幅のフィルムに印刷すればよいので、グラビア印刷などを採用することができる。
【0021】
基材1の厚みは特に限定しないが、一般に、10〜100μmである。粘着剤層2と基材1、離型性被印刷層3と基材1、あるいは基材1に印刷する場合には基材1とインキとの密着性を上げるために、基材1の片面又は両面にコロナ放電処理をおこなってもよいし、プライマー塗工処理を行なっても良い。
【0022】
粘着剤層2を構成する粘着剤としては、特に限定せず、従来より粘着テープに用いられていた粘着剤を使用することができる。例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などの適宜粘着剤を用いることができ、製品として求められる粘着力に応じて、適宜選択される。ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴムなどをベースとする粘着剤が挙げられる。野菜結束テープの場合は、自着力3N/cm以上を確保できる粘着剤を用いることが好ましい。また、スチール板に対する粘着力は1〜7N/10mm程度とすることが好ましく、より好ましくは2〜5N/10mm程度である。自着力が低くなりすぎると、製品として使用したときに、ユーザが要求する結束性を確保できないおそれがあり、粘着力が高すぎると、テープロールから展開したときに、被印刷層が粘着剤側に付着して、剥がれてしまうおそれがある。
【0023】
粘着剤層2は、上記粘着剤を適宜溶剤に溶解又は溶解させることなく、グラビアロールコート法、オフセットコート法、ロールコート法、バーコート法、エアーコーター法等の常法で塗工後、乾燥により形成される。
粘着剤層2の厚みは特に限定しないが、好ましくは5〜50μmである。粘着剤は、基材1に直接塗工してもよいし、基材1と粘着剤との密着性を上げるための基材1にプライマー塗工した後、粘着剤を塗工してもよい。
【0024】
離型性被印刷層3は、テープロールの状態において、粘着剤層2が積層されることになる層であり、文字、図柄などが印刷される面を構成する。被印刷層3は、塗膜形成成分において、非晶性ポリエステルと非シリコーン系離型性ポリマーとを、質量比で75:25〜99.5:0.5の割合で含有する。塗膜形成成分における離型性ポリマーの割合が0.5質量%未満では、被印刷面の粘着剤層2に対する粘着力が高くなり、印刷のためにテープロールを巻き戻す際に必要とされる展開力が大きくなり、高速巻き戻しの際に、テープが破断してしまうおそれがある。一方、離型性ポリマーの含有率が25質量%を越えると、テープロールの展開力は小さくて済むが、インキの被印刷層3に対する密着力が低下しすぎて、印字部分が擦過等により欠損、脱落したり、粘着剤層に移行しやすくなる。
【0025】
非晶性ポリエステルとは、分子量(Mn)は2000〜30000程度の有機溶剤に可溶なポリエステル樹脂で、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム(好ましくはコロナ放電処理したもの)、塩化ビニル樹脂フィルム等のプラスチックフィルムに対して接着性を有し、塗膜を形成することができる。本発明で使用する非晶性ポリエステルは、ガラス転移点−20〜80℃が好ましく、より好ましくは0〜70℃である。また、水酸基価3〜50KOHmg/g、酸価6KOHmg/g以下が好ましく、より好ましくは水酸基価5〜20KOHmg/g、酸価2KOHmg/g以下のものが好ましく用いられる。
【0026】
非シリコーン系離型性ポリマーとは、粘着剤に対する室温での剥離力1.5N/25mm以下、好ましくは1.0N/25mm以下、より好ましくは0.5N/25mm以下のものをいい、粘着シートにおいて、剥離コート用ポリマーとして公知のもの、例えば、長鎖アルキル系、マレイミド系共重合物、マレアミド系共重合物、フッ素系等を用いることができるが、非晶性ポリエステルとの相溶性に優れているという点で、離型性ポリマーの含有率が高くなる場合には、マレイミド系共重合物、マレアミド系共重合物が好ましく用いられる。
【0027】
被印刷層3は、さらに硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤を含有することで、被印刷層3の基材1への密着力が増大し、テープロールの高速巻き戻し時や大きい力で展開したときに、被印刷層3が粘着剤層2に付着して剥がされるのを防止することができる。硬化剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、エポキシ樹脂などを用いることができる。基材の種類等に応じて適宜選択すればよく、例えば、基材がポリエステルフィルムの場合には、カルボキシル基、水酸基と架橋反応可能なイソシアネート系化合物を硬化剤として用いることが好ましい。
【0028】
被印刷層3の塗膜形成成分としては、非晶性ポリエステルを少なくとも75質量%含有し、離型性ポリマーとの割合が上記範囲内にあることを要件に、有機溶剤可溶なオレフィン系ポリマーなどの他のポリマーを含有してもよい。
【0029】
溶剤としては、塗膜形成成分(非晶性ポリエステル、離型性ポリマー、その他のポリマー)を溶解できるものであればよく、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族化合物;メチルエチルケトン等のケトン類;シクロへキサン、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル類などを用いることができる。非晶性ポリエステルと離型性ポリマーを別々の溶剤に溶解させておき、使用時に両者を混合する2液型としてもよい。
【0030】
塗工液におけるポリマーと溶剤の含有比率は、特に限定しないが、ポリマー:溶剤=1:99〜40:60(質量比)とすることが好ましく、より好ましくは5:95〜20:80である。離型性被印刷層に対する粘着剤層の180°自背面粘着力は、1.5N/10mm未満であることが好ましく、より好ましくは1N/10mm以下であることが好ましい。1.5N/10mm以上では、展開に必要な力が大きく成りすぎて、使用時にテープロールから剥がすときに重く感じられる。
【0031】
以上のような構成を有する粘着テープは、基材となるフィルム原反の片面に粘着剤を塗工し、反対側の面に離型性被印刷層用組成物を塗工して、それぞれ粘着剤層2、離型性被印刷層3を形成した後、製品用小巻ロールとしての幅6〜100mmの範囲内で製品の種類に応じて、好ましくは汎用性が高い幅6〜40mmにスリットして、製品用、またはオンデマンド印刷に供給される粘着テープロールを作成する。
【0032】
被印刷層3に印刷されていない粘着テープロールの状態でユーザに供給された場合、ユーザーが使用現場で適宜ゴム印、インクジェットプリンタ、熱転写プリンタなどを用いて文字、図柄などを印刷することができる。粘着テープロール供給者の方で、テープロールを巻き戻して被印刷層3に印刷した後、再び巻回して、印刷された製品用小巻ロールとして、ユーザーに提供してもよい。
【0033】
オンデマンド印刷可能な上記粘着テープロールは、離型性被印刷層3が粘着剤層2に対して離型性を有しているので、高速印刷のための巻き戻し、引張りに耐えることができる。
【0034】
〔オンデマンド印刷方法〕
次に、上記製品用小巻の粘着テープロールを用いる本発明のオンデマンド印刷方法について説明する。
【0035】
本発明のオンデマンド印刷方法は、上記本発明の粘着テープにオンデマンド印刷する方法であって、前記被印刷層が上面となるように粘着テープを引出し、着色剤として染料を使用し、溶剤が低沸点系有機溶剤である速乾タイプのインクで印刷した後、再び粘着テープを巻取ってテープロールとする。前記印刷は、前記インクを付着させた版行で前記被印刷層に押印することにより行なう方法であってもよいし、インクジェットプリンタを用いて行なってもよい。版行を使用する場合では、同一文字、絵柄を印刷する場合、設備費用等、コスト的に有利である。一方、インクジェットプリンタは、少量多品種のデザイン印刷にも迅速に対応できる。
【0036】
版行を用いる本発明のオンデマンド印刷する方法の一実施形態について、図3に基づいて説明する。
印刷前の粘着テープロール10が供給用ローラ11に回転可能にセットされ、粘着テープTの先端は巻取りローラ12に、被印刷層3が上面となるように支持され、粘着テープTを巻取るようになっている。供給用ローラ11と巻取りローラ12との間には、オンデマンド印刷のための版行20がテープTにむけて昇降できるように、セットされている。版行上昇位置には、インク溜り21がセットされていて、版行20の上昇位置において、版行20が180℃反転することで、版行20にインクを付着させることができるようになっている。このように、版行20が昇降、インク付着動作を繰返し行なうことで、粘着テープTの展開から巻回までの一連の動作過程で高速印刷することができる。
尚、図3の装置において、必要に応じて、熱風乾燥機が版行取付け位置と巻取りロール部12との間に設置されていてもよい。
【0037】
版行20としては、フレキソ版を用いることができ、安価なゴム印を使用することもできる。従って、1〜数個といった製品用小巻ロールにも多大なコストアップを招くことなく、対応可能である。
【0038】
インクとしては、染料タイプの油性の速乾性インクを用いることが好ましい。すなわち、着色剤として染料を使用し、溶剤として、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;酢酸エチル等のエステル類;アセトン等のケトン類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素等の低沸点有機溶剤を用いたインクを用いることが好ましい。
【0039】
着色剤として染料を使用するのは、顔料、特に無機顔料と比べて染料の方が被印刷層に対する接着力が優れているからである。このことは、離型性ポリマーが20質量%以上含まれる被印刷層3に対して顕著であり、印字部の十分な定着性の確保のためには、染料系インクを用いることが好ましい。また、顔料タイプのインキでは、乾燥硬化後の印字部が硬くなる傾向があり、巻回操作において、印字部に割れやひびが生じやすく、ひどい場合には、巻回体の状態において、印字部分の一部が粘着剤層2に移行してしまう場合があるのに対し、染料系インクでは、染料が被印刷層に浸透でき、印字部の割れ、ひびが生じにくい。
また、離型性被印刷層3は溶剤を吸収しないので、揮発系溶剤を用いることにより、テープを巻き戻し、巻回しながら、連続印刷することを可能にしている。さらに、被印刷層3にはじかれないように、油性インキを用いることが好ましい。
【0040】
染料としては、有機溶剤可溶性染料で、分散染料、建染塗料、ソルベント染料、アゾイック染料、硫化染料などを用いることができ、必要に応じて、ビヒクルに対する分散性、溶解性改善のために、表面処理されていてもよい。
【0041】
インクに含まれる接着成分としては、塩化ビニル・酢酸ビニル系、ポリエステル系、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アマニ油等の植物油などを用いることができる。
【0042】
インクには、さらに、必要に応じて、粘度調整剤、流動性調整剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0043】
以上のようなインクを用いた本発明の印刷方法によれば、被印刷層3は離型性を有しているので、高速で巻取りローラにより、粘着テープを引張り、展開、巻回しながら印刷することができるので、製品用小巻ロールの状態で、高速連続印刷することができる。従って、1〜数個といった少量多品種の小ロット印刷の粘着テープロールを、フレキソ版、更にはゴム印を作成するだけで対処することができ、中ロット印刷のときと同程度のコストで行なうことができる。
【0044】
〔オンデマンド印刷された粘着テープロール〕
本発明のオンデマンド印刷された粘着テープロールは、上記本発明の粘着テープの被印刷面に上記本発明のオンデマンド印刷方法によりオンデマンド印刷したテープロールである。
【0045】
すなわち、基材の一面に粘着剤層が設けられ、該基材の他面に離型性被印刷層が設けられた粘着テープを、前記粘着剤層が内側となるように巻回してなる粘着テープロールであって、前記被印刷層は、非晶性ポリエステルと非シリコーン系離型性ポリマーとが、質量比で非晶性ポリエステル:離型性ポリマー=75:25〜99.5:0.5の割合で含有されていて、前記被印刷層には、絵柄、文字が押印されている。
【0046】
前記被印刷層に形成されている絵柄、文字は、着色剤として染料を用いたインク(染料系インク)で印刷されていることが好ましい。着色剤として顔料を用いたインク(顔料系インク)よりも染料系インクの方が被印刷層への浸透が可能となり、絵柄、文字の定着性に優れているからである。染料系インクとしては、上記オンデマンド印刷方法で例示したような染料系インクを使用できる。
【0047】
前記離型性被印刷層には、さらに硬化剤が含有されていることが好ましい。硬化剤を含有する被印刷層は、基材との密着力が増大し、より高速の巻き戻しや、長期間の放置に対しても、粘着テープロールの展開時に、被印刷層が粘着剤側に移行することを抑制できる。硬化剤としては、上記オンデマンド印刷可能な粘着テープで例示したような硬化剤を使用することができる。すなわち、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ樹脂などを用いることができ、これらのうち、基材としてポリエステルフィルムを用いた場合には、イソシアネート系化合物が好ましく用いられる。
【0048】
前記基材としては、上記本発明の粘着テープの基材と同様のものを使用することができ、好ましくはポリエステルフィルム又はポリオレフィンフィルムであり、より好ましくはポリエステルフィルムである。また、このオンデマンド印刷された粘着テープロールは、それ自体で製品として流通されることから、前記基材の幅は、一般に6〜100mmであり、市場の需要が高い幅10〜40mmにも対応できる。
【0049】
本発明のオンデマンド印刷された粘着テープロールは、具体的には、図4に示すように、被印刷層3上に印字部5が形成されることになる。テープロール状態では、オンデマンド印刷された印字部5には、保護層などが積層されることなく、粘着テープの粘着剤層2が積層された状態となる。しかしながら、印字部5は被印刷層3に密着しているので、特に染料系インクで印刷されている印字部5の被印刷層3に対する定着力は優れているので、高速巻き戻し時や、使用時に大きな力で展開したときでも、粘着剤層2にインクが移行して文字、図形等が欠落、剥離したりすることはなく、判別可能な状態で保存されている。さらに、硬化剤を含有した被印刷層では、被印刷層3と基材1との密着性が増大して、耐久性あるオンデマンド印刷されたテープロールが得られる。従って、オンデマンド印刷された粘着テープロールが、ユーザー側で長期にわたって使用されるような場合、硬化剤を含有させた被印刷層を有するテープロールが好ましい。
【0050】
尚、粘着テープとして図2に示す態様のものを用いてもよく、この場合、図5に示すように、基材1と粘着剤層2との間に、印字部4が形成されている本発明の粘着テープの被印刷層3上に、オンデマンド印刷された印字部5が形成された粘着テープロールとなる。
【実施例】
【0051】
〔測定評価方法〕
(1)印字性
粘着テープの被印刷面に、ゴム印にインクをつけて押印し、印字がされるかどうかを目視で判断し、印字された場合を「○」、印字できなかった場合を「×」とした。
(2)印字部の耐擦過性
ゴム印で押印した後、印字部分を爪で擦り、インクの割れ、剥がれの状態を確認した。インクの剥がれ、割れが認められない場合は「○」、認められた場合は「×」とした。
【0052】
(3)耐粘着層移行性
ゴム印で押印した後、印字部分に粘着テープ片の粘着剤層を貼付け、20分放置した後、粘着テープ片を剥がした後、印字部の状態を目視で観察した。印字部が鮮明に残っている場合を「○」、印字部が残っているが、薄くなって読みにくくなっている場合を「△」、印字部の一部〜全部が消失していた場合を「×」とした。
【0053】
(4)粘着テープの巻き戻し性
被印刷層に粘着層を貼付けて30分放置した後、180°自背面粘着力を剥離速度300m/分にて測定した。自背面粘着力が1.60N/10mm以上の場合は、手で展開したときに重く感じるので「×」、1.00〜1.6N/10mmの場合を「○」、1.0N/10mm未満の場合を「◎」とした。
【0054】
(5)オンデマンド印刷したテープロールの耐久性
オンデマンド印刷したテープロールを、所定の巻き戻し力で巻き戻し、印字の剥がれ、被印刷層剥がれなどを目視で観察した。被印刷層の剥がれがなく、印字部分も欠けがない場合を「○」、被印刷層の一部が剥がれて欠けたり、印字部が薄くなっているが文字が判読可能な場合を「△」、被印刷層の剥がれあるいは印字部の欠けにより、印字部が判読できない場合を「×」とした。
オンデマンド印刷したテープロールの巻戻し性を、製造直後、10日放置後、30日放置後、60日放置後について調べた。
【0055】
〔粘着テープの被印刷層、インクの種類と印刷性〕
(1)インキの種類
下記の顔料タイプと染料タイプのインクを用いた。
顔料タイプインク:ユニオンコーポレーション株式会社製のエアロインキ#628を用いた。速乾タイプのインクで、着色剤として顔料(黒)を使用している。
染料タイプインク:ユニオンコーポレーション株式会社製のエアロインキ#8300を用いた。速乾タイプのインクで、着色剤として染料(黒)を使用ている。
【0056】
(2)被印刷層用塗工液の調製
表1に示す割合で、非晶性ポリエステル(東洋紡績株式会社の「バイロン」(商品名))を溶剤(メチルエチルケトン及びトルエン)に溶解した溶液Bと、離型性ポリマー(一方社油脂工業株式会社製のマレアミド系離型剤であるピーロイル81(マレアミド系共重合物)を溶剤(トルエン)に溶解した溶液Aとを混合して、被印刷層に含有されるポリマー中の非晶性ポリエステル含有率(PET%)70〜100質量%の塗工液S1〜S9を調製した。S9は、S4に硬化剤として、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業株式会社社製のコロネートL45E)を添加したものである。尚、離型性ポリマーの含有率が30質量%を越えるものでは、非晶性ポリエステルとの相溶性の点から、均一塗工液を調製することは困難であった。
【0057】
【表1】

【0058】
(3)粘着テープの作製及び評価
基材として、フタムラ化学株式会社製の太閤ポリエステルフィルムFE2002(厚み25μm両面コロナ放電処理タイプ、幅230mm)を使用した。このPETフィルムの片面にゴム系粘着剤(JIS Z0237に基づくスチール板粘着力:4〜5N/10mm)を塗工し、厚み25μmの粘着剤層を形成した。反対面に、上記で調製した被印刷層用塗工液S1〜S9を塗工して、厚み1μmの被印刷層を形成し、粘着テープT1〜T9を作製した。作成した粘着テープを所定幅に調整し、巻き戻し性を上記評価方法に基づいて評価した後、顔料タイプインキ及び染料タイプインキを用いてゴム印で印字し、上記評価方法に基づいて、印字性、印字部の耐擦過性、耐粘着剤移行性を測定、評価した。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
表2からわかるように、離型性ポリマーの割合が小さくなるのに伴って、巻き戻し性が低下し、使用上、問題なく展開できるためには、0.5質量%以上、離型性ポリマーを含有させることが必要であることがわかる。
表2からわかるように、顔料タイプのインクを用いて印刷した場合、印字部の被印刷層に対する密着性が弱く、耐粘着層移行性を満足することができなかった。特に、被印刷層におけるポリマー成分のうち、離型性ポリマーの含有率が20質量%以上では印字されても、印字部がひび割れするなど、擦った程度で剥がれてしまった。染料タイプのインクを用いた場合、離型性ポリマーの含有率が30質量%未満では、印字部の耐粘着層移行性を満足することができた。
【0061】
〔オンデマンド印刷した粘着テープロールの作製〕
上記粘着テープの場合と同様にして、基材としてフタムラ化学株式会社製の太閤ポリエステルフィルムFE2002(厚み25μm両面コロナ放電処理タイプ、幅230mm)を使用し、片面に上記で使用したゴム系粘着剤(JIS Z0237に基づくスチール板粘着力4〜5N/10mm)を塗工して、厚み25μmの粘着剤層を形成した。反対面に、上記で調製した被印刷層用塗工液S4及びS9を塗工して、厚み1μmの被印刷層を形成し、形成した被印刷層に、上記で用いた染料タイプインクを使用して、図3に示す印字装置を用いてゴム印で印字して、テープロールR1、R2を作製した。これらのテープロールは、いずれも、JIS Z0237に準じての高速巻き戻し力(巻き戻し速度60m/分)に必要な力は、2〜2.5N/10mmであった。作製したオンデマンド印刷したテープロールについて、上記評価方法に基づいて、耐久性を測定評価した。結果を表3に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
表3からわかるように、硬化剤を含有していないS4を用いたテープロールR1は、製造直後の状態では展開しても、印字部の剥がれ、欠けは認められなかったが、10日放置後では印字部を含む被印刷層の一部が粘着剤層に移行し、30日放置後では被印刷層の大部分が粘着剤層に移行してしまった。
一方、硬化剤を含有するS9を用いたテープロールR2では、2ヶ月放置しても、展開時に、印字部、被印刷層の剥がれは認められなかった。従って、オンデマンド印刷後、長期間にわたって使用されるような態様では、硬化剤を含有させた被印刷層を採用することが好ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の粘着テープ及び印刷方法によれば、製品用の小巻ロールの状態で連続的に高速印刷することができるので、1〜数個といった多品種小ロット印刷に対応でき、さらにはユーザが直接、必要に応じてオンデマンド印刷することもできる。また、野菜名といった汎用事項の大量印刷と、個々の農家名といったオンデマンド印刷を併用することができるので、汎用事項を印刷した小巻粘着テープロールに、必要に応じて、追加のオンデマンド印刷を行なうといった種々の要求に応えた粘着テープロールを供給することができる。従って、大幅なコストアップを招くことなく、経済的なオンデマンド印刷が要求される粘着テープの分野に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】オンデマンド印刷前の粘着テープの構成を示す図である。
【図2】オンデマンド印刷前の粘着テープの他の実施形態の構成を示す図である。
【図3】本発明の印刷方法を説明するための概略図である。
【図4】オンデマンド印刷後の粘着テープの構成を示す図である。
【図5】オンデマンド印刷後の粘着テープの他の実施形態の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 基材
2 粘着剤層
3 被印刷層
4 印字部
5 オンデマンド印字部
20 版行

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一面に粘着剤層が設けられ、該基材の他面に離型性被印刷層が設けられた粘着テープを、前記粘着剤層が内側となるように巻回してなる粘着テープロールであって、
前記被印刷層は、非晶性ポリエステルと非シリコーン系離型性ポリマーとが、質量比で非晶性ポリエステル:離型性ポリマー=75:25〜99.5:0.5の割合で含有されていて、
前記被印刷層には、インクで絵柄、文字が印刷されていることを特徴とするオンデマンド印刷された粘着テープロール。
【請求項2】
前記インクは、着色剤として染料を含有している請求項1に記載の粘着テープロール。
【請求項3】
前記被印刷層には、さらに硬化剤が含有されている請求項1又は2に記載の粘着テープロール。
【請求項4】
前記非シリコーン系離型性ポリマーは、マレアミド又はマレイミド系共重合物である請求項1〜3のいずれかに記載のオンデマンド印刷された粘着テープロール。
【請求項5】
前記基材は、ポリエステルフィルム又はポリオレフィンフィルムである請求項1〜4のいずれかに記載のオンデマンド印刷された粘着テープロール。
【請求項6】
前記基材と前記粘着剤層との間には、印字部が介在している請求項1〜5のいずれかに記載のオンデマンド印刷された粘着テープロール。
【請求項7】
前記粘着テープは、幅6〜100mmである請求項1〜6のいずれかに記載のオンデマンド印刷された粘着テープロール。
【請求項8】
基材の一面に粘着剤層が設けられ、該基材の他面に非晶性ポリエステルと離型性ポリマーとが、質量比で非晶性ポリエステル:離型性ポリマー=75〜99.5:25〜0.5の割合で含有されている離型性被印刷層が設けられた粘着テープを、前記粘着剤層が内側となるように巻回してなる粘着テープロールの前記被印刷層に、オンデマンド印刷する方法であって、
前記被印刷層が上面となるように粘着テープを引出し、溶剤が低沸点系有機溶剤である速乾タイプのインクで印刷した後、再び粘着テープを巻取ってテープロールとするオンデマンド印刷方法。
【請求項9】
前記インクは、着色剤として染料を含有している請求項8に記載の粘着テープロール。
【請求項10】
前記印刷は、前記インキを付着させた版行でをつけた版行で、前記被印刷層に押印することにより行なわれるオンデマンド印刷方法。
【請求項11】
前記版行はゴム印である請求項10に記載の印刷方法。
【請求項12】
前記粘着テープは、幅6〜100mmである請求項8〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
幅6〜100mmの基材の一面に粘着剤層が設けられ、該基材の他面に離型性被印刷層が設けられた粘着テープであって、
前記被印刷層は、非晶性ポリエステルと離型性ポリマーとが、質量比で非晶性ポリエステル:離型性ポリマー=75:25〜99.5:0.5の割合で含有されている、オンデマンド印刷可能な粘着テープ。
【請求項14】
前記被印刷層には、さらに硬化剤が含有されている請求項13に記載の粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−179719(P2009−179719A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20097(P2008−20097)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000142034)株式会社共和 (12)
【Fターム(参考)】