説明

オンライン弁診断を実行するための方法、システムおよび記憶媒体

【課題】通常の弁オペレーション期間における弁診断を行うための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】オンラインで弁診断に必要なステップ応答、摩擦およびスプリングレンジといった弁の特性に関する情報を、プロセスが進行中に測定する。これら弁情報は、プロセスを制御する制御信号に弁が応答し一連の逐次動作をする間に取得され制御器に送られる。制御器は、弁情報から弁の特性を決定しアラーム、分析結果、レポートの形式でユーザに対して表示するので、オンラインで弁の診断が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
磨耗、環境、経年、アプリケーションの失敗(misapplication)、あるいは製造上の欠陥によって、プロセス産業で用いられる制御弁は、誤作動または欠陥を生じる。これらが誤作動を生じた場合、生産性が減少する結果となる。欠陥を生じると、プロセスがシャットダウンすることが多い。大規模な精製所、化学プラントあるいは発電所において、これらの誤作動、欠陥をもたらす結果は、いずれも重大である。プラントのオペレータは、これらの問題がプラントの生産性を妨害する前にバブルオペレーションの問題を探知する方法に関心を持ってきた。
【0002】
弁において生じる通常の問題は、シートの磨耗あるいはダメージ、ステムダメージ、ステムの腐食、ステムの磨耗、パッキングの磨耗、リンケージの問題/欠陥、アクチュエータスプリングの問題/欠陥、およびアクチュエータの仕切版の欠陥である。これらの問題の多くは、弁を解体し、部品を検査しなくては正確には特定できない。これは、弁診断の通常の方法であるが、非常にコストのかかる解決法である。
【0003】
近年、オペレータは、通常の問題の多くを弁が完全に構築され、プロセスラインに入っている時に[但し、プロセスはプラントがシャットダウン(shutdown)している間のように機能していない時に]行うテストから推測し始めている。弁の「テスター」は、弁にセンサを付け、測定を行うように作られている。最も一般的な測定は、ポジショニングの誤差、正確性、応答時間(response time)、オーバーシュート(overshoot)、スプリングレンジ(spring range)、および摩擦(friction)を含む。これらのテストを実行するには、弁にセンサが取り付けられる必要があり、弁は、その範囲の大半を通じてストークされなければならない。このことが、プラントオペレーション中にテストを実行することを妨げている。
【0004】
弁オペレーションデータを集めるためのデータ集積システムの使用は、ある程度可能であるが、特定の弁診断アプリケーションに広く用いることはできなかった。より多くの場合、データ集積システムデータは、プロセスオペレーションおよびプロセスチューニング全般を検査するために用いられてきた。弁のセットポイント(setpoint)および弁の位置(position)は、SCADAシステムまたは制御システムを用いて利用可能となっていた。
【0005】
より最近では、データ集積手段のいくつかは、適正なポジショナー(positioner)の形で、弁自体に移設されている。弁のセットポイントおよび位置を制御ルームに返送されるアナログ信号により計測する代わりに、これらの計測は弁で行われ、いくつかの標準通信プロトコルのうちの一つを用いたデジタル形式により、制御ルームに送られる。適正なポジショナーのベンダーの中には、ポジショナーがいくつかの診断テストを行うために弁を制御できるようにするべく、ポジショナーのファームウェアに診断アプリケーションを含有させる者もいる。これらのテストは、応答時間テスト、ステップ応答テスト、アクチュエータ特徴(actuator signature)および摩擦分析を含む。しかし、2、3の例外を除いて、これらのテストはプロセスが動作していない時に行わなければならない。
【0006】
プロセスがまだ運転している時に実行し得るテストには、想定し得る通り関心が高かった。少なくとも、ある一つのベンダー(vendor)は、診断情報を集めるべく、ポジショナーのファームウェア(firmware)にいくつかのテストを設定した。このベンダーは、通常のオペレーションの間、または、弁がランニングオペレーションによって許容される少量だけ人工的に動かされるオペレーションの間にこれらのテストを行い、そして、その弁についての情報を供給できるようにするために、制御ルームにおいてソフトウェアと協働する特別なポジショナーの使用を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようにして、通常の弁オペレーション期間における弁診断を行うための方法およびシステムの技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施例は、オンライン弁診断方法およびシステムを含む。ステップ応答、摩擦およびスプリングレンジといった弁特性が、弁がプロセスにおいて動作している間に決定される。弁情報が、弁が一連の逐次動作を通じて動作しているプロセスを制御する制御信号に応じて弁が動作している間に取得される。そして、弁特性が弁情報から決定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の実施例における弁診断システムを示す。プロセス制御器(process controller)10は、通常のプロセスのオペレーション中に、弁位置を設定するために用いる制御信号を発生させる。ポジショナー12は、プロセス制御器10からの制御信号に反応して、弁14に通信する。ポジショナー12は、電気的制御信号を解析し、アクチュエータを制御して、弁14の位置決めをする。空気信号が、制御信号に対じて、弁の位置決めをするために、弁14に送られ、フィードバック信号が、ポジショナー12に供給される。フィードバック信号は、弁14の位置を示す。ポジショナー12は、位置フィードバック測定法を用いてアクチュエータを調整する。
【0010】
ポジショナー12は、制御器(controller)16に弁情報を伝える。弁情報は、測定されたセットポイント、測定された弁位置およびアクチュエータの圧力を含む。弁位置は、弁位置システムの実際の位置を示し、そこでは、0%は完全に閉じ、100%は完全に開いていることを意味する。アクチュエータの圧力は、弁の位置決めをするために必要なアクチュエータ内の圧力を示す。空気圧は、アクチュエータ内のスプリング、流動性フロープロセスの力および摩擦により戻される。
【0011】
制御器16は弁診断を実行するルーチンを実行する。制御器16は、マイクロプロセッサに基づく制御器であり、そのルーチンは、制御器により実行されるコンピュータプログラム内で実施される。制御器16は、アプリケーション特有の集積回路(ASIC)、フィールドプログラムロジックアレイ(FPFA)のような、様々な技術を用いて実施される。制御器16は、弁14から分離されているように示されているが、制御器16は、集積制御器として弁14内に埋め込まれることが理解される。
【0012】
オペレーションにおいて、制御器16は、弁14からの弁情報を監視し、弁診断を実行する。通常のオペレーション中は、弁14に送られたセットポイントの変更に起因して、弁位置に若干の変化が生じる。セットポイントは、0%が閉鎖、100%が開放を意味するパーセンテージに変換される信号の値である。弁14はセットポイントの変化に反応し、弁のステムをより開放したり、より閉じたりする。制御器16は、このデータを、誤差、オフセット、ステップ反応(ラグ、応答時間(T86)及びオーバーシュートを含む。)、発振、摩擦及びスプリング範囲のような特性を計算するために用いる。図1に示されているように、これらの計算された特性は、アラーム、レポートそして/または分析をユーザに提供する。本発明の実施例は、ステップ応答、摩擦、そしてスプリングレンジの導出を含む。
【0013】
ラグに関して、制御器は、セットポイントの変更とその変更に対する位置のレスポンスとの間の全ラグを推定する。そのラグは、セットポイントと遅延した位置との間の誤差を計算することによって決定される。その計算されたラグは、最小自乗誤差を生むラグである。そのラグは、誤差およびオフセットを計算するために用いられる。
【0014】
誤差とオフセットは、現存する弁診断システムにおいてなされる通常の測定値である。しかし、セットポイントと位置との間の差としての、直接計算された誤差は、応答時間によって大きく影響される望ましくない特性である。本発明の実施例においては、制御器16は、セットポイントと遅延した位置との間の差として誤差を決定し、この望ましくない特性は、最小化される。制御器16は、オフセットを、誤差の平均として算出する。遅延した位置を用いなければ、オフセットは、同様の望ましくない特性を有する。
【0015】
制御器16は、また、弁位置スペクトル周波数を用いて、発振およびリミットサイクリングを特定する。ここでさらに詳細に説明するように、制御器16は、標準フーリエ技術を用いてそのスペクトラムを取得する。
【0016】
標準診断テストは、セットポイントを急激に変化させ、弁がどのように反応するかを調べるためのテストである。典型的には、その弁は、直ちにそのセットポイントの変化に追随するが、いくらかの時間がかかる。開始ポイントから新たなセットポイントまでの86%だけ弁が移動するのにとる時間は、T86と定義され、標準の測定値である。一旦その弁が新たなセットポイントに到達すると、正しい位置に戻る前に、そのセットポイントを過ぎて移動を続ける。これは、オーバーシュートと呼ばれ、別の標準の測定値である。
【0017】
標準の弁オペレーションの間、そのセットポイントは、典型的には、急激な動作を行わない。制御器16は、標準の、弁14のインプロセスのオペレーションにおいて生じる逐次動作からステップ応答を推測するために2つの技術を用いる。第1の技術は、セットポイントの変更に対する弁レスポンスのモデルを構築する。このモデルを用いて、制御器16は、実際のセットポイントが与えられたモデルによってなされる予測値が、その予測値と実際の位置との間の誤差を最小化するまで、そのモデルパラメータを調整する。これらのパラメータを持つモデルは、次に、セットポイントにおける「ステップ」に対して適用され、当業者にとってなじみのある形式でステップ応答のグラフを生成する。一つの実施例においては、用いられるモデルは2つのパラメータを有し、一つは、主に応答時間に影響を与え、一つは、主にオーバーシュートに影響を与える。そのアルゴリズムは、ここで詳細に説明される。このモデルの結果から、制御器16は、T86とオーバーシュートを予測する。
【0018】
第2のステップ応答方法は、セットポイントの各少量の移動が弁14からの一連のレスポンス(オーバータイム)の原因となるという仮定を含んでいる。弁位置のオーバータイムは、セットポイントにおける各変更の全てからのレスポンスの総計である。各セットポイント変更に対する一連のレスポンスは、ウェーブレットとして知られている。最小自乗誤差を持つデータに適合するウェーブレットは、一連の線形方程式の解により決定される。セットポイントステップにウェーブレットを適用することによりステップ応答を推定でき、それからT86とオーバーシュートを推定することができる。ウェーブレットモデル抽出の詳細についてここで説明する。
【0019】
摩擦は、弁ステムを動かすために必要な力である。弁については、摩擦は、必要となるアクチュエータ圧力あるいはアクチュエータ圧力割合として測定されることが多い。摩擦は、典型的には、アクチュエータの特徴の間に、アクチュエータ圧力を増加し、次にアクチュエータ圧力を減少させることによる、位置のヒステリシスを測定する。2つの結果を示したカーブの差は、摩擦(ステム摩擦に全てのデッドバンドあるいは他のシステム内の摩擦を加えたもの)に比例する。
【0020】
オペレーション中の弁が、通常の少量の移動を行う場合、これらの移動は小さいヒステリシスループ周辺を移動する。仮に弁のスプリングレンジが知られているとすると、位置の各サンプル対圧力が、スプリングレンジラインの傾斜を用いることによって、圧力軸に投影される。スプリングレンジは、弁を閉鎖位置及び開放位置に設定するアクチュエータ圧力に対応する。これらの圧力は、スプリングレンジとして知られている、なぜなら、これらはアクチュエータ内部のスプリングによって決定されるところが大きいからである。
【0021】
この結果、摩擦を示すゾーンを通じてフラットであり、フラットエリアの外では、通常の分布のように次第に減少する、「拡張された通常の」分布をもたらす。制御器16に用いられた技術は、スプリングレンジの傾斜を用いて圧力軸にデータを投影し、90%百分位及び100%百分位の値を見つける。2つの値(圧力の値)の差は、摩擦の推定値である。この技術は、各ヒステリシスループのトラッキング及びデータへのラインの当てはめは、全く必要なく、従って、非常にロバストである。
【0022】
サンプルデータ中の位置の変更が小さい場合、想定されるスプリングレンジの誤差は、計算された摩擦にほとんど影響を与えない。その位置レンジがより広い場合、使用する実際のスプリングレンジを計算することが可能となる。
【0023】
摩擦を計算する2つの更なる方法が実装される。これらの方法は、圧力測定を必要とせず、そのために、より広く用いられ得る。制御システム10は、典型的には、位置に対して極めて小さな修正を行う。これらの修正が摩擦に対して(スプリングレンジにおける割合において)小さい場合、弁は実際にはその変更に対して反応しない。次に、制御システム10は、弁が最終的に反応するまでセットポイントを変更し続ける。弁が最終的に動くまで必要とされるセットポイントの変更は、摩擦の割合である。第1の方法は、ステップ応答に関して上述したものと同様のモデリング技術を用いる。そのモデルは、摩擦をパラメータとして持ち、そのモデルは、任意の方向におけるセットポイントに対する変更の積分が、その摩擦パラメータを超える時まで、位置における変更を計算せず、摩擦パラメータを超えると、標準比例積分モデルが適用される。
【0024】
第2の方法は、セットポイントの変化の分布に対する位置の変化の分布を計算する。その位置分布において、セットポイントのピークより高い位置である大きなピークが存在する場合、それは、摩擦に起因するリミットを表している。セットポイントの変化の分布から位置の変化の分布を減じ、摩擦を決定するピークを見つける。
【0025】
ヒステリシスと、セットポイントの変更の間に生じる、圧力と位置との不一致に起因して、位置対圧力のデータを、スプリングレンジを推定するための一つの線に当てはめるることは難しい。制御器16によって実行される本発明の実施例は、様々なスプリングレンジを想定し、サンプルされたデータの全てを圧力軸に対して投影する。計算されたスプリングレンジは、投影されたデータの分散を最小化するスプリングレンジである。その弁の動作が5%以上である場合、この方法は、通常、スプリングレンジの良好な推定を行う。
【0026】
制御器16によって実行されるプロセスに関するさらなる詳細が説明される。発明の実施例は、地震探査において用いられるウェーブレットと類似するプロセスを用いる。s=s,s,s,s,...を位置パーセント単位で表現された入力(セットポイント)信号とし、p=p,p,p,p,...を弁位置とする。図2Aは、時間についてのセットポイントと位置を示している。信号の各変化は、拡張された出力またはウェーブレットω=ω,ω,ω,...ω..を返す、弁に対するインパルスを示すものとし、数学的に、
【数1】

のように表現される。
両辺を積分して、
【数2】

を得る。
【0027】
i=i,i,i,...を(入力)信号の時導関数であるとし、o=o,o,o,...を(出力)信号の時導関数であるとする。図2Bは、セットポイントと位置の導関数を示している。上記の等式の畳み込みを、以下のようにして表すことができる。
【数3】

【0028】
これは、従属変数i,ik−1,...、独立変数o、そして、係数ω,ω,...ωを持つ線形等式である。多くの協働するサンプルがあるため、その係数の最小自乗を見い出すことができる。すなわち、その式を用いて、iから推定されるoの最小誤差を与える係数のセットを見いだす。
【0029】
最小自乗式は、各独立変数による等式を乗算して、n+1の線形等式のセットを形成するために加算することによって作られる。
【数4】

【0030】
クロス積Σx・yk−nについてシンボルCxy(n)を用い、A(n)はクロス積(自己相関)Σx・xk−nであるとする。これらは、クロス相関と自己相関関数である。その等式は、以下のように記述できる。
【数5】

【0031】
行列の形式で記述すると、以下のようになる。
【数6】

【0032】
これは、普通の行列法で解くことができ、図2Cで示されるようなウェーブレットがえられる。制御器16は、列交換によるガウスジョルダン消去法を用いて解いて、ウェーブレットを得る。
【0033】
ステップ入力の導関数は、インパルスである。そのウェーブレットからステップ応答モデルを得るため、ウェーブレットは、単一のインパルスを用いて畳み込まれる。それは、ある定数によって乗算されたウェーブレットに相当する。この畳み込みは、図2Dに示される。ステップ応答出力(位置)は、ウェーブレットの積分掛ける定数である。
【0034】
発明の他の実施例は、比例積分(PI)モデルを用いるが、本発明の実施例は、このタイプのモデルに限定されるものではない。そのモデルのパラメータは、以下のように定義される。
誤差=(セットポイントi−1−推定値i−1
推定値=推定値i−1+誤差*P+総誤差*I+オフセット
推定値=推定値i−1+誤差*P+総誤差*I+オフセット
総誤差=総誤差+誤差
【0035】
弁のオフセットが、上述したように(誤差の平均として)計算され、変数総誤差が0に初期化される。制御器16は、変数推定値と位置との間の誤差の自乗が最小となるようにPとIを決定する。その誤差の自乗を最小化することを目的として、PとIを決定するために2つの技術が用いられる。第1の技術は、各パラメータについて再帰的に動作し、誤差のあるパラメータを調整することによって誤差のローカル最小値を得る。この技術は、図3において示され、明白である。
【0036】
第2の技術は、各パラメータのとり得る値の空間においてNセクションのグリッドを生成する。誤差は、各グリッドポイントにおいて計算される。最小の誤差を有するグリッドセクションが選択され、そのグリッドがNセクションに分割され、そのプロセスは、変化の最低リミットに到達するまで繰り返される。
【0037】
弁の通常のオペレーションの間、セットポイントは、制御器10によって少し変更され、精度のよい調整がなされる。これによって、ポジショナー12がアクチュエータの圧力を少し調整することとなる。しかし、摩擦に起因して、そのアクチュエータの圧力は、弁14が実際に動く前にいくらかの量だけ増減する。圧力対位置がプロットされた場合、(スプリングレンジを示す)一つの線を辿るのではなく、そのポイントは、スプリングレンジラインの周りのバンドを辿り、そのバンドの幅が摩擦を示している。図4Aは、圧力対位置のプロットを示している。
【0038】
グラフの軸(x軸上の圧力、y軸上の位置)が、スプリングレンジラインが図4Bに示すように垂直になるように回転されると、プロセスの変更の影響を無視すると、圧力の統計的な分散は、図4Cに示すように、摩擦のバンドの外ではおおよそ標準的であり、摩擦のバンド内においては、フラットになる。制御器16は、グラフが回転された後に、ポイントの80%が配置されている圧力を見つけることによって、摩擦を推定する。図4Dに示す90%百分位の圧力と10%百分位の圧力との間の差は、2掛ける摩擦を示している。10%百分位と90%百分位(または20と80などの他の値)を用いるのは、いくつかの弁の動作は、早い場合、圧力の変化と弁の動作との間にラグを発生させるからである。これが、サンプルされた圧力―位置ポイントが通常配置される場所の外に配置される理由である。そのポイントの20%を除外することによって、良好な摩擦の推定が得られる。なぜなら、残ったポイントは、突然の動作によって影響を受けないポイントであるからである。
【0039】
制御器16は、また、弁14についてのスプリングレンジを決定する。上述したように、摩擦の計算を行うため、圧力対位置グラフの軸は、スプリングレンジラインが垂直になるように回転される。これは、摩擦の計算に用いられるおおよそのスプリングレンジを提供する。しかし、十分なデータが存在する場合には、その軸を回転することによってスプリングレンジを計算することが可能である。図5Aは、回転された圧力対位置グラフの軸を示している。スプリングレンジを計算するために、制御器16は、データポイントの分散を最小にする回転値をサーチする。図5Bは、2つの異なる軸の回転についてのデータ分布を示している。一つは、より低い分散となっている。得られる圧力値の平均は、より低いほうのスプリングレンジであり、回転の量は、勾配(そして、より上方のスプリングレンジ)を決定する。
【0040】
ラグの計算は、セットポイントからの最小総自乗誤差をもたらすラグを見つけることによってなされる。値
誤差=(セットポイント―位置i+ラグ
総自乗誤差=Σ誤差
は、許容されるレンジ内において、各ラグ毎に制御器16によって計算される。総自乗誤差が最小化される誤差が、算出されるラグである。図6は、最小の総自乗誤差をもたらすラグを決定するプロセスを示す。
【0041】
オフセットと誤差について、制御器16は、ラグが決定された後に誤差を以下のように計算する。
誤差=((Σ((セットポイント―位置i+ラグ))/ポイント数)1/2
【0042】
オフセットは、以下のように誤差の平均として計算される。
オフセット=(Σ(セットポイント―位置i+ラグ))/ポイント数
【0043】
発明の実施例は、動作するプロセスに伴うデータを取り扱うが、そのプロセス制御器の行った変更によって干渉しない。言い換えると、制御器16は、パッシブリスナーとして動作する。プラントエンジニアが介入して、プロセスを少し変更し、制御器16が良好な情報を生成した場合、そのエンジニアが何らかの変更を加えることは必要でない。実際に、制御器16によって実行されたテストは、スケジュール通りエンジニアがテストがなされたことに気づかないままに、自動的に行われる。
【0044】
発明は、典型的な実施例を参照して説明されたが、当業者にとって、様々な改変が行われ、同等のものが、その本質的な範囲を逸脱することなくその要素に代替され得ることが理解されるであろう。従って、本発明は、本発明を実行するために開示される特定の実施例に限定されるものではなく、その発明は、添付するクレームの範囲内に含まれる全ての実施例を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例における弁診断システムを示す。
【図2】ステップ応答モデルを導くプロセスを示す。
【図3】モデルパラメータを決定するプロセスのフローチャートである。
【図4】摩擦を決定するプロセスを示す。
【図5】スプリングレンジを決定するプロセスを示す。
【図6】最小誤差を生成するラグを決定するプロセスを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントプロセスにおいて動作している弁(14)についてのオンライン弁診断方法であって、
前記プラントプロセスを制御する複数の逐次のセットポイントに応答して前記弁が動作している間に弁情報を取得し、前記弁は、一連の漸次の動作を通じて動作し、
前記弁情報は、少なくとも2つのセットポイントデータ、位置データ、圧力データのうちの少なくとも2つを含み、
前記弁情報に基づいて、前記弁についての摩擦、スプリングレンジ、レスポンスラグ、応答時間及びオーバーシュートの少なくとも一つを含む診断結果データを取得する
ことを特徴とするオンライン弁診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−204264(P2011−204264A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128217(P2011−128217)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【分割の表示】特願2006−503505(P2006−503505)の分割
【原出願日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(502122473)ドレッサ、インク (24)
【Fターム(参考)】