説明

オーステナイト系ステンレス鋼の携帯型計測セット

【課題】その需要の部材がすでに一緒にコンパクトになっていて携帯にも使用にも従来より便利であるオーステナイト系ステンレス鋼の判別用計測セットを提供する。
【解決手段】オーステナイト系ステンレス鋼の判別に使用される計測セットであって、少なくとも、そのケーシングからそれぞれ陰陽二極の探針が突出している計測器を備えている携帯型計測セット、乃至、オーステナイト系ステンレス鋼の判別に使用される計測セットであって、そのケーシングからそれぞれ陰陽二極の探針が突出している計測器と、通電によってオーステナイト系ステンレス鋼を電解できる酸性溶液がボトルに入っている電解液収納瓶とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼の計測セットに関し、特にオーステナイト系ステンレス鋼のニッケル(Ni)含量による分類を判別するための携帯型計測セットに関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼は、主成分の鉄にクロムやニッケルを含有させた合金鋼であって、クロム系ステンレス鋼とクロム・ニッケル系ステンレス鋼とに大別される。
【0003】
クロム・ニッケル系ステンレス鋼は、通常、オーステナイト系ステンレス鋼と呼ばれ、その中に特に300系は耐食性にも、機械的性質にも、また溶接・加工性にも優れるため、大量に使用されて世界のステンレス鋼生産量の70%超を占めている。
【0004】
しかし、2003年以来のニッケル価格の高騰、及び、中国市場のオーステナイト系ステンレス鋼に対するデマンドが原因で、高マンガン・低ニッケルの安価な200系がどんどん市場に入っている。
【0005】
ただ、300系と200系とは性質が遥かに違うが、ともに非磁性のものであるため、見分けがつきにくく、非常に紛れやすい。もし、不当表示とされれば、業主ないし消費者の不利益につながる一方、スクラップを溶解するミルのスクラップ分別管理にも困難さを与え、世界的な問題になっている。
【0006】
製鋼業者には、300系と200系とをいろいろな鋼種から正確に選別する技術がもちろん存在しているが、その分析や選別過程が複雑であって手間がかなりかかるため、諸事万端の現場でそれらに一時に紛れないように「これは300系ではない」と簡単に且つ快速に判別できる方法やツールが重要視されている。
【0007】
従来のこのような簡易分別法としては、200系のものを「300系である」としてこれに電解・発色液を染み込ませた電解紙を乗せてから、リードで電池の両極にそれぞれ接続している2探針における陰極探針を電解紙に、陽極探針をそのものの表面の他の部分に押し付けて電解紙の発色を観察するように行われている。この方法では、200系は高マンガン・低ニッケルのものであってマンガンを多く含有しているので、発色が300系と遥かに違うので、それによって直ぐ判別できる(非特許文献1を参照)。
【非特許文献1】日刊産業新聞 新製品・新技術情報(2004年12月24日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記簡易分別法は、確かに現場での300系と200系との間の一時的な紛れを簡単に避けることができるが、やはりリードや電池、探針、電解紙、電解・発色液などをそれぞれ随時に用意しなければならないため、常に諸事万端に追われる工員に対して煩わし過ぎるので、発明者は、本発明を提供する。
【0009】
即ち、本発明は、その需要のリードや電池、探針、電解紙、乃至、その電解・発色液がすでに一緒にコンパクトになっていて携帯にも使用にも従来より便利であるオーステナイト系ステンレス鋼の判別用計測セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼の判別に使用される計測セットであって、少なくとも、そのケーシングからそれぞれ陰陽二極の探針が突出している計測器を備えている携帯型計測セット、乃至、オーステナイト系ステンレス鋼の判別に使用される計測セットであって、そのケーシングからそれぞれ陰陽二極の探針が突出している計測器と、通電によってオーステナイト系ステンレス鋼を電解できる酸性溶液がボトルに入っている電解液収納瓶とを備えている携帯型計測セットを提供する。
【発明の効果】
【0011】
前記携帯型計測セットによると、300系と200系との間の一時的な紛れを避けようとする場合、その場で簡単にオーステナイト系ステンレス鋼の表面に前記酸性溶液をおいてから、前記計測器を、陰極探針が酸性溶液の液滴内に陽極探針が表面だけにとオーステナイト系ステンレス鋼に接触させ、酸性溶液の電解による色変の度合いから直ぐオーステナイト系ステンレス鋼の判別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の上記その他の目的と特徴は以下の説明を添付図面とあわせて参照することによって明らかとなろう。なお、図中、似ている部分には、同一の参照符号を付する。
【0013】
まず、図1及び図2を参照しながら本発明の好適な実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の携帯型計測セットを説明する。
【0014】
図1に示すのは、そのセット全体の携帯時の組合形態を示す縦断面構成図である。
図示のように、該携帯型計測セットは、主として計測器1と、クリップ付き蓋2と、電解液収納瓶3とからなっている。
計測器1は、反対二端を有するペン形のケーシング10を有する。
【0015】
ケーシング10の一端(図中における右の方)から、電解するための陰陽二極の探針121、122が出ており、クリップ(21)付き蓋2は、丁度ケーシング10の該端に取外し可能についている。クリップ付き蓋2の構造を更に詳細に言うと、それは、その一端が計測器1の前記一端に外嵌できる開口20を有し、他端が閉塞となっている長筒形のものであり、該長筒形の他端の外側に更に磁性体22がついている。300系と200系とのオーステナイト系ステンレス鋼は共に非磁性のものであるため、この携帯型計測セットの電解による判別を行う前、まず該磁性体22によって「300系または200系であるか否か」及び「電解分析を行う必要があるかどうか」を簡単且つ快速に判別することができる。また、該クリップ付き蓋2が前記計測器1の一端に外嵌している場合、前記陰陽二極の探針121、122が蓋の内部周壁に沿って延在しながら互いにに並列し、その間に前記電解液収納瓶3を収納する空間を残している。
【0016】
そして、電解液収納瓶3を説明すると、蓋付きボトルであってその中に通電によってオーステナイト系ステンレス鋼を電解できる酸性溶液が入っているものである。因みに、酸性溶液として電解を促すどんな酸液を使用しても良いが、安全のために、硫酸塩溶液、例えば、硫酸マグネシウムや硫酸カリウムなどの弱い酸性溶液を使用した方が良い。
【0017】
以上は、本発明の携帯型計測セットのセット全体の構成関係を説明したが、次に、その詳細な構造を更に説明する。
【0018】
図2に示すのは、計測器1とクリップ付き蓋2の分解図である。ケーシング10の他端には、後押しプラグ101がついている。ケーシング10内には、後押しプラグ101の近くには電池室110がなる上、電池111(3V、3枚)が該電池室110に入れられると後押しプラグ101に押されて電池の陽極111Bが陽極探針122と、陰極111Aが陰極探針121と、それぞれ通路になるように構成されている。
【0019】
前記に関係する構成をもっと詳細に説明すると、ケーシング10内には、絶縁材からなる隔板103が設けられており、該隔板103の前記他端側に陽極シート162が、反対側に陰極シート161がそれぞれ設けられている。陽極探針122の内端部が、隔板103を貫通して陽極シート162と連結し、陰極探針121の内端部が、陰極シート161と連結している。また、ケーシング10内の、後押しプラグ101の前記一端側に押さえ板102が設けられている。該押さえ板102は、陰極シート161と電気的に連続している上、後押しプラグ101に押されて電池の陰極111A側を押圧することができるように構成されている。さらに、陽極シート162の前記他端側にそれを介して電池の陽極111Bと対抗するためのバネ14が設けられており、それにより、電池室110に電池111を入れられてから後押しプラグ101を付けられると、押さえ板102はバネ14に対抗しながら電池の陰極111Aと接触して陰極シート161を導通させる上、電池111を押して電池の陽極111Bをバネ14を介して陽極シート162と導通させ、陰陽二極の探針121、122を下記スイッチ13の制御に作業されるようにさせることができる。
【0020】
そして、図3に示すのは、前記スイッチ13のオフ時の説明図であり、図4は前記スイッチ13のオン時の説明図である。即ち、スイッチ13は、前記計測器のケーシング10において、探針121への電源供給を図3に示す常時オフにさせるが、図4の矢印方向に押されると、陰極シート161から延伸した導体161Aと接触し、陰極シート161と導通することができるように設置されている。
【0021】
また、前記計測器のケーシング10には、探針121への電源供給が通る発光ダイオード17(以下LEDと略記する・図1及び図2参照)が設置されている。LED17への電源供給は、陰極リード171が、隔板15を貫通して陰極シート161と電気的に連続している上、陽極リード172が、バネ14を介して陽極シート162と電気的に連続しているように構成されている。スイッチ13がオンにさせられ、且つ、陰陽二極の探針121、122が電解を行う導通状態になっている際に、LED17は光を放すので、それから陰陽両極が稼動中であるか否かを確認することができる。
【0022】
次に、本発明の使用を説明する。
クロム系ステンレス鋼(A)とクロム・ニッケル系ステンレス鋼(B1、B2)の種類は、通常、下記となる。
(A)クロム系(フェライト系及びマルテンサイト系)
(B1)クロム・ニッケル系(一般オーステナイト系;主に300系)
(B2)クロム・マンガン系(高マンガン・低ニッケル型オーステナイト系;主に200系)
このうち、(A)は強磁性体で、(B1)と(B2)は、ともに非磁性体である。
【0023】
本発明の携帯型計測セットの使用については、例えばステンレス鋼の納入を担当する工員が該計測セットを随時に携帯し、現場に仕事をする。
【0024】
現場で200系や300系のステンレス鋼を納入する場合、納入対象4に電解による判別を行う前、まず磁性体22によって「磁性あるかどうか」と先に計って「クロム・ニッケル系ステンレス鋼であるか否か」を判別し、もしクロム・ニッケル系ステンレス鋼であれば、続いて、図5をも参照するように、携帯型計測セットから電解液収納瓶3を取り出し、計測対象4の表面41に硫酸マグネシウム溶液を一滴おいてから、陰極探針121が硫酸マグネシウム溶液の液滴内に陽極探針122が表面41だけにとオーステナイト系ステンレス鋼に接触させ、硫酸マグネシウム溶液を電解させる。
【0025】
その時、図6に示すように、200系は高マンガン・低ニッケルマンガンであってマンガンを多く含有しているので、発色が300系と遥かに違う(Mn7+:赤紫色;Fe3+:黄色)ので、その色変の度合いからこの計測対象が200系であるかまたは300系であるかを直ぐ判別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
如上のように、本発明の携帯型計測セットによると、300系と200系との間の一時的な紛れを避けようとする場合、その場で簡単にオーステナイト系ステンレス鋼の表面に前記酸性溶液をおいてから、前記計測器を、陰極探針が酸性溶液の液滴内に陽極探針が表面だけにとオーステナイト系ステンレス鋼に接触させ、酸性溶液の電解による色変の度合いから直ぐオーステナイト系ステンレス鋼の判別を行うことができる。
【0027】
即ち、本発明は、その需要のリードや電池、探針、電解紙、乃至、その電解・発色液がすでに一緒にコンパクトになっているため、携帯にも使用にも従来より便利である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態に係る携帯型計測セットの縦断面構成図である。
【図2】実施の形態に係る計測器1とクリップ付き蓋2の分解図である。
【図3】携帯型計測セットにおけるスイッチのオフ時の説明図である。
【図4】前記スイッチのオン時の説明図である。
【図5】前記携帯型計測セットの使用説明図である。
【図6】前記携帯型計測セットによる電解の成分柱状図である。
【符号の説明】
【0029】
1 計測器
10 ケーシング
101 後押しプラグ
102 押さえ板
103 隔板
110 電池室
111 電池
111A 電池の陰極
111B 電池の陽極
121 陰極の探針
122 陽極の探針
13 スイッチ
14 バネ
161 陰極シート
161A 導体
162 陽極シート
17 発光ダイオード(LED)
171 陰極リード
172 陽極リード
2 クリップ付き蓋
20 開口
21 クリップ
22 磁性体
3 電解液収納瓶
4 計測鋼
41 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーステナイト系ステンレス鋼の判別に使用される計測セットであって、少なくとも、そのケーシングからそれぞれ陰陽二極の探針が突出している計測器を備えていることを特徴とする、携帯型計測セット。
【請求項2】
オーステナイト系ステンレス鋼の判別に使用される計測セットであって、
そのケーシングからそれぞれ陰陽二極の探針が突出している計測器と、
通電によってオーステナイト系ステンレス鋼を電解できる酸性溶液がボトルに入っている電解液収納瓶とを備えており、
オーステナイト系ステンレス鋼の表面に前記酸性溶液をおいてから、前記計測器を、陰極探針が酸性溶液の液滴内に陽極探針が表面だけにとオーステナイト系ステンレス鋼に接触させ、酸性溶液の電解による色変の度合いからオーステナイト系ステンレス鋼の判別を行うことができることを特徴とする、携帯型計測セット。
【請求項3】
前記計測器のケーシングは、反対二端を有するペン形のものであって、前記陰陽二極の探針はその同一端から出ており、
また、該同一端には、クリップ付き蓋が取外し可能についていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の携帯型計測セット。
【請求項4】
前記クリップ付き蓋は、その一端が前記計測器の一端に外嵌できる開口を有し、他端が閉塞となっている長筒形のものであり、該長筒形の他端の外側に更に磁性体がついており、
また、該クリップ付き蓋が前記計測器の一端に外嵌しており、前記陰陽二極の探針が蓋の内部周壁に沿って延在しながら互いにに並列し、その間に前記電解液収納瓶を収納する空間を残していることを特徴とする、請求項3に記載の携帯型計測セット。
【請求項5】
前記計測器のケーシングには、前記探針の一つへの電源供給を常時オフにさせるスイッチが設置されていることを特徴とする、請求項3に記載の携帯型計測セット。
【請求項6】
前記計測器のケーシングには、前記探針の一つへの電源供給が通る発光ダイオードが設置されていることを特徴とする、請求項5に記載の携帯型計測セット。
【請求項7】
前記ケーシングの他端には、後押しプラグがついており、
また、ケーシング内には、
前記後押しプラグの近くには電池室あり、電池が該電池室に入れられると前記後押しプラグに押されて電池の陽極が前記陽極探針と、陰極が前記陰極探針と、それぞれ通路になるように構成されていることを特徴とする、請求項6に記載の携帯型計測セット。
【請求項8】
前記ケーシング内には、絶縁材からなる隔板が設けられており、
該隔板の前記他端側に陽極シートが、反対側に陰極シートがそれぞれ設けられており、
前記陽極探針の内端部が、前記隔板を貫通して前記陽極シートと連結し、前記陰極探針の内端部が、前記陰極シートと連結しており、
また、前記後押しプラグの前記一端側に、前記陰極シートと電気的に連続している上、前記後押しプラグに押されて電池の陰極側を押圧することができるように構成された押さえ板が設けられており、
前記陽極シートの前記他端側にそれを介して電池の陽極と対抗するためのバネが設けられており、
それにより、前記電池室に電池を入れられてから前記後押しプラグを付けられると、前記押さえ板は前記バネに対抗しながら電池の陰極と接触して前記陰極シートを導通させる上、電池を押して電池の陽極を前記バネを介して前記陽極シートと導通させ、前記陰陽二極の探針を前記スイッチの制御に作業されるようにさせることができることを特徴とする、請求項7に記載の携帯型計測セット。
【請求項9】
前記酸性溶液は硫酸塩溶液であることを特徴とする、請求項2に記載の携帯型計測セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−85914(P2009−85914A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259587(P2007−259587)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(502455463)▲いえ▼聯鋼鐵股▲ふん▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】