説明

オーステナイト系薄ステンレス鋼

比較的低レベルのNiおよびMoを含み、かつ高レベルのNiおよびMoを含む特定の合金と同程度の耐食性、高温変形耐性、および成形性の特性を示すオーステナイト系ステンレス鋼組成物。オーステナイト系ステンレス鋼の実施形態は、重量パーセンテージで、最高0.20までのC、2.0〜9.0のMn、最高2.0までのSi、15.0〜23.0のCr、1.0〜9.5のNi、最高3.0までのMo、最高3.0までのCu、0.05〜0.35のN、(7.5(%C))≦(%Nb+%Ti+%V+%Zr)≦1.5、Fe、および不可避的な不純物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国合衆国法典第35編第120条に基づき、2008年2月20日提出の米国特許出願第12/034,183号の一部継続出願として優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、オーステナイト系ステンレス鋼に関する。特に、本開示は、とりわけ、付随的なレベルを超えないMo、低レベルのNi、高降伏力、および例えばT−321合金(UNS S32100)などの特定の高レベルNiのオーステナイト系合金と比べて、少なくとも同程度の耐食性および高温度特性を含む、対費用効果の高い、安定したオーステナイト系ステンレス鋼組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
オーステナイト系ステンレス鋼は非常に望ましい特性の組み合わせを示し、そのために、多岐にわたる産業用途で有用となる。これらの鋼は、Ni、Mn、およびNなどの、オーステナイトを促進かつ安定化する元素を添加することによって均衡が保たれている鉄の基本組成を有し、耐食性を向上させる、CrおよびMoなどの、フェライトを促進する元素の添加によって、室温でオーステナイト構造を維持しつつ、作られることを可能にする。オーステナイト構造は、非常に望ましい機械的特性、特に靭性、延性、および成形性を鋼にもたらす。
【0004】
オーステナイト系ステンレス鋼の具体的な一例としては、AISI型316ステンレス鋼(UNS S31600)があり、16〜18%のCr、10〜14%のNi、および2〜3%のMoを含む合金である。この合金の合金化成分の範囲は、安定なオーステナイト構造を維持するために指定された範囲内に維持されている。当業者には理解されように、例えば、Ni、Mn、Cu、およびNの含有量は、オーステナイト構造の安定性に寄与する。しかしながら、NiおよびMoの価格上昇のために、高い耐食性および良好な成形性を依然として示し、対費用効果の良い、S31600の代替物の必要性が生じている。
【0005】
別の代替合金は、グレード216(UNS S21600)であり、これは米国特許第3,171,738号に記述されている。S21600は17.5〜22%のCr、5〜7%のNi、7.5〜9%のMn、および2〜3%のMoを含む。S21600は、S31600を低Ni、高Mnにした変化形態であるのだが、S21600の強度および耐食性の特性はS1600のそれよりもかなり高い。しかしながら、2相合金と同様に、S21600の成形性は、S31600のそれほど良好ではない。また、S21600は、S31600と同量のMoを含んでいるので、Moの費用節減はない。
【0006】
高温での使用を主に目的とするS31600の変形も存在する。この合金は、316Ti型(UNS S31635)と命名されている。S31600とS31635との明らかな違いは、鋼中に存在するCおよびNの量の均衡を保つよう添加された少量のチタンの存在である。結果として生じる鋼、すなわちS31635は、高温での炭化クロムの有害な形成と、溶接の間の鋭敏化として知られている現象とが低い傾向にある。そのような添加によって、一次および二次の炭化物の形成の効果を強化するために、高温特性を向上させることができる。S31635においてTiの指定された範囲は、以下の式によって与えられる:
[5×(%C+%N)]≦Ti≦0.70%。
しかしながら、S31635は高価な原料を使用する。
【0007】
オーステナイト系ステンレス鋼の別の例は、321型ステンレス鋼(UNS S32100)であり、この型は、重量パーセントで、17.00〜19.00%のCr、9.00〜12.00%のNi、最高2.00%までのMn、最高0.08%までのC、最高0.75%までのSi、[5×(%C+%N)]≦Ti≦0.70%、最高0.045%までのP、最高0.030%までのS、最高0.10%までのN、および残部のFeを含む。321型合金は、該鋼中に存在するCおよびNの量に対して均衡を保つチタンを添加することによって炭化クロムに対して安定化されている。321型合金は、意図的な添加されるMoを含まないが、高価な合金化元素をかなりのレベルで含む。
【0008】
合金の別の例としては、201型鋼(UNS S20100)および同様のグレードで実施されているような、NiをMnと置換して、オーステナイト構造を維持している多数のステンレス鋼が挙げられる。しかしながら、321型合金などの比較的高合金のオーステナイト系ステンレス鋼に対して、耐食性があり低価格で、かつ321型合金と少なくとも同程度の強度および硬度をもたらす代替物の必要性が依然として残っている。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本開示による合金は、現在市場で入手できない解決策を提供する。該合金は、安定化されたオーステナイト系ステンレス鋼合金組成物であり、321型オーステナイト系ステンレス鋼と比べて少なくとも同程度の耐食性、強度、および硬度の特性を示しつつ、321型合金と比べてかなり原材料費節減をもたらす。したがって、本合金は、耐食性および高温の特性を改善するために炭化物形成元素を制御されたレベルで含む、安定化されたオーステナイト系ステンレス鋼である。本合金はまた、高Ni合金の特性と少なくとも同じような特定の特性を示すが、かなり低原材料費で提供するのに十分なMn、Cu、およびNのレベルを組み合わせて含む。
【0010】
本開示による合金は、より高価なNi元素の代わりにMn、Cu、およびNの組み合わせを用いるオーステナイト系ステンレス鋼である。その結果は、例えば、321型と比べて、低費用で、かつ少なくとも同程度の成形性、耐食性、および高温強度の特性を有する合金である。本開示による合金の実施形態は、軽量に製造され、かつ成形性を向上させるために比較的微粒子によるクリーンな微細構造を含み得る。
【0011】
本開示による合金の一実施形態は、重量パーセントで、最高0.20までの炭素(C)、2.0〜9.0のマンガン(Mn)、最高2.0までのケイ素(S)、15.0〜23.0のクロム(Cr)、1.0〜9.5ニッケル(Ni)、最高3.0までのモリブデン(Mo)、最高3.0までの銅(Cu)、0.05〜0.35の窒素(N)、(7.5(%C))≦(%ニオブ+%チタン+%バナジウム+%タンタル+%ジルコニウム)≦1.5、鉄(Fe)、および不可避的な不純物を含むオーステナイト系ステンレス鋼に関する。オーステナイト系ステンレス鋼の特定の実施形態は、最高0.01%までのホウ素(B)を含み得る。特定の実施形態は、少なくとも0.1%のニオブを含み得る、または少なくとも(7.5(%C))の濃度でニオブを含み得る。
【0012】
本開示による別の実施形態は、重量パーセントで、最高0.10までのC、2.0〜8.0のMn、最高1.00までのSi、16.0〜22.0のCr、1.0〜7.0のNi、0.10〜2.0のMo、最高1.00までのCu、0.08〜0.30のN、(7.5(%C))≦(%ニオブ+%チタン+%バナジウム+%タンタル+%ジルコニウム)≦1.5、最高0.040までのリン酸(P)、最高0.030までの硫黄(S)、Fe、および不可避的な不純物を含むオーステナイト系ステンレス鋼に関する。オーステナイト系ステンレス鋼の特定の実施形態は、最高0.01%までのBを含み得る。特定の実施形態は、少なくとも0.1%のニオブを含み得る、または少なくとも(7.5(%C))の濃度でニオブを含み得る。
【0013】
本開示による代替実施形態は、重量パーセントで、最高0.08までのC、3.5〜6.5のMn、最高1.00までのSi、17.0〜21.0のCr、3.0〜6.0のNi、0.1〜1.0のMo、最高1.0までのCu、0.08〜0.30のN、(7.5(%C))≦(%ニオブ+%チタン+%バナジウム+%タンタル+%ジルコニウム)≦1.0、最高0.035までのP、最高0.005までのS、Fe、および不可避的な不純物を含むオーステナイト系ステンレス鋼に関する。オーステナイト系ステンレス鋼の特定の実施形態は、最高0.01%までのBを含み得る。特定の実施形態は、少なくとも0.1%のニオブを含み得る、または少なくとも(7.5(%C))の濃度でニオブを含み得る。
【0014】
特定の実施例では、本開示によるオーステナイト系ステンレス鋼は、18を超えるPRE値、12未満のフェライト値、および34℃未満のMD30値のうちの1つまたは複数を有する。
【0015】
本開示によるオーステナイト系ステンレス鋼を製造する1つの方法は、電気アーク炉中で投入量を溶解し、AOD中で精製し、インゴットまたは連続鋳造スラブに鋳造し、該インゴットまたはスラブを再加熱し、熱間圧延してプレートまたはコイルを製造し、コイルを冷間圧延して特定の厚みにして、該材料を焼きなまして酸洗いすることによる。本発明の材料を製造する別の方法は、減圧中または特有の雰囲気下での溶解および/または再溶解すること、形状に鋳造すること、またはスラブもしくは形状に固定される粉体の製造を含み、用いられてもよい。
【0016】
本開示によるオーステナイト系ステンレス鋼は、多数の用途で用いられ得る。一例によると、本開示の合金は、低温また極低温の環境での使用に適合した製造物品に含まれ得る。本合金から製造され得るまたは本合金を含み得る製造物品のさらなる非限定例としては、自動車および他の用途用のフレキシブルコネクタ、ベローズ、フレキシブルパイプ、煙突内管類、および送管内管類がある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本記載では、動作例におけるものを除き、または別段の指示がない限り、成分および生成物の数量または特性、処理条件などを表すすべての数は、すべての場合において用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、特にそれとは反対の指示がない限り、以下の説明に記述するいかなる数値パラメータも、本開示による生成物および方法において得ようとする所望の特性に依存して変化し得る近似値である。最低限で、および特許請求の範囲の同等物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、通常の丸め技法を適用することによって少なくとも解釈されなければならない。本明細書に記述されるすべての数の範囲は、その中で包含されるすべての部分的な範囲を含む。例えば、「1〜10」の範囲は、1の列挙された最小値と、10の列挙された最大値との間、およびこれらを含むすべての部分的な範囲を含むように意図される。
【0018】
本開示によるオーステナイト系ステンレス鋼の実施形態をここで詳細に説明する。以下の説明において、「%」または「パーセント」は、特に明記しない限り、重量パーセンテージを指す。本開示は、321型合金と比べて、かつ原料のより低い全費用で、少なくとも同程度の耐食性、高温強度特性、および成形性を示すオーステナイト系ステンレス鋼に関する。オーステナイト系ステンレス鋼組成物は、重量パーセントで、最高0.20までのC、2.0〜9.0のMn、最高2.0までのSi、15.0〜23.0のCr、1.0〜9.5のNi、最高3.0までのMo、最高3.0までのCu、0.05〜0.35のN、(7.5(%C))≦(%ニオブ+%チタン+%バナジウム+%タンタル+%ジルコニウム)≦1.5、Fe、および不可避的な不純物を含み得る。オーステナイト系ステンレス鋼の特定の実施形態は、最高0.01までのBを含み得る。オーステナイト系ステンレス鋼の特定の実施形態は、少なくとも0.1%のニオブを含み得る、または少なくとも(7.5(%C))の濃度でニオブを含み得る。
【0019】
本発明の別の実施形態は、重量パーセントで、最高0.10までのC、2.0〜8.0のMn、最高1.00までのSi、16.0〜22.0のCr、1.0〜7.0のNi、0.10〜2.0のMo、最高1.00までのCu、0.08〜0.30のN、(7.5(%C))≦(%ニオブ+%チタン+%バナジウム+%タンタル+%ジルコニウム)≦1.5、最高0.040までのP、最高0.030までのS、Fe、および不可避的な不純物を含むオーステナイト系ステンレス鋼である。オーステナイト系ステンレス鋼の特定の実施形態は、最高0.01までのBを含み得る。オーステナイト系ステンレス鋼の特定の実施形態は、少なくとも0.1%のニオブを含み得る、または少なくとも(7.5(%C))の濃度でニオブを含み得る。
【0020】
一代替実施形態によれば、本開示は、重量パーセントで、最高0.08までのC、3.5〜6.5のMn、最高1.00までのSi、17.0〜21.0のCr、3.0〜6.0のNi、0.5〜1.0のMo、最高1.0までのCu、0.08〜0.30のN、(7.5(%C))≦(%ニオブ+%チタン+%バナジウム+%タンタル+%ジルコニウム)≦1.0、最高0.035までのP、最高0.005までのS、Fe、および不可避的な不純物を含み得る。オーステナイト系ステンレス鋼の特定の実施形態は、最高0.01までのBを含み得る。オーステナイト系ステンレス鋼の特定の実施形態は、少なくとも0.1%のニオブを含み得る、または少なくとも(7.5(%C))の濃度でニオブを含み得る。
【0021】
C:最高0.20%まで
Cはオーステナイト相を安定化するように作用し、変形により誘起されるマルテンサイト変態を阻止する。しかしながら、Cはまた、特に溶接の間、炭化クロムを形成する確率を高め、これによって耐食性および靭性を低下させる。したがって、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は最高0.20%までのCを有する。本発明の一実施形態では、Cの含有量は、0.10%以下であり得る。あるいは、Cの含有量は、0.08%以下、0.03%以下、または0.02%以下であり得る。
【0022】
Si:最高2.0%まで
2%を超えるSiを有すると、シグマなどの脆化相の形成を促進して、合金中のNの溶解度を低下させる。Siもフェライト相を安定化させる。2%を超えるSiは、オーステナイト相を維持するために、さらなるオーステナイト安定剤を必要とする。したがって、特定の実施形態では、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、最高2.0%までのSiを有する。本発明の一実施形態では、Si含有量は1.0%以下であり得る。Siはニオブとともに特定の合金化元素の反応性を最小化するのに役立ち、かつ合金中の相均衡を補助する。本開示による特定の実施形態では、Si添加の効果は、Si含有量を0.5〜1.0%に調節することによって均衡を保たれる。別の実施形態では、Si添加の効果は、Si含有量を0.1〜0.4%に調節することによって均衡を保たれる。あるいは、本開示による特定の実施形態では、Si含有量は、0.5%以下、0.4%以下、または0.3%以下であり得る。
【0023】
Mn:2.0〜9.0%
Mnはオーステナイ相を安定化させ、一般的に、有益な合金化元素であるNの溶解度を増加させる。これらの効果を十分に生み出すために、少なくとも2.0%のMn含有量が必要とされる。MnおよびNは両方とも、より高価な元素であるNiの効果的な代替物である。しかしながら、9.0%を超えるMnを有すると、材料の加工性および特定の環境でその耐食性を低下させる。また、9.0%を超えるなどの高レベルのMnステンレス鋼を脱炭することが困難なため、Mnレベルは、該材料を製造する処理加工コストを著しく増加させる。したがって、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼において耐食性、相均衡、延性および他の機械的特性の均衡を保つために、Mnレベルは、2.0〜9.0%に設定される。本開示による特定の実施形態では、Mn含有量は、2.0〜8.0%、3.5〜7.0%、または7%であり得る。
【0024】
Ni:1.0〜9.5%
本発明者らは、許容される特性を維持しつつ、該合金のNi含有量を限定しようと努力した。少なくとも1%のNiは、フェライトおよびマルテンサイトの両方の形成に関してオーステナイト相を安定化させるために必要とされる。Niはまた、靭性および成形性を向上させるために作用する。しかしながら、Niの比較的高いコストのため、Ni含有量をできるだけ低く保つことが望ましい。MnおよびNは、Niの部分的代替物になり得るが、高レベルのMnおよびNは、許容できないレベルの加工硬化、成形性の減少をもたらすことになる。したがって、合金は許容できる成形性を提供するために最低濃度のNiを含まなければならない。本発明者らは、1.0〜9.5%の範囲のNiを他の規定された範囲の元素に添加して用いて、高Ni合金のそれと同様の、または良好な耐食性および成形性を有する合金を達成できることを見出した。したがって、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、1.0〜9.5%のNiを有する。一実施形態では、Ni含有量は2.0〜6.5%であり得、または3.0〜6.0%であり得る。
【0025】
Cr:15.0〜23.0%
Crを添加して、不動態被膜を合金表面に形成することによってステンレス鋼に耐食性を与える。Crはまた、マルテンサイト変態に関してオーステナイト相を安定化させるよう作用する。少なくとも15%のCrが、適切な耐食性をもたらすために必要とされる。一方では、Crは強力なフェライト安定剤であるので、Cr含有量が23%を上回ると、フェライト含有量を許容できる程度に低く保つために、Niまたはコバルトなどのより高価な合金化元素を添加する必要がある。23%を超えるCrを有すると、シグマなどの望ましくない相を形成する可能性が高くなる。したがって、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、15.0〜23.0%のCrを有する。一実施形態では、Cr含有量は16.0〜22.0%であり得、または17.0〜21.0%であり得る。
【0026】
N:0.05〜0.35%
Nは、オーステナイト安定化元素Niおよび耐食性向上元素Moの部分代替物として本合金に含まれる。Nはまた、合金の強度を改善する。少なくとも0.05%のNは、強度および耐食性に必要であり、かつオーステナイト相を安定化させるために必要である。0.35%を超えるNを添加すると、溶解および溶接の間にNの溶解度を上回ることもあり得、Nの気泡に起因する気孔をもたらす。たとえその溶解度限界を上回らない場合でも、0.35%を超えるN含有量は、窒化物粒子の沈殿の傾向を増加させ、それによって耐食性および靭性が低下する。最高0.35%までのN含有量は、問題のあるレベルの炭窒化ニオブ沈殿物を形成することなく、合金中のNbの可能なレベルと適合することを本発明者らは、決定した。したがって、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、0.05〜0.35%のNを有する。一実施形態では、N含有量は、0.08〜0.30%であり得、またはあるいは0.05〜0.2%であり得る。
【0027】
Mo:最高3.0%まで
本発明者らは、許容される特性を維持しつつ、合金のMo含有量を限定しようと努力した。Moは、ステンレス鋼の表面に形成され、塩化物の作用による孔食から保護する不動態酸化被膜を安定化させるのに効果的である。特定の実施例では、Mo含有量は0.1〜3.0%であり得る。これは適当量のCrおよびNと組み合わせて、必要とされる耐食性をもたらすのに十分な量である。3.0%を上回るMoの含有量は、フェライトの割合を潜在的に有害なレベルまで増加させることによって、熱間加工性の劣化を引き起こす。Mo高含有量も、シグマ相などの有害な金属間相を形成する可能性を増加させる。加えて、Moは高価な合金化元素である。したがって、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼組成物は、最高3.0%までのMoを有する。本開示による特定の実施形態では、合金は意図的に添加されたMoを含まない。別の実施形態では、Mo含有量は、0.1〜1.0%であり得、または0.5〜1.0%であり得る。
【0028】
B:最高0.01%まで
0.0005%まで少ないBの添加を随意に本開示の合金に加えて、ステンレス鋼の熱間加工性および表面品質を改善し得る。しかしながら、0.01%を超えるBを添加すると、合金耐食性および加工性を低下させる。したがって、本開示によるオーステナイト系ステンレス鋼組成物の特定の実施形態は、最高0.01%までのBを含み得る。一実施形態では、B含有量は最高0.008%までであり得、または最高0.005%までであり得る。別の実施形態では、B含有量は、0.001〜0.003%であり得る。
【0029】
Cu:最高3.0%まで
Cuは、オーステナイト安定剤であり、本合金中でNiの一部を置換するために用いられ得る。また、Cuは、還元環境下で耐食性を改善し、かつ積層欠陥エネルギーを減少させることによって成形性を改善する。しかしながら、3%を超えるCuを添加すると、オーステナイト系ステンレス鋼の熱間加工性を低下させることが示されている。したがって、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼組成物は、最高3.0%までのCuを有する。一実施形態では、Cu含有量は、最高1.0%までであり得る。別の実施形態では、Cu含有量は、0.4〜0.8%であり得る。
【0030】
W:最高4.0%まで
Wは、塩化物の孔食および隙間腐食に対する耐性を改善する際に、モリブデンと同様の効果をもたらす。Wはまた、モリブデントの代わりに用いると、シグマ相の形成の傾向を減少させることもある。しかしながら、4%を超える添加は、合金の熱間加工性を低下させることもある。したがって、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼組成物は、最高4.0%までのWを有する。一実施形態では、W含有量は0.05〜0.60%であり得る。
【0031】
1.0≦(Ni+Co)≦9.5
ニッケルおよびコバルトは、両方とも、フェライト形成に関してオーステナイト相を安定化させるために作用する。CrおよびMoなどのフェライト安定化元素の存在下で、オーステナイト相を安定化させるために、少なくとも1%の(Ni+Co)が必要とされる。適当な耐食性を確実にするには、これを添付する必要がある。しかしながら、NiおよびCoは、両方とも高価な元素であるので、(Ni+Co)含有量を9.5%未満に保つことが望ましい。一実施形態では、(Ni+Co)含有量は、4.0%を超えるが、7.5%未満であり得る。
【0032】
(7.5(%C))≦(%Nb+%Ti+%V+%Ta+%Zr)≦1.5
ニオブ(Nb)は、Cと反応し、Nとはより少ない程度で反応して、小粒子の形成において炭化物および炭窒化物を形成する。これらの粒子は、高温使用の間に、および溶接の間に有害な炭化クロムの形成を効果的に阻止し、これによって耐食性が改善される。効果的な熱処理を用いて生成される場合、これらの粒子は、高温強度および耐クリープ性を改善することもできる。最小限の添加(7.5×%C)は、金属中に溶解して存在するすべてのC原子に対して1つのNb原子を提供する。Nbのレベルがより高いと、有益なNを消費するので、Nb含有量を1.5%未満に保つことが望ましい。チタン(Ti)、バナジウム(V)、タンタル(Ta)、およびジルコニウム(Zr)を含むがこれらに限定されることはないが、安定な炭化物を形成する他の元素は、ニオブの代わりに添加されてもよい。しかしながら、そのような代替物は、Nbよりもより強くNと反応するので、溶接性の改善などの有用な効果をもたらすように制御される。本発明者らは、Nb、Ti、V、Ta、およびZrの重量パーセンテージの合計が、(7.5(%C))の範囲で、最高1.5%まで維持されなければならないことを決定した。つまり、(7.5(%C))≦(%Nb+%Ti+%V+%Ta+%Zr)≦1.5%である。特定の実施形態では、(7.5(%C))≦(%Nb+%Ti+%V+%Ta+%Zr)≦1.0%である。特定の好ましい実施形態では、合金は、少なくとも0.1%のNbを含み、かつNb、Ti、V、Ta、およびZrの重量パーセンテージの合計が、最高1.5%または1.0%までの(7.5(%C))の範囲にある。特定の実施形態では、Ti、V、Ta、およびZrは不可避的な不純物としてのみ存在する、またはできる限り低いレベルで維持される。特定の実施例では、耐食性、高温強度、耐クリープ性、および溶接性の合金の特性を最適化するために、合金のいくつかの実施形態は、少なくとも(7.5(%C))のNb含有量を含み、かつTi、V、Ta、およびZrが不可避的な不純物としてのみ存在する。特定の実施形態では、Ti含有量は、0.01%未満であり得る。また、特定の実施形態では、Ti含有量は、0.001〜0.005%であり得る。本発明者らは、その組み合わせが、許容できない耐クリープ性を低下させる炭窒化ニオブ沈殿物をもたらさないという点で、最高1.5%までのNb含有物が、0.05〜0.35%の合金のN含有物に適合すると決定した。
【0033】
本開示による特定の実施形態では、本発明の安定化オーステナイト系ステンレス鋼の均衡は、Feと、PおよびSなどの不可避的な不純物とを含む。当業者によって理解されるように、この不可避的な不純物は、好ましくは、実際的かつ経済的に正当化できる最低レベルに保持される。
【0034】
Alなどの非常に安定な窒化物を形成する元素は、低レベルに保持されなければならない。
【0035】
本発明の安定化されたオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば耐孔食性指数、フェライト価、およびMD30温度を含む、それが示す特性を定量化する式で規定することもでる。
【0036】
この耐孔食性指数(PRE)は、塩化物を含む環境下で、孔食に対する合金の予想される耐性の相対的な順位付けを提供する。PREが高いほど、合金の予想される耐食性は良好である。PREは、以下の式で算出されることができる:
PRE=%Cr+3.3(%Mo)+16(%N)。
【0037】
あるいは、1.65(%W)の因数を上記の式に加えて、合金中のタングステンの存在を考慮に入れることができる。タングステンは、ステンレス鋼の耐孔食性を改善し、モリブデンの約半分の重量で効果的である。タングステンを計算に含む場合、その耐孔食性指数をPREとして表す。これは以下の式によって算出される:
PRE=%Cr+3.3(%Mo)+1.65(%W)+16(%N)。
【0038】
本発明の合金は、18を超えるPRE値を有する。特定の実施形態では、PRE値は、18〜24であり得る。特定の実施形態では、PRE値は、18〜22であり得る。特定の実施形態では、PRE値は、20〜22であり得る。
【0039】
本発明の合金はまた、そのフェライト値によって規定され得る。正のフェライト値は、通常、フェライトの存在に相関し、合金の固化特性を改善して、熱間加工および溶接作業の間に合金の高温割れを抑制するのに役立つ。このように、少量のフェライトは、良好な鋳造性のため、および溶接の間の高温割れの防止のために最初の固化微細構造で所望される。一方、フェライトが多すぎると、これらに限定されるものではないが、微細構造の不安定性、限定される延性、および高温機械特性の低下を含む使用中の問題が生じ得る。フェライト値は、以下の式を用いて算出されることができる:
FN=3.34(Cr+1.5Si+Mo+2Ti+0.5Cb)−2.46(Ni+30N+30C+0.5Mn+0.5Cu)−28.6。
本発明の合金は、最高12までのフェライト値を有し、好ましくは正の値である。本開示による特定の実施形態では、フェライト値は0〜10を超え得る、または1〜4であり得る。
【0040】
合金のMD30温度は、冷間変形の30%が、50%のオーステナイトのマルテンサイトへの変態をもたらす温度として規定される。MD30温度が低いほど、材料はマルテンサイト形成に対して耐性がある。マルテンサイト形成に対する耐性は、より低い加工硬化速度をもたらし、特に絞り用途において良好な成形性をもたらす。MD30は、以下の式によって算出される:
MD30(C)=413−462(C+N)−9.2(Si)−8.1(Mn)−13.7(cr)−9.5(Ni)−17.1(Cu)−18.5(Mo)
本発明の合金は、34℃未満、好ましくは10℃未満のMD30温度を有する。特定の実施形態では、MD30温度は−10℃未満であり得る。特定の実施形態では、MD30温度は、−20℃未満であり得る。
実施例
【実施例1】
【0041】
表1は、実験合金1〜5および比較合金S31600、S31635、S21600、およびS20100の組成物および算出したパラメータ値を含む。
【0042】
実験合金1〜5を、実験室サイズの真空炉で溶融して、50−lb(22.68kg)イゴットに流し込んだ。これらのインゴットを再加熱し、次いで熱間圧延して、厚さ約0.250”の材料を作製した。この材料を焼きなまし、ブラストし、次いで酸洗いした。その材料の一部を0.100”の厚さに冷間圧延し、次いで残りを厚さ0.050”または0.040”に冷間圧延した。冷却した圧延材料を焼きなまして酸洗いした。試験の実施時には、比較合金S31600、S31635、S21600、およびS20100は市販されており、これらの合金のために示したデータは、公開された文献から取得し、または商業販売用に製造された材料を試験して測定した。
【0043】
各合金のための算出したPRE値を表1に示す。本明細書の上で考察した式を用いると、24.0を超えるPREを有する合金は、塩化物孔に対して、比較合金S31635材料よりも良好な耐性を有すると予想されるが、より低いPREを有する合金は、より容易に孔が開くだろう。
【0044】
表1の各合金のためのフェライト値も算出した。実験合金1〜5のそれぞれのフェライト値は、10未満の範囲にある。
【0045】
MD30値も、表1の合金のために算出した。計算によると、実験合金1〜5、特に実験合金4および5は、マルテンサイト形成に対して、比較合金S31600およびS31635と同様の耐性を示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1はまた、原材料費指数(RMCI)を示し、各合金の原材料費を比較合金S31635のそれと比較する。RMCIは、原材料であるFe、Cr、Mn、Ni、Mo、W、およびCoの2007年10月の平均価格に、その合金に含まれる各元素のパーセントを掛けて、比較合金S31635中の各原材料費で割ることで算出した。算出した値が示すように、実験合金1〜5のそれぞれのRMCIは、0.65未満である。これは、それに含まれる原材料のコストが、2007年10月の原価価格に基づく比較合金S31635の原材料費の65%未満であることを意味する。比較合金S31635と同様の特性を有する材料をかなり低い原材料費で作ることができることは、驚くべきことであり、先行技術からは予想されなかった。
【0048】
実験合金1〜5の機械的特性を測定して、比較合金S31600、S31635、S21600,およびS20100の機械的特性と比較した。測定した降伏力、引張り強度、2インチゲージ長に対する伸び率、およびオルゼンカップ高を表1に示す。引張り試験を0.100”ゲージ材料で行い、シャルピー試験を0.197”の厚さの試料で行った。オルゼンカップ試験を厚さが0.040と0.050インチの間の材料で行った。すべての試験を室温で行った。表1のデータの単位は次のとおりである:降伏力および引張り強度、ksi;伸び率、パーセント;オルゼンカップ高、インチ。これらのデータに見られるように、実験合金1〜5、特に実験合金4および5は、S31635材料のそれと同程度の特性を示した。しかしながら、実験合金1〜5は、比較合金S31635でのニッケル濃度の半分以下と、かなり少ないモリブデンとを含んでいた。高価な合金化元素であるニッケルおよびモリブデンの濃度がかなり低いために、実験合金4および5のRMCIは、比較合金S31635の場合より少なくとも40%少ない。しかしながら、ニッケルおよびモリブデンのレベルは大幅に減少したにもかかわらず、実験合金4および5は、オーステナイト微細構造を有し、かつ比較合金S31635のそれよりも著しく良好な降伏力および引張り強度を示した。
【実施例2】
【0049】
表2は、実験合金6〜10および比較合金S32100と216Cb型の組成物ならびに算出したパラメータ値を含む。表2に示すように、実験合金6〜10は、比較合金S32100と比較すると、レベルがおおむね増加したMn、N、およびNb、ならびにレベルが減少したNiを含む。また、実験合金6〜10は、比較合金T216Cbおよび実験合金1〜5と比較すると、レベルが低下したMoを含む。
【0050】
実験合金6〜10を、実験室サイズの真空炉で溶融して、50−lbイゴットに流し込んだ。これらのインゴットを再加熱し、次いで熱間圧延して、厚さ約0.250”の材料を作製した。この材料を焼きなまし、ブラストし、次いで酸洗いした。その材料の一部を0.100”の厚さに冷間圧延し、次いで残りを厚さ0.050”または0.040”に冷間圧延した。冷却した圧延材料を焼きなまして酸洗いした。比較合金S32100は市販されており、この合金のために示したデータは、公開された文献から取得し、または商業販売用に最近製造された材料を試験して測定した。比較合金T216Cbは、米国特許公開第2009−0162237 A1号(米国特許出願第12/034,183号)に記述されており、この合金のために示したデータは、その記載に従って作製された材料を試験して測定したか、または公開された文献から取得した。
【0051】
各合金のための算出したPRE値を表2に示す。本明細書の上で考察した式を用いて、18を超えるPREを有する合金は、塩化物孔に対して、比較合金S32100材料よりも良好な耐性を有すると予想されるが、24よりも低いPREを有する合金は、比較合金T216Cbの材料よりも容易に孔が開くと予想される。実験合金6〜10のそれぞれのPRE値は、18〜24の好ましい範囲にある。
【0052】
表2の各合金のためのフェライト値も算出した。実験合金6〜10のそれぞれのフェライト値は、12未満の好ましい範囲にある。計算によれば、実験合金8〜10は、比較合金S32100と比較すると、成形性が改善されている。
【0053】
表2の合金に対してMD30値も算出した。計算によれば、実験合金6〜10、特に実験合金3および5は、比較合金S32100と比較すると、マルテンサイト形成に対して耐性が改善されている。
【0054】
【表2】

【0055】
表2はまた、原材料費指数(RMCI)を示し、各合金の原材料費を比較合金S32100のそれと比較する。RMCIは、原材料であるFe、Cr、Mn、Ni、Mo、Cu、Nb、およびTiの2009年10月の平均価格に、その合金に含まれる各元素のパーセントを掛けて、比較合金S32100中の各原材料費で割ることで算出した。算出した値が示すように、実験合金6〜10は0.73未満またはそれと同等のRMCIを有する。これは、それに含まれる原材料のコストが、比較合金S32100の原材料費の73%未満またはそれと同等であることを意味する。比較合金S32100の適切な代替物である材料をかなり低い原材料費で作ることができることは、驚くべきことであり、かつ予想外であった。
【0056】
実験合金6〜10の機械的特性を測定して、比較合金S32100およびT216Cbと比較した。測定した降伏力、引張り強度、および2インチゲージ長に対する伸び率を表2に示す。引張り試験を0.100”ゲージ材料で行った。すべての試験を室温で行った。
表2のデータの単位は次のとおりである:降伏力および引張り強度、ksi;伸び率、パーセント。これらのデータに見られるように、ニッケルのレベルは大幅に減少したにもかかわらず、実験合金6〜10は、比較合金S32100のそれよりも著しく良好な降伏力および引張り強度を示した。比較合金S32100と比較すると、降伏力の増加量は、驚くほどであり、先行技術からは予想されなかった。また実験合金含まれたMoは、比較合金T216Cbにおけるよりも著しく少なかった。高価な合金化元素であるNiおよびMoの濃度がかなり低いために、実験合金9および10のRMCIは、比較合金S32100の場合よりも少なくとも32%少ない。
【0057】
これらの新しい合金の潜在的な用途は、非常に多い。上に記述しかつ証明したように、本明細書に記述するオーステナイト系ステンレス鋼組成物は、多くの用途でS32100を置換することができる。さらに、Niの高いコストのため、S32100から本発明の合金組成物に切り替えることによって、著しい費用節減が認識されることになる。別の利点は、これらの合金が完全にオーステナイトであり、氷点下の温度での急激な延性−脆性遷移(DBT)、または高温での885F(474℃)の脆化のいずれの影響も受けにくいことである。したがって、2相合金とは異なり、本発明の合金を650F(343℃)を上回る温度で用いることが可能であり、低温度および極低温用途用の主要な候補材料になる。本開示による本合金が特に有利である製造の具体的な物品としては、例えば、自動車の排気および他の用途用のフレキシブルコネクタ、ベローズ、フレキシブルパイプ、ならびに煙突/送管の内管類が挙げられる。当業者は、従来の製造技術を用いて、本開示による合金からさまざまな製造物品を容易に製造し得る。
【0058】
前述の記載は限定された数の実施態様のみを必然的に示したが、当業者は、本明細書に記載され、説明された装置および方法、ならびに実施例のその他の詳細における種々の変化が当業者によってなされ得ることを認識するであろう。また、かかる変更のすべては、本明細書、および添付の特許請求の範囲に表現された本開示の原理および範囲にある。したがって、本発明は本明細書に開示される、または組み入れられている特定の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲によって定義されている本発明の原理および範囲の変更を網羅することを意図すると理解される。また、当業者は、本発明の広範な発明概念から逸脱することなく、上述の実施態様に変化をもたらし得ることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーステナイト系ステンレス鋼であって、重量パーセンテージで、最高0.20までのC、2.0〜9.0のMn、最高2.0までのSi、15.0〜23.0のCr、1.0〜9.5のNi、最高3.0までのMo、最高3.0までのCu、0.05〜0.35のN、(7.5(%C))≦(%Nb+%Ti+%V+%Ta+%Zr)≦1.5、Fe、および不可避的な不純物を含む、オーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項2】
18を超えるPRE値を有する、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項3】
18を超え、最高24までのPRE値を有する、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項4】
12未満のフェライト値を有する、 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項5】
0を超え、最高10までのフェライト値を有する、 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項6】
1から最高4までの範囲でフェライト値を有する、 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項7】
34℃未満のMD30値を有する、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項8】
10℃未満のMD30値を有する、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項9】
−10℃未満のMD30値を有する、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項10】
最高0.10までのCを含む、 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項11】
2.0〜8.0のMnを含む、 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項12】
4.0〜7.0のMnを含む、 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項13】
0.5〜1.0のSiを含む、 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項14】
16.0〜22.0のCrを含む、 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項15】
3.0〜6.0のNiを含む、 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項16】
0.1〜1.0のMoを含む、 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項17】
0.1〜0.5のMoを含む、 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項18】
(7.5(%C))≦(%Nb+%Ti+%V+%Ta+%Zr)≦1.0である、 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項19】
少なくとも0.1のニオブを含む、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項20】
(7.5(%C))≦%ニオブ≦1.5である、 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項21】
最高0.01までのBを含む、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項22】
0.001〜0.003のBを含む、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項23】
0.001〜0.5のチタンを含む、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項24】
オーステナイト系ステンレス鋼であって、重量パーセンテージで、最高0.10までのC、2.0〜8.0のMn、最高1.00までのSi、16.0〜22.0のCr、1.0〜7.0のNi、0.10〜2.0のMo、最高1.0までのCu、0.08〜0.30のN、(7.5(%C))≦(%Nb+%Ti+%V+%Ta+%Zr)≦1.5、最高0.008までのB、最高0.01までのチタン、最高0.050までのP、最高0.030までのS、Fe、および不可避的な不純物を含む、オーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項25】
少なくとも0.1のニオブを含む、請求項24に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項26】
(7.5(%C))≦ニオブ≦1.5である、 請求項24に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項27】
0.010〜0.05のPを含む、請求項24に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項28】
0.0001〜0.001のSを含む、請求項24に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項29】
オーステナイト系ステンレス鋼であって、重量パーセンテージで、最高0.08までのC、3.5〜6.5のMn、最高1.00までのSi、17.0〜21.0のCr、3.0〜6.0のNi、0.1〜1.0のMo、最高1.0までのCu、0.08〜0.30のN、(7.5(%C))≦(%Nb+%Ti+%V+%Ta+%Zr)≦1.0、最高0.005までのB、最高0.005までのチタン、最高0.035までのP、最高0.005までのS、Fe、および不可避的な不純物を含む、オーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項30】
少なくとも0.1のニオブを含む、請求項29に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項31】
(7.5(%C))≦Nb≦1.5である、 請求項29に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項32】
オーステナイト系ステンレス鋼を含む製造物品であって、重量パーセンテージで、最高0.20までのC、2.0〜9.0のMn、最高2.0までのSi、15.0〜23.0のCr、1.0〜9.5のNi、最高3.0までのMo、最高3.0までのCu、0.05〜0.35のN、(7.5(%C))≦(%Nb+%Ti+%V+%Ta+%Zr)≦1.5、Fe、および不可避的な不純物を含む、製造物品。
【請求項33】
前記オーステナイト系ステンレス鋼が少なくとも0.1のニオブを含む、請求項32に記載の製造物品。
【請求項34】
(7.5(%C))≦ニオブ≦1.5である、 請求項32に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項35】
前記物品が低温環境および極低温環境の少なくとも1つにおける使用に適合している、請求項32に記載の製造物品。
【請求項36】
前記物品がフレキシブルコネクタ、ベローズ、フレキシブルパイプ、煙突内管類、および送管内管類からなる群から選択される、請求項32に記載の製造物品。

【公表番号】特表2013−509498(P2013−509498A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536855(P2012−536855)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/052578
【国際公開番号】WO2011/053460
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(501187033)エイティーアイ・プロパティーズ・インコーポレーテッド (39)