説明

オーディオステレオ処理方法、装置およびシステム

【課題】ラウドスピーカーのセットアップおよび品質に関係なく、ステレオ音像を完全に再生するサウンド再生システムを提供する。
【解決手段】一組のラウドスピーカーの左ラウドスピーカーに伝送するためにミッド入力信号Mとサイド入力信号Sとの合計または合計に等しい左出力信号を製し、また右ラウドスピーカーに伝送するためにミッド入力信号Mと180度位相シフトされたサイド入力信号Sとの合計または合計に等しい右出力信号を製する。サイド入力信号Sまたはミッド入力信号Mの少なくとも1部が、左および右出力信号を製する前または製する際に他の信号に対して45乃至135度、位相シフトされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオステレオ信号を処理する方法、装置およびシステムに関し、特に請求項1、13および25の公知部に記載した入力オーディオステレオ信号を処理するための方法、装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
録音現場でリスナーが経験する音を忠実に再現するための方法およびシステムが多く存在する。リスナーが実際に録音現場に移動したような、即ちその録音される音場での種々の音源の実際の位置が判るような印象を与えるものとして最も近いシステムは、バイノーラル録音法およびバイノーラル再生法(ヘッドホン)である。この方法には録音段階および再生段階、そして最悪の場合、音の情報が判断されるリスナーの脳に到達する途中で2組の耳翼(外耳)によって音が判断されるという欠点がある。この欠点の解決策として頭部のレプリカの代わりにマイクロホン素子を両側に有する人間の頭の大きさの発泡ボールを含む簡単な録音方法を利用したものが挙げられる。この方法では、音質を得る上ではある程度の結果が得られるが、前後および上下の定位の識別性が失われてしまう。録音および再生のためのバイノーラル法以外の方法としては、架空の音像(sound image)を創出することである。これは、録音段階および再生段階の両方の場合に利用できる。
【0003】
これら従来の公知の方法とは別に、再生段階の目的は、最小限の情報の損失または追加でリスナーの聴覚系に電気的差異(electrical differences)を伝達することだけである。ステレオ音像が創出される場所は、録音および/またはミキシング段階が行われる場所である。ステレオ音像は、現場でリスナーが経験する音の忠実であるが、それでも主観的な判断として、物理的に起こることの無い架空の事象の錯覚またはこれらが組み合わさったものとして製せられる場合がある。
【0004】
今日の再生システムの殆どは、一組の広く間隔をおいて配されるラウドスピーカーに基づいており、リスナーの耳で知覚される音波の相対的強度とこれら音波の時間差の両方の観点からの忠実な電気ステレオ信号の再生は、ラウドスピーカーに対してよくても1つの位置でしか認識することができない。これらの方法では、ラウドスピーカーの優先性(preferences)およびこれらラウドスピーカーがどのようにしてリスナーに対して配置されているかによって電気ステレオ情報が誤って変換(translate)される。従って、ラウドスピーカーのセットアップおよび品質に関係なく、ステレオ音像を完全に再生するサウンド再生システムが必要とされている。
【0005】
この問題を解決するシステムは、入力オーディオステレオ信号の処理および再生の方法を開示した本願出願人による下記特許文献1で詳述されている。サイドシグナルは、第1および第2中間信号に分割され、第1中間信号は、サイド信号に等しく、第2中間信号は、180度位相シフトされた第1中間信号に等しく、ミッド信号は、オーディオ再生段階で現れるミッド信号およびサイド信号間のバランスの不完全性を補足する減衰率(function)αによって減衰され、減衰されたミッド信号は、出力オーディオ信号を形成するために第1および第2中間信号の両方に加えられ、出力ステレオ信号は、互いに近接して配された一組のラウドスピーカーを含むオーディオステレオ信号再生システムに送られる。この特許文献で説明されているシステムは、システムの品質に関係なく知覚されたステレオ音像に高い整合性を有する高度な忠実度でオーディオステレオ信号を再生させる。
【特許文献1】国際公開第WO01/39548号公報
【0006】
ラウドスピーカーユニットが互いに接近して配されたこのようなシステムの問題点は、1乃至5kHz超の高周波数では、知覚されたステレオ効果において忠実度が完全に低下または失われてしまうということである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の問題点を解決するオーディオステレオ信号を処理する方法を提供することである。この目的は請求項1の特徴部に記載されている方法によって達成される。
【0008】
また本発明は、上述の問題点を解決するオーディオステレオ信号を処理する装置を提供することを目的としている。この目的は請求項13の特徴部に記載されている装置によって達成される。
【0009】
また本発明は、上述の問題点を解決するオーディオステレオ信号を処理するシステムを提供することを目的としている。この目的は請求項25の特徴部に記載されているシステムによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では一組のラウドスピーカーの左のスピーカーへ送信される左出力信号が製せられ、この信号は、ミッドインプット信号Mおよびサイドインプット信号Sとの合計である、または合計に相当し、サイド信号Sまたはミッド信号Mの少なくとも1部は、他の信号に対して約45乃至135度位相シフトされ、ラウドスピーカーの右のスピーカーへ送信される右出力信号が製せられ、この信号は、ミッドインプット信号Mと180度位相シフトされたサイド信号Sとの合計である、または合計に相当し、サイド信号Sまたはミッド信号Mの少なくとも1部は、他の信号に対して約45乃至135度位相シフトされている。
【0011】
このことは、本発明がステレオ信号に導入する位相差が入力レベル差をステレオチャネル間の位相差に変換(translate)するという利点がある。この位相差は、ステレオ信号がラウドスピーカーを介して再生される際にレベル差に変換される。位相差とは対照的にレベル差は、短い波長の強い定位キュー(localization cue)であり、その結果、本発明で導入される位相シフトは、知覚されるステレオ効果の忠実度を大幅に改善することになる。
【0012】
ミッド入力信号Mは、減衰率αによって減衰されてもよく、および/またはサイド入力信号Sは、左出力信号および右出力信号の発生時に増幅率βによって増幅されてもよい。これは、長い波長のレベル差と短い波長の位相差とによって構成されたステレオオーディオ信号が得られ、この信号は、低周波数の強い定位キューである低周波数の位相差として、そして上述したように高周波数の強い定位キューである高周波数の位相差としてラウドスピーカーを介して再生されるという利点を有する。
【0013】
本発明における入力信号は、左入力信号Lおよび右入力信号Rであってもよく、この場合ミッド入力信号Mは、左入力信号Lおよび右入力信号Rの合計として製せられ、サイド入力信号は左入力信号Lおよび右入力信号Rの差として製せられる。これは従来のステレオ信号を本発明では入力信号として使用できるという利点がある。
【0014】
ラウドスピーカー素子は、近接して位置してもよく、特に一組の同一のラウドスピーカー素子で構成してもよく、これは音響的に互いに離れ、これら素子によって発せられる最も短い波長の1/4未満、または素子から発せられる最も短い波長が68cm未満である場合、17cm未満で位置する。これは、本発明が上記特許文献1に記載されている方法およびシステムにおいて使用するのに非常に適しているという利点がある。
【0015】
位相シフトは、サイド入力信号Sまたはミッド入力信号Mが45乃至135度、好ましくは90度、位相シフトされるように行われる。これは、デジタル信号処理、例えば、ヒルバート変換(Hilbert transform)によって行われると有利である。これとは別に位相シフトは、アナログオールパスフィルター(analogue all-pass filter)などの周波数依存型フィルターによって行ってもよい。これは、コストが重要な用途および/または処理時間が重要な用途のために費用の掛からない解決策が得られるという利点を有する。このミッド入力信号Mは、位相シフト手段の遅れに対応する時間、遅れてもよい。これによってサイド入力信号Sとミッド入力信号Mとの所望の位相相関が容易に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、オーディオステレオ信号を処理するための従来の装置の機能的原理を例示している。入力オーディオステレオ信号は、左入力ステレオ信号Lと右入力ステレオ信号Rとを含む。LおよびR信号は、左Lおよび右R入力ステレオ信号の合計およびこれら左Lおよび右R入力ステレオ信号の差にそれぞれ対応するミッド信号Mおよびサイド信号Sを得るために使用される。ラウドスピーカーのような左サウンド再生ユニットに送られる出力ステレオ信号LOUTは、サイド信号Sと減衰率αによって乗じられたミッド信号Mとの合計であり、右サウンド再生ユニットに送られる出力ステレオ信号ROUTは、反転(inverted)サイド信号Sと減衰率αによって乗じられたミッド信号Mとの合計である。
【0017】
図1で説明したシステムではシステムの質に関係なく、電気オーディオステレオ信号が、知覚されたステレオ音像において高い整合性(consistency)の高い忠実度で再現される。しかしながら上述したように、図1のシステムには、知覚されたステレオ効果での忠実度が1乃至5kHzを超える周波数で、完全に低下または失われてしまうという問題がある。
【0018】
これはS信号の加減によるLOUTおよびROUTのレベル差がラウドスピーカー素子を介して再生される際に位相差に変換されることによる。この位相差は、低周波数の強い定位キューであり、これら低周波数の良好なステレオ分解能(resolution)となる。しかしながら、人間の耳の特性によって、左耳および右耳で受け取られる2つの信号間の位相差を検知する能力は、高周波数で失われてしまう。これは、約1000Hz未満の周波数のサイクル毎のスパイク(spike)の1つのバースト(burst)によって刺激低周波数トーン(<4乃至5kHz)の特定の位相で発火(fire)しやすい知覚神経の位相固定によるものである。インタースパイクインターバルは、トーンの長さの整数倍で起こりやすい。内有毛細胞がそのキャパシタンスによって電圧が充分に速く変化するのが妨げられるので、高い周波数トーン(>4乃至5kHz)によって位相固定は、弱くなり、そして消える。4乃至5kHz超の位相固定が無いと図1のシステムは、ステレオチャネル間のレベル差だけを有する短い周波数だけを含む音の弱い定位キューを伝送する。
【0019】
本発明は、この問題点を図2に例示する装置で解決する。図2の装置は、図1の装置と類似しているが、別のユニット20が加えられているという点で図1の装置とは異なる。図1の装置のようにミッド信号Mは、左Lおよび右R入力ステレオ信号を合計することによって得られ、サイド信号Sは、左入力ステレオ信号Lから右入力ステレオ信号Rを引いて得られる。サイド信号Sは、それから出力ステレオ信号LOUTおよびROUTを発生させる前に−90度位相シフトされる。それから出力ステレオ信号LOUTは、位相シフトされたサイド信号Sと減衰率αによって乗じられたミッド信号Mとを合計することによって得られ、出力ステレオ信号ROUTは、減衰率αによって乗じられたミッド信号Mから位相シフトされたサイド信号Sを引いて得られる。これは、反転位相シフトサイド信号Sと減衰率αによって乗じられたミッド信号Mとの合計に等しい。サイド信号を反転させることは、それをネゲートする、または180度位相シフトすることに等しい。
【0020】
典型的な減衰率αは、−6dB乃至−12dBとなる。しかしながら通常の場合、減衰率αは、リスナーに知覚されるステレオ効果を最適化するように適合され、−3dB乃至−15dBの範囲まで許容される。
【0021】
位相シフトは、デジタル信号処理、例えばヒルバート変換によって行ってもよい。デジタル信号処理は、全ての波長で本当の90度位相シフトを行うことができ、周波数に亘って増幅の変化が殆どまたは全く無く得られるという利点がある(アナログ回路を使用すると500乃至700度の範囲の可聴スペクトラム(audible spectra)の位相ドリフトとなるが、ミッド信号Mとサイド信号Sとの間で90度の相対位相差を有する)。この種の位相シフトは、デジタル信号処理手段がすでに存在しているシステムおよび時間が重要な用途に特に適している。
【0022】
さらに位相シフト手段の処理時間に対応する時間でミッド入力信号Mを遅らせるために図2の符号21で示すように装置に遅延(delay)回路を含むのが望ましい。これによってサイド入力信号Sとミッド入力信号M間で望ましい位相相関が容易に維持することができる。
【0023】
図3は、本発明の第2の態様を例示している。本発明の第2の態様は、位相シフトが望ましいが、費用および時間が重要となる例えばプロのレコーディングスタジオなどでの用途に使用される。第2の態様では、図2のようにミッド信号Mとサイド信号Sが得られ、それからサイド信号Sは、中心波長が最も短い可聴周波数をだいぶ超えて設定された周波数依存型アナログオールパスフィルターを含むユニット30によって変えられる。これは、位相シフトが例えば500Hzで2、3度だけシフトすることによって開始し、例えば10kHzで+90度に到達することを意味する。従って、オールパスフィルターの位相応答性は、位相固定が高い周波数のために弱くなるので、出力ステレオ信号の位相差をレベル差に徐々に変換するように調整される。アナログフィルターの位相応答性は、殆ど負(negative)になり得ないので、ユニット30は、−90度の位相シフトの所望の結果を得るために信号を反転させる手段をさらに含む。位相シフトは負であることが好ましい、なぜなら負でないと元のLおよびR信号が入れ替わってしまう場合があるからである。オールパスフィルターの位相シフトの例を図4に示す。図から判るように位相シフトは、低周波数で実質的に0度から始まり、高い周波数(例えば10kHz)で90度に到達する。またデジタル信号処理を利用して周波数依存型位相シフトを生じさせてもよいが、余分な費用が掛かる。
【0024】
図3の減衰率αは、例えばマルチウェイラウドスピーカー構造の異なる素子の別個のドライバーで異なるように周波数依存型にすることが可能である。
【0025】
ミッド信号Mは、第1出力信号を形成するために位相シフトされたサイド信号Sに加えられ、位相シフトされたサイド信号Sは第2の出力信号を形成するためにミッド信号Mから引かれる。
【0026】
通常、本願で説明した方法は、RおよびL信号またはMおよびS信号の一次変形として説明されるあらゆる入力用語に同等に使用されるが、便宜上、本発明をMおよびSならびにRおよびLという符号を用いて例示した。従って本発明の方法は、Sps+αMおよび−Sps+αM、ここでSpsは、90度位相シフトされた信号Sである、と同等な出力を有する方法として解釈されるべきである。すでに述べたようにMおよびS信号は、本発明の方法の中間工程で製してもよいが、得られる出力条件が満たされている場合は、この限りではない。
【0027】
上記では位相シフトは、90度として説明した。しかしながら、この位相シフトは、45乃至135度の範囲でいかなる位相シフトであってもよい。さらに上記では位相シフトがサイド信号Sで行われると説明した。しかしながら、ミッド信号Mでも同じように行ってもよい。
【0028】
さらに上記では、アナログオールパスフィルターはこれと同じフィルター機能を行うデジタルフィルターによって交換可能であると説明した。この場合、位相シフト手段の処理時間に対応する時間でミッド入力信号Mを遅らさせるために図2の符号21で示したように装置に遅延回路を含むことが望ましい。
【0029】
さらに入力ステレオ信号は、LおよびR信号から構成されると説明してきたが、入力信号はMおよびS信号で構成することも可能であり、この場合最初の加減工程は、省略される。
【0030】
さらにミッド信号Mは、減衰率αによって減衰されると説明したが、当然のことながら代わりに増幅率βでサイド信号Sを増幅することも可能である。
【0031】
本発明の詳細な説明では位相シフトをサイド入力信号Sで行ったが、ミッド入力信号Mで行うことも可能である。
【0032】
本発明は、種々の変形および変更が可能であり、またそれらのいくつかをここで述べたが、本明細書で説明し、また添付の図面に示した全ての内容は、例示を目的としたものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ステレオ信号を処理するための従来のシステムを例示したブロック図。
【図2】本発明の第1の態様を例示したブロック図。
【図3】本発明の第2の態様を例示したブロック図。
【図4】図3に示した態様のオールパスフィルターの周波数応答の例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ミッド入力信号(M)およびサイド入力信号(S)を供する工程と、
b)一組のラウドスピーカー素子の左ラウドスピーカーに伝送するためにミッド入力信号(M)とサイド入力信号(S)との合計である、または合計に等しい左出力信号を製する工程と、
c)前記一組のラウドスピーカー素子の右ラウドスピーカーに伝送するためにミッド入力信号(M)と180度位相シフトされたサイド入力信号(S)との合計である、または合計に等しい右出力信号を製する工程とを含み、少なくとも一組のラウドスピーカー素子を有するオーディオステレオ再生システムで処理されたステレオ信号を再生するために2つの入力信号からなる入力オーディオステレオ信号を処理する方法において、この方法は、さらに4kHz乃至9kHzの周波数域のサイド入力信号(S)またはミッド入力信号(M)の少なくとも1部が、工程b)およびc)で左および右出力信号を製する前に、または製する際に他の信号に対して少なくとも45度以上135度以下で位相シフトされ、
前記一組のラウドスピーカー素子は、音響的に互いに離れた一組の同一のラウドスピーカー素子から構成され、これらラウドスピーカー素子によって発せられる最も短い波長の1/4未満離れて位置するか、またはラウドスピーカー素子によって発せられる最も短い波長が68cm未満である場合、17cm未満離れて位置することを特徴とする方法。
【請求項2】
6kHz乃至9kHzの周波数域のサイド入力信号(S)またはミッド入力信号(M)の少なくとも1部が、他の信号に対して少なくとも45度以上135度以下で位相シフトされることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程b)およびc)においてミッド入力信号(M)が減衰率αによって減衰され、および/またはサイド入力信号(S)が増幅率βによって増幅されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程a)においてミッド入力信号(M)が左入力信号(L)と右入力信号(R)との合計として得られ、工程a)においてサイド入力信号(S)が左入力信号(L)と右入力信号(R)との差として得られることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
減衰率αが−3dB乃至−15dBの範囲内にあることを特徴とする請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
減衰率αが−6dB乃至−12dBの範囲内にあることを特徴とする請求項3乃至5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
減衰率αおよび/または増幅率βが周波数に依存していることを特徴とする請求項3乃至6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ラウドスピーカー素子が接近して位置していることを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
実質的に全てのサイド入力信号(S)またはミッド入力信号(M)が90度位相シフトされることを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
位相シフトがオールパスフィルターなどの周波数依存型フィルターによって行われることを特徴とする請求項1乃至9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
位相シフトがヒルバート変換などのデジタル信号処理によって行われることを特徴とする請求項1乃至10いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
ミッド入力信号(M)が位相シフト手段の遅れに対応する時間遅らされることを特徴とする請求項1乃至11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
a)一組のラウドスピーカー素子の左ラウドスピーカーに伝送するためにミッド入力信号(M)とサイド入力信号(S)との合計である、または合計に等しい左出力信号を製する手段と、
b)前記一組のラウドスピーカー素子の右ラウドスピーカーに伝送するためにミッド入力信号(M)と180度位相シフトされたサイド入力信号(S)との合計である、または合計に等しい右出力信号を製する手段とを含み、少なくとも一組のラウドスピーカー素子を有するオーディオステレオ再生システムで処理されたステレオ信号を再生するために2つの入力信号からなる入力オーディオステレオ信号を処理する装置において、この装置はさらに
c)4kHz乃至9kHzの周波数域のサイド入力信号(S)またはミッド入力信号(M)の少なくとも1部を工程a)およびb)で左および右出力信号を製する前に、または製する際に他の信号に対して少なくとも45度以上135度以下で位相シフトする手段を含み、
前記一組のラウドスピーカー素子は、音響的に互いに離れた一組の同一のラウドスピーカー素子から構成され、これらラウドスピーカー素子によって発せられる最も短い波長の1/4未満離れて位置するか、またはラウドスピーカー素子によって発せられる最も短い波長が68cm未満である場合、17cm未満離れて位置することを特徴とする装置。
【請求項14】
6kHz乃至9kHzの周波数域のサイド入力信号(S)またはミッド入力信号(M)の少なくとも1部を他の信号に対して少なくとも45度以上135度以下で位相シフトする手段する手段を含むことを特徴とする請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記装置が工程a)およびb)においてミッド入力信号(M)を減衰率αによって減衰し、および/またはサイド入力信号(S)を増幅率βによって増幅するために配されていることを特徴とする請求項13または14記載の装置。
【請求項16】
前記装置がサイド入力信号(S)およびミッド入力信号(M)を供する手段をさらに含み、ミッド入力信号(M)を左入力信号(L)と右入力信号(R)との合計として、サイド入力信号(S)を左入力信号(L)と右入力信号(R)との差として供するために配されていることを特徴とする請求項13乃至15いずれか1項記載の装置。
【請求項17】
減衰率αが−3dB乃至−15dBの範囲内にあることを特徴とする請求項13乃至16記載の装置。
【請求項18】
減衰率αが−6dB乃至−12dBの範囲内にあることを特徴とする請求項13乃至17いずれか1項記載の装置。
【請求項19】
減衰率αおよび/または増幅率βが周波数に依存していることを特徴とする請求項13乃至18いずれか1項記載の装置。
【請求項20】
前記ラウドスピーカー素子が接近して位置していることを特徴とする請求項13乃至19いずれか1項記載の装置。
【請求項21】
実質的に全てのサイド入力信号(S)またはミッド入力信号(M)が90度位相シフトされることを特徴とする請求項13乃至20いずれか1項記載の装置。
【請求項22】
位相シフトがオールパスフィルターなどの周波数依存型フィルターによって行われることを特徴とする請求項13乃至21いずれか1項記載の装置。
【請求項23】
位相シフトがヒルバート変換などのデジタル信号処理によって行われることを特徴とする請求項13乃至22いずれか1項記載の装置。
【請求項24】
ミッド入力信号(M)が位相シフト手段の遅れに対応する時間遅らされることを特徴とする請求項13乃至23いずれか1項記載の装置。
【請求項25】
一組のラウドスピーカー素子を含み、さらに
a)前記一組のラウドスピーカー素子の左ラウドスピーカーに伝送するためにミッド入力信号(M)とサイド入力信号(S)との合計である、または合計に等しい左出力信号を製する手段と、
b)前記一組のラウドスピーカー素子の右ラウドスピーカーに伝送するためにミッド入力信号(M)と180度位相シフトされたサイド入力信号(S)との合計である、または合計に等しい右出力信号を製する手段とを含み、ミッド入力信号(M)とサイド入力信号(S)とからなる、またはミッド入力信号(M)とサイド入力信号(S)が得られる種類の信号からなる2つの入力信号を含む入力オーディオステレオ信号を再生するためのシステムにおいて、このシステムは、さらに
c)4kHz乃至9kHzの周波数域のサイド入力信号(S)またはミッド入力信号(M)の少なくとも1部を工程a)およびb)で左および右出力信号を製する前に、または製する際に他の信号に対して少なくとも45度以上135度以下で位相シフトする手段を含み、
前記一組のラウドスピーカー素子は、音響的に互いに離れた一組の同一のラウドスピーカー素子から構成され、これらラウドスピーカー素子によって発せられる最も短い波長の1/4未満離れて位置するか、またはラウドスピーカー素子によって発せられる最も短い波長が68cm未満である場合、17cm未満離れて位置することを特徴とするシステム。
【請求項26】
6kHz乃至9kHzの周波数域のサイド入力信号(S)またはミッド入力信号(M)の少なくとも1部を他の信号に対して少なくとも45度以上135度以下で位相シフトする手段する手段を含むことを特徴とする請求項25記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−213325(P2010−213325A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99727(P2010−99727)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【分割の表示】特願2006−521039(P2006−521039)の分割
【原出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(502181997)エンブレイシング サウンド エクスペリエンス アーベー (3)
【Fターム(参考)】