説明

オートテンダー装置

【課題】 従来のチェーン駆動方式によるオートテンダー装置では、部品点数が多く、構造が複雑となって、チェーン等の切断や高圧ホースの破損、駆動モータの故障等が起こりやすいので、部品点数を減じて、簡単な構造とすることにより故障等が生じにくいオートテンダー装置を提供する。
【解決手段】 抄紙機の幅方向を長手方向として配設したロッドレスシリンダ31にスライドベース32を連繋させ、このスライドベース32に紙切ノズル34を接続すると共に、コイルホースによる給水ホース35をカプラー35aを介して接続する。ロッドレスシリンダ31を支持させるシリンダフレーム33に案内させてスライドベース32を摺動させることにより紙切ノズル34を移動させて、通紙時にはテールを形成する位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抄紙機のワイヤーの上方を抄紙機の抄紙方向と直交する方向にノズルを移動させるオートテンダー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙機は、供給された製紙原料を、ワイヤーパートで脱水しながら紙層を形成し、プレスパートで形成された紙層から搾水し、搾水されて形成された湿紙をドライヤパートで乾燥させ、その後、カレンダパートで紙厚を調整すると共に平滑性を付与した後、リールパートでリールに巻き取って巻取を製造するものである。図11は長網式抄紙機の一例を示すもので、前処理工程で調整された製紙原料は、ヘッドボックス1から矢標P方向に無端循環移動している網目状のワイヤー2に噴射され、ワイヤー2に伴われて移動しながら脱水装置3の吸引力を受けて脱水されながら紙匹が形成される。形成された紙匹はワイヤー1からフェルト4に移載され、フェルト4と共にプレスロール5で圧搾して水分を除去する。搾水された紙匹はカンバス6に移載され、内部に過熱蒸気が供給されている多数本のドライヤシリンダ7に巻回されながら乾燥される。乾燥された紙は多段に重畳されたカレンダロール8によりニップされて、その圧力によって平滑性や紙厚が調整されることになる。その後、坪量・水分制御装置9で坪量や水分が検出され、巻取リール10aに巻き取られて巻取10として完成する。なお、坪量や水分が所定の値となっていない場合には、ワイヤーパートからドライヤパートまでの工程へ検出結果をフィードバックしてそれぞれの工程の運転条件を調整することにより、所定の値となるようにする。
【0003】
前述した抄紙機の操業では、種々の要因で連続性が損なわれて紙切れが生じることがあり、その際には通紙作業を行わなければならない。通紙作業は、抄紙幅の全幅にわたって同時に行うことはできず、紙匹の端部をワイヤーパートから順に通すことにより行われる。例えば、特許文献1には、通紙においてテールがロープからすっぽ抜けたり、挟んだところから切れたりしないようにし、かつ通紙作業の簡便化と時間の短縮を図るようにした通紙方法及び装置が開示されている。この通紙方法及び装置は、抄紙機の操作側及び駆動側の内の一方の側で、プレスパート以前に設置されたテール製作用耳切ノズル及び紙切ノズルを、通常の運転位置より任意幅のテールを後続パートのロープに挟み込ませることができる通紙位置に移動させることにより紙幅のテールを作り、同テールをロープに挟み込ませ、紙の走行方向に平行に走行させて、最終シリンダドライヤからカレンダ、カレンダからリールドラムに通紙するようにしたものである。
【0004】
前記テールを製作するために、高圧の切断水を噴射して抄紙幅方向の適宜位置で紙匹を切断する紙切ノズルを、抄紙機の幅方向(MC方向)に移動させるようにしたオートテンダー装置が用いられている。すなわち、図10に示すように、抄紙される紙匹の幅員となるクーチトリム幅を決定する一対の耳切ノズル21a、21bのうちの一方の耳切ノズル21bと、この耳切ノズル21bよりも抄紙機の中央側に紙切ノズル12を位置(この位置を「テール製作位置」とする。)させ、これら耳切ノズル21bと紙切ノズル12とにより切断された部分がテールTとなる。紙切ノズル12は、ワイヤー2の上方にMC方向を長手方向として掛け渡されたガイド部材11に案内されて移動可能とされており、前記テールTがリールまで達したならば、紙切ノズル12をガイド部材11に案内させて移動させながら、徐々にテールTの幅員をクーチトリム幅に近づけ、他方の耳切ノズル21aの位置を通過したならば前記切断水の噴射を停止し、この耳切ノズル21aよりも外側に位置(この位置を「退避位置」とする。)するようにしてある。これにより、ワイヤー2上の紙匹は両端部の耳部が耳切ノズル21a、21bにより切断されて所定の幅員となる。
【0005】
図9は前記紙切ノズル12を移動させる従来のオートテンダー装置の概略を示している。なお、同時においては、便宜上紙切ノズル12を、上方を指向させた状態で示してあるが、実装された状態では、この紙切ノズル12の噴出口は、図10に示すように下方を指向させてある。紙切ノズル12はスライドベース13に取り付けられており、このスライドベース13を介して高圧ホース14に接続されている。なお、紙切ノズル12は同図上左右方向に移動し、左側を抄紙機の操作側、右側を抄紙機の駆動側としてある。スライドベース13はチェーンスプロケット15a、15bにより無端循環移動するローラーチェーン16に取り付けられており、チェーンスプロケット15aには駆動ベルト17を介してエアモータ18の駆動力が伝達されるようにしてある。前記スライドベース13はスライド装置19に固定されており、このスライド装置19が前記ガイド部材11に対して摺動可能に支持されている。スライド装置19の両端にはロープシーブ19a、19bが回転自在に支持されており、スライドベース13の操作側には支持ロープ20aの一端部が止着されており、この支持ロープ20aは操作側の前記ロープシーブ19bを巻回させて、他端を抄紙機の駆動側に伸長させてある。他方、スライドベース13の駆動側には支持ロープ20bの一端部が止着されており、この支持ロープ20bは駆動側の前記ロープシーブ19aを巻回させて、他端を抄紙機の操作側に伸長させてある。
【0006】
前記エアモータ18が作動すると、その駆動力が駆動ベルト17を介して駆動側のチェーンスプロケット15aに伝達されるから、ローラーチェーン16がエアモータ18の回転方向に応じて無端循環移動を行う。このローラーチェーン16に取り付けられたスライドベース13も同方向に移動し、これによりこのスライドベース13に取り付けられている紙切ノズル12が移動することになる。このとき、前記支持ロープ20a、20bを緊張させた状態に維持することによりスライドベース13が駆動側と操作側とに引き寄せられた状態が維持されるから、安定した状態で移動することになる。
【0007】
【特許文献1】特開平6−322690
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したオートテンダー装置では、ローラーチェーン16の無端循環移動により紙切ノズル12を移動させる構造であるため、構造が複雑となってしまい、ローラーチェーン16の切断や、支持ロープ20a、20bの切断、高圧ホース14の破損、エアモータ18の故障が生じやすい。これらローラチェーン16や支持ロープ20a、20bの切断、または高圧ホース14の破損等を修理する場合には、抄紙機を長時間にわたって停止して行わなければならず、抄紙機の操業に支障となっていた。
【0009】
そこで、この発明は、部品点数が少なく、構造を簡単にして、故障が少なく、故障時の部品交換が簡便に行えるようにしたオートテンダー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るオートテンダー装置は、抄紙機のワイヤーパートを走行するワイヤーの上方に、このワイヤー走行方向と直交する方向を長手方向として配したロッドレスシリンダと、前記ロッドレスシリンダにより移動するピストンに連繋させて、シリンダの外側を摺動するスライドベースと、前記スライドベースに着脱自在な給水ホースと、前記スライドベースを介して前記給水ホースと連通する紙切ノズルと、前記ロッドレスシリンダのシリンダ内に作動用空気を供給する空気配管とからなることを特徴としている。
【0011】
すなわち、紙切ノズルの移動をロッドレスシリンダのピストンの移動に伴わせるようにしたものである。ロッドレスシリンダは、シリンダの内部に摺動可能なピストンが収容されており、このピストンにより区画された両側の室に作動圧をかけることによりピストンが移動するものである。このピストンは永久磁石が主体として形成され、シリンダの外側にこの永久磁石の磁力を受ける磁性体を備えた前記スライドベースを支持させることにより、ピストンの摺動に伴われてこのスライドベースがシリンダの外側を摺動することになる。このスライドベースに紙切ノズルが取り付けられることにより、紙切ノズルをシリンダに沿って移動させることができる。このスライドベースを介して給水ホースと紙切ノズルとが連通しているから、紙切ノズルから高圧の切断水を噴射させて、紙切を行うことができる。すなわち、通紙時には通紙のためのテールを形成する位置まで移動させ、抄紙時には耳切をする位置まで移動させる。
【0012】
また、請求項2の発明に係るオートテンダー装置は、前記給水ホースをコイルホースとして、このコイルホースと前記スライドべースとの着脱に、継手手段を介在させてあることを特徴としている。
【0013】
給水ホースに、螺旋状に形成されているコイルホースを利用するようにしたものである。このコイルホースは自由度が大きいため、不用意に撓んでしまっては不都合であるから棒材等を挿通させておくことが好ましい。
【0014】
また、請求項3の発明に係るオートテンダー装置は、前記ロッドレスシリンダを収容するケーシングの、抄紙機の操作側または駆動側の端部の一方、または双方に補修用窓を形成してあることを特徴としている。
【0015】
ロッドレスシリンダを、例えばシリンダフレームに支持させ、このシリンダフレームに前記給水ホースや空気配管を収容させて組み立てることが好ましい。そして、このシリンダフレームをケーシングに収容させた状態で設置する場合には、給水ホースや空気配管がこのケーシングに収容された状態となる。そこで、これらを交換したりする補修時には、これら給水ホースや空気配管を露呈させることができるように、前記補修用窓を設けたものである。
【0016】
また、請求項4の発明に係るオートテンダー装置は、抄紙機の上方に抄紙機の幅方向と平行な方向を長手方向として固定させたガイドレールに摺動可能に支持させてあることを特徴としている。
【0017】
このオートテンダー装置の補修時には、オートテンダー装置の全体を抄紙機の側方に引き出せるようにしたものである。
【0018】
また、請求項5の発明に係るオートテンダー装置は、前記ロッドレスシリンダを前記ガイドレールに摺動可能に連繋させる一対の支持ブラケットのうちの一方を、鉛直方向を軸として前記ガイドレールに対して回動可能とするとともに、ロッドレスシリンダをこの支持ブラケットと反対側の端部から摺動させて、前記ワイヤーの上方から引き出せるようにしたことを特徴としている。
【0019】
補修時に引き出されたオートテンダー装置を、抄紙機の流れ方向に沿った方向とすることができるようにしたものである。すなわち、抄紙機の操作側の作業スペースが小さい場合には、支持ブラケットで回動させながら抄紙機の側方に引き出すことにより、オートテンダー装置の長手方向を抄紙機の流れ方向と平行に配して、操作側の作業スペースに、抄紙機の幅員と等しい幅員を必要としない。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係るオートテンダー装置によれば、ロッドレスシリンダが用いられているから、紙切ノズルを移動させる駆動機構の部品点数が減じられて、構造が簡単となる。このため、故障が生じにくいオートテンダー装置とすることができる。
【0021】
また、請求項2の発明に係るオートテンダー装置によれば、給水ホースの自由度が大きくなり、紙切ノズルの移動に円滑に追随できると共に、破損しにくいものとすることができる。
【0022】
また、請求項3の発明に係るオートテンダー装置によれば、ケーシングに収容させることによって不用意に給水ホースや空気配管が露呈しない。しかも、このケーシングに補修窓を形成することによって容易に補修することができる。
【0023】
また、請求項4の発明に係るオートテンダー装置によれば、抄紙機の側方に引き出して補修を行うことができるので、補修作業を容易に行うことができると共に、抄紙機の運転中であっても補修を行うことができる。
【0024】
また、請求項5の発明に係るオートテンダー装置によれば、抄紙機の側方に引き出しながら回動させることにより、このオートテンダー装置の長手方向を抄紙機の流れ方向に沿った状態に位置させることができるから、抄紙機の操作側に大きな作業スペースを必要とすることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るオートテンダー装置を具体的に説明する。
【0026】
図1はこの発明に係るオートテンダー装置30の概略構造を示す斜視図であり、ケーシング40と併せて示している。オートテンダー装置30は、主として、ロッドレスシリンダ31と、このシリンダ31に遊嵌されたスライドベース32、シリンダ31の端部を支持するとともにスライドベース32の摺動を案内するシリンダフレーム33とから構成されている。前記スライドベース32は、図1及び図2に示すように、前記シリンダ31に遊嵌される摺動部32aとこの摺動部32aの上部に取り付けられた被案内部32bとにより形成されている。この被案内部32bは、シリンダ31の長手方向(以下、この方向を「MC方向」とする。)と直交する方向(以下、この方向を「M方向」とする。)の長さが、前記摺動部32aよりも大きくしてある。スライドベース32の下端部には流路ブロック32cが固定ネジ32dによって着脱可能に取り付けられており、この流路ブロック32cのMC方向と平行な壁面にL字形に形成されたノズル管34aの一端部が接続されている。ノズル管34aの他端部は下方を指向させてあり、この他端部に紙切ノズル34が取り付けられて、この紙切ノズル34から紙切のための高圧の切断水が下方に向けて噴射されるようにしてある。また、流路ブロック32cのM方向と平行な壁面に継手手段としてのカプラー35aを介して螺旋状に形成されたコイルホースからなる給水ホース35が接続され、流路ブロック32cに形成された図示しない流路を介して前記紙切ノズルと連通させてある。なお、給水ホース35には図示しない高圧ポンプから高圧の切断水が供給されるようにしてある。また、この給水ホース35の螺旋の軸に棒材等を挿通させて、不用意に撓まないようにしてある。
【0027】
前記シリンダフレーム33は、前記シリンダ31の端部をそれぞれ支持する一対のシリンダ支持板33aと、これらシリンダ支持板33aの上部に掛け渡された矩形の筒状に形成された上部支持部材33b、上部支持部材33bの下面であってM方向の両端部にこの上部支持部材33bに沿って設けられたほぼ方形の筒状に形成されたスペーサ部材33c、これらスペーサ部材33cの下部にこれらスペーサ部材33cよりも拡大されたぼぼ方形の筒状に形成された下部ガイド部材33dとにより構成されている。前記スペーサ部材33cによって前記上部支持部材33bと下部ガイド部材33dとの間に空間部が形成され、この空間部に前記スライドベース32の案内部32bのM方向の端部が位置するようにしてある。このため、スライドベース32は案内部32bが上部支持部材33bと下部ガイド部材33dとにより挟まれた状態となって、摺動時の姿勢が保たれるようにしてある。
【0028】
また、前記スライドベース32の前記流路ブロック32cの前記ノズル管34aが接続された面には、図2及び図3に示すように、取付ブラケット36aを介して検出片36が設けられている。取付ブラケット36aは、図3に示すように、ノズル管34aの接続部を跨ぐ状態に取り付けられた一対のものとしてあり、図2に示すように、ノズル管34aよりもさらに外方に突出され、先端部が上方を指向して曲げ成型され、この先端部に挟まれた状態に前記検出片36が取り付けられている。
【0029】
そして、前記シリンダ31の両端部に空気配管37a、37bが接続され、シリンダ31の内部に収容されている図示しないピストンによって区画された各室に作動用空気が供給されるようにしてある。なお、このピストン31には永久磁石が組み込まれており、前記スライドベース32の摺動部32aはこの永久磁石の磁力を受けるよう磁性体で形成されている。
【0030】
前記シリンダ31を保持させたシリンダフレーム33は、前記ケーシング40に収容されている。このケーシング40のM方向の一方の壁には、MC方向を長手方向とした長孔41が形成されており、前記ノズル管34aと取付ブラケット36aはこの長孔41を貫通させてケーシング40の外側に突出させてある。このケーシング40の前記長孔41が形成された壁面には、図2と図3に示すように、近接スイッチ38が取り付けてあり、前記検出片36がこの近接スイッチ38により検出されるようにしてある。また、この近接スイッチ38は、図5に示すように、MC方向に2箇所に設けられており、それぞれ近接スイッチ38a、38bで示してある。なお、同図上近接スイッチ38aに対向した位置に検出片36を併記してある。さらに、ケーシング40の前記長孔41が形成された壁と反対側の壁のMC方向の端部には補修用窓42が形成されており、この補修用窓42からケーシング41の内部に収容されたオートテンダー装置30の一部を露呈させられるようにしてある。
【0031】
前記ケーシング40の上面であって、MC方向の両端部には、図4及び図6に示すように、吊下ブラケット43、44が取り付けられており、この吊下ブラケット43、44を介して、抄紙機が設置されている家屋の天井に配されたH形鋼などからなるガイドレール45にMC方向へ摺動可能に吊り下げられている。図7及び図8は、吊下ブラケット43を示している。なお、この吊下ブラケット43はシリンダフレーム33をガイドレール45に対して摺動させて、抄紙機の上方から側方へ引き出す場合に、引き出し方向の後側となるものである。シリンダフレーム33はケーシング40と共に抄紙機の操作側に引き出すことになるから、前記吊下ブラケット43は抄紙機の駆動側に配されたものとなる。すなわち、図4において、ケーシング40は図上左方向に摺動させて引き出されることとなり、図上左側が抄紙機の操作側となり、前記ガイドレール45はケーシング40よりもさらに操作側に伸長されており、引き出された際には、吊下ブラケット43がこの伸長された部分に位置して、抄紙機の上方から全体が退避することができるようにしてある。
【0032】
前記吊下ブラケット43は、下部のブラケット主体43aと、このブラケット主体43aに対して鉛直方向を軸として回動可能に係合した摺動ブラケット43bとにより構成されている。ブラケット主体43aは板材を水平断面で扁平した十字形に組み合わされて形成されており、上端部には上支持板43cが、下端部には下支持板43dが、それぞれ設けられており、下支持板43dが前記ケーシング40の上面に着脱可能に固定されている。摺動ブラケット43bは、台座板43eにM方向で適宜間隔を設けて一対のローラブラケット43fが固定されており、このローラブラケット43fのそれぞれにこれらローラブラケット43fの内側を指向させて突出させた軸46aが取り付けられ、この軸46aに回動自在に支持ローラ46が支持されており、これら一対の支持ローラ46が、前記ガイドレール45に連繋するようにしてある。図7に示すように、ガイドレール45をH形鋼とした場合に、これら一対の支持ローラ46はこのH形鋼のウェブ45aを挟む位置に位置し、このH形鋼の下フランジ45bに載置される位置に位置するようにしてある。前記台座板43eの中央部には下方を指向させて突出させた支持軸47が設けられており、他方、ブラケット主体43aにはこの支持軸47を受容する窪み部43gが形成されており、上支持板43cにはこの支持軸47が遊挿される透孔47aが形成されている。そして、支持軸47の前記窪み部43gに位置する先端部に前記透孔47aよりも大径の支持ローラ48が支持されている。したがって、ブラケット主体43aは摺動ブラケット43bに対して回動自在に連繋している。
【0033】
また、図7に示すように、吊下ブラケット43の前記台座板43eと前記上支持板43cとを貫通する透孔43hが形成されており、他方ガイドレール45にはこの透孔43hと合致する透孔45cが形成されている。これら透孔43h、45cに図示しない固定ボルトを挿通させ、図示しないナットを締め付けることにより吊下ブラケット43がガイドレール45に固定されるようにしてある。そして、吊下ブラケット43がガイドレール45に固定された状態では前記ケーシング40も位置が固定され、このとき前記近接スイッチ38が後述する動作に関して所定の位置に位置するようにしてある。また、吊下ブラケット43がガイドレール45に図示しない固定ボルトで固定された状態では、図7に示すように、前記支持ローラ46はガイドレール45との連繋が解除された状態、すなわち、H形鋼の下フランジ45bから離隔した状態となるようにしてある。
【0034】
なお、前記吊下ブラケット44は、吊下ブラケット43と同様の構造であっても構わないが、図6に示すように、ブラケット主体と摺動ブラケットとの間の回動構造を備えていないものであっても構わない。すなわち、吊下ブラケット44には、吊下ブラケット43における支持軸47と支持ローラ48に相当する部品を備えていない構造であっても構わない。なお、吊下ブラケット43と同一の部分は、図7に示す符号を同一の符号を付してある。
【0035】
以上により構成されたこの発明に係るオートテンダー装置の作用を、以下に説明する。
【0036】
抄紙機での通常の操業時には、前記検出片36が図5において抄紙機の駆動側に配されている前記近接スイッチ38aにより検出される退避位置にある。紙切れが生じて通紙作業を行う場合には、前記シリンダ31の図示しないピストンを摺動させる。すなわち、前記空気配管37aから作動用空気を供給し、空気配管37bからはシリンダ31の内部の空気を排出させる。なお、これら空気配管37a、37bは図示しないパイロットチェック弁を介して作動用空気を供給するようにし、このパイロットチェック弁の動作によって作動用空気の供給方向や空気配管37a、37bの開閉を行うようにすることが好ましい。作動用空気の供給によって、ピストンがシリンダ31の内部を摺動することになり、このピストンの永久磁石による磁力を受けている前記スライドベース32が同方向にシリンダ31に案内されて摺動することになる。このとき、スライドベース32の前記案内部32bがシリンダフレーム33の上部支持部材33bと下部ガイド部材33dとに案内されることにより、姿勢が維持される。
【0037】
前記スライドベース32の移動により、このスライドベース32に接続されている前記紙切ノズル34も同方向に移動することになり、図4及び図5において左方向に移動することになる。このスライドベース32が移動して、前記検出片36が近接スイッチ38bに検出されると、作動用空気の供給が停止すると共にシリンダ31が閉鎖されて、以後はスライドベース32は摺動せず、当該位置であるテール製作位置に停止した状態となる。他方、スライドベース32には前記給水ホース35が接続されているが、この給水ホース35はコイルホースとされているから、容易に伸縮してスライドベース32の移動に確実に追随することになる。
【0038】
スライドベース32がテール製作位置で停止すると、前記給水ホース35を介して切断水が前記紙切ノズル34から噴射されて、ワイヤーに伴われて走行する紙匹の操作側の端部から適宜距離の位置を切断することになり、この切断位置、すなわち近接スイッチ38bに対応したテール製作位置と操作側の端部側の耳切ノズルとの間で通紙用の前記テールTが形成されることになる。
【0039】
前記テールTが前記巻取リール10aに達して紙匹の連続性が確保されると、前記シリンダ31に、前述とは逆に空気配管37bから作動用空気を供給し、空気配管37aから排気する。これにより、シリンダ31の内部の図示しないピストンが摺動し、スライドベース32が、図4及び図5において、近接スイッチ38bの位置から右方向へ移動することになる。このとき、前記紙切ノズル34からの切断水の噴射が継続されることにより、紙匹の切断位置が徐々に操作側から遠ざかり、徐々にテールTの幅員が大きくなってクーチトリム幅に近づいてゆく。そして、スライドベース32の移動により、前記検出片36が駆動側に配されている前記近接スイッチ38aに対向する退避位置に位置すると、シリンダ31への作動用空気の供給と排気とが停止して、スライドベース32が近接スイッチ38aに対応した位置に停止することになる。この位置はクーチトリム幅の外側にあって以後は紙切ノズル34は紙匹の切断を行わず、この状態で通紙作業が完了し、一対の耳切ノズルにより所定の抄紙幅で抄紙機を操業することになる。
【0040】
次に、このオートテンダー装置30の補修時の作用について説明する。
【0041】
前記吊下ブラケット43、44をガイドレール45に固定させてある図示しない固定ボルトを前記透孔45c、43hから抜去すると、吊下ブラケット43、44が自由になるから、これら吊下ブラケット43、44が、前記支持ローラ46がガイドレール45の下フランジ45bに載置された状態となる位置まで下降する。このため、支持ローラ46がガイドレール45に対して転動することができる状態となり、吊下ブラケット43、44に吊り下げられているケーシング40をガイドレール45に沿って移動させることができる。ケーシング40はガイドレール45に対して、図4において左方向、すなわち抄紙機の操作部側に移動させて引き出すことになる。ケーシング40の移動によって吊下ブラケット44がガイドレール45から離脱すると、前記吊下ブラケット43のブラケット主体43aと摺動ブラケット43bとの間が回動可能となる。このため、ケーシング40を引き出しながら、前記吊下ブラケット43の前記支持軸47を中心として回動させることにより、ケーシング40の長手方向を抄紙機の流れ方向に沿った方向に変更させることができる。このため、ケーシング40の全体をMC方向へ引き出す場合に比べて、抄紙機の操作側の作業スペースが小さくてよい。
【0042】
ケーシング40が引き出された状態で、前記補修用窓42に臨んだ位置にスライドベース32を位置させれば、必要な補修作業を行うことができる。例えば、給水ホース35を交換する場合には、前記カプラー35aを外して、新しい給水ホース35に外したカプラー35aを接続させて、再度スライドベース32側のカプラーと接続させる。
【0043】
そして、補修が完了したならば、ケーシング40を、引き出す際と逆方向に回動させながらガイドレール45に対して押し込む。適宜位置まで押し込まれたならば、前記吊下ブラケット44をガイドレール45に連繋させ、以後は、吊下ブラケット43、44の両方で支持させながら移動させて、図4に示す状態とする。次いで、前記透孔45cに図示しない固定ボルトを挿通させてナットを締め付ければ、吊下ブラケット43、44がガイドレール45に当接するまで上昇し、図6及び図7に示すように、前記支持ローラ46がガイドレール45の下フランジ45bから離隔する。この状態で、オートテンダー装置30を作動可能な状態とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明によれば、部品点数を減じて、簡単な構造としたことにより、故障の少ないオートテンダー装置とすることができ、抄紙機の操業効率の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明に係るオートテンダー装置の概略構造を説明する斜視図である。
【図2】この発明に係るオートテンダー装置の縦断面図である。
【図3】(a)は図2の左側面図であり、(b)は(a)におけるA−A矢視図である。
【図4】この発明に係るオートテンダー装置の設置状態の概略を示す正面図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】図4の左側面図であり、吊下ブラケットを示す図である。
【図7】オートテンダー装置のケーシングを吊り下げる吊下ブラケットを示す側面図である。
【図8】図7に示す吊下ブラケットの正面図で、一部を省略して示してある。
【図9】従来のオートテンダー装置の概略構造を説明する図である。
【図10】オートテンダー装置と抄紙機のワイヤーパートにおける配置状態を説明する概略の斜視図である。
【図11】長網式抄紙機の構造の概略を説明する図である。
【符号の説明】
【0046】
2 ワイヤー
10a 巻取リール
30 オートテンダー装置
31 ロッドレスシリンダ
32 スライドベース
33 シリンダフレーム
34 紙切ノズル
34a ノズル管
35a カプラー(継手手段)
35 給水ホース
36 検出片
37a、37b 空気配管
38a、38b 近接スイッチ
40 ケーシング
41 ガイド孔
42 補修用窓
43 吊下ブラケット
44 吊下ブラケット
45 ガイドレール
46 支持ローラ
47 支持軸
48 支持ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機のワイヤーパートを走行するワイヤーの上方に、このワイヤー走行方向と直交する方向を長手方向として配したロッドレスシリンダと、
前記ロッドレスシリンダにより移動するピストンに連繋させて、シリンダの外側を摺動するスライドベースと、
前記スライドベースに着脱自在な給水ホースと、
前記スライドベースを介して前記給水ホースと連通する紙切ノズルと、
前記ロッドレスシリンダのシリンダ内に作動用空気を供給する空気配管とからなることを特徴とするオートテンダー装置。
【請求項2】
前記給水ホースをコイルホースとして、このコイルホースと前記スライドべースとの着脱に、継手手段を介在させてあることを特徴とする請求項1に記載のオートテンダー装置。
【請求項3】
前記ロッドレスシリンダを収容するケーシングの、抄紙機の操作側または駆動側の端部の一方、または双方に補修用窓を形成してあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオートテンダー装置。
【請求項4】
抄紙機の上方に抄紙機の幅方向と平行な方向を長手方向として固定させたガイドレールに摺動可能に支持させてあることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のオートテンダー装置。
【請求項5】
前記ロッドレスシリンダを前記ガイドレールに摺動可能に連繋させる一対の支持ブラケットのうちの一方を、鉛直方向を軸として前記ガイドレールに対して回動可能とするとともに、ロッドレスシリンダをこの支持ブラケットと反対側の端部から摺動させて、前記ワイヤーの上方から引き出せるようにしたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のオートテンダー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−262626(P2007−262626A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91306(P2006−91306)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】