説明

オートフォーカス式測量機

【課題】測定物を視準すると自動的にオートフォーカスを開始するオートフォーカス式測量機を提供する。
【解決手段】 視準望遠鏡(20)の角度を測定するエンコーダ(30)を備え、エンコーダから送られてくる角度が所定時間以上一定のときオートフォーカスを開始するオートフォーカス手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートフォーカス式測量機に関し、さらに詳細には自動的にオートフォーカスを開始する電子レベル(電子式水準儀)に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示したように、電子レベル2とは、目盛としてバーコード11が付された標尺1を用いて、このバーコード11を読んで高さhを測定するものである。近年、オートフォーカス式電子レベルも出現している。オートフォーカス式電子レベルとしては、後記特許文献1又は2に開示されたようなものが知られている。オートフォーカス式電子レベルの一例として、図4に後記特許文献1に開示されたもののブロック図を示す。
【0003】
この電子レベルは、視準望遠鏡20と電子装置部10とからなる。視準望遠鏡20は、対物レンズ21aと、合焦レンズ21bと、自動水平補正機構22と、ビームスプリッタ23と、焦点板20aと、接眼レンズ20bとを備える。
【0004】
電子装置部10は、ビームスプリッタ23で分けられた光を受光するラインセンサ24と、ラインセンサ24の出力を増幅する増幅器25と、増幅器25の出力をA/D変換するA/D変換器27と、A/D変換器27の出力を記憶するRAM28と、CCDラインセンサ24を駆動するCCD駆動回路29と、A/D変換器27とRAM28と駆動回路29へクロック信号を送るクロックドライバ26と、合焦レンズ21bを移動させるステッピングモータ41と、ステッピングモータ41を駆動するモータ駆動回路4と、モータ駆動回路4及びCCD駆動回路29を制御するマイコン3と、マイコン3に接続されたROM31及び表示部32とを備える。
【0005】
オートフォーカスは、次のように行われる。まず、合焦レンズ21bを最も接眼レンズ20bよりに位置させると、合焦レンズ21bが合焦位置にないため、ラインセンサ24の出力は、図5の(a)に示したように平坦に近い。そこで、マイコン3からの指示で合焦レンズ21bを対物レンズ21a側へ移動させていくと、ラインセンサ24の出力には、しだいに目盛位置に対応する画像データが検出されるようになる。そして、図5の(b)に示したように、ラインセンサ24の出力が基準値α以上になったとき、合焦レンズ21bを停止する。ここで、各山の中心線CLを求め、この中心線CLの間隔の平均値を求めると、この平均値から標尺までの距離が求まる。この中心線CLの間隔の平均値を求めるには、フーリエ変換のような周波数解析を用いてもよい。標尺までの距離が求まれば、合焦レンズ21bを正確な合焦位置に移動させることができる。合焦レンズ21bが正確な合焦位置に位置すると、ラインセンサ24からの出力は、図5の(c)に示したようにいっそう明瞭となり、標尺1に付されたバーコード11が確実に読めて、測定値が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−12949号公報
【特許文献2】特開2006−234614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記特許文献1に開示された電子レベルでは、標尺を視準した後にオートフォーカスボタンや測定開始ボタンを押すことによって、オートフォーカスを開始させていた。このため、標尺を視準してからオートフォーカスボタンや測定開始ボタンが押されるまでの時間が、測定時間を長くしてしまうという問題があった。また、オートフォーカスボタンや測定開始ボタンを押すと、電子レベルに衝撃や振動を与えて測定誤差を発生させるという問題もあった。本発明は、前記問題を解決するため、測定物を視準すると自動的にオートフォーカスを開始するオートフォーカス式測量機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明のオートフォーカス式測量機は、視準望遠鏡の角度を測定するエンコーダを備え、該エンコーダから送られてくる角度が所定時間以上一定のときオートフォーカスを開始するオートフォーカス手段を備えた。請求項2に係る発明のオートフォーカス式電子レベルは、視準望遠鏡の水平角を測定するエンコーダを備え、該エンコーダから送られてくる水平角が所定時間以上一定のときオートフォーカスを開始するオートフォーカス手段を備えた。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、エンコーダから送られてくる角度が所定時間以上一定のときオートフォーカスを開始するので、測定物を視準した後にオートフォーカスボタンや測定開始ボタンを押す必要がなくなり、測定時間を短縮できる。また、オートフォーカスボタンや測定開始ボタンを押すことによって、測量機に衝撃や振動を与えて測定誤差を発生させることもなくなる。
【0010】
請求項2に係る発明も、エンコーダから送られてくる水平角が所定時間以上一定のときオートフォーカスを開始するので、請求項1に係る発明と同じ効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係るオートフォーカス式電子レベルのブロック図である。
【図2】前記電子レベルの測定手順を説明するフローチャートである。
【図3】電子レベルと標尺を説明する図である。
【図4】従来のオートフォーカス式電子レベルのブロック図である。
【図5】オートフォーカスの原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1及び図2に基づいて、本発明の電子レベルの一実施例を説明する。この電子レベルは、図1に示したように、電子レベルに視準望遠鏡20の水平角を測定するエンコーダ30を備える。
【0013】
エンコーダ30は、なるべく安価なものを使用する。マイコン3は、エンコーダ30から送られてくる水平角が所定時間以上一定のとき、視準完了と判断して、直ちにオートフォーカスを開始し測定を行う測定プログラムを内蔵する。これ以外は、図3に示した電子レベルと略同じであるので、同じ部分に同じ符号を付すに止めて、説明を省略する。なお、電子レベルの視準望遠鏡20は、原則として水平に保たれるものであるので、本実施例では高度角を測定するエンコーダは備えない。
【0014】
この電子レベルの測定プログラムが行う測定手順を、図2に示したフローチャートに基づいて、さらに詳細に説明する。
【0015】
観測者は、電子レベルと標尺を設定位置にセットして、電子レベルの電源スイッチをONにすると測定プログラムがスタートする。次に、ステップS1に進んで、マイコン3は、観測者が視準操作を開始したか否かを判断する。視準操作開始の判断は、電源スイッチ又は測定ボタンが押されたときに視準操作開始と判断する。この他、エンコーダ30から送られてくる水平角を定期的に読み込み、前回読み込んだ水平角と今回読み込んだ水平角との角度差の絶対値が所定値(例えば30秒)以上になったときも、視準操作開始と判断する。
【0016】
観測者は、ピープサイト(照準装置)を用いて標尺を視準する。もちろん、視準望遠鏡20で標尺を視準してもよいが、オートフォーカス式電子レベルの場合は照準し易いピープサイトによる視準でも充分である。視準操作が開始されると、エンコーダ30から送られてくる水平角が刻々変化する。
【0017】
次にステップS2に進んで、マイコン3は、エンコーダ30から送られてくる水平角を読み込む。次にステップS3に進んで、前回読み込んだ水平角と今回読み込んだ水平角との角度差の絶対値が所定値(例えば2秒)以下か否か判断する。その角度差の絶対値が所定値を越えていれば、視準操作中として、ステップS2に戻る。その角度差の絶対値が所定値以下なら、視準操作完了の可能性があるとして、ステップS4に進んで一定時間(例えば50m秒)遅延する。このステップS4は、前回読み込んだ水平角と今回読み込んだ水平角との角度差の絶対値が所定値以下になったときからの時間を計るために必要なものである。
【0018】
次に、ステップS5に進んで、マイコン3は、前回読み込んだ水平角と今回読み込んだ水平角との角度差の絶対値が所定値以下になったときから所定時間(例えば0.5秒)以上経過したか否かを判断する。その角度差の絶対値が所定値以下になったときからの時間は、その角度差の絶対値が所定値以下になったときから、そのステップS5が何回目かにより分かる。ただし、その角度差の絶対値が一旦所定値以下になっても、その後、その角度差の絶対値が所定値を越えたときは、それまで計っていた時間をクリアして、その後、その角度差の絶対値が再び所定値以下になったときからの時間を計り直す。
【0019】
前回読み込んだ水平角と今回読み込んだ水平角との角度差の絶対値が所定値以下になったときから所定時間経過していないときは、視準操作が未完了の可能性があるとして、ステップS1〜S5を繰り返す。所定時間以上経過したときは、視準操作が完了したとして、ステップS6に進んで、オートフォーカスを自動的に開始する。オートフォーカスは、従来のものと同様に行われる。ここで、前述したステップS1〜S6が、請求項1又は2に記載のオートフォーカス手段に相当する。
【0020】
オートフォーカスが完了すると次に、ステップS7に進んで、マイコン3は、電子レベルによる測定を行う。次に、ステップS8に進んで、マイコン3は、測定値を表示手段に表示する。次に、ステップS9に進んで、観測者は、測定停止するか否か、停止ボタンを押してマイコン3に指示する。停止ボタンが押されれば、ステップS10に進んで、測定及びオートフォーカスの停止処理を行い、ステップS2に戻って、次の測定点での測定に備える。測定及びオートフォーカスの停止処理とは、次の測定点での測定の準備をするために、電子レベルの働きを一時停止させるとともに、今記憶している測定に関するデータ、オートフォーカスに関するデータをクリアすることである。停止ボタンが押されなければ、ステップS7に戻って、停止ボタンが押されるまで待つ。
【0021】
この電子レベルでは、観測者が標尺を視準すると、オートフォーカスを自動的に開始するので、標尺を視準した後にオートフォーカスボタンや測定開始ボタンを押す必要がなくなり、測定時間を短縮できる。しかも、オートフォーカスボタンや測定開始ボタンを押すことがなくなるので、電子レベルに衝撃や振動を与えて測定誤差を発生させるという問題も起きなくなる。
【0022】
また、この電子レベルは、水平角を測定するエンコーダ30を備えているので、標尺を設置した測定点の水平角を測定できる。さらに、スタジア測量によって標尺までの距離測定ができる。レベルであるから、当然、測定点と視準点の高度差を測定できる。よって、この電子レベルは、測定点と視準点の高度差と標尺までの距離とから、測定点の高度角も測定できて、水平角、高度角、距離を測定できる簡易なトータルステーションとしても使用できる。
【0023】
ところで、本発明は前記実施例に限るわけではなく、種々の変形が可能である。たとえば、前記実施例は電子レベルであったが、本発明はエンコーダを備えるその他の測量機(トータルステーション、セオドライト等)にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0024】
1 電子レベル
2 標尺
20 視準望遠鏡
30 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視準望遠鏡の角度を測定するエンコーダを備え、該エンコーダから送られてくる角度が所定時間以上一定のときオートフォーカスを開始するオートフォーカス手段を備えたオートフォーカス式測量機。
【請求項2】
視準望遠鏡の水平角を測定するエンコーダを備え、該エンコーダから送られてくる水平角が所定時間以上一定のときオートフォーカスを開始するオートフォーカス手段を備えたオートフォーカス式電子レベル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−93171(P2012−93171A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239680(P2010−239680)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000148623)株式会社 ソキア・トプコン (114)