説明

オープンガイド式ヘッドホン

【課題】音圧を大幅に下げることができるオープンガイド式ヘッドホンを提供する。
【解決手段】オープンガイド式ヘッドホン100は、結合部と、ヘッドホン本体20と、スピーカ30と、を備える。ヘッドホン本体20には、収容室21、共鳴腔22、および音導管23を有する。共鳴腔22は、収容室21に相対する底壁221と底壁の周囲に連接する周壁222とにより形成される。音導管23は、ヘッドホン本体20の外側で共鳴腔22に対応する箇所に設けられる。音導管23の一端231は共鳴腔22の底壁221に繋がり、他端232は外耳の方向に延伸する。スピーカ30は、収容室21内に設置され、振動膜31を有する。振動膜31は、共鳴腔22方向に設置され、振動膜31と共鳴腔22の底壁221との間には第2の距離L2を保持する。これにより、音圧を大幅に下げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンガイド式ヘッドホンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般の使用者は、例えば、エムピースリー(MP3(登録商標))等の再生機器で再生された音楽や音声を聞くとき、ヘッドホンを使用することがある。尚且つ、好ましい音質を獲得するために、従来のヘッドホンは、通常、直接使用者の耳部に挿入され、全外耳道を塞ぎ、外耳道を共鳴空間として利用することで、音声の中音、低音の飽和度を高める。
【0003】
しかし、前述方式は、完全に外耳道を密閉してしまうため、使用時、使用者に閉塞感を感じさせ、しかも、音声が過度に共鳴すると音質のクリア度に影響を及ぼす。特に、長期的に使用した場合、使用者の外耳道が効果的に音圧を放出できない故に、聴力疲労を引き起こす。また、外耳道を完全に密閉する方式では、使用者は周囲の音を聞くことができないため、使用安全上に問題が残る。
【0004】
前述に関し、図1を参照する。特許文献1に開示された電気音響変換器において、電気音響変換器200は、一使用者の耳部300に装着され、尚且つ、耳部300の外耳301の外側に配置する。電気音響変換器200は外殻体201を備え、外殻体201の一方側には開口202を設け、開口202箇所にはスピーカ203を固設する。スピーカ203の振動膜204は、開口202の外側を向き、外殻体201の他方側にはさらに音導管205を設け、音導管205の直径は耳部300の外耳道302より小さく、外耳道302内に挿入する。以上により、スピーカ203から発せられる音声は、外耳道302内に導かれ、尚且つ、外耳道302を密閉することがないため、前述した従来のヘッドホンの欠点を効果的に改善することができる。
【0005】
また、電気音響変換器200の使用時、音導管205を外耳道302に挿入するため、スピーカ203からの音声は、直接、外耳道302内に送られるため、外耳道302内の音圧が高くなり、長期間使用すると、使用者に聴力疲労が発生し易い。また、スピーカ203の振動膜204が開口202の外側に向いており、外殻体201に包覆されていないため、スピーカ203からの音声を周囲の者に聞かれるという不便性もある。
よって、本発明の発明者は、電気音響変換器200にはさらなる改善が必要であることを感じ、本発明の誕生につながった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平03−117999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、音圧を大幅に下げることができるオープンガイド式ヘッドホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために、本発明のオープンガイド式ヘッドホンは、結合部と、ヘッドホン本体と、スピーカと、を備える。
結合部は、使用者の頭部に固定するためのものである。
ヘッドホン本体は、結合部に結合し、使用者の外耳の外側に位置する。また、ヘッドホン本体には、収容室、共鳴腔、および、音導管を有する。共鳴腔は、収容室に相対する底壁と底壁の周囲に連接する周壁とにより形成される。音導管は、ヘッドホン本体の外側で共鳴腔に対応する箇所に設けられる。音導管の一端は共鳴腔の底壁に繋がり、音導管の他端は外耳の方向に延伸し、使用者の外耳道との間に第1の距離を保持する。
スピーカは、収容室内に設置され、振動膜を有する。振動膜は、共鳴腔方向に設置され、振動膜と共鳴腔の底壁との間に第2の距離を保持する。
【0009】
本発明のオープンガイド式ヘッドホンは、スピーカの振動膜が共鳴腔に向き、共鳴腔は音導管につながり、音導管は外耳の外側に延伸しているため、スピーカからの音声は、まず先に共鳴腔内で共鳴し、共鳴後の音声は、音導管を通して外耳に導かれ、外耳は、自然に音を受け取る方式で音声を受信した後、使用者の外耳道に反射する。これにより、使用者は、最も自然な方式でスピーカから発せられた音声を聞くことができるため、外耳道に対して影響を及ぼす音圧を大幅に低下させ、聴力疲労を効果的に防ぐことができる。しかも、音声はまず先に共鳴腔内で共鳴してから外耳道に達するため、音声が効果的に安定し、音質がクリアとなり、その音声をリアルに表現することができる。また、オープンガイド式ヘッドホンのスピーカは、ヘッドホン本体内に設置され、ヘッドホン本体で包覆されるため、スピーカからの音声はヘッドホン本体によって阻隔され、周囲の者に迷惑をかけることがない。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオープンガイド式ヘッドホンは、音圧を大幅に下げることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の電気音響変換器の模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるオープンガイド式ヘッドホンの斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるオープンガイド式ヘッドホンの断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるオープンガイド式ヘッドホンを使用した状態を説明する模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるオープンガイド式ヘッドホンを使用した状態を説明する模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるオープンガイド式ヘッドホンの分解斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態によるオープンガイド式ヘッドホンを使用した状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態によるオープンガイド式ヘッドホンを図面に基づいて説明する。なお、以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
図2、図3、及び図4には、本発明の第1実施形態によるオープンガイド式ヘッドホンの斜視図、断面図、及びオープンガイド式ヘッドホンを使用した状態の模式図を示す。図に示したオープンガイド式ヘッドホン100は、主に、次の構成要素を含む。
結合部10は、使用者の頭部に固定するためのものであり、本実施形態においては、結合部10は耳掛部11である。耳掛部11は、湾曲した耳掛アーム111を備え、使用者の耳部300に引っ掛けて固定する。
【0013】
ヘッドホン本体20は、結合部10に結合し、使用者の外耳301の外側に位置する。また、ヘッドホン本体20は、収容室21と、収容室21につながる共鳴腔22とを内設する。共鳴腔22は、収容室21に相対する底壁221と、底壁221の周囲に設けられる周壁222とにより形成される。本実施形態において、収容室21および共鳴腔22はいずれも円柱状とし、共鳴腔22の直径は収容室21の直径より若干小さい。また、共鳴腔22の底壁221は、外耳301に向かって凹設され径外側に向かうにつれて深さが徐々に縮小する円弧面を形成する。
ヘッドホン本体20の外側で共鳴腔22に対応する箇所には、音導管23がさらに設けられる。音導管23の一端を入口端231として定義し、共鳴腔22の底壁221に接続する。音導管23の他端を出口端232として定義し、外耳301の方向に延伸させ、使用者の外耳道302との間に第1の距離L1を保持する。本実施形態において、音導管23は、傾斜方式で外耳301方向に延伸して設置される。入口端231の内径は、出口端232の内径より大きく、音導管23の内径は5mm以上10mm以下とする。同時に音導管23の長さ、即ち入口端231と出口端232との間の第1の距離L1は10mmとする。
【0014】
スピーカ30は、収容室21内に設置される。スピーカ30は、振動膜31を備える。振動膜31は、共鳴腔22方向に設置され、スピーカ30の振動膜31と共鳴腔22の底壁221との間には第2の距離L2を保持する。スピーカ30の直径は、13mm以上40mm以下とする。本実施形態において、スピーカ30の振動膜31と共鳴腔22の底壁221との間の第2の距離L2は0.7mm以上とし、スピーカ30の直径は18mmとした。
【0015】
図5には、本実施形態の動作図を示した。使用者は、オープンガイド式ヘッドホン100を図示しない再生装置に接続し、再生装置から再生される音声を聞く。このとき、スピーカ30の振動膜31は共鳴腔22に向き、共鳴腔22は音導管23につながり、音導管23は外耳301の外側に延伸する。したがって、スピーカ30からの音声は、まず先に共鳴腔22内で共鳴し、共鳴後の音声は音導管23を通して外耳301に導かれ、外耳301は、自然に音を受け取る方式で音声を受信した後、使用者の外耳道302に反射する。これにより、使用者は、最も自然な方式でスピーカ30から発せられた音声を聞くことができるため、外耳道302に対して影響を及ぼす音圧を大幅に低下させ、聴力疲労や聴力損失を効果的に防ぐことができる。しかも、音声はまず先に共鳴腔22内で共鳴してから外耳道302に達するため、音声が効果的に安定し、音質がクリアとなり、再生装置から再生された音声をリアルに表現することができる。また、オープンガイド式ヘッドホン100のスピーカ30は、ヘッドホン本体20内に設置され、ヘッドホン本体20で包覆されるため、スピーカ30からの音声はヘッドホン本体20によって阻隔され、周囲の者に迷惑をかけることがない。
【0016】
特に、機器によるシミュレーション及び実際のテストの結果、スピーカ30は、外耳301の音声受信方式に符合させるための十分な音量を必要とし、スピーカ30の直径は15mm以上としなければならない。それとともに、外耳301を覆う面積が過多となり、外耳301の音受信機能が低下するのを防ぐために、スピーカ21の最大サイズは40mm以下に抑える必要がある。そこで、本実施形態においては、スピーカ30の直径を18mmとし、これは、室内、戸外兼用の音量満足度が最も好ましいサイズである。
【0017】
さらに、スピーカ30の振動膜31と共鳴腔22の底壁221との間には第2の距離として一定の距離を保持することにより、共鳴腔22内に一定の共鳴空間が形成され、音声を効果的に共鳴させることができる。本実施形態では、スピーカ21の直径を考慮し、スピーカ30の振動膜31と共鳴腔22の底壁221との間の距離を0.7mm以上とするため、振動膜31の最大振動幅が共鳴腔22に悪影響を与えることはない。さらに、共鳴腔22には、共鳴させるための最も好ましい共鳴空間を備える。また、共鳴腔22の直径がスピーカ30より若干小さく、共鳴腔22の底壁に円弧面を形成するため、スピーカ30から発せられた音声を効果的に反射し、共鳴腔22内の音声に最も好ましい共鳴を生じさせる。
【0018】
また、外耳道302の最も敏感な周波数は1kHzから4kHzであるため、本実施形態の機器によるシミュレーション及び実際テストでは、音導管23の入口端231の内径を出口端232より大きくし、音導管23の直径を5mm以上10mm以下にした。これにより、シミュレートした外耳道302の共振係数は1kHzから4kHzとなり、最良の共振を達成し、音声の音質をリアリティに表現し、効果的に音声を入口端231から出口端232に伝導した。また、音導管23が外耳301の反射効果に影響を及ぼすのを防ぐために、外耳301に接触しないという前提のもと、音導管23の最も好ましい長さを本実施形態では10mmとする。また、音導管23が傾斜方式で外耳301方向に延伸するため、ヘッドホン本体20を外耳301の近くに装着することができる。これにより、ヘッドホン本体20が外耳301を覆う面積を減らし、外耳301は効果的に外界環境の音声を受信することができる。
【0019】
(第2実施形態)
図6及び図7には、本発明の第2実施形態によるオープンガイド式ヘッドホンの分解斜視図及び動作図を示した。図に示すとおり、本実施形態のオープンガイド式ヘッドホン100が第1実施形態と異なる箇所は、結合部10が耳クリップ12である点である。耳クリップ12は、クリップアーム121を備え、クリップアーム121上には相対する磁石122が設けられる。使用者は、まず、クリップアーム121を耳部300の両側にそれぞれ配置し、磁石122の磁力の相互吸引によって、クリップアーム121で使用者の耳部300を挟み込む。音導管23の出口端232の外周囲エッジ箇所には、外耳301下方の溝部303に引っ掛けて固定するための環状突出体233が設けられ、ヘッドホン本体20の一部重量を引き受ける。これにより、本実施形態のオープンガイド式ヘッドホン100は、第1実施形態と同様の効果を達成する他、耳クリップ12の設計を通して装着上の便利性と快適性を高める。
【符号の説明】
【0020】
100・・・・オープンガイド式ヘッドホン
10・・・・結合部
11・・・・耳掛部
111・・・耳掛アーム
12・・・・耳クリップ
121・・・クリップアーム
122・・・磁石
20・・・・ヘッドホン本体
21・・・・収容室
22・・・・共鳴腔
221・・・底壁
222・・・周壁
23・・・・音導管
231・・・入口端
232・・・出口端
233・・・環状突出体
30・・・・スピーカ
31・・・・振動膜
L1・・・・第1の距離
L2・・・・第2の距離
200・・・・電気音響変換器
201・・・・外殻体
202・・・・開口
203・・・・スピーカ
204・・・・振動膜
205・・・・音導管
300・・・・耳部
301・・・・外耳
302・・・・外耳道
303・・・・溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部に固定するための結合部と、
前記結合部に結合し、前記使用者の外耳の外側に位置し、内部には収容室、前記収容室に相対する底壁と前記底壁の周囲に設けられる周壁とにより形成され前記収容室につながる共鳴腔、および、外側の前記共鳴腔に対応する箇所に設けられ、一端が前記共鳴腔の前記底壁に繋がり、他端が前記外耳の方向に延伸し、使用者の外耳道との間に第1の距離を保持する音導管を有するヘッドホン本体と、
前記収容室内に設置され、前記共鳴腔方向に設置されて前記共鳴腔の前記底壁との間に第2の距離が保持される振動膜を有するスピーカと、
を備え、
前記音導管の内径は、5mm以上10mm以下であり、
前記スピーカの前記第2の距離は、0.7mmであり、
前記スピーカから発せられる音声は、まず先に前記共鳴腔内で共鳴を起こし、共鳴後の音声が前記音導管を通して前記外耳に導かれ、前記外耳が音声を受信した後、前記使用者の前記外耳道に反射した音声を使用者が聞くことを特徴とするオープンガイド式ヘッドホン。
【請求項2】
前記ヘッドホン本体に接続する前記音導管の前記一端を入口端とし、前記他端を出口端として定義し、前記入口端の内径は、前記出口端の内径より大きいことを特徴とする請求項1に記載のオープンガイド式ヘッドホン。
【請求項3】
前記共鳴腔の前記底壁は、前記外耳に向かって凹設され径外側に向かうにつれて深さが徐々に縮小する円弧面を形成することを特徴とする請求項1に記載のオープンガイド式ヘッドホン。
【請求項4】
前記結合部は、耳クリップであり、
前記耳クリップは、一対のクリップアームを有し、
前記クリップアーム上には、相対する磁石が設けられ、前記磁石の磁力で前記使用者の耳部を挟み込み固定することを特徴とする請求項1に記載のオープンガイド式ヘッドホン。
【請求項5】
前記ヘッドホン本体に接続する前記音導管の前記一端を入口端として、前記他端を出口端として定義し、前記出口端の外周囲エッジ箇所には環状突出体を繞設することを特徴とする請求項1に記載のオープンガイド式ヘッドホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−106130(P2013−106130A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247366(P2011−247366)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(511274260)
【Fターム(参考)】