説明

カキ殻剥き具およびカキ殻剥き方法

【課題】容易かつ安全に殻付きのカキから身を取り出すことができ、製造コストを抑えることのできるカキ殻剥き具およびこの殻剥き具を用いたカキ殻剥き方法を提供する。
【解決手段】平板状の刃部2と、上記刃部2の基端部において該刃部2を固定する把持部3とを備えてなるカキ殻剥き具1であって、上記刃部2は、上記把持部3に固定される上記基端部より長手方向に延びる平坦部2aの先端部分2bにおいて、内側に切刃2dを有する鎌状の突起部2cを有するものであり、上記刃部2の平坦部2aに対して上記突起部2cを含む先端部分2bが該刃部の厚さの1〜3倍の厚さ分量湾曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカキ殻剥き具およびこの殻剥き具を用いたカキ殻剥き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の先端部が尖ったオイスターナイフなどによるカキの殻剥き方法では、カキを手で握って固定し、ナイフの刃を使用者の手前から向こう側へ移動させるなどして、カキの閉殻筋を切断して殻を開けるものであった。しかしながら、二枚貝であるカキは強固にその殻を閉じており、また、カキ殻内部の閉殻筋を刃先で探って見つけることは難しく、特に家庭でカキを食する場合など、熟練者でない者がこの方法で殻を開けることは困難であった。また、力いっぱいナイフを移動させてカキを固定する側の手を傷つけるという問題もあった。
【0003】
従来、カキの殻を剥く手段として、複数の部材を組み合わせたカキ殻剥き具が開示されている(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、複雑な形状のものであると製造コストが嵩むという問題がある。例えば、カキを一般家庭で食する場合や、贈答用などのカキに殻剥き具が付属品として配布される場合などでは、殻剥き具は使用が容易であることと共に安価であることが求められる。
【特許文献1】特開平03−232448号公報
【特許文献2】特開平06−296453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、容易かつ安全に殻付きのカキから身を取り出すことができ、製造コストを抑えることのできるカキ殻剥き具およびこの殻剥き具を用いたカキ殻剥き方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカキ殻剥き具は、平板状の刃部と、上記刃部の基端部において該刃部を固定する把持部とを備えてなるものであって、上記刃部は、上記把持部に固定される上記基端部より長手方向に延びる平坦部の先端部分において、内側に切刃を有する鎌状の突起部を有するものであり、上記刃部の平坦部に対して上記突起部を含む先端部分が該刃部の厚さの1〜3倍の厚さ分量湾曲していることを特徴とする。
また、上記刃部は、ステンレス製またはプラスチック製であることを特徴とする。
【0006】
本発明のカキ殻剥き方法は、カキ殻頂の他端の一辺を切り取る工程と、上記切り取られた一辺よりカキの右殻の内壁に沿って上記カキ殻剥き具の刃部を挿入し、該刃部の突起部をカキの右殻−閉殻筋間に引っ掛けて切断し、カキの右殻と身とを外す工程と、上記刃部の先端部分でカキの左殻−閉殻筋間を切断し、カキの左殻と身とを外す工程とを備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカキ殻剥き具は、平板状の刃部と、この刃部の基端部において該刃部を固定する把持部とを備えてなるものであって、刃部は、把持部に固定される基端部より長手方向に延びる平坦部の先端部分において、内側に切刃を有する鎌状の突起部を有する。このため、殻剥き具の刃部をカキの殻内部に挿入した後、切刃を有する突起部をカキの閉殻筋に引っ掛け、そのまま切断できるので、容易にカキの殻より身を外すことができる。
また、上記刃部の平坦部に対して突起部を含む先端部分が刃部の厚さの1〜3倍の厚さ分量湾曲しているので、カキの殻の一辺を切り取った部分より殻の内側に沿って殻剥き具を挿入しやすい。また湾曲しているので切断されたカキの身を傷つけることなく取り出せる。
【0008】
本発明のカキ殻剥き方法は、カキ殻頂の他端の一辺を切り取る工程と、この切り取られた一辺よりカキの右殻内側に沿ってカキ殻剥き具の刃部を挿入し、該刃部の突起部をカキの右殻−閉殻筋間に引っ掛けて切断し、カキの右殻と身とを外す工程と、上記刃部の先端部分でカキの左殻−閉殻筋間を切断し、カキの左殻と身とを外す工程とを備えてなるため、熟練者でなくても容易にカキの殻剥きができる。
【0009】
本発明のカキ殻剥き具は、複数の部材から構成するなど複雑な構造とすることなく、また刃部がステンレス製またはプラスチック製であるので、製造工程を少なくすることができ、製造コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のカキ殻剥き具の一例について図に基づき説明する。図1(a)は本発明のカキ殻剥き具の全体斜視図であり、図1(b)は図1(a)の先端部分2bを裏側から見た部分斜視図である。また、図2および図3は本発明のカキ殻剥き具を用いた実施形態の一例を示す斜視図である。
【0011】
図1(a)に示すように、本発明のカキ殻剥き具1は、平板状の刃部2と、この刃部2の基端部において刃部2を固定する把持部3とを備えてなるものである。
上記刃部2は、把持部3に固定されるその基端部より長手方向に延びる平坦部2aを形成し、その先端部分2bにおいて鎌状の突起部2cを有する。この鎌状の突起部2cには、内側すなわち把持部3側に切刃2dを有する(図1(b)参照)。また、刃部2の先端部分2bは、その先端周縁に切刃状に形成された部分2eを備えていてもよい。
【0012】
上記鎌状の突起部2cは、その内側の切刃2dを有する部分をカキの閉殻筋に引っ掛けて切断するものであるため、突起部2cの切刃2dを有する部分はカキの閉殻筋の直径に相当する程度の長さであればよい。また、切刃2dの形状は、直線状あるいは円弧状であってもよい。
また刃部2は、その基端部から鎌状の突起部2cを有する先端部分2bにわたり、折れ曲がった部分のない板状の部材であり、把持部3から続く部分は平坦部2aを形成し、この平坦部2aに対して突起部2cを含む先端部分2bが湾曲している。具体的には、突起部2cを含んで、刃部2の先端より長手方向に対して約1/3の部分が、平坦部2aに対して湾曲している。湾曲の角度については、刃部2をカキ殻内壁に沿わせて挿入することが容易である程度であればよく、具体的には、平坦部2aに対し先端部分2bが、刃部2の厚さの1〜3倍に相当する長さだけ(約 1〜6 mm )、緩やかに反っている。湾曲の向きについては後述する。
【0013】
図2に示すように本発明のカキ殻剥き具1を使用する場合、殻剥き具1の把持部3を握り、カキの殻の一辺を切り取った部分から、刃部2の先端部分2bから平坦部2aにわたる表面をカキの殻内部の壁面に沿わせながら挿入し、切刃2dを有する突起部2cをカキの閉殻筋に引っ掛けて切断する。このため、使用者がカキ殻剥き具1の把持部3を図2のように握ったときに、突起部2cが使用者側に突出する向きであり、また突起部2cの切刃2dが裏側(図2において刃部2の裏面)に設けられており、さらに刃部2の平坦部2aに対して先端部分2bが、上記切刃2dが設けられている面とは反対側へ(図2において奥側から手前側の方向へ)湾曲して反り上がっていると、殻剥き具1をカキの殻内部へ挿入しやすく、閉殻筋を切断しやすい。
【0014】
なお、図1に示すカキ殻剥き具1は、右利き用、すなわち本殻剥き具1を右手に持って使用することが好ましい形状を表わすが、これを鏡像化した左利き用の形状とすることもできる。
【0015】
本発明のカキ殻剥き具1は、二枚貝である殻付きカキの殻を剥くことを目的とするものであるため、本殻剥き具では、刃部2の把持部3に固定される基端部から先端部分までの長さを 70〜120 mm 程度とすることが好ましい。上記範囲より短いと、刃部2をカキに挿入する際、把持部がカキ殻に当たり突起部2cが閉殻筋に届かず、長い場合は作業が行ないにくい。
【0016】
本発明のカキ殻剥き具1の刃部2の材質としては、強度(曲がりにくさ、折れにくさ)や耐錆性、および食品に用いるものであるため衛生面や安全面などの点で優れることから、ステンレスやチタンなどの金属製、またはポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチック製であることが好ましい。このうち、製造コストを抑えられることから、ステンレス製またはプラスチック製であることが好ましい。
【0017】
本発明のカキ殻剥き方法について説明する。まず、カキ殻頂4c(右殻4aと左殻4bが繋がっている部分)の他端である腹側の一辺を、例えばはさみ等で切り取り、カキ4の殻に孔を開ける。次に、この殻の一辺を切り取ったカキ4を、例えば片方の手に軍手などをはめるなどして握り固定する。カキ4の握り方としては、カキの右殻4a(平坦な面を有する側の殻)を表にして殻頂4cを上側にし、一辺を切り取った部分4dを下側にして、カキの殻頂4c側を、図2に示すようにカキの左殻4b側から握ってもよいし、図3に示すようにカキの右殻4a側から握ってもよい。
次いで、上述のカキ殻剥き具1の把持部3を持ち、カキ殻の一辺を切り取った部分4dよりカキの右殻4aの内壁に沿って刃部2を挿入する。このとき刃部2は、その突起部2cが手前(使用者側)に突出する向きとし、平坦部2aに対して先端部分2bが緩やかに反り上がって湾曲する面を右殻4aの内壁に沿わせるようにすると挿入が容易である。
カキは閉殻筋4eにより身と右殻4aを繋いでいるので、切刃2dを有する突起部2cをカキの右殻と閉殻筋4eの間に引っ掛けて、殻剥き具1を手前に引くことで切断し、カキの右殻4aと身とを外す。
【0018】
右殻4aを取り外し、次いで殻剥き具1の刃部2を、左殻4bと身との間に挿入する。左殻4bにおいても、カキは閉殻筋4eにより身と左殻4bを繋いでいるので、刃部の先端部分2b周縁の切刃状に形成された部分2eを、カキの左殻と閉殻筋4eの間に押し入れて切断し、カキの左殻4bと身とを外す。
【0019】
本発明のカキ殻剥き具は、刃部の先端部分に鎌状の突起部を有するので、カキ殻内部に刃部を挿入した後、特に熟練者でないと切断の難しい閉殻筋が右殻と繋がった部分を容易に見つけることができ、突起部を閉殻筋に引っ掛けることができる。また、突起部はその内側に切刃を有するので、引っ掛けた状態で閉殻筋をそのまま切断することができる。その後、刃部の先端部分周縁の切刃状に形成された部分でカキの左殻と閉殻筋の間を切断することで、容易にカキの殻を外して身を取り出すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のカキ殻剥き具は、容易かつ安全に殻付きのカキから身を取り出すことができ、製造コストを抑えることができるため、業務用だけでなく贈答品の付属品として配布するなどの家庭用カキ殻剥き具として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のカキ殻剥き具の(a)全体斜視図および(b)部分斜視図である。
【図2】本発明のカキ殻剥き具を用いた実施形態の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明のカキ殻剥き具を用いた実施形態の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 カキ殻剥き具
2 刃部
3 把持部
4 カキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の刃部と、前記刃部の基端部において該刃部を固定する把持部とを備えてなるカキ殻剥き具であって、
前記刃部は、前記把持部に固定される前記基端部より長手方向に延びる平坦部の先端部分において、内側に切刃を有する鎌状の突起部を有するものであり、
前記刃部の平坦部に対して前記突起部を含む先端部分が該刃部の厚さの1〜3倍の厚さ分量湾曲していることを特徴とするカキ殻剥き具。
【請求項2】
前記刃部は、ステンレス製であることを特徴とする請求項1記載のカキ殻剥き具。
【請求項3】
前記刃部は、プラスチック製であることを特徴とする請求項1記載のカキ殻剥き具。
【請求項4】
カキ殻頂の他端の一辺を切り取る工程と、
前記切り取られた一辺よりカキの右殻の内壁に沿って請求項1記載のカキ殻剥き具の刃部を挿入し、該刃部の突起部をカキの右殻−閉殻筋間に引っ掛けて切断し、カキの右殻と身とを外す工程と、
前記刃部の先端部分でカキの左殻−閉殻筋間を切断し、カキの左殻と身とを外す工程とを備えてなることを特徴とするカキ殻剥き方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−82060(P2009−82060A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255552(P2007−255552)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(507322333)有限会社よしっくす (1)
【Fターム(参考)】