説明

カチオン性変性グアーガムを含む吸収性製品

カチオン性変性グアーガムを含む、例えば生理用パッド、パンティライナー又はタンポンなどの女性用保護のための吸収材製品。このグアーガムは、アンモニア基を含むカチオン化剤によって変性され、このカチオン化剤の置換度は約0.070〜0.30未満である。本発明の一態様では、カチオン性変性グアーガムは実質的に水溶性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性変性グアーガムを含む女性用保護のための吸収材製品、例えば生理用ナプキン、パンティライナー又はタンポンに関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン及びおむつなど、多くの市販されている使い捨て吸収材製品は、合成の超吸収性ポリマー(SAP)(典型的にはポリアクリレート類)を含み、体液の吸収及び保持の特性を提供する。このような合成の吸収性材料は、脱イオン水に対しては優れた吸収能力を呈するが、経血のように電解質/塩を含む溶液に対する吸収能力は低くなる。電解質、タンパク質及び細胞(経血においては主に赤血球)の存在が、吸収性ゲル化材料の膨潤プロセスを阻害することが考えられている(参考文献P.K.Chatterjee,B.S.Gupta,「Absorbent Technology」Elsevier 2002;pages 455〜457を参照)。
【0003】
合成の超吸収性ポリマーは、尿などの単純な液体を吸収するには非常に良くはたらくことが見出されているが、吸収される液体の少なくとも一部が月経液である女性用ケア製品においては、その良好な性能は消失する。これは、女性用ケア製品が月経液を効率的に吸収できないことにつながり、ついには漏れを起こしてユーザーの衣類を汚すことになり得る。
【0004】
米国特許第US 2004/0122390A1号は、低蒸発性吸収材製品を開示している。この低蒸発性吸収材製品は、吸収材製品の吸収性コアに処理剤を含み、これが活性化されると、吸収性コア中にある膨潤した超吸収体製品をコーティングし(その中でガムが開示される)、ここからの蒸発を低減する。いくつかの好適な処理剤が開示される。
【0005】
米国特許第US 5,780,616号は、超吸収性特性を有するカチオン性多糖類を開示している。この多糖類は、少なくとも0.5の比較的高い置換率で、四級アンモニウム基で置換されている。この多糖類は好ましくはセルロースである。この多糖類は、水に不溶性であり続けるよう十分な度合で架橋している。
【0006】
米国特許第6,887,564号(Procter & Gamble取得)は、キトサン材料及びアニオン性吸収性ゲル化材料を含む、使い捨て吸収材製品を開示している。ただし、これまでのところキトサン材料の高コスト性が、その商用利用を阻んでいる。
【0007】
米国特許第5,532,350号は、吸収性材料として有用な架橋された多糖類を開示するが、その中でグアーガム及びグアー誘導体が典型的に使用される。多糖類は、非水溶性である。
【0008】
米国特許第5,801,116号は、架橋された又は架橋されていない多糖類、特にグアーポリマー、例えばグアーガムなどを開示する。多糖類は通常非水溶性であるか、又は僅かに水溶性であり、50%未満の多糖類が水中で溶解する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第US 2004/0122390A1号
【特許文献2】米国特許第US 5,780,616号
【特許文献3】米国特許第6,887,564号
【特許文献4】米国特許第5,532,350号
【特許文献5】米国特許第5,801,116号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】P.K.Chatterjee,B.S.Gupta,「Absorbent Technology」Elsevier 2002;pages 455〜457
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の検討から、経血を不動化する高い能力を有し、手頃な価格の材料のニーズが存在する。
【0012】
ここで驚くべきことに、特定のカチオン性変性グアーガムは、女性用保護のための吸収材製品においてキトサン誘導体に匹敵する高性能を提供することができることが見出されている。本発明の変性グアーガムは、これまでに提案されてきたものよりも高い水溶性を有し得る。本発明の変性グアーガムは、通常はそれらを架橋せずに、又はこれまでに提案されてきたものよりも相対的に低いレベルの架橋剤を使用することによっても合成することができる。更に、相対的に低い四級アンモニウム基の置換度が、女性用保護用途に適切であることが見出されている。
【0013】
カチオン性変性グアーガムは、例えば、キトサン塩に比べて、大幅に入手でき潜在的に安価な原材料(グアーガム)からの更なる利点を有することができる。
【0014】
本発明のカチオン性変性グアーガムは経血などのタンパク質性液の存在下で特に高い性能を発揮して流体処理効果をもたらし、これまで記述されてきた他の多糖類誘導体よりも血液系の流体の粘度を高める能力に優れている可能性がある。理論に束縛されるものではないが、本発明のカチオン性変性グアーガムは、経血の不動化に対して最適にする特性の独特の組み合わせを有すると考えられている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、カチオン性変性グアーガムを含む女性用保護のための吸収材製品に関し、ここで該カチオン性変性グアーガムは、アンモニウム基を含むカチオン化剤によって変性されたグアーガムを含み、カチオン化剤の置換度は約0.070〜0.30未満である。本発明の1つの態様では、カチオン性変性グアーガムは実質的に水溶性である。
【0016】
別の1つの態様において、本発明は更に、
−グアーガムを、アンモニウム基を含むカチオン化剤と反応させることにより、約0.070〜0.30未満のカチオン化剤の置換度を有するカチオン性変性グアーガムを得る工程と、
−所望により、同じ工程又は別の工程において、グアーガムを、架橋剤がグアーガムの約0重量ppm〜約1000重量ppmの濃度で架橋剤と反応させる工程と、
−先の工程で得られたカチオン性変性グアーガムを、女性用保護のための吸収材製品の構成要素、例えば吸収性コアに適用する工程と、
−上述の構成要素を用いて女性用保護のための吸収材製品を製造する工程と、を含む、女性用保護のための吸収材製品を製造するための方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
用語「女性用保護のための吸収材製品」とは、女性が経血を吸収するために通常使用する製品、及び軽度〜中程度の成人の失禁用製品を意味する。これらの製品は通常使い捨てであり、即ち使用後に廃棄される。女性用保護のための通常の吸収材製品には、生理用ナプキン、パンティライナー、タンポン、及び陰唇間パッドなどの経血吸収製品が挙げられるが、小児用おむつは含まれない。
【0018】
本明細書で使用される用語「カチオン性変性グアーガム」は、グアーガムと好適なカチオン化剤との間の反応生成物を指す。通常、カチオン性変性グアーガムは、pH3〜10の範囲の水溶液、特にpH5〜9の水溶液中で、正味の正電荷を有し得る。
【0019】
本発明の女性用保護のための吸収材製品は、カチオン性変性グアーガムを含む。カチオン性変性前のグアーガム源は、通常グアー豆である。
【0020】
グアーガムはグアー粉としても知られており、ガラクトマンナンからなる高分子量多糖類を含む。グアーガムの水溶性画分はグアランと呼ばれ、通常、(1→6)連鎖によりα−D−ガラクトピラノシル単位(D−ガラクトース)が結合した直鎖の(1→6)−β−D−マンノピラノシル単位(D−マンノース)からなる。D−ガラクトースのD−マンノースに対する比は1:2である。
【0021】
カチオン性官能基を有するグアーガムを提供するための様々な方法が当該技術分野において既知であり、例えば米国特許公開第2008/0112907号に開示されているが、これは水分散性ポリガラクトマンナンポリマーについて記載している。グアーガムのカチオン性変性あり及びなしでグアーガムを架橋するための様々な方法も既知である。例えば、米国特許第5,532,350号及び米国特許第5,801,116号を参照のこと。本発明に使用されるカチオン性変性グアーガムは、これら既知の化学反応を使用して当業者により容易に製造することができる。本発明の変性グアーガムの製造に使用されるカチオン性剤は、通常、アンモニウム基を含むことができる。
【0022】
アンモニウム基を含む好適なカチオン性剤には、例えば米国特許第5,780,616号4欄5行目〜5欄15行目及び米国特許公開第2008/0112907号に列記されるものを挙げることができる。特に、以下の例が挙げられる:
−以下の構造式を有する2,3−エポキシプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(Degussa A.G.より70%水溶液としてQUAB 151の名で、又はFlukaより固体純化合物として製品コード50045で市販)。
【化1】

−以下の構造式を有する3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(CAS#3327−22−8、Degussa A.G.より65%水溶液としてQUAB 188の名で市販)。
【化2】

【0023】
カチオン化剤による多糖類のカチオン化の度合は、カチオン化剤による多糖類の反応基の置換度(本明細書において「カチオン化剤の置換度」と称される)を用いることによって表現することができる(これは当該技術分野において一般的であり、例えば米国特許第5,780,616号、英国特許第1576475号、米国特許第7,135,451B1号を参照のこと)。カチオン化剤の置換度は、従来の任意の方法、例えばPCT国際特許第WO92/19652号に開示されている方法、又は米国特許第7,135,451号3欄に開示されている方法、又は例えば変性グアーガムに結合した窒素の量を測定する元素分析に基づく方法(カチオン化剤がアンモニウム基系である場合)、例えばケルダール(Kjeldahl)法などによって測定することができる。これらの方法はすべて、当該技術分野において周知である。
【0024】
発明者らは、低いカチオン化剤の置換度を有する変性グアーガムが、経血の不動化に対してより優れた利益をもたらし得ることを見出している。本発明のカチオン性変性グアーガムは、約0.070〜約0.30未満、特に約0.10〜約0.20の範囲のカチオン化剤の置換度を有することができる。
【0025】
先行技術文書の少なくとも一部が不溶性変性グアーガムを使用するよう教示している一方で、発明者らは、本発明の変性グアーガムが実質的に水溶性であり、かつ所望の特性をもたらすことができることを見出した。よって、本発明の1つの態様において、本発明の変性グアーガムは実質的に水溶性である。「実質的に水溶性である」とは、例えば英国特許第1,576,475号に開示されている試験により測定した際に、50重量%未満の非水溶性炭水化物を含有することを意味する。より具体的には、本発明の変性グアーガムは、30%未満、又は20%未満、又は更には10%未満の不溶性炭水化物を含有し得る。1つの実施形態では、本発明の変性グアーガムは完全に水溶性であってもよい。溶解度データは次のように測定することができる:
変性グアーガム(1g)を室温(21℃)にて蒸留水(100mL)中で15分間攪拌してスラリーにする。このスラリーを8時間静置してから、濾過する。濾液中の溶解した炭水化物を、水溶性炭水化物測定用のフェノール/硫酸試験を利用した既知の比色分析法によって測定する。この測定において、試験溶液試料1mLにフェノール溶液(5重量%)1mLを加え、次に濃硫酸5mLを加えて、この液を1分間手で振り混ぜる。冷ますために1時間放置した後、紫外線分光光度計(例えば、Unicam SP 800又は類似品)を使用して、グルコース標準液を参照することにより483nmでのピークにおける吸収度から、可溶性炭水化物の濃度を測定する。
【0026】
変性グアーガムの溶解度は、通常、使用される架橋剤の量によって決まる。先行技術の少なくとも一部分(例えば米国特許第5,532,350号及び同第5,801,116号)は、この変性グアーガムを実質的に非水溶性にするために、高い度合の架橋を使用するよう教示しているが、発明者らは、低い度合の架橋が、女性用ケア用途に有利であることを見出した。本発明の典型的な実施形態では、変性グアーガムには架橋がなくてもよい。しかしながら、本発明の変性グアーガムは、特にその加工性を高め、合成中の変性グアーガムの回収率を高めるために、僅かに架橋されることが依然として有利であり得るが、架橋の度合は、先行技術に開示されているよりも低くすることが有利であり得る。
【0027】
変性グアーガムの架橋度合、及びこれによる変性グアーガムの溶解度は、合成中に当業者により制御することができ、特に反応混合物中の架橋剤の濃度を変えて、所望の量の架橋を得ることができる。
【0028】
本発明の別の1つの態様において、反応混合物中約0ppm〜約1000ppm(百万分の一)の架橋剤濃度にすると、望ましい量の架橋を得るのに有利であり得る。より具体的には、範囲は約50ppm〜700ppm、及び約100ppm〜700ppmである。「ppm」は、架橋されるグアーガム材料の重量あたりの重量単位で表現される架橋剤の相対的量を意味し、百万分の一単位で表わされる。
【0029】
架橋剤の量は、この架橋剤による変性グアーガムの置換度を参照することによって表現することもでき(本明細書において「架橋剤の置換度」と称される)、これは0.0010未満、例えば約0.00001〜約0.00025、又は約0.00003〜約0.000200であるのが有利であり得る。架橋剤の置換度は、文献中に時折使用されている(英国特許第1,576,475号及び米国特許第3,622,562号)。
【0030】
グアーガムの架橋は、当該技術分野において既知の、例えば米国特許第5,532,350号、同第5,801,116号、及び米国特許公開第2008/0112907号に開示される、様々な方法によって行うことができる。
【0031】
通常、架橋は、適切な架橋剤をグアーガムに加えることによって達成することができる。典型的な架橋剤には、アルミニウム化合物、チタン化合物又はジルコニウム化合物、例えばアルミニウム塩、チタン塩又はジルコニウム塩などを挙げることができる。銅塩、鉄塩、鉛塩、カルシウム塩及びナトリウム塩も、架橋剤として使用することができる。他の典型的な架橋剤には、ホウ砂などのホウ酸塩材料を挙げることができる。本発明の一実施形態では、架橋剤はグリオキサールであることができる。
【0032】
上述のように、架橋あり又はなしで本発明のカチオン性変性グアーガムを製造するための方法は、当該技術分野において周知である。
【0033】
カチオン性変性グアーガムは、数多くの方法で吸収材製品に適用することができる。例えば、カチオン性変性グアーガムの水溶液又は溶媒溶液を適用することができる。また、乾燥粉末形態のカチオン性変性グアーガムを適用することも可能である。
【0034】
本発明の一実施形態によると、カチオン性変性グアーガムは、100μ未満、又は1μ〜70μ、又は5μ〜50μ、又は更には10μ〜30μの平均粒径を有する微粒子形態で吸収性物品に含まれる。比較的小さい平均粒径のカチオン性変性グアーガムが、吸収性物品における経血の不動化に有利であり得ることがわかった。平均粒径は、当該技術分野において既知の方法のいずれかで評価されることができる。上記で開示されたものなどの比較的小さい粒径に関しては、光散乱法に基づく方法を有利に使用することができる。当該技術分野において既知であるように、粒径中央値とも呼ばれる平均粒径は、通常、好適な既知の手段で得られる微粒子物質の粒径分布から評価され、通常、2つの該分布に分ける粒径として見なされ、即ち、微粒子物質の重量の半分は該平均粒径より粗く、重量の半分は該平均粒径より微細である。微粒子形態のカチオン性変性グアーガムの平均粒径、即ち粒径中央値は、例えばBeckman Coulterから入手可能なレーザー回折粒径分析器LS 13 320シリーズ、又は任意の等価装置により測定することができる。
【0035】
一般に、平均粒径の測定は、典型的には23±2℃及び50±10%RHの制御された環境で、乾燥した試料物質に対して行われる。試料物質は、60℃の炉内で3時間乾燥させ、次いで密閉容器内で保持し、実験室の周囲温度に均衡化させることとする。制御された実験室環境の水分率を最少にするために、試料物質を迅速に、即ち典型的には密閉容器から取り出してから45分以内で試験することに注意すべきである。
【0036】
カチオン性変性グアーガムは、吸収材製品の1つの構成要素に適用してから、この構成要素を製品製造に使用することができる。例えば、生理用ナプキン又はパンティライナーなどの吸収材製品については、通常は液体透過性トップシート、バックシート、及びバックシートとトップシートとの間にある吸収性コアを含むが、カチオン性変性グアーガムをこれらの構成要素のどれに適用してもよい。カチオン性変性グアーガムをコアに適用することが有利であり得る。その場合、カチオン性変性グアーガムは、吸収性コアの表面の片方又は両方(例えばコアの身体側に向く表面、コアの衣類側に向く表面、又はコアの両方の表面)に、部分的又は全面的に適用することができる。カチオン性変性グアーガムは更に、表面コアの1つの中央部分に適用することができ、又はコアの2つの側辺に沿って縞状に適用することができる。また、吸収材製品の構成要素の1つの中に、カチオン性変性グアーガムを適用するよう考えることもでき、例えば、いくつかの層の積層体として製造されたコアに関しては、それらの層のうち、コアの外側表面ではない1つの表面に、カチオン性変性グアーガムを適用することができる。カチオン性変性グアーガムはまた、存在するなら製品の他の構成要素、例えばバックシート又はトップシートに適用することもできる。
【0037】
本発明の一実施形態によると、カチオン性変性グアーガムは、吸収材製品、即ちその構成要素のいずれかに、例えば吸収性コアの表面のうちの少なくとも1つの少なくとも一部に、適用領域1平方メートルあたりカチオン性変性グアーガムの重量で0.5g/m〜500g/m、好ましくは1g/m〜50g/mの濃度で適用されてもよい。
【0038】
カチオン性変性グアーガムの水溶液をスプレーするとき、この水溶液は典型的に、溶液の約3重量%〜約6重量%の濃度のカチオン性グアーガムを含み得る。溶媒系溶液については、より高い濃度を使用できると考えられ、例えば溶液の約6重量%〜約60重量%が使用できる。カチオン性変性グアーガムは、有利には、吸収材製品の個々の構成要素に適用してから、その構成要素を他の構成要素と共に組み立てて製品を形成してもよいし、又は完成品に適用してもよい、ということが考えられる。したがって、本発明は、
−グアーガムを、アンモニウム基を含むカチオン化剤と反応させることにより、約0.070〜0.30未満のカチオン化剤の置換度を有するカチオン性変性グアーガムを得る工程と、
−所望により、同じ工程又は別の工程において、グアーガムを、架橋剤がグアーガムの約0重量ppm〜約1000重量ppmの濃度で架橋剤と反応させる工程と、
−先の工程で得られたカチオン性変性グアーガムを、女性用保護のための吸収材製品の構成要素に適用する工程と、
−女性用保護のための吸収材製品を製造する工程と、を含む、女性用保護のための吸収材製品を製造するための方法にも関する。
【0039】
このカチオン性変性グアーガムは、構成要素を使用して吸収材製品を製造する前に、又は製造してから、その構成要素に適用することができる。カチオン性変性グアーガムの適用工程を、構成要素を使用して女性用保護のための吸収材製品を製造する工程より前に行うことができることが有利である。例えば、カチオン性変性グアーガムを、吸収性コアに適用してから、その吸収性コアを使用して吸収材製品を製造することができる。
【0040】
吸収性コアを本発明の製品に使用する場合、任意のタイプの吸収性コアを使用することができる。標準的コアは通常、セルロースパルプの毛羽だった基質、又はセルロースパルプと合成繊維の混合物を含む。コアには更に、例えばポリアクリレート系材料などの古典的な合成超吸収性材料も含まれ得る。例えば欧州特許第EP1447067号に開示されているような薄いコアも使用することができる。
【0041】
本発明の吸収材製品には更に、例えば吸収材コアなどの中に、アニオン性吸収性ゲル化材料を含めることができる。
【0042】
実験
粘弾性的分析
経血の不動化における変性グアーガムの効果を比較する1つの代表的な方法は、例えば以下に示すような、粘弾性的分析によって行うことができる。
【0043】
試料調製:0.5gのカチオン性グアーガム粉末を12×12cmのペトリ皿に秤量して、カチオン性変性グアーガムの5% w/w水溶液を調製する。次いで、4.50gの蒸留水を加え、均質のゲルがペトリ皿内に得られるまで混合物を攪拌する。
【0044】
ゲル化後、ペトリ皿を、温度設定45℃の換気された炉内に8時間置き、完全に乾燥させる。
【0045】
ペトリ皿内で乾燥させると、乾燥したカチオン性変性グアーガムの粉末層が生じる。ペトリ皿を炉から取り出し、1時間室温に置いて均衡化させる。
【0046】
乾燥したカチオン性ポリマー層に、AMF(人工月経液、後述)4.50gをゆっくりと加え、表面全体を濡らす。加えた後、この材料を更に5分間スパチュラで混合し、均質なゲルを得る。
【0047】
粘弾性的特性の評価:Reologica Instruments Inc(231 Crosswicks Road Bordentown,NJ 08505 USA)により供給されるStress Tech HRレオメーターを使用して、粘弾性パラメータ(G’)が測定された。この器具は、40Hz、37℃にて、2mmの隙間を有する40mmの平行板配列(parallel plate geometry)を使用して操作された。使用したソフトウェアはRheoExplorerバージョン5.0.40.38であった。
【0048】
G’は弾性率であり、40Hzで測定した値が、カチオン性変性グアーガムが人工経血液を濃化する能力を表わすと考えられる。
【0049】
G’の値が高いほど、変性グアーガムが吸収材製品中で経血をより良く不動化することができると考えられる。
【0050】
AMF(人工経血液)の調製
人工経血液は、ヒツジの変性血液を基本にしており、これは、粘度、導電性、表面張力、及び外観の点でヒトの月経液に確実に酷似するように、変性されたものである。
【0051】
試薬:
フィブリン除去したヒツジ血液が、Unipath S.p.A.(イタリア・ガルバニャーテミラネーゼ)から入手できる。
【0052】
J.T.Baker Hollandから入手の乳酸、試薬グレード(85〜95w/w)。
【0053】
水酸化カリウム(KOH)、Sigma Chemical Co.USAから入手、試薬グレード。
【0054】
リン酸緩衝生理食塩水錠剤、Sigma Chemical Co.USAから入手、試薬グレード。
【0055】
塩化ナトリウム、Sigma Chemical Co.USAから入手、試薬グレード。
【0056】
胃ムチン、Sigma Chemical Co.USAから入手、タイプIII(CAS 84082−64−4)。
【0057】
蒸留水。
【0058】
工程1:乳酸粉末を蒸留水に溶かすことにより、9±1%の乳酸溶液を調製する。
【0059】
工程2:KOH粉末を蒸留水に溶かすことにより、10%水酸化カリウム溶液を調製する。
【0060】
工程3:緩衝剤錠剤を指示に従い1Lの蒸留水に溶かすことにより、pH=7.2に調整したリン酸緩衝溶液を調製する。
【0061】
工程4:リン酸緩衝溶液460±5mL、KOH溶液7.5±0.5mLの組成の溶液を調製し、45±5℃までゆっくり加熱する。
【0062】
工程5:工程4で調製した45±5℃に予熱した溶液中に、約30グラムの胃ムチンをゆっくりと溶かし(一定の速度で攪拌して)、粘液状溶液を調製する。溶解したら、溶液の温度を50〜80℃に上昇させるべきであり、混合物を約15分間覆う。弱火にして40℃〜50℃の比較的一定の温度に維持し、2.5時間攪拌し続ける。
【0063】
工程6:溶液を加熱板から下ろし、今度は(工程5からの)溶液を40℃未満に冷ます。10%の乳酸溶液2.0mLを加え、2分間十分に混合する。
【0064】
工程7:この溶液をオートクレーブに入れ、温度121℃で15分間加熱する。
【0065】
工程8:この溶液を室温に冷まし、脱線維素羊血液で1:1に希釈する。
【0066】
AMF調製に続き、その粘度、pH、及び伝導度を測定して、血液特徴が確実に通常の経血のものに近い範囲にあるようにする(参考文献であるH.J.Bussing「Zur Biochemie des Menstrualblutes」Zbl Gynaec,179,456(1957)を参照)。粘度は7〜8の範囲にあるべきである(単位cStK)。pHは6.9〜7.5の範囲、導電率は10.5〜13(単位mmho)の範囲にあるべきである。粘度が上記に指定された範囲にない場合は、これを使用すべきではなく、新しいAMFバッチを調製する必要がある。AMF溶液は常に攪拌し続け、その構成成分が使用前に分離しないようにしなければならない。溶液は調製から4時間以内に限り使用すべきである。
【0067】
本明細書で引用される、相互参照付きの、又は関連する、特許及び出願を含むいずれの文献も、明白に排除されない限り、また別の方法で制限されない限り、本明細書にその全体が参照によって組み入れられる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。更に、本明細書中の用語のいずれかの意味又は定義が、参照として組み込まれた文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいては、本明細書中の用語に与えられた定義又は意味が適用されるものとする。
【0068】
本発明の特定の実施形態について説明し記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正が可能であることが当業者には自明である。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性変性グアーガムを含む女性用保護のための吸収材製品であって、前記カチオン性変性グアーガムが、アンモニウム基を含むカチオン化剤によって変性されたグアーガムを含み、前記カチオン化剤の置換度が約0.07〜約0.30未満であり、前記カチオン性変性グアーガムが実質的に水溶性である、吸収材製品。
【請求項2】
前記カチオン性変性グアーガムが、架橋剤によって架橋されている、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記架橋剤を、前記グアーガムの約0重量ppm〜1000重量ppmの濃度で前記グアーガムと反応させる、請求項2に記載の吸収材製品。
【請求項4】
前記架橋剤が、グリオキサールである、請求項2に記載の吸収材製品。
【請求項5】
前記カチオン性変性グアーガムが、微粒子形態であり、約100μ未満の平均粒径を有する、請求項1に記載の吸収材製品。
【請求項6】
前記吸収材製品が、生理用ナプキン、パンティライナー、タンポン及び陰唇間パッドからなる群から選択される、請求項1に記載の吸収材製品。
【請求項7】
前記吸収材製品が、液体透過性トップシート、バックシート、及び前記バックシートと前記トップシートとの間にある吸収性コアを含む、請求項1に記載の吸収材製品。
【請求項8】
前記吸収性コアが、少なくとも1つの表面を有し、前記カチオン性変性グアーガムが、前記吸収性コアの前記表面のうちの前記少なくとも1つの少なくとも一部に適用される、請求項7に記載の吸収材製品。
【請求項9】
前記カチオン性変性グアーガムが、前記吸収性コアの前記少なくとも1つの表面に、前記適用領域1平方メートルあたり前記カチオン性変性グアーガムの重量で約0.5g/m〜約500g/mの濃度で適用される、請求項8に記載の吸収材製品。
【請求項10】
アニオン性吸収性ゲル化材料を更に含む、請求項1に記載の吸収材製品。
【請求項11】
カチオン性変性グアーガムを含む女性用保護のための吸収材製品であって、前記カチオン性変性グアーガムが、アンモニウム基を含むカチオン化剤により変性され、前記カチオン性変性グアーガムが、架橋剤により架橋され、前記カチオン化剤の置換度が、約0.07〜約0.30未満であり、前記架橋剤を、グアーガムの約0重量ppm〜約1000重量ppmの濃度で前記グアーガムと反応させた、吸収材製品。
【請求項12】
前記架橋剤が、グリオキサールである、請求項11に記載の吸収材製品。
【請求項13】
前記カチオン性変性グアーガムが、微粒子形態であり、約100μ未満の平均粒径を有する、請求項11に記載の吸収材製品。
【請求項14】
前記吸収材製品が、生理用ナプキン、パンティライナー、タンポン及び陰唇間パッドからなる群から選択される、請求項11に記載の吸収材製品。
【請求項15】
前記吸収材製品が、液体透過性トップシート、バックシート、及び前記バックシートと前記トップシートとの間にある吸収性コアを含む、請求項11に記載の吸収材製品。
【請求項16】
前記吸収材製品が、少なくとも1つの表面を有し、前記カチオン性変性グアーガムが、前記吸収性コアの前記表面のうちの前記少なくとも1つの少なくとも一部に適用される、請求項15に記載の吸収材製品。
【請求項17】
前記カチオン性変性グアーガムが、前記表面に、前記適用領域1平方メートル当たり前記カチオン性変性グアーガムの重量で約0.5g/m〜約500g/mの濃度で適用される、請求項16に記載の吸収材製品。
【請求項18】
アニオン性吸収性ゲル化材料を更に含む、請求項11に記載の吸収材製品。
【請求項19】
女性用保護のための吸収材製品を製造するための方法であって、
−グアーガムを、アンモニウム基を含むカチオン化剤と反応させることにより、約0.07〜0.30未満の前記カチオン化剤の置換度を有するカチオン性変性グアーガムを得る工程と、
−所望により、同じ工程又は別の工程において、前記カチオン性変性グアーガムを、架橋剤がグアーガムの約0重量ppm〜約1000重量ppmの濃度で架橋剤と反応させる工程と、
−前記工程で得られたカチオン性変性グアーガムを、女性用保護のための吸収材製品の構成要素に適用する工程と、
−前記構成要素を使用して女性用保護のための吸収材製品を製造する工程と、を含む、方法。
【請求項20】
前記カチオン性変性グアーガムを構成要素に適用する前記工程が、約100μ未満の平均粒径を有する微粒子形態の前記カチオン性変性グアーガムを適用することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記カチオン性変性グアーガムが適用される前記構成要素が、吸収性コアである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記カチオン性変性グアーガムを前記構成要素の適用領域に適用することを更に含み、前記カチオン性変性グアーガムを、適用領域1平方メートルあたり前記カチオン性変性グアーガムの重量で約0.5g/m〜約500.0g/mの濃度で適用することを更に含む、請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2011−529772(P2011−529772A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522209(P2011−522209)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/052814
【国際公開番号】WO2010/017275
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】