説明

カチオン重合開始剤である新規のオニウム硼酸塩又は有機金属錯体の硼酸塩

【目的】 カチオン重合開始剤として有用な新規のオニウム硼酸塩又は有機金属錯体の硼酸塩を提供すること。
【構成】 本発明は、「Chemical & Engineering News 」第63巻、第5号、第26頁(1985年2月4日発行)に記載の周期分類の第15群〜第17群から選択される元素のオニウム硼酸塩又は同周期分類第4群〜第10群から選択される元素の有機金属錯体の硼酸塩に関し、この硼酸塩は、アニオン硼酸塩部分が式[BXab- を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、カチオン重合開始剤である新規のオニウム硼酸塩又は有機金属錯体の硼酸塩、その製造方法及び光化学的活性化によるか又は電子ビーム下での官能性ポリマー又はモノマーの重合又は架橋のためのその使用に関する。
【0002】
【従来の技術】オニウム塩又は有機金属錯体の塩は、エポキシ、ビニルエーテル等のタイプの官能基を含有するモノマー又はポリマーのカチオン重合開始剤として公知である(米国特許第4069054号、同第4450360号、同第4576999号、同第4640967号、カナダ国特許第1274646号及びヨーロッパ特許公開第203829号の各明細書)。開始剤塩のアニオンがSbF6-である場合に最良の結果が得られるということが確認されている。しかしながら、このタイプのアニオンを含有する開始剤塩には毒性の危険がある。
【0003】チーグラー・ナッタ型の触媒を生じさせるためにテトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸ビス(η5 −シクロペンタジエニル)Fe+ タイプのペンタフルオルテトラフェニル硼酸フェロセニウムを用い、次いでこの触媒をビニルモノマーの重合に用いることもまた知られている{ヨーロッパ特許公開第481480号、同第468651号、同第418044号、同第468537号、同第421659号、同第277004号の各明細書、「Makromolekulare Chemid, Rapid Commun. 」第12巻、第663〜667頁(1991年)、「Organometallics 」(1991年)、10、第840〜842頁}。テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸ビス(η5 −シクロペンタジエニル)Fe+ タイプのペンタフルオルテトラフェニル硼酸フェロセニウムは光重合開始剤ではないことが確認されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本出願人は、SbF6-の求核性に近い求核性を持つアニオンを含有し且つSbF6-に関係する欠点を示さない新規の光重合開始剤塩を見出した。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、この光重合開始剤塩は、「Chemical & Engineering News 」第63巻、第5号、第26頁(1985年2月4日発行)に従う周期分類の第15群〜第17群から選択される元素のオニウム硼酸塩又は同周期分類第4群〜第10群から選択される元素の有機金属錯体の硼酸塩であり、これら硼酸塩は、(A)カチオン部分が(1)次式I[(R1n −A−(R2m+ (I)(式中、AはI、S、Se、P、N等のような第15群〜第17群から選択される元素を表わし、R1 はC6 〜C20の複素環式又は炭素環式アリール基を表わし、該複素環式基は複素原子として窒素、硫黄等を含有することができ、R2 はR1 又はC1 〜C30の直鎖状若しくは分枝鎖状アルケニル若しくはアルキル基を表わし、これらR1 及びR2 基はC1 〜C25アルコキシ、C1 〜C25アルキル、ニトロ、クロル、ブロム、シアノ、カルボキシル、エステル、メルカプト基等で置換されていてもよく、nは1〜v+1の範囲の整数であり、ここでvは元素Aの原子価であり、mは0〜v−1の範囲の整数であり、ここでnとmとの合計n+mはv+1である)のオニウム塩、(2)国際公開第WO−90/11303号に記載のオキソイソチオクロマニウム塩、特に2−エチル−4−オキソイソチオクロマニウム又は2−ドデシル−4−オキソイソチオクロマニウムスルホニウム塩及び(3)次式II(L123 M)q+ (II)
{式中、Mは第4群〜第10群から選択される金属、特に鉄、マンガン、クロム、コバルト等を表わし、L1 は、π電子を介して金属Mに結合した1個の配位子であり、該配位子は、η3 −アルキル、η5 −シクロペンタジエニル及びη7 −シクロへプタトリエニル配位子並びに随意に置換されたη6 −ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環(ここで、各環は3〜8個のπ電子を介して金属Mの原子価層に寄与し得る)を有する化合物から選択されるη6 −芳香族化合物から選択され、L2 は、π電子を介して金属Mに結合した1個の配位子であり、該配位子は、η7 −シクロへプタトリエニル配位子並びに随意に置換されたη6 −ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環(ここで、各環は6若しくは7個のπ電子を介して金属Mの原子価層に寄与し得る)を有する化合物から選択されるη6 −芳香族化合物から選択され、L3 は、σ電子を介して金属Mに結合した同一又は異なる0〜3個の配位子であって、CO及びNO2+から選択され、L1 、L2 及びL3 が寄与する錯体の電荷と金属Mのイオン電荷との合計電荷qは正であって1又は2である}の有機金属塩から選択されること;並びに(B)アニオン性硼酸塩部分が次式:[BXab-{式中、a及びbは0〜4の範囲の整数であり、ここでaとbとの合計a+bは4であり、記号Xは、・aが0〜3である場合にはハロゲン原子(塩素又は弗素)を表わし、また、・aが0〜2である場合にはOH官能基を表わすこともでき、記号Rは同一であっても異なっていてもよく、・カチオン部分が第15群〜第17群から選択される元素のオニウムである場合にはCF3 、NO2 、CN等のような少なくとも1個の電子吸引基で置換されたフェニル基又は少なくとも2個のハロゲン原子(特に弗素)で置換されたフェニル基を表わし、・カチオン部分が第4群〜第10群から選択される元素の有機金属錯体である場合には少なくとも1個の元素又は電子吸引基で置換されたフェニル基、特にハロゲン原子(より特定的には弗素)、CF3 、NO2 、CN等で置換されたフェニル基を表わし、また、・カチオン部分が何であるかにかかわらず、少なくとも1個の元素又は電子吸引基、特にハロゲン原子(より特定的には弗素)、CF3 、NO2 、CN等で置換されていてもよいビフェニル、ナフチル等のような少なくとも2個の芳香環を含有するアリール基を表わす}を有することを特徴とする。
【0006】硼酸塩アニオンの例としては、[B(C654- 、[B(C64 CF34- 、[(C652 BF2- 、[C65 BF3- 及び[B(C6324- を挙げることができる。式Iのオニウム塩は多くの文献に記載されており、特に米国特許第4026705号、同第4032673号、同第4069056号、同第4136102号及び同第4173476号の各明細書等に記載されている。
【0007】カチオンとしては、特に次のものを挙げることができる:[(Φ)2 I]+ 、[C817−O−Φ−I−Φ]+ 、[C1225−Φ−I−Φ]+ 、[(C817−O−Φ)2 I]+ 、[C817−O−Φ−I−Φ]+ 、[(Φ)3 S]+ 、[(Φ)2 −S−Φ−O−C817+ 、[Φ−S−Φ−S(Φ)2+ 及び[(C1225−Φ)2 I]+
【0008】式IIの有機金属塩は、米国特許第4973722号、同第4992572号、ヨーロッパ特許公開第203829号、同第323584号及び同第354181号の各明細書に記載されている。これら有機金属塩の中では、特に次のものを挙げることができる:(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −トルエン)Fe+ 、(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −1−メチルナフタリン)Fe+ 、(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −クメン)Fe+ 、ビス(η6 −メシチレン)Fe+ 及びビス(η6 −ベンゼン)Cr+
【0009】本発明の開始剤の例としては、次のものを挙げることができる:[(Φ)2 I]+ [B(C654- 、[(C817)−O−Φ−I−Φ]+ [B(C654- 、[C1225−Φ−I−Φ]+ [B(C654- 、[(C817−O−Φ)2 I]+ [B(C654- 、[C817−O−Φ−I−Φ]+ [B(C654- 、[(Φ)3 S]+ [B(C654- 、[(Φ)2 −S−Φ−O−C817+ [B(C64 CF34- 、[(C1225−Φ)2 I]+ [B(C654- 、(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −トルエン)Fe+ [B(C654- 、(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −1−メチルナフタリン)Fe+ [B(C654- 及び(η5−シクロペンタジエニル)(η6 −クメン)Fe+ [B(C654-
【0010】本発明の主題である開始剤塩は、カチオン部分の塩(塩化物、沃化物等のようなハロゲン化物、ヘキサフルオロ燐酸塩、テトラフルオロ硼酸塩、トシレート等)とアニオン部分のアルカリ金属塩(ナトリウム、リチウム又はカリウム塩)との交換反応によって製造することができる。操作条件(各反応成分の量、溶媒の選択、期間、温度、撹拌等)は当業者が知る範囲内である。これらは、所望の開始剤塩を、固体状の場合には形成した沈殿のろ過によって、オイル状の場合には好適な溶媒を用いた抽出によって回収することを可能にしなければならない。
【0011】アニオン部分のアルカリ金属塩は、既知の方法で、ハロ硼酸塩化合物と所望の炭化水素基を有する有機金属化合物(マグネシウム、リチウム、錫等の化合物)との間の化学量論的量での交換反応及び必要に応じて続いてのアルカリ金属ハロゲン化物の水溶液を用いた加水分解によって製造することができる。この種の合成は、例えば「Journal of Organometallic Chemistry 」第178巻、第1〜4頁(1979年)、「Journal of the American Chemical Society」第82巻(1960年)、第5298頁、「Analytica Chimica Acta」第44巻(1969年)、第175〜183頁、米国特許第4139681号明細書、ドイツ国特許第2901367号明細書、「Zhurnal Organicheskoi Khimii」第25巻、第5号、第1099〜1102頁(1989年5月)に記載されている。
【0012】式IIのカチオン部分の塩の製造は、特に、「Tetrahedron Letters 」36、第3437頁(1973年){D・アストリュク(D. Astruc )}、「Bulletin de la Societe Chimique de France 」1〜2、第228頁(1976年)(D・アストリュク)、「Bulletin de Societe Chimique de France」11〜12、第2571頁(1975年)(D・アストリュク)、「CR Acad. Sc., Paris, series C 」272、第1337頁(1971年)(D・アストリュク)、「Izvestiia Akademii Nauk SSSR, seriia Khimicheskaia」7、第1524頁(1969年){A・N・ネスメヤノフ(A. N. Nesmeyanov)ら}、「Doklady Akademii Nauk SSSR」160(6)、第1327頁(1965年)(A・N・ネスメヤノフら)、「Doklady Akademii Nauk SSSR」149(3)、第615頁(1963年)(A・N・ネスメヤノフら)に記載されている。
【0013】本発明の主題である開始剤は、エポキシ、ビニルエーテル等のような官能基を有するモノマー又はポリマーの光化学的活性化による(特に紫外線照射下)か又は電子ビーム下での重合又は架橋に用いることができる。有機金属錯体の硼酸塩はさらに、熱重合開始剤として用いることもできる。
【0014】
【実施例】以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲及び技術思想を何ら限定するものではない。
【0015】例1:テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸ジフェニルヨードニウム[(Φ)2 I]+ [B(C654-
【0016】テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸リチウムの製造:機械式撹拌機、水冷式還流冷却管、温度計及び滴下漏斗を備えた4000ミリリットルの四つ口丸底フラスコを用いた。装置は前もってアルゴン雰囲気下で乾燥させた。無水ペンタン1600ミリリットル及びブロムペンタフルオルベンゼン126.8g(0.513モル)を装入した。この全体を撹拌し、次いで固形二酸化炭素/アセトン浴を用いて−78℃に冷却した。ヘキサン中1.6M濃度のn−ブチルリチウム溶液313ミリリットルを滴下漏斗に装入し、次いで50分かけて滴下した。次いでこの混合物を−78℃の温度において5時間撹拌した。ヘキサン中1M濃度の三塩化硼素溶液125ミリリットルを滴下漏斗に装入し、30分かけて混合物に添加した。冷却浴を取り除き、反応混合物を放置して室温に戻した。次いでこれを12時間撹拌した。水625ミリリットルをゆっくり添加することによって反応混合物を加水分解した。2相に分離し、有機相を125ミリリットルずつの水で2回洗浄した。水相を一緒にし、次いで125ミリリットルずつのエーテルで3回抽出した。エーテル相を一緒にし、硫酸マグネシウムによって乾燥させた。減圧下でエーテルを蒸発させて、テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸リチウム101gが回収された。収率99%。
【0017】テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸ジフェニルヨードニウムの製造:1000ミリリットルの三角フラスコ中で塩化ジフェニルヨードニウム7.17g(22.6ミリモル)を水300ミリリットル中に溶解させた。水250ミリリットル中にテトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸リチウム15.52g(22.6ミリモル)を含有させた溶液を滴下した。この混合物を30分間撹拌し、次いでろ過した。ろ液を光を遮断して減圧(133Pa)下で一晩乾燥させた。テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸ジフェニルヨードニウム16.33gが回収された。収率75%。
【0018】例2:テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム[(C817)−O−Φ−I−Φ]+ [B(C654-
【0019】オクチルフェニルエーテルの製造:機械式撹拌機、温度計及び水冷式還流冷却管を備えた500ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、フェノール44.8g(0.477モル)、n−ブロムオクタン38.6g(0.2モル)、臭化テトラブチルアンモニウム6g、水酸化カリウム26.8g、水100ミリリットル及びトルエン100ミリリットルを装入した。この全体を撹拌し、次いで20時間還流した。次いで反応混合物を室温まで冷却した。静置して、相を分離した。有機相を0.5N水酸化ナトリウム溶液100ミリリットルで洗浄し、次いで100ミリリットルずつの水で5回洗浄した。次いで硫酸マグネシウムによって乾燥させ、次いで溶媒を減圧下で85℃の温度において除去した。n−オクチルフェニルエーテル41.5g(収率95%)が回収され、これはさらに精製することなく続いて用いることができた。
【0020】ヒドロキシトシルオキシヨードベンゼンの製造:機械式撹拌機、水冷式還流冷却管及び滴下漏斗を備えた1000ミリリットルの丸底フラスコに、ヨードベンゼンジアセテート80.53g(0.25モル)、水300ミリリットル及び酢酸100ミリリットルを装入した。この全体を撹拌し、40℃に加熱した。次いでp−トルエンスルホン酸一水和物47.55g(0.25モル)を滴下漏斗によって5分かけて添加した。反応混合物を40℃に2時間保ち、次いで25℃に冷却した。白色沈殿が形成した。これをろ過によって回収し、次いで減圧下で乾燥させた。所望の物質68.15gが得られた。収率70%。
【0021】(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムトシレートの製造:電磁式撹拌棒を備えた250ミリリットルの三角フラスコに、ヒドロキシトシルオキシヨードベンゼン22.2g(0.057モル)、n−オクチルフェニルエーテル9g(0.04モル)、アセトニトリル5ミリリットル及び酢酸1.5ミリリットルを装入した。この混合物を撹拌し、40℃の温度に2時間30分間加熱した。次いで氷酢酸1.5ミリリットルを添加し、次いでこの混合物を40℃において5時間放置した。反応混合物を放置して冷却し、激しく撹拌しながら水150ミリリットルを添加した。次いでこの混合物を室温において12時間撹拌し、次いで相分離した。有機相を黄色の沈殿が形成するまで水で数回洗浄した。この固形分をろ過によって回収し、エーテル50ミリリットルで洗浄し、次いで真空下で45℃の温度において乾燥させた。(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムトシレート19.5gが回収された。収率76%。
【0022】テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムの製造:電磁式撹拌棒を備えた500ミリリットルの三角フラスコ中で(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムトシレート5g(0.0086モル)をアセトン350ミリリットル中に溶解させた。光を遮断しながら、アセトン50ミリリットル中にテトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸リチウム3.4g(0.0103モル)を含有させた溶液を添加した。この混合物を48時間撹拌し、次いで生成したp−トルエンスルホン酸リチウムを除去するためにろ過した。減圧下でアセトンを蒸発させて、テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム7.98gが回収された。収率92%。
【0023】例3:テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム[(C1225−Φ)2 I]+ [B(C654-
【0024】塩化ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムの製造:機械式撹拌機、水冷式還流冷却管及び滴下漏斗を備えた1000ミリリットルの丸底フラスコに、ドデシルベンゼン100g(0.405モル)、沃素酸カリウム43.5g(0.203モル)、酢酸199.6g及び無水酢酸59.5gを装入した。この混合物を撹拌し、次いで氷浴中で0℃に冷却した。硫酸59.8gと酢酸39.86gとの混合物を滴下漏斗に装入した。この混合物を25分かけて反応混合物に添加した。この反応混合物を室温において18時間撹拌した。次いで水750ミリリットルを添加し、次いで反応混合物を350ミリリットルずつのエーテルで3回抽出した。エーテル相を一緒にし、次いで減圧下で蒸発させた。濃縮物を飽和塩化ナトリウム溶液540ミリリットル中に取り出し、次いでこの混合物を氷浴中で2時間冷却した。生成物を第4番ガラス漏斗を用いたろ過によって回収した。次いで固形物をアセトンから2回再結晶した。ろ過によって、塩化ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム69.18gが回収された。収率52%。
【0025】テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムの製造1000ミリリットルの三角フラスコ中で塩化ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム3.76gをアセトン500ミリリットル中に溶解させた。次いで、アセトン100ミリリットル中にテトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸リチウム5gを含有させた溶液を滴下した。この混合物を光を遮断して2日間撹拌し、次いで生成した塩化リチウムをろ過によって除去した。アセトンを蒸発させた後に、テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム8gが回収された。収率90%。
【0026】例4:テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −クメン)Fe+機械式撹拌機、水冷式還流冷却管、温度計及び滴下漏斗を備えた250ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、フェロセン4g(0.0215モル)、塩化アルミニウム7.64g、アルミニウム粉末0.11g及びクメン27gを装入した。この全体を撹拌し、不活性窒素雰囲気下に置いた。この反応混合物を2時間加熱し、次いで塩化チタン4.04gを滴下した。この全体を100℃に1時間加熱し、次いでこの混合物を放置して室温に戻した。反応混合物を氷30gと37.5%塩酸8gとの混合物中に注入した。この混合物を30分間撹拌した。次いで過酸化水素0.7gを添加した。この混合物を30分間撹拌し、次いで第4番ガラス漏斗を用いてろ過した。液状画分を回収した。静置して相を分離させた後に、水相に、水800ミリリットル中にテトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸カリウム15.4gを含有させた溶液を導入した。この全体を2時間撹拌した。ろ過によって沈殿を分離し、次いで真空下で乾燥させた。所望の物質14.3gが得られた。収率73%。
【0027】例5:テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −トルエン)Fe+蒸留水100ミリリットル中にテトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸ナトリウム7gを溶解させたものを含有させた250ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、ヘキサフルオロ燐酸(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −トルエン)Fe+ 3.58gを含有する水溶液50ミリリットルを添加した。この混合物を1時間電磁的に撹拌した。明るい色の沈殿が形成し、これをろ過によって分離し、次いで真空下で24時間乾燥させた。テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −トルエン)Fe+ 8.5gが得られた。収率95%。得られた生成物の式は、 1H−NMR及び19F−NMR並びに質量分析法によって確認された。
【0028】例6:テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −1−メチルナフタリン)Fe+テトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼酸ナトリウム7g及びテトラフルオロ硼酸(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −1−メチルナフタリン)Fe+3.5gから、例4におけるように製造を実施した。所期の化合物8.9gが得られた。式は、NMR分析及び質量分析法によって確認された。
【0029】例7:薄層を形成するためのエポキシ化モノマーの光架橋次の手順に従って浴を調製した。エポキシ化モノマーUVR−6110(登録商標名){ユニオン・カーバイド(Union Carbide)社より販売されている3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル}100重量部に、メタノール中50重量%の溶液状の光重合開始剤A2重量部を添加した。この混合物を機械的に撹拌しながら30分間室温に保った。次いでこの混合物をマイヤー(Mayer )(登録商標名)0番棒{エリクセン(Erichsen)G−B社より販売}を用いてグラシン紙{シビル(Sibille )社より販売されているシビル(Sibille )(登録商標名)9530}上に塗布した(ほぼ2〜3g/m2 )。
【0030】コーティングされた紙をフュージョン・システム(Fusion System )(登録商標名)F450タイプの紫外線ランプ{フュージョン(Fusion)社より販売}(波長360nm、電極不在、マイクロ波による励起、電力120W/cm照射を特徴とする)の下に通過させた。33m/分の速度で紫外線ランプの下を1回通過させた場合の照射エネルギー{エイト−USA(Eit-USA )社から入手したユヴィキュア(Uvicure )(登録商標名)セルを用いて測定}は、0.025J/cm2 だった。層を硬化させるのに必要な走行速度(m/分)を記録した。
【0031】紙の通過回数及び走行速度を表1に示す。例1において製造した開始剤の性能を、同等のカチオンを有ししかしアニオンは従来技術のものから選択した開始剤の性能と比較した。同等のカチオンを持つ場合に、・アニオンB(C654-はSbF6-と同程度に有効でありながらSbF6-の毒性の問題点を示さないということ、・アニオンB(C654-はアニオンAsF6-、PF6-及びBF4-よりはるかに活性であること、並びに・アニオンB(C654-及びB(C64 F)4-は薄層を形成させるためのエポキシ化モノマーの架橋において有効ではないことが証明された。
【0032】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】 周期分類{「Chemical & Engineering News 」第63巻、第5号、第26頁(1985年2月4日発行)}の第15群〜第17群から選択される元素のオニウム硼酸塩又は同周期分類第4群〜第10群から選択される元素の有機金属錯体の硼酸塩であって、カチオン部分が(1)次式I[(R1n −A−(R2m+ (I)
(式中、AはI、S、Se、P、N等のような第15群〜第17群から選択される元素を表わし、R1 はC6 〜C20の複素環式又は炭素環式アリール基を表わし、該複素環式基は複素原子として窒素、硫黄等を含有することができ、R2 はR1 又はC1 〜C30の直鎖状若しくは分枝鎖状アルケニル若しくはアルキル基を表わし、これらR1 及びR2 基はC1 〜C25アルコキシ、C1 〜C25アルキル、ニトロ、クロル、ブロム、シアノ、カルボキシル、エステル、メルカプト基等で置換されていてもよく、nは1〜v+1の範囲の整数であり、ここでvは元素Aの原子価であり、mは0〜v−1の範囲の整数であり、ここでnとmとの合計n+mはv+1である)のオニウム塩、(2)国際公開第WO−90/11303号に記載のオキソイソチオクロマニウム塩、特に2−エチル−4−オキソイソチオクロマニウム又は2−ドデシル−4−オキソイソチオクロマニウムスルホニウム塩及び(3)次式II(L123 M)q+ (II)
{式中、Mは第4群〜第10群から選択される金属、特に鉄、マンガン、クロム、コバルト等を表わし、L1 は、π電子を介して金属Mに結合した1個の配位子であり、該配位子は、η3 −アルキル、η5 −シクロペンタジエニル及びη7 −シクロへプタトリエニル配位子並びに随意に置換されたη6 −ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環(ここで、各環は3〜8個のπ電子を介して金属Mの原子価層に寄与し得る)を有する化合物から選択されるη6 −芳香族化合物から選択され、L2 は、π電子を介して金属Mに結合した1個の配位子であり、該配位子は、η7 −シクロへプタトリエニル配位子並びに随意に置換されたη6 −ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環(ここで、各環は6若しくは7個のπ電子を介して金属Mの原子価層に寄与し得る)を有する化合物から選択されるη6 −芳香族化合物から選択され、L3 は、σ電子を介して金属Mに結合した同一又は異なる0〜3個の配位子であって、CO及びNO2+から選択され、L1 、L2 及びL3 が寄与する錯体の電荷と金属Mのイオン電荷との合計電荷qは正であって1又は2である}の有機金属塩から選択されること;並びにアニオン性硼酸塩部分が次式:[BXab-{式中、a及びbは0〜4の範囲の整数であり、ここでaとbとの合計a+bは4であり、記号Xは、・aが0〜3である場合にはハロゲン原子(塩素又は弗素)を表わし、また、・aが0〜2である場合にはOH官能基を表わすこともでき、記号Rは同一であっても異なっていてもよく、・カチオン部分が第15群〜第17群から選択される元素のオニウムである場合にはCF3 、NO2 、CN等のような少なくとも1個の電子吸引基で置換されたフェニル基又は少なくとも2個のハロゲン原子(特に弗素)で置換されたフェニル基を表わし、・カチオン部分が第4群〜第10群から選択される元素の有機金属錯体である場合には少なくとも1個の元素又は電子吸引基で置換されたフェニル基、特にハロゲン原子(より特定的には弗素)、CF3 、NO2 、CN等で置換されたフェニル基を表わし、また、・カチオン部分が何であるかにかかわらず、少なくとも1個の元素又は電子吸引基、特にハロゲン原子(より特定的には弗素)、CF3 、NO2 、CN等で置換されていてもよいビフェニル、ナフチル等のような少なくとも2個の芳香環を含有するアリール基を表わす}を有することを特徴とする、前記硼酸塩。
【請求項2】 アニオン部分が[B(C654- 、[B(C64 CF34- 、[(C652 BF2- 、[C65 BF3- 又は[B(C6324- であることを特徴とする請求項1記載の硼酸塩。
【請求項3】 カチオン部分が[(Φ)2 I]+ 、[C817−O−Φ−I−Φ]+ 、[C1225−Φ−I−Φ]+ 、[(C817−O−Φ)2 I]+ 、[C817−O−Φ−I−Φ]+ 、[(Φ)3 S]+ 、[(Φ)2 −S−Φ−O−C817+ 、[Φ−S−Φ−S(Φ)2+ 、[(C1225−Φ)2 I]+ 、(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −トルエン)Fe+ 、(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −1−メチルナフタリン)Fe+ 、(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −クメン)Fe+ 、ビス(η6 −メシチレン)Fe+ 又はビス(η6 −ベンゼン)Cr+ であることを特徴とする請求項1又は2記載の硼酸塩。
【請求項4】 式[(Φ)2 I]+ [B(C654- 、[C817−O−Φ−I−Φ]+ [B(C654- 、[C1225−Φ−I−Φ]+ [B(C654- 、[(C817−O−Φ)2 I]+ [B(C654-、[(C817)−O−Φ−I−Φ]+ [B(C654- 、[(Φ)3 S]+ [B(C654- 、[(Φ)2 −S−Φ−O−C817+ [B(C64 CF34- 、[(C1225−Φ)2 I]+ [B(C654- 、(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −トルエン)Fe+ [B(C654- 、(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −1−メチルナフタリン)Fe+[B(C654- 又は(η5 −シクロペンタジエニル)(η6 −クメン)Fe+ [B(C654- を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硼酸塩。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の硼酸塩の製造方法であって、カチオン部分の塩(塩化物、沃化物等のようなハロゲン化物、ヘキサフルオロ燐酸塩、テトラフルオロ硼酸塩、トシレート等)とアニオン部分のアルカリ金属塩(ナトリウム、リチウム又はカリウム塩)との交換反応による、前記方法。
【請求項6】 請求項1〜4のいずれかに記載の硼酸塩から成ることを特徴とする、有機官能基を有するモノマー又はポリマーの光化学的手段によるか又は電子ビーム下での重合又は架橋のためのカチオン重合又は架橋開始剤。