説明

カチオン電着塗料組成物およびその応用

【課題】表面状態が良好な電着塗膜を得ることができるカチオン電着塗料組成物を提供すること。
【解決手段】平均粒子径が1.0〜3.0μmであり、熱軟化温度が120〜180℃である架橋樹脂粒子を含有するカチオン電着塗料組成物およびカチオン電着塗料中に被塗物を浸漬して電圧を印加することによるカチオン電着塗膜の形成方法において、該カチオン電着塗料組成物が平均粒子径1.0〜3.0μmおよび熱軟化温度120〜180℃である架橋樹脂粒子を用いる平滑性および端面被覆性の両立したカチオン電着塗膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平滑性および端面被覆性に優れたカチオン電着塗料組成物、特に特定の架橋樹脂粒子を配合した平滑性および端面被覆性に優れたカチオン電着塗料組成物およびそれを用いるカチオン電着塗膜の平滑性および端面被覆性を両立させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電着塗装は、電着塗料組成物中に被塗物を浸漬させ電圧を印加することにより行なわれる塗装方法である。この方法は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので特に自動車車体などの大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。
【0003】
電着塗装は、物品上への被覆塗装であるので、塗装面が平滑であることが当然望まれる。一方、金属の打ち抜き部分などの端面は鋭角的な端面を有しており、その部分にも塗膜が充分被覆されなければ防食性能が劣化する。したがって、表面平滑性と端面被覆性とはともに電着塗膜の必要とする性能である。表面平滑性は焼付硬化時に未硬化塗膜の粘度が下ることにより流動化して得られるものであるのに対して、端面腐食性は未硬化塗膜の粘度が下がらないようにすることにより得られるものである。即ち、端面腐食性は塗膜硬化時における塗膜のタレを抑制して、鋭角的な端面にも塗膜を残すことにより得られるものである。即ち、平滑性と端面被覆性は相反する性質である。
【0004】
ところで、電着塗料は最近低灰分化が推し進められている。低灰分化は、無機顔料などの比重の高い固体成分の配合量を削減することであり、電着塗料の固形分に沈降が起こらないようにすることである。低灰分化することにより、沈降防止のためにこれまで電着浴を撹拌していたエネルギーや労力が削減される。そこで、上記の低灰分化の要求に応えるべく、無機顔料の含有量を減少させると、塗料中の樹脂の量が相対的に高まり、電着塗装して得られた未硬化塗膜の粘度を適切に増大させることができず、その結果端面部分でのタレ制御を適切に調整することができず、端面被覆性が低下することとなる。
【0005】
一方、現行のカチオン電着塗料では、その固形分濃度を20重量%前後で用いているため、電着塗装後、いくつかの段階にわけて水洗を行い、被塗物に不必要に付着した電着塗料、特にその固形分を完全に除去した後に焼付工程を施している。そのため大量の水洗水を使用し、しかも水洗工程が長くなり、最近では、これら水洗水の削減や水洗工程の短縮化が望まれている。そのような水洗工程の短縮化の手段として、前記の塗料中の固形分濃度20重量%をさらに低下する、いわゆる低固形分化が求められている。しかしこの様な低固形分化を単純に行うと、塗料の粘度の低下などにより電着塗料中の固形分の沈降が起こりやすくなり、さらに前述のように無機顔料の含有量が減少すると、より一層固形分の沈降が生じやすくなる。そのため、この様な沈降を防止するため電着浴の撹拌をしなければならず、エネルギー負荷の削減が困難となる。即ち、省エネルギー、工程の短縮化を目的として、低固形分化を行っても、塗料の沈降が防止でき、かつ端面被覆性が容易に行えるように粘弾性の制御が可能で、かつ表面平滑性も優れたカチオン電着塗料が望まれている。
【0006】
そのような塗料、即ちチクロトロピー性の改善された塗料を得るための手段に関連して、既にカチオン電着塗料中に架橋樹脂粒子を配合した技術がいくつか存在する。特開2005−23232号公報(特許文献1)には、粒子径0.01〜0.2μmの内部架橋した微小樹脂粒子をカチオン電着塗料組成物に添加することが示されている(特許文献1請求項6)。このような小さな粒径の樹脂粒子を電着塗料に配合することは、チクソトロピー性を改善するものとして以前から存在した。
【0007】
特開2002−212488号公報(特許文献2)には、エッジ部の防錆性向上を目的として、アンモニウム基を有するアクリル樹脂を乳化剤としてα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を乳化重合することによりえられた架橋樹脂粒子を配合したカチオン電着塗料組成物が開示されている。ここで得られる樹脂粒子も粒子径が0.05〜0.3μmと小さいものである。ところが、平均粒径が1.0μm以下の架橋樹脂粒子を電着塗料に配合すると、得られる塗膜の平滑性が低下する。
【特許文献1】特開2005−23232号公報
【特許文献2】特開2002−212488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、上述のように、塗料の固形分濃度を低下させると共に、低灰分化を目的として、塗料の沈降防止を図り、しかもカチオン電着塗料において表面平滑性と端面被覆性という相反する性能を両立させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、低固形分化と低灰分化を目指すカチオン電着塗料の表面平滑性と端面被覆性とを両立させる方法を検討の結果、特定の架橋樹脂粒子をカチオン電着塗料中に配合することにより簡単かつ容易に目的を達成することを見いだし、本発明を成すに到った。
【0010】
即ち、本発明は、平均粒子径が1.0〜3.0μmであり、熱軟化温度が120〜180℃である架橋樹脂粒子を含有する平滑性および端面被覆性の優れたカチオン電着塗料組成物を提供する。
【0011】
前記架橋樹脂粒子は、好ましくは、カチオン電着塗料の樹脂固形分中3〜15重量%の量で含有する。
【0012】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、その組成中に、無機顔料を含まないまたはカチオン電着塗料組成物の固形分中7重量%以下で無機顔料を含む、低固形分型および低灰分型のものが好ましい。
【0013】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、好ましくは固形分濃度0.5〜9重量%を有する。
【0014】
本発明では、上記架橋樹脂粒子は、好ましくは分子内に不飽和二重結合を2個以上有する化合物(a)と(メタ)アクリレート(b)を懸濁重合、乳化重合などの既知の方法を用いて得られる。
【0015】
本発明はまた、カチオン電着塗料組成物を電着塗装して得られた未硬化の析出塗膜の140℃における貯蔵弾性率(G’)が80〜500dyn/cmであり、80℃における損失弾性率(G”)が10〜150dyn/cmであるものを提供する。
【0016】
本発明では、更に上記カチオン電着塗料組成物が硬化することにより得られた塗膜平滑性を示すRa値が0.25以下であるカチオン電着硬化塗膜も提供する。
【0017】
本発明は、また、カチオン電着塗料中に被塗物を浸漬して電圧を印加することによるカチオン電着塗膜の形成方法において、平均粒子径1.0〜3.0μmおよび熱軟化温度120〜180℃である架橋樹脂粒子をカチオン電着塗料に配合することを特徴とするカチオン電着塗膜の平滑性および端面被覆性を両立させる方法を提供する。
【0018】
更に、本発明は、低灰分型かつ低固形分型のカチオン電着塗料組成物を用いて、電着塗膜を形成する方法において、平均粒子径1.0〜3.0μmおよび熱軟化温度120〜180℃である架橋樹脂粒子を該カチオン電着塗料組成物の固形分中3〜15重量%の量で添加することにより、未硬化の析出塗膜の140℃における貯蔵弾性率(G’)を80〜500dyn/cmに、80℃における損失弾性率(G”)を10〜150dyn/cmに調整して、平滑性と端面被覆性を向上したカチオン電着塗膜の形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、平均粒子径が1.0〜3.0μmであり、熱軟化温度が120〜180℃である架橋樹脂粒子をカチオン電着塗料中に配合することで表面平滑性と端面被覆性の両立が可能になる。低灰分型のカチオン電着塗料組成物の場合無機顔料による塗膜の粘度上昇を得ることができないため、端面被覆性が悪化することが予想されるが、本発明の特定の架橋樹脂粒子をカチオン電着塗料中に配合することで端面被覆性も改善され、低灰分型カチオン電着塗料組成物において塗膜性能を維持もしくは改善する手段として有効である。ここで低灰分型のカチオン電着塗料組成物とは、カチオン電着塗料組成物の固形分中に無機顔料を全く含まないか、または含んでいても塗料固形分中に最大7重量%であることをいう。さらに、本発明では、低固形分型のカチオン電着塗料組成物にあっても、従来以上に沈降防止能が優れかつ上記と同様表面平滑性と端面被覆性の両立が可能であるものを提供する。ここで、低固形分型のカチオン電着塗料組成物とは、カチオン電着塗料組成物の固形分濃度が従来の20重量より低く、具体的には0.5〜9重量%であることを意味する。
【0020】
本発明者等の研究では、表面平滑性と端面被覆性との両立は、電着塗装により得られた析出電着塗膜の動的粘弾性の測定と関連づけることができる。特に80℃における損失弾性率G”と140℃における貯蔵弾性率G’が所定の範囲、即ち80℃における損失弾性率の場合10〜150dyn/cmで、140℃における貯蔵弾性率G’の場合80〜500dyn/cmである場合に、表面平滑性と断面被覆性の両立が成り立つのであるが、本発明ではその達成手段として平均粒子径1.0〜3.0μmおよび熱軟化温度120℃以上である架橋樹脂粒子をカチオン電着塗料中に配合することを見いだした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
架橋樹脂粒子
本発明の用いる架橋樹脂粒子は、平均粒子径が1.0〜3.0μmで、熱軟化温度が120℃以上であることが必要である。従来技術でも、架橋した樹脂粒子をカチオン電着塗料組成物に配合する提案がなされているが、そのような樹脂粒子は平均粒子径が1.0μm未満のものが殆どである。従来技術では、単に粘性をコントロールするために樹脂粒子を配合しているので、平均粒子径が1.0μm未満の樹脂粒子が必要となってくるのであるが、本発明では動的粘弾性の観点、特に80℃の貯蔵弾性率G”および140℃の損失弾性率G’の観点から表面平滑性と端面被覆性との両立を果たすために、従来技術よりも平均粒子径が大きく、しかも熱軟化温度が120℃以上である架橋樹脂粒子を配合することが必要となったのである。
【0022】
動的粘弾性とは、線形粘弾性体に振動的(周期的)な歪みまたは力を与えた場合に観測される弾性率で、振動数および温度に関係する。以下の動的粘弾性に関する記載は、講座レオロジー(日本レオロジー学会編)、第2章高分子液体のレオロジー、p31−39および高分子化学序論(岡村誠三、中島章夫、小野木重治、西島安則、東村敏延、伊勢典夫共著)、第4章高分子物質の諸性能 粘弾性、p149−155に記載されている内容を参考にしたものである。
【0023】
角速度ω(2π×周波数f)における応力及び歪みは下記式にて与えられる。
歪み γ(t)=γiωt (dyn/cm
応力 σ(t)=σi(ωt+δ) (dyn/cm
(ここでγ(t)は時間tにおける歪み、σ(t)は時間tにおける応力であり、γはt=0における歪み、σはt=0における応力、δは位相差を示す。)
このときの複素弾性率Gは、
=(σ/γ)eiδ=(σ/γ)(cosδ−i sinδ)
で表される。一般的に塗料の粘度制御因子として用いられている複素粘性率η=G/ω(ポイズ)は、塗料の粘性と弾性、双方の性質を併せ持つ粘弾性を定量化したものである。
【0024】
本発明では、この粘性と弾性を個別にとらえ、平滑性と端面被覆性との両立を可能にした。平滑性を確保するには焼き付け過程における塗料の流動を制御する必要がある。この流動には粘性的性質がかかわっており、これは応力と歪みの関係より、下記式で表される。
損失弾性率(粘性) G”=Gsinδ(dyn/cm
【0025】
一方、端面被覆性の確保には、焼き付け過程において、その場に留まろうとする力を制御する必要があり、この力は弾性的性質がかかわっており、これは応力と歪みの関係より、下記式で表される。
貯蔵弾性率(弾性) G’=Gcosδ(dyn/cm
【0026】
カチオン電着塗料を含む一般的な塗料の場合、焼き付け初期段階で未硬化塗膜は粘性項支配となり、損失弾性率G”の影響を大きく受ける。後期段階では未硬化塗膜が融着や擬似架橋によりゲル化点(見かけ上、端から端まで繋がった状態)を迎え、それ以降は弾性項支配となり、貯蔵弾性率G’の影響を大きく受ける。ゲル化点とは、焼付過程における粘弾性挙動の損失弾性率G”(粘性項)と貯蔵弾性率G’(弾性項)の関係が損失弾性率G”<貯蔵弾性率G’となる温度のことである。即ち、粘性項支配から弾性項支配へと変化する点を意味する。
【0027】
本発明において、ゲル化点以下の温度(80℃)の損失弾性率G”を制御する事と、ゲル化点以上の温度(140℃)の貯蔵弾性率G’を制御する事で、平滑性と端面被覆性の両立が可能となる事を見出し、本発明を完成するに到った。
【0028】
ここでは、発明を完成するに到る過程を述べることにより、本発明を説明する。まず、予備的な実験として以下の事を行った。
【0029】
いくつかの塗料、具体的には顔料などを配合した従来の塗料系、それらを配合しないもの、種々の架橋樹脂粒子を配合したもので粘弾性挙動を測定した。塗料は、温度が上がるにつれて、40〜80℃にかけて粘度が下がり始め、また80〜100℃ぐらいの間では少し粘度が上昇して、100℃を越えると大きく粘度が減少してフローする。このフロー後に硬化反応が開始し始めて粘度が再び上昇し始め150℃前後まで徐々に上がり始め、その後急激に粘度が上昇して硬化が完結する。それを確認しつつ塗料の動的粘弾性を調べるために、5種類の塗料について株式会社ユービーエムのレオゾール(Rheosol)−G3000を用いて測定し、歪み0.5度、周波数0.02Hzで温度上昇率2℃/分の条件で、加えた応力値σ(t)に対する歪み値γ(t)および応力と歪みの位相差δを測定した。得られた応力値σ(t)、歪み値γ(t)および位相差δの関係から前述式にて貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)および複素粘性率(η)を算出し、それぞれを図1〜図3に示す。図1〜3中において用いた塗料は次のようなものである:『STD』はPN−310(日本ペイント社製:カチオン電着塗料)、『顔料free』はPN−310から顔料成分を除いたもの(PWC=0%)、『樹脂粒子1』に関しては『顔料free』に架橋樹脂粒子(平均粒子径1〜3μm)を15重量%配合したもの、『樹脂粒子2』に関しては『顔料free』に架橋樹脂粒子(平均粒子径100nm)を5重量%配合したもの、『樹脂粒子3』に関しては『顔料free』に『樹脂粒子2』で用いた架橋樹脂粒子とは異なる架橋樹脂粒子(平均粒子径100nm)を10重量%配合したものである。
【0030】
この図1〜図3をみると明らかなように、各塗料によって、その挙動がかなり違うことがわかる。大まかには、三つの態様(40〜80℃、80〜100℃、および100℃以上)に分かれるが、塗料の配合、特に粒子等の存在により、動的粘弾性の挙動が大きく変化することも5種類の塗料によって描かれるグラフが異なることも解る。従って、配合を変化させることにより、粘弾性の挙動を最適にコントロールすることも可能であるということが判る。
【0031】
特に、図1〜図3を見てそれぞれの塗料間において大きく異なるのは、80℃付近の粘弾性挙動および140℃付近の粘弾性挙動というのが基準となると理解できる。
【0032】
この判断に基づいて、更に次の実験を行った。次にPN−310(日本ペイント(株)社製カチオン電着塗料)およびPN−310塗料の無機顔料成分量を変更したもの、PN−310から無機顔料成分を除いたものおよびその塗料に架橋樹脂粒子の種類、配合量を変更したいくつかの種類のを作成し、それぞれの粘性挙動を測定した。それらの粘弾性の結果から、各温度での変化が判りやすいように図4には80℃の三つの粘弾性挙動、即ちG’値と電着肌(図4A)、η値と電着肌(図4B)およびG”値と電着肌(図4C)をすべて表示し、図5には同じく140℃の三つの粘弾性挙動、即ちG’値と電着肌(図5A)、η値と電着肌(図5B)およびG”値と電着肌(図5C)のすべてを表示した。尚、電着肌は表面粗さ(Ra)で表した。ここで評価した電着肌とは、後述する電着塗膜の外観、即ち平滑性を意味し、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)の測定値で表示されるものをいう。即ち、前述の平滑性を電着肌で見ることにより、この電着肌と粘弾性挙動との関係を見たのである。
【0033】
この図4および図5の挙動から明らかなように、各測定点および測定塗料の粘弾性変化と電着肌との関係において一定の関係を持っていると認められるのが80℃の電着肌との関係である(図4C参照)。また、同じく端面被覆性と粘弾性挙動の三つの挙動を測定したものを図6A〜Cおよび図7A〜Cに同様に記載する。この図6および図7から明らかなように140℃の貯蔵弾性率(G’)と端面被覆性との関係が相関関係を示すことがわかる(図7A参照)。すなわち、粘度の値の変化と電着肌(平滑性)あるいは端面被覆性とが相関関係を持っているということになる。ここで、上記の端面被覆性は、後述の評価方法により求められたものである。尚、図6、図7で表示する「被覆性」とは、ここでいう「端面被覆性」と同意義である。
【0034】
この測定結果から本発明では、電着肌(平滑性)に対しては80℃の損失弾性率(G”)を用い、端面被覆性に関しては140℃の貯蔵弾性率(G’)を基準として用いればよいことを導きだした。このことにより本発明を完成したのである。また上記図4および図7を参考にすると貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)の好ましい範囲を選択することができる。すなわち、140℃におけるG’は図7Aを参考にすると、80〜500dyn/cmが好適であり、80℃におけるG”は図4Cを参考にすると10〜150dyn/cm(電着肌Raは小さい方が平滑性がよい)を選択することができる。好ましくは、貯蔵弾性率(G’)は90〜500dyn/cmであり、より好ましくは100〜500dyn/cmである。また、80℃における損失弾性率(G”)が好ましくは10〜120dyn/cmであり、より好ましくは10〜100dyn/cmである。
【0035】
貯蔵弾性率G’の望ましい下限を下回ると、得られる電着塗膜の端面被覆性が悪化する恐れがあり、望ましい上限を上回ると平滑性が低下する恐れがある。損失弾性率G”の望ましい加減を下回ると、平滑性は向上するものの得られる電着塗膜の端面被覆性が悪化する恐れがあり、望ましい上限を上回ると平滑性が低下する恐れがある。
【0036】
本発明に用いる架橋樹脂粒子の平均粒子径は、前述のように1.0〜3.0μmであるが、その下限値としては好ましくは1.2μm、更に好ましくは1.5μmである。一方、その上限値としては、好ましくは2.5μm、更に好ましくは2.2μmである。前述のように、1.0μmより小さい場合は、従来技術の樹脂粒子の平均粒子径の範囲となり、表面平滑性が悪化するため好ましくない。平均粒子径が3.0μmより大きな架橋樹脂粒子は、電着塗料の無撹拌時の沈降や電着塗装時における水平面への粒子の降り積もりによる平滑性の低下が起こる。ここでの平均粒子径は、以下の方法により測定することができるものである。
【0037】
樹脂粒子の平均粒子径を、日機装(株)社製、MICROTRAC9340UPAを用いて、粒状粒子透過測定法にて測定した。また、この測定器において、樹脂粒子の粒度分布を測定し、その測定値から累積相対度数F(x)=0.5における平均粒子径を算出した。これらの測定および算出においては、溶媒(水)の屈折率1.33、樹脂分の屈折率1.59を用いた。
【0038】
本発明に用いる架橋樹脂粒子は、前述のように熱軟化温度が120〜180℃であるが、その下限値としては好ましくは140℃であり、更に好ましくは160℃である。熱軟化温度が120℃より低いと、未硬化の電着塗膜の焼付時に貯蔵弾性率G’が所定の値でなくなり、端面の被覆性を確保できない。一方、架橋樹脂粒子の熱軟化温度が180℃を超える材料の合成は実質的に不可能である。
【0039】
熱軟化温度は、架橋樹脂粒子が軟化を開始する温度である。即ち、対象とする架橋樹脂粒子の各温度におけるG’を求め、その温度変化に対するG’の変化が急激に変化する点の温度を言い、以下の要領で求めることができる。架橋樹脂粒子の固形分濃度を30重量%に調整して得られた試料を、回転型動的粘弾性測定装置であるRhesol−G3000(株式会社ユービーエム製)を用い、温度依存性測定にて、歪み0.5度、周波数0.02Hz、昇温速度4.0℃/分の測定条件で90℃からの貯蔵弾性率G’の測定を行う。測定結果は、図8のグラフのようになる。図8から明らかなように、架橋樹脂粒子の貯蔵弾性率G’は、初期温度領域(図8では90〜140℃付近)で一定粘度を保持するものの、ある温度(図8では140℃を超えた温度)を境に貯蔵弾性率G’の低下が起こり始める。一定粘度で推移する領域の接線と粘度低下が起こっている領域の接線を引き、その交点の温度を熱軟化温度と定義する。
【0040】
樹脂粒子の熱軟化温度を高くするためには、樹脂粒子の架橋度を高くする必要がある。本発明における熱軟化温度領域を確保するためには、樹脂粒子は架橋樹脂粒子である必要がある。ガラス転移温度も樹脂の軟化を示す指標であるが、架橋樹脂粒子においてガラス転移温度(Tg)を測定すると数百度(℃)のレベルに達するので、この温度では樹脂の熱分解が大きくなり、粒子自体の軟化特性を測定できないので、本発明では熱軟化温度を利用する。
【0041】
架橋樹脂粒子は、平均粒子径が1.0〜3.0μmの大きさであることを考慮すると、懸濁重合により製造されることが好ましい。乳化重合などその他の方法で製造することも、粒径と熱軟化温度が上記範囲を満足すれば、可能であるが、粒径を所望の範囲にそろえる観点から懸濁重合が好適である。
【0042】
上記架橋樹脂粒子としては、特に限定されず、例えば、エチレン性不飽和単量体を主体として得られた架橋構造を有する樹脂からなる樹脂粒子、内部架橋したウレタン樹脂からなる樹脂粒子、内部架橋したメラミン樹脂からなる微小樹脂粒子等を挙げることができる。
【0043】
上記エチレン性不飽和単量体を主体として得られた架橋構造を有する樹脂としては特に限定されず、例えば、架橋性単量体を必須成分とし、エチレン性不飽和単量体を含有する単量体組成物を、水性媒体中で懸濁重合させて調製した水分散体、上記水分散体を溶媒置換等の方法により得られる内部架橋した樹脂粒子、又は、脂肪族炭化水素等の低SP有機溶媒又はエステル、ケトン、アルコール等の高SPである有機溶媒のように単量体は溶解するが重合体は溶解しない非水性有機溶媒中で架橋性単量体を必須成分とし、エチレン性不飽和単量体を含有する単量体組成物を共重合させて得られる内部架橋した樹脂粒子を分散するNAD法又は沈澱析出法等の方法によって得られる内部架橋した樹脂粒子等を挙げることができる。
【0044】
上記エチレン性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等を挙げることができる。上記エチレン性不飽和単量体は、二種類以上を併用して使用するものであってもよい。
【0045】
上記架橋性単量体としては特に限定されず、例えば、分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する単量体、相互に反応し得る基をそれぞれ担持する2種のエチレン性不飽和基含有単量体等を挙げることができる。
【0046】
上記内部架橋した微小樹脂粒子の製造に使用することができる分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有する単量体としては特に限定されず、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールアリロキシジメタクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジメタクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリメタクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパンジメタクリレート等の多価アルコールの重合性不飽和モノカルボン酸エステル;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート等の多塩基酸の重合性不飽和アルコールエステル;ジビニルベンゼン等の2個以上のビニル基で置換された芳香族化合物等を挙げることができる。
【0047】
上記相互に反応し得る基をそれぞれ担持する2種のエチレン性不飽和基を有する単量体に存在する相互に反応する官能基の組合せとしては特に限定されず、例えば、エポキシ基とカルボキシル基、アミノ基とカルボニル基、エポキシ基とカルボン酸無水物基、アミノ基とカルボン酸塩化物基、アルキレンイミノ基とカルボニル基、オルガノアルコキシシラン基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とイソシアナートグリシジルアクリレート基等の組合せを挙げることができる。なかでも、エポキシ基とカルボキシル基の組合せがより好ましい。
【0048】
上記内部架橋したウレタン樹脂からなる微小樹脂粒子は、ポリイソシアナート成分と末端に水酸基を有するジオール及びカルボキシル基を有するジオール若しくはトリオールを有する活性水素含有成分とを反応させることにより形成されたカルボン酸塩を側鎖に有するイソシアナート末端基含有ポリウレタンプレポリマーを、続いて活性水素含有連鎖延長剤と反応させることによって得られるポリウレタンポリマーからなる微小樹脂粒子である。
【0049】
上記プレポリマーに使用するポリイソシアナート成分は、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート等の芳香族ジイソシアナート;ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート等の脂肪族ジイソシアナート;1−シクロヘキサンジイソシアナート、1−イソシアナート−3−イソシアナートメチル−3,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアナート)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、メチルシクロヘキシレンジイソシアナート等の脂環族ジイソシアナート;等を挙げることができる。上記ポリイソシアナート成分は、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナートがより好ましい。
【0050】
上記末端に水酸基を有するジオールは特に限定されず、例えば、分子量100〜5000のポリエーテルジオール、ポリエステルジオール又はポリカーボネートジオール等を挙げることができる。上記末端に水酸基を有するジオールとしては特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリカプロラクトンジオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンジオール、ポリヘキサメチレンカーボネート等を挙げることができる。
【0051】
上記カルボキシル基を含有するジオールとしては特に限定されず、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸等を挙げることができる。なかでも、ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0052】
上記トリオールとしては特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリンポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。トリオールを使用することによって、ウレタン樹脂粒子の内部が架橋構造をとる。
【0053】
上記内部架橋したメラミン樹脂からなる粒子としては特に限定されず、例えば、メラミン樹脂とポリオールを乳化剤の存在下で水中に分散させた後、分散により形成された粒子内でポリオールとメラミン樹脂の架橋反応を行うことによって得られる内部架橋したメラミン樹脂粒子等を挙げることができる。
【0054】
上記メラミン樹脂としては、特に限定されず、例えば、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−メチロールメラミン及びそれらのアルキルエーテル化物(アルキルはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル)等を挙げることができる。市販されている上記メラミン樹脂としては、例えば、三井サイテック社製サイメル303、サイメル325、サイメル1156等を挙げることができる。
【0055】
上記ポリオールとしては特に限定されず、例えば、分子量500〜3000のトリオール、テトロール等を挙げることができる。上記ポリオールは、ポリプロピレンエーテルトリオール、ポリエチレンエーテルトリオールがより好ましい。
【0056】
上記架橋樹脂粒子は、ロ過、スプレー乾燥、凍結乾燥等の方法で内部架橋した微小樹脂粒子を単離し、そのまま若しくはミル等を用いて適当な粒径に粉砕して粉体の状態で用いるものであっても、得られた水分散体をそのまま、又は、溶媒置換により媒体を置換して使用するものであってもよい。
【0057】
本発明における架橋樹脂粒子含有量は、カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分に基づいて、好ましくは3〜15重量%であるが、その下限値としては好ましくは4重量%、更に好ましくは5重量%である。一方、その上限値としては好ましくは10重量%であり、更に好ましくは8重量%である。架橋樹脂粒子含有量が3重量%より少ないと、表面平滑性と端面被覆性の両立が難しくなる。15重量%を超えると、耐食性など塗膜性能の低下を引き起こす恐れがある。ここで、上記樹脂固形分とは、カチオン電着塗料組成物中に含まれる樹脂成分(架橋樹脂粒子も含む)全ての固形分重量を意味する。
【0058】
カチオン電着塗料組成物
カチオン電着塗料用組成物は、水性媒体、水性媒体中に分散するかまたは溶解したカチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、中和酸、有機溶媒を含有する。カチオン電着塗料はさらに無機顔料を含んでもよいが、その量はカチオン電着塗料の固形分中7重量%以下である。前述のように低灰分化を推し進める場合には、顔料は含まないほうがよい。本発明では、前述のように、上記特定の架橋樹脂粒子をカチオン電着塗料組成物中に配合する必要がある。
【0059】
カチオン性エポキシ樹脂
本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
【0060】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはYD−7011R(東都化成(株)社製、エポキシ当量460〜490)、エピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807、(同、エポキシ当量170)などがある。
【0061】
特開平5−306327号公報に記載される、下記式
【0062】
【化1】

【0063】
[式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。]で示されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂をカチオン性エポキシ樹脂に用いてもよい。
【0064】
エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックイソシアネート硬化剤とポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去することで得られる。
【0065】
二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されており、公知である。
【0066】
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
【0067】
これらのエポキシ樹脂は、開環後0.3〜4.0meq/gのアミン当量となるように、より好ましくはそのうちの5〜50%が1級アミノ基が占めるように活性水素化合物で開環するのが望ましい。
【0068】
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィド及び酸混合物がある。1級、2級又は/及び3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
【0069】
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数の種類を併用して用いてもよい。
【0070】
ブロックイソシアネート硬化剤
本発明のブロックイソシアネート硬化剤を得るためのポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれであってもよい。
【0071】
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
【0072】
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤に使用してよい。
【0073】
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
【0074】
ブロック剤としては、通常使用されるε−カプロラクタムやブチルセロソルブ等を用いることができる。
【0075】
無機顔料
本発明で用いられる電着塗料組成物には通常用いられる無機顔料を含有させてもよい。低灰分型として用いるときには、顔料、特に無機顔料は配合量を少なくするか、配合しない方がよい。無機顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、チタンホワイト及びベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、硫酸ビスマスのような防錆顔料等、が挙げられる。
【0076】
このような無機顔料は、カチオン電着塗料組成物の塗料固形分に対して7重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。尚、この樹脂固形分に対する重量%を、PWCとも言う。無機顔料濃度が7重量%を超えると、低灰分化を十分に達成することができないため、沈降防止のためのエネルギー負担が増大することになる。
【0077】
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状(顔料分散ペースト)にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
【0078】
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂と共に水性媒体中に分散させて調製する。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。
【0079】
一般に、顔料分散樹脂は、顔料100質量部に対して固形分比20〜100質量部の量で用いる。顔料分散樹脂と無機顔料とを混合した後、その混合物中の無機顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得る。
【0080】
本発明で使用されるカチオン電着塗料組成物は、上記成分の他に、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫化合物、N−メチルモルホリンなどのアミン類、ストロンチウム、コバルト、銅などの金属塩を触媒として含んでもよい。これらは、硬化剤のブロック剤解離のための触媒として作用し得る。触媒の濃度は、電着塗料組成物中のカチオン性エポキシ樹脂と硬化剤合計の100固形分質量部に対して0.1〜6質量部であるのが好ましい。
【0081】
カチオン電着塗料組成物の調製
本発明のカチオン電着塗料組成物は、上に述べた架橋樹脂粒子、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、および必要に応じた顔料分散ペーストおよび触媒を、水性媒体中に分散させることによって調製することができる。また、通常、水性媒体にはカチオン性エポキシ樹脂を中和して分散性を向上させるために中和酸を含有させる。中和酸は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、スルファミン酸、アセチルグリシン等の無機酸または有機酸である。本明細書中における水性媒体とは、水か、水と有機溶剤との混合物である。水としてイオン交換水を用いるのが好ましい。使用しうる有機溶剤の例としては炭化水素類(例えば、キシレンまたはトルエン)、アルコール類(例えば、メチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール)、エーテル類(例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ケトン類(例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセチルアセトン)、エステル類(例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)またはそれらの混合物が挙げられる。
【0082】
本発明のカチオン電着塗料組成物では、架橋樹脂粒子を含有するが、その添加方法としては、その電着塗料の製造段階のいずれの段階で添加しても良いが、好ましくは製造されたカチオン電着塗料に直接添加するのが好ましい。
【0083】
ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級アミノ基、水酸基、等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にカチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との固形分重量比(エポキシ樹脂/硬化剤)で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。中和酸の量はカチオン性エポキシ樹脂のカチオン性基の少なくとも20%、好ましくは30〜60%を中和するのに足りる量である。
【0084】
有機溶媒はカチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤等の樹脂成分を調製する際に溶剤として使用されたものが持ち込まれたものである。これは調製の際完全に除去するには煩雑な操作を必要とする。また、バインダー樹脂成分となるカチオン性エポキシ樹脂に有機溶媒が含まれていると造膜時の塗膜の流動性が改良され、塗膜の平滑性が向上する。
【0085】
塗料組成物に通常含まれる有機溶媒としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
【0086】
カチオン電着塗料組成物は、上記成分のほかに、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤など、通常使用される塗料用添加剤を含むことができる。
【0087】
本発明のカチオン電着塗料組成物は低固形分化を目的とすることから、その固形分濃度を従来の20重量%以下とする。具体的には、塗料の固形分濃度は好ましくは0.5〜9重量%であり、その下限値は好ましくは2重量%であり、より好ましくは4重量%である。一方、その上限値は好ましくは7重量%であり、より好ましくは6重量%である。固形分濃度が0.5重量%より少ないと、正常な塗膜を形成できなくなり、9重量%より高いと、低固形分化による効果であるカチオン電着塗装ラインにおいて、水洗工程の短縮、設備の簡略化など効果を得ることができなくなる。ここで固形分濃度とは、カチオン電着塗料組成物に含まれる顔料成分、樹脂成分(架橋樹脂粒子成分も含む)の合計した固形分重量の塗料中での濃度を言う。このように低固形分にすると、カチオン電着塗料の電導度が低下する恐れがある。そのため、別途、電導度制御剤を添加することが好ましい。
【0088】
本発明で用いる電導度制御剤は、カチオン電着塗料の電導度を所望の範囲に調整する材料であれば、特に限定されないが、アミン価が200〜500mmol/100gを有するアミノ基含有化合物から構成されるものが好ましい。本発明のカチオン電着塗料用電導度制御剤をアミン価が上記範囲に調製すれば、どのようなアミノ基含有物であってもよいが、通常はアミン変性エポキシ樹脂もしくはアミン変性アクリル樹脂が好ましい。また、本発明のカチオン電着塗料用電導度制御剤は必要に応じて、酸により中和されていても良い。アミン価は好ましくは250〜450mmol/100gであり、もっとも好ましくは300〜400mmol/100gである。アミン価が200mmol/100gよりも小さいと、低固形分濃度のカチオン電着塗料の液電導度を最適値に調整するための必要添加量が多くなり、耐食性を損なう恐れがある。また、500mmol/100gを超えると、析出性を低下させ、所望のつきまわり性が得られないといった欠点を有する。また亜鉛鋼板適性も低下する。
【0089】
上記電導度制御剤は、低分子のものから高分子のアミノ基含有化合物であり、通常アミン変性エポキシ樹脂やアミン変性アクリル樹脂などの高分子量のものが挙げられる。低分子量アミノ基含有化合物は、たとえばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルブチルアミンなどが挙げられる。
【0090】
好ましくは、高分子量のアミノ基含有化合物、特にアミン変性エポキシ樹脂およびアミン変性アクリル樹脂である。アミン変性エポキシ樹脂はエポキシ樹脂のエポキシ基をアミン化合物で変性することにより得られる。エポキシ樹脂は、一般的なものが使用できるが、ビスフェノール型エポキシ樹脂、t−ブチルカテコール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であって、分子量が500〜20000を有するものが好適である。これらのエポキシ樹脂の中で、フェノールノボラック樹脂およびクレゾールノボラック型樹脂がもっとも望ましい。特に、これらのエポキシ樹脂は市販されている。たとえば、ダウケミカルジャパン社製フェノールノボラック樹脂DEN−438、東都化成社製クレゾールノボラック樹脂YDCN−703などがあげられる。
【0091】
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
【0092】
アミン変性アクリル樹脂としては、たとえばアミノ基含有モノマーであるジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマーまたは他の重合性モノマーとの共重合体をそのまま用いても良いし、グリシジルメタクリレートのホモポリマーまたは他の重合性モノマーとの共重合体のグリシジル基をアミン化合物で変性することにより得ることができる。
【0093】
エポキシ樹脂またはエポキシ基を含有するアクリル樹脂にアミノ基を導入する化合物としては、一級アミン、二級アミン、三級アミンなどが挙げられる。それらの具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ブチルアミン、ジメチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフイド・酢酸混合物などの外、アミノエチルエタノールアミンのジケチミン、ジエチルヒドロアミンのジケチミンなどの一級アミンのブロックした二級アミンが挙げられる。アミン類は複数のものを使用してもよい。
【0094】
前述のとおり、これらアミン変性エポキシ樹脂およびアミン変性アクリル樹脂の数平均分子量は500〜20000が好適である。数平均分子量が500よりも小さいと、耐食性を損なう恐れがあり、また理由は定かではないが、つきまわり性の低下および亜鉛鋼板適性の低下が見られる。数平均分子量が20000よりも大きいと仕上がり外観の低下を引き起こす恐れがある。
【0095】
これらアミン変性エポキシ樹脂およびアミン変性アクリル樹脂は、あらかじめ中和酸により中和させて用いることもできる。中和に用いる酸は、塩酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。
【0096】
カチオン電着組成物の塗装方法
上記カチオン電着塗料組成物は被塗物に電着塗装され、電着塗膜を形成する。被塗物としては導電性のあるものであれば特に限定されず、例えば、鉄板、鋼板、アルミニウム板及びこれらを表面処理したもの、これらの成型物等を挙げることができる。
【0097】
カチオン電着塗料組成物の電着塗装は、被塗物を陰極として陽極との間に、通常、50〜450Vの電圧を印加して行う。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となり、450Vを超えると、塗膜が破壊され異常外観となる。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、通常10〜45℃に調節される。
【0098】
電着塗装過程は、カチオン電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、及び、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過程、から構成される。また、電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜4分とすることができる。
【0099】
電着塗膜の膜厚は、一般に5〜25μmの範囲で形成することができる。膜厚が5μm未満であると、防錆性が不充分となる恐れがある。また、膜厚が25μmを超える場合は、塗膜性能を得るためには、必要以上の塗膜となる。
【0100】
上述のようにして得られる電着塗膜を、電着塗装過程の終了後、そのまま又は水洗した後、120〜260℃、好ましくは140〜220℃で、10〜30分間焼き付けることにより硬化し、硬化電着塗膜が得られる。
【0101】
本発明の硬化電着塗膜は、表面平滑性が高く、表面平滑性の評価として用いられるRa値は好ましくは0.25μm以下、より好ましくは0.20μm以下である。また、その下限値はゼロであることが好ましい。Ra値は、JIS−B0601に準拠し、評価型表面粗さ測定機(株式会社ミツトヨ製、SURFTEST SJ−201P)を用いて測定した。Ra値が小さい程、凹凸が少なく、塗膜外観が良好である。
【0102】
本発明では、また、カチオン電着塗料中に被塗物を浸漬して電圧を印加することによるカチオン電着塗膜の形成方法において、カチオン電着塗料が平均粒子径1.0〜3.0μmおよび熱軟化温度120〜180℃である架橋樹脂粒子を含有することを特徴とするカチオン電着塗膜の平滑性および端面被覆性を両立させる方法を提供する。更に、本発明では、低固形分型であり、かつ低灰分型のカチオン電着塗料にあっても、前述の特定の架橋樹脂粒子を、カチオン電着塗料中に添加剤的に配合すると、電着塗料の固形分の沈降防止能を向上させると共に、表面平滑性と端面被覆性の両立が可能となる。その場合の配合量は、カチオン電着塗料の固形分に対して、3〜15重量%である。
【実施例】
【0103】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断らない限り、「部」は重量部を表わす。
【0104】
製造例1 ブロックイソシアネート硬化剤の製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(コロネートHX:日本ポリウレタン(株)製)199部とメチルイソブチルケトン32部、およびジブチルスズジラウレート0.03部を秤りとり、攪拌、窒素をバブリングしながら、メチルエチルケトオキシム87.0部を滴下ロートより1時間かけて滴下した。温度は50℃からはじめ70℃まで昇温した。そのあと1時間反応を継続し、赤外線分光計によりNCO基の吸収が消失するまで反応させた。その後n−ブタノール0.74部、メチルイソブチルケトン39.93部を加え、不揮発分80%とした。
【0105】
製造例2 アミン変性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤とを含むエマルションの製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管および滴下ロートを取り付けたフラスコに、2,4/2,6−トリレンジイソシアネート(80/20wt%)71.34部と、メチルイソブチルケトン111.98部と、ジブチルスズジラウレート0.02部を秤り取り、攪拌、窒素バブリングしながらメタノール14.24部を滴下ロートより30分かけて滴下した。温度は室温から発熱により60℃まで昇温した。その後30分間反応を継続した後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル46.98部を滴下ロートより30分かけて滴下した。発熱により70〜75℃へ昇温した。30分間反応を継続した後、ビスフェノールAプロピレンオキシド(5モル)付加体(三洋化成工業(株)製BP−5P)41.25部を加え、90℃まで昇温し、IRスペクトルを測定しながらNCO基が消失するまで反応を継続した。
【0106】
続いてエポキシ当量475のビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成(株)製YD−7011R)475.0部を加え、均一に溶解した後、130℃から142℃まで昇温し、MIBKとの共沸により反応系から水を除去した。125℃まで冷却した後、ベンジルジメチルアミン1.107部を加え、脱メタノール反応によるオキサゾリドン環形成反応を行った。反応はエポキシ当量1140になるまで継続した。
【0107】
その後100℃まで冷却し、N−メチルエタノールアミン24.56部,ジエタノールアミン11.46部およびアミノエチルエタノールアミンケチミン(78.8%メチルイソブチルケトン溶液)26.08部を加え、110℃で2時間反応させた。その後エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル20.74部とメチルイソブチルケトン12.85部を加えて希釈し、不揮発物82%に調節した。数平均分子量(GPC法)1380、アミン当量94.5meq/100gのアミン変性エポキシ樹脂を得た。
【0108】
別の容器にイオン交換水145.11部と酢酸5.04部を秤り取り、70℃まで加温した上記アミン変性エポキシ樹脂320.11部(固形分として75.0部)および製造例1のブロックイソシアネート硬化剤190.38部(固形分として25.0部)の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整した。
【0109】
製造例3 顔料分散樹脂ワニスの製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコに、エポキシ当量188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J)382.20部と、ビスフェノールA111.98部を秤り取り、80℃まで昇温し、均一に溶解した後、2−エチル−4−メチルイミダゾール1%溶液1.53部を加え、170℃で2時間反応させた。140℃まで冷却した後、これに2−エチルヘキサノールハーフブロック化イソホロンジイソシアネート(不揮発分90%)196.50部を加え、NCO基が消失するまで反応させた。これにジプロピレングリコールモノブチルエーテル205.00部を加え、続いて1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−プロパノール408.00部、ジメチロールプロピオン酸134.00部を添加し、イオン交換水144.00部を加え、70℃で反応させた。反応は酸価が5以下になるまで継続した。得られた樹脂ワニスはイオン交換1150.50部で不揮発分35%に希釈した。
【0110】
製造例4 顔料分散ペーストの製造
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散樹脂ワニスを120部、カオリン100.0部、二酸化チタン92.0部、ジブチルスズオキシド8.0部およびイオン交換水184部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分48%)。
【0111】
製造例5 比較用架橋樹脂粒子の製造
反応容器にブチルセロソルブ120部を入れ120℃に加熱攪拌した。ここにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2部およびブチルセロソルブ10部を混合した溶液と、グリシジルメタクリレート15部、2−エチルヘキシルメタクリレート50部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20部およびn−ブチルメタクリレート15部からなるモノマー混合物とを3時間で滴下した。30分間エージングした後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5部およびブチルセルソルブ5部を混合した溶液を30分で滴下し、2時間のエージングを行った後、冷却した。ここにN,N−ジメチルアミノエタノール7部および50%乳酸水溶液15部を加えて80℃で加熱攪拌した。酸価が1以下になり、粘度上昇が止まった時点で加熱を停止し、アンモニウム基を有するアクリル樹脂を得た。このアンモニウム基を有するアクリル樹脂の1分子あたりのアンモニウム基の個数は6.0個であった。
【0112】
反応容器に、アンモニウム基を有するアクリル樹脂120部と脱イオン水270部とを加え、75℃で加熱攪拌した。ここに2,2'−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)1.5部の酢酸100%中和水溶液を5分かけて滴下した。5分間エージングした後、メチルメタクリレート30部を5分かけて滴下した。さらに5分間エージングした後、アンモニウム基を有するアクリル樹脂170部と脱イオン水250部とを混合した溶液にメチルメタクリレート170部、スチレン40部、n−ブチルメタクリレート30部、グリシジルメタクリレート5部およびネオペンチルグリコールジメタクリレート30部からなるエチレン性不飽和モノマー混合物を加え攪拌して得られたプレエマルションを40分かけて滴下した。60分間エージングした後、冷却し、架橋樹脂粒子1の分散液を得た。得られた架橋樹脂粒子の分散液の不揮発分は35%、pHは5.0、平均粒子径は0.1μmであった。ここで、平均粒子径は、以下の要領で測定した。
【0113】
樹脂粒子の平均粒子径を、日機装(株)社製、MICROTRAC9340UPAを用いて、粒状粒子透過測定法にて測定した。また、この測定器において、樹脂粒子の粒度分布を測定し、その測定値から累積相対度数F(x)=0.5における平均粒子径を算出した。これらの測定および算出においては、溶媒(水)の屈折率1.33、樹脂分の屈折率1.59を用いた。
【0114】
製造例6
還流冷却器、撹拌機を備えたフラスコに、メチルイソブチルケトン(以下「MIBK」と略す。)295部、メチルエタノールアミン37.5部、ジエタノールアミン52.5部を仕込み、撹拌しながら100℃に保持する。これにクレゾールノボラックエポキシ樹脂(東都化成製、商品名YDCN−703)205部を徐々に加える、全量加え終えたのち3時間反応させる。分子量を測定したところ、2,100であった。得られたアミノ変性樹脂のアミン価(MEQ(B))を測定したところ、340mmol/100gであった。
【0115】
上記アミノ変性樹脂溶液140部に、ギ酸5.5部と脱イオン水1254.5部を加えて80℃に保持しながら30分間撹拌する。減圧下において有機溶剤を除去し固形分5.0%の液電導度制御剤を得た。
【0116】
実施例1
製造例2で得られたエマルション628部、架橋樹脂粒子(メタクリル酸メチルモノマーを主成分とする架橋樹脂粒子;ガンツ化成社製GM−0105(商品名))127部及びジブチルスズオキシド4部と、イオン交換水4581部とを混合して、PWC=0%、樹脂粒子15%、固形分5重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
【0117】
実施例2
製造例2で得られたエマルション628部、架橋樹脂粒子(メタクリル酸メチルを主成分とする架橋樹脂粒子;東洋紡績(株)社製、タフチック(登録商標)F−200)127部及びジブチルスズオキシド4部と、イオン交換水4581部とを混合して、PWC=0%、架橋樹脂粒子15%、固形分5重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
【0118】
実施例3
製造例2で得られたエマルション561部および製造例4で得られた顔料分散ペースト19部と、架橋樹脂粒子(メタクリル酸メチルモノマーを主成分とする架橋樹脂粒子;東洋紡績(株)社製、タフチック(登録商標)F−200)を114部、ジブチルスズオキシド3部、イオン交換水4303部とを混合して、PWC=3%、架橋樹脂粒子10%、固形分5重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
【0119】
実施例4
製造例2で得られたエマルション578部および製造例6で得られた電導度付与剤(固形分5%)360部と、架橋樹脂粒子(メタクリル酸メチルモノマーを主成分とする架橋樹脂粒子;東洋紡績(株)社製、タフチック(登録商標)F−200)を127部、ジブチルスズオキシド4部、イオン交換水4331部とを混合して、PWC=0%、架橋樹脂粒子15%、固形分5重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
【0120】
比較例1
製造例2で得られたエマルション2444部および製造例4で得られた顔料分散ペースト250部と、イオン交換水2346部とジブチル錫オキサイド10部とを混合して、固形分20重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
【0121】
比較例2
製造例2で得られたエマルション738部及びジブチルスズオキシド4部と、イオン交換水4598部とを混合して、PWC=0%(灰分を含まない)、架橋樹脂粒子0重量%、固形分5重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
【0122】
比較例3
製造例2で得られたエマルション702部及び製造例5で得られた架橋樹脂粒子38部及びジブチルスズオキシド4部と、イオン交換水4596部とを混合して、PWC=0%、架橋樹脂粒子5重量%、固形分5重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
【0123】
比較例4
製造例2で得られたエマルション665部及び製造例5で得られた架橋樹脂粒子76部及びジブチルスズオキシド4部と、イオン交換水4596部とを混合して、PWC=0%、架橋樹脂粒子10重量%、固形分5重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
【0124】
比較例5
製造例2で得られたエマルション579部、架橋樹脂粒子(スチレンモノマーを主成分とする架橋樹脂粒子;綜研化学(株)社製、ケミスノー(登録商標)SX130M)38部及びジブチルスズオキシド4部と、イオン交換水4388部とを混合して、PWC=0%、架橋樹脂粒子15%、固形分5重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
【0125】
こうして得られたカチオン電着塗料組成物について、動的粘弾性における80℃での損失弾性率および140℃での貯蔵弾性率、平滑性および端面被覆性等を以下の方法により評価を行なった。
【0126】
電着塗膜の損失弾性率および貯蔵弾性率の測定
上記で得られたカチオン電着塗料にブリキ板を浸漬し、焼付後の膜厚が15μmとなるような塗装電圧で塗装して電着塗膜を形成し、これを水洗して余分な電着塗料組成物を取り除いた。次いで水分を取り除いた後、乾燥させることなくすぐにその未硬化状態の塗膜片を取り出して、試料を調製した。こうして得られた試料を、回転型動的粘弾性測定装置であるRheosol−G3000(株式会社ユービーエム製)を用いて、動的粘弾性における温度依存測定を、設定条件:歪み0.5deg、周波数0.02Hz、昇温速度2.0℃/minで貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)の測定を行った。
【0127】
電着塗膜の外観(平滑性)評価
電着塗膜の外観評価は、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)を測定することにより行った。カチオン電着塗料にリン酸亜鉛処理した冷間圧延鋼板を浸漬し、焼付後の膜厚が15μmとなるような塗装電圧で塗装して得られた未硬化の電着塗膜を160℃10分間焼付した。その後、その未硬化の電着塗膜のRa値を、JIS−B0601に準拠し、評価型表面粗さ測定機(株式会社ミツトヨ製、SURFTEST SJ−201P)を用いて測定した。2.5mm幅カットオフ(区画数5)を入れたサンプルを用いて7回測定し、上下消去平均によりRa値を得た。結果を表1および表2に示す。このRa値が小さい程、凹凸が少なく、塗膜外観が良好であるといえる。具体的には、Ra値が0.25μm以下の場合、合格である。
【0128】
沈降性の評価方法(水平外観)
製造例、比較例で得られたカチオン電着塗料に、リン酸亜鉛処理した冷間圧延鋼板を水平方向に浸漬し、焼付後の膜厚が15μmとなるような塗装電圧を印可して未硬化の電着塗膜を得る。得られた未硬化の電着塗膜を160℃で10分間で焼付けを行った後、表面粗さ測定器を用い、上記の電着塗膜の外観評価同様、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)を測定した。
【0129】
電着塗料の沈降性が劣る場合、電着塗装時には沈降成分が水平部位に降り積もり、水平外観(平滑性)が垂直外観(平滑性)に比べ、悪化する。沈降性の評価は得られた水平外観Ra値と垂直外観Ra値より、下記の条件で合否判定を行った。
沈降性評価
○(合格) ;水平Ra値 − 垂直Ra値 = 0.05μm未満
×(不合格) ;水平Ra値 − 垂直Ra値 = 0.05μm以上
【0130】
熱軟化温度の測定
架橋樹脂粒子を固形分濃度30重量%に調整して得られた試料を、回転型動的粘弾性測定装置であるRheosol−G3000(株式会社ユービーエム製)を用い、温度依存性測定にて、歪み0.5deg.、周波数0.02Hz、昇温速度4.0℃/minの測定条件で、90℃からの貯蔵弾性率G'の測定を行った。測定結果を図8のようなグラフとし、一定粘度で推移する領域の接線と粘度低下が起こっている領域の接線を引き、その交点の温度を熱軟化温度とした。
【0131】
端面被覆性評価方法
カチオン電着塗料組成物にリン酸亜鉛処理を施したカッターナイフ(OLFA製:LB−50K)の被塗物を浸漬し、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる。また上記電着条件はカッターナイフに析出膜厚が15μmとなる様に調整した印加電圧及び時間とした。得られた電着塗膜を水洗した後、160℃にて10分焼き付ける事により、硬化電着塗膜を得た。
【0132】
電着塗膜が被覆したカッターナイフの中心を折り、カッターナイフ先端(鋭角部)から30ミクロン部位に被覆した電着塗膜の膜厚をデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製:VH−8000)にて測定した。図9には、カッターナイフの先端から30ミクロン部位を模式的に示した。この膜厚が、7.8μm以下の場合、合格となる。
【0133】
架橋樹脂粒子の平均粒子径の測定方法
上記実施例および比較例で用いた架橋樹脂粒子の平均粒子径は以下の要領で測定した。
架橋樹脂粒子の平均粒子径を、日機装(株)社製、MICROTRAC9340UPAを用いて、粒状粒子透過測定法にて測定した。また、この測定器において、架橋樹脂粒子の粒度分布を測定し、その測定値から累積相対度数F(x)=0.5における平均粒子径を算出した。これらの測定および算出においては、溶媒(水)の屈折率1.33、樹脂分の屈折率1.59を用いた。
【0134】
【表1】

【0135】
【表2】

【0136】
架橋度は熱軟化温度測定より、熱軟化温度別に表記した。
架橋度 大;熱軟化温度140℃以上
架橋度 中;熱軟化温度120℃以上、140℃未満
架橋度 小;熱軟化温度120℃以下
【0137】
架橋樹脂粒子#1:製造例5で得られた架橋樹脂粒子
架橋樹脂粒子#2:綜研化学社製ケミスノーSX―130M(商品名)
架橋樹脂粒子#3: ガンツ化成社製GM−0105(商品名)
架橋樹脂粒子#4:東洋紡社製F−200(商品名)
【0138】
上記表1および表2から明らかなように、低灰分化、低固形分化しても平均粒子径1.0〜3.0μmおよび熱軟化温度120〜180℃の架橋樹脂粒子を配合することにより、従来の塗料の例である比較例1と同様に、平滑性および端面被覆性において優れた性能を示すことがわかった。比較例1は樹脂粒子を含まない従来の無機顔料を含むもので、表面平滑性や端面被覆性はよいが、灰分量(Ash量)が高く、そのため沈降性評価は悪い。比較例2は無機顔料も樹脂粒子も含まないもので、平滑性は優れているが、端面被覆性が非常に悪くなる。比較例3〜5は樹脂粒子を含むが、粒子径が小さい(比較例3および4)か、あるいは熱軟化温度が小さい(比較例5)ものである。比較例3〜5は端面被覆性も表面平滑性も共によくない傾向を示した。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】5種類の塗料の動的粘弾性における損失弾性率(G”)値の挙動を示すグラフである。
【図2】5種類の塗料の動的粘弾性における損失弾性率(G’)値の挙動を示すグラフである。
【図3】5種類の塗料の動的粘弾性における複素粘性率(η)値の挙動を示すグラフである。
【図4A】いくつかの塗料の80℃での動的粘弾性(G’)と電着肌との関係を示すグラフである。
【図4B】いくつかの塗料の80℃での動的粘弾性(η)と電着肌との関係を示すグラフである。
【図4C】いくつかの塗料の80℃での動的粘弾性(G”)と電着肌との関係を示すグラフである。
【図5A】いくつかの塗料の140℃での動的粘弾性(G’)と電着肌との関係を示すグラフである。
【図5B】いくつかの塗料の140℃での動的粘弾性(η)と電着肌との関係を示すグラフである。
【図5C】いくつかの塗料の140℃での動的粘弾性(G”)と電着肌との関係を示すグラフである。
【図6A】いくつかの塗料の80℃での動的粘弾性(G’)と端面被覆性との関係を示すグラフである。
【図6B】いくつかの塗料の80℃での動的粘弾性(η)と端面被覆性との関係を示すグラフである。
【図6C】いくつかの塗料の80℃での動的粘弾性(G”)と端面被覆性との関係を示すグラフである。
【図7A】いくつかの塗料の140℃での動的粘弾性(G’)と端面被覆性との関係を示すグラフである。
【図7B】いくつかの塗料の140℃での動的粘弾性(η)と端面被覆性との関係を示すグラフである。
【図7C】いくつかの塗料の140℃での動的粘弾性(G”)と端面被覆性との関係を示すグラフである。
【図8】熱軟化温度を説明するための温度と貯蔵弾性率G’とのグラフである。
【図9】カッターナイフの先端から30ミクロン部位を模式的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1.0〜3.0μmであり、熱軟化温度が120〜180℃である架橋樹脂粒子を含有するカチオン電着塗料組成物。
【請求項2】
前記架橋樹脂粒子がカチオン電着塗料の樹脂固形分中3〜15重量%の量で含有する請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項3】
成分中に無機顔料を含まないかまたはカチオン電着塗料組成物の固形分中7重量%以下で無機顔料を含む請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項4】
固形分濃度が0.5〜9重量%である請求項1〜3いずれかに記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項5】
カチオン電着塗料組成物にあって、該カチオン電着塗料組成物を電着塗装して得られた未硬化の析出塗膜の140℃における貯蔵弾性率(G’)が80〜500dyn/cmであり、80℃における損失弾性率(G”)が10〜150dyn/cmである請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項6】
請求項1記載のカチオン電着塗料組成物を電着塗装し、焼付硬化することにより得られた塗膜平滑性がRa値0.25μm以下であるカチオン電着硬化塗膜。
【請求項7】
カチオン電着塗料中に被塗物を浸漬して電圧を印加することによるカチオン電着塗膜の形成方法において、該カチオン電着塗料組成物が平均粒子径1.0〜3.0μmおよび熱軟化温度120〜180℃である架橋樹脂粒子を含有することを特徴とする平滑性および端面被覆性の両立したカチオン電着塗膜の形成方法。
【請求項8】
低灰分型かつ低固形分型のカチオン電着塗料組成物を用いて、電着塗膜を形成する方法において、平均粒子径1.0〜3.0μmおよび熱軟化温度120〜180℃である架橋樹脂粒子を該カチオン電着塗料組成物の固形分中3〜15重量%の量で添加することにより、未硬化の析出塗膜の140℃における貯蔵弾性率(G’)を80〜500dyn/cmに、80℃における損失弾性率(G”)を10〜150dyn/cmに調整して、平滑性と端面被覆性を向上したカチオン電着塗膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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