説明

カッター装置、記録装置

【課題】剪断された被剪断媒体の記録面に傷が発生する虞がないカッター装置を提供すること。
【解決手段】カッター装置(20)は、被剪断媒体(P)の表面側に設けられた第1カッター37と、前記表面側に対して反対側である裏面側に設けられ、前記第1カッター37と協働して被剪断媒体(P)を剪断する第2カッター38と、前記第1カッター37および前記第2カッター38を保持し、被剪断媒体(P)の幅方向Xに移動するキャリッジ(30)と、該キャリッジ(30)を前記幅方向Xに案内するガイド部(25)と、前記キャリッジ(30)に設けられ、前記第1カッター37および前記第2カッター38より被剪断媒体(P)の送り方向下流側の剪断された被剪断媒体(P2)を前記裏面と接触して前記表面側へ案内する剪断後案内部(36)とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送られている被剪断媒体を基準とした被剪断媒体の表面側に設けられた第1カッターと、前記表面側に対して反対側である裏面側に設けられ、前記第1カッターと協働して被剪断媒体を剪断する第2カッターと、前記第1カッターおよび前記第2カッターを保持し、被剪断媒体の幅方向に移動するキャリッジと、該キャリッジを前記幅方向に案内するガイド部と、を備えるカッター装置、および該カッター装置を備える記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンタ、ワイヤドットプリンタ、レーザープリンタ、ラインプリンタ、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1および2に示す如く、ロール紙をセット可能な記録装置には、カッター装置としての切断部を有していた。そして、該切断部は、駆動源としてのカッター用モータと、ロール紙の幅方向に移動するカッターホルダと、該カッターホルダを幅方向に案内するガイドレールとを有していた。また、前記カッターホルダは、ロール紙を剪断する二つのカッターを有していた。
従って、ユーザがロール紙をセットした後であって、記録開始前および記録終了後において、ロール紙を剪断することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−219178号公報
【特許文献2】特開平9−117891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロール紙の剪断した際、前記カッターホルダは、剪断された下流側ロール紙の上面である表面と面接触して、剪断された下流側ロール紙を下方へ押し下げていた。従って、ロール紙の表面に傷が発生する虞がある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、剪断された被剪断媒体の表面に傷が発生する虞がないカッター装置および該カッター装置を備えた記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様のカッター装置は、送られている被剪断媒体を基準とした被剪断媒体の表面側に設けられた第1カッターと、前記表面側に対して反対側である裏面側に設けられ、前記第1カッターと協働して被剪断媒体を剪断する第2カッターと、前記第1カッターおよび前記第2カッターを保持し、被剪断媒体の幅方向に移動するキャリッジと、該キャリッジを前記幅方向に案内するガイド部と、前記キャリッジに設けられ、前記第1カッターおよび前記第2カッターより被剪断媒体の送り方向下流側の剪断された被剪断媒体を前記裏面と接触して前記表面側へ案内する剪断後案内部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、前記カッター装置は、前記剪断後案内部を備えている。
従って、前記第1カッターおよび前記第2カッターより被剪断媒体の送り方向下流側の剪断された被剪断媒体を前記裏面と接触して前記表面側へ案内することができる。
即ち、前記剪断された被剪断媒体の前記表面と接触する虞がない。その結果、前記表面に傷が発生する虞がない。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記第1カッターは、前記第2カッターに対して送り方向上流側に設けられ、前記第2カッターは、前記第1カッターに対して送り方向下流側に設けられていることを特徴とする。
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記第1カッターは、前記第2カッターに対して送り方向上流側に設けられ、前記第2カッターは、前記第1カッターに対して送り方向下流側に設けられている。従って、剪断された下流側被剪断媒体が前記表面側へ、剪断された上流側被剪断媒体が前記裏面側へ変位する傾向にあるので有効である。即ち、剪断される被剪断媒体が前記第2カッターから受ける力を利用して、剪断された被剪断媒体を前記表面側へ変位させることができる。そして、該変位する方向に沿って、前記剪断後案内部は、剪断された被剪断媒体を案内することができる。即ち、前記剪断後案内部は、剪断された被剪断媒体をスムーズに案内することができる。さらに言い換えると、前記剪断後案内部と剪断された被剪断媒体との間において、無駄な摩擦抵抗が発生する虞がない。
【0009】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記第1カッターおよび前記第2カッターより送り方向上流側において、被剪断媒体を前記裏面側に吸引する吸引部を有することを特徴とする。
本発明の第3の態様によれば、第2の態様と同様の作用効果に加え、前記第1カッターおよび前記第2カッターより送り方向上流側において、被剪断媒体を前記裏面側に吸引する吸引部を有する。係る場合、前記第1カッターおよび前記第2カッターの位置関係の構成は有効である。
【0010】
ここで、前記第1カッターおよび前記第2カッターが協働して被剪断媒体を剪断する構成では、剪断される際、上流側被剪断媒体に対して前記表面側および前記裏面側のいずれか一方への力が剪断によって作用する。一方、下流側被剪断媒体に対して前記いずれか他方への力が剪断によって作用する。即ち、剪断された被剪断媒体の上流側および下流側の一方は、前記表面側へ変位する力が作用する。
【0011】
そこで、被剪断媒体の表面側に設けられた前記第1カッターを前記第2カッターより送り方向上流側に設けることによって、上流側被剪断媒体に対して前記裏面側への力を作用させることができる。即ち、前記表面側への力が全く作用しないので、前記吸引部の吸引を妨げる虞がない。そして、前記裏面側である前記吸引部側への力を作用させるので、前記吸引部の吸引を助長することができる。その結果、被剪断媒体のカット位置精度を向上させることができ有効である。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記第1カッターおよび前記第2カッターは丸刃であり、前記第1カッターは前記キャリッジの移動によって駆動する構成であることを特徴とする。
本発明の第4の態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記第1カッターおよび前記第2カッターは丸刃であり、前記第1カッターは前記キャリッジの移動によって駆動する構成である。従って、積極的に被剪断媒体を前記第1カッターおよび前記第2カッターに食い付かせて、被剪断媒体の前記表面と駆動する前記第1カッターとの擦れを低減することができる。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか一の態様において、前記ガイド部は、前記表面側に設けられていることを特徴とする。
本発明の第5の態様によれば、第1から第4のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記ガイド部は、前記表面側に設けられている。
ここで、前記表面側は、一般的に鉛直方向上方である。そして、前記ガイド部を被剪断媒体の前記裏面側である下方に設けた場合、剪断した際に発生する粉塵が前記ガイド部に付着する虞がある。係る場合、耐久性が低下する虞がある。
そこで、本態様において、前記ガイド部は、被剪断媒体の表面側である上方に設けられている。従って、剪断した際に粉塵が発生した場合であっても、前記ガイド部に付着する虞がない。その結果、耐久性が低下する虞がない。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれか一の態様において、送り方向において、前記ガイド部の上流側および下流側に被剪断媒体と当接可能な従動回転する補助ローラが設けられていることを特徴とする。
本発明の第6の態様によれば、第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、送り方向において、前記ガイド部の上流側および下流側に被剪断媒体と当接可能な従動回転する補助ローラが設けられている。従って、被剪断媒体を剪断する際、被剪断媒体の浮き上がりを規制することができる。その結果、より正確に剪断する予定の位置を剪断することができ、カット位置精度を向上させることができる。被剪断媒体がロール状に巻かれていたことによって巻き癖を有していた場合に非常に有効である。
また、前記補助ローラを設けることによって、ユーザが前記ガイド部に触れる虞がない。従って、安全性を向上させることができる。
【0015】
本発明の第7の態様は、第1から第6のいずれか一の態様において、前記キャリッジは、剪断する際の被剪断媒体を、前記第1カッターおよび前記第2カッターが重なり合う剪断点に案内する剪断前案内部を備えていることを特徴とする。
ここで、「剪断点」とは、二つのカッターが重なり合う領域におけるカッターの進行方向下流端の点をいう。
【0016】
本発明の第7の態様によれば、第1から第6のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記キャリッジは、剪断する際の被剪断媒体を、前記第1カッターおよび前記第2カッターが重なり合う剪断点に案内する剪断前案内部を備えている。従って、カット位置精度を向上させることができる。
また、該剪断前案内部を徐々に狭めることによって、ユーザが前記第1カッターおよび前記第2カッターに直接触れる虞を防止することができる。即ち、安全性を向上させることができる。
【0017】
本発明の第8の態様の記録装置は、被記録媒体を給送する給送部と、該給送部から給送された被記録媒体に記録ヘッドにより記録を実行する記録部と、記録された被記録媒体を切断する切断部と、を備えた記録装置であって、前記切断部は、上記第1から第7のいずれかの態様の前記カッター装置を備えていることを特徴とする。
本発明の第8の態様によれば、前記切断部は、上記第1から第7のいずれかの態様の前記カッター装置を備えている。従って、前記記録装置において、上記第1から第7のいずれかの態様と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るプリンタの外観斜視図。
【図2】本発明に係るプリンタ本体部を示す概略側面図。
【図3】本発明に係る切断部を示す概略斜視図。
【図4】本発明に係る切断部を示す概略側面図。
【図5】本発明に係る切断部のガイドレールを示す後方斜視図。
【図6】本発明に係る切断部が用紙を剪断している様子を示す斜視図。
【図7】(A)(B)は本発明に係るカッターキャリッジを示す図。
【図8】(A)(B)は本発明に係るカッターキャリッジを示す図。
【図9】本発明に係るカッターユニットのカッターへの動力伝達を示す図。
【図10】本発明に係るカッターが用紙を剪断する際の様子を示す拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る「記録装置」或いは「液体噴射装置」の一例としてのインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」と言う)1の外観斜視図である。また、図2に示すのは、本発明に係るプリンタ本体部を示す概略側面図である。
ここで、液体噴射装置とは、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドから記録紙等の被記録材へインクを噴射して被記録材への記録を実行するインクジェット式記録装置、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えて特定の用途に対応する液体を前述した記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから、被記録材に相当する被噴射材に噴射して、液体を被噴射材に付着させる装置を含む意味で用いる。
【0020】
またさらに、液体噴射ヘッドとしては、前述した記録ヘッド以外に、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料を噴射する試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【0021】
プリンタ1は、例えばJIS規格のA0判やB0判などといった比較的大型サイズの幅を有する被噴射媒体或いは被記録媒体としてのロール紙Pにまで記録できる大型のプリンタであり、ロール紙供給部3及び記録実行部4を備えた本体部2と、排紙受け部5とを備えて構成されている。
本体部2はベース9に立設された支柱8の上部に設けられており、記録の行われたロール紙Pを斜め下方に排出する排出口6を有している。排出口6の下方にはスタッカ10の開口部7が位置しており、記録の行われたロール紙Pが排出口6から開口部7へ向けて排出され、スタッカ10によって受け止められる。
【0022】
ロール紙供給部3にはロール紙ロール(以下「ロール」と言う)Rが収納可能に構成され、ロールRからロール紙Pが繰り出され、記録を実行する記録実行部4へと斜め下方へ供給される。そして、ロール紙ホルダ(図示せず)に、ロールRがセットされる。ロール紙供給時には、ロール紙ホルダがロール駆動手段としてのスピンドルモータ(図示せず)により回転駆動されることにより、ロール紙Pが下流側に供給される。
【0023】
記録実行部4は、ロール紙Pに対し液体としてのインクを吐出(噴射)する、液体噴射手段或いは記録手段としての記録ヘッド12(図2〜図4参照)と、記録ヘッド12と対向配置されるプラテン11(図2〜図4参照)と、記録ヘッド12の上流側に設けられ、ロール紙Pを下流側へ搬送する搬送駆動ローラ(搬送ローラ)(図示せず)およびこれに圧接して従動回転する搬送従動ローラ(図示せず)と、を有している。
【0024】
記録ヘッド12はキャリッジ(図示せず)に設けられ、キャリッジは、記録ヘッド12の走査方向(主走査方向)に延びるガイド軸(図示せず)と、同様に主走査方向に延びるガイド板(図示せず)と、によってガイドされながら、図示しないモータの動力を受けて主走査方向に移動する。
記録ヘッド12の下流側には、用紙吸引部としてのエア吸引手段13(図2〜図4参照)が設けられており、このエア吸引手段13(図2〜図4参照)によって記録ヘッド12の下流側においてロール紙Pが浮き上がらないように規制状態に置かれ、ロール紙Pの浮き上がりによる記録品質の低下が防止されるようになっている。
【0025】
図3に示すのは、本発明に係る切断部を示す概略斜視図である。また、図4に示すのは、本発明に係る切断部を示す概略側面図である。またさらに、図5に示すのは、本発明に係る切断部のガイドレール25を示す後方斜視図である。
図3および図4に示す如く、プリンタ1の記録実行部4には、プラテン11が設けられている。そして、プラテン11の給送方向下流側(矢印Y方向)には、エア吸引手段13と、ロール紙Pを切断する切断部20とが設けられている。
【0026】
エア吸引手段13は、プラテン11の給送方向下流側に多数の吸引孔14、14、14…と、吸引ファン16と、吸引孔14、14、14…と吸引ファン16とを繋ぐ吸引管15とを有する。そして、吸引管内に負圧と発生させ、ロール紙Pをプラテン側に吸引するように設けられている。
また、切断部20は、基体部21と、カッター用モータ22と、ガイドレール25と、カッターユニット30と、を有する。
【0027】
このうち、カッター用モータ22は、従動プーリ24(図6および図9参照)に巻回された無端ベルト23(図6および図9参照)を介してカッターユニット30に動力を伝達することができるように設けられている。また、ガイドレール25は、カッターユニット30をロール紙Pの幅方向Xに案内するように構成されている。
ここで、ガイドレール25は、ロール紙Pの表面側である記録面側に設けられているので、プリンタ1を小型化することができる。言い換えると、仮にガイドレールをロール紙Pの裏面側であるプラテン側に設けた場合、プラテン側には既にエア吸引手段13が設けられているので、プリンタ1の小型化を妨げることになる。
【0028】
またさらに、カッターユニット30は、後述するように第1カッター37および第2カッター38(図6〜図10参照)を有し、ロール紙Pを剪断することができるように設けられている。
ここで、ガイドレール25は、前述したようにロール紙Pの記録面側である上方に設けられているので、ロール紙Pを剪断した際に発生する紙粉がガイドレール25に付着する虞がない。従って、ガイドレール25において、摺動音が増大する虞がない。また、ガイドレール25の耐久性を向上させることができる。
【0029】
図4および図5に示す如く、ガイドレール25における給送方向上流側には、上流側補助ローラホルダ50が設けられている。上流側補助ローラホルダ50は、幅方向Xに複数配列された上流側補助ローラ51、51、51…を回動自在に保持するように設けられている。上流側補助ローラ51、51、51…は、記録実行部4から送られたロール紙Pが確実にガイドレール25の下方を通過するように案内するように設けられている。
例えば、ロール紙Pの巻き癖によってロール紙Pがプラテン11から浮き上がった場合であっても、該浮き上がりを制限することができる。そして、ロール紙Pがガイドレール25の下方を通過するように案内することができる。
【0030】
また同様に、ガイドレール25における給送方向下流側には、下流側補助ローラホルダ52が設けられている。下流側補助ローラホルダ52は、幅方向Xに複数配列された下流側補助ローラ53、53、53…を回動自在に保持するように設けられている。下流側補助ローラ53、53、53…は、剪断されたロール紙Pが巻き癖によって浮き上がることを制限することができるように設けられている。
【0031】
またさらに、上流側補助ローラ51、51、51…および下流側補助ローラ53、53、53…は、安全対策においても重要な役割を果たす。カッターユニット30は、後述するようにカッター(37、38)を有している。従って、ユーザがカッター(37、38)に触れることができないように設けることが望ましい。
【0032】
そこで、ガイドレール25の上流側および下流側において、上流側補助ローラ51、51、51…および下流側補助ローラ53、53、53…を幅方向Xに複数配設することによって、ユーザがカッター(37、38)に触れる虞がないようにすることができる。また、下流側補助ローラホルダ52によって、ユーザがカッターキャリッジ32に触れる虞がないようにすることができる。
【0033】
図6に示すのは、本発明に係る切断部が用紙を剪断している様子を示す斜視図である。
また、図7(A)(B)および図8(A)(B)に示すのは、本発明に係るカッターキャリッジを示す図である。このうち、図7(A)は80桁側からみた側面図である。また、図7(B)は正面図である。またさらに、図8(A)は1桁側からみた側面図である。また、図8(B)は背面図である。
図9に示すのは、本発明に係るカッターユニットのカッターへの動力伝達を示す背面斜視図である。
また、図10に示すのは、本発明に係るカッターが用紙を剪断する際の様子を示す拡大側面図である。
【0034】
図6に示す如く、カッターユニット30は、カッターキャリッジ32と、スライダ部31とを有する。このうち、カッターキャリッジ32は、後述するように第1カッター37および第2カッター38を有する。一方、スライダ部31は、ガイドレール内を摺動するように設けられている。具体的には、無端ベルト23が、80桁側のカッター用モータ22に設けられた駆動プーリ(図示せず)と、1桁側の従動プーリ24とに巻回されている。そして、スライダ部31は、無端ベルト23に係止され無端ベルト23から動力を受けて幅方向Xに摺動する。
【0035】
また、カッターユニット30は、1桁側から80桁側へ移動しながらロール紙Pを剪断するように設けられている。そして、剪断した際、カッターキャリッジ32に設けられた第2傾斜部36が、剪断した下流側ロール紙P2を記録面側である上方(以下、同様)へ押し上げるように設けられている。このとき、第2傾斜部36と対向する第1傾斜部35は、ロール紙Pの記録面と接触しないように幅方向Xに対して傾斜している。
以下、カッターキャリッジ32について詳しく説明する。
【0036】
図7(A)(B)および図8(A)(B)に示す如く、カッターキャリッジ32は、丸刃である第1カッター37および第2カッター38を有する。第1カッター37はロール紙Pの上方に設けられ、第2カッター38はロール紙Pの下方(裏面側)に設けられている。そして、第1カッター37および第2カッター38は、ロール紙Pの上方および下方から協働してロール紙Pを剪断することができるように構成されている(図10参照)。
また、第1カッター37は第2カッター38より給送方向上流側に設けられている。
【0037】
またさらに、カッターキャリッジ32の剪断方向下流側には、ロール紙Pを剪断点Qに案内する第1剪断前案内部39および第2剪断前案内部40を有する。
ここで、「剪断方向」とは、1桁側から80桁側へ向かう方向をいう。
また、「剪断点」とは、第1カッター37および第2カッター38が重なり合う領域における剪断方向下流端の点をいう。
このうち、第1剪断前案内部39は、カッターキャリッジ32における上方に設けられている。一方、第2剪断前案内部40は、カッターキャリッジ32における第1剪断前案内部39より下方に設けられている。
【0038】
従って、ロール紙Pが記録紙の表裏方向において位置がばらついていた場合であっても、ロール紙Pを剪断点Qに案内することができる。その結果、ロール紙Pの剪断位置の精度を向上させることができる。さらに、前述した上流側補助ローラ51、51、51…および下流側補助ローラ53、53、53…と相俟ってロール紙Pの剪断位置の精度をより向上させることができる。
【0039】
また、第1剪断前案内部39および第2剪断前案内部40は、80桁側から1桁側へ向かって徐々に間隔が狭くなるように構成されている。そして、剪断点近傍においては、ロール紙Pの厚み分は確保してあるが、その他のものが剪断点Qへ進入することができない程度に狭められている。即ち、ロール紙、布、フィルム材等の規定のシート材のみ剪断点Qに進入することができる。そして、その他のものが第1カッター37および第2カッター38に触れる虞がない。また、ユーザが直接、剪断点Qに触れる虞もない。即ち、安全性を確保することができる。
【0040】
またさらに、カッターキャリッジ32において、第1剪断前案内部39および第2剪断前案内部40より1桁側には、第1案内面部33、第2案内面部34、第1傾斜部35および第2傾斜部36が設けられている。このうち、第1案内面部33は、第1カッター37および第2カッター38より給送方向上流側の上方に設けられている。また、第2案内面部34は、第1カッター37および第2カッター38より給送方向上流側であって、第1案内面部33より下方に設けられている。即ち、第1案内面部33および第2案内面部34は、互いに対向するように構成されている。ここで、第1案内面部33および第2案内面部34は、幅方向Xに対して略平行に設けられている。
【0041】
また、第1傾斜部35は、第1カッター37および第2カッター38より給送方向下流側の上方に設けられている。またさらに、第2傾斜部36は、第1カッター37および第2カッター38より給送方向下流側であって、第1傾斜部35より下方に設けられている。即ち、第1傾斜部35および第2傾斜部36は、互いに対向するように構成されている。そして、第1傾斜部35および第2傾斜部36は、80桁側から1桁側へ進むに従って徐々に上方へ変位するように幅方向Xに対して傾斜している。
またさらに、カッターキャリッジ32は、動力伝達軸41を有する。動力伝達軸41は、カッターキャリッジ32が幅方向Xへ移動した際、移動する力を第1カッター37へ伝達するために設けられている。続いて、第1カッター37への動力伝達について説明する。
【0042】
図9に示す如く、カッターキャリッジ32は、第1ギア42と、第2ギア43と、第3ギア44と、第4ギア45とを有する。このうち、第1ギア42は、動力伝達軸41と一体に設けられている。また、第2ギア43は、第1ギア42と噛合うように設けられている。またさらに、第3ギア44は、第2ギア43と噛合うように設けられている。また、第4ギア45は、第1カッター37と一体に形成され、第3ギア44と噛合うように設けられている。
【0043】
一方、スライダ部31には、無端ベルト23の上側ベルト23aを挟圧する第1スライダプーリ46および第2スライダプーリ47が設けられている。このうち、第1スライダプーリ46は、カッターキャリッジ32の動力伝達軸41と係合するように設けられている。
ここで、スライダ部31は、無端ベルト23の下側ベルト23bに係止されている。
従って、カッター用モータ22が駆動して、図9に示すように、下側ベルト23bが80桁側へ引っ張られたとき、スライダ部31およびカッターキャリッジ32は、80桁側へ移動する。
【0044】
このとき、上側ベルト23aは1桁側へ移動する。そして、第1スライダプーリ46は、上側ベルト23aから動力を受けて図中における反時計方向へ回動し、動力伝達軸41へ動力を伝達する。動力伝達軸41は、第1ギア42を介して第2ギア43へ動力を伝達する。従って、第2ギア43は図中における時計方向へ回動する。そして、第2ギア43は、第3ギア44を介して第4ギア45へ動力を伝達する。従って、第1カッター37は図中における時計方向へ回動する。
【0045】
以上、説明したように、カッターキャリッジ32が移動する際、第1カッター37は駆動回転することができる。所謂、駆動刃である。このときの第1カッター37の外周の速度は、カッターキャリッジ32の移動速度と同じ、またはカッターキャリッジ32の移動速度より僅かに高速に設けられている。一方、第2カッター38は、ロール紙Pを剪断する際、従動回転するように構成されている。
【0046】
ここで、第1カッター37は駆動するので、ロール紙Pを積極的に第1カッター37および第2カッター38の剪断点Qに噛み込ませることができる。さらに、上方の第1カッター37は前記速度によって駆動するので、ロール紙Pを剪断する際、ロール紙Pの記録面と、第1カッター37の外周面との間にスリップが生じる虞がない。
その結果、剪断箇所近傍において、ロール紙Pの記録面に傷が生じる虞がない。即ち、ロール紙Pに記録面側の第1カッター37を駆動させることによって、ロール紙Pの記録面にダメージを与える虞がない。
【0047】
図10に示す如く、ロール紙Pの上方および下方から剪断する場合、剪断された際、剪断された上流側ロール紙P1および剪断された下流側ロール紙P2は、上下方向に力を受ける。具体的には、剪断された上流側ロール紙P1は、第1カッター37の第1傾斜面37aによって、下向きの力を受ける。従って、剪断された上流側ロール紙P1は、下方へ変位しようとする。
一方、剪断された下流側ロール紙P2は、第2カッター38の第2傾斜面38aによって、上向きの力を受ける。従って、剪断された下流側ロール紙P2は、上方へ変位しようとする。
【0048】
ここで、カッターキャリッジ32の給送方向上流側には、前述したようにエア吸引手段13が設けられている。そして、エア吸引手段13は、作動することによってプラテン側である下方へロール紙Pを吸引することができる。ロール紙Pを剪断する際、エア吸引手段13を作動させているので、剪断するロール紙Pの位置を精度良く決めることができる。その結果、精度良く剪断することができる。
【0049】
さらに、剪断した際、剪断された上流側ロール紙P1は、第1カッター37の第1傾斜面37aによって、下向きの力を受けるので、エア吸引手段13の効果を妨げる虞がない。エア吸引手段13が吸引する方向と同じ方向へ、剪断された上流側ロール紙P1を変位させるように作用するので、エア吸引手段13の効果を助長することができる。エア吸引手段13の出力が小さいときに有効である。
【0050】
また、前述したようにカッターキャリッジ32の第1案内面部33および第2案内面部34は、略幅方向Xと平行に設けられている。従って、剪断された上流側ロール紙P1は、第2案内面部34のみと接触するしながら案内される。即ち、剪断された上流側ロール紙P1の裏面が第2案内面部34に押し付けられながら、剪断が実行される。一方、剪断された上流側ロール紙P1の記録面は、第1案内面部33から常に離間した状態である。
その結果、剪断された上流側ロール紙P1の記録面にダメージを与える虞がない。
【0051】
またさらに、前述したように、剪断された下流側ロール紙P2は、第2カッター38の第2傾斜面38aによって、上方へ変位しようとする。
そこで、前述したように、カッターキャリッジ32の第1傾斜部35および第2傾斜部36は、1桁側が徐々に上方へ変位するように幅方向Xに対して傾斜している。該傾斜の程度は、剪断された下流側ロール紙P2が第2カッター38の第2傾斜面38aによって上方へ変位することを妨げる虞がない程度に緩やかであり、かつ、剪断された下流側ロール紙P2の裏面が常に第2傾斜部36と接触する程度である。
【0052】
そして、第1傾斜部35と第2傾斜部36との間隔は、剪断された下流側ロール紙P2の記録面が第1傾斜部35と接触しないように十分広く設けられている。
従って、剪断された下流側ロール紙P2の記録面を、第1傾斜部35から常に離間した状態にすることができる。その結果、剪断された下流側ロール紙P2の記録面にダメージを与える虞がない。
【0053】
本実施形態のカッター装置としての切断部20は、送られている被剪断媒体の一例であるロール紙Pを基準としたロール紙Pの表面側である記録面側に設けられた第1カッター37と、記録面側に対して反対側である裏面側である反対面側に設けられ、第1カッター37と協働してロール紙Pを剪断する第2カッター38と、第1カッター37および第2カッター38を保持し、ロール紙Pの幅方向Xに移動するキャリッジとしてのカッターユニット30と、カッターユニット30を幅方向Xに案内するガイド部としてのガイドレール25と、カッターユニット30のカッターキャリッジ32に設けられ、第1カッター37および第2カッター38よりロール紙Pの送り方向である給送方向下流側の剪断されたロール紙Pを前記反対面と接触して記録面側である上方へ案内する剪断後案内部としての第2傾斜部36とを備えていることを特徴とする。
【0054】
また、本実施形態において、第1カッター37は、第2カッター38に対して給送方向上流側に設けられ、第2カッター38は、第1カッター37に対して給送方向下流側に設けられていることを特徴とする。
またさらに、本実施形態において、第1カッター37および第2カッター38より給送方向上流側において、ロール紙Pを前記反対面側に吸引する吸引部としてのエア吸引手段13の吸引孔14、14、14…を有することを特徴とする。
【0055】
また、本実施形態において、第1カッター37および第2カッター38は丸刃であり、第1カッター37はカッターユニット30の移動によって駆動する構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施形態において、ガイドレール25は、送られているロール紙Pを基準としたロール紙Pの記録面側に設けられていることを特徴とする。
【0056】
また、本実施形態において、給送方向Yにおいて、ガイドレール25の給送方向上流側および下流側にロール紙Pと当接可能な従動回転する補助ローラとしての上流側補助ローラ51、51、51…および下流側補助ローラ53、53、53…が設けられていることを特徴とする。
またさらに、本実施形態において、カッターユニット30のカッターキャリッジ32は、剪断する際のロール紙Pを、第1カッター37および第2カッター38が重なり合う剪断点Qに案内する剪断前案内部としての第1剪断前案内部39および第2剪断前案内部40を備えていることを特徴とする。
【0057】
本実施形態の記録装置の一例であるインクジェットプリンタ1は、被記録媒体の一例であるロール紙Pを給送する給送部としてのロール紙供給部3と、ロール紙供給部3から給送されたロール紙Pに記録ヘッド12により記録を実行する記録部としての記録実行部4と、記録されたロール紙Pを切断する切断部20と、を備えていることを特徴とする。
【0058】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1 インクジェットプリンタ、2 本体部、3 ロール紙供給部、4 記録実行部、5 排紙受け部、6 (ロール紙の)排出口、7 開口部、8 支柱、9 ベース、10 (ロール紙の)スタッカ、11 プラテン、12 記録ヘッド、13 エア吸引手段、14 吸引孔、15 吸引管、16 吸引ファン、20 切断部、21 基体部、22 カッター用モータ、23 無端ベルト、23a 上側ベルト、23b 下側ベルト、24 従動プーリ、25 ガイドレール、30 カッターユニット、31 スライダ部、32 カッターキャリッジ、33 第1案内面部、34 第2案内面部、35 第1傾斜部、36 第2傾斜部、37 第1カッター、37a 第1傾斜面、38 第2カッター、38a 第2傾斜面、39 第1剪断前案内部、40 第2剪断前案内部、41 動力伝達軸、42 第1ギア、43 第2ギア、44 第3ギア、45 第4ギア、46 第1スライダプーリ、47 第2スライダプーリ、50 上流側補助ローラホルダ、51 上流側補助ローラ、52 下流側補助ローラホルダ、53 下流側補助ローラ、P ロール紙、P1 剪断された上流側ロール紙、P2 剪断された下流側ロール紙、Q 剪断点、R ロール、X 幅方向、Y 給送方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送られている被剪断媒体を基準とした被剪断媒体の表面側に設けられた第1カッターと、
前記表面側に対して反対側である裏面側に設けられ、前記第1カッターと協働して被剪断媒体を剪断する第2カッターと、
前記第1カッターおよび前記第2カッターを保持し、被剪断媒体の幅方向に移動するキャリッジと、
該キャリッジを前記幅方向に案内するガイド部と、
前記キャリッジに設けられ、前記第1カッターおよび前記第2カッターより被剪断媒体の送り方向下流側の剪断された被剪断媒体を前記裏面と接触して前記表面側へ案内する剪断後案内部と、を備えるカッター装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカッター装置において、前記第1カッターは、前記第2カッターに対して送り方向上流側に設けられ、
前記第2カッターは、前記第1カッターに対して送り方向下流側に設けられているカッター装置。
【請求項3】
請求項2に記載のカッター装置において、前記第1カッターおよび前記第2カッターより送り方向上流側において、被剪断媒体を前記裏面側に吸引する吸引部を有するカッター装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカッター装置において、前記第1カッターおよび前記第2カッターは丸刃であり、前記第1カッターは前記キャリッジの移動によって駆動する構成であるカッター装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカッター装置において、前記ガイド部は、前記表面側に設けられているカッター装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のカッター装置において、送り方向において、前記ガイド部の上流側および下流側に被剪断媒体と当接可能な従動回転する補助ローラが設けられているカッター装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカッター装置において、前記キャリッジは、剪断する際の被剪断媒体を、前記第1カッターおよび前記第2カッターが重なり合う剪断点に案内する剪断前案内部を備えるカッター装置。
【請求項8】
被記録媒体を給送する給送部と、
該給送部から給送された被記録媒体に記録ヘッドにより記録を実行する記録部と、
記録された被記録媒体を切断する切断部と、を備えた記録装置であって、
前記切断部は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載された前記カッター装置を備える記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−99849(P2013−99849A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−27537(P2013−27537)
【出願日】平成25年2月15日(2013.2.15)
【分割の表示】特願2008−60996(P2008−60996)の分割
【原出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】