説明

カッティングデータ生成プログラム、カッティングプロッタ、カッティングシステム及びカッティング方法

【課題】 製品を完全に分離できるようにカットすること。
【解決手段】 カット図形Pの内側、外側のいずれの側が製品となるのか特定し、当該カット図形を構成する線分と線分とのコーナーで切り過ぎを生じさせてはならないコーナーを抽出し、分割コーナーマークMsを付与する。分割コーナーマークMsを始端または終端に付与された線分Lは、刃物の種類によっていずれかの線分Lが線分分割される。厚手の被加工媒体のカットには両刃が適している。分割カットに両刃を選択した場合、線分の「端」からカットすると始端の後ろに切り過ぎが発生するので、線分の「中」から分割カットを行う。これにより、始端の後ろに切り過ぎを生じさせることなく、分割カットを実行できる。このようにすれば、切残しを生じさせることなく、製品を完全にカットして分離できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃物を被加工媒体に押しつけて相対移動させながら、所望の形状の製品を得るためのカッティングデータ生成プログラム、カッティングプロッタ、カッティングシステム及びカッティング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のカッティングプロッタとして、特許文献1及び特許文献2に記載の技術が知られている。特許文献1に記載のカッティングプロッタでは、コントローラによりカッティングコマンドを生成するにあたり、カット図形の各コーナーのオーバーラン方向を算出し、加工結果物であるパーツ内側へのオーバーランカットを実施しないようにし、パーツの外側方向へのオーバーランカットのみを実施する。また、特許文献2に記載のカッティングコマンド発生方法では、コンピュータ側でカット図形の各コーナーのオーバーラン方向を算出し、パーツ内側へのオーバーランカットを防止するカットコマンドを生成し、当該カットコマンドをカッティングプロッタに転送する。これにより、パーツのオーバーランカットによる傷を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−136983号公報
【特許文献2】特開平7−148694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、傷防止のため前記パーツに対してオーバーランカットを実施しない場合、切り残しが生じて製品となるパーツが完全に分離できず、強制的に分離するとバリが生じてしまい、パーツの品質が低下するという問題点があった。そこで、この発明の目的は、製品を完全に分離できるようにカットする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカッティングデータ生成プログラムは、コンピュータに、カット時に被加工媒体に対して略垂直となる刃と、当該刃に対して刃身の裏側に設けた所定刃先角度を有する裏刃と、を有する両刃の前記略垂直となる刃によりカットを行う場合、製品の形となるカット図形を構成する線分を分割線分とし、当該分割線分上の所望の位置である「中」から当該分割線分の「端」に向けて中端分割カットするカッティングデータを生成するカッティングデータ生成手段、として機能させることを特徴とする。
【0006】
このように、上記両刃の略垂直となる刃によって前記分割線分を「中」から「端」に向けてカットすることで、コーナーでオーバーランカットを生じさせることなく、また、切り残しを生じさせることなく確実にカットでき、製品となるパーツを完全かつ綺麗に分離できる。
【0007】
また、本発明のカッティングデータ生成プログラムは、コンピュータに、製品の形となるカット図形の内側及び外側のいずれの側が製品になるか特定する内外特定手段、前記カット図形を構成する線分が隣接する線分と結合してなる各コーナーについて、前記内外特定手段により特定された製品情報に基づいて、切り過ぎを生じさせてはいけないコーナーを前記各コーナーから抽出し、その抽出したコーナーに分割コーナーマークを付与するマーク付与手段、カット時に被加工媒体に対して略垂直となる刃と、当該刃に対して刃身の裏側に設けた所定刃先角度を有する裏刃と、を有する両刃の前記略垂直となる刃によりカットを行う場合、始端に分割コーナーマークを有する線分を分割線分とし、当該分割線分上の所望の位置である「中」から当該分割線分の「端」に向けて中端分割カットするカッティングデータを生成するカッティングデータ生成手段、として機能させることを特徴とする。
【0008】
切り過ぎを生じさせてはいけないコーナーを始端に有する線分を分割線分とし、この分割線分を、上記両刃の略垂直となる刃によって「中」から「端」に向けてカットすることで、コーナーでオーバーランカットを生じさせることなく、また、切り残しを生じさせることなく確実にカットでき、製品となるパーツを完全かつ綺麗に分離できる。
【0009】
また、本発明のカッティングデータ生成プログラムは、上記発明において、更に、カッティングデータ生成手段は、カット図形を構成する全ての線分に対して前記分割線分を生成することを特徴とする。
【0010】
即ち、カット図形を構成する全ての線分を分割線分とし、上記両刃の略垂直の刃で中端カットすれば、全てのコーナーにおいて、オーバーランカットを生じさせることがなく且つ切り残しを生じさせることなく確実にカットできるため、カット図形の内側及び外側のいずれも製品とすることができる。
【0011】
また、本発明のカッティングプロッタは、上記カッティングデータ生成プログラムにより生成したカッティングデータに従って被加工媒体に対する前記両刃の相対移動制御を行う制御手段を有することを特徴とする。
【0012】
これにより、オーバーランカットを生じさせない高品質の製品を作成できるカッティングプロッタを提供できる。
【0013】
また、本発明のカッティング方法は、カット時に被加工媒体に対して略垂直となる刃と、当該刃に対して刃身の裏側に設けた所定刃先角度を有する裏刃と、を有する両刃の前記略垂直となる刃によりカットを行う場合、製品の形となるカット図形を構成する線分を分割線分とし、当該分割線分上の所望の位置である「中」から当該分割線分の「端」に向けて中端分割カットするカッティングデータを生成し、このカッティングデータに基づきカッティングプロッタにより被加工媒体をカットすることを特徴とする。
【0014】
このようにすれば、カット図形の各コーナーでオーバーランカットが生じることなく確実にカットでき、製品となるパーツを完全かつ綺麗に分離できる。
【0015】
また、本発明のカッティング方法は、製品の形となるカット図形の内側及び外側のいずれの側が製品になるか特定する内外特定ステップと、前記カット図形を構成する線分が隣接する線分と結合してなる各コーナーについて、前記内外特定手段により特定された製品情報に基づいて、切り過ぎを生じさせてはいけないコーナーを前記各コーナーから抽出し、その抽出したコーナーに分割コーナーマークを付与するマーク付与ステップと、カット時に被加工媒体に対して略垂直となる刃と、当該刃に対して刃身の裏側に設けた所定刃先角度を有する裏刃と、を有する両刃の前記略垂直となる刃によりカットを行う場合、始端に分割コーナーマークを有する線分を分割線分とし、当該分割線分上の所望の位置である「中」から当該分割線分の「端」に向けて中端分割カットするカッティングデータを生成するカッティングデータ生成ステップと、を含むことを特徴とする。
【0016】
このようにすれば、カット図形の各コーナーでオーバーランカットが生じることなく確実にカットでき、製品となるパーツを完全かつ綺麗に分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1に係るカッティングシステムを示す構成図である。
【図2】このカッティングシステムの動作を示すフローチャートである。
【図3】刃物の形状の例を示す説明図である。
【図4】片刃を用いて分割線分を「端」から「中」にカットする場合を示す説明図である。
【図5】両刃を用いて分割線分をカットする場合を示す説明図である。
【図6】両刃を用いて分割線分をカットする場合を示す説明図である。
【図7】直線近似の一例を示す説明図である。
【図8】内外特定の一例を示す説明図である。
【図9】カット図形に分割コーナーマークとコーナーマークとを付与した状態を示す説明図である。
【図10】図9に示した略十字形の図形を用いた分割線分の生成例を示す説明図である。
【図11】分割線分を自動生成する場合の分割位置の生成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に係るカッティングシステムを示す構成図である。このカッティングシステム100は、カッティングプロッタ101と、このカッティングプロッタ101に接続したコンピュータ102からなる。このカッティングプロッタ101は、カッティングヘッドをX軸方向に駆動するX軸駆動機構103と、Y軸方向に駆動するY軸駆動機構104と、カッティングヘッドの昇降動作及びZ軸を中心とした回転動作を行うカッター駆動機構105と、これらを制御するコントローラ106とを有する。コントローラ106は、前記駆動機構を制御する駆動制御部50と、コンピュータからのデータを受信するデータ受信部51と、受信したカッティングデータを記憶するデータ記憶部52とを有する。
【0019】
本発明を適用できるカッティングプロッタ101には、カッティングヘッドがX‐Y方向に移動制御されるフラットヘッド型の前記カッティングプロッタの他、カッティングヘッドが一軸方向に駆動制御され、これに直交する軸方向ではローラにより被加工媒体が駆動制御されるフリクション型のカッティングプロッタが含まれるがこれに限定されない。即ち、刃物と被加工媒体とが相対移動制御できる形態であれば、どのような構造であっても良い。前記コンピュータ102は、カッティングプロッタ101とUSBケーブルやRS−232C等の専用ケーブル、ネットワーク、無線近距離通信により接続される。なお、コンピュータ102は、インターネット空間で構築されるリソース形態を取るものであっても良い。
【0020】
コンピュータ102は、カット図形読取部1と、カッティングデータ生成部2とを有する。カット図形読取部1は、コンピュータ102に格納された、製品の形となるカット図形を読み取る。カッティングデータ生成部2は、カット図形の製品となる側を特定する内外判定部3と、カット方向を設定するカット方向設定部4と、カット図形に含まれる曲線を直線近似する直線近似部5と、カット図形に分割コーナーマーク及びコーナーマークを付与するマーク付与部6と、分割コーナーマークを端に有する線分を分割線分として作成する分割線分生成部8とを有する。これらは、コンピュータ102のハードウェアとプログラムとの組み合わせにより構成される。また、カット図形読取部1及びカッティングデータ生成部2は、カット図形を描くプログラムの拡張機能として実現される場合を含む。
【0021】
図2は、このカッティングシステムの動作を示すフローチャートである。
【0022】
[刃物の種類の選択] まず、ユーザは、カッティングデータ生成部2の刃物選択部7より刃物を選択する(ステップS1)。厚手の被加工媒体のカットに用いる刃物を次の通り分類する。図3に、刃物の形状の例を示す。「片刃」30は、短冊形状であってその刃31がカット方向に対して所定の刃先角度32を有する。その刃先角度32は、17度、35度、45度が一般的である。刃物30の背33は直線状であり、カット時において被加工媒体に対して垂直となる。例えば、5mm以下の厚さのゴム、コルク、皮革、塩ビフィルム、ポリエチレンフィルム、フェルト等や、20mm以下の厚さの段ボールには、片刃30を用いる。
【0023】
「両刃」35は、刃先角度36が2度であり且つ刃37が刃身38の長手方向に渡って形成されている。当該刃37が垂直(0度)から7度の範囲であればカット精度上、カット時において被加工媒体に対して略垂直とみなすことができる。また、当該刃37の裏側にも一定角度(45度程度)で裏刃39が形成されている。換言すると、両刃35は、カット時に被加工媒体に対して略垂直となる刃37および当該刃37に対して刃身38の裏側に設けた所定刃先角度40を有する裏刃39を備えた刃物である。例えば、60mm以下の厚手の段ボールや発泡ボードのカットを行う場合には、両刃35を用いる。
【0024】
[中端/端中の決定] 選択される刃物30が「片刃」か「両刃」かによって分割線分を「端」から「中」への分割カットとするのか、或いは、「中」から「端」への分割カットとするかが決まる(ステップS2)。
【0025】
図4は、片刃を用いて分割線分を「端」から「中」にカットする場合を示す説明図である。片刃30により分割カットする場合、刃31が分割線分の「中」側に向くようにして、分割線分Lsの「端」Leに刺し込んでも、片刃30の背33が垂直であるから、分割線分Lsの「端」Leを超えて切り過ぎが生じることはない。分割カットは、まず、片刃30の刃31を「中」Li側に向けて一方の「端」Leに押しつけて刺し込み、所定の分割位置Liまで移動して第1カットを行う。次に、片刃30を上昇させると共に180度反転させ(必要により偏芯調整し)、他方の「端」Leに刺し込み、前記分割位置Liまで移動して第2カットする。これにより、分割線分Lsを分割カットできる。
【0026】
図5及び図6は、両刃を用いて分割線分をカットする場合を示す説明図である。両刃35は、カット方向の刃37が刃身38に略垂直に形成されているため、図5に示すように、分割線分Lsの「端」Leに刺し込むと、刃身38の分だけカット方向の後ろに切り過ぎが発生する。このため、図6に示すように、分割線分Lsの分割位置である「中」Liから「端」Leにカットを行う。両刃35での分割カットは、まず、両刃35の刃37を「端」Le側に向けて分割位置である「中」Liに刺し込み、一方の「端」Leまで移動して第1カットを行う。次に両刃35を上昇させると共に、前記カットを開始した「中」Liの位置に戻ると共に180度反転させ(必要により偏芯調整し)、当該分割位置Liに刺し込み、他方の「端」Leまで移動して第2カットを行う。これにより、両刃35を用いる場合でも、切り過ぎを生じさせることなく分割線分Lsを分割カットできる。なお、「中」Liは、分割線分の中心位置には限定されない。分割線分長等の条件から所望の位置に設定して良い。
【0027】
[カット図形の読み取り] 次に、カット図形読取部1は、前記コンピュータ102にインストールされた作図プログラムにより作成したカット図形を読み取る(ステップS3)。
【0028】
[直線近似] 直線近似部5は、カット図形のうち曲線部分を直線近似によって小さな直線に分解する(ステップS4)。図7は、直線近似の一例を示す説明図である。分解した線分Lは、同図に示すように、両端Leが隣の線分Lと接合し且つ当該両端Leが曲線R上に位置する。この直線近似により、カット図形に曲線Rが含まれる場合でも、当該カット図形の全てが直線の線分で構成されることになる。なお、カット図形に曲線が含まれない場合は、当該ステップS4は省略できる。
【0029】
[内外特定:カット図形の内側・外側のいずれが製品となるかの判定] 図8は、内外特定の一例を示す説明図である。内外判定部3は、読み取ったカット図形の全てについて内外判定を行う(ステップS5)。まず、同図(a)に示すように、エリアの大きい順にカット図形を並べ、その全てを「外」と仮判定する。「外」は、カット図形の外側が製品となることを意味し、「内」は、カット図形の内側が製品となることを意味する。
【0030】
次に、最大のカット図形P1の中に他のカット図形P2,P3が完全に含まれるか否かを判定する。この場合、同図(b)に示すように、中位の大きさのカット図形P2と最小のカット図形P3は、最大のカット図形P1の中に完全に含まれるので、いずれも「内」と判定する。続いて、中位の大きさのカット図形P2の中に最小のカット図形P3が含まれるか否かを判定する。この場合、内側に最小のカット図形P3が含まれることになるので、本来「内」となるが、当該中位のカット図形P2と同じ判定結果になるため、逆に「外」と判定する。この結果、同図(d)に示すように、最大のカット図形P1の外側、中位のカット図形P2の内側及び最小のカット図形P3の外側、が製品であると判定する(図中、斜線部)。なお、図中斜線部以外を製品とする場合は、「外」と「内」とを逆転すればよい。これにより、内外判定部3は、カット図形のうち製品となる部分を特定する。
【0031】
[カット方向の設定] カット方向設定部4は、刃物30によるカット方向を、原則、カット図形の内側を製品とする場合は反時計回りに設定し、カット図形の外側を製品とする場合は時計周りに設定する(ステップS6)。なお、このカット方向については、分割線分を判断するために仮にカット方向を設定するものであり、実際のカット時には、必ずしも当該設定したカット方向になるとは限らない。
【0032】
[分割コーナーマークの付与] コーナーとは、カット図形を構成する線分がその隣接する線分と結合する部分をいう。マーク付与部6は、前記内外判定部3により特定された製品情報に基づいて、切り過ぎ(オーバーランカット)を生じさせてはいけないコーナーをカット図形の各コーナーから抽出し(ステップS7)、そのコーナーに分割コーナーマークを付与する(ステップS8)。切り過ぎを生じさせてはいけないか否かは、線分の仮想延長線が製品となる側に入るか否かにより判断する。また、直線近似によりカット図形は全て直線の集合として捉えられるが、線分と線分との角度が大きいために略直線とみなしてよい場合、この線分と線分との結合部分はコーナーと判断しない。コーナーと判断しない場合、分割コーナーマークを付与しない。
【0033】
また、コーナーであるか否かを判定し(ステップS9)、コーナーであれば当該コーナーにコーナーマークを付与する(ステップS10)。コーナーと判断しない場合はコーナーマークを付与しない。なお、前記分割コーナーマークとコーナーマークとは併存し得る。上記分割コーナーマーク及びコーナーマークの付与は、全てのコーナーに対して行う(ステップS11)。
【0034】
図9は、カット図形に分割コーナーマークとコーナーマークとを付与した状態を示す説明図である。図中、黒丸を分割コーナーマークMsとし、白丸をコーナーマークMとする。同図(a)の例はカット図形の内側を製品とする場合である。図形は略十字形であり、四隅の切り欠き部分の谷部において線分Lの仮想延長線Lxが製品側に入るため、切り過ぎを生じさせてはいけないコーナーと判断して分割コーナーマークMsを付与する。同図(b)の例はカット図形の外側を製品とする場合である。この場合、四隅の切り欠き部の山部において線分Lの仮想延長線Lxが製品側に入るため、切り過ぎを生じさせてはいけないコーナーと判断して分割コーナーマークMsを付与する。
【0035】
製品側(内外側のいずれが製品となるか)、カット方向が特定されれば、始端または終端に分割コーナーマークが付与された線分のいずれが分割線分となるか判断できる。この分割線分は、分割線分生成部8により生成されることになる。
【0036】
分割線分生成部8は、製品側、カット方向、刃物の種類、長さ、角度に基づいて分割線分を生成する(ステップS11)。分割線分生成部8は、選択された刃物30,35の種類に基づいて、「端」Leから「中」Liへの端中分割カットと、「中」Liから「端」Leへの中端分割カットとを自動的に設定する。具体的には、片刃30を選択した場合には、分割線分生成部8により端中分割カットが自動設定され、両刃35を選択した場合には、分割線分生成部8により中端分割カットが自動設定される。
【0037】
図10は、図9に示した略十字形の図形を用いた分割線分の生成例を示す説明図であって、(a)に、カット図形の内側が製品となり且つ片刃により分割カットする場合の分割線分を示す。分割線分生成部8は、片刃30が線分の終端のカット方向に切り過ぎを生じさせるため、線分Lの終端eに分割コーナーマークMsがある線分を分割線分Lsとする。図中、分割線分Lsを太線で示す(以下、同様)。同図(b)に、カット図形の内側が製品となり且つ両刃により分割カットする場合の分割線分を示す。分割線分生成部8は、両刃35が線分Lの始端sのカット方向の後ろに切り過ぎを生じさせるため、線分Lの始端sに分割コーナーマークMsがある線分Lを分割線分Lsとする。このように、カット図形Pの内側が製品となる場合でも、刃物30,35の種類によって生成される分割線分Lsの場所は異なる。
【0038】
同図(c)に、カット図形の外側が製品となり且つ片刃により分割カットする場合の分割線分を示す。この場合、上記同様に線分Lの終端eに分割コーナーマークMsがある線分Lを分割線分Lsとする。同図(d)に、カット図形の外側が製品となり且つ両刃により分割カットする場合の分割線分を示す。この場合、上記同様に線分Lの始端sに分割コーナーマークMsがある線分Lを分割線分Lsとする。このように、カット図形Pの外側が製品となる場合でも、刃物30,35の種類によって生成される分割線分Lsの場所は異なる。なお、この例では理解容易のためカット方向を反時計回りに統一して図示した。
【0039】
図11は、分割線分を自動生成する場合の分割位置の生成例を示す説明図である。分割線分Lsを両刃35により中端分割カットする場合、「中」Liとなる分割位置Liは分割線分Lsの終端eに近い側の所望の位置に設定するのが好ましい。既にカットが終了している線分から離してカットを始めたほうが、被加工媒体に撓みやズレ等が生じにくく、正確なカットが可能になるためである。分割位置Liは、分割線分生成部8により具体的な寸法tを設定可能である。以上のようにして、カッティングデータ生成部2は、カット図形から最終的なカッティングデータを生成する。
【0040】
また、線分分割する際には、最小線分長及び最小線分角度をも考慮するものとする。分割線分生成部8は、設定された最小線分長以下の線分については、きれいにカットできない場合があるため、分割を行わないようにする。当該最小線分長は、ユーザが分割線分生成部8により被加工媒体の種類や厚さ等に基づいて予め設定できる。また、分割線分生成部8は、設定された最小線分角度以下の角度の場合は、分割を行わないようにする。線分角度とは、ある線分の進行方向に対する次の線分の屈折角度をいう。最小線分角度は、ユーザが分割線分生成部8により被加工媒体の図形、種類、厚さ等に基づいて予め設定できる。
【0041】
生成されたカッティングデータは、図1に示すコンピュータ102からカッティングプロッタ101に送信される。カッティングプロッタ101のデータ受信部51は、当該カッティングデータを受信し、データ記憶部52に記憶する。カッティングプロッタ101の駆動制御部50は、受信したカッティングデータに基づいてX軸駆動機構103、Y軸駆動機構104およびカッター駆動機構105を駆動制御し、プリンタ106により所望の図画等が印刷された被加工媒体90のカットを行う。
【0042】
以上、この発明のカッティングシステム100によれば、両刃35を用いて中端分割カットを行うことで、各コーナーを確実かつ綺麗にカットできる。また、中端分割カットを含むカッティングデータを自動的に生成するので、カッティングデータの作成を短時間で簡単に行える。特に、厚手の被加工媒体をカットする場合でも製品を傷つけることなく綺麗にカットできる。なお、上記カット図形読取部1、カッティングデータ生成部2は、カッティングプロッタ101のファームウェア上で動作するアプリケーションとしてカッティングプロッタ101側に搭載しても良い(図示省略)。
【0043】
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、カット図形のうち内側または外側のいずれかが製品となる場合について説明したが、カット図形の内側および外側の両方が製品となる場合、カット図形を構成する線分全てに対して線分分割を行うようにしても良い。この場合、マーク付与部6は、ステップS5からステップS8の手順に代えて、全てのコーナーに分割コーナーマークMsを付与する。その他は、上記実施の形態1と同様であるから説明を省略する。
【0044】
このようにすれば、カット図形の全ての線分において切り過ぎを防止できるので、綺麗な製品を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
100 カッティングシステム
101 カッティングプロッタ
102 コンピュータ
106 コントローラ
1 カット図形読取部
2 カッティングデータ生成部
50 駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
カット時に被加工媒体に対して略垂直となる刃と、当該刃に対して刃身の裏側に設けた所定刃先角度を有する裏刃と、を有する両刃の前記略垂直となる刃によりカットを行う場合、製品の形となるカット図形を構成する線分を分割線分とし、当該分割線分上の所望の位置である「中」から当該分割線分の「端」に向けて中端分割カットするカッティングデータを生成するカッティングデータ生成手段、
として機能させることを特徴とするカッティングデータ生成プログラム。
【請求項2】
コンピュータに、
製品の形となるカット図形の内側及び外側のいずれの側が製品になるか特定する内外特定手段、
前記カット図形を構成する線分が隣接する線分と結合してなる各コーナーについて、前記内外特定手段により特定された製品情報に基づいて、切り過ぎを生じさせてはいけないコーナーを前記各コーナーから抽出し、その抽出したコーナーに分割コーナーマークを付与するマーク付与手段、
カット時に被加工媒体に対して略垂直となる刃と、当該刃に対して刃身の裏側に設けた所定刃先角度を有する裏刃と、を有する両刃の前記略垂直となる刃によりカットを行う場合、始端に分割コーナーマークを有する線分を分割線分とし、当該分割線分上の所望の位置である「中」から当該分割線分の「端」に向けて中端分割カットするカッティングデータを生成するカッティングデータ生成手段、
として機能させることを特徴とするカッティングデータ生成プログラム。
【請求項3】
更に、カッティングデータ生成手段は、カット図形を構成する全ての線分に対して前記分割線分を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載のカッティングデータ生成プログラム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のカッティングデータ生成プログラムにより生成したカッティングデータに従って被加工媒体に対する前記両刃の相対移動制御を行う制御手段を有することを特徴とするカッティングプロッタ。
【請求項5】
カット時に被加工媒体に対して略垂直となる刃と、当該刃に対して刃身の裏側に設けた所定刃先角度を有する裏刃と、を有する両刃の前記略垂直となる刃によりカットを行う場合、製品の形となるカット図形を構成する線分を分割線分とし、当該分割線分上の所望の位置である「中」から当該分割線分の「端」に向けて中端分割カットするカッティングデータを生成し、このカッティングデータに基づきカッティングプロッタにより被加工媒体をカットすることを特徴とするカッティング方法。
【請求項6】
製品の形となるカット図形の内側及び外側のいずれの側が製品になるか特定する内外特定ステップと、
前記カット図形を構成する線分が隣接する線分と結合してなる各コーナーについて、前記内外特定手段により特定された製品情報に基づいて、切り過ぎを生じさせてはいけないコーナーを前記各コーナーから抽出し、その抽出したコーナーに分割コーナーマークを付与するマーク付与ステップと、
カット時に被加工媒体に対して略垂直となる刃と、当該刃に対して刃身の裏側に設けた所定刃先角度を有する裏刃と、を有する両刃の前記略垂直となる刃によりカットを行う場合、始端に分割コーナーマークを有する線分を分割線分とし、当該分割線分上の所望の位置である「中」から当該分割線分の「端」に向けて中端分割カットするカッティングデータを生成するカッティングデータ生成ステップと、
を含むことを特徴とするカッティングプロッタによるカッティング方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−66329(P2012−66329A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212406(P2010−212406)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】