説明

カット紙送給装置及びカット紙送給システム

【課題】アライン不良の発生を抑えることができるカット紙送給装置及びカット紙送給システムの提供を目的とする。
【解決手段】本発明のカット紙送給システム100では、カット紙送給装置10の第1と第2の送給ベルト43,49がカット紙90をアライナー50に送給し、アライナー50の搬送ローラ55は、回転ベルト71のうち搬送ローラ群55G側の片寄せ平坦面M1にカット紙90を片寄せしながら搬送する。また、カット紙送給装置10では、カット紙ホルダー20がカット紙群90Gの水平移動を規制し、カット紙90の横辺90Aが片寄せ平坦面M1と平行になっている。そして、第1と第2の送給ベルト43,49の回転軸が、カット紙ホルダー20内で静止したカット紙90の横辺90Aに対して傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四角形のカット紙を複数積み上げてなるカット紙群の最下端からカット紙を1つずつ抜き出して送給するカット紙送給装置及び、そのカット紙送給装置と、カット紙の一辺を位置決めしながら搬送するアライナーとからなるカット紙送給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカット紙送給装置で送給されるカット紙は、下流側で種々の処理が行われ、その具体例としては、カット紙送給装置にて送給された無地のカット紙に印字を行う印字処理や、カット紙送給装置にて送給された印字済みのカット紙から印字情報を読み込むデータ取り込み処理等が挙げられる。そして、これら処理を高精度で行うために、カット紙送給装置とセットにしてアライナーが使用される場合が多い。図15には、アライナー3とカット紙送給装置2と組み合わせてなる従来のカット紙送給システム1の一例が示されている。
【0003】
このカット紙送給装置2は、カット紙ホルダー8にてカット紙群を囲んで水平移動を規制すると共に、カット紙群の縦辺又は横辺の何れかの辺が送給方向を向くように位置決めする構造になっている。そして、カット紙群の下方に配置された送給回転体4(例えば、送給ベルト)によって、最下端のカット紙をその縦辺又は横辺と平行な方向に抜き出して、アライナー3へと送給可能な構造になっている。(詳細構造は、例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、アライナー3は、鉛直に起立したガイド壁5の前方に複数の搬送ローラ6が横並びに配置して備えている。また、搬送ローラ6群は、水平方向に延びかつガイド壁5の前面に対して傾斜した構造になっている。これにより、搬送ローラ6群上に供給されたカット紙7の一辺7Aとガイド壁5の前面とを平行に維持したまま片寄せし、カット紙7の一辺7Aをガイド壁5の前面に当接させて位置決めすることを図っていた(詳細構造は、例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平11−504308号公報(第10頁、図1)
【特許文献2】特開2010−30766号公報(段落[0013]、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来のカット紙送給システム1では、カット紙7がアライナー3上で回転し、ガイド壁5にカット紙7の一角部が当接した状態で下流側に送給されたり、カット紙7の一角部がガイド壁5に押しつけられてカールした状態で下流側に送給されたり、或いは、カット紙7が正規の向きに対して90度回転してガイド壁5にて位置決めされた状態で下流側に送給される等のアライン不良の不具合が生じることがあった。このようなアライン不良に対し、アライナー3については種々の改良が試みられているが、十分が効果を奏することができなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、アライン不良の発生を抑えることができるカット紙送給装置及びカット紙送給システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述したようにカット紙送給装置からアライナーにカット紙を送給する場合、カット紙が高速で移動するので、目視では、アライナー上でカット紙が回転し始めるように見え、アライン不良はアライナーのみに原因があると思われていた。これに対し、本願発明者は、上記したアライン不良の原因がアライナーのみにあるではなく、カット紙送給装置にも原因があることを見いだし、アライン不良の発生メカニズムを以下のように考えた。即ち、図15に示すように、カット紙送給システム1では、カット紙7がカット紙送給装置2とアライナー3に差し渡されたときに、カット紙7の後側部分が、送給ベルト4からガイド壁5と平行な方向に力F1を受ける一方、前側部分が、斜送ローラ6からガイド壁5に対して斜めの方向に力F2を受ける。つまり、カット紙7は、前側部分と後側部分で異なる方向の力を受ける。このため、カット紙7を回転させるモーメントが発生し、カット紙7の一辺7Aがガイド壁5に対して斜めになる(図14には、回転後のカット紙7が二点鎖線で示されている)。このように、カット紙7がカット紙送給装置2とアライナー3との境界部分でモーメントを受けることでアライン不良が発生すると考えられる。
【0009】
しかしながら、従来のカット紙送給装置2では、上記モーメントを小さくするために、カット紙送給装置2の送給ベルト4による送給方向を、アライナー3の斜送ローラ6と同様にガイド壁5に対して傾斜させると、カット紙送給装置2から送給される当初からカット紙7の一辺7Aがガイド壁5に対して傾斜することになり、結局、アライン不良を防ぐことができない。そこで、本願発明者は、以下請求項1〜12の発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、請求項1の発明に係るカット紙送給装置は、四角形のカット紙を複数積み上げてなるカット紙群を囲んで水平移動を規制するカット紙ホルダーと、カット紙群の最下端からカット紙を1つずつ抜き出して送給する送給回転体とを備えたカット紙送給装置において、カット紙ホルダー内のカット紙における縦辺又は横辺に対して送給回転体の回転軸を傾斜させたところに特徴を有する。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載のカット紙送給装置において、送給回転体はベルトであり、カット紙ホルダー内のカット紙における縦辺又は横辺と平行な円柱の外周面で構成されたカット紙当接面を有する重送規制部材を送給回転体の上方に配置し、カット紙当接面と送給回転体との間を通過してカット紙がカット紙群から抜き出されるようにしたところに特徴を有する。
【0012】
請求項3の発明に係るカット紙送給システムは、請求項1又は2に記載のカット紙送給装置と、カット紙送給装置から送給されるカット紙の一辺を位置決めして搬送するためのアライナーとを備えてなるカット紙送給システムであって、アライナーは、カット紙ホルダー内におけるカット紙の一辺と平行な片寄せ平坦面を有したガイド部材と、片寄せ平坦面にカット紙の一辺を押し付けるようにカット紙を片寄せして搬送する搬送手段とを備え、アライナーの搬送手段によるカット紙の搬送方向と、カット紙送給装置の送給回転体によるカット紙の送給方向とを、片寄せ平坦面に対して同じ側に傾斜させたところに特徴を有する。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3に記載のカット紙送給システムにおいて、アライナーのうち片寄せ平坦面の前方には、搬送手段としての複数の搬送ローラが横並びにして備えられ、それら搬送ローラ群の回転軸が片寄せ平坦面に対して一方側に傾けられると共に、それら搬送ローラ群のうち最上流の搬送ローラの回転軸と送給回転体の回転軸とが平行になっているところに特徴を有する。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4に記載のカット紙送給システムにおいて、搬送ローラによるカット紙の搬送速度を、送給回転体によるカット紙の送給速度より大きくしたところに特徴を有する。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5に記載のカット紙送給システムにおいて、最上流の搬送ローラとの間でカット紙を上下方向で挟む加圧ローラを備えたところに特徴を有する。
【0016】
請求項7の発明は、請求項3乃至6の何れか1の請求項に記載のカット紙送給システムにおいて、搬送ローラ群は、上流側の搬送ローラの回転軸よりも下流側の搬送ローラの回転軸の方が、片寄せ平坦面に対して傾斜した角度が小さくなるように配置されたところに特徴を有する。
【0017】
請求項8の発明は、請求項7に記載のカット紙送給システムにおいて、複数の搬送ローラを、回転軸が相互に平行となるように組み付けた搬送ローラユニットを複数備え、上流側に位置する搬送ローラユニットの搬送ローラの回転軸が、下流側に位置する搬送ローラユニットの搬送ローラの回転軸よりも、片寄せ平坦面に対して一方側に傾くように、複数の搬送ローラユニットを配置したところに特徴を有する。
【0018】
請求項9の発明は、請求項3乃至8の何れか1の請求項に記載のカット紙送給システムにおいて、鉛直な回転軸を有する1対のプーリにガイド部材としての回転ベルトを架け渡し、その回転ベルトにおける搬送ローラ群側の面を、片寄せ平坦面としかつ、搬送ローラによるカット紙の搬送方向に移動可能としたところに特徴を有する。
【0019】
請求項10の発明は、請求項9に記載のカット紙送給システムにおいて、回転ベルトの搬送ローラ群側の面の移動速度を、搬送ローラによるカット紙の移動速度と同じにしたところに特徴を有する。
【0020】
請求項11の発明は、請求項9又は10に記載のカット紙送給システムにおいて、プーリの外周面には、環状溝が形成され、回転ベルトの裏面には、幅方向と直交して環状溝と係合する係合突部が設けられたところに特徴を有する。
【0021】
請求項12の発明は、請求項11に記載のカット紙送給システムにおいて、水平方向で直線状に延びて、回転ベルトのうち搬送ローラ群側に位置する部分の裏面と摺接可能な1対のベルト摺接部を上下に並べて備え、係合突部は、それら1対のベルト摺接部に上下方向で挟まれたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0022】
[請求項1の発明]
請求項1のカット紙送給装置では、送給回転体の回転軸がカット紙ホルダー内のカット紙の縦辺又は横辺に対して傾斜しているので、カット紙ホルダー内で静止しているカット紙を、片寄せしながら抜き出して送給することができる。従って、アライナーに向けてカット紙を送給するために本発明のカット紙送給装置を使用すれば、カット紙送給装置とアライナーと境界部分でカット紙が受けるモーメントを従来より小さくすることができ、アライン不良の発生を抑えることができる。
【0023】
[請求項2の発明]
請求項2の構成によれば、重送規制部材がカット紙と接触する部分が、カット紙の縦辺又は横辺と平行になり、カット紙の回転が規制される。
【0024】
[請求項3の発明]
請求項3のカット紙送給システムでは、カット紙送給装置の送給回転体の回転軸がカット紙ホルダー内のカット紙の縦辺又は横辺に対して傾斜しているので、カット紙ホルダー内で静止しているカット紙を、片寄せしながら抜き出してアライナーに向けて送給することができる。そして、本発明では、アライナーの搬送手段によるカット紙の搬送方向と、カット紙送給装置の送給回転体によるカット紙の送給方向とが、アライナーの片寄せ平坦面に対して同じ側に傾斜しているので、カット紙送給装置とアライナーと境界部分でカット紙が受けるモーメントを従来より小さくすることができ、アライン不良の発生を抑えることができる。
【0025】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、、カット紙送給装置とアライナーと境界部分でカット紙が受けるモーメントをゼロにすることができる。
【0026】
[請求項5及び6の発明]
請求項5の構成によれば、カット紙送給装置からアライナーに送給されてきたカット紙は、搬送ローラによって送給回転体の送給速度より速く搬送されるので、2つのカット紙が部分的に重なった状態でカット紙送給装置からアライナーに送給された場合に、それらカット紙同士を分離することができる。また、請求項6の構成によれば、最上流の搬送ローラと加圧ローラとの間でカット紙を上下方向から挟むことでスリップが防がれ、部分的に重なったカット紙をより確実に分離することことができる。
【0027】
[請求項7の発明]
請求項7の発明では、上流側の搬送ローラの回転軸よりも下流側の搬送ローラの回転軸の方が、片寄せ平坦面に対して傾斜する角度が小さくなっている。即ち、下流側の搬送ローラの搬送速度は、上流側の搬送ローラと比較して、カット紙を片寄せ平坦面側へ寄せる成分が小さくなっている。これにより、上流側で片寄せ平坦面に片寄せされたカット紙が過剰に押しつけられてカールすることが防がれ、アライン不良の発生が抑えられる。
【0028】
[請求項8の発明]
請求項8の発明では、複数の搬送ローラを、回転軸が相互に平行となるように組み付けた搬送ローラユニットを複数組み合わせて、搬送ローラ群が構成される。この構成によれば、搬送ローラユニットごとに片寄せ平坦面に対して傾斜する角度を調整すればよいので、搬送ローラを1つずつ角度調整する場合と比べて、角度調整の作業性向上が図れる。
【0029】
[請求項9,10の発明]
請求項9の発明によれば、回転ベルトに片寄せされたカット紙が搬送されるときに、カット紙が回転ベルトから摩擦抵抗を受けて回転することが防がれ、アライン不良の発生が抑えられる。また、請求項10の発明のように、回転ベルトの搬送ローラ群側の面の移動速度を搬送ローラによって搬送されるカット紙の移動速度と同じにすれば、摩擦抵抗をゼロにすることができる。
【0030】
[請求項11の発明]
請求項11の発明によれば、回転ベルトの係合突部がプーリの環状溝と凹凸係合するので、回転ベルトをプーリに対して上下方向で位置決めすることができる。
【0031】
[請求項12の発明]
請求項12の発明によれば、水平方向で直線状に延びた1対のベルト摺接部に回転ベルトの係合突部が上下方向で挟まれるので、回転ベルトの搬送ローラ群側に位置する部分が自重によって撓むことが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るカット紙送給システムの正面図
【図2】アライナーの平面図
【図3】アライナーの側断面図
【図4】回転ベルトの平面図
【図5】下流側のベルト用プーリの側断面図
【図6】(A)上流側のベルト用プーリの側断面図、(B)ベルト摺接部の側断面図
【図7】搬送ローラユニットの平断面図
【図8】(A)上流加圧ローラの正断面図、(B)下流加圧ローラの正断面図
【図9】カット紙送給装置の正断面図
【図10】重送規制部材の斜視図
【図11】ベルト送給部及び最上流搬送ローラの平面図
【図12】搬送ローラ群及び回転ベルトの平面図
【図13】ベルト送給部によって送給されるカット紙の平面図
【図14】カット紙送給装置からアライナーへ送給されるカット紙の平面図
【図15】従来のカット紙送給システムにおいてカット紙送給装置からアライナーへ送給されるカット紙の平面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明のカット紙送給装置10とカット紙送給システム100の一実施形態を図1〜図14に基づいて説明する。図1に示すように、カット紙送給システム100は、アライナー50とカット紙送給装置10とを左右横並びにして備えている。カット紙送給システム100では、カット紙90が、カット紙送給装置10によってアライナー50へ送給され、アライナー50に備えたカット紙搬送機構52によって、カット紙送給装置10と反対側(図1における右側)に配置された下流側装置101へと搬送される。下流側装置101では、カット紙90に印字等の処理が施される。なお、本明細書では、特に断りがない限り、「上流側」といったときには、左右方向におけるカット紙送給装置10側(図1における左側)を指し、「下流側」といったときには、左右方向における下流側装置101側(図1における右側)を指すものとする。
【0034】
カット紙搬送機構52は、支持台51の上に備えられている。支持台51の下端部には、支持台51の高さを調整可能なアジャスター(図示せず)が備えられ、カット紙搬送機構52をカット紙送給装置10の高さ位置に調整可能になっている。
【0035】
図2に示すように、カット紙搬送機構52は、アライナー50の後端部で左右方向に沿って形成されたガイド部70と、ガイド部70の前方で複数の搬送ローラ55(本発明の「搬送手段」に相当する)が水平方向に横並びにして配置された搬送ローラ群55Gとを備えている。
【0036】
図3に示すように、ガイド部70は、支持台51から起立して左右方向(図3における紙面と直交する方向)に延びたベルト支持壁73と、ベルト支持壁73の上端から前方に張り出した張出壁74とを備えている。ベルト支持壁73は、脚部73Aが支持台51の天板51Aにボルトで固定されている。なお、脚部73Aには、ベルト支持壁73の起立壁73Bを補強するためのリブ73Cが設けられている。
【0037】
張出壁74は、上方から見て左右方向に帯状に延びた幅広部74Aと、幅広部74Aの上流側で前方への張り出し量が幅広部74Aより小さくなった幅狭部74Bとを備えている(図2参照)。幅広部74Aの下流側の端部には、ベルト用モータ75が取り付けられている。ベルト用モータ75は、回転出力軸側の端面が幅広部74Aの上面に突き合わされて、回転出力軸が幅広部74Aを上下に貫通している(図3参照)。
【0038】
幅広部74Aの左右の両端部の下方には、鉛直方向に平行な回転軸を持つ1対のベルト用プーリ72,72(本発明の「プーリ」に相当する)が取り付けられている(図4参照)。具体的には、下流側のベルト用プーリ72は、上述したベルト用モータ75の回転出力軸に取り付けられている(図5参照)。上流側のベルト用プーリ72は、張出壁74の下方に配置されて位置調整機構72A(図2参照)によって左右方向の位置を変更可能な回転支軸78に取り付けられている(図6(A)参照)。また、ベルト用プーリ72の外周面のうち上下方向の中間位置には、環状溝72Kが形成されている。
【0039】
また、幅広部74Aの左右方向の中間部には、左右方向の断面形状がL字状になったベルト支持部材77(図6(B)参照)が備えられている。ベルト支持部材77は、L字の一方の直線部が幅広部74Aの下面に沿って前後方向に配置され、他方の直線部が一方の直線部の前端部から下方に向かって延びている。ベルト支持部材77の前面には、左右方向に延びたベルト摺接部76が固定されている。ベルト摺接部76は、上流側のベルト用プーリ72の若干下流位置から下流側のベルト用プーリ72の若干上流位置に亘って配置され、左右方向の中間部が直線状をなし、両端部が後方に折れ曲がった形状になっている(図4参照)。なお、ベルト摺接部76は1対備えられ、上下方向で間隔をあけて配置されている。
【0040】
図4に示すように、1対のベルト用プーリ72,72には、回転ベルト71(本発明の「ガイド部材」に相当する)が架け渡されている。回転ベルト71のうち搬送ローラ群55G側に配置される部分は、ベルト摺接部76,76によって前方へ押しつけられている。そして、ベルト用モータ75により下流側のベルト用プーリ72が回転駆動されると、回転ベルト71の搬送ローラ群55G側の面が、アライナー50の搬送方向の上流側から下流側に移動するようになっている。なお、回転ベルト71のうち搬送ローラ群55G側の面が、本発明の片寄せ平坦面M1になっている。
【0041】
回転ベルト71の裏面には、係合突部71Kが形成されている(図5、図6参照)。係合突部71Kは、ベルト用プーリ72の環状溝72Kと凹凸係合し、ベルト摺接部76,76の間に挟まれている。これにより、回転ベルト71は、上下方向で位置決めされている。また、係合突部71Kは、ベルト摺接部76,76によって上下方向で挟まれている。これにより、回転ベルト71の搬送ローラ群55G側に位置する部分が自重によって撓むことが防がれる。なお、位置調整機構72A(図2参照)によって上流側のベルト用プーリ72の左右方向の位置を変更することで、回転ベルト71のテンションを調整可能になっている。
【0042】
図2に示すように、搬送ローラ群55Gは、回転軸が片寄せ平坦面M1と直交する基準線L1と平行な状態から、回転軸方向における片寄せ平坦面M1から離れた側の端部をアライナー50の搬送方向の下流側(図2における右側)に傾けるように配置されている。即ち、搬送ローラ群55Gの回転軸は、片寄せ平坦面M1に対して下流側(図2における右側)に傾斜している。
【0043】
詳細には、搬送ローラ群55Gのうち最下流に位置する第2下流搬送ローラ55Cの回転軸と、その隣に配置された第1下流搬送ローラ55Bの回転軸は、片寄せ平坦面M1と直交し、それら第1と第2の下流搬送ローラ55B,55Cより上流側の搬送ローラ55の回転軸が片寄せ平坦面M1に対して下流側に傾斜している。また、搬送ローラ群55Gのうち最上流に位置する最上流搬送ローラ55Aは、片寄せ平坦面M1に対して傾斜する角度が搬送ローラ群55Gの中で最も大きくなっている。そして、搬送ローラ群55Gのうち、最上流搬送ローラ55Aと、第1と第2の下流搬送ローラ55B,55Cとを除いた残りの搬送ローラ55が、アライナー50の搬送方向で複数のグループに分けられ、各グループごとに、全体がボックス状をなす搬送ローラユニット56に組み付けられている(図3及び図7参照)。
【0044】
複数の搬送ローラユニット56の間では、搬送ローラ55の回転軸が片寄せ平坦面M1に対して傾斜する角度が異なっている。具体的には、上流側に位置する搬送ローラユニット56の搬送ローラ55は、下流側に位置する搬送ローラユニット56の搬送ローラ55よりも、回転軸が片寄せ平坦面M1に対して下流側に傾いている。そして、最下流に位置する搬送ローラユニット56における搬送ローラ55の回転軸は、片寄せ平坦面M1と直交した方向に対して、例えば、0.5度だけ下流側に傾いている(図2参照)。即ち、最下流に位置する搬送ローラユニット56の搬送ローラ55の搬送方向は、片寄せ平坦面M1と略平行になっている。ここで、前述した回転ベルト71の移動速度は、搬送ローラ55の搬送速度と同じに設定され、最下流に位置する搬送ローラユニット56の搬送ローラ55の搬送速度のうち片寄せ平坦面M1と平行な成分は、回転ベルト71の移動速度と略同一の大きさになっている。
【0045】
図3及び図7に示すように、搬送ローラユニット56は、ベース盤57から包囲壁58が起立した構造になっていて、ベース盤57の前後方向の両端に設けられたユニット取付部59によって支持台51に固定されている。ユニット取付部59は、支持台51の天板51Aを上下方向で貫通したボルト部(図示せず)に、天板51Aの下方からナット(図示せず)が螺合することで天板51Aを挟み付けている。
【0046】
包囲壁58のうち前後方向で対向した壁は、左右方向で対向した壁より上方に突出し、その突出部分に複数の搬送ローラ55が平行に軸支されている。搬送ローラ55は、ベース盤57に固定されて搬送ローラユニット56の内部に収容された搬送用回転駆動源64によって回転駆動されるようになっている。
【0047】
具体的には、搬送ローラ55の後端部の下方には、複数の搬送用プーリ60が配置され、それら複数の搬送用プーリ60の下方に、搬送用回転駆動源64の回転出力軸64Aに取り付けられた駆動用プーリ62が配置されている。また、複数の搬送用プーリ60と駆動用プーリ62との間には、タイミングベルト63が架け渡されて、搬送ローラ55の下面と接している。これにより、搬送用回転駆動源64の回転出力軸64Aが回転駆動されると、複数の搬送ローラ55が同じ速度で同方向に回転する。なお、搬送用プーリ60及び駆動用プーリ62は、後面壁58Cの前方に備えられたプーリ支持部材61に軸支され、そのプーリ支持部材61に搬送用回転駆動源64の回転出力軸64A側の端面が固定されている。
【0048】
各搬送ローラユニット56の間では、搬送用回転駆動源64の回転速度が同じになるように制御され、全ての搬送ローラ55の回転速度が同じになっている。具体的には、搬送用回転駆動源64にブラシレスモータを用い、それらがインバータ制御されるようになっている。
【0049】
図8(B)に示すように、第1と第2の下流搬送ローラ55B,55Cは、最下流に位置する搬送ローラユニット56より下流側で支持台51に固定された下流ローラ支持部材67に軸支されている。
【0050】
第1下流搬送ローラ55Bは、最下流に位置する搬送ローラユニット56の搬送ローラ55との間に配置された摩擦車67Aを介して、搬送ローラユニット56の搬送ローラ55から駆動力を受けるようになっている。また、第2下流搬送ローラ55Cは、第1下流搬送ローラ55Bとの間に備えた摩擦車67Bによって、第1下流搬送ローラ55Bと同方向に同じ速度で回転するようになっている。これにより、第1と第2の下流搬送ローラ55B,55Cは、搬送ローラ55と同方向に同じ速度で回転する。
【0051】
また、下流ローラ支持部材67は、第2下流搬送ローラ55Cの上方に、複数の下流加圧ローラ68を備えている。下流加圧ローラ68は、第1下流搬送ローラ55Bの回転軸と平行な下流シャフト68Sに一体回転可能に取り付けられ(図2参照)、第1下流搬送ローラ55Bとの間で上下方向にカット紙90(図1参照)を挟むようになっている。具体的には、下流シャフト68Sと第2下流搬送ローラ55Cの回転軸とには、同径の上側伝達歯車68Hと下側伝達歯車67Hとが取り付けられ、第2下流搬送ローラ55Cの回転に伴って下流加圧ローラ68が同じ速度で回転するようになっている。また、下流加圧ローラ68は、例えば、圧縮コイルバネによって下方に付勢され、その付勢力を調整することによってカット紙90を挟む力を調節できるようになっている。
【0052】
なお、各下流加圧ローラ68は、下流シャフト68Sの軸方向における位置が調節可能になっている。具体的には、下流加圧ローラ68は、径方向に形成された螺子孔にボルトを螺合させて、そのボルトと下流シャフト68Sとの間の締め付けによって下流シャフト68Sに固定されている。
【0053】
図8(A)に示すように、最上流搬送ローラ55Aは、最上流に位置する搬送ローラユニット56に固定された上流ローラ支持部材65に軸支され、回転軸が、最上流に位置する搬送ローラユニット56の搬送ローラ55の回転軸と平行となるように配置されている。また、最上流搬送ローラ55Aは、伝達車65Aを介して、最上流に位置する搬送ローラユニット56の搬送ローラ55と同じ速度で同方向に回転するようになっている。
【0054】
上流ローラ支持部材65は、最上流搬送ローラ55Aの上方に上流加圧ローラ66を備えている。上流加圧ローラ66は、最上流搬送ローラ55Aの回転軸と平行な上流シャフト66Sと一体回転可能に複数取り付けられ(図2参照)、最上流搬送ローラ55Aとの間で上下方向にカット紙90(図1参照)を挟むようになっている。上流加圧ローラ66についても、下流加圧ローラ68と同様に、上側伝達歯車66Hと下側伝達歯車65Hとの噛合によって最上流搬送ローラ55Aと同じ速度で回転し、カット紙90を挟む力を調節できるようになっている。また、各上流加圧ローラ66は、上流シャフト66Sの軸方向で位置を調整可能になっている。
【0055】
また、上流ローラ支持部材65には、上流側に張り出したガイド板65Tを備えている。詳細には、ガイド板65Tは、最上流搬送ローラ55Aの回転軸と直交する方向に張り出し(図2参照)、最上流搬送ローラ55Aの上側の搬送面と面一になっている。
【0056】
次に、カット紙送給装置10について説明する。図9に示すように、カット紙送給装置10は、ベースフレーム11に、種々の部品を組み付けてなる。ベースフレーム11は、装置台10A(図1参照)の上面に固定されたベースプレート12と、ベースプレート12から起立して前後で対向した起立プレート13,13(図9には一方のみが示されている)と、起立プレート13のうち左右方向の一端側(図9の左側)の端部を連結したカバープレート14とを備えている。カバープレート14は、水平面と平行に取り付けられている。
【0057】
ベースフレーム11のうち、左右方向のほぼ中間位置でかつ1対の起立プレート13,13に挟まれた位置には、部品取付部15が備えられている。部品取付部15の上流側には、カット紙ホルダー20が備えられている。カット紙ホルダー20は、複数のカット紙90を上下に積み重ねたカット紙群90Gを取り囲んでカット紙群90Gの水平移動を規制している。
【0058】
具体的には、カット紙ホルダー20は、部品取付部15のうち上流側(図9における左側)を向いた面に宛がわれた下流端壁21を有している。下流端壁21はカバープレート14に対して略直角であると共に、下端部分が下流側に向かって迫り出しており、その下流端壁21の下端縁と後述するベルト送給部40との間には、カット紙90が通過可能なカット紙排出口22が形成されている。カット紙ホルダー20に載置されたカット紙群90Gは、下流端壁21に突き当てられて、下流側の端縁が揃えられている。
【0059】
また、カット紙ホルダー20の上流側には、端ずらし部材23が備えられている。端ずらし部材23は、起立プレート13,13の対向方向に並んだ複数の三角板24と、それら三角板24をカバープレート14に対して固定するための取付ブラケット25とを一体に備えてなる。三角板24は、直角三角形状をなし、斜辺がカット紙ホルダー20に載置されたカット紙90のうち、下端側に位置する複数のカット紙90のうち上流側の端縁と当接する。これにより、上下に積み重ねられたカット紙90のうち、下側のカット紙90が上側のカット紙90に対して下流側にずらされる。
【0060】
なお、端ずらし部材23は、取付ブラケット25を貫通したボルト(図示せず)をカバープレート14の螺旋孔14Aに螺合することで固定されており、カバープレート14には、左右方向に複数の螺旋孔14Aが並んで設けられている。これにより、カット紙90の寸法に応じて、端ずらし部材23の位置を左右方向で選択的に調節することが可能となっている。
【0061】
また、カット紙ホルダー20は、カット紙群90Gを前後方向で挟む1対の幅移動規制部材27,27(図13参照)を備えている。幅移動規制部材27は、部材取付部15に固定され、後に詳述するベルト送給部40(図9参照)の上方に配置されている。1対の幅移動規制部材27,27同士の間隔は、カット紙90の寸法に応じて調節可能になっている。そして、それら1対の幅移動規制部材27,27と、下流端壁21と、端ずらし部材23とによって、カット紙群90Gの水平移動を規制している。以下では、カット紙群90Gにおけるカット紙90の前後方向(図13における上下方向)に延びた辺を縦辺90B、左右方向(図13における左右方向)に延びた辺を横辺90Aと呼ぶことにする。なお、図示はしないが、後側の幅移動規制部材27には、次述する重送規制部材30と同様の重送規制部材が備えられ、その重送規制部材とベルト送給部40との間をカット紙90が1つだけ通過するようになっている。
【0062】
図9に示すように、カット紙排出口22から下流側に離れた位置には、重送規制部材30が備えられている。重送規制部材30は、部品取付部15の下流側に取り付けられた直動保持機構26によって上下動可能に支持されていると共に、圧縮コイルバネ30Bによって下方に付勢されている。そして、カット紙群90Gの最下部のカット紙90がカット紙排出口22から排出されると、重送規制部材30を押し上げて、重送規制部材30とベルト送給部40との間を通過するようになっている。
【0063】
詳細には、重送規制部材30は、カット紙送給装置10における前後方向(図9の紙面と直交する方向)と平行な円柱部31の外周面に、複数の環状溝32を形成し、各環状溝32に、エラストマ製の摺接リング33を嵌合させた構造になっている(図10参照)。摺接リング33は、円柱部31の外周面のうちベルト送給部40との対向部分だけで円柱部31の外周面から突出しており、それ以外の部分では環状溝32に没して円柱部31の外周面から突出しないようになっている。なお、円柱部31の下端部の外周面が、本発明の「カット紙当接面」に相当する。
【0064】
また、重送規制部材30のうち、軸方向の中間部でベルト送給部40との対向部分には、円柱部31をその外周面から中心軸の近傍まで、所謂、蒲鉾状に切除した溝形陥没部34が形成されている。さらに、円柱部31の中心軸を挟んで溝形陥没部34とは反対側にも、円柱部31の外周面を部分的に切除した連結用陥没部35が形成されている。そして、重送規制部材30のうち溝形陥没部34、連結用陥没部35が形成された部分が、直動保持機構26と嵌合している。
【0065】
なお、カット紙送給装置10には、例えば、メンテナンス時等に直動保持機構26から重送規制部材30が脱落することを防止するために、脱落防止フック(図示せず)が部品取付部15に備えられ、重送規制部材30から両側方に突出した円柱ボス36,36が部品取付部15の内側に非接触状態で受容されている。
【0066】
図9に示すように、カット紙ホルダー20の下方には、カット紙ホルダー20に載置された複数のカット紙90を下端側から順次抜き出してアライナー50へ送給するためのベルト送給部40が備えられている。具体的には、カット紙ホルダー20の真下位置に配置された第1プーリ41とカット紙ホルダー20より下流側に配置された第2プーリ42との間に第1送給ベルト43が架け渡され、これと同様な第1送給ベルト43が、ベースフレーム11の前後方向で複数、互いに平行に備えられている。
【0067】
詳細には、ベースフレーム11における1対の起立プレート13,13間には、互いに平行かつ水平な第1シャフト44と第2シャフト45とが上流側から順に差し渡されている。第1シャフト44及び第2シャフト45は、その両端部がベアリング(図示せず)を介して起立プレート13,13に軸支されている。第1シャフト44には複数の第1プーリ41が互いに間隔を空けて軸支され、第2シャフト45には第1プーリ41と同数の第2プーリ42が互いに間隔を空けて軸支されている。そして、第1プーリ41と第2プーリ42との間に、それぞれ第1送給ベルト43が架け渡されている。
【0068】
第1送給ベルト43は、カバープレート14の下方に配置されたサーボモータ46を駆動源としている。即ち、サーボモータ46のロータに連結された出力シャフト(図示せず)には、比較的大径な出力プーリ46Pが固定されており、第1シャフト44及び第2シャフト45のうち、一方の起立プレート13を貫通した一端部には、駆動プーリ(図示せず)が固定されている。そして、出力プーリ46Pと各駆動プーリとの間にタイミングベルト47が架け渡されている。なお、タイミングベルト47のテンションは、テンションローラ47Tによって調整可能になっている。
【0069】
第1送給ベルト43は、カット紙群90Gのうち最下部のカット紙90の下面と摩擦接触することで、その最下部のカット紙90を、カット紙ホルダー20のカット紙排出口22から抜き出して、スライド送給するようになっている。なお、第1送給ベルト43は、上側を向いた送給面がカバープレート14と平行になって、水平面と平行になるように設けられている。
【0070】
また、第2シャフト45には、第2プーリ42とは別に補助プーリ45P(図11参照)が固定されている。また、ベルト搬送部40の前方位置で、1対の起立プレート13,13間に差し渡された回転シャフト48にも補助プーリ48Pが軸支されており、第2シャフト45の補助プーリ45Pと回転シャフト48の補助プーリ48Pとの間に第2送給ベルト49が架け渡されている。即ち、第2送給ベルト49が第1送給ベルト43に連動して同方向に回転走行するようになっている。第2送給ベルト49における上向きの送給面と第1送給ベルト43における上向きの送給面は面一になっている。また、第1送給ベルト43及び第2送給ベルト49の送給面は、アライナー50の搬送ローラ群55Gにおける上向きの搬送面とも面一になっている。なお、本実施形態では、第1送給ベルト43及び第2送給ベルト49が、本発明の「送給回転体」に相当する。
【0071】
ここで、第2送給ベルト49の送給面の移動速度は、第1送給ベルト43の送給面の移動速度と同じになっている。また、上述したアライナー50の搬送ローラ55の搬送面の移動速度は、第2送給ベルト49の送給面の移動速度よりも大きくなっている。即ち、搬送ローラ55によるカット紙90の搬送速度は、第1送給ベルト43及び第2送給ベルトによるカット紙90の送給速度よりも大きくなっている。
【0072】
図9に示すように、重送規制部材30を挟んでカット紙ホルダー20と反対側には、クランプローラ39,39(図9には一方のみ示されている)が設けられている。クランプローラ39,39は、重送規制部材30の回転軸に連結された1対のレバーアーム37,37の先端に回動可能に軸支され、第2送給ベルト49の搬送面に自重で載って、第2送給ベルト49に対して連動回転する。
【0073】
ところで、本実施形態のカット紙送給装置10は、図11に示すように、第1送給ベルト43及び第2送給ベルト49の回転軸が、アライナー50の回転ベルト71の搬送ローラ群55G側の面、即ち、片寄せ平坦面M1に対して傾斜し、第1と第2の送給ベルト43,49によるカット紙90の送給方向と、搬送ローラ55によるカット紙90の搬送方向とが、片寄せ平坦面M1に対して同じ側に傾斜するようになっている。具体的には、第1送給ベルト43及び第2送給ベルト49の回転軸は、最上流搬送ローラ55Aの回転軸と平行になっていて(図11参照)、第1送給ベルト43及び第2送給ベルト49の送給方向は、最上流搬送ローラ55Aの搬送方向と平行になっている。
【0074】
また、カット紙ホルダー20内のカット紙90は、横辺90Aが片寄せ平坦面M1と平行になっていて、縦辺90Bが片寄せ平坦面M1と直交している。即ち、第1送給ベルト43及び第2送給ベルト49の回転軸は、カット紙90Gにおけるカット紙90の縦辺90B及び横辺90Aに対して傾斜している。
【0075】
そして、第1送給ベルト43及び第2送給ベルト49により、カット紙群90Gからカット紙90が順次抜き出されると、カット紙90は、横辺90Aが片寄せ平坦面M1と平行な状態を保ったまま、片寄せ平坦面M1へ向けて斜め送りされる(図13参照)。つまり、カット紙送給装置10は、カット紙90を片寄せ平坦面M1側へ片寄せしながら送給する。なお、図13では、第1と第2の送給ベルト43,49の回転軸がカット紙の横辺90Aに対して傾斜する角度が誇張して示されており、カット紙ホルダー20内のカット紙90の横辺90Aを延長した線が一点鎖線で示されている。
【0076】
次に、カット紙送給装置10及びカット紙送給システム100の作用効果について説明する。カット紙送給システム100によって下流側装置101へカット紙90を順次送給するには、まず、カット紙ホルダー20内のカット紙群90Gにおけるカット紙90の横辺90Aが、アライナー20の回転ベルト71(片寄せ平坦面M1)と平行になるように、カット紙送給装置10を予めセットしておく。そして、カット紙送給装置10のカット紙ホルダー20に複数のカット紙90を上下に積載する。すると、カット紙群90Gの水平移動が規制され、カット紙ホルダー20内におけるカット紙90の横辺90Aが片寄せ平坦面M1と平行になる。
【0077】
次いで、第1送給ベルト43が回転駆動されると、カット紙群90Gの下端部からカット紙90が抜き出され、片寄せ平坦面M1へ向けて片寄せされる(図11及び図13参照)。このとき、重送規制部材30によって、カット紙90が重なって送給されることが防がれる。また、重送規制部材30が、カット紙90の縦辺90Bに比べて十分に長い場合には、重送規制部材30とカット紙90との接触面積を一定にすることができる。
【0078】
第1送給ベルト43によってカット紙群90Gから抜き出されたカット紙90は、第2送給ベルト49によってアライナー50へと送給される。このとき、搬送ローラ55の搬送速度は、第2送給ベルト49の送給速度よりも大きくなっているので、重送規制部材30がうまく機能せず、2つのカット紙90が部分的に重なった部分重送が発生した場合であっても、それらカット紙90同士を分離することができる。しかも、最上流搬送ローラ55Aと上流加圧ローラ66とによってカット紙90を上下方向で挟むので、最上流搬送ローラ55A上をカット紙90がスリップすることが防がれ、カット紙90同士を確実に分離することが可能になる。
【0079】
ここで、カット紙送給装置10とアライナー50との境界部分では、カット紙90が、カット紙送給装置10とアライナー50の両方から力を受けることにより、カット紙90の回転が懸念される。しかしながら、本実施形態では、図14に示すように、カット紙90の後側部分が第2送給ベルト49から受ける力F3と、カット紙90の前側部分が搬送ローラ55から受ける力F4とが、同方向を向くので、カット紙90が受けるモーメントがゼロとなり、カット紙90の回転が抑えられる。
【0080】
アライナー50に送給されたカット紙90は、搬送ローラ群55Gによって片寄せされ(図12参照)、カット紙90の後側(図12における上側)の横辺90Aが片寄せ平坦面M1に揃えられる。そして、カット紙90が第2下流搬送ローラ55Cまで到達すると、カット紙90は、第2下流搬送ローラ55Cと下流加圧ローラ68とによって上下方向で挟まれ、下流側装置101へ搬送される。
【0081】
このように、本実施形態のカット紙送給システム100では、カット紙送給装置10が、カット紙ホルダー20内で静止しているカット紙90を、片寄せしながら抜き出してアライナー50に向けて送給することができる。そして、アライナー50によるカット紙90の搬送方向と、カット紙送給装置10によるカット紙90の送給方向とが、片寄せ平坦面M1に対して同じ側に傾斜しているので、カット紙送給装置10とアライナー50との境界部分でカット紙90が受けるモーメントを小さくすることができ、アライン不良の発生を抑えることができる。
【0082】
また、回転ベルト71の搬送ローラ群55G側の部分は、搬送ローラ群55Gによって搬送されるカット紙90と同じ速度で移動するので、カット紙90が回転ベルト71に沿って搬送されるときに、カット紙90が回転ベルト71から受ける摩擦抵抗によってカット紙90が回転することが防がれる。さらに、下流側の搬送ローラ55の搬送速度は、上流側の搬送ローラ55よりも、カット紙90を片寄せ平坦面M1側へ寄せる成分が小さくなるので、カット紙90が片寄せ平坦面M1側へ過剰に押しつけられてカールすることが防がれる。
【0083】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0084】
(1)前記実施形態では、本発明の「送給回転体」がベルト(第1と第2の送給ベルト43,49)で構成されていたが、ローラで構成されてもよい。
【0085】
(2)重送規制部材30の円柱部31を第1送給ベルト43の回転軸と平行となるように配置してもよい。
【0086】
(3)前記実施形態では、隣接する搬送ローラユニット56の間で、搬送ローラ55の回転軸が片寄せ平坦面M1に対して傾斜する角度が異なっていたが、同じであってもよい。
【0087】
(4)前記実施形態のカット紙送給装置10では、本発明の「送給回転体」が2つの送給ベルト(第1と第2の送給ベルト43,49)で構成されていたが、1つの送給ベルトのみで構成されていてもよいし、3つ以上の送給ベルトで構成されてもよい。
【0088】
(5)前記実施形態では、幅移動規制部材27に重送規制部材30と同様の重送規制部材が備えられていたが、第1と第2の送給ベルト43,49の回転軸とカット紙ホルダー20内のカット紙90の縦辺90Bとがなす角度が小さい場合には、幅移動規制部材27に重送規制部材を備えない構成としてもよい。
【0089】
(6)前記実施形態では、本発明の「搬送手段」の一例として搬送ローラ55を示したが、斜送コロであってもよいし、搬送方向が直交した2種類のローラであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 カット紙送給装置
20 カット紙ホルダー
30 重送規制部材
43 第1送給ベルト(送給回転体)
49 第2送給ベルト(送給回転体)
50 アライナー
55 搬送ローラ
55A 最上流搬送ローラ
55G 搬送ローラ群
56 搬送ローラユニット
66 上流加圧ローラ(加圧ローラ)
71 回転ベルト
71K 係合突部
72 ベルト用プーリ(プーリ)
72K 環状溝
76 ベルト摺接部
90 カット紙
90A 横辺
90B 縦辺
90G カット紙群
100 カット紙送給システム
M1 片寄せ平坦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形のカット紙を複数積み上げてなるカット紙群を囲んで水平移動を規制するカット紙ホルダーと、前記カット紙群の最下端から前記カット紙を1つずつ抜き出して送給する送給回転体とを備えたカット紙送給装置において、
前記カット紙ホルダー内の前記カット紙における縦辺又は横辺に対して前記送給回転体の回転軸を傾斜させたことを特徴とするカット紙送給装置。
【請求項2】
前記送給回転体はベルトであり、
前記カット紙ホルダー内の前記カット紙における縦辺又は横辺と平行な円柱の外周面で構成されたカット紙当接面を有する重送規制部材を前記送給回転体の上方に配置し、
前記カット紙当接面と前記送給回転体との間を通過して前記カット紙が前記カット紙群から抜き出されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカット紙送給装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカット紙送給装置と、前記カット紙送給装置から送給される前記カット紙の一辺を位置決めして搬送するためのアライナーとを備えてなるカット紙送給システムであって、
前記アライナーは、前記カット紙ホルダー内における前記カット紙の前記一辺と平行な片寄せ平坦面を有したガイド部材と、前記片寄せ平坦面に前記カット紙の前記一辺を押し付けるように前記カット紙を片寄せして搬送する搬送手段とを備え、
前記アライナーの前記搬送手段による前記カット紙の搬送方向と、前記カット紙送給装置の前記送給回転体による前記カット紙の送給方向とを、前記片寄せ平坦面に対して同じ側に傾斜させたことを特徴とするカット紙送給システム。
【請求項4】
前記アライナーのうち前記片寄せ平坦面の前方には、前記搬送手段としての複数の搬送ローラが横並びにして備えられ、それら搬送ローラ群の回転軸が前記片寄せ平坦面に対して一方側に傾けられると共に、それら搬送ローラ群のうち最上流の前記搬送ローラの回転軸と前記送給回転体の回転軸とが平行になっていることを特徴とする請求項3に記載のカット紙送給システム。
【請求項5】
前記搬送ローラによる前記カット紙の搬送速度を、前記送給回転体による前記カット紙の送給速度より大きくしたことを特徴とする請求項4に記載のカット紙送給システム。
【請求項6】
最上流の前記搬送ローラとの間で前記カット紙を上下方向で挟む加圧ローラを備えたことを特徴とする請求項5に記載のカット紙送給システム。
【請求項7】
前記搬送ローラ群は、上流側の前記搬送ローラの回転軸よりも下流側の前記搬送ローラの回転軸の方が、前記片寄せ平坦面に対して傾斜した角度が小さくなるように配置されたことを特徴とする請求項3乃至6の何れか1の請求項に記載のカット紙送給システム。
【請求項8】
複数の前記搬送ローラを、回転軸が相互に平行となるように組み付けた搬送ローラユニットを複数備え、
上流側に位置する前記搬送ローラユニットの前記搬送ローラの回転軸が、下流側に位置する前記搬送ローラユニットの前記搬送ローラの回転軸よりも、前記片寄せ平坦面に対して一方側に傾くように、複数の前記搬送ローラユニットを配置したことを特徴とする請求項7に記載のカット紙送給システム。
【請求項9】
鉛直な回転軸を有する1対のプーリに前記ガイド部材としての回転ベルトを架け渡し、その回転ベルトにおける前記搬送ローラ群側の面を、前記片寄せ平坦面としかつ、前記搬送ローラによる前記カット紙の搬送方向に移動可能としたことを特徴とする請求項3乃至8の何れか1の請求項に記載のカット紙送給システム。
【請求項10】
前記回転ベルトの前記搬送ローラ群側の面の移動速度を、前記搬送ローラによる前記カット紙の移動速度と同じにしたことを特徴とする請求項9に記載のカット紙送給システム。
【請求項11】
前記プーリの外周面には、環状溝が形成され、
前記回転ベルトの裏面には、幅方向と直交して前記環状溝と係合する係合突部が設けられたことを特徴とする請求項9又は10に記載のカット紙送給システム。
【請求項12】
水平方向で直線状に延びて、前記回転ベルトのうち前記搬送ローラ群側に位置する部分の裏面と摺接可能な1対のベルト摺接部を上下に並べて備え、
前記係合突部は、それら1対の前記ベルト摺接部に上下方向で挟まれたことを特徴とする請求項11に記載のカット紙送給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−218845(P2012−218845A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84106(P2011−84106)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(509068448)江沢事務器株式会社 (5)
【Fターム(参考)】